硬化性樹脂組成物及び反射防止膜
【課題】屈折率及び反射率が非常に低く、耐擦傷性及び耐汚染性に優れる硬化膜を与える硬化性樹脂組成物及びそれを用いた反射防止膜、マイクロレンズ用反射防止膜、及び平坦化層を提供する。
【解決手段】下記成分(A)及び(B)を含有する硬化性樹脂組成物であって、有機溶剤を除く組成物全量に対して、(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体 1〜90質量%、(B)重合性不飽和基を有する有機化合物と結合されている、連鎖球状のシリカ粒子 10〜99質量%、を含有する硬化性樹脂組成物であり、この硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物は、低屈折率層(18)として反射防止膜(10)に用いることができる。
【解決手段】下記成分(A)及び(B)を含有する硬化性樹脂組成物であって、有機溶剤を除く組成物全量に対して、(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体 1〜90質量%、(B)重合性不飽和基を有する有機化合物と結合されている、連鎖球状のシリカ粒子 10〜99質量%、を含有する硬化性樹脂組成物であり、この硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物は、低屈折率層(18)として反射防止膜(10)に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及び反射防止膜に関する。より詳細には、シリカ粒子と、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体を含み、硬化させたときに、屈折率及び反射率が低く、耐擦傷性、塗工性、及び耐久性に優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物、及びそのような硬化物からなる低屈折率層を有する反射防止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレイ等の各種表示パネルにおいて、外光の映りを防止し、画質を向上させるために、低屈折率性、耐擦傷性、塗工性、及び耐久性に優れた硬化物からなる低屈折率層を含む反射防止膜が求められている。
これら表示パネルにおいては、付着した指紋、埃等を除去するため表面をエタノール等を含侵したガーゼで拭くことが多く、耐擦傷性が求められている。
【0003】
反射防止膜の低屈折率層用材料として、例えば、水酸基含有含フッ素重合体を含むフッ素樹脂系塗料が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
しかし、このようなフッ素樹脂系塗料では、塗膜を硬化させるために、水酸基含有含フッ素重合体と、メラミン樹脂等の硬化剤とを、酸触媒下、加熱して架橋させる必要があり、加熱条件によっては、硬化時間が過度に長くなったり、使用できる基材の種類が限定されてしまうという問題があった。
また、得られた塗膜についても、耐候性には優れているものの、耐擦傷性や耐久性に乏しいという問題があった。
【0004】
そこで、上記の問題点を解決するため、少なくとも1個のイソシアネート基と少なくとも1個の付加重合性不飽和基とを有するイソシアネート基含有不飽和化合物と水酸基含有含フッ素重合体とを、イソシアネート基の数/水酸基の数の比が0.01〜1.0の割合で反応させて得られる不飽和基含有含フッ素ビニル重合体を含む塗料用組成物が提案されている(例えば、特許文献4)。
【0005】
しかし、上記公報では、不飽和基含有含フッ素ビニル重合体を調製する際に、水酸基含有含フッ素重合体のすべての水酸基を反応させるのに十分な量のイソシアネート基含有不飽和化合物を用いず、積極的に当該重合体中に未反応の水酸基を残存させるものであった。
このため、このような重合体を含む塗料用組成物は、低温、短時間での硬化を可能とするものの、残存した水酸基を反応させるために、メラミン樹脂等の硬化剤をさらに用いて硬化させる必要があった。さらに、上記公報で得られた塗膜は、塗工性、耐擦傷性についても十分とはいえないという課題があった。
【0006】
また、反射防止膜の耐擦傷性を改善するために、反射防止膜の最外層である低屈折率膜にシリカ粒子を添加する技術が広く用いられている(例えば、特許文献5,6)。しかし、多くの場合、粒径が比較的均一なシリカ粒子が1種類用いられているため、粒子の充填率を上げることができず、十分な耐擦傷性が得られるには至っていない。
【0007】
さらに、より低反射率の反射防止膜を提供するために従来よりもさらに低屈折率を有する低屈折率膜用材料が望まれている。そこでアクリル等の樹脂成分よりも空気の屈折率が低いことを利用して、多孔質粒子や中空粒子等の粒子内部に空隙を有する粒子(以下、総称として中空粒子」という。)を用いた技術が知られている(例えば、特許文献7〜9)。
しかし、中空粒子を用いるとかかる空隙を有しない粒子(中実粒子)に比べて硬化膜の耐擦傷性が低下する欠点があった。
【0008】
また、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等のオンチップカラーフィルターの結像光学系あるいは光ファイバーコネクタの光学系材料として、3〜100μm程度のレンズ径を有するマイクロレンズ、又はそれらのマイクロレンズを規則的に配列したマイクロレンズアレイが使用されている。
【0009】
マイクロレンズは、外部からの光を、固体撮像素子等の感光部に集光する機能を有するレンズであるが、近年の素子の高集積化により、素子のサイズが小さくなっており、1つの素子に入射する光量は減少する傾向にある。そのため、素子に入射する光を損失なく感光部に集光させること(集光率の向上)が課題となっている。
【0010】
この課題に対して、例えば、マイクロレンズの表層に反射防止膜を形成し、空気媒体とレンズとの屈折率変化に起因する光の反射を抑制することが検討されている(例えば、特許文献10参照)。
【0011】
さらに、従来の低屈折率層形成用のフッ素材料では、塗布したときのハジキ、ムラ等により膜厚ムラが生じ、均一な画像が得られないという問題があった。また、固体撮像素子等のマイクロレンズでは、カメラレンズから入射する光の強度が大きいと、カメラレンズ、リッドガラスを透過した光の一部が、カラーフィルタ表面で反射し、その光がリッドガラスで再度反射して固体撮像素子に入り、映像に映る、フレアという現象が生じることが問題となっている。
【0012】
上記問題に対して、固体撮像素子に平坦化層を設けることにより上記課題を解決しようとする技術が知られている(特許文献11〜13)。固体撮像素子に用いられる平坦化層としては、集光用のマイクロレンズ間の受光部平坦化層(特許文献11)、光電変換を行う受光部の表面を平坦化する受光部平坦化層(特許文献13)、受光部平坦化層上に形成されるカラーフィルタ上に形成されるカラーフィルタ平坦化層(特許文献12)等が挙げられる。
【0013】
しかし、平坦化層は液状硬化性樹脂組成物をスピンコート方等により塗布した後これを硬化せしめて製造されるものであるところ、従来の平坦化層に用いられた材料では、屈折率が十分に低くないため、フレアを効果的に防止することが困難であり、集光率を十分に向上させることができないという問題があった。また、液状組成物を塗布した際のハジキや塗布ムラを生じやすく、このため平坦化層の膜厚を均一にすることが困難であり、その結果、均一な光透過性を付与する上で問題があった。
【0014】
【特許文献1】特開昭57−34107号公報
【特許文献2】特開昭59−189108号公報
【特許文献3】特開昭60−67518号公報
【特許文献4】特開昭61−296073号公報
【特許文献5】特開2002−265866号公報
【特許文献6】特開平10−316860号公報
【特許文献7】特開2003−139906号公報
【特許文献8】特開2002−317152号公報
【特許文献9】特開平10−142402号公報
【特許文献10】特開平4−223371号公報
【特許文献11】特開平06−232379号公報
【特許文献12】特開平06−204441号公報
【特許文献13】特開2001−308300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明は、屈折率及び反射率が低く、耐擦傷性及び耐汚染性に優れる硬化膜を与える硬化性樹脂組成物及びそれを用いた反射防止膜、マイクロレンズ用反射防止膜を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、固体撮像素子の平坦化層用の低屈折率硬化物を与え、かつスピンコート法による塗布性に優れた放射線硬化性樹脂組成物、及びこれを用いた、フレアの防止された固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成できる硬化性樹脂組成物を得るため、本発明者らは鋭意研究を重ね、組成物の成分として複数の球状シリカ粒子が連鎖した形状を有する粒子を用いることにより、低屈折率の硬化物が得られ、シリカ粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させることにより、粒子同士に結着力を持たせることができ、得られる硬化物の耐擦傷性を高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
本発明によれば、以下の硬化性樹脂組成物、硬化物及び反射防止膜、マイクロレンズ用反射防止膜、平坦化層、平坦化層の製造方法、及び固体撮像素子が提供される。
1.下記成分(A)及び(B)を含有する硬化性樹脂組成物であって、有機溶剤以外の組成物全量に対して、
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体 1〜90質量%
(B)重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面変性された連鎖球状のシリカ粒子 10〜99質量%
を含有する硬化性樹脂組成物。
2.前記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体が、
1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、
水酸基含有含フッ素重合体と、
を反応させて得られるエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体である上記1に記載の硬化性樹脂組成物。
3.前記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のエチレン性不飽和基が(メタ)アクリル基である上記1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
4.前記(B)連鎖球状シリカ粒子が、2個以上の、数平均粒径1〜100nmの略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で連結した形態である上記1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
5.前記(B)連鎖球状シリカ粒子が、前記略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で繋がった数珠状の形態、又は前記略球状のシリカ粒子が直鎖状に繋がった形態を有する上記4に記載の硬化性樹脂組成物。
6.さらに(C)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を含有する上記1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
7.さらに(D)(メタ)アクリレート化合物を含有する上記1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
8.前記(D)(メタ)アクリレート化合物が、分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有する上記7に記載の硬化性樹脂組成物。
9.反射防止膜用である上記1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
10.上記1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
11.上記10に記載の硬化物からなる低屈折率層を有する反射防止膜。
12.上記10に記載の硬化物からなる低屈折率層を有するマイクロレンズ用反射防止膜。
13.上記10に記載の硬化物からなる低屈折率膜と、これより高屈折率の硬化膜とを有する上記12に記載のマイクロレンズ用反射防止膜。
14.上記1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる平坦化層。
15.上記1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物をスピンコート法により塗布して該組成物の塗布膜を形成した後に、放射線を照射して該塗布膜を硬化せしめる工程を有する平坦化層の製造方法。
16.パターンマスクを介して前記放射線を照射して前記塗布膜を硬化せしめた後、現像処理することによって、パターン化された平坦化層を形成する上記15に記載の平坦化層の製造方法。
17.少なくとも基材層、上記14に記載の平坦化層、及びマイクロレンズを含む固体撮像素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、屈折率及び反射率が低く、優れた耐擦傷性及び耐汚染性を有する硬化物が得られる。
また、本発明の硬化物からなる低屈折率層を有する、本発明の反射防止膜は、優れた反射防止特性を示す。
本発明の硬化性樹脂組成物は、連鎖球状のシリカ粒子を用いているため、これを硬化させて得られる硬化膜は屈折率が非常に低く、CCD(電荷結合素子;Charge Coupled Device)等のイメージセンサーのマイクロレンズ上に塗布することで反射防止膜又は平坦化膜として機能し、イメージセンサーの集光効率を向上させることができる。
【0019】
本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、空気媒体とマイクロレンズとの屈折率差に起因するレンズ表面での光の反射を抑制できるため、マイクロレンズの光線透過率を向上させることができる。このため、固体撮像素子等の感光部に入射する光量を向上することができる。
【0020】
本発明の平坦化層用放射線硬化性樹脂組成物は、低屈折率で、スピンコート法による塗布性に優れている。本発明の平坦化層用放射線硬化性樹脂組成物は、塗布したときのハジキ、塗布ムラが生じないため、塗布均一性が良く、従って、本発明の平坦化層用放射線硬化物は均一な画像を与えることができる。また、均一に塗布することができるため、本発明の平坦化層用放射線硬化物を含む固体撮像素子等の歩留まりの向上が図れる。
【0021】
上記本発明の平坦化層を含む、本発明の固体撮像素子は、固体撮像素子等のマイクロレンズで問題となるフレアが効果的に防止されている他、従来よりも屈折率の低い平坦化層が得られるため集光率が向上している。
【0022】
さらに、本発明の平坦化層用放射線硬化性組成物は、放射線照射によって硬化しうるため、マスク露光等の手段によりパターン化された平坦化層を作製することができ、例えば、各マイクロレンズの周囲(マイクロレンズ間)に平坦化層が形成されていない部分を設けることができる。このように平坦化層が形成されていない部分を形成できることによって、目的とする箇所だけに平坦化層を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物、反射防止膜、マイクロレンズ用反射防止膜、平坦化層、平坦化層の製造方法及び固体撮像素子の実施形態について以下説明する。
【0024】
1.硬化性樹脂組成物
本発明の硬化性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)は、下記の成分(A)〜(F)を含み得る。これらの成分のうち、(A)及び(B)は必須成分であり、(C)〜(F)は適宜含むことのできる任意成分である。
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
(B)重合性不飽和基を有する有機化合物により表面変性された連鎖球状のシリカ粒子
(C)活性エネルギー線の照射又は熱により活性種を発生する化合物
(D)(メタ)アクリレート化合物
(E)有機溶剤
(F)その他の添加剤
これらの成分について以下説明する。
【0025】
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体(A)は、フッ素系オレフィンの重合物である。(A)成分により本発明の組成物は低屈折率、防汚性、耐薬品性、耐水性等の反射防止膜用低屈折率材料としての基本性能を発現する。また、後述する成分(B)の粒子間に存在し、粒子同士の結着力を持たせるのに必要な成分である。
好ましくは、(A)成分は、側鎖水酸基が(メタ)アクリル系化合物で変性されている。さらに好ましくは、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系化合物によって変性されている。このような変性により、重合性基を有する連鎖球状シリカ粒子(後述する成分(B))や(メタ)アクリル化合物(後述する成分(D))と共架橋化することができ、耐擦傷性が向上する。
【0026】
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、水酸基含有含フッ素重合体とを反応させて得られる。
【0027】
(1)1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物
1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物としては、分子内に、1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有している化合物であれば特に制限されるものではない。
尚、イソシアネート基を2個以上含有すると、水酸基含有含フッ素重合体と反応させる際にゲル化を起こす可能性がある。
また、上記エチレン性不飽和基として、後述する硬化性樹脂組成物をより容易に硬化させることができることから、(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
このような化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートの一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0028】
尚、このような化合物は、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて合成することもできる。
ジイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0029】
水酸基含有(メタ)アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
尚、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、大阪有機化学(株)製 商品名 HEA、日本化薬(株)製 商品名 KAYARAD DPHA、PET−30、東亞合成(株)製 商品名 アロニックス M−215、M−233、M−305、M−400等として入手することができる。
【0030】
(2)水酸基含有含フッ素重合体
水酸基含有含フッ素重合体は、好ましくは、下記構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)とを含んでなる。
(a)下記式(1)で表される構造単位。
(b−1)下記式(2−1)で表される構造単位。
(b−2)下記式(2−2)で表される構造単位。
(c)下記式(3)で表される構造単位。
【0031】
【化1】
[式(1)中、R1はフッ素原子、フルオロアルキル基又は−OR2で表される基(R2はアルキル基又はフルオロアルキル基を示す)を示す]
【0032】
【化2】
[式(2−1)中、R3は水素原子又はメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2)n−OR5若しくは−OCOR5で表される基(R5はアルキル基又はグリシジル基を、nは0又は1の数を示す)、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を示す]
【0033】
【化3】
[式中、R3は式(2−1)で定義した通りであり、R24はフロロアルキル基を示し、xは0〜2の数を示す]
【0034】
【化4】
[式(3)中、R6は水素原子又はメチル基を、R7は水素原子又はヒドロキシアルキル基を、vは0又は1の数を示す]
【0035】
(i)構造単位(a)
上記式(1)において、R1及びR2のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基等の炭素数1〜6のフルオロアルキル基が挙げられる。また、R2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0036】
構造単位(a)は、含フッ素ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような含フッ素ビニル単量体としては、少なくとも1個の重合性不飽和二重結合と、少なくとも1個のフッ素原子とを有する化合物であれば特に制限されるものではない。このような例としてはテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン等のフルオロレフィン類;アルキルパーフルオロビニルエーテル又はアルコキシアルキルパーフルオロビニルエーテル類;パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類;パーフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
これらの中でも、ヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)又はパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)がより好ましく、これらを組み合わせて用いることがさらに好ましい。
【0037】
尚、構造単位(a)の含有率は、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、20〜70モル%である。この理由は、含有率が20モル%未満になると、本願が意図するところのフッ素含有材料の光学的特徴である、低屈折率の発現が困難となる場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性、透明性、又は基材への密着性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(a)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、25〜65モル%とするのがより好ましく、30〜60モル%とするのがさらに好ましい。
【0038】
(ii)構造単位(b−1)
式(2−1)において、R4又はR5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0039】
構造単位(b−1)は、上述の置換基を有するビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このようなビニル単量体の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルもしくはシクロアルキルビニルエーテル類;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0040】
尚、構造単位(b−1)の含有率は、構造単位(a)と、(b−1)と、(c)との合計を100モル%としたときに、10〜70モル%である。この理由は、含有率が10モル%未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(b−1)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)と、(c)との合計を100モル%としたときに、20〜60モル%とするのがより好ましく、30〜60モル%とするのがさらに好ましい。
【0041】
(iii)構造単位(b−2)
また、本発明の共重合体において構造単位(b−1)の代わりに(b−2)を用いることができる。構造単位(b−2)は、式(2−2)で示されるビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このようなビニル単量体の具体例としては、以下の構造式を有するものが挙げられる。
【化5】
(式中、R20は水素原子又はメチル基であり、xは0〜2の数を表す。また、上記式中、芳香環の中にFと記した基は、5つの水素の全てがフッ素原子で置換されていることを示す。)
【0042】
尚、構造単位(b−2)の含有率は、構造単位(a)と、(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、10〜70モル%である。この理由は、含有率が30モル%未満になると、水酸基含有含フッ素共重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が60モル%を超えると、水酸基含有含フッ素共重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(b’)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)と、(c)との合計を100モル%としたときに、20〜60モル%とすることがより好ましく、30〜60モル%とすることがさらに好ましい。
【0043】
(iv)構造単位(c)
式(3)において、R7のヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
【0044】
構造単位(c)は、水酸基含有ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような水酸基含有ビニル単量体の例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類、アリルアルコール等が挙げられる。
また、水酸基含有ビニル単量体としては、上記以外にも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0045】
尚、構造単位(c)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、5〜70モル%とすることが好ましい。この理由は、含有率が5モル%未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(c)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、5〜40モル%とするのがより好ましく、5〜30モル%とするのがさらに好ましい。
【0046】
(v)構造単位(d)及び構造単位(e)
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(d)を含んで構成することも好ましい。
【0047】
(d)下記式(4)で表される構造単位。
【化6】
[式(4)中、R8及びR9は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はアリール基を示す]
【0048】
式(4)において、R8又はR9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が、ハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基等の炭素数1〜4のフルオロアルキル基等が、アリール基としてはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等がそれぞれ挙げられる。
【0049】
構造単位(d)は、前記式(4)で表されるポリシロキサンセグメントを有するアゾ基含有ポリシロキサン化合物を用いることにより導入することができる。このようなアゾ基含有ポリシロキサン化合物の例としては、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化7】
[式(5)中、R10〜R13は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はシアノ基を示し、R14〜R17は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示し、p、qは1〜6の数、s、tは0〜6の数、yは1〜200の数、zは1〜20の数を示す。]
【0051】
式(5)で表される化合物を用いた場合には、構造単位(d)は、構造単位(e)の一部として水酸基含有含フッ素重合体に含まれる。
【0052】
(e)下記式(6)で表される構造単位。
【化8】
[式(6)中、R10〜R13、R14〜R17、p、q、s、t及びyは、上記式(5)と同じである。]
【0053】
式(5),(6)において、R10〜R13のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、R14〜R17のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0054】
本発明において、上記式(5)で表されるアゾ基含有ポリシロキサン化合物としては、下記式(7)で表される化合物が特に好ましい。
【0055】
【化9】
[式(7)中、y及びzは、上記式(5)と同じである。]
【0056】
尚、構造単位(d)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜10モル部とすることが好ましい。この理由は、含有率が0.1モル部未満になると、硬化後の塗膜の表面滑り性が低下し、塗膜の耐擦傷性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が10モル部を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性に劣り、コート材として使用する際に、塗布時にハジキ等が発生し易くなる場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(d)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜5モル部とするのがより好ましく、0.1〜3モル部とするのがさらに好ましい。同じ理由により、構造単位(e)の含有率は、その中に含まれる構造単位(d)の含有率を上記範囲にするよう決定することが望ましい。
【0057】
(v)構造単位(f)
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(f)を含んで構成することも好ましい。
【0058】
(f)下記式(8)で表される構造単位。
【化10】
[式(8)中、R18は乳化作用を有する基を示す]
【0059】
式(8)において、R18の乳化作用を有する基としては、疎水性基及び親水性基の双方を有し、かつ、親水性基がポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル構造である基が好ましい。具体的には旭電化工業製アデカリアソープNE−30、ER−30などが挙げられる。
【0060】
尚、構造単位(f)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜5モル部とすることが好ましい。この理由は、含有率が0.1モル部以上になると、水酸基含有含フッ素重合体の溶剤への溶解性が向上し、一方、含有率が5モル部以内であれば、硬化性樹脂組成物の粘着性が過度に増加せず、取り扱いが容易になり、コート材等に用いても耐湿性が低下しないためである。
また、このような理由により、構造単位(f)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜3モル部とするのがより好ましく、0.2〜3モル部とするのがさらに好ましい。
【0061】
(vi)分子量
水酸基含有含フッ素重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、テトラヒドロフランを溶剤として測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であることが好ましい。この理由は、数平均分子量が5,000未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の機械的強度が低下する場合があるためであり、一方、数平均分子量が500,000を超えると、後述する硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄膜コーティングが困難となる場合があるためである。
また、このような理由により、水酸基含有含フッ素重合体のポリスチレン換算数平均分子量を10,000〜300,000とするのがより好ましく、10,000〜100,000とするのがさらに好ましい。
【0062】
(3)反応モル比
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、上述した、1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、水酸基含有含フッ素重合体とを、イソシアネート基/水酸基のモル比が1.1〜1.9の割合で反応させるのが好ましい。この理由は、モル比が1.1未満になると耐擦傷性及び耐久性が低下する場合があるためであり、一方、モル比が1.9を超えると、硬化性樹脂組成物の塗膜のアルカリ水溶液浸漬後の耐擦傷性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、イソシアネート基/水酸基のモル比を、1.1〜1.5とするのが好ましく、1.2〜1.5とするのがより好ましい。
【0063】
(A)成分の添加量は、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常1〜90質量%である。この理由は、添加量が1質量%未満となると、硬化性樹脂組成物の防汚性や滑り性が低下し、反射防止膜としての性能を維持できなくなる、一方、添加量が90質量%を超えると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が得られない場合があるためである。
また、このような理由から、(A)成分の添加量を1〜80質量%とするのがより好ましく、5〜60質量%の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0064】
(B)重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面変性された連鎖球状のシリカ粒子
成分(B)は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物において、低屈折率、耐擦傷性を発現させるために配合する。成分(B)は、塗膜内に空隙を形成し、塗膜の屈折率を大幅に低下させる効果がある。硬度の点では、成分(A)よりも硬く、耐擦傷性を発現させるが、単独では粒子間の結着力が低下し、耐擦傷性が得られない。
成分(B)を構成する連鎖球状のシリカ粒子とは、複数の略球状のシリカ粒子(以下、単に「シリカ粒子」ということがある)が直鎖状又は分岐した形で連結した形状を有するシリカ粒子をいう。連鎖球状のシリカ粒子は、2個以上の、数平均粒径1〜100nmの略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で連結していることが好ましい。ここで、略球状とは、必ずしも真球である必要はなく、不定形であっても、例えば、アスペクト比が1〜10の範囲の粒子であればよいことを意味する。略球状シリカ粒子の数平均粒径は、透過型電子顕微鏡により測定する。
【0065】
連鎖球状のシリカ粒子の具体的な形状としては、例えば、図2及び3に示すような分岐を有する数珠状(パールスライク形状)や、図4に示すような2個のシリカ粒子が連結した形状が挙げられる。また、比較例として、粒子同士が連結していない通常の球状シリカ粒子を図5に示す。
シリカを主成分とする個々の粒子としては、公知のものを使用することができ、また、その形状も、略球状であれば通常のコロイダルシリカに限らず中空粒子、多孔質粒子、コア・シェル型粒子等であっても構わない。しかし、組成物の屈折率を低減させる観点から中空粒子や多孔質粒子が好ましい。また、固形分が5〜40質量%のコロイダルシリカが好ましい。
【0066】
また、分散媒は、水あるいは有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類等を挙げることができ、これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましく、特にケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で、又は2種以上混合して分散媒として使用することができる。
【0067】
本発明で用いることができる連鎖球状のシリカ粒子の市販品としては、例えば、日産化学工業(株)製 商品名:スノーテックス−PS−M、PS−S、PS−SO、UP、OUP、芙蓉化学工業(株)製 商品名:PL−1、PL−2、PL−3、PL−3H等を挙げることができる。
【0068】
また、連鎖球状シリカ表面に化学修飾等の表面処理を行ったものを使用することができ、例えば分子中に1以上のアルキル基を有する加水分解性ケイ素化合物又はその加水分解物を含有するもの等を反応させることができる。このような加水分解性ケイ素化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、1,1,1―トリメトキシ−2,2,2−トリメチル−ジシラン、ヘキサメチル−1,3−ジシロキサン、1,1,1―トリメトキシ−3,3,3−トリメチル−1,3−ジシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−ジメチルメトキシシリル−ポリジメチルシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−トリメトキシシリル−ポリジメチルシロキサンヘキサメチル−1,3−ジシラザン等を挙げることができる。また、分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物を使用することもできる。分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物は、例えば反応性基としてNH2基を有するものとして、尿素プロピルトリメトキシシラン、N―(2−アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン等、OH基を有するものとして、ビス(2−ヒドロキシエチル)―3アミノトリプロピルメトキシシラン等、イソシアネート基を有するものとして3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等、チオシアネート基を有するものとして3−チオシアネートプロピルトリメトキシシラン等、エポキシ基を有するものとして(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等、チオール基を有するものとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0069】
連鎖球状のシリカ粒子(B)は、重合性不飽和基を含む有機化合物(以下、「特定有機化合物」ということがある。)と結合されている。このように構成することにより、ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物(後述する成分(D))と共架橋化することができ、耐擦傷性が向上する。
【0070】
(2)特定有機化合物
本発明に用いられる特定有機化合物は、分子内に重合性不飽和基を含む重合性の化合物である。例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。さらに、特定有機化合物としては、分子内に、さらに下記式(11)に示す基を含む化合物であること及び分子内にシラノ−ル基を有する化合物又は加水分解によってシラノ−ル基を生成する化合物を用いることが出来る。
【0071】
【化11】
[式(11)中、XはNH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、YはO又はSを示す。]
【0072】
(i)重合性不飽和基
特定有機化合物に含まれる重合性不飽和基としては特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエ−ト基、アクリルアミド基を好適例として挙げることができる。
この重合性不飽和基は、活性ラジカル種により付加重合をする構成単位である。
【0073】
(ii)式(11)に示す基
特定有機化合物は、分子内に前記式(11)に示す基をさらに含むものであることが好ましい。前記式(11)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]は、具体的には、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種である。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1とを併用することが好ましい。
前記式(11)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基材との密着性及び耐熱性等の特性を付与せしめるものと考えられる。
【0074】
(iii)シラノ−ル基又は加水分解によってシラノ−ル基を生成する基
特定有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物(以下、「シラノール基含有化合物」ということがある)又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物(以下、「シラノール基生成化合物」ということがある)であることが好ましい。このようなシラノール基生成化合物としては、ケイ素原子上にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等を有する化合物を挙げることができるが、ケイ素原子上にアルコキシ基又はアリールオキシ基を含む化合物、即ち、アルコキシシリル基含有化合物又はアリールオキシシリル基含有化合物が好ましい。
シラノール基又はシラノール基生成化合物のシラノール基生成部位は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、酸化物粒子と結合する構成単位である。
【0075】
(iv)好ましい態様
特定有機化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記式(12)に示す化合物を挙げることができる。
【0076】
【化12】
【0077】
R19、R20は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基であり、aは1、2又は3の数を示す。
R19、R20の例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。
【0078】
[(R19O)aR203-aSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
【0079】
R21は炭素数1〜12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。そのような有機基としては例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。これらのうち好ましい例は、メチレン、プロピレン、シクロヘキシレン、フェニレン等である。
【0080】
また、R22は2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。例えば、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式又は多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;及びこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素及び水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合、さらには前記式(11)に示す基を含むこともできる。
【0081】
R23は(b+1)価の有機基であり、好ましくは鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
【0082】
Zは活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応をする重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基を示す。例えば、アクリロイル(オキシ)基、メタアクリロイル(オキシ)基、ビニル(オキシ)基、プロペニル(オキシ)基、ブタジエニル(オキシ)基、スチリル(オキシ)基、エチニル(オキシ)基、シンナモイル(オキシ)基、マレエート基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基等を挙げることができる。これらの中でアクリロイル(オキシ)基及びメタアクリロイル(オキシ)基が好ましい。また、bは好ましくは1〜20の正の整数であり、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
【0083】
本発明で用いられるこれらの特定有機化合物の合成は、例えば、特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。即ち、(イ)メルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。また、(ロ)分子中にアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物と、活性水素含有重合性不飽和化合物との直接的反応により行うことができる。さらに、(ハ)分子中に重合性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物と、メルカプトアルコキシシラン又はアミノシランとの付加反応により直接合成することもできる。
【0084】
前記式(12)に示す化合物を合成するためには、これらの方法のうち(イ)が好適に用いられる。より詳細には、例えば、
(a)法;まずメルカプトアルコキシシランとポリイソシアネート化合物とを反応させることで、分子中にアルコキシシリル基、[−S−C(=O)−NH−]基及びイソシアネート基を含む中間体を形成し、次に中間体中に残存するイソシアネートに対して活性水素含有重合性不飽和化合物を反応させて、この不飽和化合物を[−O−C(=O)−NH−]基を介して結合させる方法、
(b)法;まずポリイソシアネート化合物と活性水素含有重合性不飽和化合物とを反応させることで分子中に重合性不飽和基、[−O−C(=O)−NH−]基、及びイソシアネート基を含む中間体を形成し、これにメルカプトアルコキシシランを反応させてこのメルカプトアルコキシシランを[−S−C(=O)−NH−]基を介して結合させる方法、
等を挙げることができる。さらに両者の中では、マイケル付加反応による重合性不飽和基の減少がない点で(a)法が好ましい。
【0085】
前記式(12)に示す化合物の合成において、イソシアネ−ト基との反応により[−S−C(=O)−NH−]基を形成することができるアルコキシシランの例としては、アルコキシシリル基とメルカプト基を分子中にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。このようなメルカプトアルコキシシランとしては、例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、メルカプトプロピルトリフェノキシシシラン、メルカプトプロピルトリブトキシシシラン等を挙げることができる。これらの中では、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。また、アミノ置換アルコキシシランとエポキシ基置換メルカプタンとの付加生成物、エポキシシランとα,ω−ジメルカプト化合物との付加生成物を利用することもできる。
【0086】
特定有機化合物を合成する際に用いられるポリイソシアネート化合物としては鎖状飽和炭化水素、環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素で構成されるポリイソシアネート化合物の中から選ぶことができる。
【0087】
このようなポリイソシアネート化合物の例としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等を挙げることができる。これらの中で、2,4−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、等が好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0088】
特定有機化合物の合成において、前記ポリイソシアネート化合物と付加反応により[−O−C(=O)−NH−]基を介し結合できる活性水素含有重合性不飽和化合物の例としては、分子内にイソシアネ−ト基との付加反応により[−O−C(=O)−NH−]基を形成できる活性水素原子を1個以上有しかつ重合性不飽和基を1個以上含む化合物を挙げることができる。
【0089】
これらの活性水素含有重合性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオ−ルモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ−ルモノ(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を用いることができる。これらの化合物の中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が好ましい。
これらの化合物は1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0090】
(3)特定有機化合物による連鎖球状シリカ粒子(以下、単に「粒子」ともいう。)の表面処理方法
特定有機化合物による粒子の表面処理方法としては特に制限はないが、特定有機化合物と粒子とを混合し、加熱、攪拌処理することにより製造することも可能である。尚、特定有機化合物が有するシラノール基生成部位と、粒子とを効率よく結合させるため、反応は水の存在下で行われることが好ましい。ただし、特定有機化合物がシラノール基を有している場合は水はなくてもよい。従って、粒子及び特定有機化合物を少なくとも混合する操作を含む方法により表面処理できる。
【0091】
粒子と特定有機化合物の反応量は、粒子及び特定有機化合物の合計を100質量%として、好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。0.01質量%未満であると、組成物中における粒子の分散性が十分でなく、得られる硬化物の透明性、耐擦傷性が十分でなくなる場合がある。
また、これら特定有機化合物は単独若しくは2種類以上を併用することができる。
【0092】
以下、特定有機化合物として、前記式(12)に示すアルコキシシリル基含有化合物(アルコキシシラン化合物)を例にとり、表面処理方法をさらに詳細に説明する。
表面処理時においてアルコキシシラン化合物の加水分解で消費される水の量は、1分子中のケイ素上のアルコキシ基の少なくとも1個が加水分解される量であればよい。好ましくは加水分解の際に添加、又は存在する水の量は、ケイ素上の全アルコキシ基のモル数に対し3分の1以上であり、さらに好ましくは全アルコキシ基のモル数の2分の1以上3倍未満である。完全に水分の存在しない条件下でアルコキシシラン化合物と粒子とを混合して得られる生成物は、粒子表面にアルコキシシラン化合物が物理吸着した生成物であり、そのような成分から構成される粒子を含有する組成物の硬化物においては、高硬度及び耐擦傷性の発現の効果は低い。
【0093】
表面処理時においては、前記アルコキシシラン化合物を別途加水分解操作に付した後、これと粉体粒子又は粒子の溶剤分散ゾルを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法;前記アルコキシシラン化合物の加水分解を粒子の存在下で行う方法;又は、他の成分、例えば、重合開始剤等の存在下、粒子の表面処理を行う方法等を選ぶことができる。この中では、前記アルコキシシラン化合物の加水分解を粒子の存在下で行う方法が好ましい。表面処理時、その温度は、好ましくは0℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上100℃以下である。また、処理時間は通常5分から24時間の範囲である。
【0094】
表面処理時において、粉体状のシリカ粒子を用いる場合、前記アルコキシシラン化合物との反応を円滑にかつ均一に行わせることを目的として、有機溶剤を添加してもよい。そのような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、Y−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
これらの溶剤の添加量は反応を円滑、均一に行わせる目的に合う限り特に制限はない。
【0095】
粒子として溶剤分散ゾルを用いる場合、溶剤分散ゾルと、特定有機化合物とを少なくとも混合することにより製造することができる。ここで、反応初期の均一性を確保し、反応を円滑に進行させる目的で、水と均一に相溶する有機溶剤を添加してもよい。
【0096】
また、表面処理時において、反応を促進するため、触媒として酸、塩又は塩基を添加してもよい。
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;メタンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、フタル酸、マロン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸等の不飽和有機酸を、塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩酸塩、テトラブチルアンモニウム塩酸塩等のアンモニウム塩を、また、塩基としては、例えば、アンモニア水、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級、2級又は3級脂肪族アミン、ピリジン等の芳香族アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類等を挙げることができる。
これらの中で好ましい例は、酸としては、有機酸、不飽和有機酸、塩基としては3級アミン又は4級アンモニウムヒドロキシドである。これらの酸、塩又は塩基の添加量は、アルコキシシラン化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部から1.0質量部、さらに好ましくは0.01質量部から0.1質量部である。
【0097】
また、反応を促進するため、脱水剤を添加することも好ましい。
脱水剤としては、ゼオライト、無水シリカ、無水アルミナ等の無機化合物や、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、テトラエトキシメタン、テトラブトキシメタン等の有機化合物を用いることができる。中でも、有機化合物が好ましく、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル等のオルトエステル類がさらに好ましい。
尚、粒子に結合したアルコキシシラン化合物の量は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の質量減少%の恒量値として、空気中で110℃から800℃までの熱質量分析により求めることができる。
【0098】
(B)成分の硬化性樹脂組成物中における配合量は、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常1〜99質量%であり、20〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がさらに好ましい。尚、粒子の量は、固形分を意味し、成分(B)の粒子が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その配合量には溶剤の量を含まない。(B)成分の配合量が1質量%未満であると、得られる硬化物の屈折率や耐擦傷性が不十分となることがあり、99質量%を超えると、粒子間の結着力が不十分となり耐擦傷性が低下する恐れがある。
【0099】
(C)活性エネルギー線の照射又は熱により活性種を発生する化合物
活性エネルギー線の照射又は熱により活性種を発生する化合物は、硬化性樹脂組成物を硬化させるために用いられる。
【0100】
(1)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物
活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物(以下「光重合開始剤」という。)としては、活性種として、ラジカルを発生する光ラジカル発生剤等が挙げられる。
尚、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型である点で、紫外線を使用することが好ましい。
【0101】
(i)種類
光ラジカル発生剤の例としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、又はBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン、その他の色素増感剤との組み合わせ等を挙げることができる。
【0102】
これらの光重合開始剤のうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等が好ましく、さらに好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等を挙げることができる。
【0103】
(ii)添加量
光重合開始剤の添加量は特に制限されるものではないが、硬化性樹脂組成物の固形分(有機溶剤以外の成分(A)と成分(B)の合計)100質量部に対して0.1〜20質量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が0.1質量部未満となると、硬化反応が不十分となり耐擦傷性が低下する場合があるためである。一方、光重合開始剤の添加量が20質量部を超えると、硬化物の屈折率が増加し反射防止効果が低下したり、耐擦傷性が不十分となる場合があるためである。
また、このような理由から、光重合開始剤の添加量を1〜10質量部とすることがより好ましい。
【0104】
(2)熱により活性種を発生する化合物
熱により活性種を発生する化合物(以下「熱重合開始剤」という。)としては、活性種として、ラジカルを発生する熱ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0105】
(i)種類
熱ラジカル発生剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アセチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルパーアセテート、クミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0106】
(ii)添加量
熱重合開始剤の添加量についても特に制限されるものではないが、硬化性樹脂組成物の固形分(有機溶剤以外の成分(A)と成分(B)の合計)100質量部に対して0.1〜20質量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が0.1質量部未満となると、硬化反応が不十分となり耐擦傷性、アルカリ水溶液浸漬後の耐擦傷性が低下する場合があるためである。一方、光重合開始剤の添加量が20質量部を超えると、硬化物の屈折率が増加し反射防止効果が低下する場合があるためである。
また、このような理由から、熱重合開始剤の添加量を1〜10質量部とするのがより好ましい。
【0107】
(D)(メタ)アクリレート化合物
(メタ)アクリレート化合物は、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物及びそれを用いた反射防止膜の耐擦傷性を高めるために用いられる。
【0108】
この化合物については、分子内に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であれば特に制限されるものではない。
(メタ)アクリロイル基を1個有するモノマーとしては、例えばアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレートで表される化合物を例示することができる。これらの単官能性モノマーうち、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0109】
これらの単官能性モノマーの市販品としては、例えばアロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD TC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬(株))、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0110】
また、(メタ)アクリロイル基が2個以上のモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートや、下記式(13)で表される化合物等を例示することができる。
【化13】
[式(13)中、「Acryl」は、アクリロイル基を示す。]
【0111】
これらの多官能性モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0112】
尚、本発明の組成物には、これらのうち、分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有することが好ましい。さらに好ましくは、分子内に少なくとも3個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物が特に好ましい。かかる3個以上の化合物としては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができ、これらのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが特に好ましい。上記の化合物は、各々1種単独で又は2種以上組み合わせを用いることができる。
【0113】
また、(メタ)アクリレート化合物はフッ素を含んでいてもよい。このような化合物の例として、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0114】
(D)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、硬化性樹脂組成物の固形分(有機溶剤以外の成分(A)と成分(B)の合計)100質量部に対して通常1〜30質量部である。この理由は、添加量が1質量部未満となると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が得られない場合があるためであり、一方、添加量が30質量部を超えると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の屈折率が高くなり、十分な反射防止効果が得られない場合があるためである。
また、このような理由から、(D)成分の添加量を1〜20質量部とするのがより好ましく、1〜15質量部の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0115】
(E)有機溶剤
硬化性樹脂組成物は、さらに有機溶剤で希釈することが好ましい。有機溶剤によって希釈することにより、薄膜の反射防止膜を均一に形成することができる。このような有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、メチルアミルケトン等のエステル類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、t−ブタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0116】
有機溶剤による希釈量についても特に制限されるものではないが、全固形分100質量部に対し、100〜100,000質量部の有機溶剤を添加するのが好ましい。この理由は、添加量が100質量部未満又は100,000質量部以上となると、反射防止膜に適した光学薄膜を得ることが出来ない。
【0117】
(F)添加剤
硬化性樹脂組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、(B)成分以外の無機充填剤若しくは顔料、染料等の添加剤をさらに含有させることも好ましい。
【0118】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法を説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体、上記(B)成分、及び必要に応じて上記(C)成分及び(D)成分、(E)有機溶剤、及び(F)添加剤をそれぞれ添加して、室温又は加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて、調製することができる。ただし、加熱条件下で混合する場合には、熱重合開始剤の分解開始温度以下で行うことが好ましい。
【0119】
2.硬化物
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる。
硬化性樹脂組成物の硬化条件については特に制限されるものではないが、例えば活性エネルギー線を用いた場合、露光量を0.01〜10J/cm2の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、露光量が0.01J/cm2未満となると、硬化不良が生じる場合があるためであり、一方、露光量が10J/cm2を超えると、硬化時間が過度に長くなる場合があるためである。
また、このような理由により、露光量を0.05〜5J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましく、0.1〜3J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましい。
さらに酸素による重合阻害を防ぐために硬化雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることが望ましい。不活性ガスとは、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。これらの不活性ガスの雰囲気としては、残存酸素濃度が5000ppm以下となることが好ましく、さらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。残存酸素濃度が5000ppmを超えると硬化不良が生じることがある。
【0120】
また、硬化性樹脂組成物を、加熱して硬化させる場合には、30〜200℃の範囲内の温度で、1〜180分間加熱するのが好ましい。このように加熱することにより、基材等を損傷することなく、より効率的に耐擦傷性に優れた反射防止膜を得ることができる。
また、このような理由から、50〜180℃の範囲内の温度で、2〜120分間加熱するのがより好ましく、80〜150℃の範囲内の温度で、5〜60分間加熱するのがさらに好ましい。
本発明の硬化物は、屈折率が非常に低く、かつ耐擦傷性に優れている。
【0121】
3.反射防止膜
本発明の反射防止膜は、上記硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物からなる低屈折率層を含む。さらに、本発明の反射防止膜は、低屈折率層の下に、高屈折率層、ハードコート層及び/又は基材等を含むことができる。
図1に、かかる反射防止膜10を示す。図1に示すように、基材12の上に、ハードコート層14、低屈折率層18が積層されている。
また、ハードコート層14と低屈折率層18の間にハードコート層よりも屈折率の高い高屈折率層や低屈折率層と高屈折率層の中間の屈折率を有する中屈折率層(図示せず。)を設けてもよい。
【0122】
(1)低屈折率層
低屈折率層は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物から構成される。硬化性樹脂組成物の構成等については、上述の通りであるため、ここでの具体的な説明は省略するものとし、以下、低屈折率層の屈折率及び厚さについて説明する。
【0123】
本発明の硬化性樹脂組成物は、連鎖球状のシリカ粒子を用いているため、粒子間に空隙が生じやすく、通常の球状シリカ粒子を用いた場合に比べて膜内に形成される空隙により屈折率が非常に低い硬化膜を形成することができる。
硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)、即ち、低屈折率膜の屈折率は1.43以下とすることが好ましい。この理由は、低屈折率膜の屈折率が1.43を超えると、反射防止効果が不十分になる場合があるためである。
従って、低屈折率膜の屈折率を1.40以下とするのがより好ましく、1.37以下とするのがさらに好ましい。
尚、低屈折率膜を複数層設ける場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率の値を有していればよく、従って、その他の低屈折率膜は1.46を超えた値であってもよい。
【0124】
また、低屈折率層を設ける場合、より優れた反射防止効果が得られることから、下地のハードコート層との間の屈折率差を0.05以上の値とするのが好ましい。この理由は、低屈折率層とハードコート層との間の屈折率差が0.05未満の値となると、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、低屈折率層と、下地のハードコート層との間の屈折率差を0.05〜0.7範囲内の値とするのがより好ましく、0.15〜0.5の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0125】
低屈折率層の厚さについても特に制限されるものではないが、例えば、50〜300nmであることが好ましい。この理由は、低屈折率層の厚さが50nm未満又は300nmを超えると、光干渉が生じて反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、低屈折率層の厚さを50〜250nmとするのがより好ましく、60〜150nmとするのがさらに好ましい。
尚、より高い反射防止性を得るために、低屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜300nmとすればよい。
【0126】
(2)高屈折率層
高屈折率層を形成するための硬化性組成物としては、特に制限されるものでないが、被膜形成成分として、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを含むことが好ましい。これらの樹脂であれば、高屈折率層として、強固な薄膜を形成することができ、結果として、反射防止膜の耐擦傷性を著しく向上させることができるためである。
しかしながら、通常、これらの樹脂単独での屈折率は1.45〜1.62であり、高い反射防止性能を得るには十分でない場合がある。そのため、高屈折率の無機粒子、例えば金属酸化物粒子を配合することがより好ましい。また、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化できる硬化性組成物を用いることができるが、より好適には生産性の良好な紫外線硬化性組成物が用いられる。
【0127】
高屈折率層の厚さは特に制限されるものではないが、例えば、50〜30,000nmであることが好ましい。この理由は、高屈折率層の厚さが50nm未満となると、低屈折率層と組み合わせた場合に、反射防止効果や基材に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが30,000nmを超えると、光干渉が生じて逆に反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、高屈折率層の厚さを50〜1,000nmとするのがより好ましく、60〜500nmとするのがさらに好ましい。
また、より高い反射防止性を得るために、高屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜30,000nmとすればよい。
尚、高屈折率層と基材との間にハードコート層を設ける場合には、高屈折率層の厚さを50〜300nmとすることができる。
【0128】
(3)ハードコート層
本発明の反射防止膜に用いるハードコート層の構成材料については特に制限されるものでない。このような材料としては、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0129】
また、ハードコート層の厚さについても特に制限されるものではないが、1〜50μmとするのが好ましく、5〜10μmとするのがより好ましい。この理由は、ハードコート層の厚さが1μm未満となると、反射防止膜の基材に対する密着力を向上させることができない場合があるためであり、一方、厚さが50μmを超えると、均一に形成するのが困難となる場合があるためである。
【0130】
(4)基材
本発明の反射防止膜に用いる基材の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)等からなる基材を挙げることができる。これらの基材を含む反射防止膜とすることにより、パソコン用モニターやテレビ、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオの画面表示部などに用いられる液晶表示装置やプラズマディスプレイ等の広範な反射防止膜の利用分野において、優れた反射防止効果を得ることができる。
【0131】
4.マイクロレンズ用反射防止膜
本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、図6に示すようにマイクロレンズ24表面に、本発明の組成物から得られた硬化膜である低屈折率膜22を有する反射防止膜20である。
尚、本発明において、マイクロレンズとは、マイクロレンズアレイ(マイクロレンズを複数形成した基板)を含む意味で使用している。
【0132】
低屈折率膜における屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)は、低い程、高屈折率膜と組み合わせた場合に優れた反射防止効果が得られる。低屈折率膜の屈折率は、高屈折率膜の屈折率よりも小さく、具体的には、1.45未満とするのが好ましい。屈折率が1.45を超えると、高屈折率膜と組み合わせた場合に、反射防止効果が著しく低下する場合がある。低屈折率膜の屈折率は、より好ましくは1.43以下であり、さらに好ましくは1.40以下である。
また、低屈折率膜を複数設ける場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率の値を有していればよい。従って、その他の低屈折率膜は1.45を超える場合があってもよい。
【0133】
また、低屈折率膜の厚さについても特に制限されないが、例えば、50〜300nmが好ましい。低屈折率膜の厚さが50nm未満となると、下地としての高屈折率膜に対する密着性が低下する場合がある。一方、厚さが300nmを超えると、光干渉が生じて、反射防止効果が低下する場合がある。低屈折率膜の厚さは、50〜250nmがより好ましく、60〜200nmがさらに好ましい。
尚、より高い反射防止性を得るために、低屈折率膜を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計の厚さを50〜300nmとすればよい。
【0134】
本発明の反射防止膜が形成されるマイクロレンズとしては、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等オンチップカラーフィルターの結像光学系あるいは光ファイバーコネクタの光学系等に、一般的に使用されているものであれば、問題なく使用できる。マイクロレンズの製造法としては、例えば、イオン交換法による分布屈折率型平板マイクロレンズを作る方法、感光性ガラスによる凸型マイクロレンズを作る方法、半導体集積回路用ポジ型フォトレジスト等を用いてメルトフロー法による作製法やメルトフローさせた感光性樹脂をマスクにしてドライエッチングにより下地にレンズ形状を転写させる方法等がある。
【0135】
本発明におけるマイクロレンズを形成する方法について述べる。マイクロレンズ作製用のアルカリ可溶性樹脂を含む放射線性樹脂組成物は、下地基板表面に塗布し、プレベークにより溶媒を除去することによって塗膜とすることができる。塗布方法として、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の各種の方法を採用することができる。また、プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常70〜90℃で1〜15分間程度の条件が最適である。次にプレベークされた塗膜に所定パターンマスクを介して紫外線等の放射線を照射し、さらにアルカリ現像液により現像し、不要な部分を除去して所定パターンを形成する。現像方法は液盛り法、ディッピング法、シャワー法等のいずれでもよく、現像時間は通常30〜180秒間である。
【0136】
上記現像液としては、アルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の1級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の2級アミン類;トリメチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類;ピロール、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状3級アミン類;ピリジン、コリジン、ルチジン、キノリン等の芳香族3級アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩の水溶液を使用することができる。また上記アルカリ水溶液に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒及び/又は界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0137】
現像後、流水洗浄を30〜90秒間行い、不要な部分を除去し、さらに圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、パターンが形成される。形成されたパターンに紫外線等の放射線を照射し、その後このパターンを、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、所定温度、例えば150〜250℃で、所定時間、例えばホットプレート上なら5〜30分間、オーブン中では30〜90分間加熱処理をすることにより、目的とするマイクロレンズであるパターン状塗膜を得ることができる。
【0138】
高屈折率材料や低屈折率材料から、それぞれ高屈折率膜や低屈折率膜を形成する場合、マイクロレンズに対してコーティングすることが好ましい。このようなコーティング方法としては、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法又はインクジェット法等の方法を用いることができる。このなかで、スピンコート法やディッピング法が均一な硬化膜が得られやすい点で優れている。
【0139】
また、高屈折率材料や低屈折率材料を硬化する手段も特に制限されないが、例えば、加熱することが好ましい。その場合、30〜200℃で、1〜180分間加熱するのが好ましい。このように加熱することにより、マイクロレンズや形成される反射防止膜を損傷することなく、より効率的に反射防止性に優れた反射防止用積層体を得ることができる。好ましくは、50〜180℃で、2〜120分間、より好ましくは、80〜150℃で、5〜60分間加熱する。
尚、高屈折率材料や低屈折率材料の硬化程度は、例えば、硬化性化合物としてメラミン化合物を用いた場合は、メラミン化合物のメチロール基又はアルコキシ化メチル基の量を赤外分光分析したり、又は、ゲル化率を、ソックスレー抽出器を用いて測定することにより、定量的に確認することができる。
【0140】
本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、図6に示す低屈折率膜の他に、各種機能層を含んでいてもよい。例えば、図7に示すように、マイクロレンズ24と高屈折率膜21との間にハードコート層23を介在させてもよい。即ち、マイクロレンズ24上に、ハードコート層23と、高屈折率膜21と、低屈折率膜22とを順次に含む反射防止膜20としてもよい。この場合高屈折率層21を設けることで反射率をさらに低減することができる。また、ハードコート層23を介在させることにより、高屈折率膜21のマイクロレンズ24に対する密着性をより向上させることができる。また、ハードコート層23の機械的特性により、反射防止膜20の耐久性をより向上させることができる。さらに、図12に示すようにハードコート層を設けず、低屈折率層22と高屈折率膜21とで反射防止膜を形成することもできる。この場合、高屈折率膜21がハードコート層の機能を担保しているため、反射防止膜20の構成がシンプルとなり、生産プロセスの簡略化と低コスト化が可能になる。
【0141】
以下、本例の特徴である高屈折率層とハードコート層について説明する。
また、高屈折率膜を設ける場合、より優れた反射防止効果が得られることから、高屈折率膜と低屈折率膜との間の屈折率差を0.05以上とするのが好ましい。屈折率差が0.05未満となると、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合がある。屈折率差は、0.1〜0.8がより好ましく、0.15〜0.7がさらに好ましい。
【0142】
次に、高屈折率膜及び低屈折率膜の厚さについて説明する。まず、高屈折率膜の厚さは特に制限されないが、例えば、50〜30,000nmが好ましい。高屈折率膜の厚さが50nm未満となると、低屈折率膜と組み合わせた場合に、反射防止効果やマイクロレンズに対する密着性が低下する場合がある。一方、厚さが30,000nmを超えると、光干渉が生じて、逆に反射防止効果が低下する場合がある。高屈折率膜の厚さは、50〜1,000nmがより好ましく、60〜500nmがさらに好ましい。
また、より高い反射防止性を得るために、高屈折率膜を複数層設けて多層構造とすることもでき、この場合には、複数の高屈折率膜の合計の厚さを50〜30,000nmとすればよい。
尚、高屈折率膜とマイクロレンズとの間にハードコート層を設ける場合には、高屈折率膜の厚さを50〜300nmとすることができる。
【0143】
ハードコート層は、例えば、SiO2、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂等の材料から構成するのが好ましい。
ハードコート層の厚さは特に制限されないが、具体的には、1〜50μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。厚さが1μm未満となると、反射防止膜のマイクロレンズに対する密着性を向上させることができない場合がある。一方、厚さが50μmを超えると、ハードコート層を、均一に形成するのが困難となる場合がある。
【0144】
5.平坦化膜
本発明の平坦化層は、前記本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させてなり、屈折率1.3〜1.5を有することが好ましい。屈折率が前記範囲であれば、フレアが有効に防止され、集光率が向上する。
【0145】
図8に示すように、一般に、固体撮像素子30は、CCD基板32上に設けられたフォトダイオード33、ハレーション防止層34、カラーレジスト層35、平坦化層36及びマイクロレンズ37を有している。
【0146】
ここで、本発明でいう、「平坦化層」とは、図8に示すようなマイクロレンズ37とカラーレジスト層35の間に設けられるもの(36a;カラーフィルタ平坦化層ともいう。)のみでなく、図9(a)に示すようなマイクロレンズ37を覆う形態のもの(36b;マイクロレンズ間の受光部平坦化層ともいう)、図9(b)に示すようなハレーション防止層34とカラーレジスト層35との間に設けられるもの(36c;受光部平坦化層ともいう)をも含む概念である。
【0147】
さらに、本発明の組成物によれば、放射線硬化性であることを利用して、マイクロレンズ間の受光部平坦化層(36b)の変形として、パターニング露光等の手段により、図10(a)及び(b)に示すような、マイクロレンズ37の周囲のみに平坦化層(36b−2)を設けることもできる。
【0148】
本発明の平坦化層、特に、上記本発明の組成物で、図9(a)に示すようにマイクロレンズ37上に低屈折率の平坦化層36bを設けることにより、固体撮像素子等のマイクロレンズで問題となるフレアを効果的に防止することができる。そして、本発明の組成物は放射線硬化性であるため、マスク露光等の手段により、図10に示すような個々のマイクロレンズの周囲のみに位置選択的に平坦化膜を形成することもできる。
【0149】
6.平坦化膜の製造方法
本発明の平坦化層は、上記本発明の組成物をコーティングした後、これを硬化させて形成される。このようなコーティング方法としては、ディッピング法、スプレー法、ダイコート法、スリットコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、又はインクジェット法等の方法を用いることができるが、スピンコート法が均一な硬化膜が得られ易い点で優れている。
【0150】
本発明の平坦化層は、上記本発明の組成物をスピンコート法により塗布して該組成物の塗布膜を形成した後に、放射線を照射して該塗布膜を硬化せしめることによって製造することができる。放射線を照射する際に、所定のパターンマスクを介して放射線を照射して該塗布膜の放射線が当たった部分のみを硬化せしめた後、現像液によって、放射線が当たらなかった部分の塗布膜を溶解して除去することによって、例えば、図10に示すような所望のパターンを有する平坦化層を形成することができる。
【0151】
現像液としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類を挙げることができる。
現像処理の条件は、シャワー現像方法、ディップ現像方法、ステップパドル現像方法、振動現像方法等の処理方法を用いることが好ましい。
【0152】
上記本発明の組成物は塗布均一性が良いため、ハジキ、塗布ムラ等が無く、特にスピンコート法による塗布性に優れている。
【0153】
7.固体撮像素子
本発明の固体撮像素子は、基材層、前記本発明の平坦化層及びマイクロレンズを含む。
前述したように、本発明の平坦化層は、(1)マイクロレンズとカラーレジスト層の間に設けられるもの(カラーフィルタ平坦化層)のみでなく、(2)マイクロレンズを覆う形態のもの(マイクロレンズ間の受光部平坦化層;図9(a)及び図10の形態のものを含む)、(3)ハレーション防止層とカラーレジスト層との間に設けられるもの(受光部平坦化層)の全てを含む。
【0154】
上記(1)の位置に平坦化層を設けることは従来から知られており、この位置に平坦化層を設けることにより、集光率の向上という効果が得られる。
上記(2)の位置に平坦化層を設けることにより、フレアを防止することができる。
上記(3)の位置に平坦化層を設けることにより、集光率の向上という効果が得られる。
上記(2)の位置に平坦化層を設けるに当たり、図8に示すようなパターン化された平坦化膜とすることにより、マイクロレンズ間に平坦化層が設けられていない部分ができ、この部分に配線取り出し場所を設けることができる。
【0155】
本発明の固体撮像素子を構成するマイクロレンズとしては、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等オンチップカラーフィルターの結像光学系あるいは光ファイバーコネクタの光学系等に、一般的に使用されているものであれば、問題なく使用できる。マイクロレンズの製造法としては、例えば、イオン交換法による分布屈折率型平板マイクロレンズを作る方法、感光性ガラスによる凸型マイクロレンズを作る方法、半導体集積回路用ポジ型フォトレジスト等を用いてメルトフロー法による作製法やメルトフローさせた感光性樹脂をマスクにしてドライエッチングにより下地にレンズ形状を転写させる方法等がある。
【0156】
本発明の固体撮像素子におけるマイクロレンズを形成する方法については、上述した通りであるためここでは省略する。本発明の固体撮像素子は、上記本発明の平坦化層の製造方法に従って製造することができる。
【実施例】
【0157】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0158】
(製造例1)
水酸基含有含フッ素重合体1の合成
内容積2.0リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル400g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)53.2g、エチルビニルエーテル36.1g、ヒドロキシエチルビニルエーテル44.0g、過酸化ラウロイル1.00g、上記式(7)で表されるアゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001(商品名)、和光純薬工業(株)製)6.0g及びノニオン性反応性乳化剤(NE−30(商品名)、旭電化工業(株)製)20.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
【0159】
次いでヘキサフルオロプロピレン120.0gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×105Paを示した。その後、70℃で20時間攪拌下に反応を継続し、圧力が1.7×105Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い220gの水酸基含有含フッ素重合体1を得た。これを水酸基含有含フッ素重合体とする。使用した単量体と溶剤を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
得られた水酸基含有含フッ素重合体に付き、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量及びアリザリンコンプレクソン法によるフッ素含量をそれぞれ測定した。また、1H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果、元素分析結果及びフッ素含量から、水酸基含有含フッ素重合体を構成する各単量体成分の割合を決定した。結果を表2に示す。但し、(a)と、(b−1)と、(c)との合計を100モル部とした。
【0162】
【表2】
【0163】
尚、VPS1001は、数平均分子量が7〜9万、ポリシロキサン部分の分子量が約10,000の、上記式(7)で表されるアゾ基含有ポリジメチルシロキサンである。NE−30は、下記式(10)において、nが9、mが1、uが30であるノニオン性反応性乳化剤である。
【化14】
【0164】
さらに、表2において、単量体と構造単位との対応関係は以下の通りである。
単量体 構造単位
ヘキサフルオロプロピレン (a)
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル) (a)
エチルビニルエーテル (b−1)
ヒドロキシエチルビニルエーテル (c)
NE−30 (f)
ポリジメチルシロキサン骨格 (d)
【0165】
(製造例2)
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体A−1(メタアクリル変性フッ素重合体)((A)成分)の合成
電磁攪拌機、ガラス製冷却管及び温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた水酸基含有含フッ素重合体1を50.0g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.01g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)370gを仕込み、20℃で水酸基含有含フッ素重合体1がMIBKに溶解して、溶液が透明、均一になるまで攪拌を行った。
次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを15.1gを添加し、溶液が均一になるまで攪拌した後、ジブチルチンジラウレート0.1gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間攪拌を継続することにより、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体A−1のMIBK溶液を得た。
この溶液をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、15.2質量%であった。使用した化合物、溶剤及び固形分含量を表3に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
(製造例3)
特定有機化合物(Ba)の合成1
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン221部、ジブチル錫ジラウレート1部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート222部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)549部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで、下記式(14)及び式(15)で示される化合物(Ba)を含む組成物(Ba−1)993部(反応に関与しなかったペンタエリスリトールテトラアクリレート220部を含む)を得た。
【化15】
[式中、「Acryl」は、アクリロイル基を示し、「Me」はメチル基を示す。]
【0168】
(製造例4)
特定有機化合物(Ba)の合成2
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン23.0部、ジブチル錫ジラウレート0.5部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート60.0部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)202部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで、上記式(14)及び式(15)で示される化合物(Ba)を含む組成物(Ba−2)285部を得た。
【0169】
(製造例5)
アクリル変性球状シリカ粒子X−1の調製
製造例3で合成した特定有機化合物(Ba−1)1.59部、メチルエチルケトンシリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST(数平均粒子径0.022μm、シリカ濃度30%))91.3部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液X−1を得た。X−1をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、35質量%であった。
このシリカ系粒子の平均粒子径は、20nmであった。ここで、平均粒子径は透過型電子顕微鏡により測定した(図5)。
【0170】
(製造例6)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−1((B)成分)の調製
パール状シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:PS−SO(シリカ濃度16%))80部と10%アンモニア水2部、エタノール200部を室温で混合し、攪拌しながらγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名:SZ6030)0.5部を加えた。その後、70℃で3時間反応させた。反応混合物を室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン200部を加え、エバポレーターを用いて固形分濃度30質量%になるまで濃縮した。ここで得られたメチルイソブチルケトン数珠状シリカゾル91.3部(固形分27.4部)と製造例3で合成した特定有機化合物(Ba−1)1.59部、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−1を得た。B−1をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、35質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が20〜50nm球状シリカ粒子が連結し、50〜150nm程度の長さを有していることが確認された(図2)。
【0171】
(製造例7)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−2((B)成分)の調製
製造例3で合成した特定有機化合物(Ba−1)1.59部、数珠状シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST−UP(シリカ濃度22%))125部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−2を得た。B−2をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、25質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が10〜20nm球状シリカ粒子が連結し、50〜150nm程度の長さを有していることが確認された(図3)。
【0172】
(製造例8)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−3((B)成分)の調製
製造例3で合成した特定有機化合物(Ba−1)1.59部、メチルエチルケトン分散シリカゾル(芙蓉化学工業(株)製、商品名:PL−1(シリカ濃度14%))196部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−3を得た。B−3をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、20質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が10〜20nm球状シリカ粒子が連結し、20〜50nm程度の長さを有していることが確認された(図4)。
【0173】
(製造例9)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−4((B)成分)の調製
パール状シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:PS−SO(シリカ濃度16%))80部と10%アンモニア水2部、エタノール200部を室温で混合し、攪拌しながらγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名:SZ6030)1.5部を加えた。その後、70℃で3時間反応させた。反応混合物を室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン200部を加え、エバポレーターを用いて固形分濃度35質量%になるまで濃縮することで無色透明の粒子分散液B−4を得た。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が20〜50nm球状シリカ粒子が連結し、50〜150nm程度の長さを有していることが確認された。
【0174】
(製造例10)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−5((B)成分)の調製
製造例4で合成した特定有機化合物(Ba−2)8.7部、数珠状シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST−UP(シリカ濃度22%))125部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−5を得た。B−5をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、25質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が10〜20nm球状シリカ粒子が連結し、50〜150nm程度の長さを有していることが確認された。
【0175】
(製造例11)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−6((B)成分)の調製
製造例4で合成した特定有機化合物(Ba−2)8.7部、メチルエチルケトン分散シリカゾル(芙蓉化学工業(株)製、商品名:PL−1(シリカ濃度14%)196部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−6を得た。B−6をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、20質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が10〜20nm球状シリカ粒子が連結し、20〜50nm程度の長さを有していることが確認された。
【0176】
(製造例12)
前記式(13)で表される多官能アクリレート(D−1)の合成
攪拌機付きの容器内のイソホロンジイソシアネート18.8部と、ジブチル錫ジラウレート0.2部とからなる溶液に対し、新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)93部を、10℃、1時間の条件で滴下した後、60℃、6時間の条件で攪拌し、反応液とした。
この反応液中の生成物、即ち、製造例3と同様にして残存イソシアネート量をFT−IRで測定したところ、0.1質量%以下であり、反応がほぼ定量的に行われたことを確認した。また、分子内に、ウレタン結合、及びアクリロイル基(重合性不飽和基)とを含むことを確認した。
以上により、前記式(13)で示される化合物75部のほか、反応に関与しなかったペンタエリスリトールテトラアクリレート37部が混在している組成物(D−1)を得た。
【0177】
(製造例13)
シリカ粒子含有ハードコート層用組成物の調製
紫外線を遮蔽した容器中において、製造例5で合成したアクリル変性球状シリカ粒子X−1を78.4部(固形分として27.4部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート65部、製造例12で合成したD−1を2.6部、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン5部、MIBK45部を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液のハードコート層用組成物を得た。この組成物をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、50質量%であった。
【0178】
(製造例14)
硬化性樹脂組成物塗工用基材の作製
片面易接着ポリエチレンテレフタレートフィルムA4100(東洋紡績(株)製、膜厚188μm)の易接着処理面に、製造例13で調製したシリカ粒子含有ハードコート層用組成物をワイヤーバーコータで膜厚3μmとなるように塗工し、オーブン中、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、空気下、高圧水銀ランプを用いて、0.9J/cm2の光照射条件で紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物塗工用基材を作製した。
【0179】
(実施例1)
表4に示すように、製造例2で得たエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体A−1のMIBK溶液を32.9g((A)成分の固形分として5g)、製造例6で得られたメタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−1を234.5g((B)成分を主成分とする固形分として82.1g)、光重合開始剤((C)成分)として2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)5g、(D)成分として製造例12で得られたD−1を7.9g及びMIBK1720gを、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて1時間攪拌し均一な硬化性樹脂組成物を得た。また、製造例2の方法により固形分濃度を求めたところ5質量%であった。
【0180】
(実施例2〜4、比較例1、2)
表4の組成に従った他は、実施例1と同様にして各硬化性樹脂組成物を得た。表中の成分組成の単位は、有機溶剤を除く固形分全量に対する質量%である。
【0181】
【表4】
【0182】
(実施例5〜12、比較例3〜6)
表5又は表6の組成に従った他は、実施例1と同様にして各硬化性樹脂組成物を得た。表中の成分組成の単位は、有機溶剤を除く固形分全量に対する質量%である。
【0183】
【表5】
【0184】
【表6】
【0185】
表4〜6中の商品名は、下記のものを示す。
SR399E:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー(株)製)
Irg.907:2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
MEK−ST−UP:日産化学工業(株)製連鎖球状シリカゾル
【0186】
<反射防止フィルムの製造及び評価>
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた硬化性樹脂組成物を用いて反射防止フィルムを製造し、下記特性について評価した。結果を表4に示す。
【0187】
(1)外観の評価
各硬化性樹脂組成物を、ワイヤーバーコータを用いて製造例10で得られた硬化性樹脂組成物塗工用基材上に膜厚0.1μmとなるように塗工し、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、窒素気流下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で紫外線を照射し、反射防止膜層を作製した。得られた反射防止膜の外観を目視で確認し、下記基準に従って評価した。
○:塗布ムラなし
△:若干塗布ムラあり
×:全面に塗布ムラあり
【0188】
(2)硬化膜の屈折率測定
各硬化性樹脂組成物をスピンコーターによりシリコンウェハー上に、乾燥後の厚さが約0.1μmとなるように塗布後、窒素下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で紫外線を照射して硬化させた。得られた硬化物について、エリプソメーターを用いて25℃での波長589nmにおける屈折率(nD25)を測定した。
【0189】
(3)反射防止膜の反射率測定
上記(1)で得られた反射防止膜の裏面を黒色スプレーで塗装し、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ自記分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)により、波長340〜700nmの範囲で反射率をマイクロレンズ側から測定して評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における反射防止用積層体(反射防止膜)の反射率を測定した。
【0190】
(4)耐擦傷性テスト(スチールウール耐性テスト)
上記(1)で得られた硬化膜を、スチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール(株)製)を学振型摩擦堅牢度試験機(AB-301、テスター産業(株)製)に取りつけ、硬化膜の表面を荷重500gの条件で10回繰り返し擦過し、当該硬化膜の表面における傷の発生の有無を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
◎:硬化膜の剥離や傷の発生がほとんど認められない。
○:硬化膜にわずかな細い傷が認められる。
△:硬化膜全面に筋状の傷が認められる。
×:硬化膜の剥離が生じる。
【0191】
(5)耐汚染性テスト
上記(1)で得られた反射防止膜に指紋をつけ、不織布(ベンコットS−2、旭化成(株)製)にて塗膜表面を拭き取った。耐汚染性を、以下の基準に従って評価した。
○:塗膜表面の指紋跡がほぼ完全に拭き取られた。
×:拭き取られずに指紋跡が試料表面に残存した。
【0192】
表4の結果から、重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面変性された連鎖球状のシリカ粒子を用いることにより、外観が良好で、屈折率が1.27〜1.36と非常に低く、反射率も0.2以下であることがわかる。(実施例1〜4)
また、(メタ)アクリレート化合物を配合することにより、耐擦傷性が向上することがわかる。(実施例4)
【0193】
製造例15
[マイクロレンズ用アルカリ可溶性樹脂の合成(1)]
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を装着したセパラブルフラスコにp−tert−ブトキシスチレン95g、スチレン5g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10g、ジオキサン100gを仕込み、30分間窒素でパージした後、セパラブルフラスコを油浴に浸し、内温を80℃に保ち、攪拌しながら5時間重合を行い、樹脂を合成した。得られた樹脂溶液に7.2%塩酸水溶液60gを加え、80℃で3時間攪拌し、t−ブトキシ基の加水分解によりポリマーに水酸基を導入した。反応混合物をメタノール/水混合液(メタノール:水=2:8(容積比))に注ぎ、得られたスラリーをメタノール/水混合液で2回再沈精製した。50℃で12時間減圧乾燥させ、白色樹脂粉末を得た(以下、この樹脂を「樹脂A」と称する)。得られた樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が10,000であった。
【0194】
製造例16
[マイクロレンズ用アルカリ可溶性樹脂の合成(2)]
製造例15と同様なセパラブルフラスコに、ブタジエン7.5g、メタクリル酸20.0g、メタクリル酸ジシクロペンタニル22.5g、メタクリル酸グリシジル50.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4.0g、ジグライム250.0gを仕込み、30分間窒素でパージした後、セパラブルフラスコを油浴に浸し、内温を80℃に保ち、攪拌しながら4時間重合を行い、樹脂を合成した(以下、この樹脂を「樹脂B」と称する)。
【0195】
製造例17
[マイクロレンズ用感光性樹脂組成物の調製]
製造例15で得られた樹脂A100質量部に対して、製造例16で得られた樹脂B40.0質量部(固形分換算)、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(1.9モル)との縮合物30.0質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製)30.0質量部、サイメル300(三井サイアナミッド(株)製)10.0質量部、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−S−トリアジン0.5質量部を混合し、全体の固形分濃度が32%になるように3−メトキシプロピオン酸メチル(MMP)で希釈・溶解させた後、孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、マイクロレンズ用感光性樹脂組成物を得た。
【0196】
製造例18
[マイクロレンズの作製]
製造例17で得られたマイクロレンズ用感光性樹脂組成物を石英基板に、2.5μmの膜厚になるようにスピンコートし、70℃にて3分間ホットプレート上でプレベークした。ニコン製NSR1755i7A縮小投影露光機(NA=0.50,λ=365nm)で露光を行った後、1.5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃、1分間現像した。水でリンスし、乾燥して石英板上にパターンを形成した。得られたパターン付き石英板を10mW/cm2の紫外線で60秒間照射した。その後ホットプレート上、150℃で10分間加熱してパターンをメルトフローさせマイクロレンズを形成した。
【0197】
<マイクロレンズ上の反射防止膜(低屈折率膜)の形成及び評価>
製造例18で得られたマイクロレンズ付き基板に、実施例5〜8及び比較例3、4で得られた低屈折率の硬化性樹脂組成物を、スピンコート装置を用いて塗布した。当該硬化性樹脂組成物を基板上に1mL滴下し、500rpmで30秒、2000rpmで3分間でスピンコートした。次いで、高圧水銀灯1J/cm2で硬化させ、膜厚約0.1μmの低屈折率硬化膜をマイクロレンズ上に形成した。
【0198】
このようにして、図6に示す反射防止膜を形成したマイクロレンズを作製した。
このマイクロレンズ上の反射防止膜の性能を以下の方法により評価した。結果を表5に示す。
【0199】
(1)屈折率
各実施例及び比較例で調製した硬化性樹脂組成物を、4インチシリコンウェハー上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。
得られたシリコンウェハー上の各低屈折率硬化膜について、エリプソメーターを用いて、25℃での波長589nmにおける屈折率(nD25)を測定した。
【0200】
(2)塗布性
各実施例及び比較例で調製した低屈折率の硬化性樹脂組成物を、マイクロレンズ付き基板上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。得られた低屈折率膜を有するマイクロレンズ付き基板を以下の基準で目視評価した。
◎:基板全体に塗布ムラ、風紋、スジ等が全く無く、均一塗布されている。
○:基板のごく一部に塗布ムラ等があるものの全体的に均一に塗布されている。
△:基板の半分以上に塗布ムラ、風紋、スジがある。
×:基板全体に塗布ムラ、風紋、スジがある。
【0201】
(3)反射防止性
反射防止膜付きマイクロレンズ基板の裏面を黒色スプレーで塗装し、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ自記分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)により、波長340〜700nmの範囲で反射率をマイクロレンズ側から測定して評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における反射防止膜の反射率を測定し、そのうち波長550nmにおける光の反射率から、反射防止性を、以下の基準で評価した。
◎:反射率が0.5%以下である。
○:反射率が0.5%を超え1.0%以下である。
△:反射率が1.0%を超え1.5%以下である。
×:反射率が1.5%を超える。
【0202】
(4)透明性
反射防止膜付きマイクロレンズ基板の濁度(Haze値)を、カラーヘイズメーターを用いて測定し、以下の基準で評価した。
○:Haze値が2%以下である。
△:Haze値が2%を超え3%以下である。
×:Haze値が3%を超える。
【0203】
(5)基材密着性
反射防止膜付きマイクロレンズ基板上に6cmのセロハンテープを3cm(持ちしろ3cm)接着させ、手で瞬間的に剥がした。セロハンテープの剥離面を以下の基準で目視評価した。
○:変化なし。
△:一部に積層体の剥離が確認できる。
×:積層体が全体的に剥離している。
【0204】
(6)耐光性
反射防止膜付きマイクロレンズ基板の反射率を、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ自記分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)で測定して評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における硬化膜の反射率を測定し、さらに硬化膜に対して、QUV促進耐候試験機(Q−Panel社製)を用いて、150時間紫外線を照射した後、同様に反射率を測定して、以下の基準で評価した。
○:耐光性試験前後で、反射率曲線の最低反射率の波長シフトが、−50nm以下、又は最高反射率値の減少が1%以下である。
×:耐光性試験前後で、反射率曲線の最低反射率の波長シフトが、−100nm以下、又は最高反射率値の減少が2%以下である。
【0205】
表5の結果から、本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、煩瑣防止性に優れ、透明性に優れていることがわかる。
【0206】
<マイクロレンズ上の平坦化膜の形成及び評価>
製造例18で得られたマイクロレンズ付き基板に、実施例9〜12及び比較例5、6で得られた低屈折率の硬化性樹脂組成物を、スピンコート装置を用いて塗布した。当該硬化性樹脂組成物を基板上に10mL滴下し、500rpmで5秒、1000rpmで1分間スピンコートし、80℃で1分間乾燥させた。次いで、高圧水銀灯1J/cm2で硬化させ、マイクロレンズ上に低屈折率の平坦化膜を形成した。得られた平坦化膜を、下記特性について評価した。結果を表6に示す。
【0207】
(1)屈折率
各実施例及び比較例で調製した硬化性樹脂組成物を、4インチシリコンウェハー上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。
得られたシリコンウェハー上の各低屈折率硬化膜について、エリプソメーターを用いて、25℃での波長589nmにおける屈折率(nD25)を測定した。
【0208】
(2)塗布性
各実施例及び比較例で調製した低屈折率の硬化性樹脂組成物を、マイクロレンズ付き基板上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。得られた低屈折率膜を有するマイクロレンズ付き基板を以下の基準で目視評価した。
◎:基板全体に塗布ムラ、風紋、スジ等が全く無く、均一塗布されている。
○:基板のごく一部に塗布ムラ等があるものの全体的に均一に塗布されている。
△:基板の半分以上に塗布ムラ、風紋、スジがある。
×:基板全体に塗布ムラ、風紋、スジがある。
【0209】
(3)耐アルカリ性
各実施例及び比較例で調製した低屈折率の硬化性樹脂組成物を、マイクロレンズ付き基板上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。得られた硬化膜を2.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に23℃にて30分間浸漬した。水でリンスし乾燥した後の硬化膜の外観を目視にて観察し、初期と比較して変化があったものを×、変化がなかったものを○とした。
【0210】
(4)耐有機溶剤性
各実施例及び比較例で調製した低屈折率の硬化性樹脂組成物を、マイクロレンズ付き基板上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。得られた硬化膜をアセトンに23℃にて30分間浸漬した。水でリンスし乾燥した後の硬化膜の外観を目視にて観察し、初期と比較して変化があったものを×、変化がなかったものを○とした。
【0211】
表6の結果から、本発明の放射線硬化性樹脂組成物によれば、塗布性、耐アルカリ性及び耐有機溶剤性に優れた、低屈折率の硬化物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、塗工性及び耐久性に優れ、かつ屈折率及び反射率が非常に低い硬化膜を形成することができる。それ故、特に反射防止膜の低屈折率層形成用材料として有用である。
【0213】
本発明の硬化性組成物は、屈折率が低く、耐光性に優れた硬化膜を与え、しかも塗工性もよい。また、本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、空気媒体とマイクロレンズとの屈折率差に起因するレンズ表面での光の反射を抑制できるため、マイクロレンズの光線透過率を向上させることができる。従って、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等オンチップカラーフィルターの結像光学系あるいは光ファイバーコネクタの光学系等のマイクロレンズに好適に使用できる。特に、固体撮像素子の感光部に入射する光量を増加できることから、固体撮像素子用のマイクロレンズに好適に使用できる。
【0214】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低屈折率でハジキ、塗布むらが無く、特にスピンコート法による塗布性に優れているため、均一な平坦化層を形成することができる。
本発明の平坦化層は、低屈折率で、透明性に優れている。
本発明の平坦化層は、マスク露光等の手段により、位置選択的に形成することができるため、配線の取り出し場所の形成が容易となる。
本発明の平坦化層を有する固体撮像素子は、固体撮像素子等のマイクロレンズで問題となるフレアが有効に防止され、集光率が向上する。
本発明の平坦化層は、固体撮像素子、CCD、CMOSその他レンズ形状の物品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明の一実施形態による反射防止膜の断面図である。
【図2】製造例6で作製したメタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−1(数珠状シリカ粒子)の電子顕微鏡写真である。
【図3】製造例7で作製したメタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−2(数珠状シリカ粒子)の電子顕微鏡写真である。
【図4】製造例8で作製したメタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−3の電子顕微鏡写真である。
【図5】製造例5で作製したアクリル変性球状シリカ粒子X−1(数珠状シリカ粒子)の電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の一実施形態であるマイクロレンズ用反射防止膜の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態であるマイクロレンズ用反射防止膜の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態である固体撮像素子の断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態である固体撮像素子の断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態である、マイクロレンズ上に位置選択的に平坦化層を形成した固体撮像素子のマイクロレンズ部分の断面図(a)及び平面図(b)である。
【図11】実施例で形成したマイクロレンズ用反射防止膜の断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態であるマイクロレンズ用反射防止膜の断面図である。
【符号の説明】
【0216】
10 反射防止膜
12 基材
14 ハードコート
18 低屈折率層
20 マイクロレンズ用反射防止膜
21 高屈折率膜
22 低屈折率膜
23 ハードコート層
24 マイクロレンズ
25 石英基板
30 固体撮像素子
32 CCD基板
33 フォトダイオード
34 ハレーション防止層
35 カラーレジスト層
36a、36b、36b−2、36c 平坦化層
37 マイクロレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及び反射防止膜に関する。より詳細には、シリカ粒子と、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体を含み、硬化させたときに、屈折率及び反射率が低く、耐擦傷性、塗工性、及び耐久性に優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物、及びそのような硬化物からなる低屈折率層を有する反射防止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレイ等の各種表示パネルにおいて、外光の映りを防止し、画質を向上させるために、低屈折率性、耐擦傷性、塗工性、及び耐久性に優れた硬化物からなる低屈折率層を含む反射防止膜が求められている。
これら表示パネルにおいては、付着した指紋、埃等を除去するため表面をエタノール等を含侵したガーゼで拭くことが多く、耐擦傷性が求められている。
【0003】
反射防止膜の低屈折率層用材料として、例えば、水酸基含有含フッ素重合体を含むフッ素樹脂系塗料が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
しかし、このようなフッ素樹脂系塗料では、塗膜を硬化させるために、水酸基含有含フッ素重合体と、メラミン樹脂等の硬化剤とを、酸触媒下、加熱して架橋させる必要があり、加熱条件によっては、硬化時間が過度に長くなったり、使用できる基材の種類が限定されてしまうという問題があった。
また、得られた塗膜についても、耐候性には優れているものの、耐擦傷性や耐久性に乏しいという問題があった。
【0004】
そこで、上記の問題点を解決するため、少なくとも1個のイソシアネート基と少なくとも1個の付加重合性不飽和基とを有するイソシアネート基含有不飽和化合物と水酸基含有含フッ素重合体とを、イソシアネート基の数/水酸基の数の比が0.01〜1.0の割合で反応させて得られる不飽和基含有含フッ素ビニル重合体を含む塗料用組成物が提案されている(例えば、特許文献4)。
【0005】
しかし、上記公報では、不飽和基含有含フッ素ビニル重合体を調製する際に、水酸基含有含フッ素重合体のすべての水酸基を反応させるのに十分な量のイソシアネート基含有不飽和化合物を用いず、積極的に当該重合体中に未反応の水酸基を残存させるものであった。
このため、このような重合体を含む塗料用組成物は、低温、短時間での硬化を可能とするものの、残存した水酸基を反応させるために、メラミン樹脂等の硬化剤をさらに用いて硬化させる必要があった。さらに、上記公報で得られた塗膜は、塗工性、耐擦傷性についても十分とはいえないという課題があった。
【0006】
また、反射防止膜の耐擦傷性を改善するために、反射防止膜の最外層である低屈折率膜にシリカ粒子を添加する技術が広く用いられている(例えば、特許文献5,6)。しかし、多くの場合、粒径が比較的均一なシリカ粒子が1種類用いられているため、粒子の充填率を上げることができず、十分な耐擦傷性が得られるには至っていない。
【0007】
さらに、より低反射率の反射防止膜を提供するために従来よりもさらに低屈折率を有する低屈折率膜用材料が望まれている。そこでアクリル等の樹脂成分よりも空気の屈折率が低いことを利用して、多孔質粒子や中空粒子等の粒子内部に空隙を有する粒子(以下、総称として中空粒子」という。)を用いた技術が知られている(例えば、特許文献7〜9)。
しかし、中空粒子を用いるとかかる空隙を有しない粒子(中実粒子)に比べて硬化膜の耐擦傷性が低下する欠点があった。
【0008】
また、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等のオンチップカラーフィルターの結像光学系あるいは光ファイバーコネクタの光学系材料として、3〜100μm程度のレンズ径を有するマイクロレンズ、又はそれらのマイクロレンズを規則的に配列したマイクロレンズアレイが使用されている。
【0009】
マイクロレンズは、外部からの光を、固体撮像素子等の感光部に集光する機能を有するレンズであるが、近年の素子の高集積化により、素子のサイズが小さくなっており、1つの素子に入射する光量は減少する傾向にある。そのため、素子に入射する光を損失なく感光部に集光させること(集光率の向上)が課題となっている。
【0010】
この課題に対して、例えば、マイクロレンズの表層に反射防止膜を形成し、空気媒体とレンズとの屈折率変化に起因する光の反射を抑制することが検討されている(例えば、特許文献10参照)。
【0011】
さらに、従来の低屈折率層形成用のフッ素材料では、塗布したときのハジキ、ムラ等により膜厚ムラが生じ、均一な画像が得られないという問題があった。また、固体撮像素子等のマイクロレンズでは、カメラレンズから入射する光の強度が大きいと、カメラレンズ、リッドガラスを透過した光の一部が、カラーフィルタ表面で反射し、その光がリッドガラスで再度反射して固体撮像素子に入り、映像に映る、フレアという現象が生じることが問題となっている。
【0012】
上記問題に対して、固体撮像素子に平坦化層を設けることにより上記課題を解決しようとする技術が知られている(特許文献11〜13)。固体撮像素子に用いられる平坦化層としては、集光用のマイクロレンズ間の受光部平坦化層(特許文献11)、光電変換を行う受光部の表面を平坦化する受光部平坦化層(特許文献13)、受光部平坦化層上に形成されるカラーフィルタ上に形成されるカラーフィルタ平坦化層(特許文献12)等が挙げられる。
【0013】
しかし、平坦化層は液状硬化性樹脂組成物をスピンコート方等により塗布した後これを硬化せしめて製造されるものであるところ、従来の平坦化層に用いられた材料では、屈折率が十分に低くないため、フレアを効果的に防止することが困難であり、集光率を十分に向上させることができないという問題があった。また、液状組成物を塗布した際のハジキや塗布ムラを生じやすく、このため平坦化層の膜厚を均一にすることが困難であり、その結果、均一な光透過性を付与する上で問題があった。
【0014】
【特許文献1】特開昭57−34107号公報
【特許文献2】特開昭59−189108号公報
【特許文献3】特開昭60−67518号公報
【特許文献4】特開昭61−296073号公報
【特許文献5】特開2002−265866号公報
【特許文献6】特開平10−316860号公報
【特許文献7】特開2003−139906号公報
【特許文献8】特開2002−317152号公報
【特許文献9】特開平10−142402号公報
【特許文献10】特開平4−223371号公報
【特許文献11】特開平06−232379号公報
【特許文献12】特開平06−204441号公報
【特許文献13】特開2001−308300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明は、屈折率及び反射率が低く、耐擦傷性及び耐汚染性に優れる硬化膜を与える硬化性樹脂組成物及びそれを用いた反射防止膜、マイクロレンズ用反射防止膜を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、固体撮像素子の平坦化層用の低屈折率硬化物を与え、かつスピンコート法による塗布性に優れた放射線硬化性樹脂組成物、及びこれを用いた、フレアの防止された固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成できる硬化性樹脂組成物を得るため、本発明者らは鋭意研究を重ね、組成物の成分として複数の球状シリカ粒子が連鎖した形状を有する粒子を用いることにより、低屈折率の硬化物が得られ、シリカ粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させることにより、粒子同士に結着力を持たせることができ、得られる硬化物の耐擦傷性を高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
本発明によれば、以下の硬化性樹脂組成物、硬化物及び反射防止膜、マイクロレンズ用反射防止膜、平坦化層、平坦化層の製造方法、及び固体撮像素子が提供される。
1.下記成分(A)及び(B)を含有する硬化性樹脂組成物であって、有機溶剤以外の組成物全量に対して、
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体 1〜90質量%
(B)重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面変性された連鎖球状のシリカ粒子 10〜99質量%
を含有する硬化性樹脂組成物。
2.前記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体が、
1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、
水酸基含有含フッ素重合体と、
を反応させて得られるエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体である上記1に記載の硬化性樹脂組成物。
3.前記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のエチレン性不飽和基が(メタ)アクリル基である上記1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
4.前記(B)連鎖球状シリカ粒子が、2個以上の、数平均粒径1〜100nmの略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で連結した形態である上記1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
5.前記(B)連鎖球状シリカ粒子が、前記略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で繋がった数珠状の形態、又は前記略球状のシリカ粒子が直鎖状に繋がった形態を有する上記4に記載の硬化性樹脂組成物。
6.さらに(C)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を含有する上記1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
7.さらに(D)(メタ)アクリレート化合物を含有する上記1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
8.前記(D)(メタ)アクリレート化合物が、分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有する上記7に記載の硬化性樹脂組成物。
9.反射防止膜用である上記1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
10.上記1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
11.上記10に記載の硬化物からなる低屈折率層を有する反射防止膜。
12.上記10に記載の硬化物からなる低屈折率層を有するマイクロレンズ用反射防止膜。
13.上記10に記載の硬化物からなる低屈折率膜と、これより高屈折率の硬化膜とを有する上記12に記載のマイクロレンズ用反射防止膜。
14.上記1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる平坦化層。
15.上記1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物をスピンコート法により塗布して該組成物の塗布膜を形成した後に、放射線を照射して該塗布膜を硬化せしめる工程を有する平坦化層の製造方法。
16.パターンマスクを介して前記放射線を照射して前記塗布膜を硬化せしめた後、現像処理することによって、パターン化された平坦化層を形成する上記15に記載の平坦化層の製造方法。
17.少なくとも基材層、上記14に記載の平坦化層、及びマイクロレンズを含む固体撮像素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、屈折率及び反射率が低く、優れた耐擦傷性及び耐汚染性を有する硬化物が得られる。
また、本発明の硬化物からなる低屈折率層を有する、本発明の反射防止膜は、優れた反射防止特性を示す。
本発明の硬化性樹脂組成物は、連鎖球状のシリカ粒子を用いているため、これを硬化させて得られる硬化膜は屈折率が非常に低く、CCD(電荷結合素子;Charge Coupled Device)等のイメージセンサーのマイクロレンズ上に塗布することで反射防止膜又は平坦化膜として機能し、イメージセンサーの集光効率を向上させることができる。
【0019】
本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、空気媒体とマイクロレンズとの屈折率差に起因するレンズ表面での光の反射を抑制できるため、マイクロレンズの光線透過率を向上させることができる。このため、固体撮像素子等の感光部に入射する光量を向上することができる。
【0020】
本発明の平坦化層用放射線硬化性樹脂組成物は、低屈折率で、スピンコート法による塗布性に優れている。本発明の平坦化層用放射線硬化性樹脂組成物は、塗布したときのハジキ、塗布ムラが生じないため、塗布均一性が良く、従って、本発明の平坦化層用放射線硬化物は均一な画像を与えることができる。また、均一に塗布することができるため、本発明の平坦化層用放射線硬化物を含む固体撮像素子等の歩留まりの向上が図れる。
【0021】
上記本発明の平坦化層を含む、本発明の固体撮像素子は、固体撮像素子等のマイクロレンズで問題となるフレアが効果的に防止されている他、従来よりも屈折率の低い平坦化層が得られるため集光率が向上している。
【0022】
さらに、本発明の平坦化層用放射線硬化性組成物は、放射線照射によって硬化しうるため、マスク露光等の手段によりパターン化された平坦化層を作製することができ、例えば、各マイクロレンズの周囲(マイクロレンズ間)に平坦化層が形成されていない部分を設けることができる。このように平坦化層が形成されていない部分を形成できることによって、目的とする箇所だけに平坦化層を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物、反射防止膜、マイクロレンズ用反射防止膜、平坦化層、平坦化層の製造方法及び固体撮像素子の実施形態について以下説明する。
【0024】
1.硬化性樹脂組成物
本発明の硬化性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)は、下記の成分(A)〜(F)を含み得る。これらの成分のうち、(A)及び(B)は必須成分であり、(C)〜(F)は適宜含むことのできる任意成分である。
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
(B)重合性不飽和基を有する有機化合物により表面変性された連鎖球状のシリカ粒子
(C)活性エネルギー線の照射又は熱により活性種を発生する化合物
(D)(メタ)アクリレート化合物
(E)有機溶剤
(F)その他の添加剤
これらの成分について以下説明する。
【0025】
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体(A)は、フッ素系オレフィンの重合物である。(A)成分により本発明の組成物は低屈折率、防汚性、耐薬品性、耐水性等の反射防止膜用低屈折率材料としての基本性能を発現する。また、後述する成分(B)の粒子間に存在し、粒子同士の結着力を持たせるのに必要な成分である。
好ましくは、(A)成分は、側鎖水酸基が(メタ)アクリル系化合物で変性されている。さらに好ましくは、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系化合物によって変性されている。このような変性により、重合性基を有する連鎖球状シリカ粒子(後述する成分(B))や(メタ)アクリル化合物(後述する成分(D))と共架橋化することができ、耐擦傷性が向上する。
【0026】
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、水酸基含有含フッ素重合体とを反応させて得られる。
【0027】
(1)1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物
1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物としては、分子内に、1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有している化合物であれば特に制限されるものではない。
尚、イソシアネート基を2個以上含有すると、水酸基含有含フッ素重合体と反応させる際にゲル化を起こす可能性がある。
また、上記エチレン性不飽和基として、後述する硬化性樹脂組成物をより容易に硬化させることができることから、(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
このような化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートの一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0028】
尚、このような化合物は、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて合成することもできる。
ジイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0029】
水酸基含有(メタ)アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
尚、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、大阪有機化学(株)製 商品名 HEA、日本化薬(株)製 商品名 KAYARAD DPHA、PET−30、東亞合成(株)製 商品名 アロニックス M−215、M−233、M−305、M−400等として入手することができる。
【0030】
(2)水酸基含有含フッ素重合体
水酸基含有含フッ素重合体は、好ましくは、下記構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)とを含んでなる。
(a)下記式(1)で表される構造単位。
(b−1)下記式(2−1)で表される構造単位。
(b−2)下記式(2−2)で表される構造単位。
(c)下記式(3)で表される構造単位。
【0031】
【化1】
[式(1)中、R1はフッ素原子、フルオロアルキル基又は−OR2で表される基(R2はアルキル基又はフルオロアルキル基を示す)を示す]
【0032】
【化2】
[式(2−1)中、R3は水素原子又はメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2)n−OR5若しくは−OCOR5で表される基(R5はアルキル基又はグリシジル基を、nは0又は1の数を示す)、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を示す]
【0033】
【化3】
[式中、R3は式(2−1)で定義した通りであり、R24はフロロアルキル基を示し、xは0〜2の数を示す]
【0034】
【化4】
[式(3)中、R6は水素原子又はメチル基を、R7は水素原子又はヒドロキシアルキル基を、vは0又は1の数を示す]
【0035】
(i)構造単位(a)
上記式(1)において、R1及びR2のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基等の炭素数1〜6のフルオロアルキル基が挙げられる。また、R2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0036】
構造単位(a)は、含フッ素ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような含フッ素ビニル単量体としては、少なくとも1個の重合性不飽和二重結合と、少なくとも1個のフッ素原子とを有する化合物であれば特に制限されるものではない。このような例としてはテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン等のフルオロレフィン類;アルキルパーフルオロビニルエーテル又はアルコキシアルキルパーフルオロビニルエーテル類;パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類;パーフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
これらの中でも、ヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)又はパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)がより好ましく、これらを組み合わせて用いることがさらに好ましい。
【0037】
尚、構造単位(a)の含有率は、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、20〜70モル%である。この理由は、含有率が20モル%未満になると、本願が意図するところのフッ素含有材料の光学的特徴である、低屈折率の発現が困難となる場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性、透明性、又は基材への密着性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(a)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、25〜65モル%とするのがより好ましく、30〜60モル%とするのがさらに好ましい。
【0038】
(ii)構造単位(b−1)
式(2−1)において、R4又はR5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0039】
構造単位(b−1)は、上述の置換基を有するビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このようなビニル単量体の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルもしくはシクロアルキルビニルエーテル類;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0040】
尚、構造単位(b−1)の含有率は、構造単位(a)と、(b−1)と、(c)との合計を100モル%としたときに、10〜70モル%である。この理由は、含有率が10モル%未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(b−1)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)と、(c)との合計を100モル%としたときに、20〜60モル%とするのがより好ましく、30〜60モル%とするのがさらに好ましい。
【0041】
(iii)構造単位(b−2)
また、本発明の共重合体において構造単位(b−1)の代わりに(b−2)を用いることができる。構造単位(b−2)は、式(2−2)で示されるビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このようなビニル単量体の具体例としては、以下の構造式を有するものが挙げられる。
【化5】
(式中、R20は水素原子又はメチル基であり、xは0〜2の数を表す。また、上記式中、芳香環の中にFと記した基は、5つの水素の全てがフッ素原子で置換されていることを示す。)
【0042】
尚、構造単位(b−2)の含有率は、構造単位(a)と、(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、10〜70モル%である。この理由は、含有率が30モル%未満になると、水酸基含有含フッ素共重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が60モル%を超えると、水酸基含有含フッ素共重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(b’)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)と、(c)との合計を100モル%としたときに、20〜60モル%とすることがより好ましく、30〜60モル%とすることがさらに好ましい。
【0043】
(iv)構造単位(c)
式(3)において、R7のヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
【0044】
構造単位(c)は、水酸基含有ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような水酸基含有ビニル単量体の例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類、アリルアルコール等が挙げられる。
また、水酸基含有ビニル単量体としては、上記以外にも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0045】
尚、構造単位(c)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、5〜70モル%とすることが好ましい。この理由は、含有率が5モル%未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(c)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、5〜40モル%とするのがより好ましく、5〜30モル%とするのがさらに好ましい。
【0046】
(v)構造単位(d)及び構造単位(e)
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(d)を含んで構成することも好ましい。
【0047】
(d)下記式(4)で表される構造単位。
【化6】
[式(4)中、R8及びR9は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はアリール基を示す]
【0048】
式(4)において、R8又はR9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が、ハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基等の炭素数1〜4のフルオロアルキル基等が、アリール基としてはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等がそれぞれ挙げられる。
【0049】
構造単位(d)は、前記式(4)で表されるポリシロキサンセグメントを有するアゾ基含有ポリシロキサン化合物を用いることにより導入することができる。このようなアゾ基含有ポリシロキサン化合物の例としては、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化7】
[式(5)中、R10〜R13は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はシアノ基を示し、R14〜R17は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示し、p、qは1〜6の数、s、tは0〜6の数、yは1〜200の数、zは1〜20の数を示す。]
【0051】
式(5)で表される化合物を用いた場合には、構造単位(d)は、構造単位(e)の一部として水酸基含有含フッ素重合体に含まれる。
【0052】
(e)下記式(6)で表される構造単位。
【化8】
[式(6)中、R10〜R13、R14〜R17、p、q、s、t及びyは、上記式(5)と同じである。]
【0053】
式(5),(6)において、R10〜R13のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、R14〜R17のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0054】
本発明において、上記式(5)で表されるアゾ基含有ポリシロキサン化合物としては、下記式(7)で表される化合物が特に好ましい。
【0055】
【化9】
[式(7)中、y及びzは、上記式(5)と同じである。]
【0056】
尚、構造単位(d)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜10モル部とすることが好ましい。この理由は、含有率が0.1モル部未満になると、硬化後の塗膜の表面滑り性が低下し、塗膜の耐擦傷性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が10モル部を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性に劣り、コート材として使用する際に、塗布時にハジキ等が発生し易くなる場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(d)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜5モル部とするのがより好ましく、0.1〜3モル部とするのがさらに好ましい。同じ理由により、構造単位(e)の含有率は、その中に含まれる構造単位(d)の含有率を上記範囲にするよう決定することが望ましい。
【0057】
(v)構造単位(f)
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(f)を含んで構成することも好ましい。
【0058】
(f)下記式(8)で表される構造単位。
【化10】
[式(8)中、R18は乳化作用を有する基を示す]
【0059】
式(8)において、R18の乳化作用を有する基としては、疎水性基及び親水性基の双方を有し、かつ、親水性基がポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル構造である基が好ましい。具体的には旭電化工業製アデカリアソープNE−30、ER−30などが挙げられる。
【0060】
尚、構造単位(f)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜5モル部とすることが好ましい。この理由は、含有率が0.1モル部以上になると、水酸基含有含フッ素重合体の溶剤への溶解性が向上し、一方、含有率が5モル部以内であれば、硬化性樹脂組成物の粘着性が過度に増加せず、取り扱いが容易になり、コート材等に用いても耐湿性が低下しないためである。
また、このような理由により、構造単位(f)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜3モル部とするのがより好ましく、0.2〜3モル部とするのがさらに好ましい。
【0061】
(vi)分子量
水酸基含有含フッ素重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、テトラヒドロフランを溶剤として測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であることが好ましい。この理由は、数平均分子量が5,000未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の機械的強度が低下する場合があるためであり、一方、数平均分子量が500,000を超えると、後述する硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄膜コーティングが困難となる場合があるためである。
また、このような理由により、水酸基含有含フッ素重合体のポリスチレン換算数平均分子量を10,000〜300,000とするのがより好ましく、10,000〜100,000とするのがさらに好ましい。
【0062】
(3)反応モル比
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、上述した、1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、水酸基含有含フッ素重合体とを、イソシアネート基/水酸基のモル比が1.1〜1.9の割合で反応させるのが好ましい。この理由は、モル比が1.1未満になると耐擦傷性及び耐久性が低下する場合があるためであり、一方、モル比が1.9を超えると、硬化性樹脂組成物の塗膜のアルカリ水溶液浸漬後の耐擦傷性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、イソシアネート基/水酸基のモル比を、1.1〜1.5とするのが好ましく、1.2〜1.5とするのがより好ましい。
【0063】
(A)成分の添加量は、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常1〜90質量%である。この理由は、添加量が1質量%未満となると、硬化性樹脂組成物の防汚性や滑り性が低下し、反射防止膜としての性能を維持できなくなる、一方、添加量が90質量%を超えると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が得られない場合があるためである。
また、このような理由から、(A)成分の添加量を1〜80質量%とするのがより好ましく、5〜60質量%の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0064】
(B)重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面変性された連鎖球状のシリカ粒子
成分(B)は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物において、低屈折率、耐擦傷性を発現させるために配合する。成分(B)は、塗膜内に空隙を形成し、塗膜の屈折率を大幅に低下させる効果がある。硬度の点では、成分(A)よりも硬く、耐擦傷性を発現させるが、単独では粒子間の結着力が低下し、耐擦傷性が得られない。
成分(B)を構成する連鎖球状のシリカ粒子とは、複数の略球状のシリカ粒子(以下、単に「シリカ粒子」ということがある)が直鎖状又は分岐した形で連結した形状を有するシリカ粒子をいう。連鎖球状のシリカ粒子は、2個以上の、数平均粒径1〜100nmの略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で連結していることが好ましい。ここで、略球状とは、必ずしも真球である必要はなく、不定形であっても、例えば、アスペクト比が1〜10の範囲の粒子であればよいことを意味する。略球状シリカ粒子の数平均粒径は、透過型電子顕微鏡により測定する。
【0065】
連鎖球状のシリカ粒子の具体的な形状としては、例えば、図2及び3に示すような分岐を有する数珠状(パールスライク形状)や、図4に示すような2個のシリカ粒子が連結した形状が挙げられる。また、比較例として、粒子同士が連結していない通常の球状シリカ粒子を図5に示す。
シリカを主成分とする個々の粒子としては、公知のものを使用することができ、また、その形状も、略球状であれば通常のコロイダルシリカに限らず中空粒子、多孔質粒子、コア・シェル型粒子等であっても構わない。しかし、組成物の屈折率を低減させる観点から中空粒子や多孔質粒子が好ましい。また、固形分が5〜40質量%のコロイダルシリカが好ましい。
【0066】
また、分散媒は、水あるいは有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類等を挙げることができ、これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましく、特にケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で、又は2種以上混合して分散媒として使用することができる。
【0067】
本発明で用いることができる連鎖球状のシリカ粒子の市販品としては、例えば、日産化学工業(株)製 商品名:スノーテックス−PS−M、PS−S、PS−SO、UP、OUP、芙蓉化学工業(株)製 商品名:PL−1、PL−2、PL−3、PL−3H等を挙げることができる。
【0068】
また、連鎖球状シリカ表面に化学修飾等の表面処理を行ったものを使用することができ、例えば分子中に1以上のアルキル基を有する加水分解性ケイ素化合物又はその加水分解物を含有するもの等を反応させることができる。このような加水分解性ケイ素化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、1,1,1―トリメトキシ−2,2,2−トリメチル−ジシラン、ヘキサメチル−1,3−ジシロキサン、1,1,1―トリメトキシ−3,3,3−トリメチル−1,3−ジシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−ジメチルメトキシシリル−ポリジメチルシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−トリメトキシシリル−ポリジメチルシロキサンヘキサメチル−1,3−ジシラザン等を挙げることができる。また、分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物を使用することもできる。分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物は、例えば反応性基としてNH2基を有するものとして、尿素プロピルトリメトキシシラン、N―(2−アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン等、OH基を有するものとして、ビス(2−ヒドロキシエチル)―3アミノトリプロピルメトキシシラン等、イソシアネート基を有するものとして3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等、チオシアネート基を有するものとして3−チオシアネートプロピルトリメトキシシラン等、エポキシ基を有するものとして(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等、チオール基を有するものとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0069】
連鎖球状のシリカ粒子(B)は、重合性不飽和基を含む有機化合物(以下、「特定有機化合物」ということがある。)と結合されている。このように構成することにより、ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物(後述する成分(D))と共架橋化することができ、耐擦傷性が向上する。
【0070】
(2)特定有機化合物
本発明に用いられる特定有機化合物は、分子内に重合性不飽和基を含む重合性の化合物である。例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。さらに、特定有機化合物としては、分子内に、さらに下記式(11)に示す基を含む化合物であること及び分子内にシラノ−ル基を有する化合物又は加水分解によってシラノ−ル基を生成する化合物を用いることが出来る。
【0071】
【化11】
[式(11)中、XはNH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、YはO又はSを示す。]
【0072】
(i)重合性不飽和基
特定有機化合物に含まれる重合性不飽和基としては特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエ−ト基、アクリルアミド基を好適例として挙げることができる。
この重合性不飽和基は、活性ラジカル種により付加重合をする構成単位である。
【0073】
(ii)式(11)に示す基
特定有機化合物は、分子内に前記式(11)に示す基をさらに含むものであることが好ましい。前記式(11)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]は、具体的には、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種である。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1とを併用することが好ましい。
前記式(11)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基材との密着性及び耐熱性等の特性を付与せしめるものと考えられる。
【0074】
(iii)シラノ−ル基又は加水分解によってシラノ−ル基を生成する基
特定有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物(以下、「シラノール基含有化合物」ということがある)又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物(以下、「シラノール基生成化合物」ということがある)であることが好ましい。このようなシラノール基生成化合物としては、ケイ素原子上にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等を有する化合物を挙げることができるが、ケイ素原子上にアルコキシ基又はアリールオキシ基を含む化合物、即ち、アルコキシシリル基含有化合物又はアリールオキシシリル基含有化合物が好ましい。
シラノール基又はシラノール基生成化合物のシラノール基生成部位は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、酸化物粒子と結合する構成単位である。
【0075】
(iv)好ましい態様
特定有機化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記式(12)に示す化合物を挙げることができる。
【0076】
【化12】
【0077】
R19、R20は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基であり、aは1、2又は3の数を示す。
R19、R20の例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。
【0078】
[(R19O)aR203-aSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
【0079】
R21は炭素数1〜12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。そのような有機基としては例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。これらのうち好ましい例は、メチレン、プロピレン、シクロヘキシレン、フェニレン等である。
【0080】
また、R22は2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。例えば、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式又は多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;及びこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素及び水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合、さらには前記式(11)に示す基を含むこともできる。
【0081】
R23は(b+1)価の有機基であり、好ましくは鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
【0082】
Zは活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応をする重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基を示す。例えば、アクリロイル(オキシ)基、メタアクリロイル(オキシ)基、ビニル(オキシ)基、プロペニル(オキシ)基、ブタジエニル(オキシ)基、スチリル(オキシ)基、エチニル(オキシ)基、シンナモイル(オキシ)基、マレエート基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基等を挙げることができる。これらの中でアクリロイル(オキシ)基及びメタアクリロイル(オキシ)基が好ましい。また、bは好ましくは1〜20の正の整数であり、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
【0083】
本発明で用いられるこれらの特定有機化合物の合成は、例えば、特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。即ち、(イ)メルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。また、(ロ)分子中にアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物と、活性水素含有重合性不飽和化合物との直接的反応により行うことができる。さらに、(ハ)分子中に重合性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物と、メルカプトアルコキシシラン又はアミノシランとの付加反応により直接合成することもできる。
【0084】
前記式(12)に示す化合物を合成するためには、これらの方法のうち(イ)が好適に用いられる。より詳細には、例えば、
(a)法;まずメルカプトアルコキシシランとポリイソシアネート化合物とを反応させることで、分子中にアルコキシシリル基、[−S−C(=O)−NH−]基及びイソシアネート基を含む中間体を形成し、次に中間体中に残存するイソシアネートに対して活性水素含有重合性不飽和化合物を反応させて、この不飽和化合物を[−O−C(=O)−NH−]基を介して結合させる方法、
(b)法;まずポリイソシアネート化合物と活性水素含有重合性不飽和化合物とを反応させることで分子中に重合性不飽和基、[−O−C(=O)−NH−]基、及びイソシアネート基を含む中間体を形成し、これにメルカプトアルコキシシランを反応させてこのメルカプトアルコキシシランを[−S−C(=O)−NH−]基を介して結合させる方法、
等を挙げることができる。さらに両者の中では、マイケル付加反応による重合性不飽和基の減少がない点で(a)法が好ましい。
【0085】
前記式(12)に示す化合物の合成において、イソシアネ−ト基との反応により[−S−C(=O)−NH−]基を形成することができるアルコキシシランの例としては、アルコキシシリル基とメルカプト基を分子中にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。このようなメルカプトアルコキシシランとしては、例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、メルカプトプロピルトリフェノキシシシラン、メルカプトプロピルトリブトキシシシラン等を挙げることができる。これらの中では、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。また、アミノ置換アルコキシシランとエポキシ基置換メルカプタンとの付加生成物、エポキシシランとα,ω−ジメルカプト化合物との付加生成物を利用することもできる。
【0086】
特定有機化合物を合成する際に用いられるポリイソシアネート化合物としては鎖状飽和炭化水素、環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素で構成されるポリイソシアネート化合物の中から選ぶことができる。
【0087】
このようなポリイソシアネート化合物の例としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等を挙げることができる。これらの中で、2,4−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、等が好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0088】
特定有機化合物の合成において、前記ポリイソシアネート化合物と付加反応により[−O−C(=O)−NH−]基を介し結合できる活性水素含有重合性不飽和化合物の例としては、分子内にイソシアネ−ト基との付加反応により[−O−C(=O)−NH−]基を形成できる活性水素原子を1個以上有しかつ重合性不飽和基を1個以上含む化合物を挙げることができる。
【0089】
これらの活性水素含有重合性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオ−ルモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ−ルモノ(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を用いることができる。これらの化合物の中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が好ましい。
これらの化合物は1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0090】
(3)特定有機化合物による連鎖球状シリカ粒子(以下、単に「粒子」ともいう。)の表面処理方法
特定有機化合物による粒子の表面処理方法としては特に制限はないが、特定有機化合物と粒子とを混合し、加熱、攪拌処理することにより製造することも可能である。尚、特定有機化合物が有するシラノール基生成部位と、粒子とを効率よく結合させるため、反応は水の存在下で行われることが好ましい。ただし、特定有機化合物がシラノール基を有している場合は水はなくてもよい。従って、粒子及び特定有機化合物を少なくとも混合する操作を含む方法により表面処理できる。
【0091】
粒子と特定有機化合物の反応量は、粒子及び特定有機化合物の合計を100質量%として、好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。0.01質量%未満であると、組成物中における粒子の分散性が十分でなく、得られる硬化物の透明性、耐擦傷性が十分でなくなる場合がある。
また、これら特定有機化合物は単独若しくは2種類以上を併用することができる。
【0092】
以下、特定有機化合物として、前記式(12)に示すアルコキシシリル基含有化合物(アルコキシシラン化合物)を例にとり、表面処理方法をさらに詳細に説明する。
表面処理時においてアルコキシシラン化合物の加水分解で消費される水の量は、1分子中のケイ素上のアルコキシ基の少なくとも1個が加水分解される量であればよい。好ましくは加水分解の際に添加、又は存在する水の量は、ケイ素上の全アルコキシ基のモル数に対し3分の1以上であり、さらに好ましくは全アルコキシ基のモル数の2分の1以上3倍未満である。完全に水分の存在しない条件下でアルコキシシラン化合物と粒子とを混合して得られる生成物は、粒子表面にアルコキシシラン化合物が物理吸着した生成物であり、そのような成分から構成される粒子を含有する組成物の硬化物においては、高硬度及び耐擦傷性の発現の効果は低い。
【0093】
表面処理時においては、前記アルコキシシラン化合物を別途加水分解操作に付した後、これと粉体粒子又は粒子の溶剤分散ゾルを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法;前記アルコキシシラン化合物の加水分解を粒子の存在下で行う方法;又は、他の成分、例えば、重合開始剤等の存在下、粒子の表面処理を行う方法等を選ぶことができる。この中では、前記アルコキシシラン化合物の加水分解を粒子の存在下で行う方法が好ましい。表面処理時、その温度は、好ましくは0℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上100℃以下である。また、処理時間は通常5分から24時間の範囲である。
【0094】
表面処理時において、粉体状のシリカ粒子を用いる場合、前記アルコキシシラン化合物との反応を円滑にかつ均一に行わせることを目的として、有機溶剤を添加してもよい。そのような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、Y−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
これらの溶剤の添加量は反応を円滑、均一に行わせる目的に合う限り特に制限はない。
【0095】
粒子として溶剤分散ゾルを用いる場合、溶剤分散ゾルと、特定有機化合物とを少なくとも混合することにより製造することができる。ここで、反応初期の均一性を確保し、反応を円滑に進行させる目的で、水と均一に相溶する有機溶剤を添加してもよい。
【0096】
また、表面処理時において、反応を促進するため、触媒として酸、塩又は塩基を添加してもよい。
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;メタンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、フタル酸、マロン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸等の不飽和有機酸を、塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩酸塩、テトラブチルアンモニウム塩酸塩等のアンモニウム塩を、また、塩基としては、例えば、アンモニア水、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級、2級又は3級脂肪族アミン、ピリジン等の芳香族アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類等を挙げることができる。
これらの中で好ましい例は、酸としては、有機酸、不飽和有機酸、塩基としては3級アミン又は4級アンモニウムヒドロキシドである。これらの酸、塩又は塩基の添加量は、アルコキシシラン化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部から1.0質量部、さらに好ましくは0.01質量部から0.1質量部である。
【0097】
また、反応を促進するため、脱水剤を添加することも好ましい。
脱水剤としては、ゼオライト、無水シリカ、無水アルミナ等の無機化合物や、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、テトラエトキシメタン、テトラブトキシメタン等の有機化合物を用いることができる。中でも、有機化合物が好ましく、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル等のオルトエステル類がさらに好ましい。
尚、粒子に結合したアルコキシシラン化合物の量は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の質量減少%の恒量値として、空気中で110℃から800℃までの熱質量分析により求めることができる。
【0098】
(B)成分の硬化性樹脂組成物中における配合量は、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常1〜99質量%であり、20〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がさらに好ましい。尚、粒子の量は、固形分を意味し、成分(B)の粒子が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その配合量には溶剤の量を含まない。(B)成分の配合量が1質量%未満であると、得られる硬化物の屈折率や耐擦傷性が不十分となることがあり、99質量%を超えると、粒子間の結着力が不十分となり耐擦傷性が低下する恐れがある。
【0099】
(C)活性エネルギー線の照射又は熱により活性種を発生する化合物
活性エネルギー線の照射又は熱により活性種を発生する化合物は、硬化性樹脂組成物を硬化させるために用いられる。
【0100】
(1)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物
活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物(以下「光重合開始剤」という。)としては、活性種として、ラジカルを発生する光ラジカル発生剤等が挙げられる。
尚、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型である点で、紫外線を使用することが好ましい。
【0101】
(i)種類
光ラジカル発生剤の例としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、又はBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン、その他の色素増感剤との組み合わせ等を挙げることができる。
【0102】
これらの光重合開始剤のうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等が好ましく、さらに好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等を挙げることができる。
【0103】
(ii)添加量
光重合開始剤の添加量は特に制限されるものではないが、硬化性樹脂組成物の固形分(有機溶剤以外の成分(A)と成分(B)の合計)100質量部に対して0.1〜20質量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が0.1質量部未満となると、硬化反応が不十分となり耐擦傷性が低下する場合があるためである。一方、光重合開始剤の添加量が20質量部を超えると、硬化物の屈折率が増加し反射防止効果が低下したり、耐擦傷性が不十分となる場合があるためである。
また、このような理由から、光重合開始剤の添加量を1〜10質量部とすることがより好ましい。
【0104】
(2)熱により活性種を発生する化合物
熱により活性種を発生する化合物(以下「熱重合開始剤」という。)としては、活性種として、ラジカルを発生する熱ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0105】
(i)種類
熱ラジカル発生剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アセチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルパーアセテート、クミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0106】
(ii)添加量
熱重合開始剤の添加量についても特に制限されるものではないが、硬化性樹脂組成物の固形分(有機溶剤以外の成分(A)と成分(B)の合計)100質量部に対して0.1〜20質量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が0.1質量部未満となると、硬化反応が不十分となり耐擦傷性、アルカリ水溶液浸漬後の耐擦傷性が低下する場合があるためである。一方、光重合開始剤の添加量が20質量部を超えると、硬化物の屈折率が増加し反射防止効果が低下する場合があるためである。
また、このような理由から、熱重合開始剤の添加量を1〜10質量部とするのがより好ましい。
【0107】
(D)(メタ)アクリレート化合物
(メタ)アクリレート化合物は、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物及びそれを用いた反射防止膜の耐擦傷性を高めるために用いられる。
【0108】
この化合物については、分子内に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であれば特に制限されるものではない。
(メタ)アクリロイル基を1個有するモノマーとしては、例えばアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレートで表される化合物を例示することができる。これらの単官能性モノマーうち、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0109】
これらの単官能性モノマーの市販品としては、例えばアロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD TC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬(株))、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0110】
また、(メタ)アクリロイル基が2個以上のモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートや、下記式(13)で表される化合物等を例示することができる。
【化13】
[式(13)中、「Acryl」は、アクリロイル基を示す。]
【0111】
これらの多官能性モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0112】
尚、本発明の組成物には、これらのうち、分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有することが好ましい。さらに好ましくは、分子内に少なくとも3個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物が特に好ましい。かかる3個以上の化合物としては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができ、これらのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが特に好ましい。上記の化合物は、各々1種単独で又は2種以上組み合わせを用いることができる。
【0113】
また、(メタ)アクリレート化合物はフッ素を含んでいてもよい。このような化合物の例として、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0114】
(D)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、硬化性樹脂組成物の固形分(有機溶剤以外の成分(A)と成分(B)の合計)100質量部に対して通常1〜30質量部である。この理由は、添加量が1質量部未満となると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が得られない場合があるためであり、一方、添加量が30質量部を超えると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の屈折率が高くなり、十分な反射防止効果が得られない場合があるためである。
また、このような理由から、(D)成分の添加量を1〜20質量部とするのがより好ましく、1〜15質量部の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0115】
(E)有機溶剤
硬化性樹脂組成物は、さらに有機溶剤で希釈することが好ましい。有機溶剤によって希釈することにより、薄膜の反射防止膜を均一に形成することができる。このような有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、メチルアミルケトン等のエステル類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、t−ブタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0116】
有機溶剤による希釈量についても特に制限されるものではないが、全固形分100質量部に対し、100〜100,000質量部の有機溶剤を添加するのが好ましい。この理由は、添加量が100質量部未満又は100,000質量部以上となると、反射防止膜に適した光学薄膜を得ることが出来ない。
【0117】
(F)添加剤
硬化性樹脂組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、(B)成分以外の無機充填剤若しくは顔料、染料等の添加剤をさらに含有させることも好ましい。
【0118】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法を説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体、上記(B)成分、及び必要に応じて上記(C)成分及び(D)成分、(E)有機溶剤、及び(F)添加剤をそれぞれ添加して、室温又は加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて、調製することができる。ただし、加熱条件下で混合する場合には、熱重合開始剤の分解開始温度以下で行うことが好ましい。
【0119】
2.硬化物
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる。
硬化性樹脂組成物の硬化条件については特に制限されるものではないが、例えば活性エネルギー線を用いた場合、露光量を0.01〜10J/cm2の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、露光量が0.01J/cm2未満となると、硬化不良が生じる場合があるためであり、一方、露光量が10J/cm2を超えると、硬化時間が過度に長くなる場合があるためである。
また、このような理由により、露光量を0.05〜5J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましく、0.1〜3J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましい。
さらに酸素による重合阻害を防ぐために硬化雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることが望ましい。不活性ガスとは、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。これらの不活性ガスの雰囲気としては、残存酸素濃度が5000ppm以下となることが好ましく、さらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。残存酸素濃度が5000ppmを超えると硬化不良が生じることがある。
【0120】
また、硬化性樹脂組成物を、加熱して硬化させる場合には、30〜200℃の範囲内の温度で、1〜180分間加熱するのが好ましい。このように加熱することにより、基材等を損傷することなく、より効率的に耐擦傷性に優れた反射防止膜を得ることができる。
また、このような理由から、50〜180℃の範囲内の温度で、2〜120分間加熱するのがより好ましく、80〜150℃の範囲内の温度で、5〜60分間加熱するのがさらに好ましい。
本発明の硬化物は、屈折率が非常に低く、かつ耐擦傷性に優れている。
【0121】
3.反射防止膜
本発明の反射防止膜は、上記硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物からなる低屈折率層を含む。さらに、本発明の反射防止膜は、低屈折率層の下に、高屈折率層、ハードコート層及び/又は基材等を含むことができる。
図1に、かかる反射防止膜10を示す。図1に示すように、基材12の上に、ハードコート層14、低屈折率層18が積層されている。
また、ハードコート層14と低屈折率層18の間にハードコート層よりも屈折率の高い高屈折率層や低屈折率層と高屈折率層の中間の屈折率を有する中屈折率層(図示せず。)を設けてもよい。
【0122】
(1)低屈折率層
低屈折率層は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物から構成される。硬化性樹脂組成物の構成等については、上述の通りであるため、ここでの具体的な説明は省略するものとし、以下、低屈折率層の屈折率及び厚さについて説明する。
【0123】
本発明の硬化性樹脂組成物は、連鎖球状のシリカ粒子を用いているため、粒子間に空隙が生じやすく、通常の球状シリカ粒子を用いた場合に比べて膜内に形成される空隙により屈折率が非常に低い硬化膜を形成することができる。
硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)、即ち、低屈折率膜の屈折率は1.43以下とすることが好ましい。この理由は、低屈折率膜の屈折率が1.43を超えると、反射防止効果が不十分になる場合があるためである。
従って、低屈折率膜の屈折率を1.40以下とするのがより好ましく、1.37以下とするのがさらに好ましい。
尚、低屈折率膜を複数層設ける場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率の値を有していればよく、従って、その他の低屈折率膜は1.46を超えた値であってもよい。
【0124】
また、低屈折率層を設ける場合、より優れた反射防止効果が得られることから、下地のハードコート層との間の屈折率差を0.05以上の値とするのが好ましい。この理由は、低屈折率層とハードコート層との間の屈折率差が0.05未満の値となると、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、低屈折率層と、下地のハードコート層との間の屈折率差を0.05〜0.7範囲内の値とするのがより好ましく、0.15〜0.5の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0125】
低屈折率層の厚さについても特に制限されるものではないが、例えば、50〜300nmであることが好ましい。この理由は、低屈折率層の厚さが50nm未満又は300nmを超えると、光干渉が生じて反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、低屈折率層の厚さを50〜250nmとするのがより好ましく、60〜150nmとするのがさらに好ましい。
尚、より高い反射防止性を得るために、低屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜300nmとすればよい。
【0126】
(2)高屈折率層
高屈折率層を形成するための硬化性組成物としては、特に制限されるものでないが、被膜形成成分として、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを含むことが好ましい。これらの樹脂であれば、高屈折率層として、強固な薄膜を形成することができ、結果として、反射防止膜の耐擦傷性を著しく向上させることができるためである。
しかしながら、通常、これらの樹脂単独での屈折率は1.45〜1.62であり、高い反射防止性能を得るには十分でない場合がある。そのため、高屈折率の無機粒子、例えば金属酸化物粒子を配合することがより好ましい。また、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化できる硬化性組成物を用いることができるが、より好適には生産性の良好な紫外線硬化性組成物が用いられる。
【0127】
高屈折率層の厚さは特に制限されるものではないが、例えば、50〜30,000nmであることが好ましい。この理由は、高屈折率層の厚さが50nm未満となると、低屈折率層と組み合わせた場合に、反射防止効果や基材に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが30,000nmを超えると、光干渉が生じて逆に反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、高屈折率層の厚さを50〜1,000nmとするのがより好ましく、60〜500nmとするのがさらに好ましい。
また、より高い反射防止性を得るために、高屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜30,000nmとすればよい。
尚、高屈折率層と基材との間にハードコート層を設ける場合には、高屈折率層の厚さを50〜300nmとすることができる。
【0128】
(3)ハードコート層
本発明の反射防止膜に用いるハードコート層の構成材料については特に制限されるものでない。このような材料としては、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0129】
また、ハードコート層の厚さについても特に制限されるものではないが、1〜50μmとするのが好ましく、5〜10μmとするのがより好ましい。この理由は、ハードコート層の厚さが1μm未満となると、反射防止膜の基材に対する密着力を向上させることができない場合があるためであり、一方、厚さが50μmを超えると、均一に形成するのが困難となる場合があるためである。
【0130】
(4)基材
本発明の反射防止膜に用いる基材の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)等からなる基材を挙げることができる。これらの基材を含む反射防止膜とすることにより、パソコン用モニターやテレビ、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオの画面表示部などに用いられる液晶表示装置やプラズマディスプレイ等の広範な反射防止膜の利用分野において、優れた反射防止効果を得ることができる。
【0131】
4.マイクロレンズ用反射防止膜
本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、図6に示すようにマイクロレンズ24表面に、本発明の組成物から得られた硬化膜である低屈折率膜22を有する反射防止膜20である。
尚、本発明において、マイクロレンズとは、マイクロレンズアレイ(マイクロレンズを複数形成した基板)を含む意味で使用している。
【0132】
低屈折率膜における屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)は、低い程、高屈折率膜と組み合わせた場合に優れた反射防止効果が得られる。低屈折率膜の屈折率は、高屈折率膜の屈折率よりも小さく、具体的には、1.45未満とするのが好ましい。屈折率が1.45を超えると、高屈折率膜と組み合わせた場合に、反射防止効果が著しく低下する場合がある。低屈折率膜の屈折率は、より好ましくは1.43以下であり、さらに好ましくは1.40以下である。
また、低屈折率膜を複数設ける場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率の値を有していればよい。従って、その他の低屈折率膜は1.45を超える場合があってもよい。
【0133】
また、低屈折率膜の厚さについても特に制限されないが、例えば、50〜300nmが好ましい。低屈折率膜の厚さが50nm未満となると、下地としての高屈折率膜に対する密着性が低下する場合がある。一方、厚さが300nmを超えると、光干渉が生じて、反射防止効果が低下する場合がある。低屈折率膜の厚さは、50〜250nmがより好ましく、60〜200nmがさらに好ましい。
尚、より高い反射防止性を得るために、低屈折率膜を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計の厚さを50〜300nmとすればよい。
【0134】
本発明の反射防止膜が形成されるマイクロレンズとしては、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等オンチップカラーフィルターの結像光学系あるいは光ファイバーコネクタの光学系等に、一般的に使用されているものであれば、問題なく使用できる。マイクロレンズの製造法としては、例えば、イオン交換法による分布屈折率型平板マイクロレンズを作る方法、感光性ガラスによる凸型マイクロレンズを作る方法、半導体集積回路用ポジ型フォトレジスト等を用いてメルトフロー法による作製法やメルトフローさせた感光性樹脂をマスクにしてドライエッチングにより下地にレンズ形状を転写させる方法等がある。
【0135】
本発明におけるマイクロレンズを形成する方法について述べる。マイクロレンズ作製用のアルカリ可溶性樹脂を含む放射線性樹脂組成物は、下地基板表面に塗布し、プレベークにより溶媒を除去することによって塗膜とすることができる。塗布方法として、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の各種の方法を採用することができる。また、プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常70〜90℃で1〜15分間程度の条件が最適である。次にプレベークされた塗膜に所定パターンマスクを介して紫外線等の放射線を照射し、さらにアルカリ現像液により現像し、不要な部分を除去して所定パターンを形成する。現像方法は液盛り法、ディッピング法、シャワー法等のいずれでもよく、現像時間は通常30〜180秒間である。
【0136】
上記現像液としては、アルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の1級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の2級アミン類;トリメチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類;ピロール、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状3級アミン類;ピリジン、コリジン、ルチジン、キノリン等の芳香族3級アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩の水溶液を使用することができる。また上記アルカリ水溶液に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒及び/又は界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0137】
現像後、流水洗浄を30〜90秒間行い、不要な部分を除去し、さらに圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、パターンが形成される。形成されたパターンに紫外線等の放射線を照射し、その後このパターンを、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、所定温度、例えば150〜250℃で、所定時間、例えばホットプレート上なら5〜30分間、オーブン中では30〜90分間加熱処理をすることにより、目的とするマイクロレンズであるパターン状塗膜を得ることができる。
【0138】
高屈折率材料や低屈折率材料から、それぞれ高屈折率膜や低屈折率膜を形成する場合、マイクロレンズに対してコーティングすることが好ましい。このようなコーティング方法としては、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法又はインクジェット法等の方法を用いることができる。このなかで、スピンコート法やディッピング法が均一な硬化膜が得られやすい点で優れている。
【0139】
また、高屈折率材料や低屈折率材料を硬化する手段も特に制限されないが、例えば、加熱することが好ましい。その場合、30〜200℃で、1〜180分間加熱するのが好ましい。このように加熱することにより、マイクロレンズや形成される反射防止膜を損傷することなく、より効率的に反射防止性に優れた反射防止用積層体を得ることができる。好ましくは、50〜180℃で、2〜120分間、より好ましくは、80〜150℃で、5〜60分間加熱する。
尚、高屈折率材料や低屈折率材料の硬化程度は、例えば、硬化性化合物としてメラミン化合物を用いた場合は、メラミン化合物のメチロール基又はアルコキシ化メチル基の量を赤外分光分析したり、又は、ゲル化率を、ソックスレー抽出器を用いて測定することにより、定量的に確認することができる。
【0140】
本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、図6に示す低屈折率膜の他に、各種機能層を含んでいてもよい。例えば、図7に示すように、マイクロレンズ24と高屈折率膜21との間にハードコート層23を介在させてもよい。即ち、マイクロレンズ24上に、ハードコート層23と、高屈折率膜21と、低屈折率膜22とを順次に含む反射防止膜20としてもよい。この場合高屈折率層21を設けることで反射率をさらに低減することができる。また、ハードコート層23を介在させることにより、高屈折率膜21のマイクロレンズ24に対する密着性をより向上させることができる。また、ハードコート層23の機械的特性により、反射防止膜20の耐久性をより向上させることができる。さらに、図12に示すようにハードコート層を設けず、低屈折率層22と高屈折率膜21とで反射防止膜を形成することもできる。この場合、高屈折率膜21がハードコート層の機能を担保しているため、反射防止膜20の構成がシンプルとなり、生産プロセスの簡略化と低コスト化が可能になる。
【0141】
以下、本例の特徴である高屈折率層とハードコート層について説明する。
また、高屈折率膜を設ける場合、より優れた反射防止効果が得られることから、高屈折率膜と低屈折率膜との間の屈折率差を0.05以上とするのが好ましい。屈折率差が0.05未満となると、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合がある。屈折率差は、0.1〜0.8がより好ましく、0.15〜0.7がさらに好ましい。
【0142】
次に、高屈折率膜及び低屈折率膜の厚さについて説明する。まず、高屈折率膜の厚さは特に制限されないが、例えば、50〜30,000nmが好ましい。高屈折率膜の厚さが50nm未満となると、低屈折率膜と組み合わせた場合に、反射防止効果やマイクロレンズに対する密着性が低下する場合がある。一方、厚さが30,000nmを超えると、光干渉が生じて、逆に反射防止効果が低下する場合がある。高屈折率膜の厚さは、50〜1,000nmがより好ましく、60〜500nmがさらに好ましい。
また、より高い反射防止性を得るために、高屈折率膜を複数層設けて多層構造とすることもでき、この場合には、複数の高屈折率膜の合計の厚さを50〜30,000nmとすればよい。
尚、高屈折率膜とマイクロレンズとの間にハードコート層を設ける場合には、高屈折率膜の厚さを50〜300nmとすることができる。
【0143】
ハードコート層は、例えば、SiO2、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂等の材料から構成するのが好ましい。
ハードコート層の厚さは特に制限されないが、具体的には、1〜50μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。厚さが1μm未満となると、反射防止膜のマイクロレンズに対する密着性を向上させることができない場合がある。一方、厚さが50μmを超えると、ハードコート層を、均一に形成するのが困難となる場合がある。
【0144】
5.平坦化膜
本発明の平坦化層は、前記本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させてなり、屈折率1.3〜1.5を有することが好ましい。屈折率が前記範囲であれば、フレアが有効に防止され、集光率が向上する。
【0145】
図8に示すように、一般に、固体撮像素子30は、CCD基板32上に設けられたフォトダイオード33、ハレーション防止層34、カラーレジスト層35、平坦化層36及びマイクロレンズ37を有している。
【0146】
ここで、本発明でいう、「平坦化層」とは、図8に示すようなマイクロレンズ37とカラーレジスト層35の間に設けられるもの(36a;カラーフィルタ平坦化層ともいう。)のみでなく、図9(a)に示すようなマイクロレンズ37を覆う形態のもの(36b;マイクロレンズ間の受光部平坦化層ともいう)、図9(b)に示すようなハレーション防止層34とカラーレジスト層35との間に設けられるもの(36c;受光部平坦化層ともいう)をも含む概念である。
【0147】
さらに、本発明の組成物によれば、放射線硬化性であることを利用して、マイクロレンズ間の受光部平坦化層(36b)の変形として、パターニング露光等の手段により、図10(a)及び(b)に示すような、マイクロレンズ37の周囲のみに平坦化層(36b−2)を設けることもできる。
【0148】
本発明の平坦化層、特に、上記本発明の組成物で、図9(a)に示すようにマイクロレンズ37上に低屈折率の平坦化層36bを設けることにより、固体撮像素子等のマイクロレンズで問題となるフレアを効果的に防止することができる。そして、本発明の組成物は放射線硬化性であるため、マスク露光等の手段により、図10に示すような個々のマイクロレンズの周囲のみに位置選択的に平坦化膜を形成することもできる。
【0149】
6.平坦化膜の製造方法
本発明の平坦化層は、上記本発明の組成物をコーティングした後、これを硬化させて形成される。このようなコーティング方法としては、ディッピング法、スプレー法、ダイコート法、スリットコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、又はインクジェット法等の方法を用いることができるが、スピンコート法が均一な硬化膜が得られ易い点で優れている。
【0150】
本発明の平坦化層は、上記本発明の組成物をスピンコート法により塗布して該組成物の塗布膜を形成した後に、放射線を照射して該塗布膜を硬化せしめることによって製造することができる。放射線を照射する際に、所定のパターンマスクを介して放射線を照射して該塗布膜の放射線が当たった部分のみを硬化せしめた後、現像液によって、放射線が当たらなかった部分の塗布膜を溶解して除去することによって、例えば、図10に示すような所望のパターンを有する平坦化層を形成することができる。
【0151】
現像液としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類を挙げることができる。
現像処理の条件は、シャワー現像方法、ディップ現像方法、ステップパドル現像方法、振動現像方法等の処理方法を用いることが好ましい。
【0152】
上記本発明の組成物は塗布均一性が良いため、ハジキ、塗布ムラ等が無く、特にスピンコート法による塗布性に優れている。
【0153】
7.固体撮像素子
本発明の固体撮像素子は、基材層、前記本発明の平坦化層及びマイクロレンズを含む。
前述したように、本発明の平坦化層は、(1)マイクロレンズとカラーレジスト層の間に設けられるもの(カラーフィルタ平坦化層)のみでなく、(2)マイクロレンズを覆う形態のもの(マイクロレンズ間の受光部平坦化層;図9(a)及び図10の形態のものを含む)、(3)ハレーション防止層とカラーレジスト層との間に設けられるもの(受光部平坦化層)の全てを含む。
【0154】
上記(1)の位置に平坦化層を設けることは従来から知られており、この位置に平坦化層を設けることにより、集光率の向上という効果が得られる。
上記(2)の位置に平坦化層を設けることにより、フレアを防止することができる。
上記(3)の位置に平坦化層を設けることにより、集光率の向上という効果が得られる。
上記(2)の位置に平坦化層を設けるに当たり、図8に示すようなパターン化された平坦化膜とすることにより、マイクロレンズ間に平坦化層が設けられていない部分ができ、この部分に配線取り出し場所を設けることができる。
【0155】
本発明の固体撮像素子を構成するマイクロレンズとしては、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等オンチップカラーフィルターの結像光学系あるいは光ファイバーコネクタの光学系等に、一般的に使用されているものであれば、問題なく使用できる。マイクロレンズの製造法としては、例えば、イオン交換法による分布屈折率型平板マイクロレンズを作る方法、感光性ガラスによる凸型マイクロレンズを作る方法、半導体集積回路用ポジ型フォトレジスト等を用いてメルトフロー法による作製法やメルトフローさせた感光性樹脂をマスクにしてドライエッチングにより下地にレンズ形状を転写させる方法等がある。
【0156】
本発明の固体撮像素子におけるマイクロレンズを形成する方法については、上述した通りであるためここでは省略する。本発明の固体撮像素子は、上記本発明の平坦化層の製造方法に従って製造することができる。
【実施例】
【0157】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0158】
(製造例1)
水酸基含有含フッ素重合体1の合成
内容積2.0リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル400g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)53.2g、エチルビニルエーテル36.1g、ヒドロキシエチルビニルエーテル44.0g、過酸化ラウロイル1.00g、上記式(7)で表されるアゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001(商品名)、和光純薬工業(株)製)6.0g及びノニオン性反応性乳化剤(NE−30(商品名)、旭電化工業(株)製)20.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
【0159】
次いでヘキサフルオロプロピレン120.0gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×105Paを示した。その後、70℃で20時間攪拌下に反応を継続し、圧力が1.7×105Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い220gの水酸基含有含フッ素重合体1を得た。これを水酸基含有含フッ素重合体とする。使用した単量体と溶剤を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
得られた水酸基含有含フッ素重合体に付き、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量及びアリザリンコンプレクソン法によるフッ素含量をそれぞれ測定した。また、1H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果、元素分析結果及びフッ素含量から、水酸基含有含フッ素重合体を構成する各単量体成分の割合を決定した。結果を表2に示す。但し、(a)と、(b−1)と、(c)との合計を100モル部とした。
【0162】
【表2】
【0163】
尚、VPS1001は、数平均分子量が7〜9万、ポリシロキサン部分の分子量が約10,000の、上記式(7)で表されるアゾ基含有ポリジメチルシロキサンである。NE−30は、下記式(10)において、nが9、mが1、uが30であるノニオン性反応性乳化剤である。
【化14】
【0164】
さらに、表2において、単量体と構造単位との対応関係は以下の通りである。
単量体 構造単位
ヘキサフルオロプロピレン (a)
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル) (a)
エチルビニルエーテル (b−1)
ヒドロキシエチルビニルエーテル (c)
NE−30 (f)
ポリジメチルシロキサン骨格 (d)
【0165】
(製造例2)
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体A−1(メタアクリル変性フッ素重合体)((A)成分)の合成
電磁攪拌機、ガラス製冷却管及び温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた水酸基含有含フッ素重合体1を50.0g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.01g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)370gを仕込み、20℃で水酸基含有含フッ素重合体1がMIBKに溶解して、溶液が透明、均一になるまで攪拌を行った。
次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを15.1gを添加し、溶液が均一になるまで攪拌した後、ジブチルチンジラウレート0.1gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間攪拌を継続することにより、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体A−1のMIBK溶液を得た。
この溶液をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、15.2質量%であった。使用した化合物、溶剤及び固形分含量を表3に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
(製造例3)
特定有機化合物(Ba)の合成1
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン221部、ジブチル錫ジラウレート1部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート222部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)549部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで、下記式(14)及び式(15)で示される化合物(Ba)を含む組成物(Ba−1)993部(反応に関与しなかったペンタエリスリトールテトラアクリレート220部を含む)を得た。
【化15】
[式中、「Acryl」は、アクリロイル基を示し、「Me」はメチル基を示す。]
【0168】
(製造例4)
特定有機化合物(Ba)の合成2
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン23.0部、ジブチル錫ジラウレート0.5部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート60.0部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)202部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで、上記式(14)及び式(15)で示される化合物(Ba)を含む組成物(Ba−2)285部を得た。
【0169】
(製造例5)
アクリル変性球状シリカ粒子X−1の調製
製造例3で合成した特定有機化合物(Ba−1)1.59部、メチルエチルケトンシリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST(数平均粒子径0.022μm、シリカ濃度30%))91.3部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液X−1を得た。X−1をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、35質量%であった。
このシリカ系粒子の平均粒子径は、20nmであった。ここで、平均粒子径は透過型電子顕微鏡により測定した(図5)。
【0170】
(製造例6)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−1((B)成分)の調製
パール状シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:PS−SO(シリカ濃度16%))80部と10%アンモニア水2部、エタノール200部を室温で混合し、攪拌しながらγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名:SZ6030)0.5部を加えた。その後、70℃で3時間反応させた。反応混合物を室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン200部を加え、エバポレーターを用いて固形分濃度30質量%になるまで濃縮した。ここで得られたメチルイソブチルケトン数珠状シリカゾル91.3部(固形分27.4部)と製造例3で合成した特定有機化合物(Ba−1)1.59部、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−1を得た。B−1をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、35質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が20〜50nm球状シリカ粒子が連結し、50〜150nm程度の長さを有していることが確認された(図2)。
【0171】
(製造例7)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−2((B)成分)の調製
製造例3で合成した特定有機化合物(Ba−1)1.59部、数珠状シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST−UP(シリカ濃度22%))125部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−2を得た。B−2をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、25質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が10〜20nm球状シリカ粒子が連結し、50〜150nm程度の長さを有していることが確認された(図3)。
【0172】
(製造例8)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−3((B)成分)の調製
製造例3で合成した特定有機化合物(Ba−1)1.59部、メチルエチルケトン分散シリカゾル(芙蓉化学工業(株)製、商品名:PL−1(シリカ濃度14%))196部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−3を得た。B−3をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、20質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が10〜20nm球状シリカ粒子が連結し、20〜50nm程度の長さを有していることが確認された(図4)。
【0173】
(製造例9)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−4((B)成分)の調製
パール状シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:PS−SO(シリカ濃度16%))80部と10%アンモニア水2部、エタノール200部を室温で混合し、攪拌しながらγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名:SZ6030)1.5部を加えた。その後、70℃で3時間反応させた。反応混合物を室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン200部を加え、エバポレーターを用いて固形分濃度35質量%になるまで濃縮することで無色透明の粒子分散液B−4を得た。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が20〜50nm球状シリカ粒子が連結し、50〜150nm程度の長さを有していることが確認された。
【0174】
(製造例10)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−5((B)成分)の調製
製造例4で合成した特定有機化合物(Ba−2)8.7部、数珠状シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST−UP(シリカ濃度22%))125部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−5を得た。B−5をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、25質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が10〜20nm球状シリカ粒子が連結し、50〜150nm程度の長さを有していることが確認された。
【0175】
(製造例11)
メタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−6((B)成分)の調製
製造例4で合成した特定有機化合物(Ba−2)8.7部、メチルエチルケトン分散シリカゾル(芙蓉化学工業(株)製、商品名:PL−1(シリカ濃度14%)196部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−6を得た。B−6をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、20質量%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ粒径が10〜20nm球状シリカ粒子が連結し、20〜50nm程度の長さを有していることが確認された。
【0176】
(製造例12)
前記式(13)で表される多官能アクリレート(D−1)の合成
攪拌機付きの容器内のイソホロンジイソシアネート18.8部と、ジブチル錫ジラウレート0.2部とからなる溶液に対し、新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)93部を、10℃、1時間の条件で滴下した後、60℃、6時間の条件で攪拌し、反応液とした。
この反応液中の生成物、即ち、製造例3と同様にして残存イソシアネート量をFT−IRで測定したところ、0.1質量%以下であり、反応がほぼ定量的に行われたことを確認した。また、分子内に、ウレタン結合、及びアクリロイル基(重合性不飽和基)とを含むことを確認した。
以上により、前記式(13)で示される化合物75部のほか、反応に関与しなかったペンタエリスリトールテトラアクリレート37部が混在している組成物(D−1)を得た。
【0177】
(製造例13)
シリカ粒子含有ハードコート層用組成物の調製
紫外線を遮蔽した容器中において、製造例5で合成したアクリル変性球状シリカ粒子X−1を78.4部(固形分として27.4部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート65部、製造例12で合成したD−1を2.6部、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン5部、MIBK45部を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液のハードコート層用組成物を得た。この組成物をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、50質量%であった。
【0178】
(製造例14)
硬化性樹脂組成物塗工用基材の作製
片面易接着ポリエチレンテレフタレートフィルムA4100(東洋紡績(株)製、膜厚188μm)の易接着処理面に、製造例13で調製したシリカ粒子含有ハードコート層用組成物をワイヤーバーコータで膜厚3μmとなるように塗工し、オーブン中、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、空気下、高圧水銀ランプを用いて、0.9J/cm2の光照射条件で紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物塗工用基材を作製した。
【0179】
(実施例1)
表4に示すように、製造例2で得たエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体A−1のMIBK溶液を32.9g((A)成分の固形分として5g)、製造例6で得られたメタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−1を234.5g((B)成分を主成分とする固形分として82.1g)、光重合開始剤((C)成分)として2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)5g、(D)成分として製造例12で得られたD−1を7.9g及びMIBK1720gを、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて1時間攪拌し均一な硬化性樹脂組成物を得た。また、製造例2の方法により固形分濃度を求めたところ5質量%であった。
【0180】
(実施例2〜4、比較例1、2)
表4の組成に従った他は、実施例1と同様にして各硬化性樹脂組成物を得た。表中の成分組成の単位は、有機溶剤を除く固形分全量に対する質量%である。
【0181】
【表4】
【0182】
(実施例5〜12、比較例3〜6)
表5又は表6の組成に従った他は、実施例1と同様にして各硬化性樹脂組成物を得た。表中の成分組成の単位は、有機溶剤を除く固形分全量に対する質量%である。
【0183】
【表5】
【0184】
【表6】
【0185】
表4〜6中の商品名は、下記のものを示す。
SR399E:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー(株)製)
Irg.907:2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
MEK−ST−UP:日産化学工業(株)製連鎖球状シリカゾル
【0186】
<反射防止フィルムの製造及び評価>
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた硬化性樹脂組成物を用いて反射防止フィルムを製造し、下記特性について評価した。結果を表4に示す。
【0187】
(1)外観の評価
各硬化性樹脂組成物を、ワイヤーバーコータを用いて製造例10で得られた硬化性樹脂組成物塗工用基材上に膜厚0.1μmとなるように塗工し、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、窒素気流下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で紫外線を照射し、反射防止膜層を作製した。得られた反射防止膜の外観を目視で確認し、下記基準に従って評価した。
○:塗布ムラなし
△:若干塗布ムラあり
×:全面に塗布ムラあり
【0188】
(2)硬化膜の屈折率測定
各硬化性樹脂組成物をスピンコーターによりシリコンウェハー上に、乾燥後の厚さが約0.1μmとなるように塗布後、窒素下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で紫外線を照射して硬化させた。得られた硬化物について、エリプソメーターを用いて25℃での波長589nmにおける屈折率(nD25)を測定した。
【0189】
(3)反射防止膜の反射率測定
上記(1)で得られた反射防止膜の裏面を黒色スプレーで塗装し、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ自記分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)により、波長340〜700nmの範囲で反射率をマイクロレンズ側から測定して評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における反射防止用積層体(反射防止膜)の反射率を測定した。
【0190】
(4)耐擦傷性テスト(スチールウール耐性テスト)
上記(1)で得られた硬化膜を、スチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール(株)製)を学振型摩擦堅牢度試験機(AB-301、テスター産業(株)製)に取りつけ、硬化膜の表面を荷重500gの条件で10回繰り返し擦過し、当該硬化膜の表面における傷の発生の有無を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
◎:硬化膜の剥離や傷の発生がほとんど認められない。
○:硬化膜にわずかな細い傷が認められる。
△:硬化膜全面に筋状の傷が認められる。
×:硬化膜の剥離が生じる。
【0191】
(5)耐汚染性テスト
上記(1)で得られた反射防止膜に指紋をつけ、不織布(ベンコットS−2、旭化成(株)製)にて塗膜表面を拭き取った。耐汚染性を、以下の基準に従って評価した。
○:塗膜表面の指紋跡がほぼ完全に拭き取られた。
×:拭き取られずに指紋跡が試料表面に残存した。
【0192】
表4の結果から、重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面変性された連鎖球状のシリカ粒子を用いることにより、外観が良好で、屈折率が1.27〜1.36と非常に低く、反射率も0.2以下であることがわかる。(実施例1〜4)
また、(メタ)アクリレート化合物を配合することにより、耐擦傷性が向上することがわかる。(実施例4)
【0193】
製造例15
[マイクロレンズ用アルカリ可溶性樹脂の合成(1)]
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を装着したセパラブルフラスコにp−tert−ブトキシスチレン95g、スチレン5g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10g、ジオキサン100gを仕込み、30分間窒素でパージした後、セパラブルフラスコを油浴に浸し、内温を80℃に保ち、攪拌しながら5時間重合を行い、樹脂を合成した。得られた樹脂溶液に7.2%塩酸水溶液60gを加え、80℃で3時間攪拌し、t−ブトキシ基の加水分解によりポリマーに水酸基を導入した。反応混合物をメタノール/水混合液(メタノール:水=2:8(容積比))に注ぎ、得られたスラリーをメタノール/水混合液で2回再沈精製した。50℃で12時間減圧乾燥させ、白色樹脂粉末を得た(以下、この樹脂を「樹脂A」と称する)。得られた樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が10,000であった。
【0194】
製造例16
[マイクロレンズ用アルカリ可溶性樹脂の合成(2)]
製造例15と同様なセパラブルフラスコに、ブタジエン7.5g、メタクリル酸20.0g、メタクリル酸ジシクロペンタニル22.5g、メタクリル酸グリシジル50.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4.0g、ジグライム250.0gを仕込み、30分間窒素でパージした後、セパラブルフラスコを油浴に浸し、内温を80℃に保ち、攪拌しながら4時間重合を行い、樹脂を合成した(以下、この樹脂を「樹脂B」と称する)。
【0195】
製造例17
[マイクロレンズ用感光性樹脂組成物の調製]
製造例15で得られた樹脂A100質量部に対して、製造例16で得られた樹脂B40.0質量部(固形分換算)、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(1.9モル)との縮合物30.0質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製)30.0質量部、サイメル300(三井サイアナミッド(株)製)10.0質量部、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−S−トリアジン0.5質量部を混合し、全体の固形分濃度が32%になるように3−メトキシプロピオン酸メチル(MMP)で希釈・溶解させた後、孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、マイクロレンズ用感光性樹脂組成物を得た。
【0196】
製造例18
[マイクロレンズの作製]
製造例17で得られたマイクロレンズ用感光性樹脂組成物を石英基板に、2.5μmの膜厚になるようにスピンコートし、70℃にて3分間ホットプレート上でプレベークした。ニコン製NSR1755i7A縮小投影露光機(NA=0.50,λ=365nm)で露光を行った後、1.5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃、1分間現像した。水でリンスし、乾燥して石英板上にパターンを形成した。得られたパターン付き石英板を10mW/cm2の紫外線で60秒間照射した。その後ホットプレート上、150℃で10分間加熱してパターンをメルトフローさせマイクロレンズを形成した。
【0197】
<マイクロレンズ上の反射防止膜(低屈折率膜)の形成及び評価>
製造例18で得られたマイクロレンズ付き基板に、実施例5〜8及び比較例3、4で得られた低屈折率の硬化性樹脂組成物を、スピンコート装置を用いて塗布した。当該硬化性樹脂組成物を基板上に1mL滴下し、500rpmで30秒、2000rpmで3分間でスピンコートした。次いで、高圧水銀灯1J/cm2で硬化させ、膜厚約0.1μmの低屈折率硬化膜をマイクロレンズ上に形成した。
【0198】
このようにして、図6に示す反射防止膜を形成したマイクロレンズを作製した。
このマイクロレンズ上の反射防止膜の性能を以下の方法により評価した。結果を表5に示す。
【0199】
(1)屈折率
各実施例及び比較例で調製した硬化性樹脂組成物を、4インチシリコンウェハー上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。
得られたシリコンウェハー上の各低屈折率硬化膜について、エリプソメーターを用いて、25℃での波長589nmにおける屈折率(nD25)を測定した。
【0200】
(2)塗布性
各実施例及び比較例で調製した低屈折率の硬化性樹脂組成物を、マイクロレンズ付き基板上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。得られた低屈折率膜を有するマイクロレンズ付き基板を以下の基準で目視評価した。
◎:基板全体に塗布ムラ、風紋、スジ等が全く無く、均一塗布されている。
○:基板のごく一部に塗布ムラ等があるものの全体的に均一に塗布されている。
△:基板の半分以上に塗布ムラ、風紋、スジがある。
×:基板全体に塗布ムラ、風紋、スジがある。
【0201】
(3)反射防止性
反射防止膜付きマイクロレンズ基板の裏面を黒色スプレーで塗装し、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ自記分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)により、波長340〜700nmの範囲で反射率をマイクロレンズ側から測定して評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における反射防止膜の反射率を測定し、そのうち波長550nmにおける光の反射率から、反射防止性を、以下の基準で評価した。
◎:反射率が0.5%以下である。
○:反射率が0.5%を超え1.0%以下である。
△:反射率が1.0%を超え1.5%以下である。
×:反射率が1.5%を超える。
【0202】
(4)透明性
反射防止膜付きマイクロレンズ基板の濁度(Haze値)を、カラーヘイズメーターを用いて測定し、以下の基準で評価した。
○:Haze値が2%以下である。
△:Haze値が2%を超え3%以下である。
×:Haze値が3%を超える。
【0203】
(5)基材密着性
反射防止膜付きマイクロレンズ基板上に6cmのセロハンテープを3cm(持ちしろ3cm)接着させ、手で瞬間的に剥がした。セロハンテープの剥離面を以下の基準で目視評価した。
○:変化なし。
△:一部に積層体の剥離が確認できる。
×:積層体が全体的に剥離している。
【0204】
(6)耐光性
反射防止膜付きマイクロレンズ基板の反射率を、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ自記分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)で測定して評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における硬化膜の反射率を測定し、さらに硬化膜に対して、QUV促進耐候試験機(Q−Panel社製)を用いて、150時間紫外線を照射した後、同様に反射率を測定して、以下の基準で評価した。
○:耐光性試験前後で、反射率曲線の最低反射率の波長シフトが、−50nm以下、又は最高反射率値の減少が1%以下である。
×:耐光性試験前後で、反射率曲線の最低反射率の波長シフトが、−100nm以下、又は最高反射率値の減少が2%以下である。
【0205】
表5の結果から、本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、煩瑣防止性に優れ、透明性に優れていることがわかる。
【0206】
<マイクロレンズ上の平坦化膜の形成及び評価>
製造例18で得られたマイクロレンズ付き基板に、実施例9〜12及び比較例5、6で得られた低屈折率の硬化性樹脂組成物を、スピンコート装置を用いて塗布した。当該硬化性樹脂組成物を基板上に10mL滴下し、500rpmで5秒、1000rpmで1分間スピンコートし、80℃で1分間乾燥させた。次いで、高圧水銀灯1J/cm2で硬化させ、マイクロレンズ上に低屈折率の平坦化膜を形成した。得られた平坦化膜を、下記特性について評価した。結果を表6に示す。
【0207】
(1)屈折率
各実施例及び比較例で調製した硬化性樹脂組成物を、4インチシリコンウェハー上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。
得られたシリコンウェハー上の各低屈折率硬化膜について、エリプソメーターを用いて、25℃での波長589nmにおける屈折率(nD25)を測定した。
【0208】
(2)塗布性
各実施例及び比較例で調製した低屈折率の硬化性樹脂組成物を、マイクロレンズ付き基板上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。得られた低屈折率膜を有するマイクロレンズ付き基板を以下の基準で目視評価した。
◎:基板全体に塗布ムラ、風紋、スジ等が全く無く、均一塗布されている。
○:基板のごく一部に塗布ムラ等があるものの全体的に均一に塗布されている。
△:基板の半分以上に塗布ムラ、風紋、スジがある。
×:基板全体に塗布ムラ、風紋、スジがある。
【0209】
(3)耐アルカリ性
各実施例及び比較例で調製した低屈折率の硬化性樹脂組成物を、マイクロレンズ付き基板上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。得られた硬化膜を2.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に23℃にて30分間浸漬した。水でリンスし乾燥した後の硬化膜の外観を目視にて観察し、初期と比較して変化があったものを×、変化がなかったものを○とした。
【0210】
(4)耐有機溶剤性
各実施例及び比較例で調製した低屈折率の硬化性樹脂組成物を、マイクロレンズ付き基板上にスピンコーター(MIKASA社製1H−360S型)を用いて塗布した。スピンコーターの回転条件及び硬化条件は、前記低屈折率膜の形成と同様にして行った。得られた硬化膜をアセトンに23℃にて30分間浸漬した。水でリンスし乾燥した後の硬化膜の外観を目視にて観察し、初期と比較して変化があったものを×、変化がなかったものを○とした。
【0211】
表6の結果から、本発明の放射線硬化性樹脂組成物によれば、塗布性、耐アルカリ性及び耐有機溶剤性に優れた、低屈折率の硬化物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、塗工性及び耐久性に優れ、かつ屈折率及び反射率が非常に低い硬化膜を形成することができる。それ故、特に反射防止膜の低屈折率層形成用材料として有用である。
【0213】
本発明の硬化性組成物は、屈折率が低く、耐光性に優れた硬化膜を与え、しかも塗工性もよい。また、本発明のマイクロレンズ用反射防止膜は、空気媒体とマイクロレンズとの屈折率差に起因するレンズ表面での光の反射を抑制できるため、マイクロレンズの光線透過率を向上させることができる。従って、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等オンチップカラーフィルターの結像光学系あるいは光ファイバーコネクタの光学系等のマイクロレンズに好適に使用できる。特に、固体撮像素子の感光部に入射する光量を増加できることから、固体撮像素子用のマイクロレンズに好適に使用できる。
【0214】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低屈折率でハジキ、塗布むらが無く、特にスピンコート法による塗布性に優れているため、均一な平坦化層を形成することができる。
本発明の平坦化層は、低屈折率で、透明性に優れている。
本発明の平坦化層は、マスク露光等の手段により、位置選択的に形成することができるため、配線の取り出し場所の形成が容易となる。
本発明の平坦化層を有する固体撮像素子は、固体撮像素子等のマイクロレンズで問題となるフレアが有効に防止され、集光率が向上する。
本発明の平坦化層は、固体撮像素子、CCD、CMOSその他レンズ形状の物品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明の一実施形態による反射防止膜の断面図である。
【図2】製造例6で作製したメタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−1(数珠状シリカ粒子)の電子顕微鏡写真である。
【図3】製造例7で作製したメタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−2(数珠状シリカ粒子)の電子顕微鏡写真である。
【図4】製造例8で作製したメタアクリル変性連鎖球状シリカ粒子B−3の電子顕微鏡写真である。
【図5】製造例5で作製したアクリル変性球状シリカ粒子X−1(数珠状シリカ粒子)の電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の一実施形態であるマイクロレンズ用反射防止膜の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態であるマイクロレンズ用反射防止膜の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態である固体撮像素子の断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態である固体撮像素子の断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態である、マイクロレンズ上に位置選択的に平坦化層を形成した固体撮像素子のマイクロレンズ部分の断面図(a)及び平面図(b)である。
【図11】実施例で形成したマイクロレンズ用反射防止膜の断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態であるマイクロレンズ用反射防止膜の断面図である。
【符号の説明】
【0216】
10 反射防止膜
12 基材
14 ハードコート
18 低屈折率層
20 マイクロレンズ用反射防止膜
21 高屈折率膜
22 低屈折率膜
23 ハードコート層
24 マイクロレンズ
25 石英基板
30 固体撮像素子
32 CCD基板
33 フォトダイオード
34 ハレーション防止層
35 カラーレジスト層
36a、36b、36b−2、36c 平坦化層
37 マイクロレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)を含有する硬化性樹脂組成物であって、有機溶剤以外の組成物全量に対して、
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体 1〜90質量%
(B)重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面変性された連鎖球状のシリカ粒子 10〜99質量%
を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体が、
1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、
水酸基含有含フッ素重合体と、
を反応させて得られるエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のエチレン性不飽和基が(メタ)アクリル基である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)連鎖球状シリカ粒子が、2個以上の、数平均粒径1〜100nmの略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で連結した形態である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)連鎖球状シリカ粒子が、前記略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で繋がった数珠状の形態、又は前記略球状のシリカ粒子が直鎖状に繋がった形態を有する請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(C)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(D)(メタ)アクリレート化合物を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D)(メタ)アクリレート化合物が、分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有する請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
反射防止膜用である請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物からなる低屈折率層を有する反射防止膜。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化物からなる低屈折率層を有するマイクロレンズ用反射防止膜。
【請求項13】
請求項10に記載の硬化物からなる低屈折率膜と、これより高屈折率の硬化膜とを有する請求項12に記載のマイクロレンズ用反射防止膜。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる平坦化層。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をスピンコート法により塗布して該組成物の塗布膜を形成した後に、放射線を照射して該塗布膜を硬化せしめる工程を有する平坦化層の製造方法。
【請求項16】
パターンマスクを介して前記放射線を照射して前記塗布膜を硬化せしめた後、現像処理することによって、パターン化された平坦化層を形成する請求項15に記載の平坦化層の製造方法。
【請求項17】
少なくとも基材層、請求項14に記載の平坦化層、及びマイクロレンズを含む固体撮像素子。
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)を含有する硬化性樹脂組成物であって、有機溶剤以外の組成物全量に対して、
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体 1〜90質量%
(B)重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面変性された連鎖球状のシリカ粒子 10〜99質量%
を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体が、
1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、
水酸基含有含フッ素重合体と、
を反応させて得られるエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のエチレン性不飽和基が(メタ)アクリル基である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)連鎖球状シリカ粒子が、2個以上の、数平均粒径1〜100nmの略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で連結した形態である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)連鎖球状シリカ粒子が、前記略球状のシリカ粒子が直鎖状又は分岐した形で繋がった数珠状の形態、又は前記略球状のシリカ粒子が直鎖状に繋がった形態を有する請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(C)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(D)(メタ)アクリレート化合物を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D)(メタ)アクリレート化合物が、分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有する請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
反射防止膜用である請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物からなる低屈折率層を有する反射防止膜。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化物からなる低屈折率層を有するマイクロレンズ用反射防止膜。
【請求項13】
請求項10に記載の硬化物からなる低屈折率膜と、これより高屈折率の硬化膜とを有する請求項12に記載のマイクロレンズ用反射防止膜。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる平坦化層。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をスピンコート法により塗布して該組成物の塗布膜を形成した後に、放射線を照射して該塗布膜を硬化せしめる工程を有する平坦化層の製造方法。
【請求項16】
パターンマスクを介して前記放射線を照射して前記塗布膜を硬化せしめた後、現像処理することによって、パターン化された平坦化層を形成する請求項15に記載の平坦化層の製造方法。
【請求項17】
少なくとも基材層、請求項14に記載の平坦化層、及びマイクロレンズを含む固体撮像素子。
【図1】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2007−327018(P2007−327018A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169484(P2006−169484)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】
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