説明

硬化体

【課題】意匠性、抗菌性に優れるとともに、内部における防カビ性や抗菌性にも優れる硬化体を得る。

【解決手段】波長300〜500nmにおいて反射率が10%以上となる反射領域を有する被膜を形成する合成樹脂(A)、上記反射領域において、光触媒作用を示す光触媒金属酸化物(B)、調湿性粉体(C)、及び平均粒子径0.01〜5mmの有色骨材(D)を必須成分とし、上記有色骨材(D)が、少なくとも抗菌性を有する骨材(E)を含む硬化体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な硬化体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装用建材として、天然石、自然石をイメージした比較的厚みがあり、様々な凹凸パターンを有する重厚感のある意匠性に優れるものへの人気が高まっている。このような建材としては、基材にアクリル樹脂エマルション等の結合材と天然骨材や人工骨材等が配合された組成物を積層し成形された建材が挙げられる。例えば、特開平4−347251号公報(特許文献1)には、合成樹脂に骨材を混合した吹付材の板状物の一方の面に合成樹脂織物より成る補強層を積層した装飾材が記載されている。
【0003】
また、近年、安全で快適な居住空間への関心が高まり、内装用の建材は、意匠性に加え、汚染防止性能、室内の結露防止やカビ発生防止、あるいは抗菌性等、様々な機能性を有すること、さらには、可とう性、軽量化等により施工性に優れることが要求されている。これに伴い、多くの製品の開発が行われている。このような材料として、例えば、特開平7−113272号公報(特許文献2)には、吸湿剤と光触媒を配合した被膜が基材の表面に形成されている建材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−347251号公報
【特許文献2】特開平7−113272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような吹付材の板状物中に吸湿剤や光触媒を添加すれば、意匠性と吸湿性及び光触媒性を兼ね備えた建材が得られるものと期待できる。しかしながら、このような吹付材を成形した建材の場合、骨材を多く含むため、建材内部まで効率的に光触媒作用を発揮できないおそれがある。その結果、吸湿作用により水分を含有する建材の内部では、細菌が繁殖したり、カビが発生したりするおそれがある。
【0006】

本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、意匠性、抗菌性に優れるとともに、内部における防カビ性や抗菌性にも優れる硬化体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、合成樹脂(A)、光触媒金属酸化物(B)、調湿性粉体(C)、及び平均粒子径0.01〜5mmの有色骨材(D)を必須成分として含む硬化体に想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の硬化体は、下記の特徴を有するものである。
【0008】
1.合成樹脂(A)、光触媒金属酸化物(B)、調湿性粉体(C)、及び平均粒子径0.01〜5mmの有色骨材(D)を必須成分として含む硬化体であり、上記合成樹脂(A)は、波長300〜500nmにおいて反射率が10%以上となる反射領域を有する被膜を形成するものであり、上記光触媒金属酸化物(B)は、当該反射領域において、光触媒作用を示すものであり、上記有色骨材(D)は、少なくとも抗菌性を有する骨材(E)を含むものであることを特徴とする硬化体
2.上記合成樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及びシリコーン樹脂を固形分重量比率95:5〜30:70で含むものであることを特徴とする1.に記載の硬化体
3.上記抗菌性を有する骨材(E)は、骨材表面に抗菌剤が付着されているものであることを特徴とする1.〜2.のいずれかに記載の硬化体
4.抗菌性を有する骨材(E)が硬化体表面に露出するように埋設されていることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の硬化体
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化体は、特定の合成樹脂エマルション、光触媒金属酸化物、調湿性粉体、及び特定の有色骨材、を必須成分とするものであり、有色骨材として抗菌性を有するものを含むことにより、意匠性に優れ、有機物の分解性等の光触媒作用、抗菌・防カビ性において優れた性能を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
本発明の硬化体は、合成樹脂(A)、光触媒金属酸化物(B)、調湿性粉体(C)、及び平均粒子径0.01〜5mmの有色骨材(D)を必須成分とし、有色骨材(D)は、少なくとも抗菌性を有する骨材(E)を含むものであることを特徴とするものである。
本発明の合成樹脂(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)としては、波長300〜500nmにおいて反射率が10%以上、好ましくは15%以上50%以下となる反射領域を有する被膜を形成するものである。このような(A)成分を使用することにより、本発明の硬化体に照射された光は、硬化体内で拡散・反射し、硬化体の内部まで行き渡り、硬化体に分散された光触媒金属酸化物に吸収され、光触媒活性が高まり、これによって抗菌性を高めることができる。
なお、上記反射率は、(A)成分を乾燥膜厚0.1mmにフィルム化したものを試料とし、該試料の背後に黒色板を重ね、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3100)を用いて測定した値である。なお、試料の背後に重ねた黒色板をブランクとし、換算した値とする。具体的には、各波長において、試料の反射率から黒色板の反射率を差し引くことにより求められる。
【0012】
このような(A)成分としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース及びその誘導体等の水分散型、水可溶型、NAD型、溶剤可溶型、無溶剤型等が挙げられ、1液タイプ、2液タイプ等特に限定せず、用いることができる。
【0013】
本発明では、(A)成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう。)、及びシリコーン樹脂(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう。)を含むものを使用することが好ましい。(A)成分におけるアクリル樹脂とシリコーン樹脂の固形分重量比率は、通常95:5〜30:70、好ましくは93:7〜40:60、さらに好ましくは90:10〜60:40である。このような比率で両成分を含むことにより、光触媒金属酸化物の光触媒作用を高めることができる。このような態様の(A)成分では、波長300〜500nmにおいて適度な反射性を有する被膜が形成でき、また、アクリル樹脂とシリコーン樹脂の屈折率の差により、被膜内で光拡散効果が高まるため、光触媒金属酸化物の光触媒活性をより向上することができると考えられる。
【0014】
また、本発明では特に、(A)成分として合成樹脂エマルション(水分散型樹脂)を使用することが好ましい。このような(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂エマルション、及びシリコーン樹脂エマルションを混合したものが使用できる。このような合成樹脂エマルションを使用することにより、反射率を高めることができ光触媒金属酸化物の光触媒作用を高めることができる。さらに、骨材本来の質感を活かしつつ、防火性、可とう性に優れた硬化体を得ることが可能となる。
【0015】
本発明では上記(A)成分として、特に(a1)成分、及び(a2)成分がエマルション粒子内に混在するアクリル―シリコーン合成樹脂エマルション(A−1)(以下、「(A−1)成分」ともいう。)を使用することが好適である。(A−1)成分における(a1)成分と(a2)成分の形態は特に限定されず、均一に混ざり合った形態であってもよいが、海島構造等により相互に分離した形態が好ましい。(A−1)成分における(a1)成分と(a2)成分の重量比率は、通常95:5〜30:70、好ましくは93:7〜40:60である。このような比率で両成分が混在することにより、光触媒金属酸化物の光触媒作用を高めることができる。さらに、骨材本来の質感を活かし、防火性、可とう性をさらに高めることができる。また、耐水性、耐候性、耐汚染性等の各物性においても有利な効果を得ることができる。
【0016】
上記アクリル樹脂(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、必要に応じその他のモノマーを共重合したものである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(A)成分を構成する全モノマーに対し、通常30重量%以上、好ましくは40〜99.9重量%、より好ましくは50〜99.5重量%である。
【0017】
本発明では、(メタ)アクリル酸エステルとして、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸エステルを必須成分として含むことが好ましい。その中でも、特に、2−エチルへキシルアクリレートが好適である。本発明では、このようなアルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸エステルを、(A)成分を構成する全モノマーに対し、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上50重量%以下含む。この場合、得られた硬化体の防火性を高めることができる。
【0018】

その他のモノマーとしては、例えばカルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、水酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、芳香族モノマー等が挙げられる。これらモノマーの使用量は、(A)成分を構成する全モノマーに対し、通常0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%である。
【0019】

このうち、カルボキシル基含有モノマーを共重合して、カルボキシル基含有アクリル樹脂とした場合には、(A)成分の安定性を高めることができ、さらにカルボキシル基と反応可能な化合物を別途添加することにより、硬化体の諸物性向上を図ることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等が挙げられる。このうち、特にアクリル酸、メタクリル酸から選ばれる1種以上が好適である。カルボキシル基含有モノマーの使用量は、(A)成分を構成する全モノマーに対し、通常0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜20重量%である。
【0020】
また、カルボキシル基と反応可能な化合物としては、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基等から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物が挙げられる。このうち、本発明では特にエポキシ基を有する反応性化合物が好適である。
【0021】

エポキシ基を有する反応性化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。この他、エポキシ基含有モノマーの重合体(ホモポリマーまたはコポリマー)からなる水溶性樹脂やエマルションを使用することもできる。このような化合物の混合量は、通常(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜20重量部である。
【0022】
上記シリコーン樹脂(a2)は、シロキサン化合物を重合して得られるものである。シロキサン化合物としては、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン化合物等が挙げられる。このような環状シロキサン化合物を重合する際には、直鎖状シロキサン化合物、分岐状シロキサン化合物、アルコキシシラン化合物等を用いることもできる。このうち、アルコキシシラン化合物としては、分子中に1個以上のアルコキシル基を有するシラン化合物が使用でき、例えばテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等の他、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が使用できる。シリコーン樹脂の平均分子量は、通常10000以上、好ましくは50000以上である。
【0023】
さらに、本発明における(A−1)成分としては、上記の如きアクリル樹脂(a1)とシリコーン樹脂(a2)成分がエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルションであって、(a1)及び(a2)が混在する外層と、(a1)成分を含む内層を有する多層構造型合成樹脂エマルション(A−2)が好適である。また、多層構造型合成樹脂エマルション(A−2)のガラス転移温度は、通常−60〜30℃程度に設定すればよい。特に、外層におけるアクリル樹脂のガラス転移温度よりも内層におけるアクリル樹脂のガラス転移温度が低く設定されたものが好適である。このような合成樹脂エマルションを使用することにより通常の合成樹脂エマルションに比べ、より少ない樹脂量で同等以上の可とう性、防火性、基材との密着性等の諸物性を具備する硬化体が設計できる。また、骨材の質感向上の点においても有利である。(A−2)成分における外層と内層の重量比率は、通常80:20〜20:80、好ましくは70:30〜30:70である。
【0024】

このような(A−2)成分は、例えば、内層を構成するアクリル樹脂を乳化重合により合成した後、外層を構成するアクリル樹脂及びシリコーン樹脂を乳化重合により合成する方法等によって得ることができる。(A−2)成分においては、内層を構成する樹脂として上述の如きシリコーン樹脂(a2)が含まれていてもよい。内層にシリコーン樹脂が含まれることにより、硬化体の防火性、可とう性、耐汚染性等を高めることができる。
【0025】

本発明では、(A−2)成分にカルボキシル基含有アクリル樹脂が含まれる場合、カルボキシル基と反応可能な化合物を別途配合することにより、膨れ防止性、剥れ防止性等の効果を高めることができる。さらに、硬化体表面の粘着性が軽減され、耐汚染性が高まる。このような化合物としては、(A−1)成分と同様のものが挙げられる。
【0026】
本発明では上述の(A)成分に加え、光触媒金属酸化物(B)(以下「(B)成分」という)を必須成分とする。(B)成分は、波長300〜500nmのうち(A)成分により形成された被膜の反射率が10%以上となる反射領域(以下、単に「反射領域」ともいう)において、光触媒作用を示すものである。このような(B)成分を含むことにより、効率的に光触媒活性を発揮することができる。なお、本発明の光触媒作用とは、触媒に光(紫外線及び/または可視光)が当たることにより、触媒が光を吸収・励起し、これにより生じた励起電子と正孔の酸化及び還元により水酸ラジカルと活性酸素が発生し、この水酸ラジカルと活性酸素が有機物等を分解する作用である。
【0027】
このような(B)成分としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン等の金属酸化物、またはその複合酸化物等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を使用することができる。(B)成分の平均粒子径は0.3μm以下、好ましくは0.1μm以上0.25μm以下である。上記範囲の光触媒金属酸化物を使用した場合、優れた光触媒作用を有し、さらに硬化体の骨材の質感を活かすことができる。
なお、ここで言う平均粒子径とは、遠心沈降法等による測定から得られるものである。
【0028】
特に、本発明の(B)成分としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンのいずれでもよいが、本発明では特に、アナターゼ型酸化チタンを使用することが好ましい。(B)成分として酸化チタンを使用した場合、光触媒作用に優れ、さらには、火災時の総発熱量を抑えることができ、防火性を高めることができる。その作用機構としては、酸化チタンは、輻射熱を遮断し積層体の温度上昇を抑制することができるためと推察される。さらに、アナターゼ型酸化チタンを使用することで防火性がより向上する。その作用機構は明らかではないが、加熱によるアナターゼ型酸化チタンの触媒作用向上が関与しているものと考えられる。また、アナターゼ型酸化チタンの分解作用により排出ガスの量を低減することもできる。さらに、アナターゼ型酸化チタンはルチル型酸化チタンと比較した場合、塗膜の隠蔽効果が低いため、より骨材の質感を活かすことができる。
【0029】
(B)成分の配合量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは0.5〜40重量部、より好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは2〜20重量部である。このような範囲である場合、優れた光触媒作用、防火性を有し、さらに硬化体の骨材の質感を活かすことができる。
【0030】
さらに本発明では、調湿性粉体(C)以下「(C)成分」という)を必須成分とする。この(C)成分は、硬化体に調湿性を付与することができる。(C)成分として、例えば、ベーマイト、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、珪藻土、珪質頁岩、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノライト、イモゴライト、大谷石粉、活性白土、木炭、竹炭、活性炭、木粉、貝殻粉、多孔質合成樹脂粒等が挙げられる。調湿性粉体の平均粒子径は、好ましくは0.001〜1mm、さらに好ましくは0.01〜0.5mm程度である。
【0031】
(C)成分の配合量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは5〜500重量部、より好ましくは10〜400重量部、さらに好ましくは20〜300重量部である。このような範囲である場合、優れた調湿性を発揮することができる。
【0032】
さらに本発明では、平均粒子径0.01〜5mmの有色骨材(D)(以下「(D)成分」という)を必須成分とする。この(D)成分は、硬化体表面へ微細な凹凸を付与し、陰影感有する立体的な意匠を表現することができる。また、粒子径の小さい着色顔料等を使用した場合と異なり、着色した粒子を混合して色調、質感等を変化させることができ、被膜表面に存在する(D)成分の小点が多彩模様として視認され、優れた装飾性を有する。本発明に好適な(D)成分としては、特に限定されず、天然品、人工品のいずれも使用することができる。具体的には、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、バライト粉、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラスビーズ、ガラス粉砕物、樹脂ビーズ、樹脂粉砕物、金属粒等が挙げられる。これらに着色を施したものも使用することができる。
(D)成分の粒径は、0.01〜5mmであることが望ましい。粒径が0.01mm未満では骨材による自然石調の多彩感が低下し、5mm超では作業性が低下する傾向となる。
【0033】
(D)成分の配合量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは300〜2000重量部、より好ましくは500〜1500重量部、さらに好ましくは800〜1300である。上記範囲のように(A)成分に対して(D)成分を多く含むことにより、骨材の質感を活かした優れた意匠性を得ることができ、さらに防火性を向上することができる。
【0034】
また、本発明では、有色骨材(D)として、少なくとも抗菌性を有する骨材(E)(以下「(E)成分」という)を含む。この(E)成分が、硬化体に分散されることにより、優れた抗菌性を発揮することができる。このような(E)成分としては、上記(D)成分の表面に抗菌剤が付着されているもの等を使用できる。
抗菌剤としては、公知の抗菌剤を使用することができるが、本発明では特に、無機質抗菌剤を使用することが好ましく、例えば、銀、銅、亜鉛を中心とした金属または金属イオンを置換または担持した無機化合物が挙げられる。無機化合物としては、例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸亜鉛、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸セリウム、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0035】
上記(D)成分の表面に抗菌剤を付着させる方法としては特に限定されないが、結合材を使用することが好ましい。結合材としては特に限定されず、例えば、有機系結合材として、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等の各種結合材、あるいはこれらを複合化した結合材を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。また、結合材の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。また、無機系結合材としては、ガラス質粉末、水ガラス、金属アルコキシド化合物等が挙げられ、必要に応じて熱処理することもできる。また、上記抗菌剤の配合量は、(D)成分に対し、好ましくは0.01〜5重量%である。
【0036】
(E)成分の配合量は、(D)成分のうち、少なくとも5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは10〜90重量%である。上記範囲のように(D)成分に対して(E)成分を含むことにより、骨材の質感を活かした優れた意匠性を得ることができるとともに、優れた抗菌性を発揮することができる。
【0037】
本発明では、硬化体の装飾性等を高める目的で、平均粒子径5mm超の骨材(F)(以下「(F)成分」という)を混合したり、散布することもできる。本発明に好適な(F)成分としては、例えば、天然石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、マイカ、貝殻類、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、ゴム類、プラスチック類、植物繊維、植物片等の植物類、アルミナフレーク等の金属類等や、それらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。
【0038】

また、本発明の効果を著しく損なわない限り、必要に応じ、公知の添加剤を混合することもできる。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、難燃剤、着色顔料、体質顔料、繊維、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0039】
本発明の硬化体は、上述の合成樹脂(A)、光触媒金属酸化物(B)、調湿性粉体(C)、及び少なくとも抗菌性を有する骨材(E)を含む平均粒子径0.01〜5mmの有色骨材(D)を混合した硬化体用組成物(以下、「硬化体用組成物」ともいう)を膜状、板状等に成型したものである。その厚みは、1.0mm以上5.0mm以下が好ましい。このような場合、彫りの深い凹凸パターンを形成することもできるため、陰影、重厚感のある優れた意匠性を得ることができる。
【0040】
硬化体の構造としては、上記の(A)〜(E)成分が混合・分散された硬化体であればよいが、本発明の効果発現の点から、(E)成分が硬化体表面に露出するように埋設されていることが好ましい。このような場合、硬化体表面において効率的に抗菌性を発揮することができるとともに、(E)成分が比較的少量であっても十分な効果を得ることができる。例えば、本発明の硬化体を内装用建材として使用する場合には、(E)成分が露出していることにより、手の接触や、せき・くしゃみ等による飛沫に対しても効果的に抗菌性を発揮することができる。
硬化体表面に(E)成分が露出するように埋設される硬化体の製造方法としては、例えば、
(ア)上記の硬化体用組成物を成型する際に、その表面に(E)成分を散布し、乾燥、硬化させる方法、
(イ)(E)成分を型枠等に散在させた後、硬化体用組成物を塗付し、当該組成物を乾燥させた後に脱型する方法、
等が挙げられる。
上記(ア)、(イ)において、(E)成分を散布または散在させる量は、好ましくは10〜500g/m、より好ましくは20〜400g/m程度である。上記(イ)において、使用する型枠としては、例えばシリコーン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。
【0041】
本発明では、硬化体に基層を積層することもできる。このような基層としては、特に限定されないが、織布または不織布等の可とう性を有するものが好ましい。このような織布または不織布としては、厚さ0.05〜1.5mm、(より好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.25〜0.5mm)、坪量5〜300g/m、(より好ましくは10〜200g/m、さらに好ましくは20〜100g/m)の無機繊維を含むものが好ましい。例えば、鉱物繊維、ガラス繊維等の無機繊維からなる織布または不織布等が挙げられる。さらに、接着剤等の樹脂成分によって繊維を3次元構造に重ね合わせ結合させた不織布が好ましい。上記範囲の基層を使用した場合、硬化体との接触界面が大きくなるため密着性に優れ、さらに、壁面等に施工した場合、基層が無機繊維を含むことにより硬化体を安定に支えることができる。さらに、火災時の硬化体のめくれや反り、脱落を防止できるため、防火性、防炎性にも優れた効果を発揮することができる。
【0042】
また、上記の織布または不織布にガラスメッシュ、ガラスクロス、セラミックペーパー、合成紙、不燃紙等の1種以上を積層して使用することもできる。これらを使用した場合、積層体の強度が向上するとともに、火災時の脱落防止性が向上し、防火性、防炎性等に効果的である。
なお、硬化体に基層を積層する場合は、硬化体の片面に積層すればよく、(E)成分が露出するように埋設された硬化体の場合は(E)の露出面と反対側に積層すればよい。
【0043】
さらに、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内であれば、表面保護性等を高める目的で、上塗層を積層することもできる。上塗層は、通気性を有するものであればよく、この場合、硬化体の意匠性をそのまま活かすことができ、抗菌性、光触媒作用も発揮できる。また、上塗層は、透明性を有する範囲で各種顔料が添加されたカラークリヤー層であってもよい。このような上塗層としては、公知の水性型あるいは溶剤型上塗材の塗付によって形成することができる。
【0044】
本発明硬化体は、主に建築物の内装建材として適用できる。すなわち、建築物内装面の各部位に貼り付けて内装仕上げを行うことができる。具体的には、住宅、マンション、学校、病院、店舗、事務所、工場、倉庫、食堂等における壁、間仕切り、扉、天井等に適用できる。このような部位を構成する下地としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板等が挙げられる。これら下地は、その表面に既存塗膜を有するものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0045】
また、本発明硬化体を施工する際には、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基体に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。中でも、本発明の硬化体は、接着剤を用いて下地に貼着することが好ましい。
接着剤としては、特に限定されず、公知のものを使用すればよい。例えば、接着材に用いる合成樹脂としては、特に限定されないが、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の水可溶型、水分散型等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。

また、施工性、仕上り性、接着強度、防火性等の各種性能を付与するために、粉体成分、中空粒子、多孔質粒子、繊維等を添加したり、必要に応じ、着色材料、体質顔料、分散剤、粘性調整剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤等の通常使用される添加剤を適宜加えることができる。
【0046】
硬化体を接着剤で貼り付ける際、隣接する硬化体どうしを突き合わせて貼りつけたり、硬化体間に目地を設けたりすることもできる。突き合わせて貼り付ける場合、接着剤がはみ出さないようにすることが好ましい。また、目地を設ける場合、硬化体を貼り付ける際の間隔は特には限定されないが、1mm〜30mm程度であればよい。このような範囲であれば、目地模様を生かした内装仕上げを行うことができる。また、必要に応じて目地部の接着剤をへら等で平滑処理しても良い。接着剤を硬化させる際の雰囲気温度は、適宜設定することができるが、通常は常温でよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0048】
(合成樹脂A)
・合成樹脂1〜4
以下に示すアクリル樹脂とシリコーン樹脂を混合し樹脂1〜4とした。
アクリル樹脂エマルション;(Tg21℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:2−エチルヘキシルアクリレート:メタクリル酸メチル=30:6:24:40)、固形分50重量%。
シリコーン樹脂エマルション(Tg−130℃、ジメチルシロキサン化合物の乳化分散液)、固形分50重量%
・合成樹脂1;アクリル樹脂エマルション:シリコーン樹脂エマルション(固形分重量比)=99:1、
・合成樹脂2;アクリル樹脂エマルション:シリコーン樹脂エマルション(固形分重量比)=93:7、
・合成樹脂3;アクリル樹脂エマルション:シリコーン樹脂エマルション(固形分重量比)=70:30、
・合成樹脂4;アクリル樹脂エマルション:シリコーン樹脂エマルション(固形分重量比)=50:50
【0049】
・合成樹脂5

外層;アクリル樹脂(Tg31℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸メチル)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)

内層;アクリル樹脂(Tg−33℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸メチル)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、

外層と内層の重量比46:54、アクリル樹脂とシリコーン樹脂の重量比80:20、エマルション中のアクリル樹脂構成成分;t−ブチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:2−エチルヘキシルアクリレート:メタクリル酸メチル=19:25:24:32、固形分50重量%、Tg−46℃。
【0050】
・合成樹脂6

外層;アクリル樹脂(Tg49℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸メチル)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、

内層;アクリル樹脂(Tg−32℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸メチル)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、

外層と内層の重量比53:47、アクリル樹脂とシリコーン樹脂の重量比80:20、エマルション中のアクリル樹脂構成成分;t−ブチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:2−エチルヘキシルアクリレート:メタクリル酸メチル=27:33:12:28、固形分50重量%、Tg−39℃。
【0051】
・合成樹脂7
外層;アクリル樹脂(Tg58℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,メタクリル酸メチル)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、

内層;アクリル樹脂(Tg−36℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,メタクリル酸メチル)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、

外層と内層の重量比45:55、アクリル樹脂とシリコーン樹脂の重量比80:20、エマルション中のアクリル樹脂構成成分;t−ブチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:2−エチルヘキシルアクリレート:メタクリル酸メチル=25:52:2:21、固形分50重量%、Tg−43℃。
【0052】
・合成樹脂8
外層;アクリル樹脂(Tg39℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,メタクリル酸メチル)
内層;アクリル樹脂(Tg−30℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,メタクリル酸メチル)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、
外層と内層の重量比45:55、アクリル樹脂とシリコーン樹脂の重量比90:10、エマルション中のアクリル樹脂構成成分;t−ブチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:2−エチルヘキシルアクリレート:メタクリル酸メチル=29:29:19:23、固形分50重量%、Tg−25℃。
【0053】
・合成樹脂9

外層;アクリル樹脂(Tg55℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸メチル)、

内層;アクリル樹脂(Tg−50℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸メチル)、
外層と内層の重量比50:50、エマルション中のアクリル樹脂構成成分;t−ブチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:2−エチルヘキシルアクリレート:メタクリル酸メチル=25:25:24:26、固形分50重量%、Tg−7.3℃。
【0054】
上記合成樹脂1〜9を、離型紙上に塗付、乾燥させ、膜厚0.1mmのフィルムを作製したものを試料とし、フィルムの反射率を測定した。なお、フィルムの反射率は、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3100)を用いて行った。結果を表1に示す。
その結果、合成樹脂2〜7は、波長領域300nm〜500nmにおいて紫外線反射率が10%以上となる反射領域を有するものであった。また、合成樹脂8は、波長400nm以上の領域において紫外線反射率が10%以下、波長400nm未満の領域において紫外線反射率が10%以上となる領域を有するものであった。一方、合成樹脂1、9は、当該反射領域において、紫外線反射率は10%未満であった。その代表値として、波長380nm、400nm、500nmでの紫外線反射率を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
(B)成分
・光触媒酸化物1:紫外線応答性アナターゼ型酸化チタン(励起波長:200〜380nm、平均粒子径0.2μm)
・光触媒酸化物2:可視光応答性アナターゼ型酸化チタン(励起波長:400〜650nm、平均粒子径15nm)
(C)成分
・調湿性粉体1:シリカゲル(平均粒子径20μm)
(D)成分
・骨材1:着色珪砂(淡黄色、平均粒子径80〜120μm)
・骨材2:重質炭酸カルシウム(平均粒子径50〜150μm)
(E)成分
・骨材3:銀担持リン酸塩被覆珪砂(平均粒子径200μm、抗菌剤の含有割合1重量%)
その他成分
・金属酸化物:アルミナ(平均粒子径1.0μm)
・添加剤:増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ウレタン会合性増粘剤)、水
【0057】
(硬化体用組成物の製造)
(硬化体用組成物1〜20)
表2、3に示す配合に従い、各原料(骨材3を除く)を常法により均一に混合・攪拌することによって硬化体用組成物(表では、単に「組成物」と略す)1〜20を製造した。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
(試験例1A)
ガラス不織布(厚み0.4mm、坪量50g/m)上に、硬化体用組成物1を乾燥後の硬化体の厚さが2.5mmとなるように塗付し、骨材3を50g/m散布した後、60℃下で120分間乾燥、硬化させ硬化体1を作製した。得られた硬化体1について以下の試験を実施した。結果を表4に示した。
【0061】
<抗菌性試験>
抗菌性試験はJIS Z 2801(2000)に基づき、フィルム密着法により行った。試験菌としては大腸菌、黄色ブドウ球菌を使用した。抗菌性試験の評価基準は、以下の通りである。
A:抗菌活性2.0以上
B:抗菌活性2.0未満
【0062】
<光触媒作用試験>
1.0wt%フェノールフタレインのエタノール溶液に、水酸化ナトリウムを2%添加した溶液を上記硬化体1表面に、塗布した後、太陽光(波長領域305〜4045nm)を72時間照射し、その前後の色差を測定した。光触媒の作用によるフェノールフタレインの分解を色差△Eに基づき評価した。なお、色差の測定は、色差計(CM−3700d、ミノルタ株式会社製)を用いて行った。
光触媒作用試験の評価基準は、以下の通りである。
A:6≦△E
B:5<△E<6
C:△E≦5
【0063】
(試験例2A〜20A)
試験例1Aの硬化体用組成物1に代えて、表2〜3に示す硬化体用組成物を使用した以外は、試験例1Aと同様にして硬化体2〜20を得た。各硬化体について、硬化体1と同様の評価を実施し、結果を表4、5に示した。
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
(試験例1B〜13B)
ついで、硬化体1〜14について、以下の評価を実施した。結果を表6に示した。
<防火性試験1>
試験用の基材として、100mm×100mm×12.5mmの石膏ボードを用い、基材に接着剤を塗付し、各積層体を貼り付け、23℃、50±10%RH下で240時間養生したものを試験体とした。
上記試験体を、ISO5660規定のコーンカロリーメーターにより20分後の総発熱量を測定した。なお、コーンカロリーメーターとしては「CONE2A」(アトラス製)を用い、加熱強度は50kW/mとした。
発熱性試験の評価基準は、以下の通りである。
A:加熱時間20分での総発熱量が6.0MJ/m2以下
B:加熱時間20分での総発熱量が6.0MJ/m2を超え、8.0MJ/m2以下
C:加熱時間20分での総発熱量が8.0MJ/m2を超え、12.0MJ/m2以下
D:加熱時間20分での総発熱量が10.0MJ/m2を超え、12.0MJ/m2以下
E:加熱時間20分での総発熱量が12.0MJ/m2を超える
なお、上記接着剤は、合成樹脂エマルション5、酸化チタン、重質炭酸カルシウム、分散剤、増粘剤、消泡剤、及び水を均一に攪拌・混合して製造したものを使用した。
【0067】
<耐汚染性試験>
各積層体を試験体とし、試験体を水平に置き、その塗膜表面に汚れ成分(黒色硅砂)を散布して2時間放置し、次いで試験板を垂直に立てた後、汚れ成分の残存の程度を確認した。評価基準は、汚れが除去されたものを「A」、汚れが著しく残存したものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)で行った。
【0068】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂(A)、光触媒金属酸化物(B)、調湿性粉体(C)、及び平均粒子径0.01〜5mmの有色骨材(D)を必須成分として含む硬化体であり、
上記合成樹脂(A)は、波長300〜500nmにおいて反射率が10%以上となる反射領域を有する被膜を形成するものであり、
上記光触媒金属酸化物(B)は、当該反射領域において、光触媒作用を示すものであり、
上記有色骨材(D)は、少なくとも抗菌性を有する骨材(E)を含むものであることを特徴とする硬化体
【請求項2】
上記合成樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及びシリコーン樹脂を固形分重量比率95:5〜30:70で含むものであることを特徴とする請求項1に記載の硬化体
【請求項3】
上記抗菌性を有する骨材(E)は、骨材表面に抗菌剤が付着されているものであることを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載の硬化体
【請求項4】
抗菌性を有する骨材(E)が硬化体表面に露出するように埋設されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の硬化体

【公開番号】特開2012−17217(P2012−17217A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154375(P2010−154375)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】