説明

硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】水を主体とした発泡剤を使用した、優れた断熱性能を有する硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物(P)とポリイソシアネート化合物(I)とを、特定のアミノアルキル基を少なくとも2つ有する芳香族化合物、および特定のアミノアルキル基を少なくとも2つ有する脂肪環式化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるアミン化合物(A)、触媒(C)、整泡剤(S)の存在下、前記ポリオール化合物(P)100質量部に対して3〜20質量部の水を含む発泡剤を用いて反応させることを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、冷凍庫、冷蔵庫、または建築資材用等の断熱材として利用できる硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤等の存在下で反応させて、硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリイソシアヌレートフォーム等の硬質発泡合成樹脂(以下、硬質フォームという)を製造することは広く行われている。
【0003】
発泡剤としては、従来、クロロフルオロカーボン(CClF等のいわゆるCFC化合物)やハイドロクロロフルオロカーボン(CClFCH等のいわゆるHCFC化合物)が用いられていたが、オゾン層破壊等の環境保護の観点から使用が規制されている。
また、これらに代わる発泡剤としては、ハイドロフルオロカーボン(以下、HFC化合物という)やシクロペンタン等の炭化水素化合物が挙げられる。しかしながら、HFC化合物は地球温暖化係数が高いため、環境保護の観点から使用量の削減が求められている。
また、シクロペンタン等の炭化水素化合物は可燃性であるため、ボード成形等の発泡設備への安全対策にかかるコストが大きく、一方スプレー発泡においては安全上の問題から使用できない。
【0004】
また、軟質ポリウレタンフォームの製造においては、発泡剤として水が広く用いられている。水は、ポリイソシアネート化合物と反応することによって生成する炭酸ガスを発泡ガスとして使用するため、環境面、安全面、および設備コスト面で非常に優れている。しかし、炭酸ガスは熱伝導率が大きく、硬質フォームの製造に水を用いると、得られる硬質フォームの断熱性能が低下するという問題がある。そのため、優れた断熱性能が求められる硬質フォームの製造では、発泡剤としては主に前記HFC化合物やシクロペンタンが使用され、水はコスト削減のため、断熱性能を悪化させない程度に用いられるに留まっている。
【0005】
シクロペンタンと少量の水を発泡剤として用いる硬質フォームの製造方法においては、断熱性能を向上させるために環状アミン化合物を用いることが提案されている(特許文献1)。
特許文献1において、環状アミン化合物の使用により断熱性能が向上するのは、気化したシクロペンタンのポリオール化合物に対する分散性が向上することにより、フォーム中の気泡が微細化するためであると考えられる。
【特許文献1】特開2001−172359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように発泡剤である炭化水素が気化することを利用する物理発泡と異なり、水による発泡は、水とポリイソシアネート化合物との反応によって発生する炭酸ガスを利用する化学発泡である。そのため、特許文献1と同様に発泡剤(水)のポリオール化合物に対する分散性向上によって断熱性能の向上が得られることは期待できず、水のみまたは水を主体とする発泡剤を用いて充分な断熱性能を得る方法は見い出されていなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、発泡剤として主に水を使用して、優れた断熱性能を有する硬質フォームが得られる製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬質フォームの製造方法は、ポリオール化合物(P)とポリイソシアネート化合物(I)とを、下記アミン化合物(A)、触媒(C)、および整泡剤(S)の存在下、前記ポリオール化合物(P)100質量部に対して3〜20質量部の水を含む発泡剤を用いて反応させることを特徴とする方法である。
アミン化合物(A):芳香環に結合している下式(1)のアミノアルキル基を少なくとも2つ有する芳香族化合物、および脂肪環に結合している下式(1)のアミノアルキル基を少なくとも2つ有する脂肪環式化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物。
−NH−R− ・・・(1)
ただし、式(1)中、Rは炭素数1以上の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、Rは水素原子または1価の炭素数1〜6のアルキル基を含む基である。
【0009】
本発明の硬質フォームの製造方法は、発泡剤として水のみを使用するのが好ましい。
また、前記アミン化合物(A)の使用量が、ポリオール化合物(P)100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。
また、前記アミン化合物(A)が有するアミノアルキル基のRが全て水素原子であることが好ましい。
また、前記ポリオール化合物(P)が、マンニッヒ縮合物、ジアミノトルエン、およびビスフェノールAからなる群から選ばれる少なくとも1種を開始剤として、環状エーテル化合物を開環重合させて得られるポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
また、本発明の製造方法はスプレー法により施工することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、発泡剤として主に水を使用して、優れた断熱性能を有する硬質フォームを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の製造方法は、ポリオール化合物(P)とポリイソシアネート化合物(I)とを、アミン化合物(A)、触媒(C)、整泡剤(S)の存在下、水を主体とする発泡剤を用いて反応させる方法である。
本発明の製造方法により得られる硬質フォームは、ウレア結合を有する硬質フォームであり、いわゆる硬質ポリウレタンウレアフォームである。また、イソシアヌレート変性硬質ポリウレタンウレアフォームを製造することもできる。
【0012】
[ポリオール化合物(P)]
ポリオール化合物(P)は、通常硬質フォームの製造に用いられているポリオールであればよく、たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマーが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールのみの使用、またはポリエーテルポリオールと、ポリエステルポリオールおよび/または末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマーとの併用が好ましい。
【0013】
本発明におけるポリエーテルポリオールとは、開始剤に環状エーテル化合物を開環重合させて得られるポリオールである。
【0014】
開始剤としては、たとえば、多価アルコール類、多価フェノール類等のポリヒドロキシ化合物、水、アミン類、またそれらに下記環状エーテル化合物を開環重合させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0015】
多価アルコール類としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、シュークロース(ショ糖)が挙げられる。
【0016】
多価フェノール類としては、たとえば、ビスフェノールA、フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物が挙げられる。
【0017】
アミン類としては、たとえば、アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類;ピペラジン、N−アミノメチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン等の脂環族アミン類;フェノール類とホルムアルデヒドとアルカノールアミン類とを反応させて得られるマンニッヒ反応縮合物、アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
開始剤としては、前記化合物のうち1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
開始剤に開環重合させる環状エーテル化合物としては、たとえば、環内に酸素原子を1つ有する3〜6員環の環状エーテル基を有する化合物が挙げられる。
3員環状エーテル基を有する化合物としては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、スチレンオキシド、α−メチルスチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピフルオロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシドール、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−クロロエチルグリシジルエーテル、o−クロロフェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、ジヒドロナフタレンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシドが挙げられる。
4〜6員環状エーテル基を有する化合物としては、たとえば、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランが挙げられる。
なかでも、3員環状エーテル基を1つ有する化合物(モノエポキシド)が好ましく、炭素数2〜4のアルキレンオキシドである、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシドがより好ましい。
【0019】
前記環状エーテル化合物は1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。環状エーテル化合物を2種以上併用する場合は、それらを混合して(ランダムに)開環重合させるか、または順次開環重合させることができる。また、前記化合物にε−カプロラクトン、ラクチド等の環状エステルを併用してもよい。
特に好ましい環状エーテル化合物は、プロピレンオキシドのみの使用、エチレンオキシドのみの使用、またはプロピレンオキシドとエチレンオキシドの併用である。
【0020】
ポリエーテルポリオールは、マンニッヒ縮合物、ジアミノトルエン、およびビスフェノールAからなる群から選ばれる少なくとも1種を開始剤として、環状エーテル化合物を開環重合させて得られるポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。該ポリエーテルポリオールを使用することにより、イソシアネート化合物(I)との相溶性が向上し、フォーム中の気泡がより微細となり、断熱性能に優れた硬質フォームが得られる。
【0021】
ポリエステルポリオールとしては、たとえば、多価アルコールと多価カルボン酸との重縮合により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸の重縮合、環状エステル化合物(ラクトン、ラクチド)の重合、ポリカルボン酸無水物への環状エーテル化合物の重付加、廃ポリエチレンテレフタレートのエステル交換反応等により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0022】
ポリオール化合物(P)として、ポリエーテルポリオール(質量M)とポリエステルポリオール(質量M)とを併用する場合には、両者の質量比をM/M=20/80〜95/5の範囲とするのが好ましく、30/70〜90/10の範囲とするのがより好ましい。M/Mを20/80以上とすることにより、流動性が向上する。また、M/Mを95/5とすることにより、難燃性、接着性が向上する。
【0023】
ポリオール化合物(P)の平均水酸基数は、2〜6であることが好ましく、3〜6であることがより好ましい。平均水酸基数が2以上であれば、フォームが収縮せずに良好な断熱性能を得やすい。また、平均水酸基数が6以下であれば、発泡剤である水との相溶性に優れ、流動性に優れることで平均セル径が小さいフォームが得られ易くなり、断熱性能が向上する。
【0024】
ポリオール化合物(P)の平均水酸基価は、150〜1000mgKOH/gであることが好ましく、200〜800mgKOH/gであることがより好ましい。平均水酸基価が150mgKOH/g以上であれば、フォームが収縮せずに良好な断熱性能を得やすい。また、平均水酸基価が1000mgKOH/g以下であれば、発泡剤である水との相溶性に優れ、流動性に優れることで平均セル径が小さいフォームが得られ易くなり、断熱性能が向上する。
【0025】
[ポリイソシアネート化合物(I)]
ポリイソシアネート化合物(I)は、通常硬質フォームの製造に用いられているものであればよく、イソシアネート基を2つ以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネート、または前記ポリイソシアネートのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。なかでも、TDI、MDI、クルードMDI、またはこれらの変性体が好ましい。
【0026】
ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、イソシアネート指数を50〜300とするのが好ましい。ただし、イソシアネート指数とは、ポリオール化合物(P)およびその他の活性水素化合物の活性水素の合計数に対する、ポリイソシアネート化合物(I)のイソシアネート基の数を100倍して表した数値である。
【0027】
本発明では、触媒としてウレタン化触媒を用いるウレタン処方においては、イソシアネート指数を50〜140とするのがより好ましく、60〜130とするのがさらに好ましい。
また、触媒としてイソシアネート基の三量化反応を促進する三量化触媒を主に用いるイソシアヌレート処方においては、イソシアネート指数を120〜300とするのがより好ましく、150〜250とするのがさらに好ましい。
【0028】
[触媒(C)]
触媒(C)としては、ウレタン化反応を促進するウレタン化触媒が挙げられる。ウレタン化触媒としては、たとえば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類;ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。前記ウレタン化触媒は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタン化触媒の使用量は、ポリオール化合物(P)100質量部に対して、0.1〜10質量部とするのが好ましい。
【0029】
また、イソシアネート基の三量化反応を促進する三量化触媒を併用してもよい。三量化触媒としては、たとえば、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩や、4級アンモニウム類、トリアジン類等のアミン触媒が挙げられる。前記三量化触媒は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
三量化触媒の使用量は、ポリオール化合物(P)100質量部に対して、0.1〜10質量部とするのが好ましい。
【0030】
また、硬質フォームの製造方法としてスプレー法(以下、スプレー発泡ともいう)を採用する場合には、反応を短時間で完結させるために、2−エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒を併用してもよい。
有機金属触媒の使用量は、ポリオール化合物(P)100質量部に対して、0.1〜10質量部とするのが好ましい。
【0031】
[発泡剤]
本発明の製造方法では、発泡剤として、ポリオール化合物(P)100質量部に対して3〜20質量部の水を用いるが、水のみを使用するのが特に好ましい。
発泡剤として用いる水の使用量は、ポリオール化合物(P)100質量部に対して3〜17質量部とするのが好ましく、4〜17質量部とするのが好ましく、5〜15質量部とするのが特に好ましい。
【0032】
[整泡剤(S)]
本発明の製造方法では、良好な気泡を形成するために整泡剤(S)を用いる。
整泡剤(S)としては、たとえば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられ、表面張力が低い、いわゆるファインセルタイプのものが好ましい。
整泡剤(S)の使用量は、適宜選定できるが、ポリオール化合物(P)100質量部に対して0.1〜10質量部とするのが好ましく、2〜10質量部とするのが特に好ましい。
【0033】
[アミン化合物(A)]
アミン化合物(A)は、アミノアルキル基を少なくとも2つ有する芳香族化合物、およびアミノアルキル基を少なくとも2つ有する脂肪環式化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
前記芳香族化合物および脂肪環式化合物は、単環、非縮合多環、または縮合多環のものが挙げられる。多環の場合は、好ましい環の数は2である。また、それぞれのアミノアルキル基は異なる環に結合していることが好ましい。多環の場合は、隣接する環の間にアルキレン基などの2価結合基を有する非縮合多環であることが好ましい。
【0034】
アミン化合物(A)が芳香環または脂肪環を有することにより、ポリイソシアネート化合物(I)のアミン化合物(A)との反応活性が、ポリオール化合物(P)との反応活性に対して高くなりすぎないため、反応性および得られる硬質フォームの諸物性を制御し易くなると考えられる。
【0035】
アミン化合物(A)が有するアミノアルキル基は、下式(1)に示すアミノアルキル基である。
−NH−R− (1)
ただし、式(1)中、Rは炭素数1以上の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、Rは水素原子または1価の炭素数1〜6のアルキル基を含む基である。
すなわち、式(1)のアミノアルキル基は、1級アミノ基(Rが水素原子)または2級アミノ基(Rが1価の炭素数1〜6のアルキル基を含む基)を有する。
【0036】
は水素原子であることが好ましい。すなわち、1級アミノ基を有するアミノアルキル基であることが好ましい。Rが水素原子であると反応性が高い。
アミン化合物(A)が有するそれぞれのアミノアルキル基のRは、互いに異なっていてもよく、同じであってもよいが、Rは全て水素原子であることが特に好ましい。すなわち、1級アミノ基を有するアミノアルキル基のみを有するアミン化合物(A)であることが特に好ましい。
が1価の炭素数1〜6のアルキル基を含む基である場合には、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、またはシアノアルキル基であることが好ましい。Rが炭素数6以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、シアノアルキル基であると、反応性が水素原子より遅いことから反応速度の調整がしやすく、架橋が架かるため成形性に優れ、物性を改良する手段として有効である。
【0037】
は炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。アミン化合物(A)が有するそれぞれのアミノアルキル基のRは、互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。
アミノアルキル基がRを有することにより、アミン化合物(A)のポリイソシアネート化合物(I)との反応活性が充分に高くなり、発生する気泡核数の増加により、得られる断熱性能を充分に高くできると考えられる。
【0038】
式(1)のアミノアルキル基の具体例としては、たとえば、アミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、1−アミノ−1−メチルエチル基、4−アミノブチル基が挙げられ、アミノメチル基、1−アミノ−1−メチルエチル基が特に好ましい。
アミン化合物(A)が有するアミノアルキル基の数は2以上であり、2〜3であることが好ましく、2であることが特に好ましい。
【0039】
アミン化合物(A)は、前記アミノアルキル基以外にアルキル基および/または電子吸引性基をさらに有していてもよい。
アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、1〜4であることが特に好ましい。
電子吸引性基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキカルボニル基、N−アルキル置換カルバモイル基、アルコキシスルホニル基が好ましい。特に好ましい電子吸引性基は、塩素原子、ニトロ基、シアノ基、およびアルコキシカルボニル基である。
【0040】
アミン化合物(A)の具体例としては、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、アルキル基または電子吸引性基が結合したビス(アミノアルキル)ベンゼン誘導体、ビシクロヘプタンのアミノアルキル基置換物が好ましく、なかでも、キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンが特に好ましい。
【0041】
アミン化合物(A)の使用量は、ポリオール化合物(P)100質量部に対して0.1〜10質量部とするのが好ましく、0.5〜5質量部とするのがより好ましい。
アミン化合物(A)の使用量を0.1質量部以上とすることにより、反応初期の泡化反応を加速させ、平均セル径が小さく優れた断熱性能を有する硬質フォームが得られ易くなる。また、アミン化合物(A)の使用量を10質量部以下とすることにより、泡化反応と樹脂化反応の制御がしやすく、平均セル径が小さく優れた断熱性能を有する硬質フォームが得られ易くなる。
【0042】
[その他の配合剤]
本発明では、前記ポリオール化合物(P)、ポリイソシアネート化合物(I)、触媒(C)、発泡剤、整泡剤(S)、およびアミン化合物(A)の他に、任意の配合剤を使用できる。
配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。ただし、本発明では、断熱材用途向けであることから、可塑剤を全くまたはほとんど使用しなくても所期の硬質フォームが得られる。
【0043】
[製造方法]
本発明の製造方法は、迅速な反応が求められる施工方法、特にスプレー法に適している。スプレー法は、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(I)とを、施工面に吹き付けながら反応させる発泡方法である。
ポリオールシステム液は、ポリオール化合物(P)に、好ましくは触媒(C)、水のみまたは水が主体である発泡剤、整泡剤(S)、アミン化合物(A)、および必要に応じて配合剤を含ませることにより得られる。ポリイソシアネート化合物(I)と反応しない整泡剤(S)や配合剤等は、ポリイソシアネート化合物(I)に含ませて用いてもよい。
【0044】
スプレー法は、工事現場にて直接硬質フォームを製造できることから、工事コストを抑制でき、また凹凸のある施工面にも隙間なく施工できる等の長所を有している。そのため、スプレー法は、建築現場において壁、天井等に硬質フォームの断熱材を施工する際に採用されることが多い。具体的な施工例としては、マンション、オフィスビル、プレハブ冷凍倉庫等の断熱材が挙げられる。特に本発明の硬質フォームの製造方法は、冷凍倉庫の断熱材の施工に好適である。
スプレー法としては、種々の方法が知られているが、特にポリオール化合物(P)とポリイソシアネート化合物(I)とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡を用いるのが好ましい。
【0045】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、発泡剤として水のみを使用しても優れた断熱性能を有する硬質フォームが得られる。
該理由としては、水に比べてポリイソシアネート化合物(I)との反応性が高いアミン化合物(A)を用いることにより、ある程度樹脂化反応を進行させた状態で気泡を発生させることができ、発生した気泡(炭酸ガス)同士が結合して大きなセルを形成するのを防ぐことができるためであると考えられる。このように、気泡を細かい状態で均一に閉じ込めてフォームのセル径を小さくできることで、得られた硬質フォーム中の輻射伝熱の効果が小さく抑えられると考えられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によっては限定されない。ただし、実施例および比較例における「部」は「質量部」を示す。また、POはプロピレンオキシド、EOはエチレンオキシドを示す。
実施例および比較例で用いた原料は、以下のとおりである。
【0047】
[ポリオール化合物(P)]
ポリオールP1:ジアミノトルエンを開始剤として、EO、PO、EOをこの順序で開環重合させて得られる、水酸基価450mgKOH/gのポリエーテルポリオール。開環重合させたPOおよびEOの合計量(100モル%)に対するEO量の割合は35.6モル%である。
【0048】
ポリオールP2:ビスフェノールAを開始剤として、EOを開環重合させて得られる、水酸基価280mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0049】
ポリオールP3:モノエタノールアミンを開始剤として、POを開環重合させて得られる、水酸基価350mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0050】
ポリオールP4:グリセリンを開始剤として、POを開環重合させて得られる、水酸基価400mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0051】
[触媒(C)]
触媒C1:1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン(商品名:ポリキャット41、エアプロダクツ社製)
触媒C2:ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテルの70%DPG溶液(商品名:TOYOCAT RX−7、東ソー社製)
【0052】
[整泡剤(S)]
整泡剤S1:シリコーン系整泡剤(商品名:SZ−1718、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
整泡剤S2:シリコーン系整泡剤(商品名:SH−193、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
【0053】
[発泡剤]
発泡剤:水
【0054】
[アミン化合物(A)]
アミン化合物A1:メタキシリレンジアミン(商品名:ショウアミンX、昭和電工社製)
アミン化合物A2:2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物(商品名:NBDA、三井化学社製)
【0055】
[イソシアネート化合物(I)]
イソシアネート化合物I1:ポリメリックMDI(商品名:コロネート1130、日本ポリウレタン工業社製;イソシアネート基含有量31質量%)
【0056】
以下、実施例および比較例について説明する。
[実施例1]
ポリオールP1(50部)、ポリオールP2(20部)、ポリオールP3(10部)、ポリオールP4(20部)、触媒C1(2.0部)、触媒C2(2.0部)、整泡剤S1(5.0部)、アミン化合物A1(2.0部)、および水(4.0部)を混合してポリオール予備混合物として、液温を20℃に調整した。また、ポリイソシアネートI1の液温を20℃に調整した。
ついで、前記ポリオール予備混合物に前記ポリイソシアネートを所定量加え(イソシアネート指数110)、攪拌器(毎分3000回転)を用いて混合し、上部が開放状態の縦横各200mm×高さ200mmの木箱にビニールシートを敷きつめたものに注入し、硬質フォームを製造した。
【0057】
[実施例2〜4]
ポリオール予備混合物の組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして硬質フォームを製造した。
【0058】
[比較例1〜4]
ポリオール予備混合物の組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして硬質フォームを製造した。
【0059】
[コア密度、熱伝導率、平均セル径]
実施例1〜4および比較例1〜4の硬質フォームについて、コア密度(kg/m)、熱伝導率(mW/m・K)をJIS A9526に準拠して測定した。熱伝導率の測定は、HC−074(英弘精機社製)を用いて測定温度20℃で行った。また、平均セル径(μm)は、得られた硬質フォームのコア部についてフォームの発泡方向に対して垂直な面を測定した。平均セル径の測定は、VE−8800(キーエンス社製)を用いて、加速電圧1.0kV、測定倍率60倍の条件で行い、画像処理ソフトによりセルの長径の平均値を算出した。
ただし、コア密度、平均セル径に関しては、得られた硬質フォームからスキン部を取り除いて縦横100mm×高さ30mmの寸法にて切り出した中心部のサンプルを用いて測定した。また、熱伝導率については、縦横180mm×高さ25mmの寸法にて切り出した中心部のサンプルを用いて測定した。
測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示すように、アミン化合物(A)の存在下でポリオール化合物(P)とポリイソシアネート化合物(I)とを反応させた実施例1〜4の硬質フォームは、熱伝導率が低く、断熱性能が優れていた。
一方、アミン化合物(A)を使用していない比較例1〜4の硬質フォームは、熱伝導性が高く、断熱性能が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の硬質フォームの製造方法は、発泡剤として水のみを用いても、優れた断熱性能を有する硬質フォームが得られる。そのため、オゾン層破壊や地球温暖化等のおそれがなく、環境保護の点で優れており、スプレー施工による冷凍倉庫の断熱材等として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(P)とポリイソシアネート化合物(I)とを、下記アミン化合物(A)、触媒(C)、および整泡剤(S)の存在下、前記ポリオール化合物(P)100質量部に対して3〜20質量部の水を含む発泡剤を用いて反応させることを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
アミン化合物(A):芳香環に結合している下式(1)のアミノアルキル基を少なくとも2つ有する芳香族化合物、および脂肪環に結合している下式(1)のアミノアルキル基を少なくとも2つ有する脂肪環式化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物。
−NH−R− ・・・(1)
ただし、式(1)中、Rは炭素数1以上の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、Rは水素原子または1価の炭素数1〜6のアルキル基を含む基である。
【請求項2】
前記発泡剤として水のみを使用する、請求項1に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記アミン化合物(A)の使用量が、ポリオール化合物(P)100質量部に対して0.1〜10質量部である、請求項1または2に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記アミン化合物(A)が有するアミノアルキル基のRが全て水素原子である、請求項1〜3のいずれかに記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール化合物(P)が、マンニッヒ縮合物、ジアミノトルエン、およびビスフェノールAからなる群から選ばれる少なくとも1種を開始剤として、環状エーテル化合物を開環重合させて得られるポリエーテルポリオールを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項6】
スプレー法による請求項1〜5のいずれかに記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−91572(P2009−91572A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241075(P2008−241075)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】