説明

硬化性水性組成物

【課題】硬化性水性組成物、この硬化性水性組成物で処理された基体を形成する方法、およびこのように処理された基体を提供する。
【解決手段】硬化性水性組成物、処理された基体を形成する方法および処理された基体はホルムアルデヒドを含まないことができる。硬化性水性組成物は、エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜9重量%のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含むエマルションポリマーと、前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜15重量%の量のポリオールとを含み;当該水性組成物は、カルボン酸含有ポリマーの全重量を基準にして0.5〜9重量%のカルボン酸モノマーを重合単位として含むカルボン酸含有ポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性水性組成物、硬化性水性組成物を用いて処理された基体を形成する方法、およびこのように処理された基体に関する。硬化性水性組成物は、エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜9重量%のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含むエマルションポリマー;およびエマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜15重量%の量のポリオールを含み、当該硬化性水性組成物は、全てのカルボン酸含有ポリマーの合計重量を基準にして0.5〜9重量%のカルボン酸モノマーを重合単位として含むカルボン酸含有ポリマーを含む。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,451,432号は、特定の共重合されたエチレン性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体を含み、バインダーが不揮発性塩基で部分的に中和されている、ホルムアルデヒド非含有水性組成物で可とう性で多孔質の基体を処理する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,451,432号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理された基体の改良された特性は依然として望まれている。共重合されたエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを含む特定のエマルションポリマー;および特定のポリオール、特にアルカノールアミンを含み、重合されたカルボン酸含量の合計で限定される水性組成物が、実質的にホルムアルデヒドを含まない組成物およびそれを使用する方法を維持しつつ所望の利点を提供することが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の形態においては、エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜9重量%のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含むエマルションポリマーと、前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜15重量%の量のポリオールとを含み;前記エマルションポリマーの重量を基準にして合計で0.5〜9重量%のカルボン酸モノマーを重合単位として含む硬化性水性組成物が提供される。
本発明の第2の形態においては、a)エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜9重量%のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含むエマルションポリマーと、前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜15重量%の量のポリオールとを含み;前記エマルションポリマーの重量を基準にして合計で0.5〜9重量%のカルボン酸モノマーを重合単位として含む硬化性水性組成物を形成し;b)前記硬化性水性組成物と可とう性の基体とを接触させ;並びに、c)120℃〜220℃の温度で前記硬化性水性組成物を加熱する;ことを含む基体を形成する方法が提供される。
本発明の第3の形態においては、本発明の第2の形態の方法によって形成される処理された基体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
硬化性水性組成物はエマルションポリマー、すなわち水性乳化重合プロセスにおいてエチレン性不飽和モノマーの付加重合により製造されるポリマーを含む。本明細書において「水性組成物」とは、連続相が水、または主として水を含むが水混和性溶媒も含む混合物である組成物を意味する。本明細書において「硬化性組成物」とは、加えられるエネルギー、最も典型的には加熱の作用の下で、共有結合形成のような化学的処理をある程度受けるものである。エマルションポリマーは、共重合単位として、エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜9重量%、好ましくは2〜8重量%のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、例えば、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、これらの無水物、塩およびこれらの混合物などを含む。好ましいのはイタコン酸である。
【0007】
エマルションポリマーは、ジカルボン酸モノマーに加えて、少なくとも1種の他の共重合されたエチレン性不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリルエステルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、ウレイド官能性(メタ)アクリラートおよび(メタ)アクリル酸のアセトアセタート、アセトアミドもしくはシアノアセタート;スチレンもしくは置換スチレン;ビニルトルエン;ブタジエン;酢酸ビニルもしくは他のビニルエステル;ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン;並びに(メタ)アクリロニトリルなどを含む。別の用語が後に続く用語「(メタ)」の使用、例えば、(メタ)アクリラートまたは(メタ)アクリルアミドは、本開示を通じて使用される場合、それぞれ、アクリラートおよびメタクリラートの双方、またはアクリルアミドおよびメタクリルアミドの双方を意味する。好ましくは、重合の際にまたは後の処理中にホルムアルデヒドを発生させうるモノマー、例えば、N−アルキロール(メタ)アクリルアミドは除外される。特定の実施形態においては、エマルションポリマーは、ポリマーの重量を基準にして、0〜5重量%、または別の場合には0〜0.1重量%の共重合された多エチレン性不飽和モノマーを含む。多エチレン性不飽和モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラートおよびジビニルベンゼンが挙げられる。
【0008】
エマルションポリマーは共重合されたモノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーを含むことができる。モノカルボン酸モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸;並びに、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸のモノアルキルエステルが挙げられる。
【0009】
異なる組成を有するエマルションポリマーの混合物も意図される。2種以上のエマルションポリマーの混合物については、共重合されたジカルボン酸モノマー含量は、そのなかのエマルションポリマーの数に関係なく、エマルションポリマーの組成物全体から決定される。
【0010】
水性エマルションポリマーを製造するために使用される乳化重合技術は、例えば、米国特許第4,325,856号;第4,654,397号および第4,814,373号などに開示されているように当該技術分野において周知である。例えば、アニオン性および/または非イオン性乳化剤、例えば、アルカリ金属またはアンモニウムアルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸、脂肪酸およびオキシエチル化アルキルフェノールのような従来の界面活性剤が使用されうる。使用される界面活性剤の量は、通常、全モノマーの重量を基準にして0.1重量%〜6重量%である。熱開始またはレドックス開始プロセスが使用されうる。例えば、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、アンモニウムおよび/またはアルカリ過硫酸塩のような従来のフリーラジカル開始剤が、典型的には、全モノマーの重量を基準にして0.01重量%〜3.0重量%の量で使用されうる。例えば、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、イソアスコルビン酸、硫酸ヒドロキシルアミンおよび亜硫酸水素ナトリウムなどの好適な還元剤とカップルになった同じ開始剤を使用するレドックス系が同様の量で、場合によっては、例えば、鉄および銅のような金属イオンと組み合わせて、場合によっては金属のための錯化剤をさらに含んで使用されうる。ポリマーの分子量を低下させるために、メルカプタンのような連鎖移動剤が使用されうる。モノマー混合物はそのままでまたは水中のエマルションとして添加されうる。モノマー混合物は1回の添加で、または複数回の添加で、または反応期間にわたって均一なもしくは変化する組成を用いて連続的に添加されうる。例えば、フリーラジカル開始剤、酸化剤、還元剤、連鎖移動剤、中和剤、界面活性剤および分散剤のような追加の成分が、前記工程のいずれかの前に、いずれかの際にまたはいずれかの後で添加されうる。例えば、米国特許第4,384,056号および第4,539,361号に開示されるプロセスのような、多モード粒子サイズ分布を生じさせるプロセスが使用されうる。
【0011】
本発明の別の実施形態においては、水性エマルションポリマーは、少なくとも2つの段階において組成が異なるものが逐次的な様式で重合される多段階乳化重合プロセスによって製造されうる。このようなプロセスは、通常、少なくとも2つの相互に非相溶性のポリマー組成物の形成を結果的にもたらし、それにより、結果的に、ポリマー粒子内に少なくとも2つの相の形成をもたらす。このような粒子は、例えば、コア/シェルまたはコア/シース粒子、シェル相が不完全にコアを封入しているコア/シェル粒子、複数のコアを有するコア/シェル粒子、および相互侵入網目(interpenetrating network)粒子のような様々な構造の2以上の相から構成される。多段階エマルションポリマーのそれぞれの段階は、エマルションポリマーについて本明細書において上述されたものから選択されるモノマー、界面活性剤、連鎖移動剤などを含むことができる。多段階エマルションポリマーについては、共重合されたジカルボン酸モノマー含量は、ポリマー中の段階または相の数とは関係なく、エマルションポリマーの組成全体から決定される。このような多段階エマルションポリマーを製造するのに使用される重合技術は、例えば、米国特許第4,325,856号、第4,654,397号、および第4,814,373号におけるように当該技術分野において周知である。
【0012】
エマルションポリマーの計算ガラス転移温度(Tg)は典型的には−65℃〜65℃、または別の場合には、−55℃〜20℃である。本明細書においては、ポリマーのTgはフォックス(Fox)式(T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.,第1巻、第3号、123ページ(1956))を用いて計算されたものである。すなわち、モノマーM1およびM2のコポリマーのTgを計算するためには、
【数1】

式中、
Tg(calc.)はコポリマーについて計算されるガラス転移温度である;
w(M1)はコポリマー中のモノマーM1の重量分率である;
w(M2)はコポリマー中のモノマーM2の重量分率である;
Tg(M1)はM1のホモポリマーのガラス転移温度である;
Tg(M2)はM2のホモポリマーのガラス転移温度である;
全ての温度は°K単位である。
【0013】
ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、インターサイエンスパブリッシャーズ(Interscience Publishers)の編集J.BrandrupおよびE.H.Immergutによる「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」に認められうる。
【0014】
エマルションポリマー粒子の平均粒子直径は、ニューヨーク州、ホルツビルのブルックハーベンインストルメントコーポレーション(Brookhaven Instrument Corp.)によって供給される、ブルックハーベンモデル(Brookhaven Model)BI−90パーティクルサイザーで測定した場合、典型的には30ナノメートル〜500ナノメートル、好ましくは60ナノメートル〜150ナノメートルである。
【0015】
硬化性水性組成物は、エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜15重量%の量でポリオールを含む。本明細書においては、ポリオールとは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する分子を意味する。ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、1000未満の分子量を有する化合物、例えば、エチレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコーレテッド尿素(glycollated urea)、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなどであり得る。好ましいポリオールには、少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、分子量が1000未満の化合物が挙げられる。より好ましいポリオールには、少なくとも2つのヒドロキシル基および少なくとも1つのアミノ基を有し、分子量が1000未満の化合物、例えば、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。ある実施形態においては、ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含み1000以上のMnを有する付加ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、部分加水分解ポリ酢酸ビニル、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリラートまたはヒドロキシプロピル(メタ)アクリラートのホモポリマーまたはコポリマーなどであることができる。好ましい付加ポリマーポリオールは、共重合単位として、アリルアルコール、または3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールを含む。
【0016】
本発明の硬化性水性組成物は、カルボン酸含有ポリマーの全重量を基準にして0.5重量%〜9重量%のカルボン酸モノマーを重合単位として含むカルボン酸含有ポリマーを含む。すなわち、硬化性水性組成物は場合によっては、エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜9重量%のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含むエマルションポリマー、独立して場合によっては水性媒体に分散された1種以上のポリマー、並びに独立して場合によっては硬化性水性組成物の水性媒体中に可溶性である1種以上のポリマーに加えて、1種以上の水性エマルションポリマーを含むことができる。このようなポリマーは500を超える分子量を有するオリゴマー組成物を含むことができる。とにかく、硬化性水性組成物は、すべてのカルボン酸含有ポリマーの合計で、カルボン酸含有ポリマーの全重量を基準にして、0.5〜9重量%のカルボン酸モノマーを重合単位として含み、カルボン酸含有モノマーには、1〜100の任意の数のカルボン酸基を含むモノマーが挙げられる。
【0017】
ある実施形態においては、硬化性水性組成物はリン含有物質を含むことができ、このリン含有物質は、例えば、アルカリ金属ジ亜リン酸塩、アルカリ金属亜リン酸塩、アルカリ金属ポリリン酸塩、リン酸水素アルカリ金属、ポリリン酸、およびアルキルホスフィン酸のようなリン含有化合物であることができ、または、リン含有物質はリン含有基を有するオリゴマーもしくはポリマー、例えば、ジ亜リン酸ナトリウムの存在下で形成されるアクリル酸および/またはマレイン酸の付加ポリマー、例えば、亜リン酸塩連鎖移動剤またはターミネーターの存在下でエチレン性不飽和モノマーから製造されるポリマーのような付加ポリマー、並びに、例えば、共重合されたメタクリル酸ホスホエチルおよび類似のホスホン酸エステル、並びに共重合されたビニルスルホン酸モノマーおよびそれらの塩のような酸官能性モノマー残基を含む付加ポリマーであることができる。リン含有物質は、本発明のポリマーの重量を基準にして、0重量%〜40重量%、好ましくは0重量%〜5重量%、さらに好ましくは0重量%〜2.5重量%、より好ましくは0重量%〜1重量%、およびさらにより好ましくは0重量%〜0.5重量%の量で使用されうる。
【0018】
本発明の硬化性水性組成物は好ましくはホルムアルデヒドを含まない硬化性組成物である。本明細書において、「ホルムアルデヒドを含まない組成物」とは、組成物が実質的にホルムアルデヒドを含まず、かつ乾燥および/または硬化の結果として実質的なホルムアルデヒドを生じさせないことを意味する。硬化性組成物のホルムアルデヒド含有量を最小限にするために、本発明のエマルションポリマーを製造する場合に、例えば、それら自体がホルムアルデヒドを含まず、製造プロセス中にホルムアルデヒドを発生させず、かつ基体の処理中にホルムアルデヒドを発生または放出させない、開始剤、還元剤、連鎖移動剤、殺生物剤、界面活性剤などのような重合添加剤を使用するのが好ましい。水性組成物中で低レベルのホルムアルデヒドが許容される場合、またはホルムアルデヒドを発生または放出させる添加剤を使用することを強制する理由が存在する場合には、このような組成物が使用されうる。
【0019】
硬化性水性組成物は、さらに、従来の処理成分、例えば、乳化剤、顔料、充填剤または増量剤、移行防止剤(anti−migration aid)、硬化剤、造膜助剤、界面活性剤、殺生物剤、可塑剤、有機シラン、発泡抑制剤、腐蝕防止剤、着色剤、ワックス、本発明のではない他のポリマー、および酸化防止剤などを含むことができる。
【0020】
本発明のある実施形態においては、a)本発明の硬化性水性組成物を形成し;b)可とう性の基体を硬化性水性組成物と接触させ;およびc)硬化性水性組成物を120〜220℃の温度で加熱する;ことを含む、処理された基体を形成する方法が提供される。可とう性の基体には、紙、皮革;織布または不織布;フェルトおよびマットもしくは繊維の他の集合体、並びに繊維が挙げられる。繊維を含む基体には、綿、合成繊維、例えば、ポリエステルおよびレーヨン、ガラス、これらの混合物などが挙げられうる。可とう性の基体は、従来の適用技術、例えば、エアスプレイ、エアレススプレイ、パディング、飽和、ロールコーティング、カーテンコーティング、印刷などを用いて、硬化性水性組成物と接触させられる。硬化性水性組成物を120〜220℃、好ましくは150〜180℃の温度で、許容可能な硬化の水準を達成するのに充分な時間、例えば、1分間〜20分間、好ましくは2分間〜10分間加熱することが行われる。乾燥および硬化機能は、所望の場合には、2以上の別個の工程において行われうる。例えば、組成物は最初に、組成物を実質的に乾燥させのに充分であるが実質的に組成物を硬化させない温度および時間で加熱されることができ、次いで、二回目に、硬化を行うために、より高い温度でおよび/またはより長い期間で加熱されうる。「Bステージング」と称されるこのような手順は、バインダー処理された不織物、例えば、巻かれた形態の不織物を提供するために使用されることができ、これは後の段階で、硬化プロセスと同時に特定の形状に形成または成形するか、または形成または成形することなしに硬化されることができる。
【実施例】
【0021】
【表1】

【0022】
サンプルA:エマルションポリマーの製造
共重合単位として、エマルションポリマーの重量を基準にして5重量%のイタコン酸を含むエマルションポリマーが、米国特許第5,451,432号の実施例1の教示に従って製造された。
【0023】
実施例1:
サンプルAは、ビチューメン屋根用膜における使用のためのニードル孔あけされたポリエステル不織物についてのバインダーとして評価された。この用途のための鍵となる特性は、ビチューメンに浸けられた場合のまたはビチューメン膜が設置中に再加熱される場合の不織物の寸法安定性を示す、静的熱寸法安定性である。この溶液は、単純に混合および希釈することによって、以下の表(値はグラム単位)におけるように製造された。
【0024】
この溶液は、次いで、マチスフーラード(Mathis foulard)を用いる、150g/mのニードル孔あけされたポリエステル不織物に適用されて、不織物に約22〜24%のバインダーの添加量を達成した。このサンプルは、次いで、マチス強制空気再循環オーブン中で180℃で3分間、乾燥および硬化させられた。サンプルの一部分は200℃で3分間の第2の硬化にもかけられて、完全な硬化を確実にした。サンプルは硬化中に張力をかけて置かれなかった。次いで、サンプルは、製造の機械方向に5cm幅のストリップに切断されて、それぞれのストリップについて2kgのおもりを取り付けて200℃のオーブン中で、10分間つるされた。オーブンから取り出された後で、機械方向の伸びおよび横方向の収縮が、次いで測定され、元の値のパーセンテージとして表された。
【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
本発明の実施例1の硬化した水性組成物は、比較例Aのと比較して、低減された伸びによって示されるように、よりすぐれた硬化を示す。
【0028】
実施例2:
顔料印刷ペーストが以下の表(値は重量%単位)におけるように調製された。これらは約25,000cps(LVD−4/6rpm)のブルックフィールド粘度を有していた。これらペーストはスクリーン印刷によって綿織物布地上に適用された。このサンプルは、次いで、150℃で3分間マチス強制空気再循環オーブン中で乾燥および硬化させられた。これらサンプルは、次いで、洗浄および乾燥を3サイクルさせられた。各サイクルにおいて、Dr.Lange Colour Pen(ドクターランゲカラーペン)モデルLMG159を用いて、その色(Lab値)が測定された。有意な色の変化は劣った洗浄耐久性の指標である。値は元の色に対する変化として表される。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
【表6】

【0032】
本発明の実施例2の硬化した水性組成物は、比較例Bのと比較して、改良された色保持によって示されるように、より優れた洗浄耐久性を示す。
【0033】
サンプルB:エマルションポリマーの製造
共重合単位として、エマルションポリマーの重量を基準にして5重量%のイタコン酸を含むエマルションポリマーが、米国特許第5,451,432号の実施例1の教示に従って製造された。
【0034】
実施例3:
飽和セルロール基体が水および溶媒耐性について評価された。比較例Cにおいては、サンプルBエマルションポリマーの中和されていない部分が使用された。比較例Dにおいては、水酸化カリウムで40%の程度まで中和されたサンプルBエマルションポリマーの部分が使用された。実施例3においては、TEAで40%の程度まで中和されたサンプルBエマルションポリマーの部分が使用された。これらサンプルは、次いで、マチスフーラードを用いてワットマン(Whatman)#4ペーパーに適用され、150℃で3分間硬化させられた。これらサンプルは、次いで、乾燥で、または水もしくはイソプロパノール中での10分間の浸漬後に、機械方向に引張強さについて試験された。
【0035】
【表7】

【0036】
本発明の実施例3の硬化した水性組成物は、比較例CまたはDのと比較して、イソプロパノールに浸漬した後の実質的により大きな引張強さによって示されるように、より優れた耐溶媒性を示す。
【0037】
実施例4:
顔料印刷用途における硬化した水性組成物の洗浄耐久性が評価された。この配合物は以下の表4.1に示される。
【0038】
【表8】

【0039】
配合されたペーストは、スクリーン印刷によって白色綿布上に適用された。次いで、印刷された布は80℃で3分間乾燥させられ、そして150℃または180℃で3分間硬化させられた。これらサンプルが使用されて、1056gの重量および20回でクロック(crock)堅牢度を試験した。洗浄耐久性は、洗濯機において40℃で洗浄し、マイクロマッチプラス(Micromatch Plus)装置(Sheen Instruments Ltd.)を使用してデルタL値を測定することにより評価された。結果は以下に示される。
【0040】
【表9】

【0041】
本発明の実施例4の硬化した水性組成物は、比較例Eのと比較して、改良された色保持によって示されるように、優れた洗浄耐久性を示す。
【0042】
実施例5:
実施例5並びに比較例FおよびGの製造について:ジエタノールアミン(DEA)、水およびポリアクリル酸(Mw10,000および固形分45%)が一緒に混合されたものに、サンプルBエマルションポリマー(35%固形分含量)を添加した。ポリアクリル酸(pAA)は、ジ亜リン酸ナトリウムを連鎖移動剤として使用することなく製造された。量は表5.1に示される。
Werner Mathis(ワーナーマチス)AGカレンダー上で、3barの圧力および3m/sの速度で、ワットマン#4濾紙がこのサンプルで飽和され、次いで、このサンプルはワーナーマチスAGオーブン内で3分間150℃で硬化させられた。添加量はサンプルあたり21%±1.5%であった。硬化したシートは2.5cm×10cmのストリップに切り出され、イソプロピルアルコールに10分間浸漬した後で引張強さを試験した。
【0043】
【表10】

【0044】
本発明の実施例5の硬化した水性組成物は、比較例FおよびGのと比較して、イソプロパノール溶媒に曝露された場合に優れた引張強さの値を示し、これは硬化した水性組成物処理セルロース系不織物の改良された硬化および有用な性能の指標であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜9重量%のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含むエマルションポリマーと、
前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜15重量%の量のポリオールと
を含む硬化性水性組成物であって;
当該水性組成物が、カルボン酸含有ポリマーの全重量を基準にして0.5〜9重量%のカルボン酸モノマーを重合単位として含むカルボン酸含有ポリマーを含む;
硬化性水性組成物。
【請求項2】
前記ポリオールが少なくとも2つのヒドロキシル基を有し分子量が1000未満の化合物である、請求項1に記載の硬化性水性組成物。
【請求項3】
前記ポリオールがジイソプロパノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよびジエタノールアミンからなる群から選択されるヒドロキシルアミンである、請求項2に記載の硬化性水性組成物。
【請求項4】
a)エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜9重量%のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含むエマルションポリマーと、
前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.5〜15重量%の量のポリオールと
を含む硬化性水性組成物であって;
当該水性組成物が、カルボン酸含有ポリマーの全重量を基準にして0.5〜9重量%のカルボン酸モノマーを重合単位として含むカルボン酸含有ポリマーを含む;
硬化性水性組成物を形成し;
b)前記硬化性水性組成物と可とう性の基体とを接触させ;並びに、
c)120℃〜220℃の温度で前記硬化性水性組成物を加熱する;
ことを含む、処理された基体を形成する方法。
【請求項5】
前記ポリオールが少なくとも2つのヒドロキシル基を有し分子量が1000未満の化合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオールがジイソプロパノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよびジエタノールアミンからなる群から選択されるヒドロキシルアミンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
可とう性の基体が織布または不織布である請求項4に記載の方法。
【請求項8】
請求項4に記載の方法によって形成された基体。

【公開番号】特開2011−94109(P2011−94109A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−202737(P2010−202737)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】