説明

硬化性組成物及び接続構造体

【課題】低温で速やかに硬化させることができ、さらに接続対象部材の接続に用いられた場合に、該接続対象部材を効率的に接続でき、かつ接続後にボイドが生じるのを抑制できるエピスルフィド化合物を提供する。
【解決手段】ジヒドロキシベンゼン系化合物、ジヒドロキシナフタレン系化合物であって各水酸基が各芳香核に一個づつ有する化合物、アントラセン系化合物の9−位及び10−位に水酸基を有する化合物の少なくとも各水酸基の水素原子がωー位にエピスルフィド基を有する炭素数1〜5のアルキレン基で置換されている化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温で速やかに硬化させることができ、さらに接続対象部材の接続に用いられた場合に、該接続対象部材を効率的に接続でき、かつ接続後にボイドが生じるのを抑制できるエピスルフィド化合物、並びに該エピスルフィド化合物を含有するエピスルフィド化合物含有混合物、該エピスルフィド化合物含有混合物の製造方法、硬化性組成物及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等の異方性導電材料が広く知られている。
【0003】
異方性導電材料は、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、又はICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0004】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、熱硬化性絶縁接着剤と、導電性粒子と、イミダゾール系潜在性硬化剤と、アミン系潜在性硬化剤とを含有する異方性導電接着フィルムが開示されている。特許文献1には、この異方性導電接着フィルムを比較的低温で硬化させた場合であっても、接続信頼性が優れていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−115335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電子部品の電極間を効率的に接続するために、接続に要する加熱温度を低くし、かつ加圧時間を短くすることが求められている。また、電子部品は加熱により劣化しやすいため、加熱温度を低くすることが強く求められている。
【0007】
特許文献1に記載の異方性導電接着フィルムでは、硬化を開始させるのに必要な加熱温度が比較的低い。しかしながら、この異方性導電接着フィルムは、低温では硬化反応が充分に進行しないことがある。このため、異方性導電接着フィルムを用いて、回路基板及び電子部品の電極間を接続するために、加熱温度を高くしたり、長時間加熱したりしなければならないことがある。従って、電極間を効率的に接続できないことがある。
【0008】
さらに、近年、回路基板等に形成される電極の微細化が進行している。すなわち、電極が形成されているラインの幅方向の寸法(L)と、電極が形成されていないスペースの幅方向の寸法(S)とを示すL/Sが、より一層小さくされている。このような微細な電極が形成された回路基板を、上記の異方性導電接着フィルムにより接続した場合、異方性導電接着フィルムの硬化速度が遅いため、電極間のスペースにボイドが生じることがある。
【0009】
本発明の目的は、低温で速やかに硬化させることができ、さらに接続対象部材の接続に用いられた場合に、該接続対象部材を効率的に接続でき、かつ接続後にボイドが生じるのを抑制できるエピスルフィド化合物、並びに該エピスルフィド化合物を含有するエピスル
フィド化合物含有混合物、該エピスルフィド化合物含有混合物の製造方法、硬化性組成物及び接続構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物が提供される。
【0011】
【化1】

【0012】
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。
【0013】
【化2】

【0014】
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。
【0015】
【化3】

【0016】
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表し、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。
【0017】
【化4】

【0018】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0019】
【化5】

【0020】
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0021】
【化6】

【0022】
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0023】
本発明に係るエピスルフィド化合物のある特定の局面では、該エピスルフィド化合物は、下記式(1)又は(2)で表される構造を有する。
【0024】
【化7】

【0025】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。
【0026】
【化8】

【0027】
上記式(2)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。
【0028】
【化9】

【0029】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0030】
【化10】

【0031】
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0032】
本発明に係るエピスルフィド化合物の他の特定の局面では、上記式(1)又は(2)で表される構造は、下記式(1A)又は(2A)で表される構造である。
【0033】
【化11】

【0034】
上記式(1A)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0035】
【化12】

【0036】
上記式(2A)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0037】
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、本発明のエピスルフィド化合物と、下記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物とを含有する。
【0038】
【化13】

【0039】
上記式(11−1)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は下記式(14)で表される基を表す。
【0040】
【化14】

【0041】
上記式(12−1)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、下記式(15)で表される基を表す。
【0042】
【化15】

【0043】
上記式(13)中、R121及びR122はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表し、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の内の水素ではない基は、下記式(16)で表される基を表す。
【0044】
【化16】

【0045】
上記式(14)中、R17は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0046】
【化17】

【0047】
上記式(15)中、R69は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0048】
【化18】

【0049】
上記式(16)中、R131は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物のある特定の局面では、上記エポキシ化合物は、下記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物である。
【0050】
【化19】

【0051】
上記式(11)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は下記式(14)で表される基を表す。
【0052】
【化20】

【0053】
上記式(12)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、下記式(15)で表される基を表す。
【0054】
【化21】

【0055】
上記式(14)中、R17は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0056】
【化22】

【0057】
上記式(15)中、R69は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0058】
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物の他の特定の局面では、上記式(11)又は(12)で表される構造は、下記式(11A)又は(12A)で表される構造である。
【0059】
【化23】

【0060】
上記式(11A)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0061】
【化24】

【0062】
上記式(12A)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0063】
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物の製造方法では、チオシアン酸塩を含む第1の溶液に、上記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を連続的又は断続的に添加した後、チオシアン酸塩を含む第2の溶液を連続的又は断続的にさらに添加することにより、上記エポキシ化合物の一部のエポキシ基をエピスルフィド基に変換する。
【0064】
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物の製造方法のある特定の局面では、上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液として、上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液が用いられる。
【0065】
本発明に係る硬化性組成物は、本発明のエピスルフィド化合物と、硬化剤とを含有する。
【0066】
または、本発明に係る硬化性組成物は、本発明のエピスルフィド化合物含有混合物と、硬化剤とを含有する。この硬化性組成物も、上記エピスルフィド化合物含有混合物中に、上記エピスルフィド化合物を含有する。
【0067】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、光硬化性化合物と、光重合開始剤とがさらに含有される。
【0068】
本発明に係る硬化性組成物の他の特定の局面では、導電性粒子がさらに含有される。
【0069】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明の硬化性組成物により形成されている。
【0070】
本発明に係る接続構造体のある特定の局面では、上記硬化性組成物が導電性粒子を含有し、上記第1,第2の接続対象部材は、上記導電性粒子により電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0071】
本発明に係るエピスルフィド化合物は、上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。
【0072】
本発明に係るエピスルフィド化合物が、上記式(1)又は(2)で表される構造を有する場合には、低温でより一層速やかに硬化させることができる。
【0073】
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、上記式(1−1)又は(2−1)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を含有するので、低温で速やかに硬化させることができる。
【0074】
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物が、上記式(1)又は(2)で表される構造を有する場合には、低温でより一層速やかに硬化させることができる。
【0075】
また、本発明に係るエピスルフィド化合物又は本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物を、接続対象部材の接続に用いることにより、該接続対象部材を効率的に接続できる。さらに、接続後にボイドが生じるのを抑制できる。表面に凹凸を有する接続対象部材を接続しても、ボイドが生じるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いた接続構造体の一例を模式的に示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0078】
(エピスルフィド化合物)
本発明に係るエピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有する。下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
【0079】
【化25】

【0080】
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0081】
【化26】

【0082】
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0083】
【化27】

【0084】
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R10
6、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0085】
【化28】

【0086】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0087】
【化29】

【0088】
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0089】
【化30】

【0090】
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0091】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、本発明に係るエピスルフィド化合物は、下記式(1)、下記式(2)又は上記式(3)で表される構造を有することが好ましい。低温でさらに一層速やかに硬化させる観点からは、本発明に係るエピスルフィド化合物は、下記式(1)又は(2)で表される構造を有することが好ましい。
【0092】
【化31】

【0093】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は上記式(4)で表される基を表す。
【0094】
【化32】

【0095】
上記式(2)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、上記式(5)で表される基を表す。
【0096】
上記式(1−1)、(2−1)又は(3)、並びに上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物はいずれも、エピスルフィド基を少なくとも2つ有する。また、エピスルフィド基を有する基が、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環に結合されている。このような構造を有するので、エピスルフィド化合物に例えば硬化剤を添加した混合物を加熱することにより、混合物を低温で速やかに硬化させることができる。
【0097】
上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、上記式(1−1)、(2−1)又は(3)中のエピスルフィド基がエポキシ基である化合物に比べて、反応性が高い。上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、上記式(1)又は(2)中のエピスルフィド基がエポキシ基である化合物に比べて、反応性が高い。これは、エピスルフィド基はエポキシ基よりも、開環しやすく、反応性が高いためである。上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物、並びに上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は反応性が高いので、低温で速やかに硬化させることができる。
【0098】
上記式(1−1)及び(1)中のR1及びR2、上記式(2−1)及び(2)中のR51及びR52、上記式(3)中のR101及びR102、上記式(4)中のR7、上記式(5)中のR59、並びに上記式(6)中のR111はいずれも、炭素数1〜5のアルキレン基である。該アルキレン基の炭素数が5を超えると、上記エピスルフィド化合物の硬化速度が低下しやすくなる。
【0099】
上記式(1−1)及び(1)中のR1及びR2、上記式(2−1)及び(2)中のR51及びR52、上記式(3)中のR101及びR102、上記式(4)中のR7、上記式(5)中のR59、並びに上記式(6)中のR111はそれぞれ、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基は直鎖構造を有するアルキレン基であってもよく、分岐構造を有するアルキレン基であってもよい。
【0100】
上記(1)で表される構造は、下記式(1A)で表される構造であることが好ましい。下記式(1A)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性に優れている。
【0101】
【化33】

【0102】
上記式(1A)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0103】
上記式(1)で表される構造は、下記式(1B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性により一層優れている。
【0104】
【化34】

【0105】
上記(2)で表される構造は、下記式(2A)で表される構造であることが好ましい。下記式(2A)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性に優れている。
【0106】
【化35】

【0107】
上記式(2A)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0108】
上記式(2)で表される構造は、下記式(2B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(2B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性により一層優れている。
【0109】
【化36】

【0110】
上記(3)で表される構造は、下記式(3A)で表される構造であることが好ましい。下記式(3A)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性に優れている。
【0111】
【化37】

【0112】
上記式(3A)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0113】
上記式(3)で表される構造は、下記式(3B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(3B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性により一層優れている。
【0114】
【化38】

【0115】
(エピスルフィド化合物含有混合物)
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表されるエピスルフィド化合物と、下記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物とを含有する。下記式(11−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(12−1)において、
ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
【0116】
【化39】

【0117】
上記式(11−1)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は下記式(14)で表される基を表す。R13、R14、R15及びR16の4個の基の全てが水素であってもよい。R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の1個又は2個が下記式(14)で表される基であり、かつR13、R14、R15及びR16の4個の基の内の下記式(14)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0118】
【化40】

【0119】
上記式(12−1)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、下記式(15)で表される基を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の全てが水素であってもよい。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の1個又は2個が下記式(15)で表される基であり、かつR63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の下記式(15)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0120】
【化41】

【0121】
上記式(13)中、R121及びR122はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の内の水素ではない基は、下記式(16)で表される基を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の全てが水素であってもよい。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の内の1個又は2個が下記式(16)で表される基であり、かつR123、R124、R125、R126、R127及びR128の8個の基の内の下記式(16)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0122】
【化42】

上記式(14)中、R17は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化43】

【0123】
上記式(15)中、R69は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0124】
【化44】

【0125】
上記式(16)中、R131は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0126】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、上記式(1)、上記式(2)又は上記式(3)で表される化合物と、下記式(11)、下記式(12)又は上記式(13)で表されるエポキシ化合物とを含有することが好ましい。低温でさらに一層速やかに硬化させる観点からは、本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、上記式(1)又は(2)で表される化合物と、下記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物とを含有することが好ましい。
【0127】
【化45】

【0128】
上記式(11)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は上記式(14)で表される基を表す。
【0129】
【化46】

【0130】
上記式(12)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、上記式(15)で表される基を表す。
【0131】
上記式(11−1)及び(11)中のR11及びR12、上記式(12−1)及び(12)中のR61及びR62、上記式(13)中のR121及びR122、上記式(14)中のR17、上記式(15)中のR69、並びに上記式(16)中のR131はいずれも、炭素数1〜5のアルキレン基である。該アルキレン基の炭素数が5を超えると、上記エピスルフィド化合物含有混合物の硬化速度が低下しやすくなる。
【0132】
上記式(11−1)及び(11)中のR11及びR12、上記式(12−1)及び(12)中のR61及びR62、上記式(13)中のR121及びR122、上記式(14)中のR17、上記式(15)中のR69、並びに上記式(16)中のR131はそれぞれ、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基は直鎖構造を有するアルキレン基であってもよく、分岐構造を有するアルキレン基であってもよい。
【0133】
上記(11)で表される構造は、下記式(11A)で表される構造であることが好ましい。下記式(11A)で表される構造を有するエポキシ化合物は、市販されており、容易に入手できる。
【0134】
【化47】

【0135】
上記式(11A)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0136】
上記式(11)で表される構造は、下記式(11B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(11B)で表される構造を有するエポキシ化合物は、レゾルシノールジグリシジルエーテルである。レゾルシノールジグリシジルエーテルは市販されており、容易に入手できる。
【0137】
【化48】

【0138】
上記(12)で表される構造は、下記式(12A)で表される構造であることが好ましい。下記式(12A)で表される構造を有するエポキシ化合物は、容易に入手できる。
【0139】
【化49】

【0140】
上記式(12A)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0141】
上記式(12)で表される構造は、下記式(12B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(12B)で表される構造を有するエポキシ化合物は、容易に入手できる。
【0142】
【化50】

【0143】
上記(13)で表される構造は、下記式(13A)で表される構造であることが好ましい。下記式(13A)で表される構造を有するエポキシ化合物は、容易に入手できる。
【0144】
【化51】

【0145】
上記式(13A)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0146】
上記式(13)で表される構造は、下記式(13B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(13B)で表される構造を有するエポキシ化合物は、容易に入手できる。
【0147】
【化52】

【0148】
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を10〜99.9重量%含有し、かつ上記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物を90〜0
.01重量%含有することが好ましい。本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を80〜99.9重量%含有し、かつ上記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物を0.1〜20重量%含有することがより好ましい。
【0149】
本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を10〜99.9重量%含有し、かつ上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物を90〜0.1重量%含有することが好ましい。本発明に係るエピスルフィド化合物含有混合物は、上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を80〜99.9重量%含有し、かつ上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物を0.1〜20重量%含有することがより好ましい。
【0150】
上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物、並びに上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物の含有量が少なすぎると、エピスルフィド化合物含有混合物の硬化速度が充分に速くならないことがある。上記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表される構造を有するエピスルフィド化合物、並びに上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物の含有量が多すぎると、エピスルフィド化合物含有混合物の粘度が高くなりすぎたり、エピスルフィド化合物含有混合物が固体になったりすることがある。
【0151】
(エピスルフィド化合物の製造方法及びエピスルフィド化合物含有混合物の製造方法)
【0152】
上記エピスルフィド化合物の製造方法及び上記エピスルフィド化合物含有混合物の製造方法は特に限定されない。この製造方法としては、例えば、上記式(11−1)、(12−1)もしくは(13)、又は上記式(11)もしくは(12)で表されるエポキシ化合物を用意し、該エポキシ化合物の全部又は一部のエポキシ基をエピスルフィド基に変換する製造方法が挙げられる。
【0153】
上記エピスルフィド化合物の製造方法及び上記エピスルフィド化合物含有混合物の製造方法は、チオシアン酸塩を含む第1の溶液に、上記式(11−1)又は(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を連続的又は断続的に添加した後、チオシアン酸塩を含む第2の溶液を連続的又は断続的にさらに添加する方法が好ましい。上記方法により、上記エポキシ化合物の全部又は一部のエポキシ基をエピスルフィド基に変換できる。上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液は、上記式(1)又は(2)で表されるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液であることが好ましい。
【0154】
全部のエポキシ基がエピスルフィド基に変換された結果、上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を得ることができる。さらに、上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を得ることもできる。一部のエポキシ基がエピスルフィド基に変換された結果、上記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物と、上記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物とを含有するエピスルフィド化合物含有混合物を得ることができる。さらに、上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物と、上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物とを含有するエピスルフィド化合物含有混合物を得ることもできる。
【0155】
上記エピスルフィド化合物及び上記エピスルフィド化合物含有混合物は、具体的には、以下のようにして製造できる。
【0156】
攪拌機、冷却機及び温度計を備えた容器内に、溶剤と、水と、チオシアン酸塩とを加え、チオシアン酸塩を溶解させ、容器内に第1の溶液を調製する。溶剤としては、メタノール又はエタノール等が挙げられる。チオシアン酸塩としては、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム又はチオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0157】
第1の溶液のチオシアン酸塩の濃度は、0.001〜0.2g/mLの範囲内にあることが好ましく、0.005〜0.1g/mLの範囲内にあることがより好ましい。チオシアン酸塩の濃度が高すぎると、エポキシ化合物が重合してしまうことがある。チオシアン酸塩の濃度が低すぎると、エポキシ基をエピスルフィド基に変換できないことがある。
【0158】
さらに、上記第1の溶液とは別に、上記式(11−1)、(12−1)、(13)、(11)又は(12)で表される構造を有するエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を用意する。
【0159】
次に、第1の溶液中に、上記式(11−1)、(12−1)、(13)、(11)又は(12)で表される構造を有するエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を連続的又は断続的に添加する。このときの第1の溶液の温度は、15〜30℃の範囲内にあることが好ましい。上記エポキシ化合物の添加の後、0.5〜12時間攪拌することが好ましい。上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を複数の段階で添加してもよい。例えば、一部の上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を添加した後、少なくとも0.5時間攪拌し、その後、残りの上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液をさらに添加し、0.5〜12時間攪拌してもよい。上記エポキシ化合物を含む溶液を用いる場合、該溶液のエポキシ化合物の濃度は特に限定されない。
【0160】
第1の溶液中への上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液の添加速度は、1〜10mL/分の範囲内にあることが好ましく、2〜8mL/分の範囲内にあることがより好ましい。上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液の添加速度が速すぎると、エポキシ化合物が重合してしまうことがある。上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液の添加速度が遅すぎると、エピスルフィド化合物の生成効率が低下することがある。
【0161】
上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液が上記第1の溶液に添加された混合液において、上記エポキシ化合物の濃度は、0.05〜0.8g/mLの範囲内にあることが好ましく、0.1〜0.5g/mLの範囲内にあることがより好ましい。エポキシ化合物の濃度が高すぎると、エポキシ化合物が重合してしまうことがある。
【0162】
次に、上記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液が上記第1の溶液に添加された混合液に、溶剤と、水と、チオシアン酸塩とを含む第2の溶液を連続的又は断続的にさらに添加する。上記第2の溶液の添加の後、0.5〜12時間攪拌することが好ましい。また、上記第2の溶液の添加の後、15〜60℃の範囲内で攪拌することが好ましい。上記第2の溶液を複数の段階で添加してもよい。例えば、一部の上記第2の溶液を添加した後、少なくとも0.5時間攪拌し、その後、残りの上記第2の溶液をさらに添加し、0.5〜12時間攪拌してもよい。
【0163】
上記第2の溶液のチオシアン酸塩の濃度は、0.001〜0.7g/mLの範囲内にあることが好ましく、0.005〜0.5g/mLの範囲内にあることがより好ましい。チオシアン酸塩の濃度が高すぎると、エポキシ化合物が重合してしまうことがある。チオシアン酸塩の濃度が低すぎると、エポキシ基をエピスルフィド基に変換できないことがある。
【0164】
上記混合液中への上記第2の溶液の添加速度は、1〜10mL/分の範囲内にあることが好ましく、2〜8mL/分の範囲内にあることがより好ましい。上記第2の溶液の添加速度が速すぎると、エポキシ化合物が重合してしまうことがある。上記第2の溶液の添加速度が遅すぎると、エピスルフィド化合物の生成効率が低下することがある。
【0165】
第1の溶液中に上記エポキシ化合物が添加された混合液に、上記第2の溶液を添加した後、水、溶剤又は未反応のチオシアン酸塩を除去することが好ましい。水、溶剤又は未反応のチオシアン酸塩を除去する方法として、従来公知の方法が用いられる。
【0166】
第1の溶液、又は、第2の溶液は、パラジウム金属粒子、酸化チタン等の触媒を含有してもよい。上記触媒を含有する溶液の使用により、エピスルフィド基の変換率を調整できる。また、低温環境においてエポキシ基をエピスルフィド基に変換できるため、エポキシ化合物の重合反応を抑制できる。上記第1の溶液の触媒の濃度、又は、上記第2の溶液の触媒の濃度は、0.05〜1.0g/mLの範囲内にあることが好ましい。
【0167】
上記のようにして、上記エポキシ化合物の全部又は一部のエポキシ基をエピスルフィド基に変換できる。この結果、エピスルフィド化合物又はエピスルフィド化合物含有混合物を得ることができる。具体的には、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を100重量%含有するエピスルフィド化合物を得ることができる。さらに、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を10〜99.9重量%又は10〜50重量%含有し、かつ上記式(11−1)、(12−1)、(13)、(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物を90〜0.1重量%又は90〜50重量%含有するエピスルフィド化合物含有混合物を得ることができる。
【0168】
(硬化性組成物)
本発明に係る硬化性組成物は、本発明のエピスルフィド化合物と、硬化剤とを含有する。または、本発明に係る硬化性組成物は、本発明のエピスルフィド化合物含有混合物と、硬化剤とを含有する。すなわち、本発明に係る硬化性組成物は、本発明のエピスルフィド化合物又はエピスルフィド化合物含有混合物と、硬化剤とを含有する。硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0169】
本発明に係る硬化性組成物は、上記エピスルフィド化合物を少なくとも1種含有する。または、本発明に係る硬化性組成物は上記エピスルフィド化合物含有混合物を少なくとも1種含有する。または、本発明に係る硬化性組成物は、上記エピスルフィド化合物を少なくとも1種と、上記エピスルフィド化合物含有混合物を少なくとも1種含有する。従って、硬化性樹脂として、上記エピスルフィド化合物の2種以上が併用されてもよく、上記エピスルフィド化合物含有混合物の2種以上が併用されてもよく、上記エピスルフィド化合物と上記エピスルフィド化合物含有混合物とが併用されてもよい。
【0170】
上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物等が挙げられる。なかでも、硬化性組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、上記エピスルフィド化合物又は上記エピスルフィド化合物含有混合物と上記硬化剤とを混合したときに保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。これらの硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていて
もよい。
【0171】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン又は2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート又はジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0172】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン又はジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0173】
上記硬化剤の中でもポリチオール化合物又は酸無水物等が好ましく用いられる。さらに好ましくは、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くできるので、ポリチオール化合物が用いられる。
【0174】
上記ポリチオール化合物の中でもペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネートがより好ましい。このポリチオール化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くできる。
【0175】
上記硬化剤の含有量は特に限定されない。上記エピスルフィド化合物又は上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部((上記エポキシ化合物が含まれない場合には上記エピスルフィド化合物100重量部を示し、上記エポキシ化合物が含まれる場合には上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部を示す)に対して、上記硬化剤は1〜40重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記硬化剤の含有量が1重量部未満であると、硬化性組成物が充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の含有量が40重量部を超えると、硬化性組成物の硬化物の耐熱性が低下することがある。上記エピスルフィド化合物又は上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、上記硬化剤の含有量のより好ましい下限は30重量部、さらにより好ましい下限は45重量部、より好ましい上限は100重量部、さらにより好ましい上限は75重量部である。硬化剤の含有量が少なすぎると、硬化性組成物が充分に硬化しにくくなる。硬化剤の含有量が多すぎると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化剤が残存することがある。
【0176】
なお、上記硬化剤がイミダゾール硬化剤又はフェノール硬化剤である場合、上記エピスルフィド化合物又は上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、イミダゾール硬化剤又はフェノール硬化剤は、1〜15重量部の範囲内で含有されることが好ましい。また、上記硬化剤がアミン硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物である場合、上記エピスルフィド化合物又は上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、アミン硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物は15〜40重量部の範囲内で含有されることが好ましい。
【0177】
本発明に係る硬化性組成物は、貯蔵安定剤をさらに含有することが好ましい。本発明に係る硬化性組成物は、上記貯蔵安定剤として、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種をさらに含有することが好ましく
、亜リン酸エステルを含有することがより好ましい。亜リン酸エステルの使用により、上記エピスルフィド化合物又はエピスルフィド化合物含有混合物の貯蔵安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0178】
上記リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn−ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、(RO)P=O[R=ラウリル基、セチル基、ステアリル基又はオレイル基]、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、ブチルピロホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、アンモニウムエチルアシッドホスフェート、及び2−エチルヘキシルアシッドホスフェート塩等が挙げられる。中でもジエチルベンジルホスフェートが好ましく用いられる。
【0179】
上記亜リン酸エステルとしては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn−ブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ジノニルフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイト、ジ(2−エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジオレイルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。中でも、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトが好ましく、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトがより好ましく、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトがさらに好ましい。
【0180】
上記ホウ酸エステルとしては、例えばトリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ−n−プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ−n−ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ−o−トリルボレート、トリ−m−トリルボレート、トリエタノールアミンボレート、トリス(2−エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,
4,7,10−テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7−トリオキサウンデシル)ボラン、2−(β−ジメチルアミノイソプロポキシ)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(β−ジエチルアミノエトキシ)−4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(β−ジメチルアミノエトキシ)−4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(β−ジイソプロピルアミノエトキシ)−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(β−ジイソプロピルアミノエトキシ)−4−メチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(γ−ジメチルアミノプロポキシ)−1,3,6,9−テトラプキサ−2−ボラシクロウンデカン、および2−(β−ジメチルアミノエトキシ)−4,4−(4−ヒドロキシブチル)−1,3,2−ジオキサボリナン、2,2−オキシビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボナリン、及びエポキシ−フェノール−ホウ酸エステル配合物等が挙げられる。
【0181】
上記エピスルフィド化合物又は上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、上記貯蔵安定剤の含有量は0.001〜0.1重量部の範囲内であることが好ましい。上記エピスルフィド化合物又上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、上記貯蔵安定剤の含有量のより好ましい下限は0.005重量部、より好ましい上限は0.05重量部である。貯蔵安定剤、特に亜リン酸エステルの含有量が上記範囲内であると、上記エピスルフィド化合物又上記エピスルフィド化合物含有混合物の貯蔵安定性をより一層高めることができる。
【0182】
本発明に係る硬化性組成物は、硬化促進剤をさらに含有することが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0183】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0184】
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン又は2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0185】
上記エピスルフィド化合物又上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量の好ましい下限は0.5重量部、より好ましい下限は1重量部、好ましい上限は6重量部、より好ましい上限は4重量部である。硬化促進剤の含有量が少なすぎると、硬化性組成物が充分に硬化しにくくなる。硬化促進剤の含有量が多すぎると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存することがある。
【0186】
本発明に係る硬化性組成物は、フィラーをさらに含有することが好ましい。フィラーの使用により、硬化性組成物の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0187】
上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム又はアルミナ等が挙げられる。上記フィラーはフィラー粒子であることが好ましい。フィラー粒子の平均粒子径は、0.1〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。フィラー粒子の平均粒子径が上記範
囲内であると、硬化性組成物の硬化物の潜熱膨張をより一層抑制できる。「平均粒子径」とは、動的レーザー散乱法によって測定される体積平均径を示す。
【0188】
上記エピスルフィド化合物又上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、上記フィラーの含有量は50〜900重量部の範囲内であることが好ましい。フィラーの含有量が上記範囲内であると、硬化性組成物の硬化物の潜熱膨張をより一層抑制できる。
【0189】
本発明に係る硬化性組成物は、必要に応じて、溶剤、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含有してもよい。
【0190】
上記溶剤は特に限定されない。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテル等が挙げられる。溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0191】
上記シランカップリング剤は特に限定されない。上記シランカップリング剤としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、イソブチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン又はイミダゾールシラン等が挙げられる。なかでも、イミダゾールシランが好ましい。シランカップリング剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0192】
上記イオン捕捉剤は特に限定されない。上記イオン捕捉剤の具体例としては、アルミノケイ酸塩、含水酸化チタン、含水酸化ビスマス、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、ハイドロタルサイト、モリブドリン酸アンモニウム、ヘキサシアノ亜鉛又はイオン交換樹脂等が挙げられる。イオン捕捉剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0193】
本発明に係る硬化性組成物は、光照射によっても硬化するように、光硬化性化合物と、光重合開始剤とをさらに含有していてもよい。上記光硬化性化合物と上記光重合開始剤との使用により、光の照射により硬化性組成物を硬化させることができる。さらに、硬化性組成物を半硬化させ、硬化性組成物の流動性を低下させることができる。
【0194】
上記光硬化性化合物は特に限定されない。該光硬化性化合物として、(メタ)アクリル樹脂又は環状エーテル基含有樹脂等が好適に用いられる。上記(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル樹脂とアクリル樹脂とを示す。
【0195】
上記(メタ)アクリル樹脂として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。
【0196】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
【0197】
上記光硬化性化合物は、エポキシ基の少なくとも一種の基と、(メタ)アクリル基とを有する光及び熱硬化性化合物(以下、部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂ともいう)を含むことが好ましい
【0198】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換され(転化率)、部分(メタ)アクリル化されていることが好ましい。エポキシ基の50%が(メタ)アクリロイル基に変換されていることがより好ましい。上記(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルとを示す。
【0199】
硬化性組成物の硬化性を高める観点からは、上記硬化性化合物100重量%中、上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂の含有量の好ましい下限は0.1重量%、より好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は2重量%、より好ましい上限は1.5重量%である。
【0200】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0201】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを得るために用いられるエポキシ化合物、並びに該エポキシ化合物の市販品としては、例えば、エピコート828ELとエピコート1004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート806とエピコート4004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピクロンEXA1514(DIC社製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、RE−810NM(日本化薬社製)等の2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロンEXA7015(DIC社製)等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、EP−4000S(ADEKA社製)等のプロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EX−201(ナガセケムテックス社製)等のレゾルシノール型エポキシ樹脂、エピコートYX−4000H(ジャパンエポキシレジン社製)等のビフェニル型エポキシ樹脂、YSLV−50TE(東都化成社製)等のスルフィド型エポキシ樹脂、YSLV−80DE(東都化成社製)等のエーテル型エポキシ樹脂、EP−4088S(ADEKA社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エピクロンHP4032とエピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂、エピクロンN−770(DIC社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンHP7200(DIC社製)等のジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、NC−3000P(日本化薬社製)等のビフェニルノボラック
型エポキシ樹脂、ESN−165S(東都化成社製)等のナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン430(DIC社製)及びTETRAD−X(三菱ガス化学社製)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ZX−1542(東都化成社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)及びデナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等のアルキルポリオール型エポキシ樹脂、YR−450とYR−207(いずれも東都化成社製)及びエポリードPB(ダイセル化学社製)等のゴム変性型エポキシ樹脂、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等のグリシジルエステル化合物、エピコートYL−7000(ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂、並びにYDC−1312とYSLV−80XYとYSLV−90CR(いずれも東都化成社製)、XAC4151(旭化成社製)、エピコート1031とエピコート1032(いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EXA−7120(DIC社製)及びTEPIC(日産化学社製)等の他のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0202】
上記エポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、エベクリル3700、エベクリル3600、エベクリル3701、エベクリル3703、エベクリル3200、エベクリル3201、エベクリル3600、エベクリル3702、エベクリル3412、エベクリル860、エベクリルRDX63182、エベクリル6040及びエベクリル3800(いずれもダイセルユーシービー社製)、EA−1020、EA−1010、EA−5520、EA−5323、EA−CHD及びEMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA及びエポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、並びにデナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314及びデナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0203】
上述した光硬化性化合物以外の光硬化性化合物が含まれる場合には、該光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0204】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0205】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0206】
上記硬化性組成物を効率的に光硬化させる観点からは、上記エピスルフィド化合物又エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、上記光硬化性化合物の含有量の好ましい下限は1重量部、より好ましい下限は10重量部、さらに好ましい下限は50重量部、好ましい上限は10000重量部、より好ましい上限は1000重量部、さらに好ましい上限は500重量部である。
【0207】
上記光重合開始剤は特に限定されない。上記光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0208】
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン光重合開始剤、ベンゾフェノン光重合開始剤、チオキサントン、ケタール光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド又はアシルホスフォナート等が挙げられる。
上記アセトフェノン光重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、又は2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光重合開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0209】
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されない。上記光硬化性組成物100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は0.2重量部、さらに好ましい下限は2重量部、好ましい上限は10重量部、より好ましい上限は5重量部である。光重合開始剤の含有量が少なすぎると、光重合開始剤を添加した効果が充分に得られないことがある。光重合開始剤の含有量が多すぎると、硬化性組成物の硬化物の接着力が低下することがある。
【0210】
硬化性樹脂組成物は、上記式(11−1)、(12−1)、(13)、(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物以外の他のエポキシ化合物をさらに含有してもよい。該エポキシ化合物として、上述のエポキシ(メタ)アクリレートを得るために用いられるエポキシ化合物を用いることができる。
【0211】
エピスルフィド化合物と、上記式(11−1)、(12−1)、(13)、(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物と、上記他のエポキシ化合物との合計100重量%中、エピスルフィド化合物の含有量の好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は25重量%、好ましい上限は100重量%、より好ましい上限は50重量%である。
【0212】
本発明に係る硬化性組成物は、一液型接着剤として、液晶パネル又は半導体チップ等の接着に用いることができる。硬化性組成物は、ペースト状の接着剤であってもよく、フィルム状の接着剤であってもよい。
本発明に係る硬化性組成物をフィルム状の接着剤に加工する方法は特に限定されない。例えば、硬化性組成物を離型紙等の基材に塗工し、フィルム状の接着剤に加工する方法、又は硬化性組成物に溶剤を加え、離型紙等の基材に塗工した後、上記硬化剤の活性温度よりも低い温度で溶剤を揮発させ、フィルム状の接着剤に加工する方法等が挙げられる。
【0213】
本発明に係る硬化性組成物を硬化させる方法としては、硬化性組成物を加熱する方法、硬化性組成物に光を照射した後、光が照射された硬化性組成物を加熱する方法、又は硬化性組成物に光を照射すると同時に、硬化性組成物を加熱する方法等が挙げられる。
【0214】
本発明に係る硬化性組成物を硬化させる際の加熱温度は、160〜250℃の範囲内にあることが好ましく、160〜200℃の範囲内にあることがより好ましい。硬化性組成
物は低温で速やかに硬化させることができるので、加熱に要するエネルギー量を低減できる。
【0215】
従来のエポキシ樹脂を含む硬化性組成物等は、上記加熱温度が200℃以下であると、硬化時間が長くなり、例えば加熱温度が200℃であれば硬化時間が10秒を超えてしまう。これに対し、本発明に係る硬化性組成物では、上記加熱温度が200℃以下であっても、短時間で硬化させることができる。
【0216】
本発明に係る硬化性組成物が光硬化する場合、硬化性組成物に光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。該光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯又はメタルハライドランプ等が挙げられる。なかでも、ケミカルランプが好ましい。ケミカルランプは、光重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、光重合開始剤以外の組成物成分の光吸収波長領域の発光量が少ない。さらに、ケミカルランプを用いた場合には、組成物の内部に存在する光硬化成分まで効率よく光を到達させることができる。
【0217】
例えば、アセトフェノン基を有する開裂型の光重合開始剤が含有されている場合、365nm〜420nmの波長領域での光照射強度は、0.1〜100mW/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0218】
本発明に係る硬化性組成物が導電性粒子をさらに含有する場合、硬化性組成物を異方性導電材料として用いることができる。
【0219】
上記導電性粒子は、例えば回路基板と半導体チップとの電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、少なくとも表面が導電性を有する粒子であれば特に限定されない。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0220】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。上記エピスルフィド化合物又は上記エピスルフィド化合物含有混合物100重量部に対して、上記導電性粒子の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は10重量部、より好ましい上限は5重量部である。上記導電性粒子の含有量が少なすぎると、電極同士等を確実に導通させることができないことがある。上記導電性粒子の含有量が多すぎると、導通されてはならない、隣接する電極間の短絡が生じることがある。
【0221】
硬化性組成物が液状又はペースト状である場合、硬化性組成物の粘度(25℃)は、20000〜100000mPa・sの範囲内にあることが好ましい。上記粘度が低すぎると、導電性粒子が沈降することがある。上記粘度が高すぎると、導電性粒子が充分に分散しないことがある。
【0222】
(硬化性組成物の用途)
本発明に係る硬化性組成物は、様々な接続対象部材を接着するのに使用できる。
【0223】
本発明に係る硬化性組成物が、導電性粒子を含む異方性導電材料である場合、該異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。異方性導電材料が、異方性導電
フィルムや異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合、該導電性粒子を含有するフィルム状の接着剤に、導電性粒子を含有しないフィルム状の接着剤が積層されていてもよい。
【0224】
上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続構造体を得るのに好適に用いられる。
【0225】
図1に、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0226】
図1に示す接続構造体は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、導電性粒子5を含む硬化性組成物、すなわち異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0227】
第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0228】
上記接続構造体としては、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板としては、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。第1,第2の接続対象部材は、電子部品又は回路基板であることが好ましい。
【0229】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、電子部品又は回路基板等の第1の接続対象部材と、電子部品又は回路基板等の第2の接続対象部材との間に上記異方性導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。
【0230】
なお、上記硬化性組成物は、導電性粒子を含有していなくてもよい。この場合には、第1,第2の接続対象部材を電気的に接続することなく、第1,第2の接続対象部材を接着して接続するために、上記硬化性組成物が用いられる。
【0231】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0232】
(実施例1)
(1)エピスルフィド化合物含有混合物の調製
攪拌機、冷却機及び温度計を備えた2Lの容器内に、エタノール250mLと、純水250mLと、チオシアン酸カリウム20gとを加え、チオシアン酸カリウムを溶解させ、容器内に第1の溶液を調製した。その後、容器内の温度を20〜25℃の範囲内に保持した。
【0233】
次に、20〜25℃に保持された第1の溶液を攪拌しながら、該第1の溶液中に、レゾルシノールジグリシジルエーテル160gを5mL/分の速度で滴下した。滴下後、30分間さらに攪拌し、エポキシ化合物含有溶液を得た。
【0234】
次に、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液を用意した。得られたエポキシ化合物含有溶液に、用意した第2の溶液を5mL/分の速度で添加した後、30分攪拌した。攪拌後、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液をさらに用意し、該第2の溶液を5mL/分の速度でさらに添加し、30分間攪拌した。その後、容器内の温度を10℃に冷却し、2時間攪拌し、反応させた。
【0235】
次に、容器内に飽和食塩水100mLを加え、10分間攪拌した。攪拌後、容器内にトルエン300mLを加え、10分間攪拌した。その後、容器内の溶液を分液ロートに移し、2時間静置し、溶液を分離させた。分液ロート内の下方の溶液を排出し、上澄み液を取り出した。取り出された上澄み液にトルエン100mLを加え、攪拌し、2時間静置した。更に、トルエン100mLをさらに加え、攪拌し、2時間静置した。
【0236】
次に、トルエンが加えられた上澄み液に、硫酸マグネシウム50gを加え、5分間攪拌した。攪拌後、ろ紙により硫酸マグネシウムを取り除いて、溶液を分離した。真空乾燥機を用いて、分離された溶液を80℃で減圧乾燥することにより、残存している溶剤を除去した。このようにして、エピスルフィド化合物含有混合物を得た。
【0237】
クロロホルムを溶媒として、得られたエピスルフィド化合物含有混合物のH−NMRの測定を行った。この結果、エポキシ基の存在を示す6.5〜7.5ppmの領域のシグナルが減少し、エピスルフィド基の存在を示す2.0〜3.0ppmの領域にシグナルが現れた。これにより、レゾルシノールジグリシジルエーテルの一部のエポキシ基がエピスルフィド基に変換されていることを確認した。また、H−NMRの測定結果の積分値より、エピスルフィド化合物含有混合物は、レゾルシノールジグリシジルエーテル70重量%と、上記式(1B)で表されるエピスルフィド化合物30重量%とを含有することを確認した。
【0238】
(2)硬化性組成物の調製
得られたエピスルフィド化合物含有混合物33重量部に、硬化剤としてのペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部と、亜リン酸エステルとしてのジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト0.01重量部と、硬化促進剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーとしての平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部と、平均粒子径3μmの導電性粒子2重量部とを添加し、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストとしての硬化性組成物を得た。なお、用いた導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0239】
(実施例2)
硬化性組成物の調製の際に、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネートと、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトとを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストとしての硬化性組成物を得た。
【0240】
(比較例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部と、硬化剤としての1,2−ジメチルイミダゾール5重量部とを添加し、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、混合物を得た。
【0241】
得られた混合物に、平均粒子径0.02μmのシリカ粒子7重量部と、平均粒子径3μ
mの導電性粒子2重量部とを添加し、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで8分間攪拌することにより、配合物を得た。なお、用いた導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0242】
得られた配合物を、ナイロン製濾紙(孔径10μm)により濾過することにより、異方性導電ペーストとしての硬化性組成物を得た。
【0243】
(実施例1,2及び比較例1の評価)
(1)硬化時間
L/Sが10μm/10μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが10μm/10μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0244】
上記透明ガラス基板上に、得られた硬化性組成物を厚さ30μmとなるように塗工し、硬化性組成物層を形成した。次に、硬化性組成物層上に上記半導体チップを、電極同士が互いに対向し、接続するように積層した。その後、硬化性組成物層の温度が185℃となるように加熱ヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加熱ヘッドを載せ、硬化性組成物層を185℃で硬化させ、接続構造体を得た。この接続構造体を得る際に、加熱により硬化性組成物層が硬化するまでの時間を測定した。
【0245】
(2)ボイドの有無
上記硬化時間の評価で得られた接続構造体において、硬化性組成物層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。
【0246】
結果を下記の表1に示す。
【0247】
【表1】

【0248】
(実施例3)
硬化性組成物の調製の際に、エポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストとしての硬化性組成物を得た。
【0249】
(実施例4)
硬化性組成物の調製の際に、ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストとしての硬化性組成物を得た。
【0250】
(実施例3,4の評価)
(1)硬化時間
実施例1,2及び比較例1の評価で用いた透明ガラス基板と半導体チップとを用意した。
【0251】
上記透明ガラス基板の上面に、得られた硬化性組成物を厚さ30μmとなるように塗工し、硬化性組成物層を形成した。さらに、異方性導電ペーストを塗布しながら、硬化性組成物層に紫外線照射ランプを用いて、420nmの紫外線を光照射強度が50mW/cmとなるように照射し、光重合によって硬化性組成物層をBステージ化した。塗工してから、すなわち塗工された硬化性組成物層が上記透明ガラス基板に接したときから、硬化性組成物層に光が照射されるまでの時間Tは、0.5秒であった。
【0252】
次に、Bステージ化された硬化性組成物層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向し、接続するように積層した。その後、硬化性組成物層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、10kg/cmの圧力をかけて、Bステージ化された硬化性組成物層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。この接続構造体を得る際に、加熱により硬化性組成物層が硬化するまでの時間を測定した。
【0253】
(2)ボイドの有無
上記硬化時間の評価で得られた接続構造体において、実施例1,2及び比較例1と同様にして、ボイドの有無を評価した。
【0254】
結果を下記の表2に示す。
【0255】
【表2】

【0256】
(実施例5〜24)
(1)エピスルフィド化合物、又はエピスルフィド化合物含有混合物の調製
上記式(1)、(2)又は(3)で表されるエピスルフィド化合物と、上記式(11)、(12)又は(13)で表されるエポキシ化合物とを下記の含有量で含むエピスルフィド化合物又はエピスルフィド化合物含有混合物を、実施例1と同様の手順により調製した。各実施例のエピスルフィド化合物又はエピスルフィド化合物含有混合物は、チオシアン酸カリウムの使用量を適宜調整し、転化率を調整することにより得た。
【0257】
(2)硬化性組成物の調製
硬化性組成物の調製の際に、実施例1で用いたエピスルフィド化合物含有混合物33重量部を、下記の表3〜5に示すエピスルフィド化合物又はエピスルフィド化合物含有混合物に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストとしての硬化性組成物を得た。
【0258】
(実施例25)
硬化性組成物の調製の際に、実施例1で用いたエピスルフィド化合物含有混合物33重量部を、実施例1で用いたエピスルフィド化合物含有混合物10重量部と、実施例9で用いたエピスルフィド化合物含有混合物20重量部とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0259】
(実施例26)
硬化性組成物の調製の際に、実施例1で用いたエピスルフィド化合物含有混合物33重量部を、実施例1で用いたエピスルフィド化合物含有混合物20重量部と、レゾルシノールグリシジルエーテル10重量部とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0260】
(実施例27)
硬化性組成物の調製の際に、実施例1で用いたエピスルフィド化合物含有混合物33重量部を、実施例1で用いたエピスルフィド化合物含有混合物20重量部と、ビスフェノールA型グリシジルエーテル10重量部とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0261】
(実施例5〜27の評価)
実施例1,2及び比較例1の評価と同様にして、硬化時間及びボイドの有無を評価した。
【0262】
結果を下記の表3〜6に示す。
【0263】
【表3】

【0264】
【表4】

【0265】
【表5】

【0266】
【表6】

【符号の説明】
【0267】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…接続部
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物。
【化1】

上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。
【化2】

上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。
【化3】

上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表し、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。
【化4】

上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化5】

上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化6】

上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【請求項2】
下記式(1)又は(2)で表される構造を有する、請求項1に記載のエピスルフィド化合物。
【化7】

上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。
【化8】

上記式(2)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。
【化9】

上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化10】

上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【請求項3】
前記式(1)又は(2)で表される構造が、下記式(1A)又は(2A)で表される構造である、請求項2に記載のエピスルフィド化合物。
【化11】

上記式(1A)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化12】

上記式(2A)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエピスルフィド化合物と、下記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物とを含有する、エピスルフィド化合物含有混合物。
【化13】

上記式(11−1)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は下記式(14)で表される基を表す。
【化14】

上記式(12−1)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、下記式(15)で表される基を表す。
【化15】

上記式(13)中、R121及びR122はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表し、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の内の水素ではない基は、下記式(16)で表される基を表す。
【化16】

上記式(14)中、R17は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化17】

上記式(15)中、R69は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化18】

上記式(16)中、R131は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【請求項5】
前記エポキシ化合物が、下記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物である、請求項4に記載のエピスルフィド化合物含有混合物。
【化19】

上記式(11)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は下記式(14)で表される基を表す。
【化20】

上記式(12)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水
素を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、下記式(15)で表される基を表す。
【化21】

上記式(14)中、R17は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化22】

上記式(15)中、R69は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【請求項6】
前記式(11)又は(12)で表される構造が、下記式(11A)又は(12A)で表される構造である、請求項5に記載のエピスルフィド化合物含有混合物。
【化23】

上記式(11A)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化24】

上記式(12A)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のエピスルフィド化合物含有混合物の製造方法であって、
チオシアン酸塩を含む第1の溶液に、前記式(11−1)、(12−1)又は(13)で表されるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を連続的又は断続的に添加した後、チオシアン酸塩を含む第2の溶液を連続的又は断続的にさらに添加することにより、前記エポキシ化合物の一部のエポキシ基をエピスルフィド基に変換する、エピスルフィド化合物含有混合物の製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液として、前記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を用いる、請求項7に記載のエピスルフィド化合物含有混合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエピスルフィド化合物と、硬化剤とを含有する、硬化性組成物。
【請求項10】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のエピスルフィド化合物含有混合物と、硬化剤とを含有する、硬化性組成物。
【請求項11】
光硬化性化合物と、光重合開始剤とをさらに含有する、請求項9又は10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
導電性粒子をさらに含有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項9〜11のいずれか1項に記載の硬化性組成物により形成されている接続構造体。
【請求項14】
前記硬化性組成物が導電性粒子を含有し、
前記第1,第2の接続対象部材が、前記導電性粒子により電気的に接続されている、請求項13に記載の接続構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−105942(P2011−105942A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267316(P2010−267316)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2009−540944(P2009−540944)の分割
【原出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】