硬化性バイオプラスチックバインダー組成物及びその硬化物
【課題】従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足する硬化性バイオプラスチックバインダー組成物及びその硬化物の提供。
【解決手段】硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした主剤としての澱粉と、前記澱粉を架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートとからなる固液型であり、澱粉分子の水酸基間をポリイソシアネートが架橋して三次元網目構造体を生成する。
【解決手段】硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした主剤としての澱粉と、前記澱粉を架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートとからなる固液型であり、澱粉分子の水酸基間をポリイソシアネートが架橋して三次元網目構造体を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性バイオプラスチックバインダー組成物及びその硬化物に関し、特に、強固な密着性を有すると共に耐熱性と環境性に優れ、自動車内装部品の製造、内装建材等の分野に応用することができる固液(固体+液体)タイプ及び1液タイプの硬化性バイオプラスチックバインダー組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内装部品の製造や内装建材の接着等に使用される硬化性プラスチックバインダーは、石油を主起源として合成されたものである。一般的には、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂やアクリル樹脂等が硬化性プラスチックバインダーとして使用されている。これら硬化性プラスチックバインダーとしては、主剤及び硬化剤(硬化剤または反応剤)からなる2液性のものや、空気、湿気や熱により硬化する1液性のものがある。また、それらを水性にしたエマルジョンタイプの硬化性プラスチックバインダーも提案されている。しかし、従来の硬化性プラスチックは、石油を主原料として合成された、地球生態系で循環しない(生分解性のない)有機化合物であり、これを使用することが大気中のCO2濃度の増加を促進し、地球温暖化を引き起こす要因となりうる。また、フェノール樹脂及びメラミン樹脂においては、製造工程においてホルムアルデヒドが使用され製品に残留することから、このVOC(揮発性有機化合物)の発生により使用環境においてシックハウス症候群を引き起こす恐れがある。
【0003】
これに対し、近年、環境への配慮やCO2濃度の増加による地球温暖化の防止等の観点から、地球生態系で循環する澱粉やセルロース等の天然高分子を利用した生分解性樹脂を主剤としたがバイオプラスチックバインダーが提案されている。また、澱粉やセルロース等から得られる現在製品化または製品開発中のバイオプラスチックバインダーは、全て熱可塑性である。また、その製造方法及び生成物としては、高分子化合物である澱粉を糖化・醗酵させて生成される乳酸を再重合して製造するポリ乳酸、澱粉やセルロースを直接アセチル化するエステル化澱粉やアセチルアセテート等が知られている。しかし、これらの熱可塑性バイオプラスチックバインダーは、石油から合成される熱可塑性プラスチックバインダーに比べて製造に大きなエネルギーを必要とする場合もあり、省エネルギーによる環境配慮の点で改善する余地がある。また、これらは熱可塑性バイオプラスチックバインダーは、熱により軟化変形する等の熱可塑性樹脂特有の特徴を有し、ある程度の耐熱性や耐熱強度が要求される自動車部品等への適用においては、硬化性プラスチックと比較して改良すべき点がある。
【0004】
ここで、本発明者らは、生態系循環資源として豊富に産出される澱粉やセルロースを主剤として硬化性プラスチックを製造することができれば、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足できるのではないかと考え、鋭意研究を重ねた。なお、上記のように、現在製品化または製品開発中のバイオプラスチックバインダーは、全て熱可塑性であるが、硬化型澱粉組成物に関する技術として特許文献1及び特許文献2に記載の技術がある。
【特許文献1】特開2004−224887号公報
【特許文献2】特開2005−343939号公報
【0005】
特許文献1には、澱粉と、澱粉分子中に含まれる少なくとも1個の水酸基と相補的に反応する官能基を有するポリイソシアネート化合物等の硬化剤との混合物である硬化型澱粉組成物が開示されている。また、特許文献2には、水酸基を含有する澱粉と、ポリイソシアネート化合物及び/又は該ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部もしくは全部がブロック化されてなるブロック化ポリイソシアネート化合物とを含有する硬化型澱粉組成物が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2は、いずれも、硬化型澱粉組成物の澱粉として、公知の澱粉や特定の置換基を有する化学的変性澱粉を使用する旨記載しているが、澱粉分子の立体構造(二重螺旋構造等)や水素結合に起因する硬化剤との反応性低下等についての考察はない。即ち、これら特許文献1及び特許文献2は、いずれも、澱粉分子特有の立体構造等に起因する硬化剤乃至架橋剤との反応性低下を克服するための手段について、なんら知見及び示唆を与えるものではない。更に、特許文献1及び特許文献2は、いずれも、同じく地球生態系を循環する豊富な天然資源であるセルロースを主剤とした硬化性バイオプラスチックバインダーについては、全く開示も示唆もしていない。
【0007】
そこで、本発明者らは、従来の硬化性プラスチック主原料である石油の代わりに、地球生態系で循環する有機化合物である澱粉またはセルロースを主原料とすることで、大気中のCO2濃度の増加を抑制し、地球温暖化を防止することを目的とし、また、VOCや環境ホルモンとなる物質を含有しないことで人体や地球生態系への影響を少なくし、更に熱可塑性バイオプラスチックバインダーに見られるような澱粉やセルロースを分解・再重合して合成することによる製造エネルギーの増加を抑制することを目的として、鋭意研究の結果本発明に想到した。即ち、本発明は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足する硬化性バイオプラスチックバインダー組成物及びその硬化物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉と、前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートとからなる。
【0009】
請求項2に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項1記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした(焙焼デキストリン等の)熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用した。
【0010】
請求項3に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項1記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用した。
【0011】
請求項4に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項1記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用した。
【0012】
請求項5に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉と、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記活性化澱粉と混合分散されると共に、常温または加熱により前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0013】
請求項6に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項5記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用した。
【0014】
請求項7に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項5記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用した。
【0015】
請求項8に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項5記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用した。
【0016】
請求項9に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉を加水加熱してゾル化またはゲル化したコロイド状澱粉と、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状澱粉と混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0017】
請求項10に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製した。
【0018】
請求項11に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製した。
【0019】
請求項12に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製した。
【0020】
請求項13に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9乃至12のいずれか1項記載の構成において、前記コロイド状澱粉のPHを5〜9の範囲とした。
【0021】
請求項14に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9乃至12のいずれか1項記載の構成において、前記ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用した。
【0022】
請求項15に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項1乃至11のいずれか1項記載の構成において、前記ポリイソシアネートとして、前記活性化澱粉の活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用した。
【0023】
請求項16に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としての活性化セルロースと、前記活性化セルロースを架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートとからなる。
【0024】
請求項17に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項16記載の構成において、前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化してセルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用した。
【0025】
請求項18に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項16記載の構成において、前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファスエーテル化セルロースを使用した。
【0026】
請求項19に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としての活性化セルロースと、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記活性化セルロースと混合分散されると共に、常温または加熱により前記活性化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0027】
請求項20に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項19記載の構成において、前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化してセルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用した。
【0028】
請求項21に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項19記載の構成において、前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファスエーテル化セルロースを使用した。
【0029】
請求項22に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、セルロースをエステル化処理することにより水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としてのエステル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エステル化セルロースと、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エステル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記エステル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0030】
請求項23に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としてのエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エーテル化セルロースと、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エーテル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記エーテル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0031】
請求項24に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化した主剤としてのアモルファスエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状アモルファスエーテル化セルロースと、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状アモルファスエーテル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記アモルファスエーテル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0032】
請求項25に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項22乃至24のいずれか1項記載の構成において、前記コロイド状セルロースのPHを5〜9の範囲とした。
【0033】
(ブロック剤限定)
請求項26に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項22乃至24のいずれか1項記載の構成において、前記ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用した。
【0034】
(イソシアネートのサイズ(長さ)限定)
請求項27に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項17乃至23のいずれか1項記載の構成において、前記ポリイソシアネートとして、前記セルロースの活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用した。
【0035】
(硬化物)
請求項28に係る硬化物は、請求項1乃至27のいずれか1項の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物を常温または加熱により反応して硬化することにより生成した。
【発明の効果】
【0036】
請求項1に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉として、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然澱粉等の)非活性化澱粉より増加した活性化澱粉を使用することにより、澱粉分子特有の立体構造(螺旋構造乃至結晶構造)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、澱粉分子(澱粉ユニット間または澱粉サブユニット間)を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項1に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができ、ひいては、石油系の硬化性プラスチックバインダーに較べて大気中のCO2濃度の増加を抑制し、地球温暖化を防止することができる。また、ポリイソシアネートを硬化剤として用い、澱粉の高分子構造(α1・4グリコシド結合)を残しながら澱粉間の架橋反応を行うことで、容易に3次元網目構造を形成し、可塑性のバイオプラスチックバインダーより少ない製造エネルギーでプラスチックとしての機能を果たすことができる。
【0037】
請求項2に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファー澱粉、熱分解澱粉、アモルファス澱粉等の物理変性澱粉を使用することで、硬化速度がより高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0038】
請求項3に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、化学変性澱粉であるエステル化澱粉を使用することで、硬化速度がより高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0039】
請求項4に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファーエステル化澱粉、熱分解エステル化澱粉、アモルファスエステル化澱粉等の化学変性及び物理変性した澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。また、難燃性も、同じポリイソシアネートを使用するポリウレタンに比べ、高くなる。
【0040】
請求項5に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉として、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然澱粉等の)非活性化澱粉より増加した活性化澱粉を使用することにより、澱粉分子特有の立体構造(螺旋構造乃至結晶構造)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、澱粉分子(澱粉ユニット間または澱粉サブユニット間)を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項5に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができる。また、このような特性と合せ、1液タイプとしたことにより、自動車内装部品製造の熱プレス成形における材料へのバインダー含浸前処理への対応を可能とする。
【0041】
請求項6に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファー澱粉、熱分解澱粉、アモルファス澱粉等の物理変性澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0042】
請求項7に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、化学変性したエステル化澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0043】
請求項8に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファーエステル化澱粉、熱分解エステル化澱粉、アモルファスエステル化澱粉等の化学変性及び物理変性した澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0044】
請求項9に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉として、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然澱粉等の)非活性化澱粉より増加した活性化澱粉を使用することにより、澱粉分子特有の立体構造(螺旋構造乃至結晶構造)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、澱粉分子(澱粉ユニット間または澱粉サブユニット間)を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項9に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができる。また、このような特性と合せ、1液タイプとしたことにより、自動車内装部品製造の熱プレス成形における材料へのバインダー含浸前処理への対応を可能とし、水性であるためにVOCの発生を抑制し、環境への影響を最小限に留めることができる。加えて、ゾル化またはゲル化したコロイド状澱粉を使用することにより、界面活性剤等の乳化剤を使用しなくても、ポリイソシアネートのエマルジョン化を円滑かつ安定的に図ることができる。
【0045】
請求項10に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファー澱粉、熱分解澱粉、アモルファス澱粉等の物理変性澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0046】
請求項11に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、化学変性したエステル化澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0047】
請求項12に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファーエステル化澱粉、熱分解エステル化澱粉、アモルファスエステル化澱粉等の化学変性及び物理変性した澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0048】
請求項13に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、コロイド状澱粉のPHを5〜9の範囲とすることで、エマルジョンが安定化する。
【0049】
請求項14に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、オキシム系ブロック剤を使用することで、コロイド状澱粉とブロックイソシアネートが均一分散したエマルジョンを得ることができる。
【0050】
請求項15に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、活性化澱粉の活性水酸基間距離に対応する所定サイズのポリイソシアネートにより効率よく澱粉の活性水酸基間を架橋することができる。
【0051】
請求項16に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースとして、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然セルロース等の)非活性化セルロースより増加した活性化セルロースを使用することにより、セルロース分子特有の構造(分子間の水素結合)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、セルロース分子を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項16に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができ、ひいては、地球生態系で循環する有機化合物であるセルロースを主剤とすることで、石油系の硬化性プラスチックバインダーに較べて大気中のCO2濃度の増加を抑制し、地球温暖化を防止することができる。また、ポリイソシアネートを硬化剤として用い、セルロースの高分子構造(β1・4グリコシド結合)を残しながらセルロース間の架橋反応を行うことで、容易に3次元網目構造を形成し、可塑性のバイオプラスチックバインダーより少ない製造エネルギーでプラスチックとしての機能をはたすことができる。
【0052】
請求項17に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、セルロース誘導体であるエーテル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0053】
請求項18に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アモルファスエーテル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0054】
請求項19に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースとして、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然セルロース等の)非活性化セルロースより増加した活性化セルロースを使用することにより、セルロース分子特有の構造(分子間の水素結合)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、セルロース分子を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項19に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができる。また、このような特性と合せ、1液タイプとしたことにより、自動車内装部品製造の熱プレス成形における材料へのバインダー含浸前処理への対応を可能とする。
【0055】
請求項20に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、活性処理セルロースであるエーテル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0056】
請求項21に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アモルファスエーテル化セルロース澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0057】
請求項22に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースとして、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然セルロース等の)非活性化セルロースより増加した活性化セルロースを使用することにより、セルロース分子特有の構造(分子間の水素結合)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、セルロース分子を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項22に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができる。また、このような特性と合せ、1液タイプとしたことにより、自動車内装部品製造の熱プレス成形における材料へのバインダー含浸前処理への対応を可能とし、水性であるためにVOCの発生を抑制し、環境への影響を最小限に留めることができる。加えて、ゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースを使用することにより、界面活性剤等の乳化剤を使用しなくても、ポリイソシアネートのエマルジョン化を円滑かつ安定的に図ることができる。
【0058】
請求項23に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、エーテル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0059】
請求項24に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アモルファスエステル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0060】
請求項25に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、コロイド状澱粉のPHを5〜9の範囲とすることで、エマルジョンが安定化する。
【0061】
請求項26に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、オキシム系ブロック剤を使用することで、コロイド状澱粉とブロックイソシアネートが均一分散したエマルジョンを得ることができる。
【0062】
請求項27に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、セルロースの活性水酸基間距離に対応する所定サイズのポリイソシアネートにより効率よく澱粉の活性水酸基間を架橋することができる。
【0063】
請求項28に係る硬化物は、請求項1乃至27のいずれか1項の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物に起因して、耐熱性、環境性等、特有の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)を説明する。
【0065】
実施の形態1
実施の形態1に係る硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態1に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉と、硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとからなる固体(澱粉)+液体(ポリイソシアネート)タイプ、即ち、固液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。本発明の澱粉としては、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を天然澱粉等の非活性化澱粉より増加した活性化澱粉を使用する。即ち、天然澱粉等の非活性化澱粉は、各澱粉分子のアミロース単位ごとに3個の水酸基を有するが、そのうちの1個のみが活性水酸基であり、残りの2個は(水素結合や立体障害等により活性を失った)非活性水酸基となっている。よって、天然澱粉等の非活性化澱粉は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合が、通常のままでは、約1/3となっている。これに対し、本発明は、主剤としての澱粉として、非活性化澱粉を、物理変性、化学変性、または化学変性と物理変性との組合せにより活性化することにより、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉の場合(1/3)より増加した澱粉(本出願書類中において「活性化澱粉」という)を使用する。具体的には、本発明は、主剤として、活性化澱粉における当該活性水酸基の割合を40%以上(化学変性澱粉の場合)または1/2以上(物理変性澱粉並びに化学変性と物理変性との組合せによる物理/化学変性澱粉の場合)とした活性化澱粉を使用する。なお、その限りにおいて、本発明の活性化澱粉としては、天然澱粉や、天然澱粉を物理変性または化学変性した化工澱粉等、任意の澱粉を使用することができる。また、現状では、澱粉は自然界に存在する天然澱粉しかないが、化学合成により同等の組成とされた合成澱粉(変性澱粉ではない)が生成できる場合、かかる合成澱粉も澱粉として使用することができる。ここで、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合は、正確に測定することは難しいが、主剤としての澱粉と硬化剤としてのポリイソシアネートとを混合して反応させた場合の反応率を比較することにより、活性水酸基の割合を推定することができる。例えば、非活性化澱粉(活性水酸基数の割合が1/3)とポリイソシアネートとを反応させたときの反応率Xに対し、活性化澱粉とポリイソシアネートとを反応させたときの反応率Yが2倍になっていれば、澱粉粒表面の活性水酸基の割合が2倍になったと推定でき、この場合、活性化澱粉の澱粉粒表面の活性水酸基の割合は1/3*2=2/3になったと推定できる。同様に、非活性化澱粉とポリイソシアネートとを反応させたときの反応率Xに対し、活性化澱粉とポリイソシアネートとを反応させたときの反応率Yが1.5倍(3/2倍)になっていれば、澱粉粒表面の活性水酸基の割合が1.5倍(3/2倍)になったと推定でき、この場合、活性化澱粉の澱粉粒表面の活性水酸基の割合は1/3*3/2=1/2になったと推定できる。
【0066】
以下、本発明で使用する主剤としての澱粉について説明する。澱粉は、タピオカ、馬鈴薯、コーン、小麦、甘藷、米、サゴ等、高等植物の貯蔵多糖類で、アミロース(アミロース分子)とアミロペクチン(アミロペクチン分子)からなる。アミロース及びアミロペクチンの割合は澱粉種により異なるが、通常、アミロースが約20〜25%で、アミロペクチンが約75〜80%である。なお、もち米やもちとうもろこし(もち種)等、アミロペクチンが約100%であり、アミロースをほとんど含有しないものもある。また、アミロースは、D−グルコースがα−1,4グリコシド結合で直鎖状に連結した重合体(多糖)であり、植物種によるが、一般に平均重合度約30〜3000、平均分子量数万〜数十万ともいわれ、非還元末端と還元末端とを各1個有する。なお、アミロースは、一部、α−1,6グリコシド結合により分岐するものもあるが、その割合は非常に小さい。アミロースは、水中で二重螺旋(2本螺旋(double-stranded helix))構造となり、水中に均一に分散する。また、螺旋構造の内側は疎水的環境であり、外側は親水性となっている。更に、アミロースは、極性、非極性を問わず、多くの化合物と強い相互作用を有しており、これらの化合物と複合体を形成する。更にまた、アミロースは、溶媒に溶解して非溶媒を加える等の処理を行って再生することにより、分子鎖がV−アミロース等の一重螺旋(1本螺旋(single-stranded helix))構造となる。なお、天然澱粉には、一重螺旋(1本螺旋(single-stranded helix))構造のアミロースも含有されている。以下に、アミロース分子の一般構造式(部分式)を示す。
【化1】
【0067】
一方、アミロペクチンは、アミロースの直鎖状分子がα−1,6グリコシド結合により多岐に分岐して重合した3次元構造をなす重合体(多糖)であり、一般に平均重合度約6千〜28万、平均分子量約16万〜600万ともいわれ、グルコースの比較的短いα−1,4鎖(グルコース残基約20〜30個を一単位)がα−1,6グリコシド結合により別のグルコース鎖と結合している。全グリコシド結合に対するα−1,6グリコシド結合の割合は約4%で、グルコース残基単位25に対し1個の割合である。アミロペクチンは、房状をなすクラスター構造を有し、そのうちの大部分が二重螺旋(2本螺旋)構造を有するといわれている。以下に、アミロペクチン分子の一般構造式(部分式)を示す。
【化2】
【0068】
澱粉粒は、化学的には上記のような直鎖状のアミロースと分岐状(房状)のアミロペクチンとが混在し、物理的には結晶部分(一重螺旋構造部分及び二重螺旋構造部分)並びに非晶質部分を含む不均質な物質である。かかるアミロースとアミロペクチンとは、ヒドロキシル基(水酸基)を介した水素結合により分子間結合すると共に分子内結合することに加え、結晶部分の立体構造(立体障害)により活性を有するヒドロキシル基(活性水酸基)の官能性も阻害されるため、通常の天然澱粉では、上述のように、活性水酸基の数は全体の水酸基のうちの約1/3程度であり、全体の約2/3の水酸基は活性を有しない不活性水酸基となっている。よって、通常の天然澱粉のままでは、硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートのイソシアネート基(N=C=O)と反応する活性水酸基の数が十分でなく、特に常温等での反応性乃至硬化性の点で十分ではない。なお、図1に、通常の天然澱粉の構造を模式的に示す。通常の天然澱粉は、図1に示すように、一重螺旋のアミロースに二重螺旋のアミロペクチンが分岐して連結した小房状のサブユニットを、放射状となるよう複数(図1では12個)連結して1ユニットとした、全体として放射房状(クラスター状)の構造を有していると考えることができる。そして、上記のように、通常の天然澱粉では、澱粉粒内のサブユニット間で水酸基が水素結合したり、澱粉粒間(ユニット間)で水酸基が水素結合したりして、活性水酸基の数が減少している。
【0069】
そこで、本発明者らは、物理変性、化学変性、或いは、化学変性と物理変性との組合せ(より好ましくは、物理変性または化学変性と物理変性との組合せ)により通常の天然澱粉の特に結晶構造を破壊または物理変性等して、分子間の水素結合を開放することにより、澱粉粒表面における活性水酸基数の割合を通常の非活性化澱粉の場合より増加して、化学変性のみの場合は全水酸基数の40%以上、物理変性の場合は全水酸基数の1/2以上となるように改善している。即ち、実施の形態1及び以降の実施の形態2〜24の澱粉は、澱粉粒表面の活性水酸基数が澱粉粒表面の全水酸基数の40%以上または1/2以上の割合となるように調製した活性化澱粉である。なお、活性水酸基とは、水酸基相互の水素結合または澱粉分子の立体障害により反応性が失われていない水酸基のことをいう。ここで、実施の形態1では、澱粉粒表面の活性水酸基数が澱粉粒表面の全水酸基数の40%以上または1/2以上の割合となるように、物理変性等により調製した活性化澱粉を使用することが好ましいが、澱粉粒表面の活性水酸基数が澱粉粒表面の全水酸基数の40%以上または1/2以上の割合となる天然澱粉を選択的に使用することも可能である。
【0070】
次に、上記澱粉の水酸基と反応して澱粉分子(ユニット間及び/またはサブユニット間)を架橋するポリイソシアネートについて説明する。ポリイソシアネートは、一般式CON−R−NCOにより表される化合物であり、実施の形態1では、反応性に富む芳香族系イソシアネートとして、トリレンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を好適に使用することができる。以下にTDI及びMDIの一般式を示す。(2,4'−TDI、2,6'−TDI、4,4'−MDI、2,4'−MDI、2,2'−MDIの順に表示。)
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0071】
しかし、これら以外にも、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族系イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加(水添)MDI、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水添XDI(H6XDI)等の脂環族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、ノルボルネン・ジイソシアネート(NBDI)等の脂肪族系イソシアネート等、各種有機ポリイソシアネートを使用したり、これらのビウレット化物、イソシアヌレート化物、カルボジイミド変性体を使用したり、更に、これらの混合物を使用したりすることができる。
【0072】
上記のように構成した実施の形態1に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、前記活性化澱粉を主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、澱粉粒表面の複数の活性水酸基(OH)がポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)と常温でウレタン結合(NHCOO)することで、澱粉分子間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化する。この状態から更に加熱すると、澱粉粒が軟化してその表面の水酸基が更に活性化されることで上記ウレタン結合反応が一層促進され、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態1に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図2に示す。図2に示すように、実施の形態1では、澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0073】
実施例1
実施例1は、実施の形態1に対応する実施例である。実施例1では、主剤としてのタピオカ澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネートを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、タピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式は次式(1)で表される。
2 St-OH + OCN-R-NCO → St-O-OCHN-R-NHCO-O-St ・・・(1)
なお、式中「St」は澱粉分子(Starch)を示す。
【0074】
実施の形態2
実施の形態2に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態2に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、化工澱粉、特に、物理的化工澱粉を使用したものである。具体的には、主剤としては、アルファー澱粉が使用される。このアルファー澱粉は、天然澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化し、微粉砕することにより、その水酸基を活性化して、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。このように、天然澱粉に加水加熱しゲル化後急速熱乾燥粉砕することにより、主として澱粉分子のα1,6グリコシド結合が切断されて澱粉分子が低分子化し、これら低分子化した澱粉分子が再結合することで、澱粉粒表面の活性水酸基数を増加したアルファー澱粉が生成される。実施の形態2に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアルファー澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのコーン澱粉の所定重量部に対し、水を所定重量部加えて混合攪拌したものを、所定温度に加熱したツインドラムドライヤー上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥し、所定粒径(例えば、250μm)未満に粉砕してアルファー澱粉を調製する。このときの加熱温度は、120℃以上180℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。そして、このアルファー澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記アルファー澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、アルファー澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、アルファー澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が多く反応性が高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、アルファー澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度は実施の形態1と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態2に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図3に示す。図3に示すように、実施の形態2では、澱粉粒乃至澱粉構造体(アルファー澱粉粒)における(物理変性による)小房状のサブユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネートが架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0075】
実施例2
実施例2は、実施の形態2に対応する実施例である。実施例2では、主剤としてのコーン澱粉90重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファー澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファー澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0076】
実施の形態3
実施の形態3に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態3に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、実施の形態2と同様、物理的化工澱粉(物理的変性澱粉)を使用したものである。具体的には、主剤としては熱分解澱粉が使用される。この熱分解澱粉は、天然澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものであり、例えば、かかる熱分解澱粉として焙焼デキストリン等を好適に使用することができる。このように、天然澱粉を熱分解することにより、澱粉分子のα1,4グリコシド結合及びα1,6グリコシド結合がランダムに切断されて澱粉分子の分子量が低下することで、活性水酸基数が増加した熱分解澱粉(デキストリン等)が生成される。実施の形態3に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかる熱分解澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのコーン澱粉を、所定温度に加熱した所定サイズのロータリーキルン中に投入し、同ロータリーキルン中を所定回転数の下で所定の排出速度で送り、熱分解することにより熱分解澱粉を調製する。このときの加熱温度は、100℃以上250℃までの範囲とし、特に180℃とすることが好ましい。また、ロータリーキルンの回転速度は、1〜20rpmの範囲とすることが好ましく、送り速度(排出速度)は、毎分10cm以上40cm以下の範囲とし、特に毎分30cmとすることが好ましい。そして、この熱分解澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記熱分解澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、熱分解澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、熱分解澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が多く反応性が高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、熱分解澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度は実施の形態1と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態3に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図4に示す。図4に示すように、実施の形態3では、澱粉粒乃至澱粉構造体(熱分解澱粉粒)における(物理変性による)小房状のサブユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネートが架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0077】
実施例3
実施例3は、実施の形態3に対応する実施例である。実施例3では、主剤としてのコーン澱粉を、180℃に加熱した長さ1.8m直径0.2mのロータリーキルン(KSマテリアル製)に投入し、同ロータリーキルン中を回転数1〜20rpmの回転数及び排出速度毎分30cmの速さで送り、熱分解して熱分解澱粉を調製した。また、調製した主剤としての熱分解澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、熱分解澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0078】
実施の形態4
実施の形態4に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態4に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、実施の形態2及び3と同様、物理的変性澱粉を使用したものである。具体的には、主剤としてはアモルファス澱粉が使用される。このアモルファス澱粉は、天然澱粉をボールミル等により衝撃粉砕して結晶構造(二重螺旋構造等)を破壊することにより、その水酸基を活性化して澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものであり、例えば、かかるアモルファス澱粉としてボールミル処理澱粉等を好適に使用することができる。このように、衝撃粉砕により天然澱粉の結晶構造を破壊することにより、主として澱粉粒子中の隣り合うαグルコースのC2位とC3位の水酸基間の水素結合が弱まり、水酸基が活性化したアモルファス澱粉が生成される。実施の形態3に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアモルファス澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのコーン澱粉を乾式ボールミルに投入して所定径のアルミナボールを所定量投入し、乾式ボールミルを所定回転数で所定時間運転し、コーン澱粉を衝撃粉砕してアモルファス澱粉を調製する。このとき、アルミナボールの径を10〜100mmの範囲とすると共にその投入量を1t〜3tの範囲とし、更に、乾式ボールミルの回転数を30〜100rpmの範囲とすると共に運転時間を4〜8時間の範囲とすることが好ましい。そして、このアモルファス澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記アモルファス澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、アモルファス澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、アモルファス澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が多く、また、その粒子が10μm以下となるため分散性も良いため、反応性が非常に高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、アモルファス澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度は実施の形態1と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態4に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図5に示す。図5に示すように、実施の形態4では、アモルファス澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)を示すに(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0079】
実施例4
実施例4は、実施の形態4に対応する実施例である。実施例4では、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)に主剤としてのコーン澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、コーン澱粉を衝撃粉砕してアモルファス澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファス澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アモルファス澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0080】
実施の形態2〜4で述べたように、主剤である活性化澱粉として、アルファー澱粉、熱分解澱粉、アモルファス澱粉等、物理的変性澱粉を使用すると、その調製作業が簡単となる一方で、澱粉の構造を物理的に変性、即ち、澱粉分子の螺旋構造を破壊したり弱めたりして、澱粉分子の分子内及び/または分子間の水素結合を開放(破壊)したり弱めたりすることにより、結果として、澱粉粒表面の活性水酸基数を増加し、全水酸基数の1/2以上の割合とすることができる。そして、このように澱粉粒表面の活性水酸基数を増加した活性化澱粉(物理的変性澱粉)は、ポリイソシアネートとの反応性が高まり、ポリイソシアネートにより効果的に架橋されて、迅速に、かつ、安定して所期の硬化物を生成することができる。このとき、上記のように、澱粉とポリイソシアネートとを混合して加熱することが早期硬化の点からは好ましいが、上記のように活性化澱粉の反応性が十分に高められているため、加熱しなくても常温で硬化反応は円滑に進行し、安定して硬化物を生成することができる。ここで、実施の形態2〜4では、物理変性した澱粉間を架橋するために、所定サイズのポリイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、各種ポリイソシアネートは、その一般式(化学構造式)で表される構造に対応するサイズを有するが、主剤として使用する澱粉の活性水酸基間の間隔に対応するサイズのポリイソシアネートを選択的に使用することで、架橋効率を飛躍的に向上することができる。
【0081】
具体的には、前記ポリイソシアネートとしては、ボールミル処理等の水酸基活性化により物理変性を受けた前記澱粉を使用する場合、当該物理変性澱粉(繊維周期:2.8〜5.6Å(アミロースの一重螺旋間)、8〜10.4Å(アミロースの一重螺旋中心間)、1.4〜2.8Å(アミロペクチンの二重螺旋間)、2.8〜5.6Å(アミロペクチンの二重螺旋中心間))の分子内または分子間活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用することが好ましい。より具体的には、ポリイソシアネートのサイズは、分子振動等により一定ではないが、この場合のポリイソシアネートのサイズは、10〜60Åの範囲とすることが好ましい。ここで、変性澱粉の場合、その分子間距離は天然澱粉等の未変性澱粉に比較してより大きくなるため、変性澱粉用のポリイソシアネートのサイズとしては、上記範囲のうちの大きい側(例えば、30〜60Å)の範囲とすることが好ましく、天然澱粉等の未変性澱粉の場合、上記範囲のうちの小さい側(例えば、10〜30Å)の範囲とすることが好ましい。こうすると、ポリイソシアネートにより、澱粉構造体のサブユニット間または変性澱粉のアミロースまたはアミロペクチンのユニット間を主として架橋することができる。
【0082】
実施の形態5
実施の形態5に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態5に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、化工澱粉、特に、化学的化工澱粉を使用したものである。具体的には、主剤としては、エステル化澱粉が使用される。このエステル化澱粉は、天然澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上とした化学的変性澱粉乃至澱粉誘導体である。かかるエステル化(R'CO−)澱粉としては、例えば、酢酸エステル化(CH3CO−)した酢酸澱粉エステル、リン酸エステル化((NaO)2PO−)したリン酸澱粉、澱粉コハク酸エステル等の澱粉有機酸エステル、硫酸エステル化(NaSO3−)した澱粉硫酸エステル、澱粉硝酸エステル等の澱粉無機酸エステル等々を使用することができる。このように、天然澱粉の水酸基をエステル化処理することにより、澱粉粒表面の活性水酸基数を増加すると共に官能基としてのカルボン酸基を有するエステル化澱粉が生成される。実施の形態5に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるエステル化澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、無水酢酸の所定重量部を加えて所定温度で所定時間加熱し、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化して洗浄乾燥することにより、アセチルタピオカ澱粉を調製する。そして、このエステル化澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記エステル化澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、エステル化澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、エステル化澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が多く反応性が高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、エステル化澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度は実施の形態1と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態5に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図6に示す。図6に示すように、実施の形態5では、エステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0083】
実施例5
実施例5は、実施の形態5に対応する実施例である。実施例5では、主剤としてのタピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカ澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0084】
実施の形態6
実施の形態6に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態6に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、上記実施の形態5のエステル化澱粉(化学的変性澱粉)を実施の形態2のアルファー澱粉(物理的変性澱粉)と同様の方法で更に物理的に変性した活性化澱粉としてのアルファーエステル化澱粉を使用したものである。具体的には、このアルファーエステル化澱粉は、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したものであり、これにより、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。無論、実施の形態6で使用するアルファーエステル化澱粉は、活性化澱粉を更に活性化したもの(二重に活性化したもの)であるため、実施の形態2のアルファー澱粉及び実施の形態5のエステル化澱粉と比較して、更に活性水酸基の割合を高めることができ、硬化反応性を更に向上することができる。このように、実施の形態5のようにして天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を、更に、実施の形態2のようにしてアルファー澱粉化することにより、主として澱粉のα1,6グリコシド結合が切断されてエステル化澱粉分子が低分子化し、これら低分子化したエステル化澱粉分子が再結合することで、澱粉粒表面の活性水酸基数を更に増加したアルファーエステル化澱粉が生成される。
【0085】
実施の形態6に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアルファーエステル化澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、無水酢酸の所定重量部を加えて所定温度で所定時間加熱し、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化して洗浄乾燥することにより、アセチルタピオカ澱粉を調製する。次に、アセチルタピオカ澱粉の所定重量部に対し、水を所定重量部加えて混合攪拌したものを、所定温度に加熱したツインドラムドライヤー上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥し、所定粒径未満に粉砕してアルファー澱粉を調製する。このときの加熱温度等の条件は、実施の形態2及び5と同様とすることができる。なお、このときの水に対するアセチルタピオカ澱粉の配合比は、実施の形態2の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。そして、このアルファーエステル化澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記アルファーエステル化澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、アルファーエステル化澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、アルファーエステル化澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が一層多く反応性が一層高くなっている。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、アルファーエステル化澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度等の条件も、実施の形態1と同様とすることができる。なお、実施の形態6に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図7に示す。図7に示すように、実施の形態6では、澱粉粒乃至澱粉構造体(アルファーエステル化澱粉粒)における(化学変性及び物理変性による)小房状のサブユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネートが架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0086】
実施例6
実施例6は、実施の形態6に対応する実施例である。実施例6では、主剤としてのタピオカ澱粉90重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉5重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファーエステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファーエステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アルファーエステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0087】
実施の形態7
実施の形態7に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態7に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、上記実施の形態5のエステル化澱粉(化学的変性澱粉)を実施の形態3の熱分解澱粉(物理的変性澱粉)と同様の方法で更に物理的に変性した活性化澱粉としての熱分解エステル化澱粉を使用したものである。具体的には、この熱分解エステル化澱粉は、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化したものであり、これにより澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。無論、実施の形態7で使用する熱分解エステル化澱粉は、実施の形態6と同様、活性化澱粉を更に活性化したものであるため、実施の形態3の熱分解澱粉及び実施の形態5のエステル化澱粉と比較して、更に活性水酸基の割合を高めることができ、硬化反応性を更に向上することができる。このように、実施の形態5のようにして天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を、更に、実施の形態3のようにして熱分解澱粉化することにより、主として澱粉のα1,4グリコシド結合及びα1,6グリコシド結合がランダムに切断されてエステル化澱粉分子の分子量が低下することで、澱粉粒表面の活性水酸基数を更に増加した熱分解エステル化澱粉が生成される。
【0088】
実施の形態7に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかる熱分解エステル化澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、無水酢酸の所定重量部を加えて所定温度で所定時間加熱し、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化して洗浄乾燥することにより、アセチルタピオカ澱粉を調製する。このときの無水酢酸に対するタピオカ澱粉の配合比は、実施の形態5の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。次に、アセチルタピオカ澱粉を、所定温度に加熱した所定サイズのロータリーキルン中に投入し、同ロータリーキルン中を所定回転数の下で所定の排出速度で送り、熱分解することにより熱分解エステル化澱粉を調製する。このときの加熱温度は、実施の形態3と同様とすることができる。一方、このときのロータリーキルンの送り速度(排出速度)は、毎分10cm以上30cm以下の範囲とし、特に毎分20cmとすることが好ましい。そして、この熱分解エステル化澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記熱分解エステル化澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、熱分解エステル化澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、熱分解エステル化澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が一層多く反応性が一層高くなっている。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、熱分解エステル化澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度等の条件も、実施の形態1と同様とすることができる。なお、実施の形態7に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図8に示す。図8に示すように、実施の形態7では、澱粉粒乃至澱粉構造体(熱分解エステル化澱粉粒)における(化学変性及び物理変性による)小房状のサブユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネートが架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0089】
実施例7
実施例7は、実施の形態7に対応する実施例である。実施例7では、主剤としてのタピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉を、180℃に加熱した長さ1m直径30cmのロータリーキルン(クドウエンジニアリング製)に投入し、同ロータリーキルン中を排出速度毎分20cmの速さで送り、熱分解して熱分解エステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としての熱分解エステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、熱分解エステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0090】
実施の形態8
実施の形態8に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態8に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、上記実施の形態5のエステル化澱粉(化学的変性澱粉)を実施の形態4のアモルファス澱粉(物理的変性澱粉)と同様の方法で更に物理的に変性した活性化澱粉としてのアモルファスエステル化澱粉を使用したものである。具体的には、このアモルファスエステル化澱粉は、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化したものであり、これにより澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。無論、実施の形態8で使用するアモルファスエステル化澱粉は、実施の形態6及び7と同様、活性化澱粉を更に活性化したものであるため、実施の形態4の熱分解澱粉及び実施の形態5のエステル化澱粉と比較して、更に活性水酸基の割合を高めることができ、硬化反応性を更に向上することができる。このように、実施の形態5のようにして天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を、更に、実施の形態4のようにしてアモルファス澱粉化することにより、主として澱粉粒子中の隣り合うαグルコースのC2位とC3位の水酸基間の水素結合が弱まり、水酸基が更に活性化したアモルファスエステル化澱粉が生成される。
【0091】
実施の形態8に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアモルファスエステル化澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、無水酢酸の所定重量部を加えて所定温度で所定時間加熱し、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化して洗浄乾燥することにより、アセチルタピオカ澱粉を調製する。このときの無水酢酸に対するタピオカ澱粉の配合比は、実施の形態5の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。次に、アセチルタピオカ澱粉を、乾式ボールミルに投入して所定径のアルミナボールを所定量投入し、乾式ボールミルを所定回転数で所定時間運転し、アセチルタピオカ澱粉を衝撃粉砕してアモルファスエステル化澱粉を調製する。このときの乾式ボールミルの回転速度や運転時間及びアルミナボールの径や投入量等の条件は、実施の形態4と同様とすることができる。そして、このアモルファスエステル化澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記アモルファスエステル化澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、アモルファスエステル化澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、アモルファスエステル化澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が一層多く、また、その粒子が10μm以下となるため分散性も良いため、反応性が非常に高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、アモルファスエステル化澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度等の条件も、実施の形態1と同様とすることができる。なお、実施の形態8に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図9に示す。図9に示すように、実施の形態8では、化学変性及び物理変性を受けたアモルファスエステル化澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0092】
実施例8
実施例8は、実施の形態8に対応する実施例である。実施例8では、主剤としてのタピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)に、調製したアセチルタピオカ澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、アセチルタピオカ澱粉を衝撃粉砕してアモルファスエステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファスエステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アモルファスエステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0093】
ここで、アモルファスエステル化澱粉(アモルファスアセチルタピオカ澱粉)のX線回折ピークをX線回折ピーク測定装置(リガク製ミニフレックスII)により測定した。また、比較例として、アセチルタピオカ澱粉のX線回折ピークも同X線回折ピーク測定装置により測定した。それらの結果を図10及び図11に示す。更に、主剤にアモルファスアセチルタピオカ澱粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーと、主剤にエステル化澱粉(アセチルタピオカ澱粉)を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーとについて、常温硬化したときのウレタン結合の結合振動(反応率)をフーリエ変換赤外分光装置(日本分光製FT/IR−6100))により測定した。その結果を図12に示す。反応率は熱硬化したものを100%として求めた。図12に示すように、アセチルタピオカ澱粉のアモルファス化により、水酸基の活性が更に上がり、反応率が一層増大したことがわかる。
【0094】
実施の形態9
実施の形態9に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態9に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉と、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。本発明の澱粉としては、実施の形態1と同様、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした活性化澱粉を使用する。また、ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記澱粉と混合分散されて安定化している。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記澱粉の活性水酸基と結合し、アミロース及びアミロペクチンの分子内水酸基及び/または分子間水酸基間を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。即ち、硬化性プラスチックバインダー組成物を加熱することで、ブロックイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基が活性化され、澱粉粒表面の複数の活性水酸基がポリイソシアネートのイソシアネート基と(常温となっても)ウレタン結合することで、澱粉分子間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化する。この状態から更に加熱すると、澱粉粒が軟化してその表面の水酸基が更に活性化されることで上記ウレタン結合反応が一層促進され、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。なお、実施の形態9に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図13に示す。図13に示すように、実施の形態9では、澱粉粒(結晶)の一般構造(固定)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0095】
実施例9
実施例9は、実施の形態9に対応する実施例である。実施例9では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤としてのタピオカ澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、タピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式は次式(2)で表される。
BL-OCHN-R-NHCO-BL ⇔ 2 BL + OCN-R-NCO
2 St-OH + OCN-R-NCO → St-O-OCHN-R-NHCO-O-St ・・・(2)
なお、式中「BL」はブロック剤を示す。ここで、ブロック剤(BL)としては、例えば、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソアミルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム等のケトオキシム系ブロック剤やオキシム系ブロック剤、フェノール、クレゾール、カテコール、ニトロフェノール等のフェノール系ブロック剤、イソプロパノール、トリメチロールプロパン等のアルコール系ブロック剤、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル等の活性メチレン系ブロック剤、等々を好適に使用することができる。特に、ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用すると、ブロックイソシアネート(液体)中への澱粉の均一分散を非常に円滑に行うことができる。一方、アルコール系ブロック剤を使用する場合、澱粉の均一分散性の点から、エタノール系のものはあまり好ましくなく、上記のようにメタノール系のものを使用することが好ましい。
【0096】
実施の形態10
実施の形態10に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態10に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態2と同様のアルファー澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態10では、澱粉として、天然澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉を使用し、このアルファー澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アルファー澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態10に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図14に示す。図14に示すように、実施の形態10では、澱粉粒乃至澱粉構造体(アルファー澱粉粒)における(物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネートとが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがサブユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0097】
実施例10
実施例10は、実施の形態10に対応する実施例である。実施例10では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、コーン澱粉90重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー(中央食料製)上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファー澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファー澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0098】
実施の形態11
実施の形態11に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態11に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態3と同様の熱分解澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態11では、澱粉として、天然澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉を使用し、この熱分解澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記熱分解澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態11に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図15に示す。図15に示すように、実施の形態11では、澱粉粒乃至澱粉構造体(熱分解澱粉粒)における(物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネートとが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがサブユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0099】
実施例11
実施例11は、実施の形態11に対応する実施例である。実施例11では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、コーン澱粉を、180℃に加熱した長さ1.8m、直径0.2mのロータリーキルン(KSマテリアル製)に投入し、同ロータリーキルン中を回転数1〜20rpmの回転数及び排出速度毎分30cmの速さで送り、熱分解して熱分解澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファー澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、熱分解澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0100】
実施の形態12
実施の形態12に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態12に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態4と同様のアモルファス澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態12では、澱粉として、天然澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉を使用し、このアモルファス澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アモルファス澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態12に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図16に示す。図16に示すように、実施の形態12では、物理変性されたアモルファス澱粉粒(非結晶)の一般構造(固定)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0101】
実施例12
実施例12は、実施の形態12に対応する実施例である。実施例12では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)にコーン澱粉を投入して6時間運転し、コーン澱粉を衝撃粉砕してアモルファス澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファス澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファス澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0102】
実施の形態13
実施の形態13に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態13に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態5と同様のエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態13では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用し、このエステル化澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記エステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態13に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図17に示す。図17に示すように、実施の形態13では、化学変性されたエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固定)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0103】
実施例13
実施例13は、実施の形態13に対応する実施例である。実施例13では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカ澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、エステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0104】
実施の形態14
実施の形態14に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態14に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態6と同様のアルファーエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態14では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉を使用し、このアルファーエステル化澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アルファーエステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態14に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図18に示す。図18に示すように、実施の形態14では、澱粉粒乃至澱粉構造体(アルファーエステル化澱粉粒)における(化学変性及び物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネートとが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0105】
実施例14
実施例14は、実施の形態14に対応する実施例である。実施例14では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉5重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー(中央食料製)上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファーエステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファーエステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アルファーエステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0106】
実施の形態15
実施の形態15に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態15に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態7と同様の熱分解エステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態15では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉を使用し、この熱分解エステル化澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記熱分解エステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態15に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図19に示す。図19に示すように、実施の形態15では、澱粉粒乃至澱粉構造体(熱分解エステル化澱粉粒)における(化学変性及び物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0107】
実施例15
実施例15は、実施の形態15に対応する実施例である。実施例15では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉を、180℃に加熱した長さ1m直径30cmのロータリーキルン(クドウエンジニアリング製)に投入し、同ロータリーキルン中を排出速度毎分20cmの速さで送り、熱分解して熱分解エステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としての熱分解エステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、熱分解エステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0108】
実施の形態16
実施の形態16に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態16に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態8と同様のアモルファスエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態16では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉を使用し、このアモルファスエステル化澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アモルファスエステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態16に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図20に示す。図20に示すように、実施の形態16では、アモルファスエステル化澱粉粒(非結晶)の一般構造(固定)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0109】
実施例16
実施例16は、実施の形態16に対応する実施例である。実施例16では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)に、調製したアセチルタピオカ澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、アセチルタピオカ澱粉を衝撃粉砕してアモルファスエステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファスエステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファスエステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0110】
実施の形態17
実施の形態17に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態17に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉をコロイド状(ゾル状またはゲル状)としたコロイド状澱粉と、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。コロイド状澱粉は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした主剤としての澱粉を加水加熱してゾル化またはゲル化した(ゾル状またはゲル状の)コロイド状をなすものである。また、ブロックイソシアネートは、上記実施の形態9と同様のものであり、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状澱粉と混合分散されて(順ミセル状または逆ミセル状に)エマルジョン化され、安定化している。即ち、実施の形態17では、界面活性剤等の乳化剤乃至分散剤を添加乃至混合しなくても、(通常は疎水性の)ブロックイソシアネートが(ゾル状またはゲル状の)コロイド状澱粉と順ミセル状のエマルジョンを形成し、ブロックイソシアネートがコロイド状澱粉内に粒子状に安定的に均一分散したり、逆に、ブロックイソシアネートがコロイド状澱粉と逆ミセル状のエマルジョンを形成し、コロイド状澱粉がブロックイソシアネート内に粒子状に安定的に均一分散したりする。これは、澱粉のゾル化またはゲル化により、澱粉分子の水酸基が水素結合することに起因すると考えられる。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、まず、コロイド状澱粉の水分が蒸発して、澱粉ゾルまたは澱粉ゲル中の水素結合が開放され、続いて、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記澱粉の活性水酸基と結合し、アミロース及びアミロペクチンの分子内水酸基及び/または分子間水酸基の間を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。即ち、硬化性プラスチックバインダー組成物を加熱することで、ブロックイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基が活性化され、澱粉粒表面の複数の活性水酸基がポリイソシアネートのイソシアネート基と(常温となっても)ウレタン結合することで、澱粉分子間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化する。この状態から更に加熱すると、澱粉粒が軟化してその表面の水酸基が更に活性化されることで上記ウレタン結合反応が一層促進され、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。ここで、ブロック剤としては、特に、オキシム系ブロック剤を使用することが好ましく、この場合、ブロックイソシアネートとコロイド状澱粉とのエマルジョン化を非常に円滑かつ安定して行うことができる。一方、アルコール系ブロック剤を使用する場合、ブロックイソシアネートとコロイド状澱粉とのエマルジョン化を安定的に行う点から、エタノール系のものはあまり好ましくなく、上記のようにメタノール系のものを使用することが好ましい。なお、実施の形態17に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図21に示す。図21に示すように、実施の形態17では、ゾルまたはゲル化澱粉粒(結晶)の一般構造を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネートとが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0111】
実施例17
実施例17は、実施の形態17に対応する実施例である。実施例17では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤としてのタピオカ澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、タピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0112】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのタピオカ澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、タピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0113】
上記いずれの場合も、反応式は次式(3)で表される。
St-OH----H2O → St-OH + H2O↑
BL-OCHN-R-NHCO-BL ⇔ 2 BL + OCN-R-NCO
2 St-OH + OCN-R-NCO → St-O-OCHN-R-NHCO-O-St ・・・(3)
【0114】
実施の形態18
実施の形態18に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態18に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態2と同様のアルファー澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態18では、澱粉として、天然澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉を使用し、このアルファー澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アルファー澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態18に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図22に示す。図22に示すように、実施の形態18では、ゾルまたはゲル化アルファー澱粉粒乃至澱粉構造体を示す(物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0115】
実施例18
実施例18は、実施の形態18に対応する実施例である。実施例18では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、コーン澱粉5重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー(中央食料製)上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、コーンアルファー澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのコーンアルファー澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンアルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0116】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのコーンアルファー澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンアルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0117】
実施の形態19
実施の形態19に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態19に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態3と同様の熱分解澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態19では、澱粉として、天然澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉を使用し、この熱分解澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記熱分解澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態19に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図23に示す。図23に示すように、実施の形態19では、ゾルまたはゲル化した熱分解澱粉粒乃至澱粉構造体を示す(物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0118】
実施例19
実施例19は、実施の形態19に対応する実施例である。実施例19では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、コーン澱粉を、180℃に加熱した長さ1.8m直径0.2mのロータリーキルン(KSマテリアル製)に投入し、同ロータリーキルン中を回転数1〜20rpmの回転数及び排出速度毎分30cmの速さで送り、熱分解して熱分解澱粉を調製した。また、調製した主剤としての熱分解澱粉(コーンデキストリン)50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0119】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのコーンデキストリンを50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0120】
実施の形態20
実施の形態20に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態20に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態4と同様のアモルファス澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態20では、澱粉として、天然澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉を使用し、このアモルファス澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アモルファス澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態20に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図24に示す。図24に示すように、実施の形態20では、アモルファス澱粉粒(非結晶)の一般構造を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0121】
実施例20
実施例20は、実施の形態20に対応する実施例である。実施例20では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)にコーン澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、コーン澱粉を衝撃粉砕してアモルファス澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファス澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。実施の形態20に記載の条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンの分散例を図25に示す。また、その比較例として、実施の形態20に記載の条件と異なる条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンの分散例を図26に示す。図25及び図26共に、所定倍率(×100)の光学顕微鏡写真である。図25に示すように、実施の形態20に記載の条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンでは、ゾル状またはゲル状のアモルファス澱粉(コロイド状澱粉)とブロックイソシアネートとが良好に分散しているが、図26に示すように、実施の形態20に記載の条件と異なる条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンでは、ゾル状またはゲル状のアモルファス澱粉(コロイド状澱粉)とブロックイソシアネートとが十分に分散せず分散不良となっていることが確認できる。
【0122】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアモルファス澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファス澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0123】
実施の形態21
実施の形態21に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態21に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態5と同様のエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態21では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用し、このエステル化澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。なお、実施の形態21におけるエステル化澱粉の調製は、上記実施の形態6〜9におけるエステル化澱粉の調製と同様にして行うことができ、無水酢酸等に対するタピオカ澱粉等の澱粉の配合比は、実施の形態5の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記エステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態21に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図27に示す。図27に示すように、実施の形態21では、ゾル化またはゲル化したエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0124】
実施例21
実施例21は、実施の形態21に対応する実施例である。実施例21では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカ澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0125】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアセチルタピオカ澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0126】
実施の形態22
実施の形態22に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態22に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態6と同様のアルファーエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態22では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉を使用し、このアルファーエステル化澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。なお、実施の形態22におけるエステル化澱粉の調製は、上記実施の形態21におけるエステル化澱粉の調製と同様にして行うことができ、無水酢酸等に対するタピオカ澱粉等の澱粉の配合比は、実施の形態6の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アルファーエステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態22に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図28に示す。図28に示すように、実施の形態22では、ゾル化またはゲル化したアルファーエステル化澱粉粒を示す小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0127】
実施例22
実施例22は、実施の形態22に対応する実施例である。実施例22では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉5重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー(中央食料製)上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファーエステル化澱粉(アセチルタピオカアルファー澱粉)を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカアルファー澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカアルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0128】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアセチルタピオカアルファー澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカアルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0129】
実施の形態23
実施の形態23に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態23に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態7と同様の熱分解エステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態23では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉を使用し、この熱分解エステル化澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。なお、実施の形態23におけるエステル化澱粉の調製は、上記実施の形態21におけるエステル化澱粉の調製と同様にして行うことができ、無水酢酸等に対するタピオカ澱粉等の澱粉の配合比は、実施の形態7の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記熱分解エステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態23に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図29に示す。図29に示すように、実施の形態23では、ゾル化またはゲル化した熱分解エステル化澱粉粒の一般構造を示す小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0130】
実施例23
実施例23は、実施の形態23に対応する実施例である。実施例23では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉を、180℃に加熱した長さ1m、直径0.2mのロータリーキルン(KSマテリアル製)に投入し、同ロータリーキルン中を回転数1〜20rpmの回転数及び排出速度毎分30cmの速さで送り、熱分解して熱分解エステル化澱粉(アセツルタピオカデキストリン)を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカデキストリン50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0131】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアセチルタピオカデキストリンを50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0132】
実施の形態24
実施の形態24に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態24に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態8と同様のアモルファスエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態24では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉を使用し、このアモルファスエステル化澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。なお、実施の形態24におけるエステル化澱粉の調製は、上記実施の形態21におけるエステル化澱粉の調製と同様にして行うことができ、無水酢酸等に対するタピオカ澱粉等の澱粉の配合比は、実施の形態8の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アモルファスエステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態24に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図30に示す。図30に示すように、実施の形態24では、ゾル化またはゲル化したアモルファスエステル化澱粉粒の一般構造を示す小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0133】
実施例24
実施例24は、実施の形態24に対応する実施例である。実施例24では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)に、調製したアセチルタピオカ澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、アセチルタピオカ澱粉を衝撃粉砕してアモルファスアセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファスアセチルタピオカ澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファスアセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0134】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアモルファスアセチルタピオカ澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファスアセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0135】
ところで、上記実施の形態17〜24に対応する実施例17〜24において、主剤としての各種澱粉はゲル状に調製されているが、これはゾル状の段階を経て時間の経過と共にゲル状となることを意味し、かかるゲル状の澱粉を攪拌等すれば再度ゾル状となる。
【0136】
また、上記実施の形態17〜23において、ゾル状またはゲル状の澱粉(コロイド状澱粉)は、PHを5〜9の範囲とするよう調製することが好ましい。こうすると、澱粉ゲルまたは澱粉ゾル(コロイド状澱粉)をより一層安定化することができる。
【0137】
更に、上記実施の形態17〜23のようにゾル状またはゲル状の澱粉(コロイド状澱粉)を主剤として使用する場合も、ブロックイソシアネートのブロック剤としてはケトオキシム系ブロック剤等のオキシム系ブロック剤を使用することが好ましい。こうすると、ブロックイソシアネート(液体)とコロイド状澱粉とのエマルジョン化をより一層に円滑に行い、安定した均一分散を図ることができる。
【0138】
実施の形態25
実施の形態25に係る硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態25に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースと、硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとからなる固体(澱粉)+液体(ポリイソシアネート)タイプ、即ち、固液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。本発明のセルロースとしては、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を天然セルロース等の非活性化セルロースより増加した活性化セルロースを使用する。即ち、天然セルロース等の非活性化セルロースは、各セルロース分子のアミロース単位ごとに3個の水酸基を有するが、そのうちの1個のみが活性水酸基であり、残りの2個は(水素結合や立体障害等により活性を失った)非活性水酸基となっている。よって、天然セルロース等の非活性化セルロースは、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合が、通常のままでは、約1/3となっている。これに対し、本発明は、主剤としてのセルロースとして、非活性化セルロースを、物理変性、化学変性、または化学変性と物理変性との組合せにより活性化することにより、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースの場合(1/3)より増加したセルロース(本出願書類中において「活性化セルロース」という)を使用する。具体的には、本発明は、主剤として、活性化セルロースにおける当該活性水酸基の割合を1/2以上とした活性化セルロースを使用する。なお、その限りにおいて、本発明の活性化セルロースとしては、天然セルロース、天然セルロースを化学変性したセルロース誘導体等、セルロース誘導体を更に物理変性したもの等、任意のセルロースを使用することができる。また、現状では、セルロースは自然界に存在する天然澱粉しかないが、化学合成により同等の組成とされた合成セルロース(変性セルロースではない)が生成できる場合、かかる合成セルロースもセルロースとして使用することができる。ここで、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合は、正確に測定することは難しいが、上記澱粉の場合と同様に、主剤としてのセルロースと硬化剤としてのポリイソシアネートとを混合して反応させた場合の反応率を比較することにより、活性水酸基の割合を推定することができる。
【0139】
以下、本発明で使用する主剤としてのセルロースについて説明する。セルロースは、Dグルコース残基がβ−1,4グリコシド結合により直鎖状に連結した重合体(多糖類)で、セロビオースユニットを1単位とする鎖状高分子である。天然セルロースは、植物の細胞壁に多く含まれ、重合度及び平均分子量は植物種により異なるが、木綿や麻では重合度約2千〜3千、平均分子量約30万〜50万である。以下に、セルロース分子の一般構造式(部分式)を示す。
【化8】
【0140】
セルロースのグルコース単位(グルコース残基)は、C(2)位、C(3)位及びC(6)位にヒドロキシ基(水酸基)を有し、2位及び3位の水酸基は二級水酸基、6位の水酸基は一級水酸基となっている。また、セルロース分子の一方の末端のC(1)位の水酸基は還元性を示す還元性末端基であり、他方の末端のC(4)位の水酸基は還元性を示さない非還元性末端基である。セルロース中のグルコース残基の水酸基は赤道結合をする一方、炭素原子と水素原子とは軸結合しているため、セルロース分子鎖は、疎水性及び親水性のサイトを有している。また、セルロース分子は、分子内水素結合のみならず、水酸基間に分子間水素結合を形成する。したがって、セルロース分子は、分子内の水素結合がO3−05間で形成された剛直な板状分子であり、隣接するセルロース分子が更に水酸基による分子間水素結合で結合する層状構造を形成している。このため、セルロースは水には殆ど不溶となる。このように、セルロースは、活性を有するヒドロキシル基(活性水酸基)の官能性が阻害されるため、通常の天然セルロースのままでは、硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートのイソシアネート基(N=C=O)と反応する活性水酸基の数が十分でなく、特に常温等での反応性乃至硬化性の点で十分ではない。
【0141】
そこで、本発明者らは、物理的変性や化学的変性により通常の天然セルロースの分子間の水素結合を開放することにより、セルロース表面における活性水酸基数の割合を全水酸基数の1/2以上となるように改善している。即ち、実施の形態25及び以降の実施の形態26〜30のセルロースは、セルロース表面の活性水酸基数がセルロース表面の全水酸基数の1/2以上の割合となるように調製したセルロースである。ここで、実施の形態25では、セルロース表面の活性水酸基数がセルロース表面の全水酸基数の1/2以上の割合となるように、化学変性等により調製した活性化セルロースを使用することが好ましいが、セルロース表面の活性水酸基数がセルロース表面の全水酸基数の1/2以上の割合となる天然セルロースを選択的に使用することも可能である。
【0142】
上記セルロースの水酸基と反応してセルロース分子を架橋するポリイソシアネートとしては、上記実施の形態1で述べたようなポリイソシアネート(TDI,MDI等)を使用することができる。
【0143】
上記のように構成した実施の形態25に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、前記活性化セルロースを主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、セルロースとしての木粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記セルロースと同一重量部だけ加えて混合する。すると、セルロース表面の複数の活性水酸基(OH)がポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)と常温でウレタン結合(NHCOO)することで、セルロース分子またはセルロースミクロフィブリル(MF)間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化する。この状態から更に加熱すると、セルロース表面の水酸基が更に活性化されることで上記ウレタン結合反応が一層促進され、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態25に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図31に示す。図31に示すように、実施の形態25では、セルロース(結晶)の一般構造(繊維)の活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋している。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0144】
実施例25
実施例25は、実施の形態25に対応する実施例である。実施例25では、主剤としての木粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネートを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、木粉のセルロース分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式は次式(4)で表される。
2 Cel-OH + OCN-R-NCO → Cel-O-OCHN-R-NHCO-O-Cel ・・・(4)
なお、式中「Cel」はセルロース分子(Cellulose)を示す。
【0145】
実施の形態26
実施の形態26に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態26に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態25において、主剤としてのセルロースとして、セルロースをエーテル化処理したセルロース誘導体としてのエーテル化セルロースを使用したものである。具体的には、主剤としてのエーテル化セルロースは、天然セルロースの水酸基をエーテル化処理することによりその水酸基を活性化して、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたセルロース誘導体である。かかるエーテル化(R'')セルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC:−CH2COONa)、メチルセルロース(MC:−CH3)、エチルセルロース(EC:−CH2CH3)、シアノエチルセルロース(CyEC:CH2CH2CN)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC:−CH2CH2OH)等のヒドロキシアルキルセルロースとその誘導体、Cellulose−(CH2)2OH、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を使用することができる。このように、天然セルロースの水酸基をエーテル化処理することにより、セルロース表面の活性水酸基数を増加したエステル化セルロースが生成される。実施の形態26に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるエステル化セルロースを主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、セルロースとしての木粉に対し、NaOH、イソプロパノール及び水を加えて攪拌し、更にモノクロル酢酸ソーダを加えて所定温度で所定時間反応させることにより、粗カルボキシメチルセルロースを調製する。更に、粗カルボキシメチルセルロースにNaCl、グリコール酸、水、イソピロパノールを加えてろ過することによりカルボキシメチルセルロースを調製する。前記所定温度及び所定時間としては、例えば、70〜80℃の温度範囲で2時間程度の時間とすることができる。そして、このエーテル化セルロースの所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記エーテル化セルロースと同一重量部だけ加えて混合し所定加熱温度で加熱する。すると、実施の形態25と同様にして、エーテル化セルロース表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、エーテル化セルロースは、通常の天然セルロースに較べて活性水酸基数が多く反応性が高い。このときの加熱温度は実施の形態25と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態26に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図32に示す。図32に示すように、実施の形態26では、エーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)の活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋している。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0146】
実施例26
実施例26は、実施の形態26に対応する実施例である。実施例26では、主剤であるセルロースとしての木粉に対し、NaOH、イソプロパノール及び水を加えて攪拌し、この混合物に更にモノクロル酢酸ソーダを加えて70〜80℃の温度で2時間反応させることにより、粗カルボキシメチルセルロースを調製した。また、調製した粗カルボキシメチルセルロースにNaCl、グリコール酸、水、イソピロパノールを加えてろ過することにより、カルボキシメチルセルロースを調製した。そして、調製した主剤としてのカルボキシメチルセルロース50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、カルボキシメチルセルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(4)で表される。実施例26では、主剤にカルボキシメチルセルロースを使用した硬化性バイオプラスチックバインダーと、主剤に木粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーとについて、常温硬化したときのウレタン結合の結合振動(反応率)をフーリエ変換赤外分光装置(日本分光製FT/IR−6100))により測定した。その結果を図33に示す。反応率は熱硬化したものを100%として求めた。図33に示すように、エステル化により水酸基の活性が上がり、反応率が増大したことがわかる。
【0147】
実施の形態27
実施の形態27に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態27に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態25において、主剤としてのセルロースとして、上記実施の形態26のエーテル化セルロースを実施の形態4のアモルファス澱粉(物理的変性澱粉)と同様の方法で更に物理的に変性した活性化セルロースとしてのアモルファスエーテル化セルロースを使用したものである。具体的には、このアモルファスエーテル化セルロースは、天然セルロースの水酸基をエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することにより、エーテル化セルロース分子間の水素結合を弱め、その水酸基を活性化したものであり、これにより澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。無論、実施の形態27で使用するアモルファスエーテル化セルロースは、実施の形態26のエーテル化セルロースを更に活性化したものであるため、実施の形態26のエーテル化セルロースと比較しても、更に活性水酸基の割合を高めることができ、硬化反応性を更に向上することができる。このように、実施の形態27のようにして天然セルロースの水酸基をエーテル化処理したエーテル化セルロースを、更に、実施の形態4のようにしてアモルファス化することにより、主としてセルロース中の隣り合うαグルコースのC2位とC3位の水酸基間の水素結合が弱まり、水酸基が更に活性化したアモルファスエーテル化セルロースが生成される。
【0148】
実施の形態27に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアモルファスエーテル化セルロースを主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。即ち、アモルファスエーテル化セルロース表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、CMC等のアモルファスエーテル化セルロースは、通常の天然セルロースに較べて活性水酸基数が一層多く、また、水溶性で分散性も良いため、反応性が非常に高い。なお、実施の形態27に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図34に示す。図34に示すように、実施の形態27では、アモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)の活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋している。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0149】
実施の形態28
実施の形態28に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態28に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースと、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。本発明のセルロースとしては、実施の形態25と同様、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした活性化セルロースを使用する。また、ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記セルロースと混合分散されて安定化している。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記セルロースの活性水酸基と結合し、セルロース分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。即ち、硬化性プラスチックバインダー組成物を加熱することで、ブロックイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基が活性化され、セルロース表面の複数の活性水酸基がポリイソシアネートのイソシアネート基と(常温となっても)ウレタン結合することで、セルロース分子間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化し、硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。なお、実施の形態28に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図35に示す。図35に示すように、実施の形態28では、セルロース(結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがセルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0150】
実施例28
実施例27は、実施の形態28に対応する実施例である。実施例27では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤であるセルロースとしての木粉50重量部に対し、硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、木粉のセルロース分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式は次式(5)で表される。
BL-OCHN-R-NHCO-BL ⇔ 2 BL + OCN-R-NCO
2 Cel-OH + OCN-R-NCO → Cel-O-OCHN-R-NHCO-O-Cel ・・・(5)
なお、ブロック剤としては、実施の形態9と同様のものを使用することができる。
【0151】
実施の形態29
実施の形態29に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態29に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態28において、主剤としてのセルロースとして、実施の形態26と同様のエーテル化セルロースを使用したものである。即ち、実施の形態29では、セルロースとして、天然セルロースの水酸基をエーテル化処理することによりその水酸基を活性化して前記セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用し、このエーテル化セルロースを前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態28と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態28と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記エーテル化セルロースのセルロース分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態29に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図36に示す。図36に示すように、実施の形態29では、エーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがエーテル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0152】
実施例28
実施例28は、実施の形態29に対応する実施例である。実施例28では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤であるセルロースとしての木粉に対し、NaOH、イソプロパノール及び水を加えて攪拌し、この混合物に更にモノクロル酢酸ソーダを加えて70〜80℃の温度で2時間反応させることにより、粗カルボキシメチルセルロースを調製した。また、調製した粗カルボキシメチルセルロースにNaCl、グリコール酸、水、イソピロパノールを加えてろ過することにより、カルボキシメチルセルロースを調製した。そして、調製した主剤としてのカルボキシメチルセルロース50重量部に対し、硬化剤として前記ブロックイソシアネートを90重量部加えて混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、エーテル化セルロースのセルロース分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(5)で表される。
【0153】
実施の形態30
実施の形態30に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態30に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態28において、主剤としてのセルロースとして、上記実施の形態27のアモルファスエーテル化セルロースを使用したものである。実施の形態30に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアモルファスエーテル化セルロースを主剤とし、実施の形態28と同様のブロックイソシアネートを硬化剤として混合することにより、ブロックイソシアネートが、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記アモルファスエーテル化セルロースと混合分散されて安定化している。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記アモルファスエーテル化セルロースの活性水酸基と結合し、セルロース分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態30に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図37に示す。図37に示すように、実施の形態30では、アモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがアモルファスエーテル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0154】
実施の形態31
実施の形態31に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態31に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのエステル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エステル化セルロースと、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。コロイド状エステル化セルロースは、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした主剤としてのエステル化セルロースを加水加熱してゾル化またはゲル化した(ゾル状またはゲル状の)コロイド状をなすものである。また、ブロックイソシアネートは、上記実施の形態9と同様のものであり、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エステル化セルロースと混合分散されて(順ミセル状または逆ミセル状に)エマルジョン化され、安定化している。即ち、実施の形態31では、界面活性剤等の乳化剤乃至分散剤を添加乃至混合しなくても、(通常は疎水性の)ブロックイソシアネートが(ゾル状またはゲル状の)コロイド状エステル化セルロースと順ミセル状のエマルジョンを形成し、ブロックイソシアネートがコロイド状エステル化セルロース内に粒子状に安定的に均一分散したり、逆に、ブロックイソシアネートがコロイド状エステル化セルロースと逆ミセル状のエマルジョンを形成し、コロイド状エステル化セルロースがブロックイソシアネート内に粒子状に安定的に均一分散したりする。これは、セルロースのゾル化またはゲル化により、セルロース分子の水酸基が水素結合することに起因すると考えられる。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、まず、コロイド状エステル化セルロースの水分が蒸発して、セルロースゾルまたはセルロースゲル中の水素結合が開放され、続いて、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記エステル化セルロースの活性水酸基と結合し、セルロース分子間を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化して、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。ここで、ブロック剤としては、特に、オキシム系ブロック剤を使用することが好ましく、この場合、ブロックイソシアネートとコロイド状エステル化セルロースとのエマルジョン化を非常に円滑かつ安定して行うことができる。一方、アルコール系ブロック剤を使用する場合、ブロックイソシアネートとコロイド状エステル化セルロースとのエマルジョン化を安定的に行う点から、エタノール系のものはあまり好ましくなく、上記のようにメタノール系のものを使用することが好ましい。なお、実施の形態31に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図38に示す。図38に示すように、実施の形態31では、エステル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがエステル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0155】
実施例29
実施例29は、実施の形態31に対応する実施例である。実施例29では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、セルロースとしての木粉に対し、DMF(ジメチルホルムアミド)/SO3(無水硫酸)を加えて0〜30℃の温度で4時間攪拌した後、NaOH、水、メタノールを加えて主剤であるエステル化セルロースとしての硫酸セルロースを調製した。また、調製した硫酸セルロース50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状セルロースを調製した。そして、このコロイド状セルロースに硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、硫酸セルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0156】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としての硫酸セルロースを50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、硫酸セルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0157】
上記いずれの場合も、反応式は次式(6)で表される。
Cel-OH----H2O → Cel-OH + H2O↑
BL-OCHN-R-NHCO-BL ⇔ 2 BL + OCN-R-NCO
2 Cel-OH + OCN-R-NCO → Cel-O-OCHN-R-NHCO-O-Cel ・・・(6)
【0158】
実施の形態32
実施の形態32に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態31に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エーテル化セルロースと、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。コロイド状エーテル化セルロースは、実施の形態27のエーテル化セルロースを加水加熱してゾル化またはゲル化した(ゾル状またはゲル状の)コロイド状をなすものとすることができる。また、ブロックイソシアネートは、上記実施の形態9と同様のものであり、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エーテル化セルロースと混合分散されて(順ミセル状または逆ミセル状に)エマルジョン化され、安定化している。即ち、実施の形態32では、界面活性剤等の乳化剤乃至分散剤を添加乃至混合しなくても、(通常は疎水性の)ブロックイソシアネートが(ゾル状またはゲル状の)コロイド状エーテル化セルロースと順ミセル状のエマルジョンを形成し、ブロックイソシアネートがコロイド状エーテル化セルロース内に粒子状に安定的に均一分散したり、逆に、ブロックイソシアネートがコロイド状エーテル化セルロースと逆ミセル状のエマルジョンを形成し、コロイド状エーテル化セルロースがブロックイソシアネート内に粒子状に安定的に均一分散したりする。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、まず、コロイド状エーテル化セルロースの水分が蒸発して、セルロースゾルまたはセルロースゲル中の水素結合が開放され、続いて、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記エーテル化セルロースの活性水酸基と結合し、セルロース分子間を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化して、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。ここで、ブロック剤としては、特に、オキシム系ブロック剤を使用することが好ましく、この場合、ブロックイソシアネートとコロイド状エステル化セルロースとのエマルジョン化を非常に円滑かつ安定して行うことができる。一方、アルコール系ブロック剤を使用する場合、ブロックイソシアネートとコロイド状エステル化セルロースとのエマルジョン化を安定的に行う点から、エタノール系のものはあまり好ましくなく、上記のようにメタノール系のものを使用することが好ましい。なお、実施の形態32に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図39に示す。図39に示すように、実施の形態32では、エーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがエーテル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0159】
実施例30
実施例30は、実施の形態32に対応する実施例である。実施例30では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤であるセルロースとしての木粉に対し、NaOH、イソプロパノール及び水を加えて攪拌し、この混合物に更にモノクロル酢酸ソーダを加えて70〜80℃の温度で2時間反応させることにより、粗カルボキシメチルセルロースを調製した。また、調製した粗カルボキシメチルセルロースにNaCl、グリコール酸、水、イソピロパノールを加えてろ過することにより、カルボキシメチルセルロースを調製した。そして、調製した主剤としてのカルボキシメチルセルロース50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状セルロースを調製した。そして、このコロイド状セルロースに硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、カルボキシメチルセルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0160】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのカルボキシメチルセルロースを50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、カルボキシメチルセルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。いずれの場合の反応式も上記式(6)で表される。
【0161】
実施の形態33
実施の形態33に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態33に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースとして、実施の形態27のエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエーテル化セルロースを使用する。そして、かかるアモルファスエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状アモルファスエーテル化セルロースを調製する。コロイド状アモルファスエーテル化セルロースは、実施の形態32と同様のブロックイソシアネートと予め混合されて1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物を構成する。ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状アモルファスエーテル化セルロースと混合されて、順ミセル構造または逆ミセル構造のエマルジョンを形成すると共に、加熱によりアモルファスエーテル化セルロースを架橋する。なお、実施の形態33に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図40に示す。図40に示すように、実施の形態33では、アモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがアモルファスエーテル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0162】
ところで、上記実施の形態31〜33に対応する実施例31〜33において、主剤としての各種セルロースはゲル状に調製されているが、これはゾル状の段階を経て時間の経過と共にゲル状となることを意味し、かかるゲル状の澱粉を攪拌等すれば再度ゾル状となる。
【0163】
また、上記実施の形態31〜33において、ゾル状またはゲル状のセルロース(コロイド状セルロース)は、PHを5〜9の範囲とするよう調製することが好ましい。こうすると、セルロースゲルまたはセルロースゾル(コロイド状セルロース)をより一層安定化することができる。
【0164】
更に、上記実施の形態31〜33のようにゾル状またはゲル状のセルロース(コロイド状セルロース)を主剤として使用する場合も、ブロックイソシアネートのブロック剤としてはケトオキシム系ブロック剤等のオキシム系ブロック剤を使用することが好ましい。こうすると、ブロックイソシアネート(液体)とコロイド状澱粉とのエマルジョン化をより一層に円滑に行い、安定した均一分散を図ることができる。
【0165】
また、実施の形態25〜33では、セルロースをアモルファスかする等して物理変性する場合、セルロース間を架橋するために、所定サイズのポリイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、各種ポリイソシアネートは、その一般式(化学構造式)で表される構造に対応するサイズを有するが、主剤として使用するセルロースの活性水酸基間の間隔に対応するサイズのポリイソシアネートを選択的に使用することで、架橋効率を飛躍的に向上することができる。具体的には、前記ポリイソシアネートとして、ボールミル処理等の水酸基活性化により物理変性を受けた前記セルロースの分子内または分子間活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用することが好ましい。より具体的には、ポリイソシアネートのサイズは、上記澱粉の場合とほぼ同様に、10〜60Åの範囲とすることが好ましい。ここで、変性セルロースの場合、その分子間距離は天然セルロース等の未変性セルロースに比較してより大きくなるため、変性セルロース用のポリイソシアネートのサイズとしては、上記範囲のうちの大きい側(例えば、30〜60Å)の範囲とすることが好ましく、天然セルロース等の未変性セルロースの場合、上記範囲のうちの小さい側(例えば、10〜30Å)の範囲とすることが好ましい。
【0166】
ところで、本発明に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤及び硬化剤以外に、所定の機能を発揮するための添加剤等を混合することもできる。例えば、硬化反応を促進するための促進剤を添加してもよく、この場合、反応率(硬化率)をより高め、未反応成分の割合を小さくして、耐火性等の特性をより一層向上することができる。
【0167】
また、本発明における物理的化工澱粉としては、上記以外にも、湿熱処理澱粉、高周波処理澱粉、放射線処理澱粉等を使用することができ、化学的化工澱粉としては、カルボキシメチル澱粉、ヒドロシキアルキル澱粉、カチオン澱粉等のエーテル化澱粉、架橋澱粉、酸化澱粉、酸変性澱粉等を使用することができ、更に、酵素分解デキストリン等の酵素処理澱粉等を使用することもできる。
【0168】
更に、本発明の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物における硬化時の加熱温度は、上記のように、100℃〜200℃の範囲内とすることが好ましいが、1液型の場合、ブロック剤を解離するために、180℃以上の温度とすることが好ましい。また、硬化剤として、諸特性の点から、MDIの割合を高めることが好ましいが、MDIの割合を増加した場合、加熱温度は前記温度より一層高くすることが、硬化性(反応性)の向上の点から好ましい。この場合でも、MDIが加熱により気化されることはない。一方、硬化剤として、TDIの割合を増加した場合、加熱温度をあまり高くすると、TDIが加熱により気化する可能性があるため、加熱温度はMDIの場合より低くすることが好ましい。
【0169】
次に、本発明の硬化性プラスチックバインダー組成物を硬化してなる硬化物についての一実施例を説明する。本発明の硬化物は、上記各実施の形態及び各実施例の硬化性プラスチックバインダー組成物を硬化して任意の形状に成形することができるが、例えば、実施例8の硬化性プラスチックバインダー組成物を硬化した硬化物は、難燃性も、同じポリイソシアネートを使用するポリウレタンに比べ、高くなる。次にJISD1201に基づく水平難燃性試験のデータを示す。時間は、エステル不布に各樹脂を含浸したものを燃焼させたときの燃焼時間を示す。燃焼時間が短い方が難燃性が高い。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の硬化性プラスチックバインダー組成物は、自動車用部品の成形等、従来の石油系硬化性樹脂が使用される分野におけるバインダーとして好適に適用することができ、また、建築内装材の接着等、接着分野においても好適に適用することができる。その他、従来の樹脂バインダーが使用される任意の分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は一般的な天然澱粉粒の構造を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係る澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態2に係るアルファー澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態3に係る熱分解澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態4に係るアモルファス澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態5に係るエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態6に係るアルファーエステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態7に係る熱分解エステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態8に係るアモルファスエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態8に対応する実施例8におけるアモルファスエステル化澱粉(アモルファスアセチルタピオカ澱粉)のX線回折ピークを示すグラフである。
【図11】図11は本発明の実施の形態8に対応する実施例8の比較例のエステル化澱粉(アセチルタピオカ澱粉)のX線回折ピークを示すグラフである。
【図12】図12は本発明の実施の形態8に対応する実施例8における主剤にアモルファスアセチルタピオカ澱粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーと、主剤にアセチルタピオカ澱粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーとについて、常温硬化したときのウレタン結合の結合振動を示すグラフである。
【図13】図13は本発明の実施の形態9に係る澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態10に係るアルファー澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態11に係る熱分解澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態12に係るアモルファス澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図17】図17は本発明の実施の形態13に係るエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図18】図18は本発明の実施の形態14に係るアモルファスエステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図19】図19は本発明の実施の形態15に係る熱分解エステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図20】図20は本発明の実施の形態16に係るアモルファスエステル化澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図21】図21は本発明の実施の形態17に係るコロイド状澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図22】図22は本発明の実施の形態18に係るコロイド状アルファー澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図23】図23は本発明の実施の形態19に係るコロイド状熱分解澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図24】図24は本発明の実施の形態20に係るコロイド状アモルファス澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図25】図25は本発明の実施の形態20に記載の条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンの分散例を示す光学顕微鏡写真像である。
【図26】図26は図25の比較例として、実施の形態20に記載の条件と異なる条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンの分散例を示す光学顕微鏡写真像である。
【図27】図27は本発明の実施の形態21に係るコロイド状エステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図28】図28は本発明の実施の形態22に係るコロイド状アルファーエステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図29】図29は本発明の実施の形態23に係るコロイド状熱分解エステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図30】図30は本発明の実施の形態24に係るコロイド状アモルファスエステル化澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図31】図31は本発明の実施の形態25に係るセルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図32】図32は本発明の実施の形態26に係るエーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図33】図33は本発明の実施の形態26において主剤にカルボキシメチルセルロースを使用した硬化性バイオプラスチックバインダーと、主剤に木粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーとについて、常温硬化したときのウレタン結合の結合振動(反応率)を示すグラフである。
【図34】図34は本発明の実施の形態27に係るアモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図35】図35は本発明の実施の形態28に係るセルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図36】図36は本発明の実施の形態29に係るエーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図37】図37は本発明の実施の形態30に係るアモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図38】図38は本発明の実施の形態31に係るエステル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図39】図39は本発明の実施の形態32に係るエーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図40】図40は本発明の実施の形態33に係るアモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性バイオプラスチックバインダー組成物及びその硬化物に関し、特に、強固な密着性を有すると共に耐熱性と環境性に優れ、自動車内装部品の製造、内装建材等の分野に応用することができる固液(固体+液体)タイプ及び1液タイプの硬化性バイオプラスチックバインダー組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内装部品の製造や内装建材の接着等に使用される硬化性プラスチックバインダーは、石油を主起源として合成されたものである。一般的には、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂やアクリル樹脂等が硬化性プラスチックバインダーとして使用されている。これら硬化性プラスチックバインダーとしては、主剤及び硬化剤(硬化剤または反応剤)からなる2液性のものや、空気、湿気や熱により硬化する1液性のものがある。また、それらを水性にしたエマルジョンタイプの硬化性プラスチックバインダーも提案されている。しかし、従来の硬化性プラスチックは、石油を主原料として合成された、地球生態系で循環しない(生分解性のない)有機化合物であり、これを使用することが大気中のCO2濃度の増加を促進し、地球温暖化を引き起こす要因となりうる。また、フェノール樹脂及びメラミン樹脂においては、製造工程においてホルムアルデヒドが使用され製品に残留することから、このVOC(揮発性有機化合物)の発生により使用環境においてシックハウス症候群を引き起こす恐れがある。
【0003】
これに対し、近年、環境への配慮やCO2濃度の増加による地球温暖化の防止等の観点から、地球生態系で循環する澱粉やセルロース等の天然高分子を利用した生分解性樹脂を主剤としたがバイオプラスチックバインダーが提案されている。また、澱粉やセルロース等から得られる現在製品化または製品開発中のバイオプラスチックバインダーは、全て熱可塑性である。また、その製造方法及び生成物としては、高分子化合物である澱粉を糖化・醗酵させて生成される乳酸を再重合して製造するポリ乳酸、澱粉やセルロースを直接アセチル化するエステル化澱粉やアセチルアセテート等が知られている。しかし、これらの熱可塑性バイオプラスチックバインダーは、石油から合成される熱可塑性プラスチックバインダーに比べて製造に大きなエネルギーを必要とする場合もあり、省エネルギーによる環境配慮の点で改善する余地がある。また、これらは熱可塑性バイオプラスチックバインダーは、熱により軟化変形する等の熱可塑性樹脂特有の特徴を有し、ある程度の耐熱性や耐熱強度が要求される自動車部品等への適用においては、硬化性プラスチックと比較して改良すべき点がある。
【0004】
ここで、本発明者らは、生態系循環資源として豊富に産出される澱粉やセルロースを主剤として硬化性プラスチックを製造することができれば、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足できるのではないかと考え、鋭意研究を重ねた。なお、上記のように、現在製品化または製品開発中のバイオプラスチックバインダーは、全て熱可塑性であるが、硬化型澱粉組成物に関する技術として特許文献1及び特許文献2に記載の技術がある。
【特許文献1】特開2004−224887号公報
【特許文献2】特開2005−343939号公報
【0005】
特許文献1には、澱粉と、澱粉分子中に含まれる少なくとも1個の水酸基と相補的に反応する官能基を有するポリイソシアネート化合物等の硬化剤との混合物である硬化型澱粉組成物が開示されている。また、特許文献2には、水酸基を含有する澱粉と、ポリイソシアネート化合物及び/又は該ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部もしくは全部がブロック化されてなるブロック化ポリイソシアネート化合物とを含有する硬化型澱粉組成物が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2は、いずれも、硬化型澱粉組成物の澱粉として、公知の澱粉や特定の置換基を有する化学的変性澱粉を使用する旨記載しているが、澱粉分子の立体構造(二重螺旋構造等)や水素結合に起因する硬化剤との反応性低下等についての考察はない。即ち、これら特許文献1及び特許文献2は、いずれも、澱粉分子特有の立体構造等に起因する硬化剤乃至架橋剤との反応性低下を克服するための手段について、なんら知見及び示唆を与えるものではない。更に、特許文献1及び特許文献2は、いずれも、同じく地球生態系を循環する豊富な天然資源であるセルロースを主剤とした硬化性バイオプラスチックバインダーについては、全く開示も示唆もしていない。
【0007】
そこで、本発明者らは、従来の硬化性プラスチック主原料である石油の代わりに、地球生態系で循環する有機化合物である澱粉またはセルロースを主原料とすることで、大気中のCO2濃度の増加を抑制し、地球温暖化を防止することを目的とし、また、VOCや環境ホルモンとなる物質を含有しないことで人体や地球生態系への影響を少なくし、更に熱可塑性バイオプラスチックバインダーに見られるような澱粉やセルロースを分解・再重合して合成することによる製造エネルギーの増加を抑制することを目的として、鋭意研究の結果本発明に想到した。即ち、本発明は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足する硬化性バイオプラスチックバインダー組成物及びその硬化物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉と、前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートとからなる。
【0009】
請求項2に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項1記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした(焙焼デキストリン等の)熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用した。
【0010】
請求項3に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項1記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用した。
【0011】
請求項4に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項1記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用した。
【0012】
請求項5に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉と、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記活性化澱粉と混合分散されると共に、常温または加熱により前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0013】
請求項6に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項5記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用した。
【0014】
請求項7に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項5記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用した。
【0015】
請求項8に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項5記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用した。
【0016】
請求項9に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉を加水加熱してゾル化またはゲル化したコロイド状澱粉と、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状澱粉と混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0017】
請求項10に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製した。
【0018】
請求項11に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製した。
【0019】
請求項12に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9記載の構成において、前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製した。
【0020】
請求項13に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9乃至12のいずれか1項記載の構成において、前記コロイド状澱粉のPHを5〜9の範囲とした。
【0021】
請求項14に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項9乃至12のいずれか1項記載の構成において、前記ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用した。
【0022】
請求項15に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項1乃至11のいずれか1項記載の構成において、前記ポリイソシアネートとして、前記活性化澱粉の活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用した。
【0023】
請求項16に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としての活性化セルロースと、前記活性化セルロースを架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートとからなる。
【0024】
請求項17に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項16記載の構成において、前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化してセルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用した。
【0025】
請求項18に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項16記載の構成において、前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファスエーテル化セルロースを使用した。
【0026】
請求項19に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としての活性化セルロースと、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記活性化セルロースと混合分散されると共に、常温または加熱により前記活性化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0027】
請求項20に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項19記載の構成において、前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化してセルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用した。
【0028】
請求項21に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項19記載の構成において、前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファスエーテル化セルロースを使用した。
【0029】
請求項22に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、セルロースをエステル化処理することにより水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としてのエステル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エステル化セルロースと、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エステル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記エステル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0030】
請求項23に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としてのエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エーテル化セルロースと、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エーテル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記エーテル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0031】
請求項24に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化した主剤としてのアモルファスエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状アモルファスエーテル化セルロースと、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状アモルファスエーテル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記アモルファスエーテル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートとからなる。
【0032】
請求項25に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項22乃至24のいずれか1項記載の構成において、前記コロイド状セルロースのPHを5〜9の範囲とした。
【0033】
(ブロック剤限定)
請求項26に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項22乃至24のいずれか1項記載の構成において、前記ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用した。
【0034】
(イソシアネートのサイズ(長さ)限定)
請求項27に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、請求項17乃至23のいずれか1項記載の構成において、前記ポリイソシアネートとして、前記セルロースの活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用した。
【0035】
(硬化物)
請求項28に係る硬化物は、請求項1乃至27のいずれか1項の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物を常温または加熱により反応して硬化することにより生成した。
【発明の効果】
【0036】
請求項1に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉として、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然澱粉等の)非活性化澱粉より増加した活性化澱粉を使用することにより、澱粉分子特有の立体構造(螺旋構造乃至結晶構造)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、澱粉分子(澱粉ユニット間または澱粉サブユニット間)を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項1に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができ、ひいては、石油系の硬化性プラスチックバインダーに較べて大気中のCO2濃度の増加を抑制し、地球温暖化を防止することができる。また、ポリイソシアネートを硬化剤として用い、澱粉の高分子構造(α1・4グリコシド結合)を残しながら澱粉間の架橋反応を行うことで、容易に3次元網目構造を形成し、可塑性のバイオプラスチックバインダーより少ない製造エネルギーでプラスチックとしての機能を果たすことができる。
【0037】
請求項2に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファー澱粉、熱分解澱粉、アモルファス澱粉等の物理変性澱粉を使用することで、硬化速度がより高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0038】
請求項3に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、化学変性澱粉であるエステル化澱粉を使用することで、硬化速度がより高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0039】
請求項4に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファーエステル化澱粉、熱分解エステル化澱粉、アモルファスエステル化澱粉等の化学変性及び物理変性した澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。また、難燃性も、同じポリイソシアネートを使用するポリウレタンに比べ、高くなる。
【0040】
請求項5に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉として、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然澱粉等の)非活性化澱粉より増加した活性化澱粉を使用することにより、澱粉分子特有の立体構造(螺旋構造乃至結晶構造)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、澱粉分子(澱粉ユニット間または澱粉サブユニット間)を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項5に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができる。また、このような特性と合せ、1液タイプとしたことにより、自動車内装部品製造の熱プレス成形における材料へのバインダー含浸前処理への対応を可能とする。
【0041】
請求項6に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファー澱粉、熱分解澱粉、アモルファス澱粉等の物理変性澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0042】
請求項7に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、化学変性したエステル化澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0043】
請求項8に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファーエステル化澱粉、熱分解エステル化澱粉、アモルファスエステル化澱粉等の化学変性及び物理変性した澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0044】
請求項9に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉として、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然澱粉等の)非活性化澱粉より増加した活性化澱粉を使用することにより、澱粉分子特有の立体構造(螺旋構造乃至結晶構造)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、澱粉分子(澱粉ユニット間または澱粉サブユニット間)を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項9に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができる。また、このような特性と合せ、1液タイプとしたことにより、自動車内装部品製造の熱プレス成形における材料へのバインダー含浸前処理への対応を可能とし、水性であるためにVOCの発生を抑制し、環境への影響を最小限に留めることができる。加えて、ゾル化またはゲル化したコロイド状澱粉を使用することにより、界面活性剤等の乳化剤を使用しなくても、ポリイソシアネートのエマルジョン化を円滑かつ安定的に図ることができる。
【0045】
請求項10に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファー澱粉、熱分解澱粉、アモルファス澱粉等の物理変性澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0046】
請求項11に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、化学変性したエステル化澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0047】
請求項12に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アルファーエステル化澱粉、熱分解エステル化澱粉、アモルファスエステル化澱粉等の化学変性及び物理変性した澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0048】
請求項13に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、コロイド状澱粉のPHを5〜9の範囲とすることで、エマルジョンが安定化する。
【0049】
請求項14に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、オキシム系ブロック剤を使用することで、コロイド状澱粉とブロックイソシアネートが均一分散したエマルジョンを得ることができる。
【0050】
請求項15に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、活性化澱粉の活性水酸基間距離に対応する所定サイズのポリイソシアネートにより効率よく澱粉の活性水酸基間を架橋することができる。
【0051】
請求項16に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースとして、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然セルロース等の)非活性化セルロースより増加した活性化セルロースを使用することにより、セルロース分子特有の構造(分子間の水素結合)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、セルロース分子を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項16に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができ、ひいては、地球生態系で循環する有機化合物であるセルロースを主剤とすることで、石油系の硬化性プラスチックバインダーに較べて大気中のCO2濃度の増加を抑制し、地球温暖化を防止することができる。また、ポリイソシアネートを硬化剤として用い、セルロースの高分子構造(β1・4グリコシド結合)を残しながらセルロース間の架橋反応を行うことで、容易に3次元網目構造を形成し、可塑性のバイオプラスチックバインダーより少ない製造エネルギーでプラスチックとしての機能をはたすことができる。
【0052】
請求項17に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、セルロース誘導体であるエーテル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0053】
請求項18に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アモルファスエーテル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0054】
請求項19に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースとして、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然セルロース等の)非活性化セルロースより増加した活性化セルロースを使用することにより、セルロース分子特有の構造(分子間の水素結合)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、セルロース分子を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項19に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができる。また、このような特性と合せ、1液タイプとしたことにより、自動車内装部品製造の熱プレス成形における材料へのバインダー含浸前処理への対応を可能とする。
【0055】
請求項20に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、活性処理セルロースであるエーテル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0056】
請求項21に係る1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アモルファスエーテル化セルロース澱粉を使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0057】
請求項22に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースとして、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を(天然セルロース等の)非活性化セルロースより増加した活性化セルロースを使用することにより、セルロース分子特有の構造(分子間の水素結合)等に起因する硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとの反応性低下を克服することができ、セルロース分子を高い反応性でポリイソシアネートにより架橋することができる。その結果、請求項22に係る固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、従来のバイオプラスチックに特有の効果(環境性や天然資源の有効活用等)と従来の硬化性プラスチックに特有の効果(製造時の省エネルギー効果及び耐熱性等の諸特性)を共に満足しながら、高い反応率(硬化率)で確実に短時間で硬化することができる。また、このような特性と合せ、1液タイプとしたことにより、自動車内装部品製造の熱プレス成形における材料へのバインダー含浸前処理への対応を可能とし、水性であるためにVOCの発生を抑制し、環境への影響を最小限に留めることができる。加えて、ゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースを使用することにより、界面活性剤等の乳化剤を使用しなくても、ポリイソシアネートのエマルジョン化を円滑かつ安定的に図ることができる。
【0058】
請求項23に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、エーテル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0059】
請求項24に係る1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、アモルファスエステル化セルロースを使用することで、より硬化速度が高まり製造エネルギーを削減することができる。
【0060】
請求項25に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、コロイド状澱粉のPHを5〜9の範囲とすることで、エマルジョンが安定化する。
【0061】
請求項26に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、オキシム系ブロック剤を使用することで、コロイド状澱粉とブロックイソシアネートが均一分散したエマルジョンを得ることができる。
【0062】
請求項27に係る硬化性バイオプラスチックバインダー組成物は、更に、セルロースの活性水酸基間距離に対応する所定サイズのポリイソシアネートにより効率よく澱粉の活性水酸基間を架橋することができる。
【0063】
請求項28に係る硬化物は、請求項1乃至27のいずれか1項の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物に起因して、耐熱性、環境性等、特有の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)を説明する。
【0065】
実施の形態1
実施の形態1に係る硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態1に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉と、硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとからなる固体(澱粉)+液体(ポリイソシアネート)タイプ、即ち、固液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。本発明の澱粉としては、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を天然澱粉等の非活性化澱粉より増加した活性化澱粉を使用する。即ち、天然澱粉等の非活性化澱粉は、各澱粉分子のアミロース単位ごとに3個の水酸基を有するが、そのうちの1個のみが活性水酸基であり、残りの2個は(水素結合や立体障害等により活性を失った)非活性水酸基となっている。よって、天然澱粉等の非活性化澱粉は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合が、通常のままでは、約1/3となっている。これに対し、本発明は、主剤としての澱粉として、非活性化澱粉を、物理変性、化学変性、または化学変性と物理変性との組合せにより活性化することにより、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉の場合(1/3)より増加した澱粉(本出願書類中において「活性化澱粉」という)を使用する。具体的には、本発明は、主剤として、活性化澱粉における当該活性水酸基の割合を40%以上(化学変性澱粉の場合)または1/2以上(物理変性澱粉並びに化学変性と物理変性との組合せによる物理/化学変性澱粉の場合)とした活性化澱粉を使用する。なお、その限りにおいて、本発明の活性化澱粉としては、天然澱粉や、天然澱粉を物理変性または化学変性した化工澱粉等、任意の澱粉を使用することができる。また、現状では、澱粉は自然界に存在する天然澱粉しかないが、化学合成により同等の組成とされた合成澱粉(変性澱粉ではない)が生成できる場合、かかる合成澱粉も澱粉として使用することができる。ここで、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合は、正確に測定することは難しいが、主剤としての澱粉と硬化剤としてのポリイソシアネートとを混合して反応させた場合の反応率を比較することにより、活性水酸基の割合を推定することができる。例えば、非活性化澱粉(活性水酸基数の割合が1/3)とポリイソシアネートとを反応させたときの反応率Xに対し、活性化澱粉とポリイソシアネートとを反応させたときの反応率Yが2倍になっていれば、澱粉粒表面の活性水酸基の割合が2倍になったと推定でき、この場合、活性化澱粉の澱粉粒表面の活性水酸基の割合は1/3*2=2/3になったと推定できる。同様に、非活性化澱粉とポリイソシアネートとを反応させたときの反応率Xに対し、活性化澱粉とポリイソシアネートとを反応させたときの反応率Yが1.5倍(3/2倍)になっていれば、澱粉粒表面の活性水酸基の割合が1.5倍(3/2倍)になったと推定でき、この場合、活性化澱粉の澱粉粒表面の活性水酸基の割合は1/3*3/2=1/2になったと推定できる。
【0066】
以下、本発明で使用する主剤としての澱粉について説明する。澱粉は、タピオカ、馬鈴薯、コーン、小麦、甘藷、米、サゴ等、高等植物の貯蔵多糖類で、アミロース(アミロース分子)とアミロペクチン(アミロペクチン分子)からなる。アミロース及びアミロペクチンの割合は澱粉種により異なるが、通常、アミロースが約20〜25%で、アミロペクチンが約75〜80%である。なお、もち米やもちとうもろこし(もち種)等、アミロペクチンが約100%であり、アミロースをほとんど含有しないものもある。また、アミロースは、D−グルコースがα−1,4グリコシド結合で直鎖状に連結した重合体(多糖)であり、植物種によるが、一般に平均重合度約30〜3000、平均分子量数万〜数十万ともいわれ、非還元末端と還元末端とを各1個有する。なお、アミロースは、一部、α−1,6グリコシド結合により分岐するものもあるが、その割合は非常に小さい。アミロースは、水中で二重螺旋(2本螺旋(double-stranded helix))構造となり、水中に均一に分散する。また、螺旋構造の内側は疎水的環境であり、外側は親水性となっている。更に、アミロースは、極性、非極性を問わず、多くの化合物と強い相互作用を有しており、これらの化合物と複合体を形成する。更にまた、アミロースは、溶媒に溶解して非溶媒を加える等の処理を行って再生することにより、分子鎖がV−アミロース等の一重螺旋(1本螺旋(single-stranded helix))構造となる。なお、天然澱粉には、一重螺旋(1本螺旋(single-stranded helix))構造のアミロースも含有されている。以下に、アミロース分子の一般構造式(部分式)を示す。
【化1】
【0067】
一方、アミロペクチンは、アミロースの直鎖状分子がα−1,6グリコシド結合により多岐に分岐して重合した3次元構造をなす重合体(多糖)であり、一般に平均重合度約6千〜28万、平均分子量約16万〜600万ともいわれ、グルコースの比較的短いα−1,4鎖(グルコース残基約20〜30個を一単位)がα−1,6グリコシド結合により別のグルコース鎖と結合している。全グリコシド結合に対するα−1,6グリコシド結合の割合は約4%で、グルコース残基単位25に対し1個の割合である。アミロペクチンは、房状をなすクラスター構造を有し、そのうちの大部分が二重螺旋(2本螺旋)構造を有するといわれている。以下に、アミロペクチン分子の一般構造式(部分式)を示す。
【化2】
【0068】
澱粉粒は、化学的には上記のような直鎖状のアミロースと分岐状(房状)のアミロペクチンとが混在し、物理的には結晶部分(一重螺旋構造部分及び二重螺旋構造部分)並びに非晶質部分を含む不均質な物質である。かかるアミロースとアミロペクチンとは、ヒドロキシル基(水酸基)を介した水素結合により分子間結合すると共に分子内結合することに加え、結晶部分の立体構造(立体障害)により活性を有するヒドロキシル基(活性水酸基)の官能性も阻害されるため、通常の天然澱粉では、上述のように、活性水酸基の数は全体の水酸基のうちの約1/3程度であり、全体の約2/3の水酸基は活性を有しない不活性水酸基となっている。よって、通常の天然澱粉のままでは、硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートのイソシアネート基(N=C=O)と反応する活性水酸基の数が十分でなく、特に常温等での反応性乃至硬化性の点で十分ではない。なお、図1に、通常の天然澱粉の構造を模式的に示す。通常の天然澱粉は、図1に示すように、一重螺旋のアミロースに二重螺旋のアミロペクチンが分岐して連結した小房状のサブユニットを、放射状となるよう複数(図1では12個)連結して1ユニットとした、全体として放射房状(クラスター状)の構造を有していると考えることができる。そして、上記のように、通常の天然澱粉では、澱粉粒内のサブユニット間で水酸基が水素結合したり、澱粉粒間(ユニット間)で水酸基が水素結合したりして、活性水酸基の数が減少している。
【0069】
そこで、本発明者らは、物理変性、化学変性、或いは、化学変性と物理変性との組合せ(より好ましくは、物理変性または化学変性と物理変性との組合せ)により通常の天然澱粉の特に結晶構造を破壊または物理変性等して、分子間の水素結合を開放することにより、澱粉粒表面における活性水酸基数の割合を通常の非活性化澱粉の場合より増加して、化学変性のみの場合は全水酸基数の40%以上、物理変性の場合は全水酸基数の1/2以上となるように改善している。即ち、実施の形態1及び以降の実施の形態2〜24の澱粉は、澱粉粒表面の活性水酸基数が澱粉粒表面の全水酸基数の40%以上または1/2以上の割合となるように調製した活性化澱粉である。なお、活性水酸基とは、水酸基相互の水素結合または澱粉分子の立体障害により反応性が失われていない水酸基のことをいう。ここで、実施の形態1では、澱粉粒表面の活性水酸基数が澱粉粒表面の全水酸基数の40%以上または1/2以上の割合となるように、物理変性等により調製した活性化澱粉を使用することが好ましいが、澱粉粒表面の活性水酸基数が澱粉粒表面の全水酸基数の40%以上または1/2以上の割合となる天然澱粉を選択的に使用することも可能である。
【0070】
次に、上記澱粉の水酸基と反応して澱粉分子(ユニット間及び/またはサブユニット間)を架橋するポリイソシアネートについて説明する。ポリイソシアネートは、一般式CON−R−NCOにより表される化合物であり、実施の形態1では、反応性に富む芳香族系イソシアネートとして、トリレンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を好適に使用することができる。以下にTDI及びMDIの一般式を示す。(2,4'−TDI、2,6'−TDI、4,4'−MDI、2,4'−MDI、2,2'−MDIの順に表示。)
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0071】
しかし、これら以外にも、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族系イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加(水添)MDI、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水添XDI(H6XDI)等の脂環族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、ノルボルネン・ジイソシアネート(NBDI)等の脂肪族系イソシアネート等、各種有機ポリイソシアネートを使用したり、これらのビウレット化物、イソシアヌレート化物、カルボジイミド変性体を使用したり、更に、これらの混合物を使用したりすることができる。
【0072】
上記のように構成した実施の形態1に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、前記活性化澱粉を主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、澱粉粒表面の複数の活性水酸基(OH)がポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)と常温でウレタン結合(NHCOO)することで、澱粉分子間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化する。この状態から更に加熱すると、澱粉粒が軟化してその表面の水酸基が更に活性化されることで上記ウレタン結合反応が一層促進され、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態1に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図2に示す。図2に示すように、実施の形態1では、澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0073】
実施例1
実施例1は、実施の形態1に対応する実施例である。実施例1では、主剤としてのタピオカ澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネートを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、タピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式は次式(1)で表される。
2 St-OH + OCN-R-NCO → St-O-OCHN-R-NHCO-O-St ・・・(1)
なお、式中「St」は澱粉分子(Starch)を示す。
【0074】
実施の形態2
実施の形態2に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態2に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、化工澱粉、特に、物理的化工澱粉を使用したものである。具体的には、主剤としては、アルファー澱粉が使用される。このアルファー澱粉は、天然澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化し、微粉砕することにより、その水酸基を活性化して、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。このように、天然澱粉に加水加熱しゲル化後急速熱乾燥粉砕することにより、主として澱粉分子のα1,6グリコシド結合が切断されて澱粉分子が低分子化し、これら低分子化した澱粉分子が再結合することで、澱粉粒表面の活性水酸基数を増加したアルファー澱粉が生成される。実施の形態2に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアルファー澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのコーン澱粉の所定重量部に対し、水を所定重量部加えて混合攪拌したものを、所定温度に加熱したツインドラムドライヤー上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥し、所定粒径(例えば、250μm)未満に粉砕してアルファー澱粉を調製する。このときの加熱温度は、120℃以上180℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。そして、このアルファー澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記アルファー澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、アルファー澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、アルファー澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が多く反応性が高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、アルファー澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度は実施の形態1と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態2に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図3に示す。図3に示すように、実施の形態2では、澱粉粒乃至澱粉構造体(アルファー澱粉粒)における(物理変性による)小房状のサブユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネートが架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0075】
実施例2
実施例2は、実施の形態2に対応する実施例である。実施例2では、主剤としてのコーン澱粉90重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファー澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファー澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0076】
実施の形態3
実施の形態3に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態3に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、実施の形態2と同様、物理的化工澱粉(物理的変性澱粉)を使用したものである。具体的には、主剤としては熱分解澱粉が使用される。この熱分解澱粉は、天然澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものであり、例えば、かかる熱分解澱粉として焙焼デキストリン等を好適に使用することができる。このように、天然澱粉を熱分解することにより、澱粉分子のα1,4グリコシド結合及びα1,6グリコシド結合がランダムに切断されて澱粉分子の分子量が低下することで、活性水酸基数が増加した熱分解澱粉(デキストリン等)が生成される。実施の形態3に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかる熱分解澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのコーン澱粉を、所定温度に加熱した所定サイズのロータリーキルン中に投入し、同ロータリーキルン中を所定回転数の下で所定の排出速度で送り、熱分解することにより熱分解澱粉を調製する。このときの加熱温度は、100℃以上250℃までの範囲とし、特に180℃とすることが好ましい。また、ロータリーキルンの回転速度は、1〜20rpmの範囲とすることが好ましく、送り速度(排出速度)は、毎分10cm以上40cm以下の範囲とし、特に毎分30cmとすることが好ましい。そして、この熱分解澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記熱分解澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、熱分解澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、熱分解澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が多く反応性が高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、熱分解澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度は実施の形態1と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態3に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図4に示す。図4に示すように、実施の形態3では、澱粉粒乃至澱粉構造体(熱分解澱粉粒)における(物理変性による)小房状のサブユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネートが架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0077】
実施例3
実施例3は、実施の形態3に対応する実施例である。実施例3では、主剤としてのコーン澱粉を、180℃に加熱した長さ1.8m直径0.2mのロータリーキルン(KSマテリアル製)に投入し、同ロータリーキルン中を回転数1〜20rpmの回転数及び排出速度毎分30cmの速さで送り、熱分解して熱分解澱粉を調製した。また、調製した主剤としての熱分解澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、熱分解澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0078】
実施の形態4
実施の形態4に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態4に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、実施の形態2及び3と同様、物理的変性澱粉を使用したものである。具体的には、主剤としてはアモルファス澱粉が使用される。このアモルファス澱粉は、天然澱粉をボールミル等により衝撃粉砕して結晶構造(二重螺旋構造等)を破壊することにより、その水酸基を活性化して澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものであり、例えば、かかるアモルファス澱粉としてボールミル処理澱粉等を好適に使用することができる。このように、衝撃粉砕により天然澱粉の結晶構造を破壊することにより、主として澱粉粒子中の隣り合うαグルコースのC2位とC3位の水酸基間の水素結合が弱まり、水酸基が活性化したアモルファス澱粉が生成される。実施の形態3に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアモルファス澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのコーン澱粉を乾式ボールミルに投入して所定径のアルミナボールを所定量投入し、乾式ボールミルを所定回転数で所定時間運転し、コーン澱粉を衝撃粉砕してアモルファス澱粉を調製する。このとき、アルミナボールの径を10〜100mmの範囲とすると共にその投入量を1t〜3tの範囲とし、更に、乾式ボールミルの回転数を30〜100rpmの範囲とすると共に運転時間を4〜8時間の範囲とすることが好ましい。そして、このアモルファス澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記アモルファス澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、アモルファス澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、アモルファス澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が多く、また、その粒子が10μm以下となるため分散性も良いため、反応性が非常に高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、アモルファス澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度は実施の形態1と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態4に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図5に示す。図5に示すように、実施の形態4では、アモルファス澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)を示すに(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0079】
実施例4
実施例4は、実施の形態4に対応する実施例である。実施例4では、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)に主剤としてのコーン澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、コーン澱粉を衝撃粉砕してアモルファス澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファス澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アモルファス澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0080】
実施の形態2〜4で述べたように、主剤である活性化澱粉として、アルファー澱粉、熱分解澱粉、アモルファス澱粉等、物理的変性澱粉を使用すると、その調製作業が簡単となる一方で、澱粉の構造を物理的に変性、即ち、澱粉分子の螺旋構造を破壊したり弱めたりして、澱粉分子の分子内及び/または分子間の水素結合を開放(破壊)したり弱めたりすることにより、結果として、澱粉粒表面の活性水酸基数を増加し、全水酸基数の1/2以上の割合とすることができる。そして、このように澱粉粒表面の活性水酸基数を増加した活性化澱粉(物理的変性澱粉)は、ポリイソシアネートとの反応性が高まり、ポリイソシアネートにより効果的に架橋されて、迅速に、かつ、安定して所期の硬化物を生成することができる。このとき、上記のように、澱粉とポリイソシアネートとを混合して加熱することが早期硬化の点からは好ましいが、上記のように活性化澱粉の反応性が十分に高められているため、加熱しなくても常温で硬化反応は円滑に進行し、安定して硬化物を生成することができる。ここで、実施の形態2〜4では、物理変性した澱粉間を架橋するために、所定サイズのポリイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、各種ポリイソシアネートは、その一般式(化学構造式)で表される構造に対応するサイズを有するが、主剤として使用する澱粉の活性水酸基間の間隔に対応するサイズのポリイソシアネートを選択的に使用することで、架橋効率を飛躍的に向上することができる。
【0081】
具体的には、前記ポリイソシアネートとしては、ボールミル処理等の水酸基活性化により物理変性を受けた前記澱粉を使用する場合、当該物理変性澱粉(繊維周期:2.8〜5.6Å(アミロースの一重螺旋間)、8〜10.4Å(アミロースの一重螺旋中心間)、1.4〜2.8Å(アミロペクチンの二重螺旋間)、2.8〜5.6Å(アミロペクチンの二重螺旋中心間))の分子内または分子間活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用することが好ましい。より具体的には、ポリイソシアネートのサイズは、分子振動等により一定ではないが、この場合のポリイソシアネートのサイズは、10〜60Åの範囲とすることが好ましい。ここで、変性澱粉の場合、その分子間距離は天然澱粉等の未変性澱粉に比較してより大きくなるため、変性澱粉用のポリイソシアネートのサイズとしては、上記範囲のうちの大きい側(例えば、30〜60Å)の範囲とすることが好ましく、天然澱粉等の未変性澱粉の場合、上記範囲のうちの小さい側(例えば、10〜30Å)の範囲とすることが好ましい。こうすると、ポリイソシアネートにより、澱粉構造体のサブユニット間または変性澱粉のアミロースまたはアミロペクチンのユニット間を主として架橋することができる。
【0082】
実施の形態5
実施の形態5に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態5に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、化工澱粉、特に、化学的化工澱粉を使用したものである。具体的には、主剤としては、エステル化澱粉が使用される。このエステル化澱粉は、天然澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上とした化学的変性澱粉乃至澱粉誘導体である。かかるエステル化(R'CO−)澱粉としては、例えば、酢酸エステル化(CH3CO−)した酢酸澱粉エステル、リン酸エステル化((NaO)2PO−)したリン酸澱粉、澱粉コハク酸エステル等の澱粉有機酸エステル、硫酸エステル化(NaSO3−)した澱粉硫酸エステル、澱粉硝酸エステル等の澱粉無機酸エステル等々を使用することができる。このように、天然澱粉の水酸基をエステル化処理することにより、澱粉粒表面の活性水酸基数を増加すると共に官能基としてのカルボン酸基を有するエステル化澱粉が生成される。実施の形態5に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるエステル化澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、無水酢酸の所定重量部を加えて所定温度で所定時間加熱し、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化して洗浄乾燥することにより、アセチルタピオカ澱粉を調製する。そして、このエステル化澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記エステル化澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、エステル化澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、エステル化澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が多く反応性が高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、エステル化澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度は実施の形態1と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態5に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図6に示す。図6に示すように、実施の形態5では、エステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0083】
実施例5
実施例5は、実施の形態5に対応する実施例である。実施例5では、主剤としてのタピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカ澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0084】
実施の形態6
実施の形態6に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態6に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、上記実施の形態5のエステル化澱粉(化学的変性澱粉)を実施の形態2のアルファー澱粉(物理的変性澱粉)と同様の方法で更に物理的に変性した活性化澱粉としてのアルファーエステル化澱粉を使用したものである。具体的には、このアルファーエステル化澱粉は、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したものであり、これにより、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。無論、実施の形態6で使用するアルファーエステル化澱粉は、活性化澱粉を更に活性化したもの(二重に活性化したもの)であるため、実施の形態2のアルファー澱粉及び実施の形態5のエステル化澱粉と比較して、更に活性水酸基の割合を高めることができ、硬化反応性を更に向上することができる。このように、実施の形態5のようにして天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を、更に、実施の形態2のようにしてアルファー澱粉化することにより、主として澱粉のα1,6グリコシド結合が切断されてエステル化澱粉分子が低分子化し、これら低分子化したエステル化澱粉分子が再結合することで、澱粉粒表面の活性水酸基数を更に増加したアルファーエステル化澱粉が生成される。
【0085】
実施の形態6に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアルファーエステル化澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、無水酢酸の所定重量部を加えて所定温度で所定時間加熱し、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化して洗浄乾燥することにより、アセチルタピオカ澱粉を調製する。次に、アセチルタピオカ澱粉の所定重量部に対し、水を所定重量部加えて混合攪拌したものを、所定温度に加熱したツインドラムドライヤー上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥し、所定粒径未満に粉砕してアルファー澱粉を調製する。このときの加熱温度等の条件は、実施の形態2及び5と同様とすることができる。なお、このときの水に対するアセチルタピオカ澱粉の配合比は、実施の形態2の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。そして、このアルファーエステル化澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記アルファーエステル化澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、アルファーエステル化澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、アルファーエステル化澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が一層多く反応性が一層高くなっている。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、アルファーエステル化澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度等の条件も、実施の形態1と同様とすることができる。なお、実施の形態6に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図7に示す。図7に示すように、実施の形態6では、澱粉粒乃至澱粉構造体(アルファーエステル化澱粉粒)における(化学変性及び物理変性による)小房状のサブユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネートが架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0086】
実施例6
実施例6は、実施の形態6に対応する実施例である。実施例6では、主剤としてのタピオカ澱粉90重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉5重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファーエステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファーエステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アルファーエステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0087】
実施の形態7
実施の形態7に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態7に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、上記実施の形態5のエステル化澱粉(化学的変性澱粉)を実施の形態3の熱分解澱粉(物理的変性澱粉)と同様の方法で更に物理的に変性した活性化澱粉としての熱分解エステル化澱粉を使用したものである。具体的には、この熱分解エステル化澱粉は、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化したものであり、これにより澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。無論、実施の形態7で使用する熱分解エステル化澱粉は、実施の形態6と同様、活性化澱粉を更に活性化したものであるため、実施の形態3の熱分解澱粉及び実施の形態5のエステル化澱粉と比較して、更に活性水酸基の割合を高めることができ、硬化反応性を更に向上することができる。このように、実施の形態5のようにして天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を、更に、実施の形態3のようにして熱分解澱粉化することにより、主として澱粉のα1,4グリコシド結合及びα1,6グリコシド結合がランダムに切断されてエステル化澱粉分子の分子量が低下することで、澱粉粒表面の活性水酸基数を更に増加した熱分解エステル化澱粉が生成される。
【0088】
実施の形態7に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかる熱分解エステル化澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、無水酢酸の所定重量部を加えて所定温度で所定時間加熱し、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化して洗浄乾燥することにより、アセチルタピオカ澱粉を調製する。このときの無水酢酸に対するタピオカ澱粉の配合比は、実施の形態5の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。次に、アセチルタピオカ澱粉を、所定温度に加熱した所定サイズのロータリーキルン中に投入し、同ロータリーキルン中を所定回転数の下で所定の排出速度で送り、熱分解することにより熱分解エステル化澱粉を調製する。このときの加熱温度は、実施の形態3と同様とすることができる。一方、このときのロータリーキルンの送り速度(排出速度)は、毎分10cm以上30cm以下の範囲とし、特に毎分20cmとすることが好ましい。そして、この熱分解エステル化澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記熱分解エステル化澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、熱分解エステル化澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、熱分解エステル化澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が一層多く反応性が一層高くなっている。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、熱分解エステル化澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度等の条件も、実施の形態1と同様とすることができる。なお、実施の形態7に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図8に示す。図8に示すように、実施の形態7では、澱粉粒乃至澱粉構造体(熱分解エステル化澱粉粒)における(化学変性及び物理変性による)小房状のサブユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネートが架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0089】
実施例7
実施例7は、実施の形態7に対応する実施例である。実施例7では、主剤としてのタピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉を、180℃に加熱した長さ1m直径30cmのロータリーキルン(クドウエンジニアリング製)に投入し、同ロータリーキルン中を排出速度毎分20cmの速さで送り、熱分解して熱分解エステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としての熱分解エステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、熱分解エステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0090】
実施の形態8
実施の形態8に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態8に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態1において、主剤としての澱粉として、上記実施の形態5のエステル化澱粉(化学的変性澱粉)を実施の形態4のアモルファス澱粉(物理的変性澱粉)と同様の方法で更に物理的に変性した活性化澱粉としてのアモルファスエステル化澱粉を使用したものである。具体的には、このアモルファスエステル化澱粉は、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化したものであり、これにより澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。無論、実施の形態8で使用するアモルファスエステル化澱粉は、実施の形態6及び7と同様、活性化澱粉を更に活性化したものであるため、実施の形態4の熱分解澱粉及び実施の形態5のエステル化澱粉と比較して、更に活性水酸基の割合を高めることができ、硬化反応性を更に向上することができる。このように、実施の形態5のようにして天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を、更に、実施の形態4のようにしてアモルファス澱粉化することにより、主として澱粉粒子中の隣り合うαグルコースのC2位とC3位の水酸基間の水素結合が弱まり、水酸基が更に活性化したアモルファスエステル化澱粉が生成される。
【0091】
実施の形態8に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアモルファスエステル化澱粉を主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、澱粉としてのタピオカ澱粉の所定重量部に対し、無水酢酸の所定重量部を加えて所定温度で所定時間加熱し、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化して洗浄乾燥することにより、アセチルタピオカ澱粉を調製する。このときの無水酢酸に対するタピオカ澱粉の配合比は、実施の形態5の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。次に、アセチルタピオカ澱粉を、乾式ボールミルに投入して所定径のアルミナボールを所定量投入し、乾式ボールミルを所定回転数で所定時間運転し、アセチルタピオカ澱粉を衝撃粉砕してアモルファスエステル化澱粉を調製する。このときの乾式ボールミルの回転速度や運転時間及びアルミナボールの径や投入量等の条件は、実施の形態4と同様とすることができる。そして、このアモルファスエステル化澱粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記アモルファスエステル化澱粉と同一重量部だけ加えて混合する。すると、実施の形態1と同様にして、アモルファスエステル化澱粉粒表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、アモルファスエステル化澱粉粒は、通常の天然澱粉粒に較べて活性水酸基数が一層多く、また、その粒子が10μm以下となるため分散性も良いため、反応性が非常に高い。また、この状態から更に加熱することで、実施の形態1と同様、アモルファスエステル化澱粉粒が軟化して、水酸基が更に活性化されて反応が促進される。このときの加熱温度等の条件も、実施の形態1と同様とすることができる。なお、実施の形態8に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図9に示す。図9に示すように、実施の形態8では、化学変性及び物理変性を受けたアモルファスエステル化澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットの活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋することになる。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0092】
実施例8
実施例8は、実施の形態8に対応する実施例である。実施例8では、主剤としてのタピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)に、調製したアセチルタピオカ澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、アセチルタピオカ澱粉を衝撃粉砕してアモルファスエステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファスエステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、アモルファスエステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(1)で表される。
【0093】
ここで、アモルファスエステル化澱粉(アモルファスアセチルタピオカ澱粉)のX線回折ピークをX線回折ピーク測定装置(リガク製ミニフレックスII)により測定した。また、比較例として、アセチルタピオカ澱粉のX線回折ピークも同X線回折ピーク測定装置により測定した。それらの結果を図10及び図11に示す。更に、主剤にアモルファスアセチルタピオカ澱粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーと、主剤にエステル化澱粉(アセチルタピオカ澱粉)を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーとについて、常温硬化したときのウレタン結合の結合振動(反応率)をフーリエ変換赤外分光装置(日本分光製FT/IR−6100))により測定した。その結果を図12に示す。反応率は熱硬化したものを100%として求めた。図12に示すように、アセチルタピオカ澱粉のアモルファス化により、水酸基の活性が更に上がり、反応率が一層増大したことがわかる。
【0094】
実施の形態9
実施の形態9に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態9に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉と、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。本発明の澱粉としては、実施の形態1と同様、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした活性化澱粉を使用する。また、ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記澱粉と混合分散されて安定化している。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記澱粉の活性水酸基と結合し、アミロース及びアミロペクチンの分子内水酸基及び/または分子間水酸基間を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。即ち、硬化性プラスチックバインダー組成物を加熱することで、ブロックイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基が活性化され、澱粉粒表面の複数の活性水酸基がポリイソシアネートのイソシアネート基と(常温となっても)ウレタン結合することで、澱粉分子間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化する。この状態から更に加熱すると、澱粉粒が軟化してその表面の水酸基が更に活性化されることで上記ウレタン結合反応が一層促進され、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。なお、実施の形態9に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図13に示す。図13に示すように、実施の形態9では、澱粉粒(結晶)の一般構造(固定)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0095】
実施例9
実施例9は、実施の形態9に対応する実施例である。実施例9では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤としてのタピオカ澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、タピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式は次式(2)で表される。
BL-OCHN-R-NHCO-BL ⇔ 2 BL + OCN-R-NCO
2 St-OH + OCN-R-NCO → St-O-OCHN-R-NHCO-O-St ・・・(2)
なお、式中「BL」はブロック剤を示す。ここで、ブロック剤(BL)としては、例えば、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソアミルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム等のケトオキシム系ブロック剤やオキシム系ブロック剤、フェノール、クレゾール、カテコール、ニトロフェノール等のフェノール系ブロック剤、イソプロパノール、トリメチロールプロパン等のアルコール系ブロック剤、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル等の活性メチレン系ブロック剤、等々を好適に使用することができる。特に、ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用すると、ブロックイソシアネート(液体)中への澱粉の均一分散を非常に円滑に行うことができる。一方、アルコール系ブロック剤を使用する場合、澱粉の均一分散性の点から、エタノール系のものはあまり好ましくなく、上記のようにメタノール系のものを使用することが好ましい。
【0096】
実施の形態10
実施の形態10に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態10に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態2と同様のアルファー澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態10では、澱粉として、天然澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉を使用し、このアルファー澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アルファー澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態10に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図14に示す。図14に示すように、実施の形態10では、澱粉粒乃至澱粉構造体(アルファー澱粉粒)における(物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネートとが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがサブユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0097】
実施例10
実施例10は、実施の形態10に対応する実施例である。実施例10では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、コーン澱粉90重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー(中央食料製)上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファー澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファー澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0098】
実施の形態11
実施の形態11に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態11に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態3と同様の熱分解澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態11では、澱粉として、天然澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉を使用し、この熱分解澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記熱分解澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態11に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図15に示す。図15に示すように、実施の形態11では、澱粉粒乃至澱粉構造体(熱分解澱粉粒)における(物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネートとが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがサブユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0099】
実施例11
実施例11は、実施の形態11に対応する実施例である。実施例11では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、コーン澱粉を、180℃に加熱した長さ1.8m、直径0.2mのロータリーキルン(KSマテリアル製)に投入し、同ロータリーキルン中を回転数1〜20rpmの回転数及び排出速度毎分30cmの速さで送り、熱分解して熱分解澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファー澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、熱分解澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0100】
実施の形態12
実施の形態12に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態12に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態4と同様のアモルファス澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態12では、澱粉として、天然澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉を使用し、このアモルファス澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アモルファス澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態12に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図16に示す。図16に示すように、実施の形態12では、物理変性されたアモルファス澱粉粒(非結晶)の一般構造(固定)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0101】
実施例12
実施例12は、実施の形態12に対応する実施例である。実施例12では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)にコーン澱粉を投入して6時間運転し、コーン澱粉を衝撃粉砕してアモルファス澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファス澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファス澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0102】
実施の形態13
実施の形態13に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態13に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態5と同様のエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態13では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用し、このエステル化澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記エステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態13に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図17に示す。図17に示すように、実施の形態13では、化学変性されたエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固定)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0103】
実施例13
実施例13は、実施の形態13に対応する実施例である。実施例13では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカ澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、エステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0104】
実施の形態14
実施の形態14に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態14に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態6と同様のアルファーエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態14では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉を使用し、このアルファーエステル化澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アルファーエステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態14に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図18に示す。図18に示すように、実施の形態14では、澱粉粒乃至澱粉構造体(アルファーエステル化澱粉粒)における(化学変性及び物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネートとが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0105】
実施例14
実施例14は、実施の形態14に対応する実施例である。実施例14では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉5重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー(中央食料製)上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファーエステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアルファーエステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アルファーエステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0106】
実施の形態15
実施の形態15に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態15に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態7と同様の熱分解エステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態15では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉を使用し、この熱分解エステル化澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記熱分解エステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態15に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図19に示す。図19に示すように、実施の形態15では、澱粉粒乃至澱粉構造体(熱分解エステル化澱粉粒)における(化学変性及び物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0107】
実施例15
実施例15は、実施の形態15に対応する実施例である。実施例15では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉を、180℃に加熱した長さ1m直径30cmのロータリーキルン(クドウエンジニアリング製)に投入し、同ロータリーキルン中を排出速度毎分20cmの速さで送り、熱分解して熱分解エステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としての熱分解エステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、熱分解エステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0108】
実施の形態16
実施の形態16に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態16に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態9において、主剤としての澱粉として、実施の形態8と同様のアモルファスエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態16では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉を使用し、このアモルファスエステル化澱粉を前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態9と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態9と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アモルファスエステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態16に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図20に示す。図20に示すように、実施の形態16では、アモルファスエステル化澱粉粒(非結晶)の一般構造(固定)を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0109】
実施例16
実施例16は、実施の形態16に対応する実施例である。実施例16では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉10重量部に対し、無水酢酸50重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)に、調製したアセチルタピオカ澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、アセチルタピオカ澱粉を衝撃粉砕してアモルファスエステル化澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファスエステル化澱粉50重量部に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファスエステル化澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(2)で表される。
【0110】
実施の形態17
実施の形態17に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態17に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としての澱粉をコロイド状(ゾル状またはゲル状)としたコロイド状澱粉と、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。コロイド状澱粉は、澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした主剤としての澱粉を加水加熱してゾル化またはゲル化した(ゾル状またはゲル状の)コロイド状をなすものである。また、ブロックイソシアネートは、上記実施の形態9と同様のものであり、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状澱粉と混合分散されて(順ミセル状または逆ミセル状に)エマルジョン化され、安定化している。即ち、実施の形態17では、界面活性剤等の乳化剤乃至分散剤を添加乃至混合しなくても、(通常は疎水性の)ブロックイソシアネートが(ゾル状またはゲル状の)コロイド状澱粉と順ミセル状のエマルジョンを形成し、ブロックイソシアネートがコロイド状澱粉内に粒子状に安定的に均一分散したり、逆に、ブロックイソシアネートがコロイド状澱粉と逆ミセル状のエマルジョンを形成し、コロイド状澱粉がブロックイソシアネート内に粒子状に安定的に均一分散したりする。これは、澱粉のゾル化またはゲル化により、澱粉分子の水酸基が水素結合することに起因すると考えられる。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、まず、コロイド状澱粉の水分が蒸発して、澱粉ゾルまたは澱粉ゲル中の水素結合が開放され、続いて、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記澱粉の活性水酸基と結合し、アミロース及びアミロペクチンの分子内水酸基及び/または分子間水酸基の間を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。即ち、硬化性プラスチックバインダー組成物を加熱することで、ブロックイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基が活性化され、澱粉粒表面の複数の活性水酸基がポリイソシアネートのイソシアネート基と(常温となっても)ウレタン結合することで、澱粉分子間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化する。この状態から更に加熱すると、澱粉粒が軟化してその表面の水酸基が更に活性化されることで上記ウレタン結合反応が一層促進され、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。ここで、ブロック剤としては、特に、オキシム系ブロック剤を使用することが好ましく、この場合、ブロックイソシアネートとコロイド状澱粉とのエマルジョン化を非常に円滑かつ安定して行うことができる。一方、アルコール系ブロック剤を使用する場合、ブロックイソシアネートとコロイド状澱粉とのエマルジョン化を安定的に行う点から、エタノール系のものはあまり好ましくなく、上記のようにメタノール系のものを使用することが好ましい。なお、実施の形態17に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図21に示す。図21に示すように、実施の形態17では、ゾルまたはゲル化澱粉粒(結晶)の一般構造を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネートとが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0111】
実施例17
実施例17は、実施の形態17に対応する実施例である。実施例17では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤としてのタピオカ澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、タピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0112】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのタピオカ澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、タピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0113】
上記いずれの場合も、反応式は次式(3)で表される。
St-OH----H2O → St-OH + H2O↑
BL-OCHN-R-NHCO-BL ⇔ 2 BL + OCN-R-NCO
2 St-OH + OCN-R-NCO → St-O-OCHN-R-NHCO-O-St ・・・(3)
【0114】
実施の形態18
実施の形態18に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態18に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態2と同様のアルファー澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態18では、澱粉として、天然澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉を使用し、このアルファー澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アルファー澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態18に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図22に示す。図22に示すように、実施の形態18では、ゾルまたはゲル化アルファー澱粉粒乃至澱粉構造体を示す(物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0115】
実施例18
実施例18は、実施の形態18に対応する実施例である。実施例18では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、コーン澱粉5重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー(中央食料製)上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、コーンアルファー澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのコーンアルファー澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンアルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0116】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのコーンアルファー澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンアルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0117】
実施の形態19
実施の形態19に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態19に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態3と同様の熱分解澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態19では、澱粉として、天然澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉を使用し、この熱分解澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記熱分解澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態19に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図23に示す。図23に示すように、実施の形態19では、ゾルまたはゲル化した熱分解澱粉粒乃至澱粉構造体を示す(物理変性による)小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0118】
実施例19
実施例19は、実施の形態19に対応する実施例である。実施例19では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、コーン澱粉を、180℃に加熱した長さ1.8m直径0.2mのロータリーキルン(KSマテリアル製)に投入し、同ロータリーキルン中を回転数1〜20rpmの回転数及び排出速度毎分30cmの速さで送り、熱分解して熱分解澱粉を調製した。また、調製した主剤としての熱分解澱粉(コーンデキストリン)50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0119】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのコーンデキストリンを50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0120】
実施の形態20
実施の形態20に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態20に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態4と同様のアモルファス澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態20では、澱粉として、天然澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉を使用し、このアモルファス澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アモルファス澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態20に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図24に示す。図24に示すように、実施の形態20では、アモルファス澱粉粒(非結晶)の一般構造を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0121】
実施例20
実施例20は、実施の形態20に対応する実施例である。実施例20では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)にコーン澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、コーン澱粉を衝撃粉砕してアモルファス澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファス澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、コーンデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。実施の形態20に記載の条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンの分散例を図25に示す。また、その比較例として、実施の形態20に記載の条件と異なる条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンの分散例を図26に示す。図25及び図26共に、所定倍率(×100)の光学顕微鏡写真である。図25に示すように、実施の形態20に記載の条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンでは、ゾル状またはゲル状のアモルファス澱粉(コロイド状澱粉)とブロックイソシアネートとが良好に分散しているが、図26に示すように、実施の形態20に記載の条件と異なる条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンでは、ゾル状またはゲル状のアモルファス澱粉(コロイド状澱粉)とブロックイソシアネートとが十分に分散せず分散不良となっていることが確認できる。
【0122】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアモルファス澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファス澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0123】
実施の形態21
実施の形態21に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態21に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態5と同様のエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態21では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用し、このエステル化澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。なお、実施の形態21におけるエステル化澱粉の調製は、上記実施の形態6〜9におけるエステル化澱粉の調製と同様にして行うことができ、無水酢酸等に対するタピオカ澱粉等の澱粉の配合比は、実施の形態5の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記エステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態21に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図27に示す。図27に示すように、実施の形態21では、ゾル化またはゲル化したエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造を示す(多数本の小房状のサブユニットからなる)放射房状のユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0124】
実施例21
実施例21は、実施の形態21に対応する実施例である。実施例21では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカ澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0125】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアセチルタピオカ澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0126】
実施の形態22
実施の形態22に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態22に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態6と同様のアルファーエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態22では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉を使用し、このアルファーエステル化澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。なお、実施の形態22におけるエステル化澱粉の調製は、上記実施の形態21におけるエステル化澱粉の調製と同様にして行うことができ、無水酢酸等に対するタピオカ澱粉等の澱粉の配合比は、実施の形態6の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アルファーエステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態22に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図28に示す。図28に示すように、実施の形態22では、ゾル化またはゲル化したアルファーエステル化澱粉粒を示す小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0127】
実施例22
実施例22は、実施の形態22に対応する実施例である。実施例22では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉5重量部に対して水100重量部を加えて混合攪拌したものを、150℃に加熱したツインドラムドライヤー(中央食料製)上に滴下して速やかにゲル化及び熱乾燥した後、250μm未満の粒径となるよう粉砕して、アルファーエステル化澱粉(アセチルタピオカアルファー澱粉)を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカアルファー澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカアルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0128】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアセチルタピオカアルファー澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカアルファー澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0129】
実施の形態23
実施の形態23に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態23に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態7と同様の熱分解エステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態23では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉を使用し、この熱分解エステル化澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。なお、実施の形態23におけるエステル化澱粉の調製は、上記実施の形態21におけるエステル化澱粉の調製と同様にして行うことができ、無水酢酸等に対するタピオカ澱粉等の澱粉の配合比は、実施の形態7の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記熱分解エステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態23に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図29に示す。図29に示すように、実施の形態23では、ゾル化またはゲル化した熱分解エステル化澱粉粒の一般構造を示す小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0130】
実施例23
実施例23は、実施の形態23に対応する実施例である。実施例23では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製したアセチルタピオカ澱粉を、180℃に加熱した長さ1m、直径0.2mのロータリーキルン(KSマテリアル製)に投入し、同ロータリーキルン中を回転数1〜20rpmの回転数及び排出速度毎分30cmの速さで送り、熱分解して熱分解エステル化澱粉(アセツルタピオカデキストリン)を調製した。また、調製した主剤としてのアセチルタピオカデキストリン50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0131】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアセチルタピオカデキストリンを50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アセチルタピオカデキストリンの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0132】
実施の形態24
実施の形態24に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態24に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態17において、主剤としての澱粉として、実施の形態8と同様のアモルファスエステル化澱粉を使用したものである。即ち、実施の形態24では、澱粉として、天然澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉を使用し、このアモルファスエステル化澱粉をゾル化またはゲル化してコロイド状澱粉を調製し、前記ブロックイソシアネートと混合してエマルジョン化することにより1液型としている。なお、実施の形態24におけるエステル化澱粉の調製は、上記実施の形態21におけるエステル化澱粉の調製と同様にして行うことができ、無水酢酸等に対するタピオカ澱粉等の澱粉の配合比は、実施の形態8の場合より1オーダー(1桁)程度以上少なくする。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態17と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態17と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記アモルファスエステル化澱粉の澱粉分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態24に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図30に示す。図30に示すように、実施の形態24では、ゾル化またはゲル化したアモルファスエステル化澱粉粒の一般構造を示す小房状のサブユニットとブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがユニットの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0133】
実施例24
実施例24は、実施の形態24に対応する実施例である。実施例24では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、タピオカ澱粉1重量部に対し、無水酢酸20重量部を加えて100℃の加熱温度で12時間加熱することにより、タピオカ澱粉の水酸基をエステル化し、その後洗浄乾燥することで、アセチルタピオカ澱粉を調製した。また、乾式ボールミル(東海クレー工業製1.2t)に、調製したアセチルタピオカ澱粉を投入すると共にアルミナボール(径10〜100mm)を1t〜3tの範囲の量で投入し、同乾式ボールミルを30〜100rpmの回転数で4〜8時間運転し、アセチルタピオカ澱粉を衝撃粉砕してアモルファスアセチルタピオカ澱粉を調製した。また、調製した主剤としてのアモルファスアセチルタピオカ澱粉50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状澱粉を調製した。そして、このコロイド状澱粉に対し、硬化剤として前記90重量部のブロックイソシアネートを混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファスアセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0134】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのアモルファスアセチルタピオカ澱粉を50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、アモルファスアセチルタピオカ澱粉の分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。上記いずれの場合も、反応式は上記式(3)で表される。
【0135】
ところで、上記実施の形態17〜24に対応する実施例17〜24において、主剤としての各種澱粉はゲル状に調製されているが、これはゾル状の段階を経て時間の経過と共にゲル状となることを意味し、かかるゲル状の澱粉を攪拌等すれば再度ゾル状となる。
【0136】
また、上記実施の形態17〜23において、ゾル状またはゲル状の澱粉(コロイド状澱粉)は、PHを5〜9の範囲とするよう調製することが好ましい。こうすると、澱粉ゲルまたは澱粉ゾル(コロイド状澱粉)をより一層安定化することができる。
【0137】
更に、上記実施の形態17〜23のようにゾル状またはゲル状の澱粉(コロイド状澱粉)を主剤として使用する場合も、ブロックイソシアネートのブロック剤としてはケトオキシム系ブロック剤等のオキシム系ブロック剤を使用することが好ましい。こうすると、ブロックイソシアネート(液体)とコロイド状澱粉とのエマルジョン化をより一層に円滑に行い、安定した均一分散を図ることができる。
【0138】
実施の形態25
実施の形態25に係る硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態25に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースと、硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートとからなる固体(澱粉)+液体(ポリイソシアネート)タイプ、即ち、固液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。本発明のセルロースとしては、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を天然セルロース等の非活性化セルロースより増加した活性化セルロースを使用する。即ち、天然セルロース等の非活性化セルロースは、各セルロース分子のアミロース単位ごとに3個の水酸基を有するが、そのうちの1個のみが活性水酸基であり、残りの2個は(水素結合や立体障害等により活性を失った)非活性水酸基となっている。よって、天然セルロース等の非活性化セルロースは、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合が、通常のままでは、約1/3となっている。これに対し、本発明は、主剤としてのセルロースとして、非活性化セルロースを、物理変性、化学変性、または化学変性と物理変性との組合せにより活性化することにより、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースの場合(1/3)より増加したセルロース(本出願書類中において「活性化セルロース」という)を使用する。具体的には、本発明は、主剤として、活性化セルロースにおける当該活性水酸基の割合を1/2以上とした活性化セルロースを使用する。なお、その限りにおいて、本発明の活性化セルロースとしては、天然セルロース、天然セルロースを化学変性したセルロース誘導体等、セルロース誘導体を更に物理変性したもの等、任意のセルロースを使用することができる。また、現状では、セルロースは自然界に存在する天然澱粉しかないが、化学合成により同等の組成とされた合成セルロース(変性セルロースではない)が生成できる場合、かかる合成セルロースもセルロースとして使用することができる。ここで、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合は、正確に測定することは難しいが、上記澱粉の場合と同様に、主剤としてのセルロースと硬化剤としてのポリイソシアネートとを混合して反応させた場合の反応率を比較することにより、活性水酸基の割合を推定することができる。
【0139】
以下、本発明で使用する主剤としてのセルロースについて説明する。セルロースは、Dグルコース残基がβ−1,4グリコシド結合により直鎖状に連結した重合体(多糖類)で、セロビオースユニットを1単位とする鎖状高分子である。天然セルロースは、植物の細胞壁に多く含まれ、重合度及び平均分子量は植物種により異なるが、木綿や麻では重合度約2千〜3千、平均分子量約30万〜50万である。以下に、セルロース分子の一般構造式(部分式)を示す。
【化8】
【0140】
セルロースのグルコース単位(グルコース残基)は、C(2)位、C(3)位及びC(6)位にヒドロキシ基(水酸基)を有し、2位及び3位の水酸基は二級水酸基、6位の水酸基は一級水酸基となっている。また、セルロース分子の一方の末端のC(1)位の水酸基は還元性を示す還元性末端基であり、他方の末端のC(4)位の水酸基は還元性を示さない非還元性末端基である。セルロース中のグルコース残基の水酸基は赤道結合をする一方、炭素原子と水素原子とは軸結合しているため、セルロース分子鎖は、疎水性及び親水性のサイトを有している。また、セルロース分子は、分子内水素結合のみならず、水酸基間に分子間水素結合を形成する。したがって、セルロース分子は、分子内の水素結合がO3−05間で形成された剛直な板状分子であり、隣接するセルロース分子が更に水酸基による分子間水素結合で結合する層状構造を形成している。このため、セルロースは水には殆ど不溶となる。このように、セルロースは、活性を有するヒドロキシル基(活性水酸基)の官能性が阻害されるため、通常の天然セルロースのままでは、硬化剤乃至架橋剤としてのポリイソシアネートのイソシアネート基(N=C=O)と反応する活性水酸基の数が十分でなく、特に常温等での反応性乃至硬化性の点で十分ではない。
【0141】
そこで、本発明者らは、物理的変性や化学的変性により通常の天然セルロースの分子間の水素結合を開放することにより、セルロース表面における活性水酸基数の割合を全水酸基数の1/2以上となるように改善している。即ち、実施の形態25及び以降の実施の形態26〜30のセルロースは、セルロース表面の活性水酸基数がセルロース表面の全水酸基数の1/2以上の割合となるように調製したセルロースである。ここで、実施の形態25では、セルロース表面の活性水酸基数がセルロース表面の全水酸基数の1/2以上の割合となるように、化学変性等により調製した活性化セルロースを使用することが好ましいが、セルロース表面の活性水酸基数がセルロース表面の全水酸基数の1/2以上の割合となる天然セルロースを選択的に使用することも可能である。
【0142】
上記セルロースの水酸基と反応してセルロース分子を架橋するポリイソシアネートとしては、上記実施の形態1で述べたようなポリイソシアネート(TDI,MDI等)を使用することができる。
【0143】
上記のように構成した実施の形態25に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、前記活性化セルロースを主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、セルロースとしての木粉の所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記セルロースと同一重量部だけ加えて混合する。すると、セルロース表面の複数の活性水酸基(OH)がポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)と常温でウレタン結合(NHCOO)することで、セルロース分子またはセルロースミクロフィブリル(MF)間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化する。この状態から更に加熱すると、セルロース表面の水酸基が更に活性化されることで上記ウレタン結合反応が一層促進され、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態25に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図31に示す。図31に示すように、実施の形態25では、セルロース(結晶)の一般構造(繊維)の活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋している。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0144】
実施例25
実施例25は、実施の形態25に対応する実施例である。実施例25では、主剤としての木粉50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネートを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、木粉のセルロース分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式は次式(4)で表される。
2 Cel-OH + OCN-R-NCO → Cel-O-OCHN-R-NHCO-O-Cel ・・・(4)
なお、式中「Cel」はセルロース分子(Cellulose)を示す。
【0145】
実施の形態26
実施の形態26に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態26に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態25において、主剤としてのセルロースとして、セルロースをエーテル化処理したセルロース誘導体としてのエーテル化セルロースを使用したものである。具体的には、主剤としてのエーテル化セルロースは、天然セルロースの水酸基をエーテル化処理することによりその水酸基を活性化して、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたセルロース誘導体である。かかるエーテル化(R'')セルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC:−CH2COONa)、メチルセルロース(MC:−CH3)、エチルセルロース(EC:−CH2CH3)、シアノエチルセルロース(CyEC:CH2CH2CN)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC:−CH2CH2OH)等のヒドロキシアルキルセルロースとその誘導体、Cellulose−(CH2)2OH、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を使用することができる。このように、天然セルロースの水酸基をエーテル化処理することにより、セルロース表面の活性水酸基数を増加したエステル化セルロースが生成される。実施の形態26に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるエステル化セルロースを主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。例えば、セルロースとしての木粉に対し、NaOH、イソプロパノール及び水を加えて攪拌し、更にモノクロル酢酸ソーダを加えて所定温度で所定時間反応させることにより、粗カルボキシメチルセルロースを調製する。更に、粗カルボキシメチルセルロースにNaCl、グリコール酸、水、イソピロパノールを加えてろ過することによりカルボキシメチルセルロースを調製する。前記所定温度及び所定時間としては、例えば、70〜80℃の温度範囲で2時間程度の時間とすることができる。そして、このエーテル化セルロースの所定重量部に対し、ポリイソシアネートとしてTDI及びMDIを1対1の割合で混合した混合物を前記エーテル化セルロースと同一重量部だけ加えて混合し所定加熱温度で加熱する。すると、実施の形態25と同様にして、エーテル化セルロース表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、エーテル化セルロースは、通常の天然セルロースに較べて活性水酸基数が多く反応性が高い。このときの加熱温度は実施の形態25と同様、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば150℃とすることができる。なお、実施の形態26に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図32に示す。図32に示すように、実施の形態26では、エーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)の活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋している。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0146】
実施例26
実施例26は、実施の形態26に対応する実施例である。実施例26では、主剤であるセルロースとしての木粉に対し、NaOH、イソプロパノール及び水を加えて攪拌し、この混合物に更にモノクロル酢酸ソーダを加えて70〜80℃の温度で2時間反応させることにより、粗カルボキシメチルセルロースを調製した。また、調製した粗カルボキシメチルセルロースにNaCl、グリコール酸、水、イソピロパノールを加えてろ過することにより、カルボキシメチルセルロースを調製した。そして、調製した主剤としてのカルボキシメチルセルロース50重量部に対し、硬化剤としてTDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したものを50重量部加えて混合し、150℃で加熱した。これにより、カルボキシメチルセルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(4)で表される。実施例26では、主剤にカルボキシメチルセルロースを使用した硬化性バイオプラスチックバインダーと、主剤に木粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーとについて、常温硬化したときのウレタン結合の結合振動(反応率)をフーリエ変換赤外分光装置(日本分光製FT/IR−6100))により測定した。その結果を図33に示す。反応率は熱硬化したものを100%として求めた。図33に示すように、エステル化により水酸基の活性が上がり、反応率が増大したことがわかる。
【0147】
実施の形態27
実施の形態27に係る固液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態27に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態25において、主剤としてのセルロースとして、上記実施の形態26のエーテル化セルロースを実施の形態4のアモルファス澱粉(物理的変性澱粉)と同様の方法で更に物理的に変性した活性化セルロースとしてのアモルファスエーテル化セルロースを使用したものである。具体的には、このアモルファスエーテル化セルロースは、天然セルロースの水酸基をエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することにより、エーテル化セルロース分子間の水素結合を弱め、その水酸基を活性化したものであり、これにより澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたものである。無論、実施の形態27で使用するアモルファスエーテル化セルロースは、実施の形態26のエーテル化セルロースを更に活性化したものであるため、実施の形態26のエーテル化セルロースと比較しても、更に活性水酸基の割合を高めることができ、硬化反応性を更に向上することができる。このように、実施の形態27のようにして天然セルロースの水酸基をエーテル化処理したエーテル化セルロースを、更に、実施の形態4のようにしてアモルファス化することにより、主としてセルロース中の隣り合うαグルコースのC2位とC3位の水酸基間の水素結合が弱まり、水酸基が更に活性化したアモルファスエーテル化セルロースが生成される。
【0148】
実施の形態27に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアモルファスエーテル化セルロースを主剤とし、実施の形態1と同様のポリイソシアネートを硬化剤として混合することにより硬化する。即ち、アモルファスエーテル化セルロース表面の複数の活性水酸基とポリイソシアネートとがウレタン結合し、三次元網目構造を形成して硬化する。このとき、CMC等のアモルファスエーテル化セルロースは、通常の天然セルロースに較べて活性水酸基数が一層多く、また、水溶性で分散性も良いため、反応性が非常に高い。なお、実施の形態27に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図34に示す。図34に示すように、実施の形態27では、アモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)の活性水酸基間を、ポリイソシアネート(液体)が架橋している。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0149】
実施の形態28
実施の形態28に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態28に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースと、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。本発明のセルロースとしては、実施の形態25と同様、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした活性化セルロースを使用する。また、ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記セルロースと混合分散されて安定化している。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記セルロースの活性水酸基と結合し、セルロース分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。即ち、硬化性プラスチックバインダー組成物を加熱することで、ブロックイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基が活性化され、セルロース表面の複数の活性水酸基がポリイソシアネートのイソシアネート基と(常温となっても)ウレタン結合することで、セルロース分子間がポリイソシアネートにより架橋され、3次元網目構造を形成して硬化し、硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。なお、実施の形態28に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図35に示す。図35に示すように、実施の形態28では、セルロース(結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがセルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0150】
実施例28
実施例27は、実施の形態28に対応する実施例である。実施例27では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤であるセルロースとしての木粉50重量部に対し、硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、木粉のセルロース分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式は次式(5)で表される。
BL-OCHN-R-NHCO-BL ⇔ 2 BL + OCN-R-NCO
2 Cel-OH + OCN-R-NCO → Cel-O-OCHN-R-NHCO-O-Cel ・・・(5)
なお、ブロック剤としては、実施の形態9と同様のものを使用することができる。
【0151】
実施の形態29
実施の形態29に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態29に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態28において、主剤としてのセルロースとして、実施の形態26と同様のエーテル化セルロースを使用したものである。即ち、実施の形態29では、セルロースとして、天然セルロースの水酸基をエーテル化処理することによりその水酸基を活性化して前記セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用し、このエーテル化セルロースを前記ブロックイソシアネートと混合して1液型としている。かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、上記実施の形態28と同様にして所定温度以上に加熱することにより、上記実施の形態28と同様に、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートが活性化して前記エーテル化セルロースのセルロース分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態29に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図36に示す。図36に示すように、実施の形態29では、エーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがエーテル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0152】
実施例28
実施例28は、実施の形態29に対応する実施例である。実施例28では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤であるセルロースとしての木粉に対し、NaOH、イソプロパノール及び水を加えて攪拌し、この混合物に更にモノクロル酢酸ソーダを加えて70〜80℃の温度で2時間反応させることにより、粗カルボキシメチルセルロースを調製した。また、調製した粗カルボキシメチルセルロースにNaCl、グリコール酸、水、イソピロパノールを加えてろ過することにより、カルボキシメチルセルロースを調製した。そして、調製した主剤としてのカルボキシメチルセルロース50重量部に対し、硬化剤として前記ブロックイソシアネートを90重量部加えて混合し、1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、エーテル化セルロースのセルロース分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。このときの反応式も上記式(5)で表される。
【0153】
実施の形態30
実施の形態30に係る1液型硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態30に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、実施の形態28において、主剤としてのセルロースとして、上記実施の形態27のアモルファスエーテル化セルロースを使用したものである。実施の形態30に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、かかるアモルファスエーテル化セルロースを主剤とし、実施の形態28と同様のブロックイソシアネートを硬化剤として混合することにより、ブロックイソシアネートが、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記アモルファスエーテル化セルロースと混合分散されて安定化している。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記アモルファスエーテル化セルロースの活性水酸基と結合し、セルロース分子を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化する。なお、実施の形態30に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図37に示す。図37に示すように、実施の形態30では、アモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがアモルファスエーテル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0154】
実施の形態31
実施の形態31に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態31に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのエステル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エステル化セルロースと、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。コロイド状エステル化セルロースは、セルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした主剤としてのエステル化セルロースを加水加熱してゾル化またはゲル化した(ゾル状またはゲル状の)コロイド状をなすものである。また、ブロックイソシアネートは、上記実施の形態9と同様のものであり、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エステル化セルロースと混合分散されて(順ミセル状または逆ミセル状に)エマルジョン化され、安定化している。即ち、実施の形態31では、界面活性剤等の乳化剤乃至分散剤を添加乃至混合しなくても、(通常は疎水性の)ブロックイソシアネートが(ゾル状またはゲル状の)コロイド状エステル化セルロースと順ミセル状のエマルジョンを形成し、ブロックイソシアネートがコロイド状エステル化セルロース内に粒子状に安定的に均一分散したり、逆に、ブロックイソシアネートがコロイド状エステル化セルロースと逆ミセル状のエマルジョンを形成し、コロイド状エステル化セルロースがブロックイソシアネート内に粒子状に安定的に均一分散したりする。これは、セルロースのゾル化またはゲル化により、セルロース分子の水酸基が水素結合することに起因すると考えられる。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、まず、コロイド状エステル化セルロースの水分が蒸発して、セルロースゾルまたはセルロースゲル中の水素結合が開放され、続いて、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記エステル化セルロースの活性水酸基と結合し、セルロース分子間を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化して、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。ここで、ブロック剤としては、特に、オキシム系ブロック剤を使用することが好ましく、この場合、ブロックイソシアネートとコロイド状エステル化セルロースとのエマルジョン化を非常に円滑かつ安定して行うことができる。一方、アルコール系ブロック剤を使用する場合、ブロックイソシアネートとコロイド状エステル化セルロースとのエマルジョン化を安定的に行う点から、エタノール系のものはあまり好ましくなく、上記のようにメタノール系のものを使用することが好ましい。なお、実施の形態31に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図38に示す。図38に示すように、実施の形態31では、エステル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがエステル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0155】
実施例29
実施例29は、実施の形態31に対応する実施例である。実施例29では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、セルロースとしての木粉に対し、DMF(ジメチルホルムアミド)/SO3(無水硫酸)を加えて0〜30℃の温度で4時間攪拌した後、NaOH、水、メタノールを加えて主剤であるエステル化セルロースとしての硫酸セルロースを調製した。また、調製した硫酸セルロース50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状セルロースを調製した。そして、このコロイド状セルロースに硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、硫酸セルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0156】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としての硫酸セルロースを50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、硫酸セルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0157】
上記いずれの場合も、反応式は次式(6)で表される。
Cel-OH----H2O → Cel-OH + H2O↑
BL-OCHN-R-NHCO-BL ⇔ 2 BL + OCN-R-NCO
2 Cel-OH + OCN-R-NCO → Cel-O-OCHN-R-NHCO-O-Cel ・・・(6)
【0158】
実施の形態32
実施の形態32に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態31に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エーテル化セルロースと、硬化剤乃至架橋剤としてのブロックイソシアネートとを予め混合した1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物である。コロイド状エーテル化セルロースは、実施の形態27のエーテル化セルロースを加水加熱してゾル化またはゲル化した(ゾル状またはゲル状の)コロイド状をなすものとすることができる。また、ブロックイソシアネートは、上記実施の形態9と同様のものであり、ポリイソシアネートを所定のブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エーテル化セルロースと混合分散されて(順ミセル状または逆ミセル状に)エマルジョン化され、安定化している。即ち、実施の形態32では、界面活性剤等の乳化剤乃至分散剤を添加乃至混合しなくても、(通常は疎水性の)ブロックイソシアネートが(ゾル状またはゲル状の)コロイド状エーテル化セルロースと順ミセル状のエマルジョンを形成し、ブロックイソシアネートがコロイド状エーテル化セルロース内に粒子状に安定的に均一分散したり、逆に、ブロックイソシアネートがコロイド状エーテル化セルロースと逆ミセル状のエマルジョンを形成し、コロイド状エーテル化セルロースがブロックイソシアネート内に粒子状に安定的に均一分散したりする。一方、かかる1液型の硬化性プラスチックバインダー組成物は、所定温度以上に加熱することにより、まず、コロイド状エーテル化セルロースの水分が蒸発して、セルロースゾルまたはセルロースゲル中の水素結合が開放され、続いて、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離してイソシアネート基のブロックを外し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が活性化して前記エーテル化セルロースの活性水酸基と結合し、セルロース分子間を架橋する。これにより、硬化性プラスチックバインダー組成物が硬化して、最終的な硬化物としての硬化性樹脂成形物を迅速かつ効率的に生成する。なお、このときの加熱温度は、100℃以上200℃までの範囲とし、例えば180℃以上とすることができる。ここで、ブロック剤としては、特に、オキシム系ブロック剤を使用することが好ましく、この場合、ブロックイソシアネートとコロイド状エステル化セルロースとのエマルジョン化を非常に円滑かつ安定して行うことができる。一方、アルコール系ブロック剤を使用する場合、ブロックイソシアネートとコロイド状エステル化セルロースとのエマルジョン化を安定的に行う点から、エタノール系のものはあまり好ましくなく、上記のようにメタノール系のものを使用することが好ましい。なお、実施の形態32に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図39に示す。図39に示すように、実施の形態32では、エーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがエーテル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0159】
実施例30
実施例30は、実施の形態32に対応する実施例である。実施例30では、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を40重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを90重量部調製した。次に、主剤であるセルロースとしての木粉に対し、NaOH、イソプロパノール及び水を加えて攪拌し、この混合物に更にモノクロル酢酸ソーダを加えて70〜80℃の温度で2時間反応させることにより、粗カルボキシメチルセルロースを調製した。また、調製した粗カルボキシメチルセルロースにNaCl、グリコール酸、水、イソピロパノールを加えてろ過することにより、カルボキシメチルセルロースを調製した。そして、調製した主剤としてのカルボキシメチルセルロース50重量部に対し、水を300〜500重量部加えて80℃に加温してゲル化し、コロイド状セルロースを調製した。そして、このコロイド状セルロースに硬化剤として前記ブロックイソシアネートの90重量部を加えて混合し、高速攪拌することで、順ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、カルボキシメチルセルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。
【0160】
一方、TDI及びMDIを1対1(50:50重量部)の割合で混合したポリイソシアネート50重量部に対してブロック剤を70重量部加えてイソシアネート基をブロックし、ブロックイソシアネートを120重量部調製した。次に、このブロックイソシアネート120重量部に対して主剤としてのカルボキシメチルセルロースを50重量部加えて攪拌し、更に、この混合物に対して水を1〜500重量部加えて低速攪拌することで、逆ミセル構造のエマルジョンが安定的に生成された1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を調製した。そして、使用時に、この1液型硬化性プラスチックバインダー組成物を180℃で加熱した。これにより、カルボキシメチルセルロースの分子間がポリイソシアネートにより架橋されてウレタン結合し、硬化が迅速に進行した。いずれの場合の反応式も上記式(6)で表される。
【0161】
実施の形態33
実施の形態33に係る1液型水性硬化性プラスチックバインダー組成物及びその硬化物について説明する。実施の形態33に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤としてのセルロースとして、実施の形態27のエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエーテル化セルロースを使用する。そして、かかるアモルファスエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状アモルファスエーテル化セルロースを調製する。コロイド状アモルファスエーテル化セルロースは、実施の形態32と同様のブロックイソシアネートと予め混合されて1液型の常温または熱硬化性バイオプラスチックバインダー組成物を構成する。ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状アモルファスエーテル化セルロースと混合されて、順ミセル構造または逆ミセル構造のエマルジョンを形成すると共に、加熱によりアモルファスエーテル化セルロースを架橋する。なお、実施の形態33に係る硬化性プラスチックバインダー組成物における硬化構造乃至架橋構造を図40に示す。図40に示すように、実施の形態33では、アモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)とブロックイソシアネート(液体)とが混合分散し、ブロック剤が外れることによりポリイソシアネートがアモルファスエーテル化セルロースの活性水酸基間を架橋するようになっている。なお、図中、−OH*は活性水酸基を示す。
【0162】
ところで、上記実施の形態31〜33に対応する実施例31〜33において、主剤としての各種セルロースはゲル状に調製されているが、これはゾル状の段階を経て時間の経過と共にゲル状となることを意味し、かかるゲル状の澱粉を攪拌等すれば再度ゾル状となる。
【0163】
また、上記実施の形態31〜33において、ゾル状またはゲル状のセルロース(コロイド状セルロース)は、PHを5〜9の範囲とするよう調製することが好ましい。こうすると、セルロースゲルまたはセルロースゾル(コロイド状セルロース)をより一層安定化することができる。
【0164】
更に、上記実施の形態31〜33のようにゾル状またはゲル状のセルロース(コロイド状セルロース)を主剤として使用する場合も、ブロックイソシアネートのブロック剤としてはケトオキシム系ブロック剤等のオキシム系ブロック剤を使用することが好ましい。こうすると、ブロックイソシアネート(液体)とコロイド状澱粉とのエマルジョン化をより一層に円滑に行い、安定した均一分散を図ることができる。
【0165】
また、実施の形態25〜33では、セルロースをアモルファスかする等して物理変性する場合、セルロース間を架橋するために、所定サイズのポリイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、各種ポリイソシアネートは、その一般式(化学構造式)で表される構造に対応するサイズを有するが、主剤として使用するセルロースの活性水酸基間の間隔に対応するサイズのポリイソシアネートを選択的に使用することで、架橋効率を飛躍的に向上することができる。具体的には、前記ポリイソシアネートとして、ボールミル処理等の水酸基活性化により物理変性を受けた前記セルロースの分子内または分子間活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用することが好ましい。より具体的には、ポリイソシアネートのサイズは、上記澱粉の場合とほぼ同様に、10〜60Åの範囲とすることが好ましい。ここで、変性セルロースの場合、その分子間距離は天然セルロース等の未変性セルロースに比較してより大きくなるため、変性セルロース用のポリイソシアネートのサイズとしては、上記範囲のうちの大きい側(例えば、30〜60Å)の範囲とすることが好ましく、天然セルロース等の未変性セルロースの場合、上記範囲のうちの小さい側(例えば、10〜30Å)の範囲とすることが好ましい。
【0166】
ところで、本発明に係る硬化性プラスチックバインダー組成物は、主剤及び硬化剤以外に、所定の機能を発揮するための添加剤等を混合することもできる。例えば、硬化反応を促進するための促進剤を添加してもよく、この場合、反応率(硬化率)をより高め、未反応成分の割合を小さくして、耐火性等の特性をより一層向上することができる。
【0167】
また、本発明における物理的化工澱粉としては、上記以外にも、湿熱処理澱粉、高周波処理澱粉、放射線処理澱粉等を使用することができ、化学的化工澱粉としては、カルボキシメチル澱粉、ヒドロシキアルキル澱粉、カチオン澱粉等のエーテル化澱粉、架橋澱粉、酸化澱粉、酸変性澱粉等を使用することができ、更に、酵素分解デキストリン等の酵素処理澱粉等を使用することもできる。
【0168】
更に、本発明の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物における硬化時の加熱温度は、上記のように、100℃〜200℃の範囲内とすることが好ましいが、1液型の場合、ブロック剤を解離するために、180℃以上の温度とすることが好ましい。また、硬化剤として、諸特性の点から、MDIの割合を高めることが好ましいが、MDIの割合を増加した場合、加熱温度は前記温度より一層高くすることが、硬化性(反応性)の向上の点から好ましい。この場合でも、MDIが加熱により気化されることはない。一方、硬化剤として、TDIの割合を増加した場合、加熱温度をあまり高くすると、TDIが加熱により気化する可能性があるため、加熱温度はMDIの場合より低くすることが好ましい。
【0169】
次に、本発明の硬化性プラスチックバインダー組成物を硬化してなる硬化物についての一実施例を説明する。本発明の硬化物は、上記各実施の形態及び各実施例の硬化性プラスチックバインダー組成物を硬化して任意の形状に成形することができるが、例えば、実施例8の硬化性プラスチックバインダー組成物を硬化した硬化物は、難燃性も、同じポリイソシアネートを使用するポリウレタンに比べ、高くなる。次にJISD1201に基づく水平難燃性試験のデータを示す。時間は、エステル不布に各樹脂を含浸したものを燃焼させたときの燃焼時間を示す。燃焼時間が短い方が難燃性が高い。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の硬化性プラスチックバインダー組成物は、自動車用部品の成形等、従来の石油系硬化性樹脂が使用される分野におけるバインダーとして好適に適用することができ、また、建築内装材の接着等、接着分野においても好適に適用することができる。その他、従来の樹脂バインダーが使用される任意の分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は一般的な天然澱粉粒の構造を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係る澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態2に係るアルファー澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態3に係る熱分解澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態4に係るアモルファス澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態5に係るエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態6に係るアルファーエステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態7に係る熱分解エステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態8に係るアモルファスエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態8に対応する実施例8におけるアモルファスエステル化澱粉(アモルファスアセチルタピオカ澱粉)のX線回折ピークを示すグラフである。
【図11】図11は本発明の実施の形態8に対応する実施例8の比較例のエステル化澱粉(アセチルタピオカ澱粉)のX線回折ピークを示すグラフである。
【図12】図12は本発明の実施の形態8に対応する実施例8における主剤にアモルファスアセチルタピオカ澱粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーと、主剤にアセチルタピオカ澱粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーとについて、常温硬化したときのウレタン結合の結合振動を示すグラフである。
【図13】図13は本発明の実施の形態9に係る澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態10に係るアルファー澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態11に係る熱分解澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態12に係るアモルファス澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図17】図17は本発明の実施の形態13に係るエステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図18】図18は本発明の実施の形態14に係るアモルファスエステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図19】図19は本発明の実施の形態15に係る熱分解エステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図20】図20は本発明の実施の形態16に係るアモルファスエステル化澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図21】図21は本発明の実施の形態17に係るコロイド状澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図22】図22は本発明の実施の形態18に係るコロイド状アルファー澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図23】図23は本発明の実施の形態19に係るコロイド状熱分解澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図24】図24は本発明の実施の形態20に係るコロイド状アモルファス澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図25】図25は本発明の実施の形態20に記載の条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンの分散例を示す光学顕微鏡写真像である。
【図26】図26は図25の比較例として、実施の形態20に記載の条件と異なる条件で調製した順ミセル構造のエマルジョンの分散例を示す光学顕微鏡写真像である。
【図27】図27は本発明の実施の形態21に係るコロイド状エステル化澱粉粒(結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図28】図28は本発明の実施の形態22に係るコロイド状アルファーエステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図29】図29は本発明の実施の形態23に係るコロイド状熱分解エステル化澱粉粒のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図30】図30は本発明の実施の形態24に係るコロイド状アモルファスエステル化澱粉粒(非結晶)の一般構造(固体)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図31】図31は本発明の実施の形態25に係るセルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図32】図32は本発明の実施の形態26に係るエーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図33】図33は本発明の実施の形態26において主剤にカルボキシメチルセルロースを使用した硬化性バイオプラスチックバインダーと、主剤に木粉を使用した硬化性バイオプラスチックバインダーとについて、常温硬化したときのウレタン結合の結合振動(反応率)を示すグラフである。
【図34】図34は本発明の実施の形態27に係るアモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図35】図35は本発明の実施の形態28に係るセルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図36】図36は本発明の実施の形態29に係るエーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図37】図37は本発明の実施の形態30に係るアモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図38】図38は本発明の実施の形態31に係るエステル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図39】図39は本発明の実施の形態32に係るエーテル化セルロース(結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【図40】図40は本発明の実施の形態33に係るアモルファスエーテル化セルロース(非結晶)の一般構造(繊維)のポリイソシアネートによる架橋構造を示す模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉と、
前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートと
からなることを特徴とする固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項2】
前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用したことを特徴とする請求項1記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項3】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用したことを特徴とする請求項1記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項4】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用したことを特徴とする請求項1記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項5】
澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉と、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記活性化澱粉と混合分散されると共に、常温または加熱により前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項6】
前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用したことを特徴とする請求項5記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項7】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用したことを特徴とする請求項5記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項8】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用したことを特徴とする請求項5記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項9】
澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉を加水加熱してゾル化またはゲル化したコロイド状澱粉と、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状澱粉と混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項10】
前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製したことを特徴とする請求項9記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項11】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製したことを特徴とする請求項9記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項12】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製したことを特徴とする請求項9記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項13】
前記コロイド状澱粉のPHを5〜9の範囲としたことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項14】
前記ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用したことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項15】
前記ポリイソシアネートとして、前記活性化澱粉の活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用したことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項16】
表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としての活性化セルロースと、
前記活性化セルロースを架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートと
からなることを特徴とする固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項17】
前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化してセルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用したことを特徴とする請求項16記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項18】
前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファスエーテル化セルロースを使用したことを特徴とする請求項16記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項19】
表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としての活性化セルロースと、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記活性化セルロースと混合分散されると共に、常温または加熱により前記活性化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項20】
前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化してセルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用したことを特徴とする請求項19記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項21】
前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファスエーテル化セルロースを使用したことを特徴とする請求項19記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項22】
セルロースをエステル化処理することにより水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としてのエステル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エステル化セルロースと、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エステル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記エステル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項23】
セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としてのエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エーテル化セルロースと、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エーテル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記エーテル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項24】
セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化した主剤としてのアモルファスエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状アモルファスエーテル化セルロースと、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状アモルファスエーテル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記アモルファスエーテル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項25】
前記コロイド状セルロースのPHを5〜9の範囲としたことを特徴とする請求項22乃至24のいずれか1項記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項26】
前記ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用したことを特徴とする請求項22乃至24のいずれか1項記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項27】
前記ポリイソシアネートとして、前記セルロースの活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用したことを特徴とする請求項17乃至23のいずれか1項記載の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか1項の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物を常温または加熱により反応して硬化することにより生成したことを特徴とする硬化物。
【請求項1】
澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉と、
前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートと
からなることを特徴とする固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項2】
前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用したことを特徴とする請求項1記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項3】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用したことを特徴とする請求項1記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項4】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用したことを特徴とする請求項1記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項5】
澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉と、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記活性化澱粉と混合分散されると共に、常温または加熱により前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項6】
前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用したことを特徴とする請求項5記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項7】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用したことを特徴とする請求項5記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項8】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用したことを特徴とする請求項5記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項9】
澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化澱粉より増加した主剤としての活性化澱粉を加水加熱してゾル化またはゲル化したコロイド状澱粉と、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状澱粉と混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記活性化澱粉を架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項10】
前記活性化澱粉として、澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアルファー澱粉、澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上とした熱分解澱粉、澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファス澱粉のいずれか1以上を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製したことを特徴とする請求項9記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項11】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理することによりその水酸基を活性化して前記澱粉粒表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を40%以上としたエステル化澱粉を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製したことを特徴とする請求項9記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項12】
前記活性化澱粉として、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を加水加熱してゲル化した後に急速熱乾燥してアルファー化することによりその水酸基を活性化したアルファーエステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を熱分解することによりその水酸基を活性化した熱分解エステル化澱粉、澱粉の水酸基をエステル化処理したエステル化澱粉を衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化したアモルファスエステル化澱粉のいずれか1以上を使用し、当該澱粉に加水してゾル化またはゲル化することで前記コロイド状澱粉を調製したことを特徴とする請求項9記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項13】
前記コロイド状澱粉のPHを5〜9の範囲としたことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項14】
前記ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用したことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項15】
前記ポリイソシアネートとして、前記活性化澱粉の活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用したことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項16】
表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としての活性化セルロースと、
前記活性化セルロースを架橋する硬化剤としてのポリイソシアネートと
からなることを特徴とする固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項17】
前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化してセルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用したことを特徴とする請求項16記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項18】
前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファスエーテル化セルロースを使用したことを特徴とする請求項16記載の固液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項19】
表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としての活性化セルロースと、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記活性化セルロースと混合分散されると共に、常温または加熱により前記活性化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項20】
前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化してセルロース表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたエーテル化セルロースを使用したことを特徴とする請求項19記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項21】
前記活性化セルロースとして、セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を1/2以上としたアモルファスエーテル化セルロースを使用したことを特徴とする請求項19記載の1液型硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項22】
セルロースをエステル化処理することにより水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としてのエステル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エステル化セルロースと、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エステル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記エステル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項23】
セルロースをエーテル化処理することにより水酸基を活性化して表面の全水酸基数における活性水酸基数の割合を非活性化セルロースより増加した主剤としてのエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状エーテル化セルロースと、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状エーテル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記エーテル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項24】
セルロースをエーテル化処理したエーテル化セルロースを衝撃粉砕して結晶構造を破壊することによりその水酸基を活性化してその水酸基を活性化した主剤としてのアモルファスエーテル化セルロースに加水してゾル化またはゲル化したコロイド状セルロースとしてのコロイド状アモルファスエーテル化セルロースと、
ポリイソシアネートをブロック剤によりブロックした状態で、前記コロイド状アモルファスエーテル化セルロースと混合されてエマルジョン化されると共に、常温または加熱により前記アモルファスエーテル化セルロースを架橋する硬化剤としてのブロックイソシアネートと
からなることを特徴とする1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項25】
前記コロイド状セルロースのPHを5〜9の範囲としたことを特徴とする請求項22乃至24のいずれか1項記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項26】
前記ブロック剤としてオキシム系ブロック剤を使用したことを特徴とする請求項22乃至24のいずれか1項記載の1液型水性硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項27】
前記ポリイソシアネートとして、前記セルロースの活性水酸基間距離に対応するサイズを有するポリイソシアネートを使用したことを特徴とする請求項17乃至23のいずれか1項記載の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか1項の硬化性バイオプラスチックバインダー組成物を常温または加熱により反応して硬化することにより生成したことを特徴とする硬化物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2007−262366(P2007−262366A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93076(P2006−93076)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(500450613)大榮産業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(500450613)大榮産業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]