説明

硫黄含有末端基を除去するための方法

本発明は、ある種の硫黄含有基をポリマー、特にRAFT重合方法によって作製されたものから除去するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種の硫黄含有基をポリマー、特にRAFT重合方法によって作製されたものから除去するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
予想通りに制御して、具体的に所望の構造を有するポリマーを生成することができる重合方法の開発への関心が高まっている。このような結果を実現するための手段の1つは、リビング重合方法を経由する。このような方法は、通常の重合方法によって作製されたポリマーに比べて高い制御度を、予想通りに明確に定義された構造および特性を有するポリマーの合成中に提供する。
【0003】
RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)などの制御ラジカル重合方法は、リビング重合方法の有用な実施形態を提供する。ザンテートまたはジチオカルバマート連鎖移動RAFT剤を有するRAFT方法は、(特許文献1)に開示されている。ジチオエステルまたはトリチオカーボナート連鎖移動剤を使用するRAFT方法は、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、および(特許文献5)に開示されている。
【0004】
RAFT方法によって生成されたポリマーは、これらの方法で使用される連鎖移動剤から誘導される末端基を有する。ザンテート、ジチオカルバマート、ジチオエステル、またはトリチオカーボナート連鎖移動剤を使用するRAFTによって誘導されたポリマーについて、ポリマー鎖はそれぞれ、ザンテート、ジチオカルバマート、ジチオエステル、またはトリチオカーボナート官能基を含む少なくとも1つの末端基を含む。RAFTによって誘導されたポリマーの最終使用用途では、これらの官能基を除去し、水素で置換することが望ましい場合がある。
【0005】
(特許文献6)は、ポリマーをフリーラジカルの供給源および不安定水素原子を有する有機化合物と接触させることによって、有機リビングポリマーの鎖末端上のジチオカルボニル化またはジチオリン酸化官能基を水素原子で置換するための方法を開示している。
【0006】
(特許文献5)、(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)、および米国特許公報(特許文献9)は、RAFT連鎖移動剤の硫黄含有部分をポリマー末端部から除去するためのいくつかの方法を開示している。
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/31144号パンフレット
【特許文献2】国際公開第98/01478号パンフレット
【特許文献3】国際公開第200500319号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005000924号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005000923号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/090397号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005003192号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願第10/407,405号明細書
【特許文献9】米国特許出願第10/609,225号明細書
【特許文献10】国際公開第01/77198号パンフレット
【非特許文献1】J. Cabralら、J. Am. Chem. Soc. 1986年、108巻、4672頁
【非特許文献2】D. H. R. Bartonら、Tetrahedron Letters、1992年、33巻、5709頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最初に溶媒の変更またはポリマー生成物の単離をすることなく、RAFTポリマー上で実施することができるRAFT末端基除去方法が依然として必要とされている。末端基を含まないポリマーを容易に単離することが可能になるRAFT末端基除去方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、官能基−SC(S)Xを−Hで置換するための方法であって、官能基−SC(S)Xを含むポリマーを次亜リン酸の塩およびラジカル開始剤と接触させる工程を含み
Xは、R、OR、N(R、SR、またはP(O)(ORであり、
Rは、置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のC〜C25アルケニル;置換または非置換のC〜C25アルキニル;置換または非置換のフェニル;置換または非置換のナフチル;および置換または非置換のベンジルであり、かつ
、R、R、およびRは、置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のC〜C10アリール;3〜8員の炭素環または複素環であり、または
N(Rは、3〜8員の複素環である、
ことを特徴とする方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(用語の定義)
「ラジカル開始剤」は、穏やかな条件下でラジカル種を生成し、ラジカル反応を促進することができる物質を意味する。典型的例としては、過酸化物、アゾ化合物、およびハロゲンがある。
【0011】
「窒素塩基」は、窒素を含有する塩基性化合物を意味する。
【0012】
本明細書では、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、または他のその変形は、非排他的包含を取り扱うことを意図している。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されないが、明白に挙げられていないまたはこのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことがある。さらに、これに対して別段の明白な記載のない限り、「または」は、包括的なまたはであり、排他的なまたはではない。例えば、AまたはBという条件は、下記のいずれかによって満たされる。Aは真であり(または存在する)、かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)、かつBは真である(または存在する)、ならびにAもBも共に真である(または存在する)。
【0013】
また、本発明の要素および成分を記述するのに「a」または「an」の使用を用いる。これは、便宜上かつ本発明の一般的な語義を与えるために行われるに過ぎない。この記述は、1つまたは少なくとも1つを包含するように解釈されるべきであり、単数形は、別段の意味が明白でない限り、複数形も包含する。
【0014】
別段の定義のない限り、本明細書で使用する技術および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の技術者によって通常は理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様な、またはそれに等しい方法および材料を、本発明の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および材料を下記に記載する。本明細書に記載する刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、参照によりその全体が組み込まれる。対立する場合は、定義を含めて本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0015】
RAFT重合方法で使用する連鎖移動剤の多くは、RAFTによって誘導されるポリマーに少なくとも1つの硫黄含有末端基をもたらす。通常は、硫黄含有末端基は、構造−SC(S)X(式中、Xはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミン基、またはアルキルチオ基である)を有する。RAFTポリマーの最終使用用途には、硫黄含有末端基を適切な位置に残すことができるものがある。他の最終使用用途では、硫黄によって誘導された末端基を除去し、水素原子で置換することが望ましい。同様に、対称トリチオカーボナートを使用するRAFT方法によって生成するような、ポリマー主鎖中に存在する硫黄含有基を除去することが望ましいことがある。
【0016】
本発明は、官能基−SC(S)Xを−Hで置換するための簡易な方法であって、官能基−SC(S)Xを含むポリマーを次亜リン酸の塩およびラジカル開始剤と接触させる工程を含み、
Xは、R、OR、N(R、SR、またはP(O)(ORであり、
Rは、置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のC〜C25アルケニル;置換または非置換のC〜C25アルキニル;置換または非置換のフェニル;置換または非置換のナフチル;および置換または非置換のベンジルであり、かつ
、R、R、およびRは、置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のC〜C10アリール;3〜8員の炭素環または複素環であり、あるいは
N(Rは、3〜8員の複素環である、
ことを特徴とする方法を提供する。
【0017】
適切な置換基には、アルキル、アリール、エーテル、Cl、Br、F、およびシリル置換基が含まれる。
【0018】
適切な次亜リン酸の塩には、カチオンがプロトン化された窒素塩基またはテトラ−アルキルアンモニウムである塩が含まれる。
【0019】
本発明の方法は、硫黄含有基をきれいに除去し、最初にRAFTポリマーを単離することなく実施することができる。多くの場合、RAFT重合方法が実施された同じ溶媒中で実施することができる。多くの場合、ポリマーは極性溶媒中で塩より可溶性でないので、次亜リン酸の窒素塩基塩の使用により、末端基を含まないポリマーの精製が簡易になることも可能である。
【0020】
本発明の方法では、例えば(特許文献2)、(特許文献1)、(特許文献10)、(特許文献3)、(特許文献4)、または(特許文献5)に記載されるように、官能基−SC(S)Xを含むポリマーは、RAFT重合方法の生成物とすることができる。
【0021】
官能基−SC(S)Xは、ポリマーを調製するために使用する(コ)モノマーの1つまたは複数上の官能基として生じることもできる。
【0022】
本発明の一実施形態では、次亜リン酸の塩は、次亜リン酸HPOを窒素塩基と反応させることにより形成する。窒素塩基は、第一級、第二級、または第三級の窒素塩基、およびアンモニウム塩の群から選択される。適切な第三級窒素塩基には、トリアルキルアミン、ダブコ(Dabco)(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、N−アルキルピペリジン、モルホリン、およびその誘導体、ならびに芳香族基で置換された第三級アミンが含まれるが、これらに限定されない。アルキル基および芳香族基を酸素などのヘテロ原子で置換することができる。過剰な試薬により副生物が生じる恐れがあるので、第一級および第二級アミンを完全に第四級化することが重要である。
【0023】
本発明の別の実施形態では、次亜リン酸の塩はテトラアルキルアンモニウム塩である。適切なアンモニウム塩には、テトラ−アルキルアンモニウムR’、およびアルキル置換された次亜リン酸グアニジニウム塩(式中、R’はC〜C18アルキルである)が含まれる。R’POの例は、(非特許文献1)によって開示されている。
【0024】
通常は50%水溶液として提供される次亜リン酸を、有機溶媒(例えば、トルエン)中で窒素塩基と混合し、水を減圧下で除去して、塩を形成することができる。次いで、ポリマーから−SC(S)X官能基を除去するための水性または非水性の方法で、塩を使用することができる。あるいは、次亜リン酸および窒素塩基を別々に、反応混合物に添加して、塩をin situで形成することができる。試薬が水にわずかにしか可溶性でない場合、非水系が好ましい可能性がある。次亜リン酸の塩および第三級窒素塩基を調製するための一般的手順は、(非特許文献2)に開示されている。
【0025】
この方法は、圧力拘束によって制限されず、大気圧で、大気圧未満で、かつ大気圧超で実施することができる。低沸点または超臨界の媒体を含む点を除いて、圧力容器を操作する上で特定の利点はない。反応成分(基材、次亜リン酸の塩、およびラジカル供給源)は、反応段階中に少なくとも部分溶解性を示さなければならない。溶解速度論は、使用温度におけるラジカル発生剤の寿命と一致しなければならない。したがって、反応媒体は、有機液体、水、またはCOなどの超臨界流体とすることができる。生成物の単離および精製の方法を生成物使用の要件によって決定する。一部の用途については、末端基および試薬残渣および共生成物を、ほぼ完全に除去することが好ましい。例えばイオン交換カラム上での吸着を含めて、通常の二相分配技法を使用して、本発明の好ましい次亜リン酸の塩により、実用的な精製が可能になる。有用な反応温度は、ラジカル開始剤および炭素−硫黄結合開裂速度論によって支配される。適切な温度は、約25℃〜約150℃、好ましい範囲は50〜120℃である。
【実施例】
【0026】
下記の実施例は、本発明のいくつかの特徴および利点を例示している。これらは、本発明の例示を意図するためのものであって、限定するものではない。別段の示唆のない限り、百分率はすべて、重量による。
【0027】
(使用する化学薬品およびモノマーの定義(商業的供給源))
PGMEA=プロピレングリコールメチルエーテルアセタート(シグマ−アルドリッチケミカル、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Sigma−Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI.))
MAMA=メチルアダマンチルメタクリラート(出光、東京(Idemitsu Japan, Tokyo, Japan))
【0028】
【化1】

【0029】
α−GBLMA=α−メタクリルオキシ−γ−ブチロラクトン(ENFケミカル、韓国ソウル(ENF Chemical, Seoul, South Korea))
【0030】
【化2】

【0031】
β−GBLMA=β−メタクリルオキシ−γ−ブチロラクトン(ENFケミカル、韓国ソウル(ENF Chemical, Seoul, South Korea))
【0032】
【化3】

【0033】
PinMAc=2−メチル−2−プロペン酸、2−ヒドロキシ−1,1,2−トリメチルプロピルエステル[CAS登録番号 97325−36−5]
【0034】
【化4】

【0035】
HAdMA=3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリラート(出光、東京(Idemitsu Japan, Tokyo, Japan))
【0036】
【化5】

【0037】
NBLMA=(JSR、東京(JSR Corporation, Tokyo, Japan))
【0038】
【化6】

【0039】
2,3−NBFOHMAc=3−(2,2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシエチル)−エンド−2−(2−メチルプロペノイル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン
【0040】
【化7】

【0041】
THF=テトラヒドロフラン(シグマ−アルドリッチケミカル、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Sigma−Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI.))
バゾ(Vazo)(登録商標)67=2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)(本願特許出願人、米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington, DE))
バゾ(Vazo)(登録商標)88=1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)
[CAS登録番号 2094−98−6] (本願特許出願人、米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington, DE))
1−エチルピペリジンヒポホスフィット([CAS登録番号 145060−63−5]、シグマ−アルドリッチケミカル、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Sigma−Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI.)
PBA=ポリブチルアクリレート
PMMA=ポリメチルメタクリラート
PS=ポリスチレン
【0042】
(キャラクタリゼーション方法)
トリプル検出方法を用いたサイズ排除クロマトグラフィーは、ウォーターズコーポレーション(Waters Corporation)(米国マサチューセッツ州ミルフォード(Milford, MA))のSECシステムモデルアライアンス(Model Alliance)2690(商標)を、ウォーターズ(Waters)410(商標)屈折率検出器(DRI)と、静的直角光散乱および示差毛管粘度計検出器を組み込んだビスコテックコーポレーション(Viscotek Corporation)(米国テキサス州ヒューストン(Houston, TX))のモデルT−60A(Model T−60A)(商標)デュアル検出器モジュールと共に使用して実施した。3つの検出器すべて(屈折計、粘度計、および光散乱光度計(直角))からのデータを組み込んで、ビスコテック(Viscotek)のTrisec(登録商標)GPCバージョン3.0を用いて、データ整理を行った。角度非対称光散乱較正には、Flory−Foxの式を使用した。クロマトグラフィー用カラムはすべて、ポリマーラボラトリーズ(Polymer Laboratories)(英国チャーチストレットン(Church Stretton,UK))から入手した。2本のPLゲル混合C線形カラム、およびポリマー分布の低分子量領域において分解能(resolution)を改善するための1本のPLゲル500Aカラム。移動相は、J.Tベーカー、米国ニュージャージー州フィリップスバーグ(J.T Baker,Phillipsburg,NJ)からの、0.05%BHTで安定化したTHFであった。
【0043】
(トリエチルアミンヒポホスフィットの調製)
次亜リン酸(6.6gの50%水溶液)およびトルエン(30mL)の混合物を氷冷し、トリエチルアミン(5.0g)を滴下して処理した。水を、真空下で共沸蒸留によって除去し、次いで残留トルエンを蒸発させて、ほぼ無色の粘性オイル7.85g(約95%)を得た。
【0044】
H NMR(CDCl):7.15(d,a=12.2),4.4(bd, a=6.2),3.00(q,a=31.1),1.25(t,a=49.9). 31P NMR(H デカップリング):4.18(s)。H NMR(CDCN):7.62(s,a=4.91),6.63(s,a=4.90),3.04(q,a=26.4),2.78(bd s,交換可能H+HO),1.29(t,a=39.6)。31P NMR(H デカップリング):3.0(s)。これらのスペクトルは、所望の物質に一致している。
【0045】
(PinMAcの調製)
サーモウェル、撹拌棒、および還流冷却器を備えた三ツ口丸底フラスコに、PPNクロリド(ビス(トリフェニルホスフィン)−イミニウムクロリド、6.0g、10.5mmol)、メタクリル酸(104g、1.19mol)、およびテトラメチルオキシラン(250g、2.5mol)を加えた。得られた溶液を90℃で24時間加熱した。GC分析は、エポキシドと1/1−付加体の比が0.37であり、1/1付加体と2/1付加体の比が67/1であることを示した。NMRにより、メタクリル酸の本質的に完全な転換が判明した。過剰のエポキシドを真空下で除去し、生成物を、小型の短経路蒸留ヘッドを使用した蒸留によって単離した。沸点42〜47℃/0.05mmの中央分画(200.1g)を得た。全生成物の収量は204g(92.3%)と推定された。H NMR(C):5.96(m,1H),5.13(m,1H),3.00(bd s, 1H),1.73(dd,J=約1.2Hz,3H),1.445(s,6H), 1.10(s,6H)は、所望のメタクリル酸エステル(PinMAc)に一致した。
【0046】
(エキソ−2−(2,2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシエチル)−エンド−3−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、およびエキソ−2−(2,2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシエチル)−エキソ−3−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの調製。ジオールのジアステレオマー混合物をもたらす逐次添加方法)
サーモウェル、オーバーヘッドスターラ、セプタム、およびNインレットを備えた三ツ口フラスコに、ノルカンファー(22.0g、200mmol)、およびt−ブチルメチルエーテル(50mL)を加えた。溶液を−15℃に冷却し、カニューレによってヘキサフルオロブテンエポキシド(41g、228mmol)で処理し、次いでリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(36.8g、220mmol)の2/1t−ブチルメチルエーテル/ヘプタン溶液を、温度が−15℃に維持されるのに十分な速度で滴下した。混合物を、−15℃で15分間撹拌し、次いで0℃にまで暖めて、40分間撹拌した。さらに、混合物を室温にまで暖め、次いで発熱反応が起こったときに28.5℃になった。反応を室温に戻して、混合物をさらに1.75時間撹拌した。得られたヘミケタールのリチウム塩を、下記の通り水素化ホウ素リチウムで処理して直接低減した。
【0047】
上記の反応混合物を約0℃に冷却し、水素化ホウ素リチウム(1.45g、66.7mmol)のTHF(10mL)溶液を滴下して処理した。混合物を0℃で30時間撹拌し、次いで徐々に室温に暖めるまで放置し、次いで周囲温度で16時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、水(5mL)で滴下し、次いで100mLの2N HClを滴下して処理した。混合物を室温にまで暖め、さらにHClを添加してpHを約5に調整した。有機層を分離し、乾燥し(NaSOおよびMgSOを使用して)、ストリッピングして、69gの原油を得た。
【0048】
クーゲルロール(Kugelrohr)蒸留により、80℃〜105℃(0.05mm)で収集した生成物が49.1g得られた。19F NMR分析により、ジオールの異性体混合物(異性体比=75/25)で、純度が約95%であることが判明した。H NMR分析は、3.8(m,a=0.7),3.28〜3.2 (m,a=5.3)におけるシグナルを特徴とした。蒸留した材料を熱ヘキサン(約75mL)で、時々撹拌しながら段々に−10℃まで冷却して結晶化して、第1の収穫物41.5gを得た。19F NMR(C):2組のカルテット、−74.83と−79.10(J=9.8;a=32.3)、および−76.79と−78.73(J=9.8;a=100)。
【0049】
H NMR:7.02(s,a=0.24),5.35(s,a=0.76), 3.22(m)および3.17(d,J=6.6Hz、合わせてa=1.00; これらの2本のシグナルの比は75/25である)、2.1〜0.52(一連のm、合わせてa=12.6);3.22および3.17におけるシグナルはCHOHに帰属される;低磁場のシングレットは、フルオロアルコールOH基に帰属する。
【0050】
(エキソ−3−(2,2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシエチル)−エンド−2−(2−メチルプロペノイル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、およびエキソ−3−(2,2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシエチル)−エキソ−2−(2−メチルプロペノイル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの調製)
上記に記載するように調製したエキソ−2−(2,2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(異性体の混合物、11.68g、40.0mmol)のt−ブチルメチルエーテル(40mL)溶液を−15℃に冷却し、カリウムt−ブトキシド(9.42g、80mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を、温度を−10℃未満に維持しながら滴下して処理した。混合物を−15℃で10分間撹拌し、次いで注射器で無水メタクリル酸(6.78g、44mmol)を滴下して処理した。混合物を−15℃で1時間撹拌し、次いで0℃に3時間暖めた。20mLの2N HClを滴下することにより反応を止めた。混合物は2層をなし、下層のpHを約6〜7に調整し、層を分離した。上(有機)層をt−ブチルメチルエーテルで希釈し、重炭酸ナトリウムで2回洗浄して、メタクリル酸を除去し、次いで蒸留水で洗浄した。有機層を乾燥し、メトキシフェノール(30mg)およびフェノチアジン(50mg)を添加した。溶媒をストリッピングして、15gの粗生成物を得、80/20 ヘキサン/t−ブチルメチルエーテルを使用して、中性アルミナカラム(4インチ×3/4インチ)に通した。最初の250mLの溶離液を蒸発させると、11.1gの無色液体が得られた。フェノチアジン(50mg)を安定剤として添加した。クーゲルロール(Kugelrohr)蒸留により、9.54g(沸点73°〜78℃/0.03mm)が得られた。GCは、19F NMR分析(C)と良好に一致する2成分、8.18および8.26分、面積比=30/70を示した。2つの異性体は、メジャーが−75.26および−78.80(70%)における等しい強度のカルテット、マイナーが−76.86および−78.66(30%)におけるカルテット。純度は98%を超える。
【0051】
H NMR(C)は、2つの異性体(30/70)に一致するスペクトルを示し、5.98および5.15(m)におけるマイナーのビニルのシングレット、5.93および5.08(m)におけるメジャーのビニルのシングレット、5.25におけるメジャーのOH、4.80におけるマイナーのOH、4.45におけるマイナーのCHO(分解されていないmのd、J=7.3)、3.85におけるメジャーのCHO(偽トリプレット)、他のマルチレット約2.25〜0.70であった。
【0052】
(実施例1)
(a.2,3−NBFOHMAc/PinMAcのコポリマーの調製)
還流冷却器、および開始する前に反応混合物を脱気するための真空へのアダプタ付きの窒素ガスインレット、サーモウェル、および撹拌棒を備えた三ツ口フラスコに、分枝状トリチオカーボナートRAFT剤C1225SC(S)SC(CH)(CN)CHCHCOH(FW=403.66;464mg=1.15mmol)、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート(20mL)、2,3−NBFOHMAc(9.54g、26.5mmol、上記に記載するように調製した)、PinMAc(1.64g、8.82mmol、上記に記載するように調製した)、およびVazo(登録商標)88(38mg、0.15mmol)を加えた。反応混合物を氷冷し、真空/窒素充填のサイクルを系に適用した。温度を0.5時間かけて90℃に上げた。温度を90℃で23時間維持した。
【0053】
反応溶液を室温に冷却し、ヘキサン(350mL)に、速く撹拌しながら滴下した。沈殿したポリマーを濾過し、次いで真空オーブン中で乾燥して(60℃、Nパージ、18時間)、9.91g(89%)のポリマーを得た。
【0054】
H NMR(THF−d8):6.9〜6.1(bdシングレット、6.7および6.4において最大;合わせてa=1.00;約30/70比)、4.7〜4.15(bd m,a=1.02)、2.7〜0.85(bd m’s、溶媒ピークによって不明瞭になった積分;1.55および1.25におけるジェミナルCH基シグナル。19F NMR(THF−d8):−78.40および−80.21における等しい強度bdシングレット。
【0055】
サイズ排除クロマトグラフィー(THF、RI検出器、ポリスチレン標準)から、Mw=7,690;Mn=6,520;Mw/Mn=1.18が判明した。
【0056】
(b.メタクリラートコポリマーからトリチオカーボナート末端基の除去)。
実施例1aで調製した2,3−NBFOHMAc/PinMAcコポリマー(75/25、4.00g、Mn=6,520、0.61mmol)の試料を、三ツ口フラスコに加え、2−ブタノン(20mL)に溶解した。トリエチルアミンヒポホスフィット(0.31g、1.83mmol)およびVazo(登録商標)67(46mg、0.24mmol)を添加した。反応混合物を2.5時間加熱還流した。ほぼ無色の溶液を冷却し、ヘプタン(200mL)の添加により、生成物コポリマーを沈殿させた。生成物を濾過し、ヘプタンで洗浄し、乾燥して、4.02gのポリマーを得た。
【0057】
UV(THF、1.052g/リットル;1.0cm)から、A305=0.027、トリチオカーボナート末端基の本質的に完全な除去に一致することが判明した。SEC(THF;PMMA):Mw=7,990;Mn=6,750;Mw/Mn=1.18。H NMR(THF−d8)から、トリエチルアミンヒポホスフィット汚染物質が残留していることが判明した。生成物を酢酸エチルに溶解し、塩化ナトリウムをさらに含有する希塩酸、続いて塩化ナトリウムを添加して含有する希重炭酸ナトリウムで洗浄した。酢酸エチルを真空下で除去し、生成物をメタノールに溶解し、水中に沈殿させて、試薬とRAFTによって誘導された汚染物質とを含まないコポリマーを得た。
【0058】
(実施例2)
(a.テトラブチルアンモニウムヒポホスフィットの調製)
50%次亜リン酸水溶液(6.6g、50mmol)およびトルエン(30mL)の混合物を氷冷し、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(32.4gの40%水溶液)で処理した。pHを、重炭酸ナトリウムの添加により7.00に調整した。トルエンおよび残留している水を減圧下で除去した。残渣をメチルエチルケトンに溶解し、濾過し、蒸発させた。残渣をジエチルエーテルで粉砕し、乾燥して、吸湿性結晶質固体15.5gが得られた。
【0059】
H NMR(CDCN):7.15(d,a=4.79),3.13(m, a=18.6),1.63(m,a=19.0),1.38(m,a=19.0), 1.00(t,a=28.9)。
【0060】
31P NMR,H デカップリング(CDCN):4.0(s)
【0061】
(b.MAMA/β−GBLMA/HAdMA/NBFOHMAcのテトラポリマーの合成)
滴下漏斗、および窒素ガスインレット、サーモウェル、および撹拌棒を備えた三ツ口フラスコに、RAFT剤C1225SC(S)SC(CH)(CN)CHCHCOCH(2.34g、5.60mmol)、メチルエチルケトン(80mL)、ならびにMAMA=39.44g、β−GBLMA=3.12g、HAdMA=2.89g、NBFOHMAc=2.87g、およびVazo(登録商標)88(414mg、1.70mmol)からなるモノマープレチャージを加えた。β−GBLMA=12.50g、HAdMA=11.58g、およびNBFOHMAc=11.50gからなるモノマーのMEK(120mL)溶液を、滴下漏斗に加えた。反応器に窒素を充填し、排気/充填のサイクルを2回行った。温度を1.0時間かけて84℃に上げた。モノマーの供給を5時間にわたって継続した。反応は、20.5時間かかって84℃から81℃に徐々に下がった。
【0062】
溶液を冷却し、メタノール(2400mL)に、速く撹拌しながら滴下した。
上澄みをデカンテーションし、残留しているポリマーをメタノールで処理し、撹拌して、より細かい粒子を懸濁させた。沈降させた後、上澄みを再びデカンテーションした。生成物を濾過によって収集し、乾燥して、61.5gのポリマーを得た点を除いてこの精製方法を繰り返した。
【0063】
SEC(THF、RI検出器、PMMA標準)は、Mw=11,000;Mn=9,370;Mw/Mn=1.17を示した。
【0064】
13C NMRおよびH NMRは、ポリマー組成物MAMA/β−GBLMA/HAdMA/NBFOHMAc(44.9/25.4/16.9/12.8)に一致した。
【0065】
(c.テトラブチルアンモニウムヒポホスフィットを使用したメタクリラートコポリマーからのトリチオカーボナート末端基の低減)
MAMA/β−GBLMA/HAdMA/NBFOHMAc(44.9/25.4/16.9/12.8;6.00g、0.64mmol)コポリマーの試料を、三ツ口フラスコに加え、2−ブタノン(30mL)に溶解し、テトラブチルアンモニウムヒポホスフィット(0.61g、2.0mmol)およびVazo(登録商標)67(48mg、0.25mmol)と組み合わせた。反応混合物を5時間加熱還流し、次いで冷却した。冷却した溶液を、ヘプタン(200mL)に添加して、ポリマーを沈殿させた。色が出発材料に比べて実質的に低減された固体(6.27g)が得られた。UVスペクトル(THF、0.995g/リットル;1.0cm)は、A311=0.04を示した。比較のため、出発コポリマーのUVスペクトル(THF;0.997g/リットル;1.0cm)は、A311.5=0.867を示した。これは、トリチオカーボナート基が本質的に完全除去された(95%超を除去)ことを示唆している。Hおよび13C NMRから、β−GBLMAモノマー単位の分画はポリマーにおいてメタクリル酸単位に開裂されたことが判明した。
【0066】
(実施例3)
(ポリ(アセトキシスチレン)ホモポリマー)からのトリチオカーボナート末端基の除去)
RAFT剤=C1225SC(S)SCHCNで調製されたポリ(アセトキシスチレン)(Mw=19,000;Mn=18,500;4.00g、0.22mmol)の試料を、三ツ口フラスコに加え、メチルエチルケトン(15mL)に溶解した。トリエチルアミンヒポホスフィット(0.20g、1.2mmol)およびVazo(登録商標)67(30mg、0.1mmol)を添加し、反応混合物を80℃に3時間加熱した。
【0067】
反応混合物を冷却し、次いで揮発性物質を真空下で除去して、固体を得、ヘキサンおよびメタノールで連続洗浄した。真空乾燥すると、3.65gの固体が得られた。
【0068】
UV(THF)から、トリチオカーボナート官能基が本質的に完全除去されたことが判明した。
【0069】
SEC(THF;トリプル検出方法、出発材料に使用したものと同じ):Mw=19,100;Mn=18,100;Mw/Mn=1.06。
【0070】
(実施例4)
(a.NCCH−PBA−SC(=S)SC1225の調製)
アクリル酸n−ブチル(6.0mL)、RAFT剤C1225SC(S)SCHCN(400mg)、VAZO(登録商標)64(2.2mg)、およびベンゼン(4.0mL)を含む溶液を脱気し、60℃で5時間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去すると、Mn=3080およびMw/Mn=1.09の黄色ポリマー(3.4g、63%変換率)が得られた。ポリマーのプロトンNMRから、4.8ppm[−CH(COOBu)SC(S)S−]および3.3ppm[−SC(S)SCH1123]において、硫黄に隣接する炭素上にプロトンが存在することが判明した。
【0071】
(b.NCCH−PBA−SC(=S)SC1225からの末端基の除去)
トルエン(1mL)中、NCCH−PBA−SC(=S)SC1225(154mg、実施例4aで調製した)、N−エチルピペリジンヒポホスフィット(45mg、シグマ−アルドリッチ、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Sigma−Aldrich Co., Milwaukee,WI)、およびVazo(登録商標)88(4mg)の混合物を脱気し、100℃で2時間加熱した。溶液を水で抽出し、トルエンを除去して、無色ポリマーを得た。GPC分析から、ポリマーは、Mn=2850およびMw/Mn=1.09であることが判明した。
【0072】
生成物のプロトンNMRから、出発材料では4.8ppmおよび3.3ppmにおいて存在した、硫黄に隣接する炭素上のプロトンのシグナルが存在しないことが実証された。
【0073】
(実施例5)
(a.CHC(CN)−PMMA−SC(=S)SC1225の調製)
RAFT剤C1225SC(S)SC(CN)(CH(685mg)およびVAZO(登録商標)88(10.5mg)のメタクリル酸メチル/メチルメタクリラート(7.0mL)およびベンゼン(3.0mL)溶液を脱気し、次いで90℃で6時間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去すると、Mn=3400およびMw/Mn=1.18の黄色ポリマー(5.3g、81%変換率)が得られた。硫黄に隣接する炭素上の末端基プロトン[−SC(S)SCH1123]は、プロトンNMRでは3.2ppmにおいて出現した。
【0074】
(b.(CHC(CN)−PMMA−SC(=S)SC1225からの末端基の除去)
トルエン(1mL)中、(CHC(CN)−PMMA−SC(=S)SC1225(170mg、実施例5aで調製した)、N−エチルピペリジンヒポホスフィット(45mg)、およびVazo(登録商標)88(4mg)の混合物を脱気し、次いで100℃で2時間加熱した。溶液を水で抽出し、トルエンを除去して、GPC分析でMn=3380およびMw/Mn=1.16の無色ポリマーを得た。
【0075】
生成物のNMRから、ドデシル末端基はもはや存在していないことが判明した。
【0076】
(実施例6)
(a.(CHC(Ph)−PS−SC(=S)Phの調製)
RAFT剤(CHC(Ph)SC(S)Ph(995mg)、VAZO(登録商標)88(16mg)のスチレン(16.0mL)およびベンゼン(4.0mL)溶液を脱気し、次いで90℃で16時間加熱した。
【0077】
揮発性物質を減圧下で除去すると、Mn=333およびMw/Mn=1.14の赤色ポリマー(2.2g、15%変換率)が得られた。硫黄に隣接する炭素上の末端基プロトン[−CH(Ph)SC(S)Ph]は、プロトンNMRでは4.5〜5.0ppmにおいて複雑なシグナルとして出現した。C=S基に対してオルトの芳香族プロトンは、7.9ppmにおいてシグナルを生じた。
【0078】
(b.(CHC(Ph)−PS−SC(=S)Phからの末端基の除去)。
トルエン(2mL)中、(CHC(Ph)−PS−SC(=S)Ph(170mg、実施例6aと同様にして調製した)、N−エチルピペリジンヒポホスフィット(450mg)、およびVazo(登録商標)88(10mg)の混合物を脱気し、次いで110℃で4時間加熱した。溶液を酢酸エチル(5mL)で希釈し、水で抽出し、次いで有機相を蒸発させて、GPC分析でMn=310およびMw/Mn=1.19の無色に近いポリマーを得た。生成物のNMRから、出発材料では4.5〜5.0ppmにおいて複雑なシグナルとして出現した、硫黄に隣接する炭素上の末端基プロトンが存在しないことが明らかになった。また、出発材料では7.9ppmにおけるシグナルを生じた、C=S基に対してオルトの末端基芳香族プロトンもなく、これは、末端基が実質的に除去されたこと(95%超)を示唆している。
【0079】
(実施例7)
(a.Mn=4475のポリスチレンの調製)
RAFT剤C1225SC(S)SCHCN(584mg)、VAZO(登録商標)88(16mg)のスチレン(16.0mL)およびベンゼン(4.0mL)溶液を脱気し、次いで90℃で16時間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去すると、Mn=4475およびMw/Mn=1.06の黄色ポリマー(8.4g、58%変換率)が得られた。プロトンNMRは、4.6〜5.1ppmにおいて幅広いシグナルとして末端基プロトン[−CH(Ph)SC(S)S−]、および3.25ppmにおいてドデシル基のメチレン[−SC(S)SCH1123]を示した。
【0080】
(b.Mn=4475のポリスチレンから末端基の除去)
Mn=4475およびMw/Mn=1.06のNCCH−PS−SC(S)SC1225(224mg、実施例7aで調製した)、N−エチルピペリジンヒポホスフィット(90mg)、VAZO(登録商標)88(5mg)のトルエン(1mL)溶液を脱気し、次いで110℃で4時間加熱した。混合物を酢酸エチル(10mL)で希釈し、水で抽出し、次いで有機相を蒸発させた。これによって、GPC分析でMn=3970およびMw/Mn=1.10の無色ポリマーが得られた。プロトンNMRから、出発材料では4.6〜5.1および3.25ppmにおいて出現する末端基プロトンが両方とも存在しないことが明らかになった。
【0081】
(実施例8)
(2,3−NBFOHMAc/MGM/HAdMAコポリマーの調製)
熱電対、還流冷却器、撹拌棒、および反応物を脱気するための真空へのアダプタ付きの窒素ガスインレットを備えた三ツ口フラスコに、トリチオカーボナートRAFT剤C1225SC(S)SC(CH)(CN)CHCHCOCH(1.472g、3.52mmol);2,3−NBFOHMAc(10.80g、30mmol)、2−メチル−2−アダマンチルグリコリルメタクリラート(MGM)(12.28g、42.0mmol)、および3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリラート(HAdMA)(7.09g、30mmol)からなるモノマーチャージ、メチルエチルケトン(32mL)、重炭酸ナトリウム粉末(0.170g)、およびV601開始剤(230mg、1.0mmol)を加えた。反応器を窒素で充填し、排気/充填のサイクルをもう2回行った。温度を0.5時間かけて67℃に上げた。反応を67℃で20時間維持した。一部分のH NMRから、全残留モノマー含有量は極めて低く、約0.6mol%であることが判明した。
【0082】
冷却した混合物をメチルエチルケトンで希釈し、濾過し、ヘプタン(1000mL)に徐々に添加して、均一な固体を得、濾過し、風乾した。30.3gの固体が得られた。H NMR(THF−d8)から、検出可能なモノマーはなく、カルボン酸の形成もなかったことが判明した。
【0083】
TGAによって、約175℃で大幅な減量が生じたことが判明した。MDSCは、147℃のTgを示した。SEC分析は、Mw=8340;Mn=7010;PD=1.19を示した。UV(THF;1.000g/リットル)は、A310=1.155を示した。13C NMR分析は、2,3−NBFOHMAc=27.9%;MGM = 41.2%;HAdMA=30.9%を示した。
【0084】
(実施例9)
(EtNH HPOを用いたメタクリラートコポリマーからのトリチオカーボナート末端基の低減)
実施例8と同様にして調製された2,3−NBFOHMAc/MGM/HAdMAコポリマー(20.0g、2.85mmol)の試料を、三ツ口フラスコに加え、2−ブタノン(70mL)に溶解した。トリエチルアンモニウムヒポホスフィット(3.0g、18mmol)およびVazo(登録商標)67(288mg、1.5mmol)を添加し、反応混合物を68℃〜70℃に加熱した。黄色強度が反応期間中実質的に低下した。3時間後に、別のチャージ分のVazo(登録商標)67(90mg)を添加し、次いで加熱を1.5時間継続した。
【0085】
冷却したポリマー溶液を10mLのMEKで希釈し、濾過して、次いで70/30水/メタノールの冷溶液(700mL;−5℃、エレクトロニクス用)に徐々に滴下した。混合物を濾過して、固体を追加の水/メタノール(4回×100mL)で洗浄して、風乾後に白色固体を得た。MEKおよび上記のような70/30水/メタノールを使用して、ポリマー試料を2回再沈殿させて、NMRで検出可能なトリエチルアンモニウムヒポホスフィット塩を完全に除去した。19.0gのポリマーが得られた。
【0086】
UV(THF;1.000g/リットル;1.0cm)は、A310<0.01を示し、これは、トリチオカーボナート官能基の高変換率を示唆している。SECは、Mw=8100;Mn=6800;PD=1.19を示した。13C NMRによる組成:2,3−NBFOHMAc=28.8%;MGM=40.5%;HAdMA=30.7%を示した。MDSCは、140.7℃においてTgを示した。TGAによって、150℃において熱による減量が生じたことが判明した。
【0087】
(実施例10)
(ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンヒポホスフィットの調製):
50%次亜リン酸水溶液(46.2g、0.35mol)を、0°〜7℃で1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(39.3g、0.35mol)の水溶液(80mL)で徐々に処理した。得られた溶液のpHを7.0と推定した。水を減圧下で除去して、固体残渣を得、メチルエチルケトンで粉砕して、57.9gの白色結晶質固体を得た。
【0088】
H NMR(CDOD):7.2(d,a=2.0),3.25(s,a= 12.0);31P 3.2(t,JPH=507Hz)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基−SC(S)Xを−Hで置換するための方法であって、官能基−SC(S)Xを含むポリマーを次亜リン酸の塩MPO、およびラジカル開始剤と接触させる工程を含み、
Xは、R、OR、N(R、SR、またはP(O)(ORであり、
Rは、置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のC〜C25アルケニル;置換または非置換のC〜C25アルキニル;置換または非置換のフェニル;置換または非置換のナフチル;および置換または非置換のベンジルであり、かつ
、R、R、およびRは、置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のC〜C10アリール;3〜8員の炭素環または複素環であり、または
N(Rは3〜8員の複素環である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
次亜リン酸の塩が、次亜リン酸のモノ−、ジ−、トリ−、またはテトラ−アルキルアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次亜リン酸の塩が、次亜リン酸のトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ダブコ(Dabco)、またはN−エチルピペリジニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
次亜リン酸の塩が、窒素塩基と次亜リン酸との反応によりin situで形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
XがRであり、Rが置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のC〜C25アルケニル;置換または非置換のC〜C25アルキニル;置換または非置換のフェニル;置換または非置換のナフチル;および置換または非置換のベンジルの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
XがORであり、Rが置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のフェニル;ペンタフルオロフェニル;および置換または非置換のナフチルの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
XがN(Rであり、N(Rが置換または非置換のジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピロリジル、イミダゾリジル、ピロリドニル、およびフタリミジルの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
XがSRであり、Rが置換または非置換のC〜C25アルキル;置換または非置換のベンジル;および置換または非置換のフェニルの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリマーが、アクリレート、メタクリレート、およびスチレンからなる群から誘導される繰返し単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーがRAFT重合方法によって生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2007−537341(P2007−537341A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513341(P2007−513341)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/016583
【国際公開番号】WO2005/113612
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(598152079)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼイション (16)
【Fターム(参考)】