説明

硬脆材料の研削方法

【課題】研削用ドリルを用いて硬脆材料に孔部を形成する際に、硬脆材料の研削時間を短縮させることができる硬脆材料の研削方法を提供すること。
【解決手段】回転軸として作用するシャンク20に研削用砥石部21を備える研削用ドリル7を用いて、略平板状をなす硬脆材料2が有する平面部17に孔部3を形成する硬脆材料2の研削方法であって、研削用砥石部21の少なくとも軸周りの外周面に研削面23が設けられ、研削用ドリル7のシャンク20の軸心を、硬脆材料2の平面部の垂線Pに対して傾けた状態とし、研削用砥石部21の外周面を硬脆材料2の平面部17に当てるとともに、研削用ドリル7を垂線Pの方向に移動させて硬脆材料2の研削を行う研削工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス等の硬脆材料に孔開け加工を施すための硬脆材料の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬脆材料に孔を開ける工具としては、鋼製のシャンクの先端に取り付けたダイヤモンド砥石部(研削用砥石部)を回転させながら硬脆材料に接触させることで孔を開けるダイヤモンドドリル(研削用ドリル)がある。また、このようなドリルを用いて研削作業をする際に、ダイヤモンド砥石部をシャンクの軸心を中心として軸回転させながら硬脆材料に接触させるとともに、ダイヤモンド砥石部と硬脆材料との間に偏心運動を与えることで穿孔を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−199619号公報(5頁及び7頁、図1及び図18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のドリルにあっては、ダイヤモンド砥石部(研削用砥石部)をシャンクの軸心を中心として軸回転させた際に、ダイヤモンド砥石部における外周部は速い周速度となっているが、ダイヤモンド砥石部における軸心部は軸回転による周速度は殆ど無くなっており、このダイヤモンド砥石部の軸心部により研削される部位は、ダイヤモンド砥石部の外周部により研削される部位と比較して研削速度が低下され、硬脆材料に孔開け加工に要する加工時間が長くなる問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、研削用ドリルを用いて硬脆材料に孔部を形成する際に、硬脆材料の研削時間を短縮させることができる硬脆材料の研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の硬脆材料の研削方法は、
回転軸として作用するシャンクに研削用砥石部を備える研削用ドリルを用いて、略平板状をなす硬脆材料が有する平面部に孔部を形成する硬脆材料の研削方法であって、
前記研削用砥石部の少なくとも軸周りの外周面に研削面が設けられ、前記研削用ドリルのシャンクの軸心を、前記硬脆材料の平面部の垂線に対して傾けた状態とし、前記研削用砥石部の外周面を前記硬脆材料の平面部に当てるとともに、前記研削用ドリルを前記垂線の方向に移動させて前記硬脆材料の研削を行う研削工程を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、研削用ドリルのシャンクの軸心を、硬脆材料の平面部の垂線に対して傾けることで、軸回転による周速度が速い研削用砥石部の外周面の研削面が硬脆材料の平面部に当たるようになり、この研削用砥石部の軸周りの外周面により硬脆材料が研削され、研削用砥石部と硬脆材料との間の研削速度を向上させて、硬脆材料の平面部に孔部を形成する研削時間を短縮させることができる。
【0007】
本発明の硬脆材料の研削方法は、
前記研削用ドリルを、その軸心の左右方向に移動させることにより、前記研削用砥石部の周方向に延びる孔部を形成することを特徴としている。
この特徴によれば、研削用ドリルが左右方向に移動される際に、軸回転による周速度が速い研削用砥石部の外周面の研削面により硬脆材料が研削され、研削用砥石部と硬脆材料との間の研削速度を向上させて、左右方向に延びる形状の孔部を硬脆材料に短時間で容易に形成できる。
【0008】
本発明の硬脆材料の研削方法は、
前記研削用砥石部の少なくとも正面に研削面が設けられ、前記研削用ドリルを、その軸心の前方向に移動させることにより、前記研削用砥石部の前方向に延びる孔部を形成することを特徴としている。
この特徴によれば、研削用砥石部の外周面の研削面及び研削用砥石部の正面の研削面により硬脆材料が研削されるため、研削用砥石部と硬脆材料との間の研削速度を向上させて、前方向に延びる形状の孔部を硬脆材料に短時間で容易に形成できる。
【0009】
本発明の硬脆材料の研削方法は、
前記研削工程にて、前記研削用ドリルを前記硬脆材料に貫通させて前記貫通孔部を形成した後、研削用ドリルのシャンクの軸心を、前記硬脆材料の平面部の垂線に対して略平行状態とし、該研削用ドリルの研削用砥石部を前記貫通孔部に挿通するとともに、該研削用砥石部の外周面を前記貫通孔部の内周面に当てて研削を行う成形工程を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、研削工程にて貫通された貫通孔部を成形する際に、軸回転による周速度が速い研削用砥石部の外周面の研削面により貫通孔部の内周面が研削されるようになり、研削用砥石部と硬脆材料との間の研削速度を向上させて、貫通孔部の成形時間を短縮させることができ、かつ研削工程と成形工程との両工程にて一貫して砥石部の外周面の研削面を利用して研削を行うことができ、貫通孔部が形成された硬脆材料の製造を短時間で行うことができる。
【0010】
本発明の硬脆材料の研削方法は、
前記研削工程にて、前記研削用ドリルのシャンクの軸心が該シャンクの先端から基端にゆくに従って前記硬脆材料から離れるように傾けられた状態で、前記孔部が形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、研削用ドリルを硬脆材料の平面部の垂線の方向に移動させながら前記硬脆材料の研削を行う際に、研削用ドリルのシャンクの基端側から加えられる力がシャンクに沿って先端側に伝達され易くなり、研削用砥石部を硬脆材料に押し付ける押圧力が向上され、硬脆材料の研削時間を短縮させることができる。
【0011】
本発明の硬脆材料の研削方法は、
前記研削用砥石部は、略円盤状をなしていることを特徴としている。
この特徴によれば、円盤状の研削用砥石部の外周面の研削面が硬脆材料に接触され、この研削用砥石部の周方向、すなわち左右方向に延びるスリット状の孔部を硬脆材料に容易に形成でき、スリット状の孔部を形成する際の研削用ドリルの左右方向の移動量が少なくても済むようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における研削装置を示す正面図である。
【図2】研削装置を示す側面図である。
【図3】ガラス板を示す平面図である。
【図4】研削工程における孔形成用ドリルの動きを示す平面図である。
【図5】研削工程における研削前の孔形成用ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図6】研削工程における研削中の孔形成用ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図7】研削工程における研削中の孔形成用ドリルの動きを示す縦断正面図である。
【図8】成形工程における研削前の成形用ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図9】成形工程における研削中の成形用ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図10】成形工程における研削中の成形用ドリルの動きを示す縦断正面図である。
【図11】実施例2における研削工程における研削前の円柱形ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図12】研削工程における研削中の円柱形ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図13】成形工程における研削中の円柱形ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図14】実施例3における研削工程における研削前のボール形ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図15】研削工程における研削中のボール形ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【図16】成形工程における研削中のボール形ドリルの動きを示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る硬脆材料の研削方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る硬脆材料の研削方法につき、図1から図10を参照して説明する。以下、図2、図5、図6、図8、図9の紙面左側を研削装置の正面側(前方側)とし、図3の紙面下側を研削装置の正面側(前方側)として説明する。
【0015】
図1の符号1は、本発明の適用された研削装置であり、この研削装置1は、本発明における硬脆材料としてのガラス板2に、本発明における孔部としての貫通孔部3を形成する目的で使用される工作機械である。加工対象となるガラス板2は、タッチパネル式の携帯電話の液晶部に用いられるようになっている(図3参照)。
【0016】
図1及び図2に示すように、研削装置1の下部には、基台部4が設置されており、この基台部4に、ガラス板2が配置される作業台5が設けられている。基台部4の後部側には、上方に立設される支柱6が設けられている。支柱6の上部には、後述する孔形成用ドリル7及び成形用ドリル8を移動動作させる機材が収容された機材部9が設けられている。
【0017】
機材部9の下方に2本のドリル支持部10が取り付けられ、このドリル支持部10が下方に延設されている。ドリル支持部10は、機材部9に収容された機材によって前後方向及び左右方向に移動動作されるようになっている。
【0018】
2本のドリル支持部10には、このドリル支持部10に対して昇降されるドリル昇降部11がそれぞれ取り付けられている。右側のドリル支持部10に取り付けられたドリル昇降部11には、ブラケット12を介して孔形成用ドリル装置13が支持されている。左側のドリル支持部10に取り付けられたドリル昇降部11には、ブラケット12を介して成形用ドリル装置14が支持されている。
【0019】
孔形成用ドリル装置13は、チャック15によって本発明における研削用ドリルとしての孔形成用ドリル7を保持し、更に、孔形成用ドリル装置13は、孔形成用ドリル7をその軸周りに回転駆動させるモーター部16を有している。また、成形用ドリル装置14は、チャック15によって本発明における研削用ドリルとしての成形用ドリル8を保持し、更に、成形用ドリル装置14は、成形用ドリル8をその軸周りに回転駆動させるモーター部16を有している。
【0020】
成形用ドリル装置14は、成形用ドリル8の軸心Sが垂直になるようにブラケット12に取り付けられている(図8参照)。孔形成用ドリル装置13は、孔形成用ドリル7の軸心Sが傾けられて、孔形成用ドリル7の先端が研削装置1の正面側に向くようにブラケット12に取り付けられている(図5参照)。
【0021】
この研削装置1には、操作パネル(図示略)が設けられており、使用者は、操作パネルを操作することで制御装置(図示略)に指示を与えるようになっており、この制御装置は、モーター部16とドリル昇降部11と機材部9とを駆動させることで、ガラス板2の加工作業が自動で行われる。すなわち、本実施例の研削装置1は、使用者がドリル装置13,14を手動で操作しなくてもガラス板2の加工作業を自動で行うことができるNC工作機械となっている。
【0022】
図3に示すように、ガラス板2は、略平板状をなしており、ガラス板2の前部には、携帯電話のマイク部が配置されるスリット状の貫通孔部3が形成され、ガラス板2の後部には、スピーカー部が配置されるスリット状の貫通孔部3が形成されるようになっている。尚、ガラス板2における貫通孔部3が形成される部位は、平坦な本発明における平面部17となっている。
【0023】
図1及び2に示すように、ガラス板2の前部側が、研削装置1の正面側になるように配置され、ガラス板2の平面部17が水平をなすように、作業台5に設けられた固定部材18によってガラス板2が固定されている。作業台5には、ガラス板2の貫通孔部3が形成される位置に凹部19が形成されている。
【0024】
先ず、図4から図7を参照して、孔形成用ドリル7を用いて貫通孔部3’を開ける研削工程について説明する。尚、図5及び図6に示されたガラス板2は、図3におけるA−A断面図に対応している。また、図7に示されたガラス板2は、図3におけるB−B断面図に対応している。
【0025】
図4及び図5に示すように、孔形成用ドリル7には、回転軸として作用するシャンク20が設けられており、シャンク20の先端には、ガラス板2を研削する本発明における研削用砥石部としての砥石部21が設けられている。この砥石部21は、シャンク20の直径よりも大きな直径を有する略円盤状をなしている。略円盤状の砥石部21の中心が、シャンク20の先端に接続部材22によって接続されている。
【0026】
更に尚、本実施例では、砥石部21の先端側を向く面が、砥石部21の正面側となっており、砥石部21の基端側を向く面が、砥石部21の背面側となっている。砥石部21の外周面(軸周りの外周面)と、砥石部21の正面側の周縁部と、砥石部21の背面側の周縁部には、ダイヤモンド砥粒が着装されて本発明における研削面としてのダイヤモンド着装部23が形成されている。
【0027】
シャンク20の基端はチャック15に固定されており、チャック15は、孔形成用ドリル7を保持したままモーター部16によって回転駆動される。図5に示すように、孔形成用ドリル7は、その先端面(正面)が研削装置1の正面側に向くようにシャンク20の軸心Sが傾けられた状態となっており、孔形成用ドリル7のシャンク20の軸心Sは、シャンク20の先端から基端にゆくに従ってガラス板2から離れるように傾けた状態となっている。
【0028】
すなわち、ガラス板2の平面部17の垂線Pに対して、孔形成用ドリル7のシャンク20の軸心Sが、所定角度θで傾けられた状態となっている。本実施例におけるガラス板2の平面部17の垂線Pとシャンク20の軸心Sとがなす角度θは略45度となっている。
【0029】
使用者が作業台5にガラス板2を配置し、使用者が操作パネル(図示略)を操作して、研削作業を開始すると、孔形成用ドリル7が、ガラス板2の後部の平面部17の上方位置に移動される。
【0030】
そして、図5に示すように、砥石部21はシャンク20の軸心Sを中心に、モーター部16によって回転駆動される。更に、シャンク20の軸心Sの傾きを維持した状態で、孔形成用ドリル7はガラス板2の平面部17に向かって垂直方向に降下される。
【0031】
孔形成用ドリル7が降下されると、円盤状をなす砥石部21の下端部がガラス板2に当接して、砥石部21の外周面及び正面側の周縁部のダイヤモンド着装部23によってガラス板2の後部の平面部17が研削される。
【0032】
このとき、孔形成用ドリル7の軸回転の軸心Sが傾けられていることで、軸回転による周速度が速い砥石部21の外周面によりガラス板2の平面部17が研削されるようになっている。尚、貫通前の状態の貫通孔部3’内では、孔形成用ドリル7の研削による切粉が発生するようになっているが、この切粉は孔形成用ドリル7の回転の方向に沿って一方向に移動されるようになり、切粉は貫通孔部3’の外部に排出されるようになっている。そのため、貫通前の状態の貫通孔部3’内に切粉が溜まることがなくなり、この切粉によって孔形成用ドリル7の研削が阻害されるようなことがなくなる。
【0033】
図4に示すように、孔形成用ドリル7は、前後方向と左右方向に移動して平面視で略四角形状の軌跡を描く動作をしつつ、ガラス板2を研削しながら降下し、略四角形状の貫通孔部3’が形成される。尚、孔形成用ドリル7の動作は、孔形成用ドリル7が最初にガラス板2に当接した位置よりも後方側に移動しないようになっている。
【0034】
そして、図6に示すように、略四角形状の貫通孔部3’の後方側の内周面24は、砥石部21の降下とともに垂直方向に研削されるため、垂直をなす垂直面となる。また、貫通孔部3’の前方側の内周面25は、砥石部21の正面側の周縁部によって研削されるため、孔形成用ドリル7の傾きと同じ角度に傾けられた傾斜面となる。
【0035】
図7に示すように、略四角形状の貫通孔部3’の左右の内周面26は、円盤状をなす砥石部21の外周面によって研削されるため、砥石部21の外周面の曲率に合わせて円弧形状をなす円弧面に形成される。
【0036】
本実施例の孔形成用ドリル7は、略円盤状をなしているとともに、孔形成用ドリル7がその軸心Sの左右方向に移動されることにより、砥石部21の左右方向に延びる貫通孔部3’が形成される。また、孔形成用ドリル7は、その軸心の前方向に移動されることにより、砥石部21の前方向に延びる貫通孔部3’が形成される。
【0037】
尚、孔形成用ドリル7により形成された貫通孔部3’の形状は、平面視で略長方形状となり、貫通孔部3’の上方側の開口は、貫通孔部3’の下方側の開口よりも大きくなっている(図4、図6、図7参照)。研削工程にて形成される貫通孔部3’は、加工目的とする貫通孔部3の形状よりも小さく形成される。加工目的とする貫通孔部3の形状は、平面視において左右方向に延びるスリット状となっており、この貫通孔部3の左右は円弧形状をなしている。
【0038】
孔形成用ドリル7によるガラス板2の後部の貫通孔部3’の研削工程が終了すると、孔形成用ドリル7がガラス板2の前部の平面部17の上方位置に移動される。そして、ガラス板2の前部の平面部17が研削されて、ガラス板2の前部の貫通孔部3’の研削工程が開始される(図2参照)。このガラス板2の前部の貫通孔部3’の研削工程は、前述したガラス板2の後部の貫通孔部3’の研削工程と同一工程となっている。
【0039】
孔形成用ドリル7のシャンク20の軸心Sは、シャンク20の先端から基端にゆくに従ってガラス板2から離れるように傾けた状態となっていることで、孔形成用ドリル7のシャンク20と、シャンク20を保持するチャック15との間の距離を短くして砥石部21を強固に支持しつつ、チャック15をガラス板2から離間させて配置することができ、かつガラス板2の他の部位に孔部を形成するために孔形成用ドリル7を移動させる際に、孔形成用ドリル7を保持するチャック15がガラス板2に接触する虞がなくなる。
【0040】
砥石部21は、シャンク20の先端に設けられてシャンク20の直径よりも大きな直径を有する略円盤状をなすように形成されていることで、シャンク20をガラス板2から離間させた状態で、砥石部21をガラス板2に接触させることができ、シャンク20が研削作業の邪魔にならなくなる。
【0041】
次に、図8から図10を参照して、成形用ドリル8を用いて貫通孔部3’を成形する成形工程について説明する。尚、図8及び図9に示されたガラス板2は、図3におけるA−A断面図に対応している。また、図10に示されたガラス板2は、図3におけるB−B断面図に対応している。
【0042】
孔形成用ドリル7による研削工程が終了すると、孔形成用ドリル7と成形用ドリル8は連動して正面視で右側に移動され、成形用ドリル8が、ガラス板2の後部の平面部17の上方位置に移動され(図1参照)、成形用ドリル8による成形工程が開始される。
【0043】
図8に示すように、成形用ドリル8には、回転軸として作用するシャンク27が設けられており、シャンク27の先端には、ガラス板2を成形する本発明における研削用砥石部としての砥石部28が設けられている。この砥石部28には、ダイヤモンド砥粒の粒度が粗い第1成形部29と、第1成形部29よりもダイヤモンド砥粒の粒度が細かい第2成形部30が設けられており、第1成形部29は、第2成形部30よりも先端側に設けられている。
【0044】
第1成形部29は、円柱形状をなす円柱部31を有し、円柱部31の上下には、テーパ面を有するテーパ部32が設けられている。このテーパ部32は、円柱部31から離れるほど直径が大きくなるように形成されている。同様に、第2成形部は、円柱形状をなす円柱部33を有し、円柱部33の上下には、テーパ面を有するテーパ部34が設けられている。このテーパ部34は、円柱部33から離れるほど直径が大きくなるように形成されている。
【0045】
成形用ドリル8のシャンク27の軸心Sは、ガラス板2の垂線Pに対して平行になるように位置している。砥石部28はシャンク27の軸心Sを中心に、モーター部16によって回転駆動される。成形用ドリル8が降下されると、砥石部28がガラス板2の後部の貫通孔部3’に挿通され、内周面24〜26が第1成形部29によって研削される。
【0046】
成形用ドリル8は、後方側の内周面24と前方側の内周面25を研削する際には、平面視において直線状に移動し、左右の内周面26を研削する際には、平面視において円弧形状の軌跡を描くように移動して、加工目的とする貫通孔部3が形成される。
【0047】
図9に示すように、成形用ドリル8の第1成形部29が、貫通孔部3’の傾斜面となっている前方側の内周面25に当接し、前方側の内周面25が研削される。また、図10に示すように、成形用ドリル8の第1成形部29が、貫通孔部3’の左右の内周面26に当接し、左右の内周面26が研削される。
【0048】
尚、貫通孔部3’において、成形前の左右の内周面26は、円弧形状をなしているが(図10の左側の内周面26を参照)、成形後の左右の内周面26は、第1成形部29の外周面と対応した形状をなしている(図10の右側の内周面26を参照)。
【0049】
成形用ドリル8によって貫通孔部3’の内周面24〜26が研削されて、その大きさが広げられ、加工目的とする貫通孔部3の形状に成形される。第1成形部29の上下のテーパ部32と、貫通孔部3’の上下の開口の周縁とが当接し、貫通孔部3’の周縁の面取りが行われる。断面視において、貫通孔部3’の内周面24〜26は、第1成形部29の外周面と対応した形状に成形される。
【0050】
次に、成形用ドリル8を降下させ、第2成形部30による内周面24〜26の研削が開始される。第1成形部29よりもダイヤモンド砥粒の粒度が細かい第2成形部30を用いて研削することにより、内周面24〜26の表面をより滑らかに仕上げることができる。
【0051】
成形用ドリル8によるガラス板2の後部の貫通孔部3’の成形工程が終了すると、成形用ドリル8がガラス板2の前部の貫通孔部3’の上方位置に移動される。そして、ガラス板2の前部の貫通孔部3’の内周面24〜26が研削されて、ガラス板2の前部の貫通孔部3’の成形工程が開始される。このガラス板2の前部の貫通孔部3’の成形工程は、前述したガラス板2の後部の貫通孔部3’の成形工程と同一工程となっている。
【0052】
以上、本実施例における硬脆材料の研削方法では、砥石部21の軸周りの外周面にダイヤモンド着装部23が設けられ、孔形成用ドリル7のシャンク20の軸心を、ガラス板2の平面部17の垂線Pに対して傾けた状態とし、砥石部21の外周面をガラス板2の平面部17に当てるとともに、孔形成用ドリル7を垂線Pの方向に移動させてガラス板2の研削を行う研削工程を含むことにより、孔形成用ドリル7のシャンク20の軸心Sを、ガラス板2の平面部17の垂線Pに対して傾けることで、軸回転による周速度が速い砥石部の外周面のダイヤモンド着装部23がガラス板2の平面部17に当たるようになり、この砥石部21の軸周りの外周面によりガラス板2が研削され、砥石部21とガラス板2との間の研削速度を向上させて、ガラス板2の平面部17に貫通孔部3’を形成する研削時間を短縮させることができる。
【0053】
また、孔形成用ドリル7を、その軸心Sの左右方向に移動させることにより、砥石部21の周方向に延びる貫通孔部3’を形成することで、孔形成用ドリル7が左右方向に移動される際に、軸回転による周速度が速い砥石部21の外周面のダイヤモンド着装部23によりガラス板2が研削され、砥石部21とガラス板2との間の研削速度を向上させて、左右方向に延びる形状の貫通孔部3’をガラス板2に短時間で容易に形成できる。
【0054】
また、砥石部21の正面にダイヤモンド着装部23が設けられ、孔形成用ドリル7を、その軸心Sの前方向に移動させることにより、砥石部21の前方向に延びる貫通孔部3’を形成することで、砥石部21の外周面のダイヤモンド着装部23及び砥石部21の正面のダイヤモンド着装部23によりガラス板2が研削されるため、砥石部21とガラス板2との間の研削速度を向上させて、前方向に延びる形状の貫通孔部3’をガラス板2に短時間で容易に形成できる。
【0055】
研削工程にて、孔形成用ドリル7をガラス板2に貫通させて貫通孔部3’を形成した後、成形用ドリル8のシャンク27の軸心Sを、ガラス板2の平面部17の垂線Pに対して略平行状態とし、成形用ドリル8の砥石部28を貫通孔部3’に挿通するとともに、砥石部28の外周面を貫通孔部3’の内周面24〜26に当てて研削を行う成形工程を含むことで、研削工程にて貫通された貫通孔部3’を成形する際に、軸回転による周速度が速い砥石部28の外周面の研削面により貫通孔部3’の内周面24〜26が研削されるようになり、砥石部28とガラス板2との間の研削速度を向上させて、貫通孔部3’の成形時間を短縮させることができ、かつ研削工程と成形工程との両工程にて一貫して砥石部21の外周面を利用して研削を行うことができ、貫通孔部3が形成されたガラス板2の製造を短時間で行うことができる。
【0056】
また、研削工程にて、孔形成用ドリル7のシャンク20の軸心Sがシャンク20の先端から基端にゆくに従ってガラス板2から離れるように傾けられた状態で、貫通孔部3’が形成されることで、孔形成用ドリル7をガラス板2の平面部17の垂線Pの方向に移動させながらガラス板2の研削を行う際に、孔形成用ドリル7のシャンク20の基端側から加えられる力がシャンク20に沿って先端側に伝達され易くなり、砥石部21をガラス板2に押し付ける押圧力が向上され、ガラス板2の研削時間を短縮させることができる。
【0057】
また、砥石部21は、略円盤状をなしていることで、円盤状の砥石部21の外周面のダイヤモンド着装部23がガラス板2に接触され、この砥石部21の周方向、すなわち左右方向に延びるスリット状の貫通孔部3’をガラス板2に容易に形成でき、スリット状の貫通孔部3を形成する際の孔形成用ドリル7の左右方向の移動量が少なくても済むようになる。
【実施例2】
【0058】
次に、実施例2に係る硬脆材料の研削方法につき、図11から図13を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。以下、図11から図13の紙面左側を研削装置の正面側(前方側)として説明する。
【0059】
前述した実施例1における研削装置1には、孔形成用ドリル装置13と成形用ドリル装置14との2つのドリル装置13,14が設けられているが、実施例2における研削装置には、円柱形ドリル35を有する1つの円柱形ドリル装置36が設けられている。
【0060】
更に、実施例2における研削装置は、実施例1の研削装置1と異なり、円柱形ドリル装置36が前後方向に揺動駆動されるようになっており、この円柱形ドリル装置36の揺動駆動により、円柱形ドリル35の軸心Sが所定角度θで傾けられた状態と(図11参照)、円柱形ドリル35の軸心Sが垂直な状態と(図13参照)、との間で、円柱形ドリル35の支持状態を切り換えられるようになっている。すなわち実施例2における研削装置は、研削工程と成形工程を同一のドリル装置で行うことができるようになっている。
【0061】
図11に示すように、本発明における研削用ドリルとしての円柱形ドリル35は、シャンク37の先端に円柱形状をなす本発明における研削用砥石部としての砥石部38が設けられている。尚、実施例2では、砥石部38の先端側を向く面が、砥石部38の正面側となっており、円柱形ドリル35の砥石部38の正面部及び外周部には、ダイヤモンド砥粒が着装されており、本発明における研削面となっている。
【0062】
円柱形ドリル35は、その先端面(正面)が研削装置の正面側に向くようにシャンク37の軸心Sが傾けられた状態となっており、円柱形ドリル35のシャンク37の軸心Sは、ガラス板2の平面部17の垂線Pに対して所定角度θで傾けられた状態となっている。尚、実施例2におけるガラス板2の平面部17の垂線Pとシャンク37の軸心Sとがなす角度θは略45度となっている。
【0063】
先ず、図11及び図12を参照して、円柱形ドリル35を用いて貫通孔部3’を開ける研削工程について説明する。尚、図11及び図12に示されたガラス板2は、図3におけるA−A断面図に対応している。
【0064】
研削作業が開始されると、円柱形ドリル35が、ガラス板2の後部の平面部17の上方位置に移動して、図11に示すように、砥石部38はシャンク37の軸心Sを中心に、モーター部16によって回転駆動される。更に、シャンク37の軸心Sの傾きを維持した状態で、円柱形ドリル35はガラス板2の平面部17に向かって垂直方向に降下される。
【0065】
円柱形ドリル35が降下されると、円柱形状をなす砥石部38の下端部がガラス板2に当接して、砥石部38の正面部及び外周部によってガラス板2の後部の平面部17が研削される。尚、砥石部38は円柱形状をなしているため、砥石部38の正面部は、シャンク37の軸心Sに対して垂直をなしている。
【0066】
図12に示すように、円柱形ドリル35は、前後方向に移動するとともに左右方向にも移動して、平面視で略四角形状の軌跡を描く動作をしつつ、ガラス板2を研削しながら降下される。
【0067】
そして、図12に示すように、貫通孔部3’の後方側の内周面24は、砥石部38の外周部によって研削されるため、円柱形ドリル35の軸心Sと同じ角度に傾けられた傾斜面となる。また、貫通孔部3’の前方側の内周面25は、砥石部38の正面部によって研削されるため、円柱形ドリル35の傾きと同じ角度に傾けられた傾斜面となる。
【0068】
また、左右の内周面(図示略)は、円柱形状をなす砥石部38の外周部によって研削されるため、砥石部38の外周部の曲率に合わせて円弧形状をなす円弧面に形成される。
【0069】
実施例2の円柱形ドリル35は、円柱形状をなしているとともに、円柱形ドリル35がその軸心Sの左右方向に移動されることにより、砥石部38の左右方向に延びる貫通孔部3’が形成される。また、円柱形ドリル35は、その軸心の前方向に移動されることにより、砥石部38の前方向に延びる貫通孔部3’が形成される。
【0070】
尚、円柱形ドリル35により形成された貫通孔部3’の上方側の開口は、貫通孔部3’の下方側の開口よりも大きくなっている(図12参照)。研削工程にて形成される貫通孔部3’は、加工目的とする貫通孔部3の形状よりも小さく形成される。
【0071】
円柱形ドリル35によるガラス板2の後部の貫通孔部3’の研削工程が終了すると、円柱形ドリル35がガラス板2の前部の平面部17の上方位置に移動される。そして、ガラス板2の前部の平面部17が研削されて、ガラス板2の前部の貫通孔部3’の研削工程が開始される。このガラス板2の前部の貫通孔部3’の研削工程は、前述したガラス板2の後部の貫通孔部3’の研削工程と同一工程となっている。
【0072】
次に、図13を参照して、円柱形ドリル35を用いて貫通孔部3’を成形する成形工程について説明する。尚、図13に示されたガラス板2は、図3におけるA−A断面図に対応している。
【0073】
ガラス板2の前部の平面部17の研削工程が終了すると、円柱形ドリル35は、一旦上昇し、シャンク37の軸心Sがガラス板2の平面部17の垂線Pに対して垂直になるように傾きが変えられ、ガラス板2の前部の貫通孔部3’の成形工程が開始される。円柱形ドリル35が降下されると、砥石部38がガラス板2の前部の貫通孔部3’に挿通され、内周面24〜26が砥石部38の外周部によって研削される。
【0074】
円柱形ドリル35は、後方側の内周面24と前方側の内周面25を研削する際には、平面視において直線状に移動し、左右の内周面を研削する際には、平面視において円弧形状の軌跡を描くように移動して、加工目的とする貫通孔部3が形成される。
【0075】
図13に示すように、円柱形ドリル35の外周部が、貫通孔部3’の傾斜面となっている前後の内周面24,25に当接し、これら内周面24,25が研削される。また、円柱形ドリル35の外周部が、貫通孔部3’の左右の内周面(図示略)に当接し、左右の内周面が研削される。
【0076】
円柱形ドリル35によって貫通孔部3’の内周面24〜26が研削されて、その大きさが広げられ、加工目的とする貫通孔部3の形状に成形される。断面視において、貫通孔部3’の前後の内周面24,25は、砥石部38の外周部と対応した形状に成形される。
【0077】
円柱形ドリル35によるガラス板2の前部の貫通孔部3’の成形工程が終了すると、円柱形ドリル35がガラス板2の後部の貫通孔部3’の上方位置に移動される。そして、ガラス板2の後部の貫通孔部3’の内周面24が研削されて、ガラス板2の後部の貫通孔部3’の成形工程が開始される。このガラス板2の後部の貫通孔部3’の成形工程は、前述したガラス板2の前部の貫通孔部3’の成形工程と同一工程となっている。
【実施例3】
【0078】
次に、実施例3に係る硬脆材料の研削方法につき、図14から図16を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。以下、図14から図16の紙面左側を研削装置の正面側(前方側)として説明する。
【0079】
前述した実施例1における研削装置1には、孔形成用ドリル装置13と成形用ドリル装置14との2つのドリル装置13,14が設けられているが、実施例3における研削装置には、ボール形ドリル39を有する1つのボール形ドリル装置40が設けられている。
【0080】
更に、実施例3における研削装置は、実施例1の研削装置1と異なり、ボール形ドリル装置40が前後方向に揺動駆動されるようになっており、このボール形ドリル装置40の揺動駆動により、ボール形ドリル39の軸心Sが所定角度θで傾けられた状態と(図14参照)、ボール形ドリル39の軸心Sが垂直な状態と(図16参照)、との間で、ボール形ドリル39の支持状態を切り換えられるようになっている。すなわち実施例3における研削装置は、研削工程と成形工程を同一のドリル装置で行うことができるようになっている。
【0081】
図14に示すように、本発明における研削用ドリルとしてのボール形ドリル39は、シャンク41の先端にボール形状をなす本発明における研削用砥石部としての砥石部42が設けられている。砥石部42には、ダイヤモンド砥粒が着装されており、本発明における研削面となっている。
【0082】
ボール形ドリル39は、その先端部(正面部)が研削装置の正面側に向くようにシャンク41の軸心Sが傾けられた状態となっており、ボール形ドリル39のシャンク41の軸心Sは、ガラス板2の平面部17の垂線Pに対して所定角度θで傾けられた状態となっている。尚、実施例3におけるガラス板2の平面部17の垂線Pと砥石部42の軸心Sとがなす角度θは略45度となっている。
【0083】
先ず、図14及び図15を参照して、ボール形ドリル39を用いて貫通孔部3’を開ける研削工程について説明する。尚、図14及び図15に示されたガラス板2は、図3におけるA−A断面図に対応している。
【0084】
研削作業が開始されると、ボール形ドリル39が、ガラス板2の後部の平面部17の上方位置に移動して、図14に示すように、砥石部42はシャンク41の軸心Sを中心に、モーター部16によって回転駆動される。更に、シャンク41の軸心Sの傾きを維持した状態で、ボール形ドリル39はガラス板2の平面部17に向かって垂直方向に降下される。
【0085】
ボール形ドリル39が降下されると、ボール形状をなす砥石部42の下端部がガラス板2に当接して、砥石部42によってガラス板2の後部の平面部17が研削される。
【0086】
図15に示すように、ボール形ドリル39は、実施例2における円柱形ドリル35と同様に、前後方向に移動するとともに左右方向にも移動して、平面視で略四角形状の軌跡を描く動作をしつつ、ガラス板2を研削しながら降下される。
【0087】
そして、図15に示すように、貫通孔部3’の前後の内周面24,25と左右の内周面(図示略)は、ボール形状をなす砥石部42によって研削されるため、砥石部42の外周部の曲率に合わせて円弧形状をなす円弧面に形成される。
【0088】
実施例3のボール形ドリル39は、ボール形状をなしているとともに、ボール形ドリル39がその軸心の左右方向に移動されることにより、砥石部42の左右方向に延びる貫通孔部3’が形成される。また、ボール形ドリル39は、その軸心の前方向に移動されることにより、砥石部42の前方向に延びる貫通孔部3’が形成される。
【0089】
尚、ボール形ドリル39により形成された貫通孔部3’の上方側の開口は、貫通孔部3’の下方側の開口よりも大きくなっている(図12参照)。研削工程にて形成される貫通孔部3’は、加工目的とする貫通孔部3の形状よりも小さく形成される。
【0090】
ボール形ドリル39によるガラス板2の後部の貫通孔部3’の研削工程が終了すると、ボール形ドリル39がガラス板2の前部の平面部17の上方位置に移動される。そして、ガラス板2の前部の平面部17が研削されて、ガラス板2の前部の貫通孔部3’の研削工程が開始される。このガラス板2の前部の貫通孔部3’の研削工程は、前述したガラス板2の後部の貫通孔部3’の研削工程と同一工程となっている。
【0091】
次に、図16を参照して、ボール形ドリル39を用いて貫通孔部3’を成形する成形工程について説明する。尚、図16に示されたガラス板2は、図3におけるA−A断面図に対応している。
【0092】
ガラス板2の前部の平面部17の研削工程が終了すると、ボール形ドリル39は、一旦上昇し、シャンク41の軸心Sがガラス板2の平面部17の垂線Pに対して垂直になるように傾きが変えられ、ガラス板2の前部の貫通孔部3’の成形工程が開始される。ボール形ドリル39が降下されると、砥石部42がガラス板2の前部の貫通孔部3’に挿通され、前後の内周面24,25及び左右の内周面が砥石部42の外周部によって研削される。
【0093】
ボール形ドリル39は、前後の内周面24,25を研削する際には、平面視において直線状に移動し、左右の内周面を研削する際には、平面視において円弧形状の軌跡を描くように移動して、加工目的とする貫通孔部3が形成される。
【0094】
図16に示すように、ボール形ドリル39の外周部が、貫通孔部3’の円弧面となっている前後の内周面24,25と左右の内周面に当接し、内周面24,25と左右の内周面が研削される。
【0095】
ボール形ドリル39によって貫通孔部3’の前後の内周面24,25と左右の内周面が研削されて、その大きさが広げられるとともに、砥石部42は、前後の内周面24,25と左右の内周面と当接して上下方向にも移動しながら研削され、加工目的とする貫通孔部3の形状に成形される。断面視において、貫通孔部3’の前後の内周面24,25と左右の内周面は、垂直をなす垂直面に成形される。
【0096】
ボール形ドリル39によるガラス板2の前部の貫通孔部3’の成形工程が終了すると、ボール形ドリル39がガラス板2の後部の貫通孔部3’の上方位置に移動される。そして、ガラス板2の後部の貫通孔部3’の前後の内周面24,25と左右の内周面が研削されて、ガラス板2の後部の貫通孔部3’の成形工程が開始される。このガラス板2の後部の貫通孔部3’の成形工程は、前述したガラス板2の前部の貫通孔部3’の成形工程と同一工程となっている。
【0097】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0098】
例えば、前記実施例1〜3では、研削工程におけるドリル7,35,39が傾く所定角度θを、略45度としているが、この所定角度θは略45度に限ることなく、略90度の所定角度θでドリル7,35,39を傾けてもよいし、それ以上の所定角度θでドリル7,35,39を傾けるようにしてもよし、略45度よりも小さい所定角度θでドリル7,35,39を傾けるようにしてもよい。
【0099】
また、例えば、前記実施例2及び3のドリル35,39の砥石部38,42の基端側の部位に、実施例1の成形用ドリル8の第1及び第2成形部29,30と同様の成形部を形成し、この成形部を用いて成形工程において、貫通孔部3の成形及び仕上げを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 研削装置
2 ガラス板(硬脆材料)
3,3’ 貫通孔部(孔部)
7 孔形成用ドリル(研削用ドリル)
8 成形用ドリル(研削用ドリル)
17 平面部
20 シャンク
21 砥石部
23 ダイヤモンド着装部(研削面)
24,25,26 内周面
27 シャンク
28 砥石部
29 第1成形部(研削面)
30 第2成形部(研削面)
35 円柱形ドリル(研削用ドリル)
36 円柱形ドリル装置
37 シャンク
38 砥石部(研削面)
39 ボール形ドリル(研削用ドリル)
40 ボール形ドリル装置
41 シャンク
42 砥石部(研削面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸として作用するシャンクに研削用砥石部を備える研削用ドリルを用いて、略平板状をなす硬脆材料が有する平面部に孔部を形成する硬脆材料の研削方法であって、
前記研削用砥石部の少なくとも軸周りの外周面に研削面が設けられ、前記研削用ドリルのシャンクの軸心を、前記硬脆材料の平面部の垂線に対して傾けた状態とし、前記研削用砥石部の外周面を前記硬脆材料の平面部に当てるとともに、前記研削用ドリルを前記垂線の方向に移動させて前記硬脆材料の研削を行う研削工程を含むことを特徴とする硬脆材料の研削方法。
【請求項2】
前記研削用ドリルを、その軸心の左右方向に移動させることにより、前記研削用砥石部の周方向に延びる孔部を形成することを特徴とする請求項1に記載の硬脆材料の研削方法。
【請求項3】
前記研削用砥石部の少なくとも正面に研削面が設けられ、前記研削用ドリルを、その軸心の前方向に移動させることにより、前記研削用砥石部の前方向に延びる孔部を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の硬脆材料の研削方法。
【請求項4】
前記研削工程にて、前記研削用ドリルを前記硬脆材料に貫通させて前記貫通孔部を形成した後、研削用ドリルのシャンクの軸心を、前記硬脆材料の平面部の垂線に対して略平行状態とし、該研削用ドリルの研削用砥石部を前記貫通孔部に挿通するとともに、該研削用砥石部の外周面を前記貫通孔部の内周面に当てて研削を行う成形工程を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の硬脆材料の研削方法。
【請求項5】
前記研削工程にて、前記研削用ドリルのシャンクの軸心が該シャンクの先端から基端にゆくに従って前記硬脆材料から離れるように傾けられた状態で、前記孔部が形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の硬脆材料の研削方法。
【請求項6】
前記研削用砥石部は、略円盤状をなしていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の硬脆材料の研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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