説明

破砕機

【課題】過負荷による運転停止時にも交換部品が不要で破砕作業に復帰するまでの時間を短縮することができる破砕機を提供する。
【解決手段】回転軸65を中心とするクランク65の回動運動をスライダ68の直線運動に変換するクランク・スライダ機構60と、クランク66の一方側への回動範囲を規制するストッパ61と、クランク66がストッパ61に押し付けられるようにスライダ68を付勢するスプリング62と、アンビル34に作用する破砕反力をクランク66に伝達しスプリング62の付勢力に対抗させる保持部材40とを備え、スプリング62の付勢力に抗う破砕反力によりスライダ68が上死点に到達し、スプリング62からの付勢力を受けてクランク66の回動する方向がストッパ61から遠ざかる方向に切り替わることで、アンビル34が破砕室27から退避する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被破砕物を破砕する破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョークラッシャ、ロールクラッシャ、インパクトクラッシャ、木材破砕機等を含め、廃棄物の再利用や減容化を主な目的として廃棄物を被破砕物として破砕処理する種々の破砕機が知られている。例えば木材破砕機は、森林の造成・維持管理等で発生する剪定枝材や間伐材、森林で伐採した木材の枝払い等で発生する枝木材、木造建築物の解体等で発生する廃木材等を主に破砕するものである。その一例として、外周部に破砕ビット(回転刃)を配設した破砕ロータとこの破砕ロータの外周側に設けたアンビル(固定刃)を有する破砕装置を備えたものが知られている。この種の木材破砕機では一般にアンビルがシャーピンにより保持されており、例えば被破砕物に混入した異物等により破砕装置に過大な負荷がかかったとき、シャーピンが折損してアンビルが破砕室から退避することでアンビルの損傷が抑制されるようになっている(特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5947395号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のように破砕装置の損傷を防ぐために、破砕反力が作用する部材をシャーピンの折損により破砕室から退避させて過負荷から保護する構成を採ると、折損の度にシャーピンを新しいものに交換しなければ破砕作業を再開することができず、作業復帰までに多大な労力と時間を費やしていた。
【0005】
本発明はこうした事情に鑑みなされたものであり、過負荷による運転停止時にも交換部品が不要で破砕作業に復帰するまでの時間を短縮することができる破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、破砕室内に導入された被破砕物を破砕手段により破砕する破砕装置と、回動軸を支点に回動自在に設けられたクランク、ガイド部材に摺動自在に設けられたスライダ、及び前記クランク及び前記スライダに回動自在に連結されたリンクを有し、前記回転軸を中心とする前記クランクの回動運動を前記スライダの直線運動に変換するクランク・スライダ機構と、前記クランク及び前記リンクの一方側への回動範囲を規制するストッパと、前記クランク又は前記リンクが前記ストッパに押し付けられるように前記スライダを付勢する付勢手段と、前記破砕手段に作用する破砕反力を前記クランクに伝達し前記付勢手段の付勢力に対抗させる反力伝達手段とを備え、前記付勢手段の付勢力に抗う破砕反力により前記スライダが上死点に到達し、前記付勢手段からの付勢力を受けて前記クランク及び前記リンクの回動する方向が前記ストッパから遠ざかる方向に切り替わることで、前記破砕手段が前記破砕室から退避することを特徴とする。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記付勢手段の付勢力を変更する付勢力変更手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記破砕手段が前記破砕室から退避した状態から前記クランク又は前記リンクが前記ストッパに押し付けられた状態に前記クランク・スライダ機構の状態を復帰させる復元手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、好ましくは、前記付勢手段は、梃子の原理により付勢力を増加させる付勢力増幅手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
(5)上記目的を達成するために、また本発明は、被破砕物を搬送する送りコンベヤと、破砕室内に破砕ロータ及びアンビルを有し、前記送りコンベヤにより前記破砕室内に導入された被破砕物を前記破砕ロータ及び前記アンビルにより破砕する破砕装置と、この破砕装置の側壁を構成する破砕フレームの前記破砕室外の部分に対して回動軸を支点に回動自在に設けられたクランク、前記破砕フレームに対して固定されたガイド部材に摺動自在に設けられたスライダ、及び前記クランク及び前記スライダに回動自在に連結されたリンクを有し、前記クランクの前記回転軸を中心とする回動運動を前記スライダの直線運動に変換するクランク・スライダ機構と、前記クランク及び前記リンクの一方側への回動範囲を規制するストッパと、前記クランク又は前記リンクが前記ストッパに押し付けられるように前記スライダを付勢する付勢手段と、前記アンビルを支持するとともに前記クランクと一体となって前記回動軸を支点に回動自在に支持され、前記アンビルに作用する破砕反力を前記クランクに伝達し前記付勢手段の付勢力に対抗させる反力伝達手段と、前記アンビルに対して前記破砕ロータの回転方向下流側に位置し、前記破砕室内の破砕物を粒度に応じて前記破砕室外に排出するスクリーンと、このスクリーンを支持するスクリーンホルダと、このスクリーンホルダと前記反力伝達手段の間に位置し、前記反力伝達手段が前記アンビルとともに退避した際に前記破砕室内の破砕物が前記スクリーンホルダに衝突することを抑制するホルダ保護部材とを備え、前記付勢手段の付勢力に抗う破砕反力により前記スライダが上死点に到達し、前記付勢手段からの付勢力を受けて前記クランク及び前記リンクの回動する方向が前記ストッパから遠ざかる方向に切り替わることで、前記アンビルが前記破砕室から退避することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過負荷による運転停止時にも交換部品が不要で破砕作業に復帰するまでの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図、図2はその平面図、図3は図1に示した破砕機に備えられた破砕装置13(後述)の近傍の詳細構造を示す透視側面図である。なお、以下において、図1中の左・右に対応する方向を破砕機の後・前、又は一方・他方とする。
【0013】
図1〜図3に例示した破砕機は、自走形式の木材破砕機であり、自力走行のための走行体1、走行体1上に設けられ受け入れた被破砕物(被破砕木材)を破砕する破砕機能構成部2、破砕機能構成部2で破砕された破砕物(破砕木材)を搬送し機外に排出する排出コンベヤ3、及び搭載した各機器の動力源であるエンジン等を備えた動力装置(パワーユニット)4等によって概略構成されている。
【0014】
走行体1は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の前後両端部に設けた駆動輪6及び従動輪7、駆動輪6の軸に出力軸を連結した駆動装置(走行用油圧モータ)8、並びに駆動輪6及び従動輪7に掛け回した履帯(無限軌道履帯)9を有している。トラックフレーム5上には本体フレーム10が設けられており、この本体フレーム10によって、上記破砕機能構成部2や排出コンベヤ3、動力装置4等が支持されている。
【0015】
破砕機能構成部2は、投入される被破砕物を受け入れるホッパ11、このホッパ11内に収容配置された被破砕物の搬送手段としての送りコンベヤ12(図2参照)、送りコンベヤ12によって導入された被破砕物を破砕する破砕装置13(図3参照)、及び破砕装置13の手前で被破砕物を押圧し破砕装置13に導入される被破砕物を送りコンベヤ12と協働して破砕装置13に送り込む押圧フィーダ装置14(図3参照)を備えている。
【0016】
送りコンベヤ12は、破砕ロータ15(後述)に向かって被破砕物を搬送し破砕ロータ15側に設けられたスプロケット状の駆動輪16(図3参照)、その反対側(破砕機後方側)に設けた図示しない従動輪、これら駆動輪16及び従動輪の間に巻回され幅方向に複数列(この例では4列)列設された搬送ベルト(チェーンベルト)17(図2参照)を備えている。上記従動輪は、ホッパ11の側壁体18(図1参照)後部に設けた軸受19(図1参照)によって支持され、駆動輪16は、側壁体18の前方側に設けた破砕装置13の側壁を構成する破砕フレーム20に設けた軸受(図示せず)によって支持されている。これにより、送りコンベヤ12は、上記ホッパ11内の下部すなわちホッパ11の側壁体18の内側から破砕ロータ15(後述)近傍にかけてほぼ水平に延在した状態で、ホッパ11及び破砕装置13の破砕フレーム20内に収納配置されている。送りコンベヤ12の駆動輪16の回転軸21は、軸受よりも幅方向外側に設けた駆動装置(図示せず)の出力軸にカップリング等を介して連結している。その図示しない駆動装置を回転駆動させることにより、送りコンベヤ12は駆動輪16及び従動輪の間で搬送ベルト17を循環駆動させるようになっている。
【0017】
押圧フィーダ装置14は、破砕フレーム20に設けた軸受(図示せず)に軸支された回動軸22を支点に上下方向に揺動自在に支持された支持部材23、この支持部材23によって破砕ロータ15の後方側で送りコンベヤ12の搬送面に対向するように支持された押えローラ24を備えている。
【0018】
支持部材23は、回動軸22を備えたアーム部25、アーム部25の先端側に設けられ押えローラ24を支持するブラケット部26を備えている。アーム部25の下面は概略円弧状に湾曲しており、この湾曲部には破砕室27(後述)の1部を画定する湾曲板28が取付けられている。
【0019】
押えローラ24は、幅方向(図3中の紙面直交方向)の寸法が送りコンベヤ12の搬送面の幅と同等かそれよりも大きく設定されており、その胴部内に駆動装置(図示せず)を内蔵している。この図示しない駆動装置によって、押えローラ24は、送りコンベヤ12の搬送面上を搬送される被破砕物の搬送速度と実質的に同じ周速度で回転し、押え込んだ送りコンベヤ12上の被破砕物を送りコンベヤ12と協動して破砕室27(後述)に導入するようになっている。
【0020】
押圧フィーダ装置14は、送りコンベヤ12上を搬送される被破砕物に乗り上げて自重によって被破砕物を押圧するものであるが、メンテナンス等の際に油圧シリンダ29によって強制的に上下動させることが可能となっている。油圧シリンダ29は、ボトム側端部が破砕機破砕フレーム20に対して固定されたブラケット30に、ロッド側端部がアーム部25の後方側(図3中左側)に設けたブラケット32にそれぞれ回動可能に連結されている。
【0021】
破砕装置13は、本体フレーム10(図1参照)の長手方向ほぼ中央部上に位置し、図3に示すように、破砕室27内で高速回転する破砕ロータ15、及び破砕ロータ15の径方向外側に設けたアンビル(固定刃)34を備えている。駆動体である破砕ロータ15と静止体であるアンビル34とがそれぞれ破砕手段として機能し、破砕装置13では、破砕室27内に導入された被破砕物を破砕ロータ15とアンビル34とで破砕する。
【0022】
破砕ロータ15は、破砕装置13の破砕フレーム20に対して回転自在に支持されており、外周部には、それぞれ支持部材35にボルト37で取り付けた破砕ビット(回転刃)36が複数設けられている(図3では煩雑防止のため1つのみ図示)。各破砕ビット36は、破砕ロータ15が正転方向(図3中の時計回り方向)に回転する際に刃面(衝突面)が支持部材35に先行するように配置されている。
【0023】
破砕ロータ15の径方向外側には、被破砕物が破砕ロータ15に向かって導入される送りコンベヤ12と押えローラ24との間の部分を始点として、破砕ロータ15の正転方向上流側から順に、湾曲板28、アンビル34、湾曲板41、スクリーン(篩い部材)38が設けられている。これら湾曲板28、アンビル34、スクリーン38等によって、上記破砕室27が概ね画定される。
【0024】
アンビル34は、破砕室27内に導入された被破砕物が衝突する衝突面39を有しており、正転する破砕ロータ15により破砕室27内を周回する破砕片に衝突面60が対向するように、保持部材40における上記湾曲板41の取り付け部よりも破砕ロータ15の正転方向上流側に取り付けられている。
【0025】
スクリーン(篩い部材)38は、多数設けられた排出孔(図示せず)よりも粒径の小さな破砕片を選別することで破砕室27内の破砕物を粒度に応じて破砕室27外へ排出するもので、アンビル34に対して破砕ロータ15の正転方向下流側に位置し、概略弧状のスクリーン保持部材(スクリーンホルダ)44によって破砕ロータ15の外周側下半位置に支持されている。スクリーンホルダ44は、一方側(図3左側)が回動軸45を介して破砕フレーム20に回動自在に連結されており、他方側(図3右側)には支持部材46が回動自在に連結されている。支持部材46のスクリーンホルダ44の反対側は、油圧シリンダ47(ロッドのみ図示)により前後方向にスライドするスライダ48に回動自在に連結されている。つまり、スクリーンホルダ44、支持部材46、スライダ48がクランク・スライダ機構を形成し、油圧シリンダ47によるスライダ48の前後運動がスクリーンホルダ44の上下運動に変換される。スクリーン38の交換やメンテナンスの際、スクリーンホルダ44を図3の状態から下降させることでスクリーン38が機体幅方向に抜き差し可能である。
【0026】
排出コンベヤ3は、図1及び図2に示すように、破砕装置13から排出された破砕物を機外に排出するもので、前後両端に図示しない駆動輪及び従動輪を設けたコンベヤフレーム50、駆動輪と従動輪との間に巻回したコンベヤベルトの搬送面の上方を覆うようにコンベヤフレーム50に取り付けたコンベヤカバー51、駆動輪を回転駆動させる駆動装置(排出コンベヤ用油圧モータ)52等を有している。排出コンベヤ3の排出側(前方側)の部分は動力装置4の支持部から突出して設けた支持部材53によって吊り下げ支持されており、反対側(後方側)の端部は支持部材54を介して本体フレーム10から吊り下げ支持されている。排出コンベヤ3は、破砕装置13の下方から動力装置4の下方を通った後、機外(前方)に向かうに連れて上るように傾斜している。
【0027】
動力装置4は、本体フレーム10の長手方向他方側の端部上に、支持部材55を介して搭載されている。この動力装置4の後方側でかつ幅方向一方側(図2中下側)の区画には運転席56が設けられている。運転席56には破砕機を走行操作用するための操作レバー57が設けられており、運転席56の下方にはその他の操作や設定、モニタリング等を行うための操作盤58が設けられている。
【0028】
上記基本構成の破砕機における本実施の形態の主な特徴は、破砕手段としてのアンビル34の支持構造にある。以下にその点について説明する。
【0029】
本実施の形態におけるアンビル34の支持機構は、アンビル34が取り付けられた上記保持部材40の他、保持部材40に連結されたクランク・スライダ機構60、このクランク・スライダ機構60の動きを規制するストッパ61、クランク・スライダ機構60を付勢する付勢手段であるスプリング62を備えている。
【0030】
クランク・スライダ機構60は、破砕フレーム20に対して回動軸65を支点に回動自在に設けたクランク66、破砕フレーム20に固定されたガイド部材67に摺動自在に設けられたスライダ68、及びクランク66及びスライダ68に両端が回動自在に連結されたリンク69を有している。つまり、回動軸65を中心とするクランク66の回動運動がリンク69を介してスライダ68の直線運動に変換される構成である。ばい、図3ではガイド部材67にスライダ68やスプリング62の機体幅方向内側(図3中の紙面直行方向手前側)への動きを拘束する手段が図示されていないが、そのような拘束手段は必要に応じて適宜設けることができる。
【0031】
ストッパ61は、図3に示すように、スライダ68が上死点(最もクランク66から遠ざかる位置)にあるときよりも設定角度だけリンク69が下方に回動した位置でクランク66の下面に当接するように支持部材70を介して破砕フレーム20に固定されている。これにより、クランク66及びリンク69の一方側(本例では下部側)への回動範囲を規制している。
【0032】
スプリング62は、本例ではガイド部材67内において破砕装置13の前側フレーム71とスライダ68の間の位置に収容されている。そして、スライダ68が上死点にあるときよりもクランク66及びリンク69が下がった状態のとき、スライダ68を下死点側(クランク66側)に付勢するスプリング62の付勢力がリンク69を介してクランク66のストッパ61への押し付け力に変換される。このクランク66をストッパ61に押し付ける力は、スプリング62のバネ力の変更の他、前述したリンク69の設定角度の変更により調整可能である。つまり、スプリング62のバネ力をFs、スライダ68の中心線に対するリンク69の中心線の傾斜角で定義した上記設定角度をθ(<90°)、クランク66のストッパ61に対する押し付け力をFaとした場合、押し付け力Faはバネ力Fsの分力にほぼ等しいと見なすことができるため、
Fa=Fs×tanθ
で表される値に近似するものと考えられる。
【0033】
したがって、設定角度θが大きくなるようにスライダ・クランク機構60やスプリング62を設計することにより、押し付け力Faは大きくなる。逆に設定角度θが小さくなるようにスライダ・クランク機構60やスプリング62を設計すれば押し付け力Faも小さくなる。よって図3に示したように、例えばボルト75とナット76でストッパ61を構成し、ボルト75の頭でクランク66を受けるようにすることで、設定角度θを微調整することができるようになる。この場合、ナット76を事前に取り付けたボルト75を支持部材70に螺着することで、ボルト75が高さ調整可能なストッパとして機能し、ナット76が位置の決まったボルト76の緩みを抑える締め付けナットの機能を果たす。
【0034】
また、アンビル34を保持する保持部材40は、本例においてはクランク66と一体となって回動軸65を支点に破砕フレーム20に対して回動自在に支持されており、アンビル34の支持手段であると同時にアンビル34に作用する破砕反力をクランク66に伝達する反力伝達手段としての機能を果たし、伝達された破砕反力をスプリング62の付勢力に対抗させるようになっている。
【0035】
すなわち、本実施の形態では、アンビル34に作用する破砕反力をスプリング62のバネ力で受ける構成を採っており、アンビル34に作用する破砕反力がクランク66に伝達された段階で上記押し付け力Faを超えない場合(スライダ68を上死点まで押し退けられない場合)、アンビル34は破砕室27に臨む姿勢を維持する。反対に、過大な破砕反力がアンビル34に作用した場合、スプリング62の付勢力に抗う破砕反力によりスライダ68が上死点に到達し、スプリング62からの付勢力を受けてクランク66及びリンク69が回動する方向がストッパ61から遠ざかる方向に切り替わることで、図4に示すようにクランク66に連動して保持部材40が上方に回動しアンビル34が破砕室27から退避する。
【0036】
このとき、本実施の形態の場合、過負荷によって図4のようにアンビル34が破砕室27から退避した後でも、例えばシリンダや手動ジャッキ等によりクランク66又はリンク69を上から押し込むことにより、スライダ・クランク機構60の状態を図3の状態に復帰させることができる。その際、スライダ68が下死点側への可動範囲ぎりぎりまで移動した場合でもスライダ68がガイド部材67から抜けることがないようにする必要がある。このことを考慮して、クランク66・ガイド部材67・スライダ68・リンク69の寸法や、クランク66又はリンク69の上方への回動範囲を設定する。
【0037】
また、仮に過大な破砕反力によりアンビル34及び湾曲板41が破砕室27から退避した場合、破砕ロータ15の回転は停止するまでの間、破砕ロータ15の正転方向で下流側に位置するスクリーンホルダ44が破砕室27内を周回する破砕片等の流れに一時的に露出してしまう。そこで、本実施の形態では、スクリーンホルダ44と保持部材40の間に位置し、保持部材40がアンビル34とともに退避した際に障害物となって、破砕室27内を周回する破砕物等がスクリーンホルダ44に衝突することを抑制するホルダ保護部材80を設けている。このホルダ保護部材80は、支持部材81を介して破砕フレーム20に対して固定してある。
【0038】
次に上記構成の本実施の形態の破砕機の動作を説明する。
グラップル等の適宜の作業具を備えた重機(油圧ショベル等)等によってホッパ11内に被破砕物を投入すると、被破砕物が送りコンベヤ12の搬送ベルト17上に載置され、循環駆動する搬送ベルト17によって破砕機13に向かって搬送される。被破砕物が押圧フィーダ装置14付近まで搬送されると、押えローラ24が被破砕物上に乗り上げ、押えローラ24の自重により被破砕物が送りコンベヤ12の搬送面に押し付けられる格好となる。このようにして押えローラ24は、送りコンベヤ12との間に被破砕物を挟持した状態で、送りコンベヤ12と協働して破砕室27へ被破砕物を導入する。その際、被破砕物は押圧ローラ24と送りコンベヤ12とに挟持された部分を支点に片持ち梁状に破砕室27内に向かって突出する。
【0039】
破砕室27内に突出した被破砕物には高速回転する破砕ロータ15の破砕ビット36が下方から衝突し、これにより被破砕物が粗破砕される。このように粗破砕されて破砕室27内に跳ね上げられた被破片はアンビル34に衝突し、その衝撃力によりさらに細かく破砕される。破砕片はその後も破砕ロータ15の回転に伴って破砕室27内を周回し破砕ビット36、アンビル34、破砕室27の内壁面等と衝突して破砕される。そして、周回する破砕片のうちスクリーン38の排出孔を通過する大きさに細粒化されたものが順次スクリーン38を通過して破砕室27から排出される。破砕室27から排出された破砕物は、排出コンベヤ3上に落下して排出コンベヤ3によって搬送され機外に排出される。
【0040】
本実施の形態の破砕機により得られる作用効果を次に説明する。
まず、作用効果の説明の便宜上、図1〜図4に示した破砕機においてアンビル34の反力をシャーピンで受ける構成に変更した場合の構成例を一比較例として取り上げる。
【0041】
図5はその比較例に備えられた破砕装置13の近傍の詳細構造を示す透視側面図、図6はアンビル34の保持部材40を上から見た平面図である。図5の図示は本実施の形態の図3に対応しており、図3に示した部材と同様の部材又は同様に機能する部材には同符号を付して説明を省略する。
【0042】
図5及び図6に示したように、本比較例においてアンビル34の保持部材40は、破砕フレーム20に固定された支持部材100にシャーピン101を介して連結されている。この構成によりアンビル34に作用する破砕反力(衝撃加重)は保持部材40を介して回動軸65周りの力に変換されてシャーピン101に伝えられる。これにより、例えば図7のように大きな被破砕物や異物等がアンビル34に衝突したり破砕ビット36との間に挟まったりする等して、アンビル34にシャーピン101の許容(耐荷重)を超えた破砕反力がかかった場合等には、シャーピン101が破断して保持部材40の拘束が解かれ、保持部材40が回動軸65を支点に回動しアンビル34が破砕室27から退避する(図8参照)。よって、アンビル34等の破砕手段の損傷が抑制される。
【0043】
しかし、このような構成を採ると、シャーピン101が折損する度にシャーピンを新しいものに交換しなければ破砕作業を再開することができず、作業復帰までに多大な労力と時間を要する。
【0044】
それに対し、本実施の形態ではアンビル34に作用する破砕反力がスライダ・クランク機構60とスプリング62のバネ力で作り出された押し付け力Faにより支持されており、破砕反力が押し付け力Faを超えた場合にはスライダ・クランク機構60の保持部材40への付勢方向が切り替わってアンビル34が破砕室27から退避する。このように、本実施の形態ではアンビル34が破砕室27から退避する過程で部品の損傷は想定されておらず、押し付け力Fa方向にクランク66又はリンク69を押す等してスライダ・クランク機構60の状態を元の状態に復元することで破砕作業に復帰することができる。
【0045】
したがって、過大な負荷で破砕ロータの軸受けや構造物が破損することを防止することができるとともに、シャーピンによりアンビルを支持する構成のように損傷部品の交換を前提とせず、過負荷による運転停止時にも通常は交換部品が不要で破砕作業に復帰するまでの時間を短縮することができる。また交換部品を想定していないので、交換部品にかかるコストも低減することができる。
【0046】
また、スライダ・クランク機構60を用いて保持部材40への付勢方向が切り替わるようにすることで、過負荷時にはアンビル34等が積極的に破砕室27から退避するように保持部材40を開放させる力をアシストする効果もある。また、スライダ・クランク機構60を用いて保持部材40を付勢することにより、スライダ・クランク機構60の設計やストッパ61の位置、スプリング62のバネ力の強さ等を適宜設計変更することで、押し付け力Faや破砕反力を支持する状態(図3)から上死点位置までのストローク(不感帯)を調整することができる。
【0047】
さらに、アンビル34に伴って湾曲板41が破砕室27から退避することにより、スクリーン38を支持するスクリーンホルダ44に一時的に破砕片が衝突する恐れがある。しかし、スクリーンホルダ44は元々破砕片との衝突を想定していないことから、湾曲板41が開かれた場合に破砕片や異物との衝突によりスクリーンホルダ44が損傷する可能性が生じるが、本実施の形態の場合、それを阻害するためにホルダ保護部材80を設けたので、スクリーンホルダ44の損傷を抑制することができる。
【0048】
図9は本発明の第2の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置の近傍の詳細構造を示す透視側面図である。既出の各図と同様の部分には同符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、スライダ・クランク機構60に付勢力を与える付勢手段の構成にある。第1の実施の形態ではスプリング62をガイド部材67内に設けてスプリング62の付勢力をスライダ68に直接作用させていたのに対し、本実施の形態で用いる付勢手段は梃子の原理により付勢力を増加させる付勢力増幅手段82を介してスライダ68を付勢する構成としてある。
【0050】
つまり、本実施の形態における付勢手段は、スプリング83と、スプリング83の付勢力をスライダ68に伝達する付勢力増幅手段82とを備えている。スプリング83は、破砕装置13の前側フレーム71の前面に固定されたガイド部材84内に収容されている。
【0051】
付勢力増幅手段82は、上記ガイド部材67に摺動可能に設けられたピストン85、ガイド部材84に摺動可能に設けられたピストン86、両端がピストン85,86に回動可能に連結されたアーム87、このアーム87を回動可能に支持する支持ポスト88を備えている。
【0052】
ピストン88と前側フレーム71との間には上記スプリング83が介在しており、スプリング83のバネ力(伸び力)がピストン86に作用する。このピストン86への付勢力はアーム87を介して反転してピストン85に作用し、ピストン85がスライダ68を付勢する。このとき、図9に示したようにアーム87の支点が、その長手方向の中央部に対してピストン86(スプリング83側)よりもピストン85(スライダ68側)に偏差している。これにより、梃子の原理でスプリング83の付勢力が増幅されてスライダ68に作用する。
【0053】
本実施の形態においても、過負荷時には実質的に第1の実施の形態と同様に動作し、図10に示したように特に部品が破損することなくアンビル34が破砕室27から退避するので、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。それに加え、本実施の形態では、スプリング83の付勢力を増幅することができるので、スプリングのバネ力を効率的にスライダ・クランク機構60に作用させることができる。これにより、押し付け力Faを強化したり押し付け力Faをそのままにしてスプリング83の設定バネ力を弱めたりすることができる。
【0054】
図11は本発明の第3の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置の近傍の詳細構造を示す透視側面図、図12はそれを前方から見た前面図である。既出の各図と同様の部分には同符号を付して説明を省略する。
【0055】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、スライダ・クランク機構の構成にある。第1の実施の形態では、クランク66、リンク69、スライダ68がそれぞれ実質的に平行な平面上で動作する構成であったが、本実施の形態ではクランクが動作する面とスライダが動作する面とが直交する。
【0056】
本実施の形態におけるスライダ・クランク機構60Aは、破砕フレーム20に対して回動軸65を支点に回動自在に設けたクランク66A、機体幅方向両側の破砕フレーム20の内壁に固定された左右のガイド部材67Aにそれぞれ摺動自在に設けられた左右のスライダ68A、及びクランク66A及びスライダ68Aを連結するリンク69A,69Bを有している。クランク66Aは第1の実施の形態のクランク66とほぼ同じ構成である。
【0057】
左右のスライダ68Aは、それぞれガイド部材67Aにガイドされて機体幅方向にスライドするようになっており、ガイド部材67A内には、破砕フレーム20とスライダ68Aとの間に介在する形でスプリング62Aが収容されている。
【0058】
リンク69Aは、クランク66Aに一端(上端)が回動自在に連結され、クランク66Aが動作する面と実質的に平行な面に沿って動作する。一方、リンク69Bはリンク69Aの他端(下端)に対して回動自在に連結されており、リンク69Aが動作する面と実質的に直交する面に沿って動作する。このとき、リンク69Aは破砕装置13の機体幅方向ほぼ中央部に一本設けられているのに対し、リンク69Bはリンク69Aの両側に2本設けられる。そして、左右のリンク69Bがそれぞれ左右のスライダ68Aに回動自在に連結される。
【0059】
本実施の形態の場合、第1の実施の形態と同様、破砕作業を行う状態ではクランク66Aの下部側をストッパ61で受けている。したがって、クランク66Aがストッパ61に押し付けられた状態のときにアンビル34が破砕片に対向する。そのため、本実施の形態では、下方に位置するスプリング62Aの付勢力がリンク69A,69Bを介してクランク66Aを下に引く力に変換されるように構成してある。この状態を保持するには、リンク69A,69Bの連結ピン89がリンク69Bとスライダ68Aの連結ピン90よりも下に位置するようにする。
【0060】
こうすることで、スプリング62Aの付勢力はリンク69Bを介してリンク69Aを下方に引っ張る力に変換され、クランク66Aがストッパ61に押し付けられる。そして、アンビル34に過大な破砕反力が作用してリンク69Aを押し上げる力がスプリング62Aのバネ力に抗し、図13に示したようにスライダ68Aが上死点に達してリンク69Bが上方に回動したら、アンビル34が破砕室27から退避する。このような構成としても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
図14は本発明の第4の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置の近傍の詳細構造を示す透視側面図である。既出の各図と同様の部分には同符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、スプリング62の付勢力を変更する付勢力変更手段91を設けたことにある。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0063】
付勢力変更手段91は、ガイド部材67に連通するように破砕装置13の前側フレーム71に設けた孔の入り口部にナット92を設け、ナット92にスプリング62を押圧する押圧手段93を螺合し、押圧手段の先端でスプリング62を押すように構成したものである。ナット92を設けず前側フレーム71に設ける孔をネジ穴にしても良い。本実施の形態の場合、ハンドルを回して押圧手段93によってスプリング62の圧縮量を変化させることにより、スプリング62のスライダ68への付勢力が変化する。
【0064】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られるとともに、容易にアンビル34の保持力を調整することができる。
【0065】
なお、付勢力変更手段81は、図14に示した構成の他、例えば前側フレーム71とスプリング62の間にシムを入れる構成とし、シムの枚数でスプリング62の圧縮量を調整する構成等も考えられる。要するに、スプリング62の圧縮量を調整することができれば良い。
【0066】
図15は本発明の第5の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置の近傍の詳細構造を示す透視側面図である。既出の各図と同様の部分には同符号を付して説明を省略する。
【0067】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、アンビル34が破砕室27から退避した状態からスライダ・クランク機構60がストッパ61に押し付けられた元の状態に復帰させる復元手段94を備えたことである。
【0068】
復元手段94は、その支持部95を破砕フレーム20に回動可能に固定した油圧シリンダで、そのロッドの先端が退避時のクランク66とリンク69の連結部分近傍を上から押えられるように配置されている。復元手段94に用いる油圧シリンダは、油圧、電動、手動に制限されない。また、シリンダに限らず、モータを用いた駆動装置を用いて、チェーン等を引いたり、また回転動作を直線動作に変換する機構を用いてモータの駆動力をスライダ・クランク機構60に作用させたりするようにしても良い。その他の構成は第4の実施の形態と同様である。
【0069】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られるとともに、破砕作業への復帰をより容易化・迅速化することができる。
【0070】
なお、以上の説明では、本発明を自力走行可能な木材破砕機に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、牽引して走行可能な移動式木材破砕機、若しくは例えばクレーン等により吊り上げて運搬可能な可搬式木材破砕機、さらにはプラント等において固定機械として配置される定置式木材破砕機に適用しても良いことは言うまでもなく、これらの場合も上記と同様の効果を得る。また、上記の破砕機は、例えば、木材、廃プラスチック材、廃タタミ、竹材等を破砕対象物として破砕することができ、これら破砕対象物に関わらず上記の効果を奏するものである。また、被破砕物を水平方向から破砕装置に導入する型の木材破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、例えば破砕装置の上部にホッパを有し破砕装置の上方から被破砕物を導入する型の木材破砕機にも本発明は適用可能である。
【0071】
また、木材破砕機に限らず、例えばインパクトクラッシャやジョークラッシャ、ロールクラッシャ等といった他のタイプの破砕機にも本発明は適用可能であり、同様の効果を得ることができる。勿論、自走式、定置式等の制限はない。
【0072】
図16にインパクトクラッシャに本発明を適用した場合の破砕装置近傍の概念構成を例示した。なお、図16では、第4の実施の形態(図14)をインパクトクラッシャに適用した場合の構成例を例示しており、図14と同じ符号の部材は第4の実施の形態における同符号の部材と同様の構成である。
【0073】
図16に簡略図示したインパクトクラッシャは、投入された被破砕物を振動フィーダ200によって破砕装置201に供給し、破砕ロータ202に取り付けた破砕ビット203による衝撃力で被破砕物を粉砕し、さらに粉砕物をアンビル204との衝突によりさらに細粒化して下方に落下させる。このようなインパクトクラッシャにおいて、アンビル204の支持構造を例えば先の第1〜第5の実施の形態のいずれかのようにすることで、木材破砕機に本発明を適用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0074】
図17にジョークラッシャに本発明を適用した場合の破砕装置近傍の概念構成を例示した。図17では、第4の実施の形態(図14)をジョークラッシャに適用した場合の構成例を例示しており、図14と同じ符号の部材は第4の実施の形態における同符号の部材と同様又は同様の機能を果たす部材である。
【0075】
図17に簡略図示したジョークラッシャは、投入された被破砕物を振動フィーダ(図示せず)により破砕装置300に供給し、固定歯301とこれに対して揺動する動歯302の間で破砕する。
【0076】
一般にジョークラッシャの場合は、動歯の下方が固定歯と反対側でトグルプレートにより支持されており、動歯の上方がフライホイールに連結されて揺動するようになっている。そして、固定歯と動歯の間への被破砕物が過剰に供給されたときや異物等が被破砕物に混入していたりして動歯にかかる破砕反力が許容値を超えた場合、トグルプレートが優先的に折損する。これにより動歯の下方が不支持状態となって動歯と固定歯の間隙が広がることにより、動歯にかかる破砕反力を逃がす構成となっている。
【0077】
しかし、このような構成でもトグルプレートを優先的に折損させて破砕手段(動歯等)を保護する構成であるため、トグルプレート等の破損部品を交換しなければ元の状態に復旧することができない。
【0078】
図17の例の場合、動歯301の固定歯301と反対側のスペースにスライダ・クランク機構60を設け、クランク66に対しピン303を介して回動自在に連結した破砕反力伝達部材304と動歯301との間に支持板305を挟持させる構成としてある。これにより、通常のジョークラッシャと同様の破砕動作を確保しつつ、過負荷時には折損部品を想定せずクランク66を跳ね上げることで動歯301の破砕装置出口側(下部側)の拘束を開放し、破砕手段等の損傷を回避することができる。勿論、支持板305を動歯302と破砕反力伝達部材304との間に挟持させた状態でスライダ・クランク機構60を元の状態に復帰させることで、部品交換を伴うことなく迅速かつ容易に破砕作業に復帰することができる。
【0079】
以上に説明した各例においては、クランクに当接することでクランクの一方側(下部側)への回動範囲を規制する構成としたが、これに限定されず、リンクの動きを制限してクランクの一方側(下部側)への回動範囲を規制する構成としても良い。また、アンビルその他の破砕手段が上部側に支点(回動軸65等)を持って回動し下部側が開放される構成としたため、破砕作業時にはクランクを下方に押し付ける構成を例に挙げて説明したが、押し付け力Faを作用させる方向は限定されない。押し付け力Faの作用方向は破砕手段の退避動作の方向により適宜変更されるものであり、当然ながら破砕手段の構成によっては押し付け力を上向きに作用させるように構成すべき場合もあり得る。また、各例ではスライダを付勢する付勢手段として圧縮バネを例に挙げて説明したが、付勢力をスライダに伝達する伝達機構を適宜構成することで引っ張りバネを適用することもできる。また、図示したコイルバネに限定されず、板バネや空気バネ等といったその他のバネやゴム等の弾性体を付勢手段に使用することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る破砕機の全体構造を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図5】比較例に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図6】比較例に備えられた破砕装置のアンビルの保持部材を上から見た平面図である。
【図7】比較例に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図8】比較例に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置を前方から見た前面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置を前方から見た前面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る破砕機に備えられた破砕装置近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図16】インパクトクラッシャに本発明を適用した場合の破砕装置近傍の概念構成を例示した概略構成図である。
【図17】ジョークラッシャに本発明を適用した場合の破砕装置近傍の概念構成を例示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0081】
12 送りコンベヤ
13 破砕装置
15 破砕ロータ
20 破砕フレーム
27 破砕室
34 アンビル
36 破砕ビット
38 スクリーン
40 保持部材
44 スクリーンホルダ
60,60A クランク・スライダ機構
61 ストッパ
62,62A スプリング
65 回動軸
66,66A クランク
67,67A ガイド部材
68,68A スライダ
69,69A,B リンク
80 ホルダ保護部材
82 付勢力増幅手段
83 付勢力変更手段
94 復元手段
201 破砕装置
202 破砕ロータ
203 破砕ビット
204 アンビル
300 破砕装置
301 固定歯
302 動歯
304 反力伝達部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕室内に導入された被破砕物を破砕手段により破砕する破砕装置と、
回動軸を支点に回動自在に設けられたクランク、ガイド部材に摺動自在に設けられたスライダ、及び前記クランク及び前記スライダに回動自在に連結されたリンクを有し、前記回転軸を中心とする前記クランクの回動運動を前記スライダの直線運動に変換するクランク・スライダ機構と、
前記クランク及び前記リンクの一方側への回動範囲を規制するストッパと、
前記クランク又は前記リンクが前記ストッパに押し付けられるように前記スライダを付勢する付勢手段と、
前記破砕手段に作用する破砕反力を前記クランクに伝達し前記付勢手段の付勢力に対抗させる反力伝達手段とを備え、
前記付勢手段の付勢力に抗う破砕反力により前記スライダが上死点に到達し、前記付勢手段からの付勢力を受けて前記クランク及び前記リンクの回動する方向が前記ストッパから遠ざかる方向に切り替わることで、前記破砕手段が前記破砕室から退避する
ことを特徴とする破砕機。
【請求項2】
請求項1の破砕機において、前記付勢手段の付勢力を変更する付勢力変更手段をさらに備えたことを特徴とする破砕機。
【請求項3】
請求項1又は2の破砕機において、前記破砕手段が前記破砕室から退避した状態から前記クランク又は前記リンクが前記ストッパに押し付けられた状態に前記クランク・スライダ機構の状態を復帰させる復元手段をさらに備えたことを特徴とする破砕機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの破砕機において、前記付勢手段は、梃子の原理により付勢力を増加させる付勢力増幅手段をさらに備えたことを特徴とする破砕機。
【請求項5】
被破砕物を搬送する送りコンベヤと、
破砕室内に破砕ロータ及びアンビルを有し、前記送りコンベヤにより前記破砕室内に導入された被破砕物を前記破砕ロータ及び前記アンビルにより破砕する破砕装置と、
この破砕装置の側壁を構成する破砕フレームの前記破砕室外の部分に対して回動軸を支点に回動自在に設けられたクランク、前記破砕フレームに対して固定されたガイド部材に摺動自在に設けられたスライダ、及び前記クランク及び前記スライダに回動自在に連結されたリンクを有し、前記クランクの前記回転軸を中心とする回動運動を前記スライダの直線運動に変換するクランク・スライダ機構と、
前記クランク及び前記リンクの一方側への回動範囲を規制するストッパと、
前記クランク又は前記リンクが前記ストッパに押し付けられるように前記スライダを付勢する付勢手段と、
前記アンビルを支持するとともに前記クランクと一体となって前記回動軸を支点に回動自在に支持され、前記アンビルに作用する破砕反力を前記クランクに伝達し前記付勢手段の付勢力に対抗させる反力伝達手段と、
前記アンビルに対して前記破砕ロータの回転方向下流側に位置し、前記破砕室内の破砕物を粒度に応じて前記破砕室外に排出するスクリーンと、
このスクリーンを支持するスクリーンホルダと、
このスクリーンホルダと前記反力伝達手段の間に位置し、前記反力伝達手段が前記アンビルとともに退避した際に前記破砕室内の破砕物が前記スクリーンホルダに衝突することを抑制するホルダ保護部材とを備え、
前記付勢手段の付勢力に抗う破砕反力により前記スライダが上死点に到達し、前記付勢手段からの付勢力を受けて前記クランク及び前記リンクの回動する方向が前記ストッパから遠ざかる方向に切り替わることで、前記アンビルが前記破砕室から退避する
ことを特徴とする破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−168205(P2008−168205A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3702(P2007−3702)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】