説明

硫黄に対する耐性を有するアルミナ触媒支持体

本発明は改善された触媒支持体に関し、またそれから得られる内燃機関、特にディーゼルエンジンからの排出生成物を処理するのに適した触媒に関する。本発明の支持体は、高度の多孔度および表面積をもったアルミナの芯の粒子を含んで成る構造物であって、該構造物は該アルミナの芯の表面上にクラッディングされた形で約1〜約40重量%のシリカを含んでいる。得られる支持体は正規化された硫黄取込み量(NSU)が最大15μg/mである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、特にディーゼルエンジンからの排出生成物を処理するのに適した改善された触媒支持体および得られる触媒に関する。本発明の支持体は、内燃機関の排出生成物の中に見出だされる硫黄および硫黄化合物の排ガス変換触媒に対する劣化効果を抑制する手段を提供する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排出生成物は人間、動物並びに植物の生活に対し健康上危険であることが知られている。汚染物質は一般に燃焼しなかった炭化水素、一酸化炭素、酸化窒素、並びに残留している硫黄および硫黄化合物である。
【0003】
排出生成物用の触媒が自動車に対する用途に適しているためには、ライト・オフ(light−off)性能、有効性、長期間に亙る活性、機械的安定性、並びにコスト効果に関して厳しい要求に応えなければならない。例えば排ガス用触媒は、始動時の条件において最初に遭遇するような低い操作温度で活性をもち、同時に通常の操作時に遭遇するような種々の温度および空間速度において汚染物質に対し高い変換率をもつことができなければならない。
【0004】
従来未燃焼の炭化水素、一酸化炭素、並びに窒素酸化物から成る汚染物質は、高い割合の汚染物質を二酸化炭素、水(水蒸気)および窒素から成る危険性の少ない生成物に変換する多機能の貴金属触媒と接触させることによりうまく処理されてきた。しかし燃料、従って排出生成物中に存在する硫黄および硫黄化合物は貴金属を被毒させ、その触媒としての効果および寿命を減少させることが知られている。最近、内燃機関に使用される燃料は硫黄および硫黄含有化合物の含有量に関し厳密な規制の下に置かれるようになった。しかしこれらの材料を、特に中沸点成分の石油原料(C10以上の炭化水素)から完全に除去することは、このような化合物の性質および範囲が複雑なため達成することが困難である。このように、硫黄材料は内燃機関の燃料、特にディーゼルエンジンの燃料の中に存在している。
【0005】
有害な汚染物質を無害なガスに変換するのに使用される「触媒コンバーター」は通常三つの成分、即ち触媒活性をもった金属、活性金属を分散させる支持体、および支持体を被覆する、即ちウオッシュコートを行う基質から成っている。
【0006】
一酸化炭素、窒素酸化物、および未燃焼の炭化水素のような汚染物質を遭遇する種々の条件下において効果的に変換するのに有用な触媒金属は貴金属、通常は白金族の金属、例えば白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物である。これらの貴金属触媒は特許文献1に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。
【0007】
貴金属は通常表面積の大きな酸化物、例えば酸化アルミニウム(即ちアルミナ)の上に支持される。表面積の大きなアルミナはセラミックスまたは金属の基質、例えば蜂の巣状の一体成形体(monolith)または針金の網、あるいは同様な構造物の形の基質の上に被覆、即ち「ウォッシュコート」される。また支持材料を一体成形体の上にウォッシュコートした後、貴金属を支持体の上に被覆することもできる。
【0008】
放出物抑制(emission control)用の触媒に対しては、入手が容易で製造が容易であり、熱的特性および貴金属の触媒活性を促進するための能力をもっているために、通常種々の形のアルミナが高表面積の支持体材料として使用される。しかしアルミナ支持体の欠点はエンジンの放出物流の中に見出だされるような硫黄および/または硫黄化合物を吸着することである。このように吸着された場合、硫黄化合物は貴金属触媒、特に白金金属を用いてつくられた触媒を被毒させ、触媒系の活性および有効寿命を低下させることが知られている。
【0009】
アルミナとは対照的に、シリカ支持体は硫黄および硫黄化合物と相互作用をしないことが知られている。従って、高表面積支持材料としてシリカを用いてつくられた貴金属触媒は硫黄および硫黄化合物による被毒を示さない。しかしシリカは効果的な放出物抑制触媒の支持体をつくるのに必要な水熱安定性をもたず、従ってこのような用途には望ましくない触媒支持体材料である。
【0010】
シリカに付随する劣った水熱特性を克服する試みでは、標準的な含浸または共沈法によりシリカがアルミナ支持体に加えられた(特許文献2参照)。両方の場合、得られた支持体は露出したアルミナをかなりの量で保持していたから、これらの支持体は依然とし硫黄による高度な被毒を受け易い。さらに被覆されたシリカはアルミナの細孔の中に沈澱する傾向があり、そのため多孔度が減少して貴金属が付着し得る表面積が減少する。
【0011】
特許文献3には、シリカの水溶液またはゾルをアルミナ支持体材料に被覆することにより得られるシリカで含浸したアルミナ支持体が記載されている。この材料は良好な摩耗耐性を示すが、シリカは不連続な皮膜の形で存在している。アルミナは露出したままであり、該出物生成物の中の硫黄によって被毒し易い。通常の含浸法ではシリカは沈澱または凝集し(分離したシリカの粒子の均一な造核作用が有利となる傾向をもっているために)、アルミナの表面には不連続な皮膜が生じることが知られている。
【0012】
特許文献4にはビーズ、球、または押出し物の形をしたアルミナ支持体が記載されており、これを先ず粒子の表面でアルミナを可溶化し得る試薬と接触させる。このようにして処理されたアルミナ構造物を次にシリカの溶液で含浸して混合したシリカ−アルミナ表面をつくる。得られた支持体は水素化脱硫(hydrodesulphurization)触媒として増強された活性をもっていると記載されている。
【0013】
同様に特許文献5には、材料の強度を増強するためのシリカの皮膜を有するアルミナ支持体から成る硫黄吸着体が記載されている。この文献には、アルミナを露出させて二酸化硫黄を吸着させるためには5%より多くのシリカを使用すべきではないことが記載されている。即ちこの記述は露出されたアルミナの表面が大量に保持されていることを示している。
【0014】
別法として、シリカおよびアルミナ前駆体を共沈させ混合支持体生成物をつくることにより支持体材料がつくられる。
【0015】
特許文献6には、シリカ−アルミナを共沈させた生成物であって、さらに石油の水素化分解用のY型ゼオライトを含んでいる生成物が記載されている。このシリカ−アルミナ生成物はアルミナで支持されたゼオライト触媒に比べ増強された摩耗耐性をもっている。このような生成物は、硫黄含有材料と相互作用し得る露出したアルミナを大量に含んでいる。
【0016】
特許文献7には、シリカが支持体の75〜90重量%をなす共沈させたシリカ−アルミナ支持体を用いた貴金属触媒が記載されている。これは、生じた支持体全体のシリカ含量が多いため、硫黄の存在に対し大きな耐性をもっていると述べられている。しかしこのような材料は水熱特性が劣っているであろう。
【0017】
特許文献8には、シリカ−アルミナ共沈ゲルが分散しているアルミナゲルからつくられたシリカ−アルミナ支持体が記載されている。次いでイオン交換法により貴金属を加える。
【0018】
特許文献7および8は両方とも硫黄に対する耐性が大きい支持体を提供しているが、これらの材料は劣った水熱特性を示している。
【0019】
特許文献9には、含浸あるいは気相堆積法のいずれかによりシリカで処理した表面をもつアルミナ支持体が記載されている。含浸は先ず珪素化合物の溶液をつくり、この溶液をアルミナ支持体と接触させ、次いで高温においてこの支持体を空気または水で処理してこれを酸化物に変えることにより行われる。
【0020】
一酸化炭素および炭化水素材料を二酸化炭素および水に変える際の貴金属の活性を増強し、同時に硫黄および硫黄化合物の存在に対する耐性を示すことができるアルミナの触媒支持体をつくることが望ましい。
【0021】
また、内燃機関、特にディーゼルエンジンの有害な放出物生成物を環境に優しい生成物に変えるための貴金属、特に白金金属の活性を増強し、硫黄および硫黄化合物に対する耐性がさらに増強されているためにこのような活性を長期間の寿命の間に亙って示すアルミなの触媒支持体をつくることがさらに望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】ドイツ特許DE05 38 30 318号明細書。
【特許文献2】米国特許第2,804,433号明細書。
【特許文献3】米国特許第3,925,253号明細書。
【特許文献4】米国特許第3,923,692号明細書。
【特許文献5】RE 29,771号。
【特許文献6】米国特許第6,399,530号明細書。
【特許文献7】米国特許第3,269,939号明細書。
【特許文献8】米国特許第3,703,461号明細書。
【特許文献9】米国特許第6,288,007号明細書。
【発明の概要】
【0023】
本発明は貴金属触媒をつくる支持体として適した、シリカで被覆された(silica
clad)高表面積のアルミナに関する。得られる触媒は硫黄による被毒に対する抵抗性を示し、従って内燃機関の放出物の変換に適している。特定的に述べれば、予めつくられた高表面積のアルミナを下記に詳細に説明する条件下において、水溶性の珪素化合物の水溶液で処理し、アルミナの実質的に全表面の上にクラッディング(cladding)された極めて薄い実質的に均一なシリカをつくる。得られるシリカで被覆された1〜40重量%のシリカを含む高表面積のアルミナは、硫黄の取込み量を減少させ、支持体材料の表面積1m当たり15μgより少ない正規化された硫黄の取込み量(normalized sulfur uptake:NSU)を与える。このようなNSUは、通常の含浸法または共沈法によってつくられた同じ重量のシリカを有するアルミナ支持体に比べて遥かに優れている。
【0024】
本発明によれば、貴金属触媒の用途に対して極めて望ましい支持体が提供される。得られる触媒製品は内燃機関、特にディーゼルエンジンの有害な放出物生成物の処理に増強された活性を示すと同時に、硫黄および硫黄化合物に対する耐性が増強されているために活性寿命が延長されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】均一にクラッディングされた多孔性の粒子および皮膜を施された多孔性の粒子を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は貴金属触媒をつくるための改良されたアルミナ支持体に関する。下記に詳細に説明する支持体生成物は、内燃機関等の放出生成物流の中に通常見出だされる硫黄が存在することに対する耐性が増加した排ガス触媒をつくるのに有用であり、従って従来法でつくられた支持体を使用した触媒に比べ得られた触媒の貴金属の被毒が少ない。
【0027】
本発明の支持体は一般にシリカのクラッディングを有するアルミナを含んで成る粒子(particulate)の形をしている。
【0028】
下記の説明および添付特許請求の範囲に使用されている下記の言葉は下記の定義を有している:
【0029】
「支持体」という言葉は活性をもった触媒材料が適用されている材料を意味する。本発明においては支持体は、表面上に触媒作用を及ぼす量の貴金属を沈澱させ得る高表面積のアルミナ材料を含んで成っている。
【0030】
「粒子」という言葉は、粉末、ビーズ、押出し物等の形の成形された粒状物を意味する。本明細書においてはこれは芯、支持物、並びに得られる支持された貴金属生成物を意味するのに使用される。
【0031】
「アルミナ」という言葉は任意の形の単独の、または少量の他の金属および/または金属酸化物との混合物としての酸化アルミニウムを意味する。
【0032】
「皮膜(coating)」と言う言葉は芯の粒状物の上の不連続的なカバレッジ(discontinuous coverage)の形をした表面被覆(surface covering)を意味する。皮膜は当業界に公知の通常の含浸法または共沈法によってつくられ、比較的厚く、不規則な形をしている。
【0033】
「クラッディング(cladding)」という言葉はアルミナの芯の粒子の上にある実質的に連続的なカバレッジ(continuous coverage)の形をした表面被覆を意味する。クラッディングは通常極めて薄く(例えば分子的な厚さ)実質的に連続的な表面被覆である。
【0034】
「芯」という言葉は本発明によってクラッディングする前のアルミナ粒子を意味する。従来法においてはこのようなクラッディングされていないアルミナ粒子材料が支持体材料として使われてきた。アルミナはさらに他の金属、および金属酸化物および非金属酸化物等を含んでいることができる。
【0035】
「吸着された」または「吸着」という言葉は、イオン性、共有結合性または混合性であることができる化学反応かまたは物理的な力のいずれかにより、吸着(ガス、液体または溶解した物質を吸着剤(例えばアルミナ)の表面上に保持または濃縮する能力)、吸収(ガス、液体または溶解した物質を吸収剤(例えばアルミナ)の全体に亙って保持または濃縮する能力)を行う現象を意味する。
【0036】
「硫黄性材料」という言葉は硫黄、硫黄酸化物、および硫黄原子を含む化合物を意味する。
【0037】
本発明の改善された支持物は、下記に詳細に説明するように、表面にシリカのクラッディングが装着された高表面積のアルミナ粒子を含んで成っている。
【0038】
アルミナは意図する特定の用途に望ましい任意の形の酸化アルミニウムから選ぶことができる。公知のようにアルミナまたは酸化アルミニウムには種々の変態があり、通常のものは次のとおりである。
・ γ−アルミナ:約900℃まで安定な形であり、この温度でδ−アルミナに変化する。
・ δ−アルミナ:約1000℃まで安定な形であり、この温度でθ−アルミナに変化する。
・ θ−アルミナ:約1100℃まで安定な形であり、この温度でα−アルミナに変化する。
・ アルミニウム一水和物またはベーマイト:水酸化アンモニウムを塩化アルミニウムの水溶液に加えるような種々の経路で製造される。この材料は最初無定形フロックとして沈澱し、これは迅速に結晶性のベーマイトに変化する。別法として硫酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムとの反応によってつくられる。
・ アルミニウム三水和物またはギッブサイト。
・ 他の形の水和した酸化アルミニウム、例えばバイヤライト等。
・ 他の形のアルミナ、例えばη−アルミナ。
【0039】
本発明の支持体をつくるのに芯として使用される好適なアルミナはδ−アルミナ、γ−アルミナまたはこれらの混合物から選ばれる。
【0040】
アルミナは通常のドーピング剤、例えば遷移金属および金属酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、希土類の酸化物、シリカおよびそれらの混合物でドーピングすることができる。このようなドーピング剤の例には希土類金属およびそれらの酸化物(特にランタナ)、マグネシア、カルシア、酸化ニッケル、酸化亜鉛、シリカ等が含まれ、ランタナが好適なドーピング剤である。ドーピング剤は、使用される場合、通常少量で、例えば高表面積のアルミナ粒子の芯材料の0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の量で(本発明によりクラッディングする前において)存在している。
【0041】
ドーピング剤は当業界の専門家には公知のように特定の性質、例えば水熱安定性、摩耗強度、触媒活性促進性等を賦与するために通常アルミナ粒子の中に存在している。
【0042】
高表面積のアルミナ粒子は平均粒径が約1〜200μm、好ましくは10〜100μmの粉末の形(好適)か、平均粒径が1〜10mmのビーズの形であることができる。別法として、アルミナの粒子はペレットまたは押出し物(例えば円筒形)の形をしていることができる。大きさおよび粒子の形は意図する特定の用途によって決定される。
【0043】
すべての場合、アルミナ粒子から成る支持体の基部(芯)は少なくとも約20m/g、例えば約20〜400m/g、好ましくは約75〜350m/g、さらに好ましくは約100〜250m/gの高(BET)表面積をもっていなければならない。支持体の芯のアルミナ粒子は少なくとも約0.2cc/g、例えば0.2〜2cc/g、好ましくは0.5〜1.2cc/gの細孔容積と、50〜1000Å、好ましくは100〜300Åの範囲の平均の細孔直径をもっている。このような高表面積の粒子は、貴金属触媒が沈澱し容易に放出物流と接触して有害な生成物を無害な生成物に変えるのに十分な表面積を与える。
【0044】
粒子状のアルミニウム水和物は通常カ焼して残留した水を除去し、アルミニウムのヒドロキシル基をそれに対応した酸化物に変える(但し残留したヒドロキシル基はアルミナの構造の一部として、特に粒子の表面上に残る)。
【0045】
本発明のクラッディングされた支持体生成物に対する芯として適したアルミナ粒子は市販されている。しかし特定の用途に対する粒子の設計の基準(例えば特定のドーピング剤の使用、粒子の細孔容積、等)については公知方法でアルミナ粒子をつくる必要がある。
【0046】
本発明においては、シリカをクラッディングしたアルミナ粒子の材料は、通常の含浸法または共沈法でつくられたシリカ含量を有する同じ支持体に比べ、硫黄に対する耐性が増強された貴金属触媒に対する支持体を提供することが見出だされた。軽い(ガソリン)および中程度の重さ(ディーゼル油)の燃料は供給材料の一部として硫黄および硫黄化合物(例えばチオフェン等)を含んでいることが知られている。硫黄性の材料を除去する努力がなされているが、分子量の大きい燃料生成物流(例えばディーゼル燃料)については除去が次第に困難になる。従って硫黄性の材料は炭化水素燃料、特にディーゼル燃料の中に存在することが知られている。炭化水素燃料を燃焼させるエンジンの放出物流の中に存在する硫黄性材料は、アルミナおよび或る種のドーピング剤によって吸着され、次にはそれが支持体表面上に存在する貴金属を被毒させることが知られている。本発明のシリカをクラッディングしたアルミナ支持体によって得られる硫黄に対する予想外に大きな耐性(非吸着性)により、内燃機関、特にディーゼル燃料エンジンの放出物生成物流を効果的に処理するための所望の触媒をつくることができる。
【0047】
以前から、共沈または含浸の技術のいずれかによりアルミナをシリカと組み合わせ支持体生成物をつくることが示唆されていた。上記に説明したように、これらの方法で得られる一定量のシリカを含んだアルミナ支持体は、本発明のシリカがクラッディングされたアルミナにくらべ遥かに多いレベルで硫黄性材料を吸着できる著しい量の露出したアルミナ表面をなお含んでいる。
【0048】
本発明においては、アルミナの粒子をシリカでクラッディングして硫黄性材料の存在に対し高い耐性を示す支持体をつくり、従って放出物の抑制に対し使用寿命が延長された触媒を提供することができることが見出だされた。シリカをクラッディングしたアルミナの粒子の製造は、下記に詳細に説明するように、工程パラメータの或る種の特定の組み合わせによって達成される。
【0049】
先ずアルミナの粒子を固体分濃度が5〜50重量%の範囲の水性スラリにする。このスラリは、下記に説明するような溶液と容易に混合できるほど十分な流動性をもっていなければならない。この範囲内において使用される特定の濃度はスラリをつくるアルミナの物理的性質(例えば表面積、空隙容積等、並びに粒子の大きさおよび形)に依存している。使用される特定のアルミナの濃度はスラリを容易に混合できるような濃度でなければならない。
【0050】
スラリを50〜100℃、好ましくは80〜100℃、最も好ましくは90〜95℃の範囲の温度に加熱する。これよりも高い温度を使用することもできるが、加圧容器が必要である。上記に示した以上の高い温度を得るための装置および取り扱いのコストはコスト
の不必要な増加である。
【0051】
水溶性のシリカ前駆体化合物の水溶液を使用する。シリカ前駆体化合物はアルカリ金属の珪酸塩、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウムなど、およびこれらの混合物から選ぶことが好ましく、珪酸ナトリウムが好適である。シリカ前駆体化合物の濃度は前駆体溶液中でSiOとして5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%でなければならない。この溶液を、加熱したアルミナのスラリの中に導入する前のアルミナスラリの温度と実質的に同じ温度に加熱することが好適ではあるが、必ずしもこの予備加熱の必要はない。
【0052】
水溶性のシリカ前駆体化合物の水溶液の量は溶液中の前駆体の中の濃度、および得られるクラッディングされたアルミナ生成物の部分としてのシリカの所望の重量の割合に依存するであろう。当業界の専門家はこの量を容易に計算することができるであろう。
【0053】
シリカ前駆体化合物の水溶液をアルミナスラリと混合して均一な材料の混合物をつくる。温度はシリカ前駆体化合物が溶液中に保たれるのに十分な温度でなければならない。このような温度は通常50〜100℃、好ましくは80〜100℃、最も好ましくは90〜95℃の範囲である。混合物をこの高められた温度に約1〜120分の間、好ましくは30〜60分の間、最も好ましくは約45〜60分の間維持し、この間十分に撹拌して均一な混合物の状態に保つ。
【0054】
次に水溶性の酸を用いpHを低下させて5〜8の範囲、好ましくは7〜8の範囲にする。この酸は任意の無機鉱酸、例えば硝酸、硫酸、または塩化水素酸(好適)またはこれらの混合物から選ぶことができる。別法として、水溶性のC〜C(好ましくはC〜C)の有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸等、およびこれらの混合物を使用することができ、酢酸が好適である。これらの酸の中で好適なものは無機酸であり、塩化水素酸および硝酸が最も好適である。
【0055】
酸の水溶液は前以てつくったシリカ前駆体化合物とアルミナの混合物に対し、該混合物のpHが7〜8(好ましくはpH7.5)の範囲内の初期pHへ均一に低下するように実質的に一定の速度で、5〜240分、好ましくは5〜120分、より好ましくは15〜60分に亙って導入しなければならない。酸の添加は混合物全体に亙って酸が均一に分布するように実質的に一定の遅い速度で連続的に撹拌しながら行なわなければならない。添加速度が速いことは避けなければならない。このような遅い速度で混合しながら行う添加は、混合物のpH値が8に達するまで続けなければならない。混合物の所望のpH値の最終点(上記に説明)を得るためにさらに酸を加えることができる。また添加溶液中の酸は、上記の時間に亙って遅い均一な方法で添加し得るような任意の酸濃度(好ましくは0.5〜3モル)をもっていることができる。混合物のpHの調節は任意の温度、例えば周囲温度ないし100℃の任意の温度で行うことができ、50〜95℃が好適である。
【0056】
処理されたアルミナ粒子の水性懸濁液を次に洗滌して処理された懸濁液からアルカリ金属材料を除去する。洗滌は温水(hot water)または水溶性のアンモニウム塩、例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム等、或いはそれらの混合物の水溶液を用いて行うことができる。硝酸アンモニウム、水酸化アンモニウムまたは炭酸アンモニウムが好適な洗滌剤である。
【0057】
洗滌用の水がアルカリ金属を含まないと決定されたら、該水性懸濁液を濾過し、得られた固体を噴霧乾燥して粉末生成物を得る。次にこの生成物を400〜1000℃、好ましくは600〜800℃でカ焼する。
【0058】
得られた生成物は、実質的に全表面に亙ってシリカがクラッディングされた高表面積の
アルミナ粒子である。通常の含浸法でつくられた従来のシリカで処理したアルミナ生成物とは異なり、本発明で得られる生成物は高表面積および細孔容積特性を保持している(従って本発明のクラッディング生成物は細孔に架橋して細孔を塞ぐような沈澱を生じないことが示されている)。さらにシリカでクラッディングされたアルミナ粒子の赤外スペクトルによる分析の結果、Al−OH結合による吸収ピークは未処理のアルミナ粒子を用いた場合に比べ減衰を示しており、約5重量%のところでAl−OHの吸収ピークは存在しなくなる。同時にシラノール基(SiOH)が現れる。このことは、シリカはアルミナ粒子材料の表面を完全にクラッディングしていることを示している。
【0059】
アルミナ粒子と接触させるのに用いる珪酸塩水溶液は、得られるシリカでクラッディングされたアルミナ生成物が、得られる生成物の全重量に関し1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%のシリカ(SiO)を含む結果となるのに十分な珪酸塩濃度をもっていなければならない。クラッディングはアルミナ粒子の表面上に亙り均一に行われているから、少量の、例えば8〜20重量%のシリカ、また8〜15重量%のシリカでさえも硫黄の吸着量が非常に少ない支持体材料をつくるのに容易に使用することができる。本発明のシリカでクラッディングされたアルミナは、下記に説明されているように、正規化された硫黄取込み量(NSU)が低く、支持体材料の表面積1m当たり最高約15μgである。シリカでクラッディングされたアルミナは支持体材料の表面積1m当たり最高約10μgのNSUをもっていることが好ましい。
【0060】
シリカでクラッディングされた得られたアルミナ粒子の一部を図1(a)に模式的に示す。シリカは細孔の表面を含めてアルミナの実質的に全表面に亙り実質的に均一な非常に薄い被覆をつくり、細孔を塞ぐ架橋をつくることはない。
【0061】
本発明に従って製造された生成物は、内燃機関の放出物生成物流に通常伴われる硫黄および硫黄化合物(例えばSO)に対し高度の耐性をもっていることが見出だされた。本発明を限定するものではないが、本発明によってつくられたシリカをクラッディングしたアルミナ生成物は不均一な沈澱により、即ちアルミナ支持体上への沈澱により得られるものと信じられている。シリカで変性されたアルミナをつくるために他の方法、例えば含浸または均一沈澱法を使用した場合、シリカは不連続的な形の皮膜を生じる。
【0062】
多孔性の基質の皮膜の不連続な形はアルミナ粒子の部分の模式的表現により図1(b)に示されている。これらの中には次のものが含まれる:(1)一般的な被覆の欠陥により生じた被覆されていない表面(これによって硫黄による被毒が生じる);(2)被覆された材料の架橋によって細孔が塞がれることによって生じる塞がれた細孔(これにより表面積が減少し、触媒の最終的な活性が制限される);(3)皮膜材料の均一な造核によってつくられた遊離したシリカ粒子(これにより生成物が皮膜材料の小さい粒子で汚染される)。
【0063】
上記の方法によれば予想外にも、硫黄の吸着に対して抵抗性をもち同時に水熱安定性を保持した支持体生成物を得ることができることが見出された。本発明のシリカでクラッディングされたアルミナ支持体は、図1(a)に描かれているような不連続的な被覆の欠陥をもたず、アルミナ粒子の実質的に全表面に亙りシリカのクラッディングを有していると信じられている。
【0064】
本発明において必要とされる実質的に均一なシリカのクラッディングを有するアルミナ粒子は硫黄の取込みに対し優れた抵抗性をもっている。シリカのカバレッジの均一性および連続性は硫黄の取込み量に対する支持体生成物の効果および効率によって示すことができる。或る試料の硫黄の取込み量(sulfur uptake:SU)は下記の「硫酸塩化試験(Sulfation Test)」によって測定することができる。この試験は50mgの試料を熱重量分析器(TGA)に装入することによって行われる。先ず試料
を107.5cc/分のHeガスで300℃において1時間処理する。この処理後、He中にSOを5cc/分の速度で流して導入し(1.14%のSO)、同時にOを12.5cc/分の速度で導入する。全流量は125cc/分であり、SOの濃度は456ppmである。硫黄の取込み量は時間の関数として測定する。約120分で硫黄の取込みは平衡に達し、この時点においてこれ以上の取込みは不可能になる。硫黄の取込み量(SU)は試料を120分間流した後において増加した重量の%として定義される。正規化された硫黄の取込み量(NSU)は下記式により計算される。
【0065】
【数1】

ここでSUは試料を流した時間120分後に測定した重量%(wt%)単位の硫黄の取込み量であり、SAは試料のBET表面積である。
【0066】
本発明のシリカでクラッディングされた生成物をクラッディングされていないアルミナの生成物または含浸法または共沈法でつくられた同じ重量%のシリカを含むシリカ−アルミナ生成物と直接比較すると、本発明のシリカでクラッディングされたアルミナの粒子はこれらの従来の含浸法または共沈法によってつくられた生成物に比べ硫黄への耐性が優れていることが示される。
【0067】
得られるシリカでクラッディングされたアルミナの粒子は、特に1〜200μm、好ましくは10〜100μmの粉末の形である場合、表面積の小さい基質の上の触媒皮膜としてさらに使用することができる。この基質構造物は特定の用途に応じて種々の形から選ぶことができる。このような構造物の形には一体成形体、蜂の巣形、針金の網等が含まれる。基質構造物は通常難熔性(refractory)材料、例えばアルミナ、シリカアルミナ、シリカ−マグネシア−アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージエライト、並びに針金の網等からつくられる。金属の蜂の巣形の基質も使用することができる。粉末を水中においてスラリ化し、少量の酸(好ましくは鉱酸)を加えて解膠し、ミリングしてウォッシュコートとして適用するのに適した細かい粒径にする。例えば基質をスラリの中に浸漬することにより基質構造物をミリングしたスラリと接触させる。例えば空気を吹き付けて過剰の材料を除去した後、皮膜で被覆した基質構造物をカ焼して、本発明のシリカがクラッディングされた高表面積のアルミナ粒子を、基質構造物への付着(ウォッシュコート)に至らせる。
【0068】
貴金属、通常は白金族の金属、例えば白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物は、シリカでクラッディングされたアルミナ粒子をウォッシュコートする前に適当な通常の貴金属前駆体(酸性または塩基性)を用いて、あるいはウォッシュコートした後にウォッシュコートされた基質を適当な貴金属前駆体溶液(酸性、または塩基性)の中に浸漬して、当業界の専門家に公知の方法で適用することができる。
【0069】
別法として、クラッディングをしない高表面積のアルミナを選ばれた基質の上にウォッシュコートした後、上記の方法でシリカをクラッディングすることができる。基質の上に含まれた、シリカでクラッディングされた得られたアルミナを次に適当な貴金属前駆体溶液(酸性または塩基性)に浸漬して貴金属を適用することができる。
【0070】
好適な方法は先ずシリカでクラッディングされたアルミナをつくり、次に貴金属を適用し、最後に材料を基質の上にウォッシュコートする方法である。
【0071】
シリカでクラッディングされた生成物をアルミナ、マグネシア、セリア、セリア−ジルコニア、希土類酸化物−ジルコニア混合物等と混合した後、これらの生成物を基質の上にウォッシュコートすることにより付加的な機能を賦与することができる。
【0072】
得られた触媒を直接キャニスタまたは類似物の中に単独で或いは他の材料と組み合わせ内燃機関の排ガス放出系の一部として装填する。このようにして、通常酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、硫黄、硫黄化合物および酸化硫黄を含んで成る排出生成物を排ガス系を通し貴金属が支持された触媒と接触させる。その結果有害で危険な排出生成物を環境に許容される材料に変えることができる。本発明の支持体を用いてつくられた触媒を使用する場合、通常の共沈法または含浸法でつくられたシリカを含まないかまたはシリカ−アルミナを用いた支持体を有する触媒によって達成されるよりも活性期間が長く全体としての活性が高い触媒系を得ることができる。
【0073】
下記の実施例は本発明の特定の例として与えられたものである。しかし本発明はこれらの実施例に記載された特定の詳細点に限定されるものではない。これらの実施例および本明細書の他の部分において特記しない限りすべての割合は重量によるものとする。
【0074】
さらに、本明細書および特許請求の範囲に記載された数値の範囲、例えば特定の組の性質、測定単位、条件、物理的状態または百分率は文献その他によって文字通り明示的に本明細書に組み入れることを意図したものであり、任意の数値はこのように引用された範囲内の数値のサブセットを含めこのような範囲に入るものとする。
【0075】
[実施例]
【実施例1】
【0076】
公称30重量%のシリカをクラッディングしたアルミナを次のようにしてつくった。市販のランタナ(4.0重量%)をドーピングした80gのγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−386)を、800gの脱イオン水を用いてスラリにした。このスラリを97℃に加熱し、この温度に1時間保った。別に、150ccの脱イオン水を150ccの珪酸ナトリウム(SiO26重量%)と混合して50容積%の珪酸ナトリウムの溶液をつくった。50容積%の珪酸ナトリウム溶液約213gを流量3cc/分でアルミナのスラリの中に圧入した。得られた混合物のpHは10であった。撹拌しながらスラリの温度を30分間95℃に保った。次に1MのHCl溶液をpHが7.5に達するまで流量6cc/分で加えた。このスラリを95℃で1時間熟成し、60℃に冷却した。スラリの約1/3を硝酸アンモニウムの1%溶液1Lで洗滌し、残留しているNaを除去した。得られたフィルターケーキを脱イオン水の中で再びスラリ化し、100℃で乾燥した。この噴霧乾燥した粉末を700℃で2時間カ焼した。
【0077】
カ焼した粉末はBET表面積が180m/gであった。試料50mgを熱重量分析器(TGA)に装入し硫酸塩化試験を行った。最初に試料を107.5cc/分のHeガスに300℃において1時間接触させた。この処理後、SO(SO1.14%)を含むHeを5cc/分で導入し、同時にOを12.5cc/分で導入した。全体の流量は125cc/分であり、SOの濃度は456ppmであった。硫黄の取込みの測定は全時間に亙って行った。120分後硫黄の取込みは、それがなくなることによって示されるように平衡に達した。試料の硫黄の取込み量(SU)は0.0%であり、NSUは試料1m当たり0.0μgであった。結果を下記表1に示す。
【実施例2】
【0078】
50部の市販のドーピングしないγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−307 アルミナ)を572.3部の脱イオン水中でスラリ化することに
より公称5.0重量%のシリカをクラッディングしたアルミナをつくった。酸処理、洗滌および乾燥は実施例1と同様に行ったが、17.86部の50容積%珪酸ナトリウム溶液を用いた。
【0079】
表面積(BET)は166m/gと決定された。硫黄の取込み量(SU)は実施例1と同様にして測定した。この試料のSUは0.17重量%であり、NSUは試料1m当たり10.2μgであった。結果を下記表1に示す。
【実施例3】
【0080】
7%のシリカでクラッディングしたアルミナを実施例1と同様にしてつくり試験したが、使用したアルミナは市販のドーピングしないδ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−407)であった。この試料のBET表面積は123m/gであり、硫黄の取込み量(SU)は0.05重量%であり、NSUは試料1m当たり4.1μgであった。結果を下記表1に示す。
【実施例4】
【0081】
47部のγ−アルミナ(4%のランタナをドーピングしたGrace Davison
Grade MI−386)を540部の脱イオン水中でスラリ化することにより公称10重量%のシリカを含むアルミナ(50gのバッチ)をつくった。酸処理、洗滌および乾燥は実施例1と同様に行ったが、17.86部の50容積%珪酸ナトリウム溶液を用いた。実施例1と同様にして試料を試験した。BET表面積は168m/gと決定された。硫黄の取込み量(SU)は0.03重量%であり、NSUは試料1m当たり1.6μgであった。結果を下記表1に示す。
【実施例5】
【0082】
アルミナ上に10.7%のシリカを含むバッチ300gを次のようにしてつくった。284.4gのγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−307;ドーピングせず)を3240gの脱イオン水中でスラリ化した。別に、300mlの脱イオン水を300mlの珪酸ナトリウム(26%)と混合した。この希薄な珪酸ナトリウム混合物214.3gを95℃においてアルミナのスラリに加えた。添加速度は6cc/分であった。すべての珪酸塩を添加した後、この混合物を撹拌しながら30分間95℃に保った。次いでこの溶液を酸性にし、実施例1に記載したようにして洗滌、乾燥してカ焼した。
【0083】
実施例1と同様にして試料を試験した。試料のBET表面積は147m/gであった。硫黄の取込み量(SU)は0.01重量%であり、NSUは試料1m当たり0.7μgであった。結果を下記表1に示す。
【実施例6】
【0084】
42部のγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−386;4%のランタナをドーピングしたアルミナ)を482部の脱イオン水中でスラリ化してアルミナ上に21.6%のシリカを含むバッチ(50g)をつくった。酸処理、洗滌および乾燥は実施例1と同様に行ったが、71.43部の50容積%珪酸ナトリウム溶液を用いた。
【0085】
実施例1と同様にして試料を試験した。試料のBET表面積は157m/gであった。硫黄の取込み量(SU)は0.0重量%であり、NSUは試料1m当たり0.0μgであった。結果を下記表1に示す。
【実施例7】
【0086】
40部のγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−307;ドーピングせず)を450部の脱イオン水中でスラリ化してアルミナ上に29.6%のシリカを含むバッチをつくった。酸処理、洗滌および乾燥は実施例1と同様に行ったが、106.5部の50容積%珪酸ナトリウム溶液を用いた。
【0087】
実施例1と同様にして試料を試験した。試料のBET表面積は115m/gであった。硫黄の取込み量(SU)は0.0重量%であり、NSUは試料1m当たり0.0μgであった。結果を下記表1に示す。
【実施例8】
【0088】
1466.2部のアルミナ(Grace Davison Grade MI−107;ドーピングしないベーマイト・アルミナ;固体分73.66%)を12,800部の脱イオン水中でスラリ化してアルミナ上に11.8%のシリカを含むバッチをつくった。酸処理は実施例1と同様に行ったが、HClの代りに1.2Nの硝酸を用いた。洗滌および乾燥は実施例1と同様に行った。試料を750℃において4時間カ焼した。
【0089】
実施例1と同様にして試料を試験した。試料のBET表面積は314m/gであった。硫黄の取込み量(SU)は0.17重量%であり、NSUは試料1m当たり5.3μgであった。結果を下記表1に示す。
【実施例9】
【0090】
779.2部のアルミナ(Grace Davison Grade MI−186;4%のランタナをドーピングしたベーマイト・アルミナ;固体分69.3%)を6350部の脱イオン水中でスラリ化してアルミナ上に11.3%のシリカを含むバッチをつくった。酸処理は実施例1と同様に行ったが、HClの代りに1.2Nの硝酸を用いた。洗滌および乾燥は実施例1と同様に行った。試料を750℃において4時間カ焼した。
【0091】
実施例1と同様にして試料を試験した。試料のBET表面積は321m/gであった。硫黄の取込み量(SU)は0.23重量%であり、NSUは試料1m当たり7.2μgであった。結果を下記表1に示す。
【0092】
下記の実施例は対照の目的だけのために示すものであり、本発明を例示するものではない。
【対照実施例1】
【0093】
上記実施例1に記載された標準的な硫黄取込み試験を用い、市販のランタナ(4重量%)をドーピングしたγ−アルミナ(Grace Davison Grade MI−386)の硫黄の取込みを試験した。試料のBET表面積は178m/g、細孔容積は0.77cc、硫黄の取込み量(SU)は1.42重量%であり、NSUは試料1m当たり79.8μgであった。この結果もまた下記表1に示す。
【対照実施例2】
【0094】
上記対照実施例1と同様な方法で市販のγ−アルミナ(ドーピングせず)(Grace
Davison Grade MI−307)の硫黄の取込みを試験した。試料のBET表面積は172m/g、細孔容積は0.77cc、硫黄の取込み量(SU)は1.1重量%であり、NSUは試料1m当たり64.0μgであった。この結果もまた下記表1に示す。
【対照実施例3】
【0095】
上記対照実施例1と同様な方法で市販のδ−アルミナ(ドーピングせず)(Grace Davison Grade MI−407)の硫黄の取込みを試験した。試料のBET表面積は123m/g、硫黄の取込み量(SU)は0.66重量%であり、NSUは試料1m当たり53.6μgであった。この結果もまた下記表1に示す。
【対照実施例4】
【0096】
通常の共沈法によりつくられたアルミナ(Grace Davison Grade MI−120)中に5.5%のシリカを含む市販品を硫黄の取込みについて試験した。試料のBET表面積は265m/g、硫黄の取込み量(SU)は0.65重量%であり、NSUは試料1m当たり24.50μgであった。この結果もまた下表1に示す。
【対照実施例5】
【0097】
アルミナ中に公称10%のシリカを含む市販品(Condea Grade Siral 10)を700℃で2時間カ焼した後に、硫黄の取込みについて試験した。試料のBET表面積は225m/g、硫黄の取込み量(SU)は0.55重量%であり、NSUは試料1m当たり24.2μgであった。この結果もまた下記表1に示す。
【対照実施例6】
【0098】
通常の共沈法でつくられたアルミナ中に公称30重量%のシリカを含む市販品(Grace Davison Grade MI−130)を700℃でカ焼した。試料のBET表面積は350m/g、硫黄の取込み量(SU)は0.70重量%であり、NSUは試料1m当たり20.0μgであった。この結果もまた下記表1に示す。
【対照実施例7】
【0099】
公称30重量%のシリカを含むアルミナを次にようにしてつくった。65.3部の市販のベーマイト・アルミナ粉末(Davison Grade MI−107;全固体分=75%)210部の脱イオン水中でスラリ化し、十分に混合した。このスラリに70部の市販のコロイド状シリカ(30重量%のシリカを含むLudox Grade AS−30)を含浸させて十分に混合した。スラリを噴霧乾燥し、700℃で2時間カ焼した。試料のBET表面積は250m/g、硫黄の取込み量(SU)は1.07重量%であり、NSUは試料1m当たり42.8μgであった。この結果もまた下記表1に示す。
【対照実施例8】
【0100】
次のようにして32.4%のシリカで被覆されたアルミナをつくった。3.68部のγ−アルミナ粉末(Davison Grade MI−386)を市販のコロイド状シリカ(Ludox Grade AS−40、シリカ分40%)3.75部で一定の速度で撹拌しながら含浸させる。試料を乾燥用オーブンの中で100℃において乾燥させ、700℃で2時間カ焼する。試料のBET表面積は150m/g、硫黄の取込み量(SU)は0.8重量%であり、NSUは試料1m当たり53.3μgであった。この結果もまた下記表1に示す。
【0101】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約0.2cc/gの高い多孔度、20m/gより大きい表面積を有するアルミナの芯の粒子を含んで成り、該アルミナの芯の表面上にシリカのクラッディングを有する構造物であって、該構造物は約1〜約40重量%のシリカを含み、正規化された硫黄取込み量(NSU)は最高15μg/mであることを特徴とする構造物。
【請求項2】
該粒子は、平均粒径が1〜200μmであり、BET表面積が約20〜400m/gであるアルミナの芯を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項3】
該粒子はBET表面積が100〜300m/gであり、窒素による細孔容積が0.2〜2cc/gであるアルミナの芯を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の構造物。
【請求項4】
該構造物は、平均粒径が1〜10mmであり、BET表面積が約20〜400m/gである粒子から構成されていることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項5】
アルミナの芯はさらに該アルミナに関し最高約10重量%のドーピング剤を含んで成っていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の構造物。
【請求項6】
該芯はバヤライト、ベーマイト、ギッブサイト、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナまたはこれらの混合物から選ばれるアルミナを含んで成っていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の構造物。
【請求項7】
アルミナの芯はγ−アルミナを含んで成っていることを特徴とする請求項6記載の構造物。
【請求項8】
シリカのクラッディングは該構造物の5〜30重量%をなしていることを特徴とする請求項6記載の構造物。
【請求項9】
シリカのクラッディングは該構造物の5〜30重量%をなしていることを特徴とする請求項7記載の構造物。
【請求項10】
シリカのクラッディングは該構造物の8〜20重量%をなしていることを特徴とする請求項6記載の構造物。
【請求項11】
シリカのクラッディングは該構造物の8〜20重量%をなしていることを特徴とする請求項7記載の構造物。
【請求項12】
該構造物は約8〜15重量%のシリカのクラッディングを有し、またNSUが10μg/mより小さいことを特徴とする請求項5記載の構造物。
【請求項13】
該構造物は約8〜15重量%のシリカのクラッディングを有し、またNSUが10μg/mより小さいことを特徴とする請求項6記載の構造物。
【請求項14】
該構造物は約8〜15重量%のシリカのクラッディングを有し、またNSUが10μg/mより小さいことを特徴とする請求項7記載の構造物。
【請求項15】
放出物抑制用の貴金属触媒に対する支持体成分として有用なアルミナ粒子の構造物をつくる方法であって、該方法は5〜50重量%のアルミナ粒子を含んで成る水性スラリをつ
くり;該スラリを温度50〜100℃に加熱し;該スラリを5〜30重量%の水溶性珪酸塩を有する水溶液と接触させてそれらの混合物をつくり;該混合物を1〜120分の間50〜100℃の温度に保ち;該混合物に水溶性の酸を添加開始から5〜240分の間に亙り実質的に均一に加えてpHを7.5にし、得られた混合物のpHが5〜8になるのに十分な量の酸をさらに加え;1〜40重量%のシリカをその上にクラッディングの形で有する高表面積のアルミナの芯を含んで成る乾燥した粉末を分離し回収することを特徴とする方法。
【請求項16】
珪酸塩(SiOとして)対アルミナの重量比が1:99〜40:60になるような量で珪酸塩の水溶液をアルミナの水性スラリと接触させることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
水溶性の酸は少なくとも1種の無機鉱酸から選ばれ、添加開始から30〜60分の間にpHが7.5になるように酸を均一に導入し、得られた混合物のpHが7〜8になるようにすることを特徴とする請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
珪酸塩はアルカリ金属の珪酸塩であり、分離は洗滌を行って該混合物からアルカリ金属を除去して乾燥することを含んで成ることを特徴とする請求項15または16記載の方法。
【請求項19】
該スラリのアルミナ粒子はBET表面積が少なくとも20m/gであり、平均粒径が1〜200μmであり、その中に0〜10重量%のドーピング剤を含んでおり;水溶性の珪酸塩は該溶液の10〜30重量%のアルカリ金属珪酸塩から選ばれ;分離は硝酸の、硫酸の、炭酸の、水酸化物のまたは塩化物のアンモニウム塩から選ばれる試薬で得られた混合物を洗滌することを含んで成り;得られた生成物を400〜1000℃の温度でカ焼することを特徴とする請求項15または16記載の方法。
【請求項20】
該スラリのアルミナ粒子はBET表面積が少なくとも20m/gであり、平均粒径が1〜200μmであり、その中に0〜10重量%の沈澱を含んでおり;水溶性の珪酸塩は該溶液の10〜30重量%のアルカリ金属珪酸塩から選ばれ;分離は硝酸の、硫酸の、炭酸の、水酸化物のまたは塩化物のアンモニウム塩から選ばれる試薬で得られた混合物を洗滌することを含んで成り;得られた生成物を400〜1000℃の温度でカ焼することを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項21】
請求項1、2、3または4記載の支持体を含んで成り、該支持体はその上に触媒量の貴金属が実質的に均一に分布していることを特徴とする触媒組成物。
【請求項22】
請求項5記載の支持体を含んで成り、該支持体はその上に触媒量の貴金属が実質的に均一に分布していることを特徴とする触媒組成物。
【請求項23】
請求項7記載の支持体を含んで成り、該支持体はその上に触媒量の貴金属が実質的に均一に分布していることを特徴とする触媒組成物。
【請求項24】
請求項8記載の支持体を含んで成り、該支持体はその上に触媒量の貴金属が実質的に均一に分布していることを特徴とする触媒組成物。
【請求項25】
請求項10記載の支持体を含んで成り、該支持体はその上に触媒量の貴金属が実質的に均一に分布していることを特徴とする触媒組成物。
【請求項26】
貴金属は白金、パラジウムまたはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項
21記載の触媒。
【請求項27】
貴金属は白金、パラジウムまたはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項22記載の触媒。
【請求項28】
貴金属は白金、パラジウムまたはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項23記載の触媒。
【請求項29】
貴金属は白金、パラジウムまたはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項24記載の触媒。
【請求項30】
貴金属は白金、パラジウムまたはそれらの混合物を含んで成ることを特徴とする請求項25記載の触媒。

【図1】
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【公表番号】特表2010−505725(P2010−505725A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531378(P2009−531378)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/019799
【国際公開番号】WO2008/045175
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】