説明

硬化性樹脂組成物

【課題】エポキシ基含有化合物と加水分解性ケイ素含有基含有化合物とを含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の耐熱性に優れ、また、加水分解性ケイ素含有基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の強度特性に優れる、硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】エポキシ基含有化合物(A)と、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)と、エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)とを含有し、前記エポキシ基含有化合物(A)および前記エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、シロキサン骨格を有し、前記エポキシ基含有化合物(A)と前記加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の質量比が、2/98〜98/2である、硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物の強度特性または耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂の硬化物の強靱性、伸び等を向上させることを目的として、変成シリコーン樹脂等と呼ばれる加水分解性ケイ素含有基含有化合物をエポキシ樹脂組成物に配合する手法が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。
また、逆に、加水分解性ケイ素含有基含有化合物の硬化物の強度特性等を向上させることを目的として、エポキシ樹脂を加水分解性ケイ素含有基含有化合物の組成物に配合する手法が知られている(例えば、特許文献3および4参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−273625号公報
【特許文献2】特開平5−124017号公報
【特許文献3】特開平9−279047号公報
【特許文献4】特開平10−140786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、エポキシ樹脂硬化物には、用途に応じて高度の性能が要求されるようになっており、例えば、プリント基板、半導体封止剤等の電子部品や、航空機分野においては、耐熱性の向上が望まれている。
しかしながら、本発明者の知見によれば、特許文献1および2に記載されているエポキシ樹脂組成物は、本来、土木・建築分野における外壁のタイル用接着剤として利用されるなど、その用途に耐熱性が要求されていなかったため、優れた強靱性は示しても、優れた耐熱性を示さず、したがって、高い耐熱性を要求される用途には用いることができなかった。
【0005】
また、本発明者の知見によれば、特許文献3および4に記載されている加水分解性ケイ素含有基含有化合物の組成物は、硬化物の強度特性に向上の余地があった。
【0006】
したがって、本発明は、エポキシ基含有化合物と加水分解性ケイ素含有基含有化合物とを含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の耐熱性に優れ、また、加水分解性ケイ素含有基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の強度特性に優れる、硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ基含有化合物と、加水分解性ケイ素含有基含有化合物とを特定の割合で含有する組成物に、エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物を含有させ、更に、エポキシ基含有化合物およびエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物の少なくとも一方に、アルコキシシランを加水分解縮合して得られる骨格を有するものを用いることにより、硬化物の耐熱性または強度特性が優れたものになることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)を提供する。
【0009】
(1)エポキシ基含有化合物(A)と、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)と、エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)とを含有し、
前記エポキシ基含有化合物(A)および前記エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、シロキサン骨格を有し、
前記エポキシ基含有化合物(A)と前記加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の質量比が、2/98〜98/2である、硬化性樹脂組成物。
【0010】
(2)前記エポキシ基と反応しうる官能基が、メルカプト基および/またはアミノ基である、上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
(3)前記シロキサン骨格を有する、前記エポキシ基含有化合物(A)および前記エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、アルコキシシランと、そのケイ素原子に対してモル比で0.5〜1.5倍の水とが反応して得られたものである、上記(1)または(2)に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の耐熱性に優れ、また、加水分解性ケイ素含有基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の強度特性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物(以下「本発明の組成物」という。)は、エポキシ基含有化合物(A)と、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)と、エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)とを含有し、前記エポキシ基含有化合物(A)および前記エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、アルコキシシランを加水分解縮合して得られる骨格を有し、前記エポキシ基含有化合物(A)と前記加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の質量比が、2/98〜98/2である。
【0014】
<エポキシ基含有化合物(A)>
本発明に用いられるエポキシ基含有化合物(A)は、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エポキシ樹脂が好適に挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール化合物とジシクロペンタジエンの共重合体を原料とするエポキシ樹脂、ジグリシジルレゾルシノール、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、トリスグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミン)、脂環式エポキシ樹脂(例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド等)が挙げられる。これらは、1種単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。
中でも、室温で液状であるため作業性に優れ、更に、強度および接着性に優れる点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0015】
また、本発明に用いられるエポキシ基含有化合物(A)として、シロキサン骨格を有するエポキシ基含有化合物(以下「エポキシ基含有シリコーン化合物」ともいう。)を用いることもできる。
エポキシ基含有シリコーン化合物は、分子内に、少なくとも1個のエポキシ基と、シロキサン骨格とを有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、架橋性のシリル基を有する下記一般式(1)で表されるエポキシ基含有アルコキシシランの縮合物が好適に挙げられる。ここで、エポキシ基含有アルコキシシランとは、分子内に、少なくとも1個のエポキシ基と、少なくとも1個のアルコキシシリル基とを有する化合物を意味する。
【0016】
【化1】


【0017】
式中、mは2または3を表す。
1は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であるのが好ましく、メチル基、エチル基であるのがより好ましい。R1が複数ある場合は、複数のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
2は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であるのが好ましく、メチル基、エチル基であるのがより好ましい。R2が複数ある場合は、複数のR2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
3は、窒素原子または酸素原子を含んでいてもよい有機基を表し、酸素原子を含んでいてもよい炭素数3〜6の2価の非環状脂肪族基、炭素数6〜10の2価の環状脂肪族基であるのが好ましい。
【0018】
上記エポキシ基含有アルコキシシランとしては、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランまたは3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等の2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルアルキルジアルコキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
また、上記エポキシ基含有アルコキシシランとしては、市販品を加水分解縮合して使用することもでき、具体的には、例えば、A186、A187(日本ユニカー社製);KBE−402、KBE−403(信越化学工業社製)を用いることができる。
【0020】
上記エポキシ基含有シリコーン化合物としては、具体的には、例えば、下記式(2)〜(4)に示す鎖状、ラダー状もしくはかご状のシロキサン骨格、またはこれらが混在するシロキサン骨格に、エポキシ基が有機基を介して結合した構造のものが挙げられる。中でも、低粘度で、作業性、貯蔵安定性に優れるため、下記式(2)で表す鎖状構造を有することが好ましい。
なお、下記式(2)で表される鎖状のシロキサン骨格を形成する場合においては、シロキサン結合およびエポキシ基との結合に関与しないシラン残基は、アルコキシシリル基および/またはシラノール基である。また、これらの縮合物は、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランを原料として製造することが、原料の入手しやすさおよび反応性が高いことから好ましい。
【0021】
【化2】


【0022】
上記式(2)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0023】
上記エポキシ基含有シリコーン化合物は、上記一般式(1)で表されるようなエポキシ基含有アルコキシシランを加水分解縮合して得られたものであるのが好ましいが、特にこれに限定されず、シロキサン骨格を形成した後に、シロキサン骨格にエポキシ基を有する化合物を導入することにより合成してもよい。
ここで、本明細書において「加水分解縮合」とは、アルコキシシリル基を加水分解させ、生成したヒドロキシシリル基を他のアルコキシシリル基との脱アルコール反応により縮合させるか、ヒドロキシシリル基同士の脱水反応により縮合させることを意味する。
なお、加水分解および縮合反応によるシロキサン結合の形成時にアルコールが生成するため、エポキシ基含有シリコーン化合物の縮合物の製造時には、アルコールを減圧除去するのが好ましい。
【0024】
また、上記エポキシ基含有シリコーン化合物は、エポキシ基含有アルコキシシランと、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、イソシアネート基等の官能基を分子内に有するシラン化合物(以下「置換アルコキシシラン」ともいう。);テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン;またはこれらの縮合体を併用して縮合したものでもよい。エポキシ基以外の官能基を有するシラン化合物を併用する場合、少なくとも60モル%のエポキシ基含有アルコキシシランを含むことが、耐熱性または強度特性を向上させる点で好ましい。この特性により優れる点から、80モル%以上のエポキシ基含有アルコキシシランを含むことがより好ましい。
【0025】
また、上記エポキシ基含有シリコーン化合物が、エポキシ基をこのエポキシ基含有シリコーン化合物のケイ素原子に対して60〜100モル%有することが、耐熱性に優れる点から好ましい。この特性により優れる点から、エポキシ基含有シリコーン化合物のケイ素原子に対して80〜100モル%のエポキシ基を有することがより好ましい。
【0026】
エポキシ基含有シリコーン化合物は、アルコキシシラン(エポキシ基含有アルコキシシランおよび所望により併用される各種アルコキシシラン)と、そのケイ素原子に対してモル比で0.5〜1.5倍の水とが反応して得られたものであるのが好ましい。この条件で加水分解縮合を行い、得られるエポキシ基含有シリコーン化合物の縮合度を調整することにより、低粘度で、貯蔵安定性に優れるエポキシ基含有シリコーン化合物が得られる。これらの特性により優れる点から、反応させる水の量は、アルコキシシランのケイ素原子に対して、モル比で、より好ましくは0.5〜1.3倍、更に好ましくは0.6〜1.2倍である。
なお、上記反応において、未反応の原料が残留したり、縮合度の異なる化合物の混合物となったりした場合であっても、反応生成物を精製せずにそのまま用いることができる。
【0027】
上記エポキシ基含有シリコーン化合物の重量平均分子量は、粘度が高くなり過ぎない点から450〜10,000であるのが好ましい。これらの特性により優れる点から、700〜9,000であるのがより好ましく、1,000〜8,000であるのが更に好ましい。
【0028】
上記加水分解縮合に使用する触媒としては、従来公知のアルコキシシラン類の縮合を促進する触媒のうち、エポキシ基を開環させないものを使用することができる。具体的には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン等の金属;これらの酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシドが挙げられる。中でも、有機スズ、有機酸スズ、アルコキシチタンが好ましく、特にジブチルスズジラウレートが好ましい。触媒の添加量としては、エポキシ基含有アルコキシシランと置換シランの合計に対して、0.01〜5質量%であるのが好ましく、0.05〜3質量%であるのがより好ましい。
【0029】
上記加水分解縮合は、無溶剤でまたは溶剤中で行うことができる。溶剤としては、エポキシ基含有アルコキシシランおよび置換アルコキシシランが溶解する溶剤であれば特に限定されない。このような溶剤としては、具体的には、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アルコール(例えば、メタノール)等の極性溶媒が挙げられる。
【0030】
<加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)>
本発明に用いられる加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)は、加水分解性ケイ素含有基を、分子内に少なくとも1個有する有機重合体である。本発明においては、加水分解性ケイ素含有基は、加水分解性ケイ素含有基含有化合物の分子内の末端に存在していても、側鎖に存在していてもよく、また、両方に存在していてもよい。
【0031】
加水分解性ケイ素含有基含有化合物の主鎖としては、例えば、アルキレンオキシド重合体等のポリエーテル、ポリエステル、エーテル・エステルブロック共重合体、ビニル系重合体、ビニル共重合体、ジエン系重合体、飽和炭化水素が挙げられる。
ポリエーテルは、例えば、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH(C25)O−、−CH(CH3)CH2O−、−CH(C25)CH2O−、−CH2CH2CH2O−または−CH2CH2CH2CH2O−で表される繰り返し単位を有するものが挙げられる。
【0032】
ポリエーテルは、これらの繰り返し単位の1種のみからなっていてもよく、2種以上からなっていてもよい。
【0033】
ビニル系重合体、ビニル系共重合体、ジエン系重合体および飽和炭化水素としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0034】
加水分解性ケイ素含有基含有化合物の主鎖は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0035】
加水分解性ケイ素含有基は、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基および/または加水分解性基を有し、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより縮合反応を起こしてシロキサン結合を形成することにより架橋しうるケイ素含有基である。例えば、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基が挙げられる。具体的には、下記式で例示される、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が好適に用いられる。
【0036】
【化3】


【0037】
中でも、取扱いが容易である点で、アルコキシシリル基が好ましい。
アルコキシシリル基のケイ素原子に結合するアルコキシ基は、特に限定されないが、原料の入手が容易なことからメトキシ基、エトキシ基またはプロポキシ基が好適に挙げられる。
アルコキシシリル基のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基は、特に限定されず、例えば、水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数が20以下である、アルキル基、アルケニル基もしくはアリールアルキル基が好適に挙げられる。
【0038】
加水分解性ケイ素含有基含有化合物としては、2官能以上、即ち、分子内にアルコキシシリル基を2個以上有するアルコキシシラン類が好ましく、2〜20官能のアルコキシシラン類が原料の入手が容易なことからより好ましい。
【0039】
加水分解性ケイ素含有基含有化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0040】
加水分解性ケイ素含有基含有化合物の分子量は特に限定されないが、高分子のものは高粘度であり、ハンドリングしにくい場合があるため、数平均分子量50,000以下であるのが好ましい。
このような加水分解性ケイ素含有基含有化合物は、公知の方法によって製造することができる。市販品としては、例えば、鐘淵化学工業社製のMSポリマー、サイリル、EPION;旭硝子社製のエクセスターが挙げられる。
【0041】
<エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)>
本発明に用いられるエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)は、エポキシ基と反応しうる官能基を、分子内に少なくとも1個有する化合物である。
エポキシ基と反応しうる官能基は、特に限定されず、例えば、メルカプト基、アミノ基(イミノ基を含む。以下同じ。)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基が挙げられる。中でも、メルカプト基および/またはアミノ基であるのが好ましい。エポキシ基と反応しうる官能基がアミノ基であると、室温硬化が可能であり、高エネルギーを必要としない点で優れる。また、エポキシ基と反応しうる官能基がメルカプト基であると、上述した利点に加え、室温での硬化速度が速く、5℃程度での低温硬化も可能となる。
【0042】
エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)としては、例えば、1,3−ベンゼンチオール、4,4′−ジアミノジフェニルスルフォン(DDS)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、末端にチオール基を有するポリサルファイド樹脂(例えば、チオコールケミカル社製のLP−3)が挙げられる。
【0043】
また、本発明に用いられるエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)として、シロキサン骨格を有するエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物を用いることもできる。
シロキサン骨格を有するエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物は、分子内に、少なくとも1個のエポキシ基と反応しうる官能基と、シロキサン骨格とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、少なくとも1個のメルカプト基と、シロキサン骨格とを有する化合物(以下「メルカプト基含有シリコーン化合物」という。)、少なくとも1個のアミノ基と、シロキサン骨格とを有する化合物(以下「アミノ基含有シリコーン化合物」という。)が好適に挙げられる。
その具体例としては、架橋性のシリル基を有する下記一般式(5)で表されるメルカプト基含有アルコキシシランの縮合物、架橋性のシリル基を有する下記一般式(6)で表されるアミノ基含有アルコキシシランの縮合物、架橋性のシリル基を有する下記一般式(7)で表されるアミノ基含有アルコキシシランの縮合物が好適に挙げられる。
【0044】
【化4】


【0045】
式中、mは2または3を表す。
1、R2およびR3は、それぞれ上記と同様である。
4は、炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
【0046】
上記メルカプト基含有シランとしては、具体的には、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランまたは3−メルカプトプロピルアルキルジアルコキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
また、上記メルカプト基含有アルコキシシランとしては、市販品を加水分解縮合して使用することもでき、具体的には、例えば、A189、AZ−6129(日本ユニカー社製);KBM−802、KBM−803(信越化学工業社製)を用いることができる。
【0048】
上記アミノ基含有シランとしては、具体的には、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランが挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
また、上記アミノ基含有アルコキシシランとしては、市販品を加水分解縮合して使用することもでき、具体的には、例えば、A1110、A1120、A9669(日本ユニカー社製);KBM−903、KBE−903(信越化学工業社製)を用いることができる。
【0050】
上記メルカプト基含有シリコーン化合物およびアミノ基含有シリコーン化合物としては、具体的には、例えば、上記式(2)〜(4)に示す鎖状、ラダー状もしくはかご状のシロキサン骨格、またはこれらが混在するシロキサン骨格に、エポキシ基の代わりにメルカプト基またはアミノ基が有機基を介して結合した構造のものが挙げられる。中でも、低粘度で、作業性、貯蔵安定性に優れるため、上記式(2)で表す鎖状構造を有することが好ましい。
また、これらの縮合物は、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランまたは3−アミノプロピルトリアルコキシシランを原料として製造することが、原料の入手しやすさおよび反応性が高いことから好ましい。
【0051】
上記メルカプト基含有シリコーン化合物およびアミノ基含有シリコーン化合物は、上記一般式(5)で表されるようなメルカプト基含有アルコキシシランまたは上記一般式(6)で表されるようなアミノ基含有アルコキシシランを加水分解縮合して得られたものであるのが好ましいが、特にこれに限定されず、シロキサン骨格を形成した後に、シロキサン骨格にメルカプト基またはアミノ基を有する化合物を導入することにより合成してもよい。
なお、加水分解および縮合反応によるシロキサン結合の形成時にアルコールが生成するため、メルカプト基含有シリコーン化合物およびアミノ基含有シリコーン化合物の縮合物の製造時には、アルコールを減圧除去するのが好ましい。
【0052】
また、上記メルカプト基含有シリコーン化合物およびアミノ基含有シリコーン化合物は、メルカプト基含有アルコキシシランまたはアミノ基含有アルコキシシランと、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、イソシアネート基等の官能基を分子内に有するシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシランを併用して縮合させたものでもよい。メルカプト基またはアミノ基以外の官能基を有するシラン化合物を併用する場合、少なくとも60モル%のメルカプト基含有アルコキシシランまたはアミノ基含有アルコキシシランを含むことが、硬化速度の点から好ましい。硬化時間をより短縮できる点から、80モル%以上のメルカプト基含有アルコキシシランまたはアミノ基含有アルコキシシランを含むことがより好ましい。
【0053】
また、上記メルカプト基含有シリコーン化合物およびアミノ基含有シリコーン化合物が、メルカプト基またはアミノ基をこのメルカプト基含有シリコーン化合物またはアミノ基含有シリコーン化合物のケイ素原子に対して60〜100モル%有することが、硬化速度の点から好ましい。硬化時間をより短縮できる点から、メルカプト基含有シリコーン化合物またはアミノ基含有シリコーン化合物のケイ素原子に対して、80〜100モル%のメルカプト基またはアミノ基を有することがより好ましく、90モル%より多いメルカプト基またはアミノ基を有することが更に好ましい。
【0054】
上記メルカプト基含有シリコーン化合物およびアミノ基含有シリコーン化合物は、アルコキシシラン(上記メルカプト基含有アルコキシシランまたはアミノ基含有アルコキシシランおよび所望により併用される各種アルコキシシラン)と、そのケイ素原子に対して、モル比で、0.5〜1.5倍の水とを反応して得られるものが好ましい。この条件で加水分解縮合を行い、得られるメルカプト基含有シリコーン化合物の縮合度を調整することにより、低粘度で、貯蔵安定性に優れるメルカプト基含有シリコーン化合物またはアミノ基含有シリコーン化合物が得られる。これらの特性により優れる点から、反応させる水の量は、アルコキシシランのケイ素原子に対して、モル比で、より好ましくは0.6〜1.3倍、更に好ましくは0.8〜1.3倍である。
【0055】
上記メルカプト基含有シリコーン化合物およびアミノ基含有シリコーン化合物の重量平均分子量は、粘度が高くなり過ぎない点から350〜10,000であるのが好ましい。これらの特性により優れる点から、700〜9,000であるのがより好ましく、1,000〜8,000であるのが更に好ましい。
【0056】
上記加水分解縮合には、触媒を用いることができ、無溶剤でまたは溶剤中で行うことができる。触媒および溶剤の種類および量は上記と同様である。
【0057】
エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の含有量は、その合計活性水素量が、エポキシ基含有化合物(A)のエポキシ基に対して、当量比で0.1〜5.0であるのが好ましく、0.2〜2.0であるのがより好ましい。
【0058】
本発明の組成物においては、上述したエポキシ基含有化合物(A)およびエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、シロキサン骨格を有する。即ち、本発明の組成物は、シロキサン骨格を有するエポキシ基含有化合物およびシロキサン骨格を有するエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物の少なくとも一方を含有する。これにより、本発明の組成物は、エポキシ基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の強度特性が優れたものとなり、加水分解性ケイ素含有基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の耐熱性が極めて優れたものとなる。
【0059】
また、エポキシ基含有化合物(A)およびエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、加水分解性ケイ素含有基を有する場合には、これらと加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)とが、加水分解縮合するので、硬化物の強度特性が優れるという効果がより顕著になる。
【0060】
また、本発明の組成物においては、上述したエポキシ基含有化合物(A)と加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の質量比((A)/(B))が、2/98〜98/2である。上記範囲であると、両者を併用する効果が顕著に表れる。エポキシ基含有化合物(A)を主体とする場合には、上記質量比が55/45〜98/2であるのが好ましく、70/30〜95/5であるのがより好ましい。また、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)を主体とする場合には、上記質量比が2/98〜45/55であるのが好ましく、5/95〜40/60であるのがより好ましい。
【0061】
本発明の組成物は、更に、エポキシ基含有化合物(A)の硬化触媒および/または加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の硬化触媒を含有するのが好ましい。
エポキシ基含有化合物(A)の硬化触媒は、特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、下記式(8)で表される2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第三級アミン類;トリフェニルフォスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物、第四級ホスホニウム塩が挙げられる。
これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
【化5】


【0063】
エポキシ基含有化合物(A)の硬化触媒の含有量は、上記エポキシ基含有シリコーン化合物100質量部に対して0.01〜15質量部であるのが好ましく、0.05〜10質量部であるのがより好ましい。
【0064】
加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の硬化触媒は、特に限定されず、例えば、スズ触媒、チタン触媒が挙げられる。
スズ触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ等のスズカルボン酸塩類;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジブチルスズジアセチルアセトナートが挙げられる。
チタン触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類が挙げられる。
これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0065】
加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の硬化触媒の含有量は、上記加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の硬化触媒100質量部に対し、0.01〜5質量部であるのが好ましく、0.05〜3質量部であるのがより好ましい。
【0066】
本発明の組成物は、上記の各成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外のエポキシ基含有化合物(A)の硬化剤、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料、チクソトロピー性付与剤、接着性付与剤、難燃剤、染料、帯電防止剤、分散剤、溶剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0067】
上記以外のエポキシ基含有化合物(A)の硬化剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、チオール系化合物、イミダゾール、三フッ化ホウ素−アミン錯体、グアニジン誘導体等を使用することができ、アミン系化合物、酸無水物系化合物、チオール系化合物等が好ましい。
【0068】
アミン系化合物としては、具体的には、例えば、メタキシリレンジアミン(MXDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン(IPDA)、ジシアンジアミド、ジメチルベンジルアミン、ケチミン化合物等のアミン系化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド骨格のポリアミン等が挙げられる。中でも、メタキシリレンジアミン(MXDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、トリエチレンテトラミン等が、室温で液状であり、作業性がよく、硬化性も高いという点から好ましい。
【0069】
酸無水物系化合物としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が、室温で液状であり、作業性がよく、硬化性も高いという点から好ましい。
【0070】
フェノール系化合物としては、具体的には、例えば、ビスフェノール類、フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、ビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類またはフェノール類との縮合物等、ビフェノール類、これらの変性物等が挙げられる。
【0071】
チオール系硬化剤としては、具体的には、例えば、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、エポメートQX10(ジャパンエポキシレジン社製)、エポメートQX11(ジャパンエポキシレジン社製)等のジチオール;チオコールLP70(東レチオコール社製)、カップキュア3800(ジャパンエポキシレジン社製)、エピキュアQX40(ジャパンエポキシレジン社製)等のポリチオール等のチオール化合物が挙げられる。中でも、エポメートQX10、エポメートQX11、カップキュア3800、エピキュアQX40等が、市販の速硬化性ポリチオールとして好適に用いられる。
【0072】
これらの硬化剤および/または潜在性硬化剤を含有する場合、エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)を含む硬化剤成分の含有量は、その合計活性水素量が、エポキシ基含有化合物(A)のエポキシ基に対して、当量比で0.1〜5.0であるのが好ましく、0.2〜2.0であるのがより好ましい。
【0073】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグレシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。充填剤の含有量は、硬化物の物性の点で、エポキシ基含有化合物(A)、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)およびエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の合計100質量部に対して、50〜1,000質量部であるのが好ましい。特に、作業性の点で、50〜800質量部であるのがより好ましく、100〜600質量部であるのが更に好ましい。
【0074】
加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)を主体とする組成の場合、これらのうち、炭酸カルシウム、特に、表面処理炭酸カルシウムを含有することにより、粘度の調整が容易となり、また、良好な初期チクソ性および貯蔵安定性を得ることができる。
このような炭酸カルシウムとしては、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物または脂肪酸エステルにより表面処理された従来公知の表面処理炭酸カルシウムを用いることができる。具体的には、例えば、脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとして、カルファイン200(丸尾カルシウム社製)、ホワイトン305(重質炭酸カルシウム、白石カルシウム社製)、脂肪酸エステルで表面処理された炭酸カルシウムとして、シーレッツ200(丸尾カルシウム社製)が好適に用いられる。
【0075】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。可塑剤の含有量は、作業性の点で、エポキシ基含有化合物(A)、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)およびエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の合計100質量部に対して、50質量部以下であるのが好ましい。
【0076】
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
【0077】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラックなどの有機顔料等が挙げられる。
【0078】
チクソトロピー性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)が挙げられる。
接着性付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
【0079】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
帯電防止剤としては、一般的に、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体などの親水性化合物等が挙げられる。
【0080】
本発明の組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、窒素雰囲気下で、上記エポキシ基含有化合物(A)、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)、エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)、所望により添加される上記硬化触媒および添加剤を、かくはん機を用いて混合し分散させることにより得ることができる。
【0081】
本発明の組成物は、エポキシ基含有化合物(A)を主剤、エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)を硬化剤とし、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)をどちらか一方または両方に含有させ、2液型として用いることができる。上記硬化触媒および添加剤は主剤と硬化剤のどちらか一方または両方に含有させることができる。
【0082】
本発明の組成物は、エポキシ基含有化合物(A)とエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)とが反応するとともに、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)とが、加水分解縮合することにより、硬化する。また、エポキシ基含有化合物(A)およびエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、加水分解性ケイ素含有基を有する場合には、これらと加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)との間での加水分解縮合も起こる。
【0083】
本発明の組成物は、エポキシ基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の耐熱性に優れる。具体的には、低温から高温まで、硬化物の貯蔵弾性率(G′)の変化が小さい。即ち、硬化物を高温下においたときの弾性率の低下が抑制されている。
また、本発明の組成物は、加水分解性ケイ素含有基含有化合物を主体とする場合には、硬化物の強度特性、中でも、破断強度に優れる。
【0084】
本発明の組成物は、上述したような優れた特性を有することから、塗料、防錆塗料、接着剤、シーリング材等の広範な用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
1.シリコーン化合物の合成
以下の各種シリコーン化合物を合成し、硬化性樹脂組成物の調製に用いた。
<エポキシ基含有シリコーン化合物の合成>
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A187、日本ユニカー社製)236g(1.00モル)に対して、水18g(1.00モル)およびジブチルスズジラウレート0.2gを混合させた後、80℃で8時間かくはんした。その後、反応により生成したメタノールを減圧除去し、エポキシ当量(理論値)190g/eqで液状のエポキシ基含有シリコーン化合物(エポキシシラン縮合物)を得た。
【0087】
<メルカプト基含有シリコーン化合物1の合成>
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(A189、日本ユニカー社製)196g(1.00モル)に対して、水12.6g(0.70モル)を添加した後、無触媒下、80℃で15時間かくはんした。その後、反応により生成したメタノールを減圧除去し、SH当量(理論値)164g/eqで液状のメルカプト基含有シリコーン化合物1(メルカプトシラン縮合物)を得た。
【0088】
<メルカプト基含有シリコーン化合物2の合成>
水の使用量を23.4g(1.30モル)に変更した以外は、上記メルカプト基含有シリコーン化合物1と同様の方法により、SH当量(理論値)136g/eqで液状のメルカプト基含有シリコーン化合物2(メルカプトシラン縮合物)を得た。
【0089】
<アミノ基含有シリコーン化合物の合成>
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(A1110、日本ユニカー社製)179g(1.00モル)をかくはんしながら、水18g(1.00モル)をゆっくりと滴下し、冷却状態で3時間かくはんした。その後、反応により生成したメタノールを減圧除去し、アミン当量(理論値)66.5g/eqで液状のアミノ基含有シリコーン化合物(アミノシラン縮合物)を得た。
【0090】
2.硬化性樹脂組成物の調製および評価
(実施例1〜4ならびに比較例1および2)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合し分散させ、第1表に示される各硬化性樹脂組成物を得た。
得られた硬化性樹脂組成物について、以下のようにして引張試験を行って破断強度を測定し、強度特性を評価した。結果を第1表に示す。
【0091】
<引張試験>
上記で得られた硬化性樹脂組成物を、23℃、60%RHの条件下で2時間放置して養生した後、80℃で2時間放置し、更に120℃で1時間放置して硬化させて、厚さ2mmのシートを作製した。このシートから3号ダンベルを打ち抜いて、引張試験に供した。引張試験は、引張速度200mm/minで行った。
【0092】
(実施例5〜7および比較例3)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合し分散させ、第1表に示される各硬化性樹脂組成物を得た。
得られた硬化性樹脂組成物について、以下のようにして弾性率測定試験を行って貯蔵弾性率(G′)の保持率を測定し、耐熱性を評価した。結果を第1表に示す。
【0093】
<弾性率測定試験>
(1)試験体の作製
離型剤を塗ったスチール製の型に上記で得られた硬化性樹脂組成物を流し込み、23℃、60%RHの条件下で2時間放置して養生した後、80℃で2時間放置し、更に120℃で1時間放置し、更に150℃で1時間放置して硬化させた。得られた帯状の硬化物(縦45mm×横12mm×高さ1mm)を試験体とした。
【0094】
(2)弾性率保持率の測定
上記(1)で得られた試験体について、歪み0.01%、周波数10Hz、昇温速度5℃/minの条件で、20℃から200℃までの温度領域において、強制伸長加振を行って貯蔵弾性率(G′)を測定した。
200℃における貯蔵弾性率の値を20℃における貯蔵弾性率の値で除して、弾性率保持率を求めた。
【0095】
【表1】

【0096】
第1表中の各成分は、以下のとおりである。
・変成シリコーン樹脂:サイリルST200、鐘淵化学工業社製
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製
・MXDA(メタキシリレンジアミン):MXDA、三菱ガス化学社製
・第三級アミン触媒:上記式(8)で表される2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、東京化成社製
・スズ触媒:ジブチルスズラウレート、東京化成社製
・シリカ:平均粒子径10μmの球状シリカ
・炭酸カルシウム:ビスコライトMBP、白石カルシウム社製
【0097】
第1表から明らかなように、加水分解性ケイ素含有基含有化合物を主体とする系において、本発明の組成物(実施例1および2)は、エポキシ基含有化合物およびエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物のいずれもシロキサン骨格を有しない場合(比較例1)に比べて、破断強度が優れる。エポキシ基含有化合物の割合が大きい場合も同様である(実施例3および4ならびに比較例2)。
また、エポキシ基含有化合物を主体とする系において、本発明の組成物(実施例5〜7)は、エポキシ基含有化合物およびエポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物のいずれもシロキサン骨格を有しない場合(比較例3)に比べて、耐熱性が格段に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有化合物(A)と、加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)と、エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)とを含有し、
前記エポキシ基含有化合物(A)および前記エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、シロキサン骨格を有し、
前記エポキシ基含有化合物(A)と前記加水分解性ケイ素含有基含有化合物(B)の質量比が、2/98〜98/2である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ基と反応しうる官能基が、メルカプト基および/またはアミノ基である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シロキサン骨格を有する、前記エポキシ基含有化合物(A)および前記エポキシ基と反応しうる官能基を含有する化合物(C)の少なくとも一方が、アルコキシシランと、そのケイ素原子に対してモル比で0.5〜1.5倍の水とが反応して得られたものである、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−22142(P2006−22142A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199063(P2004−199063)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】