説明

硬化性樹脂組成物

【課題】本発明は、原料が取り扱いやすいため調製が容易であるとともに、組成物の透明性が良好であり、かつ、得られる硬化物の力学物性及び接着物性が優れている組成物を提供する。
【解決手段】(A)シロキサン結合を形成することによって架橋し得るケイ素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体、(B)シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有し、分子鎖が実質的に、(b−1)炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、(b−2)炭素数7〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とからなる共重合体、及び(C)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2種以上の硬化性重合体を含有する硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、架橋硬化可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体と架橋硬化可能なオキシアルキレン重合体とを含有する硬化性組成物に関する。なお、本発明において(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいう。
【背景技術】
【0002】
シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基(以下、反応性ケイ素基ともいう)を有するオキシアルキレン重合体と、場合により反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体からなる硬化性組成物は、例えば、特許文献1〜4に開示されている。
【0003】
これらの中では、特許文献3に開示されている(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステル含有共重合体からなる組成物が、透明性、引張り物性、各種実用特性の点から優れている。しかし、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステル含有共重合体を用いる場合は、原料の(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステル単量体は一般に高価であり、また常温で固体であるため取り扱いにくいという問題があった。また、一般に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体を重合する場合、安全性の観点から、あらかじめ混合する各単量体単位を冷却しておく必要があるが、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステル単量体を用いた場合には、冷却された他の単量体単位と混合すると析出する場合があり、好ましくないという問題があった。更に、一般に(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体は、オキシアルキレン重合体と比較するとガラス転移温度が高く、凝集力が大であり、粘度が高くなる傾向にあるため、オキシアルキレン重合体との組成物の粘度が高くなり、実用上問題となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−122541号公報
【特許文献2】特開昭60−31556号公報
【特許文献3】特開昭63−112642号公報
【特許文献4】特開平6−172631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、原料が取り扱いやすいため調製が容易であるとともに、組成物の透明性が良好であり、かつ、得られる硬化物の力学物性及び接着物性が優れている硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、および硬化促進剤からなる硬化性樹脂組成物において、炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、炭素数7〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とからなる共重合体を用いることにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、(A)シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体、(B)シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有し、分子鎖が実質的に、(b−1)炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、(b−2)炭素数7〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とからなる共重合体、及び(C)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0008】
好ましい実施態様は、重合体(A)が、分子鎖が実質的に一般式(1):
−CH(CH)CH−O− (1)
で示される繰り返し単位からなる重合体である前記の硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
更に好ましい実施態様は、重合体(A)が、数平均分子量が6,000以上であって、Mw/Mnが1.6以下である前記いずれかに記載の硬化性樹脂組成物に関する。
【0010】
更に好ましい実施態様は、重合体(A)の主鎖が、開始剤の存在下、複合金属シアン化錯体、セシウム化合物およびP=N結合を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を触媒としてアルキレンオキシドを重合させて得られるものである前記いずれかに記載の硬化性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、原料が取り扱いやすいため調製が容易であるとともに、透明性が良好であり、かつ、得られる硬化物の力学物性及び接着物性が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に使用される(A)成分のオキシアルキレン重合体に含有されている反応性ケイ素基は特に限定されるものではないが、代表的なものを示すと、例えば、一般式(2)で表される基が挙げられる。
−(−Si(R2−b)X−O−)−Si(R3−a)X (2)
(式中、R及びRは、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R′)SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、RまたはRが2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR′は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR′は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2、または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。また、m個の一般式(3):
−Si(R2−b)X−O− (3)
におけるbは異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。)
【0014】
上記Xで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であれば好適に使用できる。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシル基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、環境への配慮、原料の入手性の点から、水素原子、アルコキシル基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基が好ましいが、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点から、メトキシ基等のアルコキシル基が特に好ましい。
【0015】
この加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1〜3個結合することができ、(a+Σb)は1〜5の範囲であるのが好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素中に2個以上存在する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。反応性ケイ素基中に、ケイ素原子は1個あってもよく、2個以上あってもよいが、シロキサン結合等によりケイ素原子の連結された反応性ケイ素基の場合には、20個程度あってもよい。反応性ケイ素基としては、特に制限されないが、加水分解活性の高い点と加水分解性が穏やかで取扱いやすい点とを勘案すると、ジメチルモノメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基およびトリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
反応性ケイ素基はオキシアルキレン重合体1分子中に少なくとも1個、更には1.1〜5個程度存在するのが好ましい。重合体1分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、良好なゴム弾性挙動を発現しにくくなるため好ましくない。また反応性ケイ素基の数が5個を越えると硬化物が硬くなり過ぎるため好ましくない。反応性ケイ素基はオキシアルキレン重合体分子鎖の末端に存在してもよく、内部に存在してもよい。反応性ケイ素基が分子鎖の末端に存在すると、最終的に形成される硬化物に含まれるオキシアルキレン重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなるため好ましい。
【0017】
本発明の(A)成分であるオキシアルキレン重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシイソブチレン、ポリオキシテトラメチレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。オキシアルキレン重合体(A)の分子鎖は1種だけの繰り返し単位からなっていてもよいし、2種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。また、このオキシアルキレン重合体は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、あるいは、これらの混合物であってもよい。これらのオキシアルキレンの中でも分子鎖が実質的に、一般式(1):
−CH(CH)CH−O− (1)
で表される繰り返し単位からなるものが、得られる硬化性組成物の取り扱いやすさ、硬化物物性の点から好ましい。また、ここで「実質的に」とは、他の単量体等が含まれていてもよいが、上記一般式(1)で表される繰り返し単位が重合体(A)の単量体単位総量に対して50重量%以上、好ましくは80重量%以上存在することを意味する。
【0018】
このオキシアルキレン重合体の数平均分子量(Mn)としては、硬化性および取り扱いやすさの点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算において、6,000〜60,000のものが好ましく、更には8,000〜50,000のものがより好ましく、更には優れた力学的性質を有する点から、10,000〜30,000であることが特に好ましい。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、GPC法によるポリスチレン換算において、1.6以下の分子量分布が狭い(Mw/Mn比が小さい)ものが好ましく、更には1.5以下であることがより好ましく、更には1.4以下であることが特に好ましい。このように分子量分布が狭いオキシアルキレン重合体(A)を、反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)と組成物にした場合、分子量分布の広いオキシアルキレン重合体(A)を用いた場合と比較して、組成物が低粘度となり、良好な作業性を示すため好ましい。
【0019】
本発明の(A)成分となる反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体は、例えば、官能基を有するオキシアルキレン重合体に反応性ケイ素基を導入することによって得ることができる。
反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行えばよい。すなわち、例えば、以下の方法があげられる。
【0020】
(1)末端に水酸基等の官能基を有するオキシアルキレン重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(2)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基(以下、Y官能基という)を有するオキシアルキレン重合体に、このY官能基に対して反応性を示す官能基(以下、Y′官能基という)および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。このY′官能基を有するケイ素化合物としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン類;ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどのビニル型不飽和基含有シラン基;γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどの塩素原子含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなどのイソシアネート含有シラン類;メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジエトキシシランなどのハイドロシラン類などが具体的に例示され得るが、これらに限定されるものではない。
【0021】
以上の方法の中では、(1)の方法、または(2)の方法のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法が、反応の容易さおよび原料の入手性の点から、好ましい。
【0022】
なお、反応性ケイ素基を導入すると、導入前の重合体に比較して分子量分布が広がる傾向にあるため、導入前の重合体の分子量分布はできるだけ狭いことが好ましい。
【0023】
高分子量で分子量分布が狭いオキシアルキレン重合体は、例えば、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、特開昭50−149797号、特開昭61−197631号、特公昭59−15336号、特開平2−276821号、特開平10−273512号特開平10−36499号、特開平11−106500号、特開平11−302371号などに開示された方法により得ることができる。
【0024】
この中でも、分子量分布の狭い重合体を容易に入手するためには、開始剤の存在下、複合金属シアン化錯体、セシウム化合物およびP=N結合を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を触媒としてアルキレンオキシドを重合させて得られる重合体であることが好ましい。
【0025】
開始剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、メタリルアルコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ポリブタジエンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の2価アルコール又は多価アルコールおよび水酸基を有する各種のオリゴマーを用いることができ、この中でも経済性、取り扱いやすさの点から、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオールが好ましい。
【0026】
また、本発明に用い得る複合金属シアン化錯体としては、重合活性の点から亜鉛ヘキサシアノコバルテートを主成分とする錯体が好ましく、中でも重合制御の点からエーテルおよび/またはアルコール錯体が好ましい。より分子量分布の狭い重合体を得るためには、エーテルとしてはエチレングリコールジメチルエーテル(グライム)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)が好ましく、アルコールとしてはt−ブタノールが好ましい。
【0027】
複合金属シアン化錯体の使用量としては、仕上がりポリオキシアルキレン化合物中に0.0001〜0.03重量%であることが好ましく、反応性の点から0.001〜0.01重量%であることがより好ましい。0.0001重量%未満では反応速度が充分ではなく、また0.03重量%超では、ポリオキシアルキレン化合物の製造コストが上昇するため好ましくない。
【0028】
また、本発明に用いうるセシウム化合物としては、たとえばセシウム金属、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド、セシウムプロポキシド等のセシウムアルコキシド、水酸化セシウムおよび炭酸セシウムから選ばれるものを主成分とするものが、重合反応性の点から好ましい。入手性、経済性の点から、水酸化セシウムがより好ましい。
【0029】
セシウム化合物の使用量としては、セシウム金属として仕上がりポリオキシアルキレン化合物中に0.05〜1.5重量%であることが好ましく、反応性の点から0.1〜1.0重量%であることがより好ましい。0.05重量%未満では反応速度が充分ではなく、また1.5重量%超では、ポリオキシアルキレン化合物の製造コストが上昇するため好ましくない。
【0030】
本発明に用い得るP=N結合を有する化合物の好ましい形態としては、ホスファゼニウム化合物、ホスフィンオキシド化合物、および、ホスファゼン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0031】
ホスファゼニウム化合物としては、特開平11−106500号公報記載の化合物が挙げられる。例えば、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムエトキシド、テトラキス[トリ(ピロリジン−1−イル)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムtert−ブトキシド等が例示される。
【0032】
ホスファゼン化合物としては、特開平10−36499号公報記載の化合物が挙げられる。例えば、1−tert−ブチル−2,2,2−トリス(ジメチルアミノ)ホスファゼン、1−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2,2−トリス(ジメチルアミノ)ホスファゼン、1−エチル−2,2,4,4,4−ペンタキス(ジメチルアミノ)−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−tert−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−tert−ブチル−2,2,2−トリ(1−ピロリジニル)ホスファゼン、または7−エチル−5,11−ジメチル−1,5,7,11−テトラアザ−6λ5−ホスファスピロ[5,5]ウンデカ−1(6)−エン等が例示できる。
【0033】
ホスフィンオキシド化合物としては、特開平11−302371号公報記載の化合物が挙げられる。例えば、トリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド、トリス[トリス(ジエチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド等が例示できる。
【0034】
これらの内、工業的な利用見地から、ホスファゼニウム化合物、およびホスフィンオキシド化合物が好ましい。
【0035】
P=N結合を有する化合物の使用量としては、開始剤中の活性水素化合物1モルに対し、P=N結合を有する化合物が1×10−4〜5×10−1モルであることが好ましい。1×10−4モル未満では反応速度が充分ではなく、また5×10−1超では、ポリオキシアルキレン化合物の製造コストが上昇するため好ましくない。
【0036】
本発明の(B)成分である反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(以下、共重合体(B)という)における(b−1)成分である炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、一般式(4):
CH=C(R)COOR (4)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す)で表わされる。Rとしては、メチル基、エチル基があげられる。(b−1)成分として炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を用いると、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物として接着強度の高い良好なゴム弾性体が得られる。なお、一般式(4)で示される単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
また(b−2)成分である炭素数7〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、一般式(5):
CH=C(R)COOR (5)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数7〜9のアルキル基を示す)で表わされる。Rとしては、例えば、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、n−ノニル基、イソノニル基等のアルキル基があげられるが、原料の入手性、経済性の点から2−エチルヘキシル基が特に好ましい。なお、一般式(5)で示される単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
(b−2)成分として炭素数7〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を用いると、従来品に比べ単量体単位の取り扱い性に優れる上、得られる組成物の透明性は従来品と同等以上である。また、従来品と比較すると良好なゴム弾性、接着物性を示す硬化物が得られる。
【0039】
共重合体(B)の分子鎖は実質的に(b−1)および(b−2)成分である単量体単位からなるが、ここでいう「実質的に」とは、共重合体(B)の単量体総量に対して(b−1)および(b−2)の単量体単位の合計が、50重量%を越えることを意味し、更に好ましくは70重量%を越えることを意味する。
【0040】
(b−1)成分と(b−2)成分の合計量に対する(b−1)成分の重量比は、本発明の硬化性樹脂組成物の取り扱いやすさ、各種基材への接着性の点から、95重量%以下が好ましく、特に接着強度の点から、85重量%以下がより好ましい。また、同様の観点から、40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。(b−1)成分の重量比が、95重量%を越えると硬化性組成物の粘度が高く取り扱い難くなる場合があり、また40重量%未満では各種基材への接着性が悪くなる傾向がある。
【0041】
(b−1)および(b−2)成分以外の、共重合体(B)中に含有されていてもよい単量体単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボン酸基を含む単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアミド基を含む単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基を含む単量体、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレンなどに起因する単量体単位があげられる。
【0042】
共重合体(B)の数平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算において500〜100,000のものが、取扱いの容易さの点から好ましい。更には7,000〜10,000のものがより好ましく、1,000〜5,000のものが特に好ましい。共重合体(B)の数平均分子量が500を下回る場合は、良好なゴム弾性体が得られ難く、また100,000を越える場合は、粘度が高くなり取り扱いが難しくなるため、好ましくない。
【0043】
共重合体(B)における反応性ケイ素基は、本発明におけるオキシアルキレン重合体(A)の反応性ケイ素基と同義であり、室温においても架橋しうるという特徴を有する。この反応性ケイ素基の代表例は、一般式(6):
−Si(R3−8)X (6)
(式中、R、X、aは前記に同じ)で表わされる。
【0044】
共重合体(B)における反応性ケイ素基の具体例としては、経済性、取り扱いの容易さなどの点から、ジメチルモノメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基およびトリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
共重合体(B)1分子中の反応性ケイ素基の個数は、充分な硬化性を得る点から、平均1個以上、更には1.1個以上、特には1.5個以上であることが好ましく、また見掛け上、反応性ケイ素基1個当りの数平均分子量が300〜4,000になるように存在することが好ましい。
【0046】
本発明に用いる共重合体(B)は、単量体(b−1)および(b−2)を、ビニル重合、たとえばラジカル反応によるビニル重合、具体的には、通常の溶液重合法や塊重合法などにより重合することにより得られる。重合は、前記単量体、必要に応じてラジカル開始剤、更に目的の分子量に調整するために必要に応じてn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を加えて、50〜150℃の反応温度で行い得る。溶剤は、使用してもよく、使用しなくてもよいが、使用する場合は、安価であり重合反応の安全性の点から、エーテル類、炭化水素類、酢酸エステル類、アルコール類などの非反応性の溶剤を用いることが好ましい。環境面からは非芳香族系の溶剤を使用することが好ましい。非芳香族系溶剤としては、ブタノール等のアルコール類が環境への配慮、得られた重合体の取り扱いやすさにおいて好ましい結果を与える。
【0047】
共重合体(B)に反応性ケイ素基を導入する方法としては、種々の方法があるが、例えば、(I)重合性不飽和結合と反応性ケイ素基を有する化合物(例えばCH=CHSi(OCH)とを、単量体(b−1)および(b−2)に添加して共重合する方法、(II)重合性不飽和結合および反応性官能基(以下、Z基という)を有する化合物(例えば、アクリル酸)を単量体(b−1)および(b−2)に添加して共重合させ、そののち生成した共重合体を反応性ケイ素基およびZ基と反応しうる官能基(以下、Z′官能基という)を有する化合物(例えば、イソシアネート基と−Si(OCH基を有する化合物)と反応させる方法、(III)連鎖移動剤として反応性ケイ素基を含有するメルカプタンの存在下、単量体(b−1)および(b−2)を共重合させる方法、(IV)反応性ケイ素基を含有するアゾビスニトリル化合物やジスルフィド化合物を開始剤として単量体(b−1)および(b−2)を共重合させる方法、(V)リビングラジカル重合法によって単量体(b−1)および(b−2)を共重合させ、分子鎖末端に反応性ケイ素基を導入する方法、などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、(I)〜(V)の方法を各々任意に組み合わせることも可能である。例えば、(I)と(III)の組み合わせとして、連鎖移動剤として反応性ケイ素基を含有するメルカプタンの存在下、重合性不飽和結合と反応性ケイ素基を有する化合物を、単量体(b−1)および(b−2)と共に共重合させる方法を選択することも可能である。
【0048】
前記(I)の方法で用いられる化合物の具体例としては、たとえば、CH=CHSi(CH)(OCH、CH=CHSi(CH)Cl、CH=CHSi(OCH、CH=CHSiCl、CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH、CH=CHCOO(CHSi(OCH、CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl、CH=CHCOO(CHSiCl、CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH、CH=C(CH)COO(CHSi(OCH、CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH、CH=C(CH)COO(CHSi(OCH、CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl、CH=C(CH)COO(CHSiCl、CH=CHCHOC(O)−Ph−COO(CHSi(CH)(OCH、CH=CHCHOC(O)−Ph−COO(CHSi(OCH、CH=CHCHOC(O)−Ph−COO(CHSi(CH)Cl、CH=CHCHOC(O)−Ph−COO(CHSiClなどが挙げられる。但し、Phはパラフェニレン基を示す。これらの化合物の中では、経済性、得られる硬化性組成物の反応性の点から、CH=CHSi(OCH、CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH、CH=C(CH)COO(CHSi(OCHが好ましい。
【0049】
これらのシラン化合物は種々の方法により合成されるが、例えば、アセチレン、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート等と、メチルジメトキシシラン、メチルジクロルシラン等を、VIII族遷移金属の触媒下で反応させることにより製造することができる。このような遷移金属錯体触媒としては、白金、ロジウム、コバルト、パラジウムおよびニッケルから選ばれたVIII族遷移金属錯体化合物が有効に使用される。とくに白金ブラック、塩化白金酸、白金アルコール化合物、白金オレフィンコンプレックス、白金アルデヒドコンプレックス、白金ケトンコンプレックスなどの白金系化合物が有効である。
【0050】
(II)の方法で用いる化合物中、Z基およびZ′基の例としては種々の基の組合わせがあるが、一例として、Z基としてビニル基、Z′基としてヒドロシリコン基(H−Si)をあげることができる。Z基とZ′基とはヒドロシリル化反応をおこし結合しうる。Z基としてビニル基をもち、さらに重合性不飽和結合を有する化合物としては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート等をあげることができる。またZ′基としてヒドロシリコン基をもち、さらに反応性ケイ素基を有する化合物であるヒドロシラン化合物の具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、トリメチルシロキシメチルアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン、ビス(ジエチルケトキシメート)トリメチルシロキシシランなどのケトキシメートシラン類;ジメチルシラン、トリメチルシロキシメチルシラン、1,1−ジメチル−2,2−ジメチルジシロキサンなどのハイドロシラン類;メチルトリ(イソプロペニルオキシ)シラン、ジメチルトリ(イソプロペニルオキシ)シランなどのアルケニルオキシシラン類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
(III)記載の連鎖移動剤として使用する反応性ケイ素基を含有するメルカプタンとしては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等をあげることができる。また、特開昭59−78222号公報に記載されているように、単量体(b−1)および(b−2)を、2官能ラジカル重合性化合物および連鎖移動剤としてアルコキシシリル基を含有するメルカプタンの存在下で共重合させる方法も可能である。
【0052】
(IV)記載の、反応性ケイ素基を含有するアゾビスニトリル化合物やジスルフィド化合物としては、特開昭60−23405号公報、特開昭62−70405号公報等に記載されている、アルコキシシリル基を含有するアゾビスニトリル化合物やアルコキシシリル基を含有するジスルフィド化合物を例としてあげることができる。
【0053】
(V)記載の方法としては、特開平09−272714号公報などに記載されている方法をあげることができる。
【0054】
その他に、特開昭59−168014号公報、特開昭60−228516号公報などに記載されている、反応性ケイ素基をもつメルカプタンと反応性ケイ素基をもつラジカル重合開始剤を併用する方法もあげることができる。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるオキシアルキレン重合体(A)と共重合体(B)との比率は、共重合体(B)の量が、オキシアルキレン重合体(A)100重量部(以下、部という)に対して、(A)、(B)各重合体の特性改善の効果が顕著にある点から、5〜5000部の範囲であることが好ましく、更には5〜2000部の範囲であることがより好ましい。目的とする用途、性能に応じて、(A)および(B)の使用比率を選択するのが通常である。
【0056】
本発明の(C)成分として使用する硬化促進剤は、特に限定されないが、具体例としては、スズ系触媒として、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ステアリン酸錫などの2価錫カルボン酸塩類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)などのジブチル錫ジカルボキシレート類、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシドなどのジアルキル錫のアルコキシド誘導体類、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテートなどのジアルキル錫の分子内配位性誘導体類、ジブチル錫オキシドとエステル化合物による反応混合物、ジブチル錫オキシドとシリケート化合物による反応混合物、およびこれらジアルキル錫オキシド誘導体のオキシ誘導体などの4価ジアルキル錫オキシドの誘導体;また、非スズ系触媒として、オクチル酸やオレイン酸、ナフテン酸、ステアリン酸などをカルボン酸成分とするカルボン酸カルシウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、カルボン酸ニッケルなどのカルボン酸金属塩類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシルチタネート)などのチタンアルコキシド類;アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレートなどのアルミニウムアルコキシド類;ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレートなどのジルコニウムアルコキシド類;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、オクチレングリコレート、チタンラクテートなどのチタンキレート類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどのアルミニウムキレート類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテートなどのジルコニウムキレート類;アミン類、アミン塩、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物等の塩基性化合物などが挙げられる。
【0057】
これらの中では、硬化性組成物の反応性の点からスズ系触媒が好ましく、特にブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)などのジブチル錫ジカルボキシレート類、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシドなどのジアルキル錫のアルコキシド誘導体類、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテートなどのジアルキル錫の分子内配位性誘導体類、ジブチル錫オキシドとエステル化合物による反応混合物、ジブチル錫オキシドとシリケート化合物による反応混合物、およびこれらジアルキル錫オキシド誘導体のオキシ誘導体などの4価ジアルキル錫オキシドの誘導体が経済性、反応性のコントロールのし易さの点から好ましい。目的とする用途、性能に応じて、硬化促進剤の種類を選択するのが通常である。
【0058】
これらの硬化促進剤は、反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体(A)及び反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)の合計100部に対して0.1〜10部程度使用するのが好ましい。硬化促進剤の使用量が0.1部を下回ると硬化速度が遅くなることがあり、また硬化反応が充分に進行しにくくなる場合がある。一方、硬化促進剤の使用量が10部を越えると、硬化時に局所的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られにくくなるので好ましくない。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物を使用するに際しては、更に必要に応じて、フュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラックなどの補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、水添ヒマシ油およびシラスバルーンなどの充填剤;石綿、ガラス繊維およびフィラメントなどの繊維状充填剤などの充填剤を適宜使用できる。特に強度の高い硬化物を得たい場合には、主にフュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤を、反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体(A)及び反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)の合計100部に対し1〜100部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどから選ばれる充填剤を、反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体(A)及び反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)の合計100部に対し5〜200部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。もちろんこれら充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、可塑剤を充填剤と併用して使用すると硬化物の伸びを大きくできたり、多量の充填剤を混入できたりするのでより有効である。この可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;(メタ)アクリル系重合体である可塑剤の具体例としては、特開平2000−178456号等に開示されているリビングラジカル重合により製造した分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下の(メタ)アクリル系重合体や、「工業材料」1998年8月号110頁に記載の東亜合成(株)製SGOポリマー等のアクリル重合体系可塑剤;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチルなどの脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチルなどの脂肪族エステル類;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニルなどのリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤類;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類などのポリエステル系可塑剤;ポリプロピレングリコールやその誘導体などのポリエーテル類;ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレンなどのポリスチレン類;ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、塩素化パラフィン類などの可塑剤が、単独または2種類以上の混合物の形で任意に使用できる。可塑剤量は、反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体(A)及び反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)の合計100部に対して、0〜100部の範囲で使用すると好ましい結果が得られる。
【0061】
更に、必要に応じて、脱水剤、接着付与剤、接着性改良剤、物性調整剤、保存安定性改良剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、アミン系ラジカル連鎖禁止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤などの各種添加剤を適宜添加することが可能である。本発明の硬化性組成物の調製法には特に限定はなく、例えば上記した成分を配合し、ミキサー、ロール、若しくはニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が採用されうる。また、これら成分を適当に組合わせることにより、1液型や2液型の配合物をつくり使用することもできる。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物は、大気中に暴露されると水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、ゴム状弾性を有する固体へと硬化する。本発明の硬化性組成物は弾性シーラントとして特に有用であり、建造物、船舶、自動車、道路などの密封剤として使用し得る。更に、単独あるいはプライマーの助けをかりてガラス、磁器、木材、金属、樹脂成形物などの広範囲の基質に密着し得るので、種々のタイプの密封組成物および接着組成物としても使用可能である。接着剤としては、1液接着剤、2液接着剤、オープンタイム後に接着するコンタクト接着剤、粘着剤などに使用でき、更に、塗料、塗膜防水剤、食品包装材料、注型ゴム材料、型取り用材料、発泡材料としても有用である。
【0063】
本発明をより一層明らかにするために、以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(合成例1)
OH末端基分析による数平均分子量が約2,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、ポリオキシプロピレングリコールを得た。続いてこの水酸基末端ポリエーテルオリゴマーの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたオリゴマー500gに対しヘキサン10gを加えて90℃で共沸脱水を行い、ヘキサンを減圧下留去した後、窒素置換した。これに対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)30μlを加え、撹拌しながら、DMS(ジメトキシメチルシラン)9.0gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のDMSを減圧下留去し、反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体を得た。得られた重合体のH−NMR分析より、末端への反応性ケイ素基導入率は77%であることを確認した(ポリマーA)。得られたポリマーの分子量をGPC(ポリスチレン換算)にて測定したところ、数平均分子量(Mn)は約15,000であり、Mw/Mnは1.1であった。
【0065】
(合成例2)
数平均分子量約3,000のポリオキシプロピレングリコール450gと数平均分子量3,000のポリオキシプロピレントリオール50gとを、窒素置換された耐圧ガラス製反応容器に仕込んだ。上記オリゴマーの末端水酸基に対して0.9倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、続いて塩化メチレン12gを加えて130℃で反応させた後、揮発物質を除去した。続いて、NaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、3−クロロ−1−プロペン15gを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。反応終了後、減圧にして揮発物質を除去した。内容物をビーカーに取り出しヘキサンに溶解した後、珪酸アルミニウム150gで吸着処理してヘキサンを減圧除去した。次に得られたオリゴマー500gに対しヘキサン10gを加えて90℃で共沸脱水を行い、ヘキサンを減圧下留去した後、窒素置換した。これに対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)30μlを加え、撹拌しながら、DMSを11gゆっくりと滴下した。その混合溶液を80℃で2時間反応させた後、未反応のDMSを減圧下留去し、反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体を得た。得られた重合体のH−NMR分析より、末端への反応性ケイ素基導入率は72%であることを確認した(ポリマーB)。得られたポリマーの分子量をGPC(ポリスチレン換算)にて測定したところ数平均分子量(Mn)は約19,000であり、Mw/Mnは1.9であった。
【0066】
(合成例3)
105℃に加熱したトルエン43g中に、メタクリル酸メチル66g、アクリル酸2−エチルヘキシル19g、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン5.4g、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン7.0gおよびトルエン23gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル2.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%で、GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量(Mn)が1,900の共重合体を得た(ポリマーC)。
【0067】
(合成例4)
105℃に加熱したトルエン43g中に、メタクリル酸メチル72g、アクリル酸2−エチルヘキシル18g、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン4.0g、ノルマルドデシルメルカプタン4.0gおよびトルエン23gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル2.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%で、GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量(Mn)が1,600の共重合体を得た(ポリマーD)。
【0068】
(比較合成例1)
105℃に加熱したトルエン43g中に、メタクリル酸メチル72g、メタクリル酸ステアリル18g、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン4.0g、ノルマルドデシルメルカプタン4.0gおよびトルエン23gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル2.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%で、GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量(Mn)が1,800の共重合体を得た(ポリマーE)。
【0069】
(比較合成例2)
105℃に加熱したトルエン43g中に、メタクリル酸メチル72g、アクリル酸ブチル18g、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン4.0g、ノルマルドデシルメルカプタン4.0gおよびトルエン23gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル2.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%で、GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量(Mn)が1,600の共重合体を得た(ポリマーF)。
【0070】
(比較合成例3)
105℃に加熱したトルエン43g中に、アクリル酸ブチル66g、アクリル酸2−エチルヘキシル19g、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン5.4g、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン7.0gおよびトルエン23gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル2.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%で、GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量(Mn)が2,100の共重合体を得た(ポリマーG)。
【0071】
(実施例1)
合成例1で得られたオキシアルキレン重合体(ポリマーA)と合成例3で得られた共重合体(ポリマーC)を、固形分比(重量比)60/40でブレンドし、エバポレーターを用いて、減圧下、110℃の加熱条件で脱揮を行ない、固形分濃度99%以上の組成物を得た。次いで、得られた組成物に硬化促進剤として日東化成(株)製のU−220、並びに、脱水剤及び接着付与剤を表1に記載する規定量添加して本発明の硬化性樹脂組成物を得た。なお、表1中の配合欄における数字は重量部を示している。
【0072】
(実施例2)
オキシアルキレン重合体として合成例2で得られた重合体(ポリマーB)を使用する以外は、実施例1と同様にして本発明の硬化性樹脂組成物を得た。
【0073】
(実施例3)
共重合体として合成例4で得られた重合体(ポリマーD)を使用する以外は、実施例1と同様にして本発明の硬化性樹脂組成物を得た。
【0074】
(比較例1〜3)
共重合体として比較合成例1〜3で得られた共重合体(ポリマーE、F、G)を使用する以外は、実施例1と同様にして、比較例となる硬化性樹脂組成物を得た。
【0075】
このようにして得られた各硬化性樹脂組成物の透明性を目視で観察した。
【0076】
各硬化性樹脂組成物を厚さ3mmのシート状に展延し、23℃で3日放置した後、50℃で4日間加熱し、ゴム状シートを得た。ゴム状シートから、JIS3号ダンベル片を打ち抜き、引張物性を測定し、100%伸長時のモジュラスと破断時の伸びおよび強度を測定した。
【0077】
また、各原料に充填剤として炭酸カルシウム(白石工業(株)製CCR)を本、発明のA成分およびB成分の合計100部に対し50部混合した配合物を、アルミニウム板A−1050P(100x25x2mmの試験片)に0.05mm厚に塗布し、23℃50%の環境下14日間放置することで硬化させた後、引張剪断接着強さを測定した。
【0078】
共重合体の合成に際しての単量体の取り扱いやすさは、すべての単量体が室温で液体であり、合成に際して単量体どうしを混合することが容易なものを「良好」、一部の単量体が室温で固体であり、合成に際して単量体どうしを混合する時に、固体の単量体を加熱融解する必要があるものを「不良」とした。
【0079】
上記物性評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
比較例2については、硬化性組成物が相分離したために物性の測定ができなかった。
表1から明らかなように、実施例1〜3の本発明の硬化性樹脂組成物は、原料の取り扱いが容易であるとともに、組成物の透明性が比較例1や比較例3と比較して同等以上であり、かつ、得られる硬化物の力学物性及び接着物性が優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体、
(B)シロキサン結合を形成することによって架橋しうるケイ素含有官能基を有し、分子鎖が実質的に、(b−1)炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、(b−2)炭素数7〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とからなる共重合体、及び
(C)硬化促進剤
を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
重合体(A)が、分子鎖が実質的に一般式(1):
−CH(CH)CH−O− (1)
で示される繰り返し単位からなる重合体である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
重合体(A)が、数平均分子量が6,000以上であって、Mw/Mnが1.6以下である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
重合体(A)の主鎖が、開始剤の存在下、複合金属シアン化錯体、セシウム化合物およびP=N結合を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を触媒としてアルキレンオキシドを重合させて得られるものである請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−100862(P2010−100862A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27565(P2010−27565)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【分割の表示】特願2003−538264(P2003−538264)の分割
【原出願日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】