説明

硬化性組成物及びそれから作製されるバイオフィルム耐性コーティング

本発明は、バイオフィルムの形成を遅延させるために用いる硬化性組成物を提供する。本発明はまた、硬化性組成物を含むコーティングに関する。硬化性組成物は、ペンダント長鎖脂肪族基を有するエチレン性不飽和単位、ペンダントポリ(オキシアルキレン)基を有するエチレン性不飽和単位、及びペンダント基材反応性基を有するエチレン性不飽和単位由来のポリマー、並びに架橋剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
バイオフィルムは、細胞外ポリマー(exopolymer)、典型的には多糖類及び他の巨大分子の高度に水和されたマトリックスに埋め込まれた微生物の集合体である。バイオフィルムは、単一又は複数の微生物種を包含する場合があり、医療器具(カテーテルが挙げられる)、汚れ、パイプライン、歯、粘膜及び熱交換器のような多様な基材に容易に付着する。特定の環境では、コロニー化している微生物は、バイオフィルム(固着性)及び自由生活(free-living)(浮遊性)形態の両方で増殖することができ、バイオフィルム関連細胞は、1,000〜10,000:1の比で同じ種の浮遊性細胞の数を上回る場合がある。浮遊性細胞の増殖は、抗微生物剤又は殺菌剤処理により制御されることができるが、バイオフィルム自体は、事実上、処理後のコロニー化、感染及び/又はバイオフィルムの増殖の再発を導く可能性がある細胞の貯蔵所(reservoir)を提供する処理には効果がない場合がある。
【0002】
微生物のコロニー化防止及びバイオフィルム関連微生物の根絶は、多くの様々な分野で、重要かつ解決が困難であることが多い問題である。殺生物剤、例えば抗生物質に対して比較的感受性を示す浮遊性生物とは異なり、バイオフィルム関連微生物は、多くの抗微生物剤に対して高度な耐性を示すことが多い。ある研究では、バイオフィルム関連細菌は、浮遊性培地で増殖した同じ種の細菌を撲滅するのに有効な濃度の20倍の抗生物質の濃度に対しても生存することができた(ニッケル(Nickel)、1985年)。生物がバイオフィルムから単離され、浮遊性培地で増殖するとき、バイオフィルムの前駆体に関連する特性の多く、具体的には抗微生物剤処理に対する耐性が失われる。バイオフィルムでは、糖衣マトリックスは、抗体及び食細胞のような生体防御機構並びに特定の抗微生物剤に対する障壁を提供する防御機構の1つである。バイオフィルムの抗微生物剤耐性に関する他の可能性のある理由としては、多くの微生物の静止増殖状態、実質的に改変された遺伝子及びタンパク質発現プロファイル(expression profile)(浮遊性細胞と比べて)、及び「パーシスター(persister)」の存在;確率論的方式において抗微生物剤耐性と比較した微生物の亜集団が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基材を処理してバイオフィルム形成に対して耐性にするための多くの組成物が当該技術分野において既知であるが、基材を更にバイオフィルム耐性にし、洗浄をより容易にするために、更に改善された基材、具体的には、ポリマー表面、セラミックス、ガラス及び石の処理用組成物を提供することに対する要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、バイオフィルムの形成を遅延させる、又は形成されたバイオフィルムの遊離を促進するために用いられる硬化性組成物を提供する。硬化性組成物は、
a)ペンダント長鎖脂肪族基(pendent long-chain aliphatic group)を有するエチレン性不飽和モノマー単位;ペンダントポリ(オキシアルキレン)を有するエチレン性不飽和モノマー単位;及びペンダント基質反応性基を有するエチレン性不飽和モノマー単位由来のポリマーと、
b)架橋剤と、を含む。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、硬化性組成物及び溶媒を含むコーティング組成物を含み、それによりコーティング組成物はバイオフィルム耐性コーティングを付与するために基材に塗布される。別の実施形態では、本発明は更に、バイオフィルム耐性コーティングを提供するために、即時コーティング組成物で基材、具体的には硬質基材をコーティングする方法を提供する。ブラッシング、スプレー、ディッピング、ローリング、スプレッディング等のような広範なコーティング方法が用いられて、本発明の組成物を塗布することができる。基材上で得られたコーティングは、室温又は40〜300℃の高温で硬化され得る。幾つかの実施形態では、室温又は高温にて、硬化は触媒の影響を受け得る。
【0006】
本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリロイル」は、アクリル酸及びメタクリル酸のエステル、チオエステル及びアミドを含む、アクリロイル及びメタクリロイル基/化合物の両方を含む。少なくとも幾つかの実施態様では、アクリレート基が好ましい。
【0007】
「エチレン性不飽和」とは、ビニル又は(メタ)アクリロイル基のような、フリーラジカル重合性C=C基を有する化合物又は成分を意味する。
【0008】
本明細書の端点による数の範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」はまた、その文脈で特に明確な指示がない限り、複数形も含む。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物への言及は、2種以上の化合物の混合物を含む。更に、用語「又は」は、その文脈で特に明確な指示がない限り、「及び/又は」の意味で一般に使用される。
【0010】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分量、性質の測定値、例えば表面エネルギー、接触角などを表す全ての数は、全ての例において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特に指示がない限り、明細書及び添付された特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、当業者により本発明の教示を利用して得ることが求められる所望の性質に応じて変化する可能性がある近似値である。最低限でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の適用によって解釈されなければならない。本発明の広範囲で示す数値範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかしながら、いずれの数値もそれらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差及び不確実性を本来包含する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】アルキル鎖保持モノマーとしてラウリルメタクリレートを使用してコーティングされた表面上のバイオフィルムの定着に関するデータ。試験で用いられた細菌は、エアロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophilia)。
【図2】アルキル鎖保持モノマーとしてラウリルメタクリレートを使用してコーティングされた表面上のバイオフィルムの定着に関するデータ。試験で用いられた細菌は、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)。
【図3】アルキル鎖保持モノマーとしてステアリルメタクリレートを使用してコーティングされた表面上のバイオフィルムの定着に関するデータ。試験で用いられた細菌は、スタフィロコッカス・エピデルミディス。
【図4】アルキル鎖保持モノマーとしてラウリルメタクリレートを使用してコーティングされた表面上のバイオフィルムの定着に関するデータ。試験で用いられた細菌は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)。
【図5】アルキル鎖保持モノマーとしてステアリルメタクリレートを使用してコーティングされた表面上のバイオフィルムの定着に関するデータ。試験で用いられた細菌は、ストレプトコッカス・ミュータンス。
【図6】アルキル鎖保持モノマーとしてメタクリル酸イソデシルを使用してコーティングされた表面上のバイオフィルムの定着に関するデータ。試験で用いられた細菌は、スタフィロコッカス・エピデルミディス。
【図7】アルキル鎖保持モノマーとしてn−デシルメタクリレートを使用してコーティングされた表面上のバイオフィルムの定着に関するデータ。試験で用いられた細菌は、スタフィロコッカス・エピデルミディス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
a)ペンダント長鎖脂肪族基を有するエチレン性不飽和モノマー単位、ペンダントポリ(オキシアルキレン)基を有するエチレン性不飽和モノマー単位、及びペンダント基材反応性基を有するエチレン性不飽和モノマー単位由来のポリマーと、
b)架橋剤と、を含む、硬化性組成物を提供する。
【0013】
より具体的には、本発明の第1成分ポリマーは、
10〜70重量%、好ましくは15〜40重量%のペンダント長鎖脂肪族基を有するエチレン性不飽和単位と、
10〜80重量%、好ましくは40〜75重量%のペンダントポリ(オキシアルキレン)基を有するエチレン性不飽和単位と、
1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%のペンダント[基材反応性]基を有するエチレン性不飽和単位と、
0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の他のモノマーと、を含む。
【0014】
「基材反応性官能基」は、選択された基材表面で官能基とイオン結合又は共有結合を形成するように選択される。好ましくは、「基材反応性官能基」は、基材とともに形成された結合が、使用条件下で非加水分解性である、即ち実質的に加水分解しないように選択される。かかる制限は、シリカ質基材表面とともに形成されるシロキサン結合が、持続的に加水分解し、再形成されると考えられる、シラン官能基の使用を除外するものではない。
【0015】
架橋剤は、更に、第1成分ポリマーのペンダント基材反応性官能基と共反応性である、即ちそれと共有結合を形成する官能基を有するように選択される。任意の「他のモノマー」は、反応性官能基を有さず、第1成分ポリマーの物理的特性を修正するために添加される。
【0016】
長鎖脂肪族基を有するモノマーは、一般式
−Q−R、(I)(式中、
は、一般式
C=C(R11)−(式中、Rは、H又はC〜Cアルキル、好ましくはR11はH又はメチルである)のエチレン性不飽和重合性基である)である。
【0017】
Qは、有機連結基であり、飽和又は不飽和であってよい直鎖、分岐鎖、又は環状構造を挙げることができる。好ましくは、各二価Q基は、独立して、任意にヘテロ原子及び/又は官能基を含む直鎖基である。例としては、約2〜約16個の炭素原子(好ましくは約3〜約個の炭素原子)を含有する、1つ以上のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)で置換された二価アルキレン基、アリーレン基若しくはこれらの混合物、官能基(例えば、カルボニル、アミド、又はスルホアミド)、又はその両方が挙げられる。
【0018】
Qの例としては、以下のものが挙げられる(式中、各rは独立して1〜約10の整数であり、又、Rは水素、アリール、又は1〜約4個の炭素原子のアルキルである)。したがって、記載された構造は非方向性である。
【0019】
【表1】

【0020】
及びQ基に関して、まとめるとR−Qはビニル、アリル、ビニルオキシ、アリルオキシ、及び(メタ)アクリロイル基を含んでよいことが理解されよう。好ましくは、R−Qは、(メタ)アクリロイル基を含む。
【0021】
は、長鎖脂肪族基;即ち、8〜75個、好ましくは10〜50個、より好ましくは10〜24個の炭素原子を有する一価、直鎖又は分岐鎖、飽和、環状又はアクリル(又はこれらの組み合わせ)脂肪族基である。好ましくは、Rは、−C2n+1(式中、nは8〜75個、好ましくは10〜24個の炭素原子である)の構造を有する直鎖、一価アルキル基である。式Iの化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートエステル、及びチオエステル、長鎖アルキルビニルエステル、長鎖ビニルエステル及び長鎖アルキル(メタ)アクリルアミドから選択されてよい。
【0022】
即時硬化性組成物のモノマー成分は、1種以上の1官能性ポリ(アルキレンオキシド)モノマーを含む。モノマーは、1つの末端重合性エチレン性不飽和基(例えば、1つのみの(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基又はアリルオキシ基)、ポリ(アルキレンオキシド)部分(前述のような)、及びOH、(C〜C)アルコキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、又は(C〜C)アルカリルオキシ基のような第2非フリーラジカル重合性末端基を含む。これらの基は、直鎖又は分枝鎖であることができる。
【0023】
ポリ(アルキレンオキシド)部分は、一般式
−(CH(R)−CH−O−)−(CH−CH−O−)−(式中、mは0であってよく、nは少なくとも5であり、又、nとmのモル比(n:m)は2:1を超え、好ましくは3:1を超え、Rは(C〜C)アルキル基である)である。−CH(R)−CH−O−部分及び−CH−CH−O−部分の構造分布は、ランダム又はブロックであってよい。好ましくは、m+nは少なくとも5であり、より好ましくは少なくとも20である。好ましくはm+nは500未満であり、より好ましくは150未満である。ポリ(アルキレンオキシド)部分は、一般にm及びn単位の様々な量又は集団の混合物であるので、m及びnが非整数であり得ることは理解されよう。
【0024】
好ましい1官能性ポリ(アルキレンオキシド)モノマーは、式:
−Q−(CH(R)−CH−O−)−(CH−CH−O−)−R (II)
(式中、
は、式Iで既に記載されたような、エチレン性不飽和重合性基であり、
は、(C〜C)アルキル基であり、
は、H又はR又はアリール基又はこれらの組み合わせであり、
Qは、式Iで既に記載されたような、二価連結基であり、
nは少なくとも5であり、mは0であってよく、n+mは少なくとも5、好ましくは少なくとも20であり、又、n:mのモル比は少なくとも2:1(好ましくは、少なくとも3:1)である)である。
【0025】
好適な1官能性ポリ(アルキレンオキシド)モノマーの例としては、ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。かかるモノマーとしては、典型的には、(C〜C)アルキル、アリール(例えば、フェニル)、(C〜C)アルカリル、アリール(C〜C)、又はヒドロキシ基のような非反応性末端基(フリーラジカル重合について)が挙げられる。これらの基は、直鎖又は分枝鎖であることができる。これらのモノマーは、広範な分子量のものであることができ、サートマー社(Sartomer Company)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))、新中村化学工業株式会社(Shinnakamura Chemical Co., Ltd.)(日本、東京)、アルドリッチ(Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))、及び大阪有機化学工業株式会社(Osaka Organic Chemical Ind., Ltd.)(日本、大阪)のような供給元から市販されている。
【0026】
官能性モノマーは、構造R−Q−X (III)(式中、
−Q−は、式Iで既に記載されたような、ビニル、アリル、ビニルオキシ、アリルオキシ、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルが挙げられる、エチレン性不飽和重合性基であり、
Qは、式Iで既に記載されたような二価連結基であり、又、
Xは、硬化性組成物が配置される基材(例えば、金属表面、ガラス、ガラス布、又はXがそれと共有結合又はイオン結合を形成し得る任意の表面)と結合することができ、更に架橋剤と結合することができる表面反応性官能基である)の化合物である。
【0027】
好ましくは、Xは、チオール基(−SH)、モノリン酸塩基、ホスホネート又はホスホン酸基(−P(O)(OH))、ヒドロキサム酸基(−C(O)NHOH)、カルボン酸基(−C(O)OH)、イソニトリル基、イソシアネート基、アミン基、シリル基、又はジスルフィド基(−S−S−)である。より好ましくは、Xはチオール基、モノリン酸塩基、ホスホネート基、カルボン酸基、シリル基、チタン酸塩基又はジルコン酸塩基である。
【0028】
アルミニウムオキシド表面に対しては、好ましくはXとしては、ホスホン酸基(−P(O)(OH))、ヒドロキサム酸基(−C(O)NHOH)、又はカルボン酸基(−C(O)OH)が挙げられる。酸化鉄又は鋼表面に対しては、好ましくはXとしては、ヒドロキサム酸基(−C(O)NHOH)が挙げられる。酸化銅に対しては、好ましくはXとしては、ヒドロキサム酸基(−C(O)NHOH)、チオール基(−SH)、モノリン酸塩基、ホスホネート又はホスホン酸基が挙げられる。
【0029】
酸化ケイ素、ガラス、又はシリカ質表面に対しては、好ましくはXとしては、式−Si(Y)(R3−x(式中、Yは加水分解性基(ハロゲン、C〜Cアルコキシ基、又はC〜Cアシルオキシ基を含む)であり、又、Rは一価アルキル又はアリール基であり、xは1、2又は3である)のシリル基が挙げられる。金、銅及び銀に対しては、好ましくはXは、チオール基(−SH)又はジスルフィド基(−S−S−)である。
【0030】
ポリウレタンのような多くのポリマー基材は、表面上にヒドロキシル基又はカルボン酸基を有し、Xはそれに応じて選択されてよい。ポリマー表面が官能基を含有しない場合、かかる官能基は当該技術分野において既知である手段により表面上に作製されることができる。例えば、酸素を含有する大気中におけるコロナ放電は、表面上にヒドロキシル基及びカルボキシル基を作製する。プラズマ処理(Plasma treatment)は、ポリマー表面上に任意の数の反応性基を付与する。次いで、ペンダント基材反応性基「X」は、表面の反応性基と反応性であるように選択されることができる。
【0031】
第1成分ポリマーは、未だ記載されていない他のモノマーを更に含んでよい。ポリマーの調製に有用な「他のモノマー」の選択は、最終的に架橋された材料がその用途に好適な特性を有するようにする。例えば、「他のモノマー」を用いて、引っ張り強度又は他の機械的特性を上昇させるか、又はポリマーのTを制御してよい。「他のモノマー」の代表的な例としては、前述のモノマーと共重合性である少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を有するフリーラジカル重合性モノマー、並びに酢酸ビニル、スチレン、アリルエーテル、無水マレイン酸、アルキルビニルエーテル、「極性モノマー」及び低級アルキル(メタ)アクリレートのようなビニルモノマーが挙げられる。存在する場合、ポリマーは、一般に、20重量%未満、例えば1〜10重量%のかかるモノマー単位を含む。
【0032】
本発明で有用なアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーとしては、C〜Cアルキル基を含有するアルキルエステルの直鎖、環状、及び分岐鎖異性体が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートエステルの有用な具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、及びヘプチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
第1成分ポリマーは、更に「極性モノマー」を含んでよい。本明細書で使用するとき、「極性モノマー」は、曇点に達することなく、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも約5重量%の水混和性(モノマー中の水)を有する重合性モノマーである。極性モノマーを用いて、硬化組成物の吸収性を増大させる及び/又は機械的特性(例えば、引っ張り強度)を向上させることができる。好ましい極性モノマーはまた、生じるポリマーに、コンプライアンス(compliance)を提供することもできる。極性モノマーは官能基を含有してよいが、かかる官能基は一般に、選択された基材、表面反応性モノマー又は架橋剤と反応しない。
【0034】
好適な極性モノマーの例としては、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリルアミド、モノ又はジ−N−アルキル置換アクリルアミド、β−カルボキシエチルアクリレート、[2−(メタ)(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2−(メタ)(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムメチルサルフェート、[2−(メタ)(アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい極性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、及び四級アンモニウム塩でもあるモノマー並びにこれらの混合物等が挙げられる。有用な四級アンモニウム含有極性モノマーは、米国特許第5,374,501号及び同第5,712,027号(アリ(Ali)ら)に開示されており、これらは本明細書に参照することにより組み込まれる。
【0035】
ポリマー成分は、従来の重合法により上記モノマー成分を重合させることにより製造されてよい。使用されることができる典型的な重合法としては、熱重合及び/又は光化学重合、並びにバルク重合及び溶液重合(solution polymerization)が挙げられる。分子量は、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸イソオクチル、及びα−メチルスチレンのようなアルキルメルカプタンのような、当該技術分野で既知の連鎖移動剤及び連鎖遅延剤(chain retarding agent)の使用を通して制御されてよい。
【0036】
典型的な溶液重合法では、モノマー成分は、結合され、所望により、溶媒及び重合反応開始剤の存在下で、攪拌しながら加熱される。溶媒の例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、キシレン及びエチレングリコールアルキルエーテルである。これらの溶媒は、単独で、又はそれらの混合物として使用されることができる。好ましくは、基材反応性官能基Xがシランである場合、溶媒成分は、全てのモノマーとともに溶液を形成することができるアルコール溶媒を含有する。
【0037】
この重合反応に好適な反応開始剤としては、例えば熱反応開始剤及び光開始剤が挙げられる。反応開始剤は、典型的には、モノマー100重量部当たり0.001〜5重量部の割合で使用される。有用な熱反応開始剤としては、アゾ化合物及びペルオキシドが挙げられる。有用なアゾ化合物の例としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、(バゾ(Vazo)(商標)52、E.I.デュポン・ド・ヌムール&カンパニー(E. I. duPont de Nemours & Co.)から市販);2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、(バゾ(商標)64、E.I.デュポン・ド・ヌムール&カンパニーから市販);2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、(バゾ(商標)67、デュポンから市販);1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)、(バゾ(商標)88、デュポンから市販);1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、(V−40、ワコー・ピュア・ケミカル・インダストリーズ社(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)から市販);及びジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)、(V−601(商標)、ワコー(Wako)から市販)が挙げられる。有用なペルオキシドの例としては、過酸化ベンゾイル;ジ−t−アミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ラウロイルペルオキシド、及びt−ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。有用な有機ヒドロペルオキシドとしては、t−アミルヒドロペルオキシド及びt−ブチルヒドロペルオキシドのような化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインブチルエーテルのようなベンゾインエーテル;2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン及び2,2−ジエトキシアセトフェノンのようなアセトフェノン誘導体;並びにジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、イソプロポキシ(フェニル)−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、及びジメチルピバロイルホスホネートのようなアシルホスフィンオキシド誘導体及びアシルホスホネート誘導体が挙げられる。これらのうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンが好ましい。
【0039】
典型的な光重合法では、モノマー成分の混合物は、光重合開始剤(即ち、光開始剤)の存在下で紫外(UV)線を照射される。市販の光開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Speciality Chemical Corp.)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown))製「イルガキュア(IRGACURE)」が挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア2959)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン(イルガキュア369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュア907)、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(イルガキュア1173)が挙げられる。特に好ましい光開始剤は、イルガキュア819及び2959である。
【0040】
連鎖移動剤は、本明細書に記載されるモノマーを重合させて、得られるポリマーの分子量を制御する際に、使用されてよい。好適な連鎖移動剤としては、ハロゲン化炭化水素(例えばカーボンテトラブロミド)及び硫黄化合物(例えば、ラウリルメルカプタン、ブチルメルカプタン、エタンチオール、及び2−メルカプトエチルエーテル、チオグリコール酸イソオクチル、t−ドデシルメルカプタン、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール)が挙げられる。シリカ質表面が選択した基材であるとき、好ましい連鎖移動剤はメルカプトプロピルトリメトキシシランである。連鎖移動剤の量は、ポリマーの所望の分子量及び連鎖移動剤の種類に応じて異なる。連鎖移動剤は、典型的には、モノマーの総重量を基準として約0.1部〜約10部、好ましくは0.1〜約8部、より好ましくは約0.5部〜約6部の量で使用される。
【0041】
硬化性組成物は、更に、式R(Z)(式中、Rはmの価数を有する高分子又は非高分子有機基であってよく、又、Zは官能性モノマーの官能基と共反応性である反応性官能基である)の架橋剤を含む。化合物R(Z)に関して、mは少なくとも2である。多官能性化合物の複数の−Z基は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0042】
第1成分ポリマー及び架橋成分に関する上記記載との関連で、反応性官能基(式IIIのモノマーの「X」基)を有するエチレン性不飽和モノマーは、第1成分ポリマー及び架橋成分が互いに共反応性であり、その結果、第1成分ポリマーが第2成分の架橋剤(「Z」基)のペンダント官能基と共反応性であるペンダント官能基(「X」基)を有するように、選択されることが理解されるであろう。反応性及び共反応性官能基は、求電子性及び求核性官能基対の間に連結基を形成することにより第1及び第2成分の間に架橋を形成し、一般に、エチレン性不飽和基の重合ではなく、置換、縮合及び付加反応を指す反応を含んでよい。
【0043】
代表的な組み合わせとしては、シラン、イソシアネート、及び無水官能基と反応性であるヒドロキシル又はアミノ官能基、並びにアジリジン又はエポキシ基と反応するカルボキシル基が挙げられる。エポキシ樹脂は、ホスフェート及びホスホネートと反応性となるように選択されることができる。メルカプト官能モノマーは、イソシアネート及びエポキシ基と反応することができる。シリカ質表面が選択される場合、X及びZの両方は、好ましくは、式−Si(Y)(R3−x(式中、Yは加水分解性基(ハロゲン、C〜Cアルコキシ基、又はC〜Cアシルオキシ基が挙げられる)であり、又、Rは一価アルキル又はアリール基であり、xは1、2又は3である)のシラン基である。
【0044】
有機部分Rは、20,000以下の分子量を有し、好ましくは、一価及び多価ヒドロカルビル(即ち、1〜30個の炭素原子と所望により0〜4個の酸素、窒素又は硫黄のカテナリーヘテロ原子を有する脂肪族及びアリール化合物)、ポリオレフィン、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、又はポリシロキサン主鎖から選択され、コーティング溶媒に可溶性である。
【0045】
一実施形態では、Rは、非高分子脂肪族、脂環式、芳香族又は1〜30個の炭素原子を有するアルキル置換芳香族部分を含む。別の実施形態では、Rは、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、又はペンダント若しくは末端反応性−Z基を有するポリシロキサンポリマーを含む。有用なポリマーとしては、例えば、ヒドロキシル、チオール又はアミノ末端ポリエチレン又はポリプロピレン、ヒドロキシル、チオール又はアミノ末端ポリ(アルキレンオキシド)、及びヒドロキシエチルアクリレートポリマー若しくはコポリマーのようなペンダント反応性官能基を有するポリアクリレートが挙げられる。
【0046】
式R(Z)の有用なアルコールとしては、脂肪族及び芳香族ポリオールが挙げられる。本発明で有用なポリオールとしては、1〜30個の炭素原子、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する脂肪族又は芳香族ポリオールが挙げられる。有用なポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,2−オキシジエタノールヘキサンジオールポリ(ペンチレンアジペートグリコール)、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(カプロラクトンジオール)、ポリ(1,2−ブチレンオキシドグリコール)、トリメチロールエタン(trimethylyol ethane)、トリメチロールプロパン、トリメチロールアミノメタン(trimethyol aminomethane)、エチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリペンタエリスリトールが挙げられる。用語「ポリオール」はまた、ポリオールと、ジ若しくはポリイソシアネート、又は、ジ若しくはポリカルボン酸との反応生成物であって、ポリオールと−NCO又は−COOHとのモル比が1:1であるような上記ポリオールの誘導体を含む。
【0047】
式R(Z)の有用なアミンとしては、脂肪族及び芳香族ポリアミンが挙げられる。代表的で有用なジ又はポリアミンは、4,4’−メチレンジアニリン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、及びポリオキシエチレンジアミンである。名付けられているだけのもののような、多くのジ及びポリアミンが市販されており、例えばハンツマン・ケミカル(Huntsman Chemical)(テキサス州ヒューストン(Houston))から入手可能なもの等である。最も好ましいジ又はポリアミンとしては、脂肪族ジアミン又は脂肪族ジ若しくはポリアミン、より具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジアミン等のような2つの一級アミノ基を有する化合物が挙げられる。
【0048】
式R(Z)の有用なチオールとしては、脂肪族及び多官能性チオールが挙げられ、有用なアルキルチオールとしては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、4−メルカプトブタノール、メルカプトウンデカノール、2−メルカプトエチルアミン、2,3−ジメルカプトプロパノール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸、及びペンタエリスリトールテトラチオグリコレートが挙げられる。有用な可溶性、高分子量チオールとしては、ポリエチレングリコールジ(2−メルカプトアセテート)、モートン・チオコール社(Morton Thiokol Inc.)(ニュージャージー州トレントン(Trenton)により供給されるLP−3(商標)樹脂、及びプロダクツ・リサーチ・アンド・ケミカル社(Products Research & Chemical Corp.)(カリフォルニア州グレンデール(Glendale))により供給されるパーマポールP3(Permapol P3)(商標)樹脂及び2−メルカプトエチルアミン及びカプロラクタムの付加化合物のような化合物が挙げられる。
【0049】
好適なポリイソシアネートとしては、少なくとも2つの遊離イソシアネート基を含有する有機化合物が挙げられる。式R(NCO)のジイソシアネートが、好ましく用いられる(式中、Rは、4〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6〜20個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基又は7〜20個の炭素原子を有するアルアリファチック(araliphatic)炭化水素基を示す)。
【0050】
ジイソシアネートの例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4’ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン(1−112 MDI)、4,4’−ジイソシアナト−2,2−ジシクロヘキシル−プロパン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,6ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、m−及びpキシリレンジイソシアネート、α、α、α’、α’−テトラメチル−m−及びp−キシリレンジイソシアネート及びこれらの化合物の混合物が挙げられる。好適なポリイソシアネートとしてはまた、1,3,5トリイソシアナトシクロヘキサン−s−トリオン、HDI及びH12 MDIのイソシアヌレート及びビウレット誘導体、並びにダウケミカル(Dow Chemical)(ミシガン州ミッドランド(Midland))製PAPI(商標)物質のような高分子芳香族イソシアネートが挙げられる。
【0051】
シリカ質基材に対しては、少なくとも2つの遊離シリル基を有する化合物が好ましい。好適なシラン架橋剤は一般に、式
10(−Si(Y)(R3−x(式中、Yは加水分解性基(ハロゲン、C〜Cアルコキシ基、又はC〜Cアシルオキシ基を含む)であり、又、Rは一価アルキル又はアリール基であり、xは1、2又は3であり、pは少なくとも2であり、又、R10は多価有機基であり、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する二価アルキレン基であり、カテナリー酸素又は窒素原子により置換されているか又は置換されていない)を有する。
【0052】
この分類に含まれるシラン架橋剤は、例えばシラー・ラボラトリーズ(Silar Laboratories)(ニューヨーク州スコシア(Scotia))、アライド・シグナル社(Allied-Signal, Inc.)(ニュージャージー州モリスタウン(Morristown))、及びOSIケミカルズ(OSI Chemicals)(イリノイ州ライル(Lisle))から市販されている。二級アミノ基を有するアルコキシシラン、例えば、ビス−(トリメトキシシリルプロピル)アミン(Osiスペシャルティーズ社(Osi Specialties, Inc.)(イリノイ州ライル)製シルクエスト(Silquest)A−1170)は、自己触媒性アミン含有シランとして特に好ましい。
【0053】
実存するポリマーは、架橋剤と結合される場合があり、組成物は熱的手段により、所望により縮合反応を生じさせるための触媒の存在下で架橋される。特定の触媒の選択は、R(Z)の官能基及び式IIIの基材反応性官能基Xに応じて行う。触媒は、酸触媒、塩基触媒、又は金属含有触媒であることができる。一般に、触媒又は触媒の混合物は、硬化性組成物の総重量に基づいて、約0.01〜5重量%の量、より好ましくは約0.1〜2重量%の量で組成物中に存在する。
【0054】
第1ポリマー及び/又は架橋剤がシラン官能基を有する場合(式II、Xはシランである)、シラン官能基に対して好適な硬化触媒としては、アルキルスズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、及びエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社(Air Products and Chemicals, Inc.)(ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown))製「Tシリーズ触媒」として市販されているジブチルスズジオクトエート(dibutyltindioctoate)、及びチタン酸アルキル(例えば、テトライソブチルオルソチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、及びデュポンから商品名「TYZOR」として市販されているアセトアセチックエステルチタネート)が挙げられる。しかしながら、一般には、貯蔵寿命を縮め、コーティング組成物の物理的特性に悪影響を与えることを防ぐために、硬化触媒の使用を必要としないシラン架橋剤を選択することが好ましい。
【0055】
シラン官能基に有用な他の触媒としては、トリクロロ酢酸、シアノ酢酸、マロン酸、ニトロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸トリエチルアンモニウム、トリクロロ酢酸トリメチルアンモニウム、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない酸、無水物、及びこれらの低級アルキルアンモニウム塩類が挙げられる。
【0056】
本発明のコーティング組成物は、微生物の増殖を防ぐ又は遅延させるために、有効量の殺生物剤を含んでよい。本発明は、任意の特定の殺生物剤の選択に限定されるものではなく、カビ駆除剤、抗微生物剤、防腐剤、消毒剤、清浄剤、殺菌剤、殺藻剤、防汚剤、防腐剤、前述の組み合わせ等のような任意の既知の殺生物剤が、本発明の組成物に含まれてよい。殺生物剤が、湿度条件又は様々な度合いの水分への曝露下で、特定の種類の微生物の増殖に対して特定の基材を保護するために、必要に応じて選択されることは、本発明の広い教示の範囲内であることが意図される。更に、本発明の組成物内に含まれる殺生物剤は、1種以上の殺生物的に有効な物質を含むことができる。
【0057】
選択される殺生物剤又は殺生物剤の組み合わせは、組成物の他の成分と適合性があり、好ましくは、例えば多湿、湿性又は湿潤環境下で通常発見されるような一般的な微生物に対して有効なものである。本発明の組成物に含むのに好適な殺生物剤の選択は、当業者の技能の範囲内であると考えられる。殺生物剤は、組成物中の他の成分と化学的に適合性があることが必要であり、殺生物剤の好適な部類としては、カチオン性第四級アンモニウム化合物、スルホン及びチオシアネートのような有機硫黄化合物;イソチアゾロン;フェノール及び置換フェノール;ジアジン;トリアジン、有機スズ化合物;2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド及びヨードベンズアニリドのようなアミド;チオカルバメート、ベンズイミダゾリルカルバメート及びジチオカルバメートが挙げられるが、これらに限定されないカルバメート;ジメチルヒダントインを含むヒダントイン;有機ハロゲン;ジクロロフェニルトリクロロエタノールのようなカルビノール;有機リン酸;ジフルオロベンゾイルクロロフェニル尿素のようなベンゾイル尿素を含む尿素;ピレスリノイド;キノン;ジカルボキシイミド;ドデシルグアニジンアセテートのようなグアニジン;トリアゾール;チアジアゾール;並びに金属リン酸モノエチル、銀、銅、スズ及びこれらの塩類、並びに前述の化合物の任意の有効な組み合わせが挙げられる。
【0058】
殺生物剤は、本発明の硬化性又は硬化組成物中に、約0.1〜5.0重量%の範囲、好ましくは約0.1〜2.0重量%の範囲の濃度で存在してよい。無論、本発明は前述の濃度範囲に限定されるものではない。殺生物剤の濃度は、必要に応じて、異なる湿度水準、温度条件等のような様々な予想される使用条件下で所望の水準の有効性を維持するよう調節されることができる。更に、選択された殺生物剤の化学的性質は、当業者に既知であるように、殺生物剤の所望の濃度に影響を与える場合がある。
【0059】
バイオフィルムの遅延のためにコーティングが配置される基材は、任意の広範な材料であり得る。有用な基材としては、セラミックス、ガラスを含むシリカ質基材、金属、天然及び人工石、織布及び不織布物品、熱可塑性及び熱硬化性を含む高分子材料(ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリルコポリマーのようなスチレンコポリマー、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートのような)、シリコーン(医療用チューブで用いられるような)、塗料(アクリル樹脂ベースのもののような)、粉末コーティング(ポリウレタン又はハイブリッド粉末コーティングのような)、及び木材が挙げられる。種々の物品は、その上にバイオフィルム耐性コーティングを提供するために、本発明のコーティング組成物で効率的に処理されることができる。
【0060】
本発明の硬化性組成物又はコーティング組成物により特に効果的な方法で処理されることができる多くの基材としては、式IIのポリマーのX基と反応することができる表面官能基を有する基材が挙げられる。好ましくは、基材の表面のかかる反応性は、活性水素原子によりもたらされる。かかる活性水素原子が存在しないとき、基材はまず酸素を含有するプラズマ又はコロナ雰囲気中で処理され、それを式IIのX基に対して反応性にしてよい。
【0061】
ポリマー表面が官能基を含有しない場合、かかる官能基は任意の多数の手段により表面上に作製されることができる。例えば、酸素含有雰囲気中のコロナ放電は、表面上にヒドロキシル及びカルボキシル基を作製する。プラズマ処理は、ポリマー表面上に任意の数の反応性基を付与する。次いで、官能性モノマーは、表面反応性基と反応性であるように選択されることができる。表面処理の選択は、無論、基材として使用される高分子材料に対する依存度が高い。
【0062】
本発明のコーティングの高分子材料への塗布にかなり有用であることが見出されている方法の1つは、酸素プラズマ放電を用いてポリマー表面の表面を酸化することである。この後に、シリカ質(ガラス又はシリカ様)表面の作製が続く。シリカ質表面は、種々の技術により生じさせることができる。1つの有用な方法は、アルコール溶液中のモノマー又はオリゴマーシランを表面に塗布し、続いてアンモニア蒸気に曝露することからなる。この、頑丈で、微多孔性のガラス様表面は、次いで、本発明のコーティングに耐性を付与する、本発明のシラン修飾コーティングと反応しやすい。更に、PCT国際公開特許第2005/049757号(ハービー(Harvey)ら)を参照してよい。
【0063】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ポリマー表面のように、表面がペルフルオロ化表面である場合、それは、アンモニアに溶解しているナトリウム又はテトラヒドロフラン又は他の適切な溶媒に溶解しているナフテン酸ナトリウムで処理されてよい。この処理は表面を脱フッ素化し、ヒドロキシル及びカルボキシル基を有する表面を生じさせ、これは次いで上記官能基の多くと反応しやすい。
【0064】
最適な特性、特に耐久性を得るために、好ましくは、基材は、本発明の組成物を塗布する前に、洗浄されるべきである。つまり、コーティングされる基材の表面には、コーティング前に有機汚染物質が実質的にあってはならない。洗浄技術は、基材の種類に依存し、例えば、アセトン又はエタノールのような有機溶媒による溶媒洗浄工程が挙げられる。
【0065】
金属表面は、しばしば、有機汚染物質の層で被覆される。本発明のコーティングをかかる表面に塗布することができる前に、少なくとも溶媒で拭き取ることにより表面を洗浄すべきである。肉眼で見える(gross)汚染物質の場合、金属表面は、エッチング、陽極酸化、又は当業者に既知の方法で処理しなければならない場合がある。例えば、鋼の表面がさびで覆われている場合、さびを酸処理によりエッチングしなければならない場合がある。金属の表面が露出すると、基材反応性官能基をヒドロキシル基又は基材の表面の金属原子と反応させることができるコーティングを塗布することができる。
【0066】
バイオフィルムは、典型的には、基材が水に接触している又は多湿条件に曝露されている場合に増殖する。硬化性コーティングは、特に循環水に曝露されている場合、かかるバイオフィルムの形成を遅延させる。微生物は、コーティングされた表面に付着することができない又は最小限にしか付着することができないと考えられる。更に、実存するバイオフィルムは、コーティングされた表面からより容易に除去されると考えられる。したがって、硬化性組成物は、医療用カテーテルコーティング、防汚性船舶コーティング、水取扱設備用コーティング、熱交換器及び他のHVAC設備、濾材用コーティング、並びに歯科用設備、口腔で用い得る装置及び材料のような、湿潤又は多湿環境にある基材に特に好適である。
【0067】
コーティング組成物は、第1成分ポリマー、架橋成分及び溶媒を含む。有用な溶媒としては、基材との結合又は架橋反応のいずれにも悪影響を与えない任意のものが挙げられ、成分は溶媒に少なくとも1重量%可溶性である。溶媒の例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、キシレン及びエチレングリコールアルキルエーテルである。これらの溶媒は、単独で、又はそれらの混合物として使用されることができる。ポリマーがペンダントシラン官能基を含有する場合、好ましくは溶媒成分は、シラン間の反応を一時的に遅延させる傾向があるアルコール溶媒を含有する。一般に、ポリマー成分は実質的に中性水に不溶性であるため、水溶液は好ましくなく、中性水(pH約7)中の0.1重量%を超えるポリマーの混合物は多相組成物が生じることを特徴とする。
【0068】
コーティング組成物は、典型的には、0.1〜50重量%、好ましくは1〜25重量%の固体成分を含有する比較的希釈された溶液である。溶媒、ポリマー及び架橋成分の比は、塗布条件に適切な粘度を有する均質な混合物を得るように選択されるべきである。例えば、ブラシ又はローラーコーティングされる材料は、ディップコーティング溶液より高い粘度を有することが好ましい可能性がある。
【実施例】
【0069】
全ての溶媒類及び試薬類は、特に記載のない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)から入手した。全ての百分率及び量は、特に指定のない限り、重量による。
【0070】
重合方法
下記の方法及び表1に列挙した反応混合物の具体的な成分により、アルキルメタクリレート及びポリ(エチレングリコール)モノメタクリレートモノメチルエーテル(PEG1000、分子量=約1000)のコポリマーを作製した。トルエン、ヘプタン及びエタノールの種々の混合物を用いて、溶液中にポリエチレングリコールモノメタクリレートモノメチルエーテル及びアルキルメタクリレートモノマーを定置した。モノマーに加えて、重合混合物は、5〜10%のメタクリルオキシプロピルトリ(メ)エトキシシラン及び0.5〜1%のメルカプトプロピルトリメトキシシランを含んでいた。バゾ64を、モノマーの重量に基づいて0.5〜1%の濃度で重合開始剤として用いた。モノマーを、溶媒又は溶媒混合物中に溶解した。モノマーが固体であった場合、しばしば重合混合物を穏やかに加熱し、全てのモノマーを確実に溶解させる必要があった。モノマーを溶解させるのに用いた温度は、60℃以下であった。次いで、バゾ64(商標)反応開始剤を添加する前に、反応混合物を20℃に冷却した。次いで、反応混合物を窒素の気泡に2分間通し、蓋をした。瓶を防湿テープ(electrical tape)で包み、ケージ内に定置し、瓶をスポンジによる破損から保護した。ケージ(内部に瓶がある)を、アトラス・ローンダー−o−メーター(Atlas Launder-o-meter)(アトラス・エレクトリック・デバイス社(Atlas Electric Device Company)(イリノイ州シカゴ(Chicago))内に定置した。重合を65℃で18時間行い、その後固体の割合を測定した。
【0071】
コーティングされたフィルムを有する表面の調製
表面が調製されたポリカーボネートディスクをコーティングすることにより、バイオフィルム耐性硬化性組成物を試験した。ポリカーボネートディスクを、1.27cm(0.5”)のポリカーボネートロッド(プラスチックス・インターナショナル(Plastics International)(ミネソタ州エデンプレイリー(Eden Prairie))から圧延した(milled)。ディスクは、名目上、厚さ0.38cm(0.15”)、直径1.27cm(0.5”)であった。これらのディスクの表面を、3Mの500グリットウェットオアドライ・トリ−M−アイト(Wetordry Tri-M-Ite)を用いて研磨し、次いで、3Mのウェットオアドライ・ポリッシング・ペーパー(Wetordry Polishing Paper)で磨いた。基材を、YES G1000プラズマ・トリーター(イールド・エンジニアリング・システムズ(Yield Engineering Systems)(カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)から入手可能)を用いて、500Wで10分間、酸素中でプラズマ処理した。その後、エタノール中に約1%固形分を有するポリ(ジメトキシシラン)(PSI−026、ゲレスト社(Gelest, Inc.)ペンシルバニア州モリスビル(Morrisville)から入手可能)のコーティングを、点眼器を用いて、プラズマ処理した表面に塗布した。1又は2滴のPSI−026溶液を、ポリカーボネートディスクの各側に塗布した。溶液は、完全にディスク表面を濡らした。溶媒を蒸発させ、乾燥したとき、ディスクを、底のウェルが水酸化アンモニウムで満たされたデシケーター内に約半時間定置した。
【0072】
硬化性組成物コーティング混合物を、表2に列挙した溶媒混合物に作製した。一般に、コーティング溶液は、試験するコポリマー(1〜2%固形分)及びA1170(コポリマーの重量に基づいて20%、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ゲレスト社(ペンシルバニア州モリスビル)から入手可能)を含有していた。コーティングされた基材を、120℃で15時間硬化させた。
【0073】
コーティングされた表面のバイオフィルム耐性の試験
CDCバイオフィルム・リアクター(CDC biofilm reactor)(バイオサーフィス・テクノロジーズ(Biosurface Technologies)(モンタナ州ボーズマン(Bozeman))を用いて、調製した硬化性組成物のバイオフィルム形成耐性を評価した。このシステムにより、縦一列に並んだ、複数の試験基材試料(試片(coupon))上で巨視的なバイオフィルム形成を定量化した。試料を、ホルダー当たり各コーティングについて3回反復して、リアクターに実装した。リアクター当たり8個のホルダーが存在した。実験開始前に、水を16〜24時間、リアクターを通過させることにより、組み立てたリアクター中において試料を洗浄した。次いで、組み立てたリアクターをオートクレーブ(121℃で15分間)し、続いて、超純水中の無菌2%バクロトリプチックソイブロス(Bacto tryptic soy broth)(TSB)(ベクトン・ディキンソン社(Becton, Dickinson and Co.)(メリーランド州スパークス(Sparks))を10L収容している容器から、約350mLの増殖培地を充填した。次いで、リアクターを、TSB中の試験用細菌株の5mL一晩培養物(overnight culture)の0.4mLとともにインキュベートした。リアクターの培養物を、貯蔵所から増殖培地を流し込むことなく、攪拌しながら(130RPM)24時間インキュベートし、細胞を付着及び増殖させた。貯蔵所からの新鮮な増殖培地を、次いで、約400mL/時間の速度で、更に24時間リアクターを通過させ、また攪拌しながら(130RPM)バイオフィルムの増殖を促進した。インキュベーションは全て37℃で行った。
【0074】
これらの増殖条件は、スタフィロコッカス・エピデルミディスATCC #35984及びエシェリキア・コライK12に対して使用した。ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)ATCC #25175に対しては、手順を以下のように変更した:増殖培地は10%TSBであり、一晩培養物を1.0mL植菌し、攪拌速度は310RPMであった。エアロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)ATCC #7966に対しては、手順を以下のように変更した:増殖培地は0.1%のグルコースを含む2%TSBであり、全てのインキュベーションを室温で行った。
【0075】
インキュベーション後、ロッド、無傷の試片(intact coupon sample)及び付着したバイオフィルムを、CDCリアクターから取り出し、45秒間クリスタルバイオレット(crystal violet)で飽和した水中で染色した。ロッド及び試料を、次いで、リン酸緩衝生理食塩水で20〜40回すすぎ、過剰なクリスタルバイオレット及び任意の緩く付着した細胞を取り除いた。試片をロッドから取り出し、4mLのエタノールを収容している15mLのファルコンチューブ(BDバイオサイエンス(マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford))内に定置し、その中で約10秒間、ボルテックスすること(ボルテックス・ジニー(Vortex Genie)2、サイエンティフィック・インダストリーズ(Scientific Industries)(ニューヨーク州ボヘミア(Bohemia))により、クリスタルバイオレットを溶出した。ジェネシス(Genesys)6分光光度計(サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corp.)(ウィスコンシン州マディソン(Madison))を用いてエタノール溶液の吸光度(λ=590nm)を測定し、ポリカーボネート試片に付着したバイオフィルムの量を評価した。提示された値は、3つの試料の吸光度の平均である。バイオフィルムの存在にかかわらずクリスタルバイオレットで染色した(バックグラウンド染色)材料については、染色している材料の量は、エタノール溶液から試片を取り出し、流水下で穏やかに磨き洗いして付着しているバイオフィルムを取り除き、次いでクリスタルバイオレットで再染色し、すすぎ、上記のようにエタノール中に溶出することにより定量化した。これらのバックグラウンド吸光度の値を、次いで、バイオフィルムの付着している試片を染色することにより得る値から減じた。結果を表3に示し、図1から7に図示する。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4−1】

【0079】
【表4−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ペンダント長鎖脂肪族基を有するエチレン性不飽和モノマー単位、ペンダントポリ(オキシアルキレン)基を有するエチレン性不飽和モノマー単位、及びペンダント基材反応性基を有するエチレン性不飽和モノマー単位由来のポリマーと、
b)架橋剤と、を含む硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、0.1重量%未満の水への溶解度を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ペンダントポリ(オキシアルキレン)基が、ポリ(オキシエチレン)基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記基材反応性官能基が、モノリン酸塩、ホスホネート、ホスホン酸、ヒドロキサム酸、カルボン酸、イソニトリル、シリル、イソシアネート、アミン、ピリジニル、又はジスルフィド基から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが、
10〜70重量%のペンダント長鎖脂肪族基を有するエチレン性不飽和単位と、
10〜80重量%のペンダントポリ(オキシアルキレン)基を有するエチレン性不飽和単位と、
1〜20重量%のペンダント基材反応性基を有するエチレン性不飽和単位と、
0〜20重量%の他のモノマーと、を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
架橋剤が、式R(Z)(式中、Rはmの価数を有する高分子又は非高分子有機基であってよく、又、Zは前記ポリマーの表面反応性官能基と共反応性である反応性官能基である)である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記架橋剤の反応性官能基及び前記ポリマーの基材反応性基が、同じ官能基である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ペンダントポリ(オキシアルキレン)基を有するモノマーが、式:
−Q−(CH(R)−CH−O−)−(CH−CH−O−)−R
(式中、
は、エチレン性不飽和重合性基であり、
は、(C〜C)アルキル基であり、
は、H、又はR、又はアリール基、又はこれらの組み合わせであり、
Qは、二価連結基であり、
nは少なくとも5であり、mは0であってよく、n+mは少なくとも5であり、又、n:mのモル比は少なくとも2:1である)である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
mが少なくとも1であり、又、nとmとのモル比(n:m)が3:1を超える、請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
−Q−が、ビニル、アリル、ビニルオキシ、アリルオキシ、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルから選択される、請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記長鎖脂肪族基含有モノマーが、一般式
−Q−R、(I)(式中、
は、エチレン性不飽和重合性基であり、
Qは、二価連結基であり、又、
は、8〜75個の炭素原子を有する一価、直鎖又は分岐鎖、環状又はアクリル脂肪族基である)である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
表面反応性官能基を有するモノマーが、式R−Q−X(式中、
は、エチレン性不飽和重合性基であり、
Qは、二価連結基であり、又、
Xは、基材と結合することができる表面反応性官能基である)である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記架橋剤が、式R10(−Si(Y)(R3−x(式中、Yは加水分解性基であり、又、Rは一価アルキル又はアリール基であり、xは1、2又は3であり、pは少なくとも2であり、又、R10は3〜10個の炭素原子を有する多価アルキレン基であり、カテナリー酸素又は窒素原子により置換されているか又は置換されていない)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
アルキルスズ触媒を更に含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
触媒を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
0.1〜5重量%の殺生物剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の硬化組成物のコーティングを有する基材。
【請求項20】
セラミックス、シリカ質基材、金属、石、高分子材料、塗料、粉末コーティング、及び木材から選択される、請求項19に記載の基材。
【請求項21】
シリカ質基材から選択される、請求項19に記載の基材。
【請求項22】
シリカ質基材が、ポリマーフィルム上のシリカ質表面を含む、請求項19に記載の基材。
【請求項23】
請求項1に記載の硬化性組成物及び溶媒を含むコーティング組成物。
【請求項24】
0.1〜50重量%の硬化性組成物を含む、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項25】
殺生物剤を更に含む、請求項23に記載のコーティング組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−505009(P2010−505009A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529366(P2009−529366)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/078901
【国際公開番号】WO2008/039670
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】