説明

硬化性組成物

【課題】硬化後に優れた防汚性および自浄作用を持続的に発揮する建築用シーリング材等として適当な硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)反応性ケイ素基を有するビニル系重合体と、
(B)式(1):
−NH−R−NH (1)
〔式中、Rは、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物
とを含んでなる、硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性および自浄作用に優れた建物用シーリング材等として適当な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ポリマー材料をベースとした硬化性組成物は従来知られており、これらはシーリング材として土木、建築または電機等、多岐の用途にわたり使用されている。例えば、変成シリコーン系ポリマーをベースとした硬化性組成物は、建築用シーリング材として、外壁の露出目地等で広く使用されている。
【0003】
変成シリコーン系シーリング材は、他のポリマーをベースにしたシーリング材と比べて耐候性等には優れているが、表面の残留タック(ベタツキ)により、ほこり等の汚れが付着し、特に長期間の屋外暴露において、外観が損なわれる問題がある。特に、近年、防汚性に優れた外壁ボードが開発されてきており、外壁ボードと比較したシーリング材部分の汚れは益々目立つようになってきている。
【0004】
表面の残留タック(ベタツキ)を抑制したタイプの変成シリコーン系シーリング材として、変成シリコーン系ポリマーとフッ素系界面活性剤を含有する室温硬化性組成物が開示されている(特許文献1)。しかしながら、このシーリング材は残留タック抑制効果が不十分であり、ほこり等の汚れ付着は防げない。さらに、表面耐候性も不十分であり、長期間の屋外暴露によって表面に多数のクラックが発生し、そのクラックにほこり等が溜まるため、経時的にも汚染を防止することはできない。
【0005】
また、硬化物表面に経時的に汚染を発生させることが少ない変成シリコーン系シーリング材として、変成シリコーン系ポリマーと、融点が10〜200℃であるアミン化合物、重合度が2〜5であるポリグリセリンの脂肪酸エステルまたは融点が10〜200℃である非イオン性界面活性剤を含有する室温硬化性組成物が開示されている(特許文献2)。しかしながら、当該シーリング材の表面汚染防止効果は、近年の防汚性に優れた外壁ボードと比較して十分ではなかった。また、当該シーリング材の表面は、付着した汚れが雨水によって洗い流される自浄機能も備えてはいない。
【0006】
近年、建築物の高耐候性・長寿命化、高意匠性、メンテナンスフリー等の要求が高まり、長期間にわたって防汚機能を持つ防汚性外壁材が提案されていることから、建築用シーリング材においてもそれらの機能を備えることが求められており、汚れによる外観の劣化を長期間にわたって防ぐためには、付着した汚れが降雨によって容易に洗い流されることが好ましい。
【特許文献1】特開昭59−217757号公報
【特許文献2】特開平11−193343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬化後に優れた防汚性および自浄作用を持続的に発揮する、すなわち、長期間にわたって汚れが付着しにくく、さらに、降雨によって容易に汚れを洗い流すことができる、高耐候性建築用シーリング材等として適当な硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、(A)反応性ケイ素基を有するビニル系重合体を主成分とする硬化性組成物において、(B)式(1):
−NH−R−NH (1)
〔式中、Rは、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物を含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
〔1〕(A)反応性ケイ素基を有するビニル系重合体と、
(B)式(1):
−NH−R−NH (1)
〔式中、Rは、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物
とを含んでなる、硬化性組成物。
〔2〕アミン化合物(B)は、
−NH−C−NH
で示される基を有する、上記〔1〕に記載の硬化性組成物。
〔3〕アミン化合物(B)の含有量は、硬化性組成物全体の0.1重量%〜5重量%である、上記〔1〕または〔2〕に記載の硬化性組成物。
〔4〕さらにアミン化合物(B)とは異なる(C)アミン化合物を含んでなる、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔5〕アミン化合物(C)は、凝固点34℃以下の天然由来のアミン化合物および/または融点35℃以上のアミン化合物である、上記〔4〕に記載の硬化性組成物。
〔6〕凝固点34℃以下の天然由来のアミン化合物は、ココアルキルアミンである、上記〔5〕に記載の硬化性組成物。
〔7〕融点35℃以上のアミン化合物は、固形アミン表面に微粉体が固着された微粉体コーティングアミンである、上記〔5〕または〔6〕に記載の硬化性組成物。
〔8〕反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)は、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔9〕硬化後の水に対する表面接触角は15°以下である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、硬化後に優れた防汚性および自浄作用を持続的に発揮するので、すなわち、長期間にわたって汚れが付着しにくく、さらに、降雨によって容易に汚れを洗い流すことができるので、高耐候性建築用シーリング材等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の硬化性組成物は、反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)を主成分として含有する。本発明において「反応性ケイ素基を有するビニル系重合体」とは、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有するビニル系モノマーの1種または2種以上を重合させて得られるビニル系重合体を主鎖骨格とし、末端もしくは側鎖に反応性ケイ素基を含有する重合体を意味する。このような反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)は、従来公知の方法で製造することができる。また、本発明の硬化性組成物において、反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン系モノマー、ケイ素基含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、マレイミド系モノマー、ビニルエステル系モノマー、アルケン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を共重合させてもよい。
【0012】
上記反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)における「反応性ケイ素基」とは、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、硬化触媒によって触媒される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらのうちでは、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという点からアルコキシ基が特に好ましい。
【0013】
本発明における反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)としては、硬化後の物性や耐候性の点で、好ましくは数平均分子量が3000〜50000(好ましくは30000〜50000)である、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体が好ましい。このような反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、株式会社(株)カネカ製のSA310S、SA110S等が挙げられる。
【0014】
本発明の硬化性組成物中の反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)の含有量は、通常、硬化性組成物全体の10〜50重量%であり、好ましくは10〜30重量%である。
【0015】
本発明の硬化性組成物は、上記成分(A)に加えて、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(E)を主成分として含有していてもよい。本発明において「反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体」とは、ポリオキシアルキレンを主鎖骨格とし、かつ末端もしくは側鎖に反応性ケイ素基を有する重合体を意味する。このような反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(E)は、従来公知の方法で製造することができる。また、本発明の硬化性組成物において、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(E)における反応性ケイ素基は、上記成分(A)における反応性ケイ素基と同様のものである。
【0016】
上記反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(E)としては、例えば、反応性ケイ素基を有するポリプロピレンオキシド、反応性ケイ素基を有するポリエチレンオキシド、反応性ケイ素基を有するプロピレンオキシド−エチレンオキシド共重合体等が挙げられる。なかでも入手が容易である点で、ポリプロピレンオキシドを主鎖骨格とし、かつ末端もしくは側鎖に反応性ケイ素基を有する、好ましくは数平均分子量が8000〜50000(好ましくは20000〜50000)である、ポリプロピレンオキシド重合体が好ましい。このような反応性ケイ素基を有するポリプロピレンオキシドとしては、例えば、(株)カネカ製のMSポリマーシリーズ(「MSポリマーS−203」等)、SAX−220、旭硝子(株)製の「エクセスター」(商標登録)シリーズ等が挙げられる。
【0017】
本発明の硬化性組成物中の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(E)の含有量は、通常、硬化性組成物全体の10〜50重量%であり、好ましくは10〜30重量%である。
【0018】
また、本発明の硬化性組成物においては、上記成分(A)と成分(E)との混合物に加え、上記成分(A)と成分(E)との反応物も使用することができる。上記成分(A)と成分(E)との混合物または反応物としては、例えば、(株)カネカ製のMA903、MSX908、MSX911、MSX943等の、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体との混合物または反応物が挙げられる。このような混合物または反応物の本発明の硬化性組成物中の含有量は、通常、硬化性組成物全体の10〜50重量%であり、好ましくは10〜30重量%である。
【0019】
本発明の硬化性組成物は、上記の各成分に加えて、式(1):
−NH−R−NH (1)
〔式中、Rは、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物(B)を含有する。当該アミン化合物を配合することにより、本発明の硬化性組成物の硬化後の表面は、超親水性になり、降雨による自浄作用に優れたものとなる。
当該アミン化合物(B)は、その分子中に式(1)で示される基を少なくとも1個有していればよく、2個以上有していてもよい。また、アミン化合物(B)の分子中に式(1)で示される基が2個以上含まれる場合、当該基は同一でも、異なっていてもよい。
また、当該アミン化合物(B)は、本発明の硬化性組成物において、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記式(1)においてRで示される「炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基」としては、例えば、炭素数1〜5の直鎖または分岐状のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、2-エチルトリメチレンなど)、炭素数2〜5の直鎖または分岐状のアルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、1−メチルビニレン基、1−メチルプロペニレン基、2−メチルプロペニレン基、1−メチルペンテニレン基、3−メチルペンテニレン基、1−エチルビニレン基、1−エチルプロペニレン基など)、炭素数2〜5の直鎖または分岐状のアルキニレン基(例えば、エチニレン基、1−プロピニレン基、1−ブチニレン基、1−ペンチニレン基、1−ヘキシニレン基、2−ブチニレン基、2−ペンチニレン基、1−メチルエチニレン基、3−メチル−1−プロピニレン基、3−メチル−1−ブチニレン基など)などが挙げられる。これらの基は、本発明の目的が達成される限り、任意の置換基で置換されていてもよい。
なかでも、親水性の効果が高い点から、炭素数1〜5の直鎖または分岐状のアルキレン基(特にトリメチレン基)が好ましい。すなわち、上記式(1)で示される基としては、
−NH−C−NH
が好ましい。
【0021】
上記式(1)で示される基を有するアミン化合物としては、例えば、式(2)
−NH−R−NH (2)
〔式中、Rは前記と同義であり、Rは炭素数1〜30程度の炭化水素基を示す〕
で示されるアミン化合物が挙げられる。
【0022】
上記式(2)においてRで示される「炭化水素基」としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基である。ここで、脂肪族炭化水素基とは、脂肪族炭化水素から水素を除いた残基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基のようなアルキル基;ビニル基、アリル基、メタリル基のようなアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基のようなアルキニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基とは、脂環式炭化水素から水素を除いた残基である。この脂環式炭化水素基は、脂環式炭化水素の脂肪族環から水素を除いた残基であってもよいし、脂肪族鎖を有する脂環式炭化水素の脂肪族鎖から水素を除いた残基であってもよい。その例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基;シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基のようなシクロアルキルアルキル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基とは、芳香族炭化水素から水素を除いた残基である。この芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素の芳香族環から水素を除いた残基であってもよいし、脂肪族を有する芳香族炭化水素の脂肪族鎖から水素を除いた残基であってもよいし、脂肪族環を有する芳香族炭化水素の脂肪族環から水素を除いた残基であってもよい。その具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基のようなアリール基;ベンジル基、フェネチル基のようなアラルキル基などが挙げられる。
【0023】
上記式(2)で示されるアミン化合物としては、例えば、牛脂アルキルプロピレンジアミン、硬化牛脂アルキルプロピレンジアミン、オレイルプロピレンジアミンなどが挙げられ、具体的には、ライオン(株)製のデュオミンCD(C8〜18アルキル−NH−C−NH)、デュオミンT(C14〜18アルキル−NH−C−NH)、デュオミンHT(C14〜18アルキル−NH−C−NH)、日本油脂(株)製のニッサンアミンDOB−R(C1835−NH−C−NH;オレイルプロピレンジアミン)などの市販品が挙げられる。
【0024】
本発明の硬化性組成物中におけるアミン化合物(B)の含有量は、その物性を低下させずに、硬化後の表面に良好な自浄作用を付与する観点から、硬化性組成物全体の0.1〜5重量%であることが好ましく、0.2〜1.5重量%であることがより好ましい。
【0025】
本発明の硬化性組成物は、上記の各成分に加えて、上記(B)とは異なるアミン化合物(C)を含有していてもよい。当該アミン化合物を配合することにより、本発明の硬化性組成物の硬化後の表面のタックは抑制されるので、該表面は汚れがさらに付着しにくくなる。
当該アミン化合物(C)としては、硬化後の表面のタックを抑制して本発明の目的を達成させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、凝固点34℃以下の天然由来のアミン化合物、融点35℃以上のアミン化合物、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
上記凝固点34℃以下の天然由来のアミン化合物としては、動物や植物等の天然素材から得られる原料(例えば、ココナッツ油(やし油)、パーム核油、パーム油等の天然油脂)から抽出、あるいは合成して得られる凝固点34℃以下(好ましくは20℃以下)のアミン化合物が挙げられる。具体的には、例えば、花王株式会社製ファーミン(登録商標)08D、20D、CS、ライオン株式会社製アーミンCD、08D、12D等が挙げられる。これらのアミン化合物は、従来公知の方法にしたがって製造することができる。
なかでも、炭素数が8〜18のアルキル鎖分布を有するアミン化合物が好ましく、特に、炭素数8のオクチル鎖7%程度、炭素数10のデシル鎖7%程度、炭素数12のラウリル鎖51%程度、炭素数14のテトラデシル鎖19%程度、炭素数16のセチル鎖8%程度、炭素数18のステアリル鎖2%程度、炭素数18のオレイル鎖6%程度のアルキル鎖分布を有し、凝固点が約16℃のココアルキルアミン(ココナットアミンなどとも称されるココナッツ油を原料としたアミン)が好ましい。
本発明の硬化性組成物中の凝固点34℃以下の天然由来のアミン化合物の含有量は、通常、硬化性組成物全体の0.05〜10重量%、好ましくは0.15〜5重量%である。0.05重量%未満では、硬化後の表面のタックが十分に抑制されず、防汚性が十分に発揮されない場合があり、また10重量%を超えると硬化物表面に白化現象が著しく発生し、表面外観上の難点となる傾向にある。
【0027】
上記融点35℃以上のアミン化合物としては、融点35℃以上(好ましくは50℃以上)の芳香族または脂肪族に属するアミン化合物等が挙げられ、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノビフェニル、2,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,3−トルエンジアミン、2,4−トルエンジアミン、2,5−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、3,4−トルエンジアミン等の芳香族アミン化合物、1,12−ドデカンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、ステアリルアミン等の脂肪族アミン化合物等が挙げられる。これらのアミン化合物は、従来公知の方法にしたがって製造することができる。
なかでも、融点が35℃以上(好ましくは50℃以上)の固形アミン表面に微粉体が固着された微粉体コーティングアミンを用いることが、その物性を低下させずに、硬化後の表面に良好な防汚性を付与する観点から特に好ましい。
【0028】
上記微粉体コーティングアミンは、融点35℃以上(好ましくは50℃以上)および中心粒径20μm以下の固形アミンの表面に、中心粒径2μm以下の微粉体を、該固形アミンと微粉体の重量比が1/0.001〜0.5となるように固着させて、表面の活性アミノ基を被覆したものである。このような微粉体コーティングアミンは、例えば、固形アミンを中心粒径20μm以下に粉砕しつつ、同時にこれに微粉体を加えてその中心粒径2μm以下となるように混合粉砕するか;または予め中心粒径20μm以下に微粉砕した固形アミンを、中心粒径2μm以下の微粉体と共に、高速衝撃式混合撹拌機、圧縮せん断式混合撹拌機または噴霧乾燥装置を用いて固形アミンの表面に微粉体を固着させることにより製造することができる(特開2000−117090号参照)。
【0029】
上記微粉体コーティングアミンの原料となる固形アミンとしては、上記融点35℃以上(好ましくは50℃以上)の芳香族または脂肪族に属するアミン化合物が挙げられる。これらの1種または2種以上の混合物を使用に供してよい。かかる固形アミンは、中心粒径20μm以下、好ましくは3〜15μmに調整する。
【0030】
上記微粉体コーティングアミンの原料となる微粉体としては、無機系または有機系の中から任意に使用することができ、たとえば無機系物質として酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ジルコニア、カーボン、アルミナ、タルク等、また有機系物質としてポリ塩化ビニル、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用に供する。使用量は、固形アミンと微粉体の重量比が1/0.001〜0.5、好ましくは1/0.002〜0.4となるように選定する。
【0031】
本発明の硬化性組成物における微粉体コーティングアミンの使用量は、通常、硬化性組成物全体の0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲で選定することが好ましい。0.05重量部未満では、硬化物表面の防汚性が十分に発揮されないことがあり、また10重量部を超えると、硬化物表面に白化現象が著しく発生し、表面外観上の難点となる傾向にある。
【0032】
また、本発明においては、硬化後の表面に良好な防汚性を付与するために、硬化性組成物中に凝固点が34℃以下である天然由来のアミン化合物と融点が35℃以上であるアミン化合物の混合物を使用することも好ましい。この場合、凝固点が34℃以下である天然由来のアミン化合物と融点が35℃以上であるアミン化合物の含有比率(重量基準)が1:9〜9:1とすることが、硬化表面の防汚性の観点から好ましい。さらに好ましい含有比率は2:8〜8:2であり、とりわけ3:7〜7:3が好ましい。
【0033】
本発明の硬化性組成物中におけるアミン化合物(C)の総含有量は、硬化物の物性を低下させずに、硬化物表面に良好な防汚性を付与する観点から、硬化性組成物全体の0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。
【0034】
本発明の硬化性組成物は、上記の各成分に加えて、含フッ素非イオン系界面活性剤(D)を含有していてもよい。含フッ素非イオン系界面活性剤を配合することにより、本発明の硬化性組成物の硬化後の表面は、さらに超親水性になり、降雨による自浄作用にさらに優れたものとなる。
本発明において「含フッ素非イオン系界面活性剤」とは、疎水基である長鎖アルキル基に配位する水素原子の全て(またはその一部分)がフッ素原子に置換された構造を有するフッ素化合物であって、水に溶解したときにイオン化しない化合物を意味する。このような含フッ素非イオン系界面活性剤(D)は、従来公知の方法で製造することができる。また、本発明の硬化性組成物において、含フッ素非イオン系界面活性剤(D)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明における含フッ素非イオン系界面活性剤(D)としては、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値が2〜10の範囲(好ましくは5〜10の範囲)にあるものが好ましい。HLB値が上記範囲内である場合、上記自浄作用の持続性が良好に確保される。
なお、本明細書におけるHLB値は、以下の「川上式」にしたがって求められる値である。
HLB=7+11.7log(親水部の式量の総和/親油部の式量の総和)
【0036】
上記含フッ素非イオン系界面活性剤(D)としては、例えば、オキシアルキレンの繰り返し単位を有する骨格を有し、かつパーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物等が挙げられる。当該化合物およびそれらの混合物の具体例としては、例えば、サーフロンS−381、S−383、KH−40(セイミケミカル株式会社製)等の市販品が挙げられる。
【0037】
本発明の硬化性組成物中における含フッ素非イオン系界面活性剤(D)の含有量は、その物性を低下させずに、硬化後の表面に良好な自浄作用を付与する観点から、硬化性組成物全体の0.05〜10重量%であることが好ましく、0.2〜4重量%であることがより好ましい。
【0038】
本発明に係る硬化性組成物は、上記の各成分に加えて、通常の硬化性組成物において使用される各種の添加剤、例えば、硬化触媒、着色剤、有機溶剤等をさらに含有することができる。これらの添加剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよく、また、これらの硬化性組成物中の含有量は、通常、1.0〜30.0重量%であり、好ましくは1.0〜10.0重量%である。
【0039】
上記硬化触媒としては、例えば、ジオクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキサイド等の錫系触媒やテトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネートおよびこれらの部分加水分解縮合物、チタンジイソプロピルビスアセチルアセテート、チタンジイソプロピルビスエチルエチルアセトアセテート等のチタン系触媒等が挙げられる。
上記着色剤としては、例えば、ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック、他の着色顔料、染料等が挙げられる。
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン系高沸点溶剤等が挙げられる。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、これを特に建築用シーリング材等として用いる場合には、硬化物に意匠性を付与するため、平均粒径が30〜500μm(より好ましくは70〜400μm)の粒子を更に含有することが好ましい。このような粒子は無機系および/または有機系の物質から構成されてよく、また、球状(真球、楕円球、扁平球、中空球)、粒状、鎖状または繊維状等の任意の形状のものを使用し得る。その具体例としては、アルミナ、炭化珪素、ジルコニア、窒化珪素、セラミック、合成ルビー、サファイヤ、ガラス、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル、シリカ、ウレタン樹脂、炭酸カルシウム、珪砂、寒水石等の粒子を挙げることができる。
なかでも、アクリル系樹脂から構成される有機粒子を用いると、硬化剤組成物に耐熱性、耐溶剤性または耐候性を付与し得るとともに、硬化表面に良好な艶消し性、若しくはマット調仕上げ塗装外壁用、ゆず肌仕上げ塗装外壁用または砂岩調塗装外壁用に適した意匠性を付与することができる。このようなアクリル系樹脂粒子は、その耐熱温度が150〜300℃であることが好ましく、そのような粒子は架橋ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル等のポリマーから構成されることが好ましい。このような架橋アクリル系樹脂粒子の市販品としては、東洋紡(株)製のタフチック(登録商標)AR650LLを例示しうる。
上記無機粒子および有機粒子は、単独で若しくは2種以上を併用して使用でき、硬化性組成物中の含有量は好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。
【0041】
さらに必要に応じて、本発明の硬化性組成物に、通常の充填剤(重質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、タルク、酸化チタン等)、可塑剤(アクリル酸エステル系可塑剤、フタル酸ジエステル類、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類等)、密着剤(エポキシ化合物、シランカップリング剤等)、老化防止剤(ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類等)、揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、ポリアマイドワックス、水添ひまし油等)、水分保給剤(水、無機塩類の水和物等)、紫外線吸収剤・光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール類等)等を適量範囲で配合してよい。
【0042】
上記成分から構成される本発明の硬化性組成物は、上記配合成分を一括混合した一液型で、あるいは上記ポリマー、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物、粒子等を含有する基材と、硬化触媒、着色剤および微粉体コーティングアミン等を含有するトナー液とする等して構成された二液型で、あるいはさらに着色剤等を別の1成分として分離して構成された三液型として使用してもよい。
【0043】
本発明の硬化性組成物は、硬化時の温度に影響されずに、好ましくは5〜50℃の範囲で硬化させることができる。また、本発明の硬化性組成物は、例えば、このような温度条件で硬化させた場合、硬化物の表面の水に対する表面接触角が好ましくは15°以下、特に好ましくは10°以下になる。かかる表面接触角であることで、防汚性および自浄作用を十分に発揮することができる。
なお、本明細書において表面接触角は、協和界面科学株式会社製CA−X150型を使用し、画像処理式3点クリック法で求められる値である。
【0044】
本発明の硬化性組成物は、とりわけ建築用シーリング材に適用する場合に有効であり、例えば、マット調仕上げ塗装外壁用、ゆず肌仕上げ塗装外壁用または砂岩調塗装外壁用のシーリング材として好適に使用することができる。本発明の硬化性組成物は、上記建築用シーリング材として以外にも、自動車、電器、土木用のシーリング材や、その他接着剤、塗料、コーティング材、ポッティング材、成形物等に適用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、実施例等において、特に明記のない限り、記載された単位は重量を基準とする。
また、各実施例および比較例で得られた硬化性組成物について行った性能試験の評価方法を以下に示す。
〔性能試験の評価方法〕
各硬化性組成物をシーリング材として、約3mm(深さ)×30mm(幅)の溝を設けたフレキシブルボード上に打設し、直ちに下記の試験に付した。
A)水に対する初期接触角の測定
温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間放置した後、0.05mlの純水を表面に滴下し、1分後の接触角を接触角計(協和界面科学株式会社製CA−X150型、画像処理式3点クリック法)を用いて測定した。
B)水に対する温水浸漬後接触角の測定
A)を50℃温水中に7日間放置した後、温度23℃、相対湿度50%にて1日乾燥後、表面を接触角計にて測定した。次いで、0.05mlの純水を滴下し、1分後の接触角を測定した。
C)火山灰試験
温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間放置した後、火山灰を振りかけ、試験体を20cmの高さから垂直に床に3回落とし、余分な火山灰を振りおとした後、火山灰が付着している割合を判定した。
D)火山灰洗浄試験
温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間放置した後、火山灰を振りかけ、試験体を20cmの高さから垂直に床に3回落とし、余分な火山灰を振りおとした後、垂直に立てた試験体に霧吹きにて水100CCを10〜20cmの距離から吹きかけ、放置乾燥後火山灰が付着している割合を目視にて判定した。
E)赤土試験
温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間放置した後、赤土を振りかけ、試験体を20cmの高さから垂直に床に3回落とし、余分な赤土を振りおとした後、赤土が付着している割合を判定した。
F)赤土洗浄試験
温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間放置した後、赤土を振りかけ、試験体を20cmの高さから垂直に床に3回落とし、余分な赤土を振りおとした後、垂直に立てた試験体に霧吹きにて水100CCを10〜20cmの距離から吹きかけ、放置乾燥後、赤土が付着している割合を目視にて判定した。
G)カーボンブラックを用いた洗浄試験
温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間放置した後、5%カーボンブラックを含有したDINP(ジイソノニルフタレート)を塗布し、垂直に立てた試験体に霧吹きにて水100CCを10〜20cmの距離から吹きかけ、放置乾燥後、色差計(ミノルタ社製CR−300)にて試験前後の白色度(L値)の差を測定した。
【0046】
〔参考例:微粉体コーティングアミンの製造〕
微粉体コーティングアミンを、特開2000−117090号にしたがって以下のように製造した。
中心粒径約8μmの1,12−ドデカンジアミン(融点71℃)76.9部と中心粒径約0.02μmの超微粒子酸化チタン23.1部を混合し、高速衝撃式混合撹拌機(日清エンジニアリング(株)製、Hi−Xミキサー)にて複合化処理することにより、中心粒径約8μmの1,12−ドデカンジアミンの表面に、中心粒径約0.02μmの超微粒子酸化チタンが固着してなる微粉体コーティングアミン100部を得た。
【0047】
〔実施例1〜6および比較例1〜5〕
表1に示す各成分を配合し、遊星式撹拌機を用いて混合することで硬化性組成物を得た。得られた各硬化性組成物について、上記方法を用いて性能評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
※1 アクリル変成シリコーンポリマーSA310S;反応性ケイ素基を有するビニル系重合体[(株)カネカ製]
※2 デュオミンCD;C8〜18アルキル−NH−C−NH[ライオン(株)製]
※3 デュオミンT;C14〜18アルキル−NH−C−NH[ライオン(株)製]
※4 デュオミンHT;C14〜18アルキル−NH−C−NH[ライオン(株)製]
※5 ニッサンアミンDOB−R;C1835−NH−C−NH[日本油脂(株)製]
※6 アーミン18D;C1837−NH(ステアリルアミン)[ライオン(株)製]
※7 ジブチルアミノプロピルアミン;(C−N−C−NH[広栄化学(株)製]
※8 ヘキサメチレンジアミン;NH−C12−NH[和光純薬(株)製]
※9 3−ラウリルオキシプロピルアミン;C1225−O−C−NH[広栄化学(株)製]
※10 脂肪酸処理炭酸カルシウム;カルシーズPLS−505[神島化学工業(株)製]
※11 アルキルベンゼン;アルケン200P[新日本石油化学(株)製]
※12 アクリル系可塑剤;ARUFON(登録商標)UP−1000[東亞合成(株)製]
※13 ビニルエトキシシラン;サイラエース(登録商標)S−220[チッソ(株)製]
※14 微粉体コーティングアミン;参考例で製造したもの
【0050】
表1から明らかなように、実施例1〜6で得られた本発明の硬化性組成物は、初期および温水浸漬後も水に対する接触角が15°以下と表面親水性に優れ、火山灰に比べて洗浄がより困難な赤土やカーボンに対しても優れた自浄機能を備えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性ケイ素基を有するビニル系重合体と、
(B)式(1):
−NH−R−NH (1)
〔式中、Rは、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物
とを含んでなる、硬化性組成物。
【請求項2】
アミン化合物(B)は、
−NH−C−NH
で示される基を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
アミン化合物(B)の含有量は、硬化性組成物全体の0.1重量%〜5重量%である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらにアミン化合物(B)とは異なる(C)アミン化合物を含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
アミン化合物(C)は、凝固点34℃以下の天然由来のアミン化合物および/または融点35℃以上のアミン化合物である、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
凝固点34℃以下の天然由来のアミン化合物は、ココアルキルアミンである、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
融点35℃以上のアミン化合物は、固形アミン表面に微粉体が固着された微粉体コーティングアミンである、請求項5または6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
反応性ケイ素基を有するビニル系重合体(A)は、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体である、請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
硬化後の水に対する表面接触角は15°以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2009−120730(P2009−120730A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296566(P2007−296566)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】