説明

硬質脆性板の周縁加工装置

【課題】小径砥石の摩耗による自動運転時間の制約をなくし、長時間の自動連続運転が可能な硬質脆性板の周縁加工装置を提供する。
【解決手段】摩耗した小径砥石を自動的に新しい砥石に交換する自動交換手段を備えた周縁加工装置を提供する。ワーク軸の上方で水平方向に移動する横送り台と、この横送り台に設けた縦送り台と、この縦送り台に、横送り台の移動方向と平行でかつワーク軸の軸心を含む平面に軸心を一致させて、ワーク軸と平行な砥石駆動軸と、砥石マガジンを備えている。砥石マガジンは、複数の小径砥石を、それらの軸心を砥石駆動軸の軸心を通り横送り台の移動方向と平行な平面上に位置させて保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶パネルなどの表示パネルに用いるガラス基板その他の硬質脆性板の周縁の整形加工、面取加工、孔明け加工などを行う装置に関するもので、特に硬質脆性板の孔明け加工や曲率の大きな凹円弧部分の周縁加工を行うための小径の工具を備えた上記装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示パネルの領域内にカメラやマイク、スピーカなどを配置した携帯端末を製造する際には、表示パネルのガラス基板に、光や音を通過させる円形、楕円形、角丸形などの貫通孔や外周縁の一部を凹ませた凹所を加工しなければならない。このような貫通孔や凹所の加工は、ガラス基板の外周縁の面取加工や整形加工を行う際に図6に示すような小径の砥石を用いて行われる。図6に示した小径砥石3は、基本形状が細い円筒形で、その先端面31は、ガラス板を砥石軸方向に切り進む研削面とされ、当該先端面には、研削作用が発揮されない中心部がガラス板に接触するのを防止すると共に加工液を流通させるための直径方向の溝32が設けられている。砥石3の先端部外周は、先端側が小径となる円錐面33とされ、それに続く円筒面34と、鼓形部35とを備えている。鼓形部35の両側の円錐面36、37は、くり貫いた孔の周面の表裏のエッジを斜めに削り落とす、いわゆる面取を行うための研削面となっている。
【0003】
一般的な構造のガラス板の周縁加工装置は、ワークの周縁に沿って二次元平面上を移動する砥石駆動軸に比較的径の大きな外周加工用の砥石を装着して加工を行っており、貫通孔の加工などの内周加工が必要なときは、その都度、外周加工用の砥石を小径の内周加工用の砥石に交換していた。砥石は、ワークの加工に伴って摩耗するので、所定数のワークを加工する毎に新しい砥石に交換する必要がある。特に小径の砥石は、径の大きな砥石に比べて表面積が小さいために摩耗量が大きく、特に砥石駆動軸への砥石の装着精度に誤差(軸心のずれや傾き)があると、砥石の寿命が極端に短くなる。このような理由のため、上記のような構造の周縁加工装置で高精度で削り取り量の大きい内周加工が必要なときは、ワークを1個加工する毎に内周加工用の砥石を新しい砥石に交換していた。
【0004】
本願の出願人は、生産性が高くかつ装置の設置面積を小さくできるガラス基板の周縁加工装置として、加工中のガラス基板を載置するテーブルの鉛直軸回りの回転角とテーブルに近接離隔する方向の砥石の一次元方向のみの移動とを関連付けて制御することにより、矩形を含む種々の平面形状の貫通孔や外周加工を可能にした周縁加工装置を提案している(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
このコンタリング方式の周縁加工装置によれば、鉛直軸回りの基板の旋回と砥石の一次元方向の移動のみによって基板の周縁を任意の形状に加工することができ、基板や砥石の移動領域を小さくできるので、基板や砥石が二次元平面上を移動する構造の機械に比べて、装置の設置面積を大幅に低減することができる。更にコンタリング方式の周縁加工装置は、砥石駆動軸の移動平面上に大径砥石用と小径砥石用との2本の砥石駆動軸を設けてその一方の砥石駆動軸の進退により砥石を交換しながら加工を行うことが容易に可能となるので、内周加工が必要なワークの加工においても、頻繁な砥石の装脱が不要になるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−271105号公報
【特許文献2】特開2006−26874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高機能で表示パネルの大きな携帯端末の普及により、貫通孔や外周縁に凹部を備えたA4やB5サイズなどの比較的面積の大きなガラス基板の加工に対する需要が増大している。このような需要の増大に応えるためには、貫通孔や曲率の小さな凹部の加工が可能な小径の回転砥石を備えた周縁加工装置において、加工速度の向上と共に、長時間の自動運転が可能であることが要求される。しかし、摩耗しやすい小径の砥石を備えた従来の周縁加工装置では、小径砥石の耐用時間によって自動運転可能な時間が制限され、小径砥石の摩耗が長時間の自動運転を妨げる要因となっていた。
【0008】
この発明は、この問題を解決するためになされたもので、小径砥石の摩耗を低減すると共に、摩耗した砥石を新しい砥石に自動交換することで、小径砥石の摩耗による自動運転時間の制約をなくし、長時間の自動連続運転が可能な硬質脆性板の周縁加工装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、摩耗した小径砥石を自動的に新しい砥石に交換する自動交換手段を備え、かつ新しい砥石を砥石駆動軸に正確に自動装着することが可能な周縁加工装置を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【0010】
この発明の周縁加工装置は、鉛直軸回りに回転するワーク軸1と、このワーク軸の上方で鉛直軸回りに回転駆動される砥石駆動軸41とを備えている。好ましいこの発明の周縁加工装置は、ワーク(加工される硬質脆性板)の貫通孔や凹部の内周縁を加工する小径砥石3を装着する小径砥石駆動軸41と、ワークの外周を加工する大径砥石45を装着する大径砥石駆動軸46との、2本の砥石駆動軸を備えている。このような装置の場合、本願の特許請求の範囲で言う砥石は小径砥石を、砥石駆動軸は小径砥石の駆動軸を意味する。
【0011】
ワーク軸1の上端には、加工されるワークを保持するワークホルダ12が設けられている。砥石駆動軸41は、ワーク軸1の上方で水平方向に移動する横送り台21に設けた縦送り台25に、要すれば更に昇降台28その他の部材を介して、軸支されている。ワーク軸1の軸心と砥石駆動軸41の軸心とは、横送り台21の移動方向と平行な平面s上に位置している。砥石駆動軸41の下端には、砥石3の砥石軸51を把持する自動開閉式の砥石チャック42が設けられている。
【0012】
この発明の周縁加工装置は、砥石駆動軸41の下方に、砥石マガジン7を備えている。砥石マガジン7には、同一形状の小径砥石3を、その砥石軸51を鉛直方向にして保持する複数の砥石ホルダ5が設けられている。砥石ホルダ5は、少なくとも砥石交換時に、これらに保持された小径砥石3の軸心を、ワーク軸1の軸心と砥石駆動軸41の軸心とを含む前記平面s上に位置させて、各砥石3を保持している。
【0013】
砥石マガジン7に複数の砥石ホルダ5を複数列にして設けるときは、砥石交換時に当該列を選択できるように、砥石マガジン7を横送り台21の移動方向と直交する水平方向に移動位置決め可能にする前後送り装置74ないしタレット75を設ける。この構造は、例えば砥石3として、粗砥石と仕上げ砥石とを用いたいため、それらの砥石の摩耗も考慮して砥石マガジン7に多くの砥石3を保持したいという要求がある場合の構造として適している。
【0014】
ワーク軸1を駆動する主軸モータ15と横送り台21を移動する横送りモータ23は、サーボモータであり、この発明の周縁加工装置の制御器6は、主軸モータ15の回転角と横送りモータ23の回転角とを関連づけて制御することにより、ワークの指定された位置の直線辺、円弧辺、貫通孔の内周縁、角丸矩形などを加工するためのコンタリング加工手段を備えている。更に制御器6は、小径砥石による加工時間や加工個数を積算して、又は砥石モータの駆動電流値の増大を検出して、設定された値を超えた後の加工済ワーク搬出後のタイミングで、砥石交換指令を発する砥石交換指令手段を備えている。
【0015】
砥石交換指令が出力されると、制御器6は、横送り台21を移動して砥石駆動軸41を砥石排出位置に位置させ、砥石チャック42を開いて使用済小径砥石3を排出する。その後更に横送り台21を移動して、砥石駆動軸41を新たな小径砥石を保持している砥石ホルダ5の軸心位置に移動し、縦送り台25又は昇降台28で砥石駆動軸41を下降し、必要があれば更に砥石マガジン7を上昇させて、当該砥石ホルダに保持された小径砥石3の砥石軸51を砥石駆動軸41の砥石チャック42に挿入する。この状態で砥石チャック42を閉じ、縦送り台25又は昇降台28を上昇させることにより、砥石駆動軸41に新しい小径砥石3が装着される。
【0016】
砥石ホルダ5は、これに保持された砥石の砥石軸51を上方に引き上げたときに、砥石がホルダから離脱する構造とするのが、砥石交換動作を単純化できる点で好ましい。特に好ましい構造は、砥石3の軸心に固着された砥石軸51に、小径側が対向する第1と第2の円錐面52、53を設け、砥石ホルダ5には第1の円錐面52に嵌合する円錐凹面55と先端が第2の円錐面53に押接されて第1の円錐面52を円錐凹面55に押接する押接具(例えばボールプランジャ)57を備えた構造である。
【0017】
粗加工と仕上げ加工で砥石3を交換する装置では、制御器6の砥石交換指令は、粗加工と仕上げ加工との変換時にも出力される。この砥石交換指令が出力されたときは、制御器6は、横送り台21を移動して砥石駆動軸41を空の砥石ホルダ5上に位置させ、縦送り台25又は昇降台28で砥石駆動軸41を下降して、把持していた砥石3を砥石ホルダ5に差し込んだ後、砥石チャック42を開いて、使用中の砥石(粗砥石又は仕上げ砥石)を空の砥石ホルダ5に保持させる。その後、砥石駆動軸41を上昇した後、次工程で使用する仕上げ砥石又は粗砥石を保持している砥石ホルダ上に移動し、砥石駆動軸41を下降して、当該砥石ホルダに保持された小径砥石を把持して、加工位置に戻る。
【発明の効果】
【0018】
この発明の周縁加工装置は、予め定められた加工時間や加工個数が経過する毎に、又は砥石の摩耗が検出されたときに、砥石駆動軸に取り付けられた小径砥石を砥石マガジンに保持されている新しい小径砥石に自動的に交換して硬質脆性板の加工を継続する。従って、砥石マガジンに新しい小径砥石を複数個保持させておくことにより、長時間の連続自動運転が可能になる。
【0019】
小径砥石は、通常、砥石軸を一体に備えており、この砥石軸を砥石駆動軸の下端に設けたコレットチャックで把持して加工を行う。コレットチャックへの砥石の装着は、砥石軸を砥石駆動軸と正確に同一線上にして行ってやる必要があるが、請求項4の構造を備えた周縁加工装置によれば、砥石軸の第1円錐面52と砥石ホルダの円錐凹面55との嵌合により、砥石軸51の方向が正確に規定された状態で砥石マガジンに砥石が保持されるので、簡単な構造でありながら、砥石駆動軸への砥石の正確な装着が実現でき、砥石駆動軸と砥石の芯ずれに起因する砥石の摩耗を防止でき、長時間の連続自動運転が可能になる。
【0020】
また、この発明の周縁加工装置によれば、小径砥石の自動交換が可能なので、摩耗しにくい粗砥石を用いて粗加工を行い、仕上げ加工のみを仕上げ砥石で行うことにより、連続加工時間の延長と共に、加工時間の短縮や加工面精度の向上を図ることができる。
【0021】
また、この発明の請求項2の構造によれば、ワーク軸の回転角と横送り台の移動位置とを関連付けて制御することにより、各種形状の貫通孔や外周縁を加工することができると共に、当該横送り台の移動によって小径砥石の駆動軸を砥石マガジンに保持された砥石の軸心の位置に移動することができ、請求項4の構造を併用することにより、当該位置での砥石駆動軸の昇降動作とコレットチャックの開閉動作とにより、小径砥石の着脱を簡単な動作で速やかに行うことが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例装置の全体斜視図
【図2】駆動系を模式的に示す正面図
【図3】各軸の位置関係を示す模式的な平面図
【図4】砥石ホルダを2列に配置した例を示す図3と同様の図
【図5】砥石ホルダをタレットに設けた例を示す斜視図
【図6】砥石ホルダと小径砥石の断面側面図
【図7】砥石ホルダと小径砥石の正面図
【図8】小径砥石の交換タイミングの判定手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に実施例を示す図面を参照して、この発明の周縁加工装置を具体的に説明する。
【0024】
図において、1はワーク軸である。ワーク軸1は、鉛直方向の中空軸で、フレーム2に軸受11で回転自在に軸支されている。ワーク軸1の上端には、ワークホルダ12が固定されており、このワークホルダの上面は、水平なワーク保持面となっている。ワーク保持面13には、ワーク軸の中空孔を通して負圧が供給されており、ワーク保持面13に載せたワーク(硬質脆性板)は、下面を真空吸着されてワークホルダ12に保持される。ワーク軸1の下端には、主軸モータ(サーボモータ)15が連結されている。主軸モータ15は、サーボアンプ61を介して制御器6に接続され、制御器6の指令によってワーク軸1の回転角が制御されている。
【0025】
21は、ワーク軸1の上方に位置する横送り台である。横送り台21は、フレーム2に設けた水平方向の横ガイド22に移動自在に案内され、横送りモータ(サーボモータ)23で回転駆動される横送りねじ24に螺合している。横送りモータ23は、サーボアンプ62を介して制御器6に接続されており、横送り台21の移動位置が制御器6によって制御されている。
【0026】
25は縦送り台である。縦送り台25は、横送り台21に固定した鉛直方向、すなわちワーク軸1と平行な方向の縦ガイド(図示されていない)に移動自在に装着され、縦送りモータ26で回転駆動される縦送りねじ27に螺合している。縦送りモータ26は、主軸モータ15や横送りモータ23ほどの正確な回転角の制御を必要としないが、孔明け加工の際などには、制御器6によって縦送り台25の高さが制御されている。
【0027】
28は昇降台である。昇降台28は、縦送り台25に設けた鉛直方向のレールに摺動自在に装着されており、その上端は、縦送り台25に装着した昇降シリンダ29のロッドに連結されている。
【0028】
3は小径砥石である。小径砥石3は、コレットチャック42で小径砥石駆動軸41の下端に装着されている。小径砥石駆動軸41は、回転子軸を鉛直方向にして昇降台28に装着したブラシレスモータ4の内部でその回転子軸に連結されており、コレットチャック42を開閉するためのシリンダが含まれている。このシリンダへの流体圧のオンオフにより、コレットチャック42が開閉して、小径砥石3の把持及び開放が行われる。従って図の装置では、ブラシレスモータ4が小径砥石駆動モータとなり、小径砥石駆動軸先端のコレットチャック42が砥石チャックとなっている。
【0029】
45は大径砥石である。大径砥石45は、縦送り台25に軸支された鉛直方向の、従ってワーク軸1と平行な方向の大径砥石駆動軸46の下端に装着されている。大径砥石駆動軸46の上端は、歯付ベルト47により大径砥石駆動モータ48に連結されている。
【0030】
ワーク軸1の軸心、小径砥石駆動軸41の軸心、及び大径砥石駆動軸46の軸心は、横送り台21の移動方向と平行な同一鉛直面上に位置している。後述する砥石マガジンに複数の砥石ホルダ5を1列に配置したとき、それらの砥石ホルダ5の軸心も総てこの鉛直面上に位置している(図3参照)。従って、横送り台21の移動により、小径砥石駆動軸41の軸心を複数の砥石ホルダ5の任意の1個の軸心と一致させることができる。
【0031】
大径砥石45でワークを加工するときは、昇降シリンダ29で昇降台28を上昇させ、小径砥石3をワークホルダ12に保持されたワークに干渉しない上方位置まで待避させた状態で加工を行う。一方、小径砥石3でワークを加工するときは、昇降シリンダ29で昇降台28を下降させ、縦送り台25で小径砥石3を加工位置に移動してワークを加工する。このとき大径砥石45は、昇降台28に対する縦送り台25の相対的な上昇により、ワークホルダ12で保持されたワークと干渉しない上方位置に退避している。
【0032】
いずれの加工においても、横送り台21の移動量とワーク軸1の回転角とを関連付けて制御することにより、所望の平面形状の周縁加工を行う。また、ワークに貫通孔を加工するときは、小径砥石3をワークの上方の位置から下降させて砥石の先端面31(図6)で加工を行う。このときの小径砥石3の砥石軸方向の切り込み送りは、制御器6で縦送りモータ26の回転を制御することにより行う。
【0033】
7は砥石マガジンである。砥石マガジン7は、上端にテーブル71を備え、このテーブルに複数の砥石ホルダ5を備えている。複数の砥石ホルダ5は、横送り台21の送り方向と平行な方向に1列又は複数列にして、並べて配置されている。テーブル71には、フレームに対するテーブル高さを調整するための高さ調整ねじ72と、昇降台28に対する相対高さを検出するタッチセンサ73とが装着されている。
【0034】
複数の砥石ホルダ5は、小径砥石駆動軸41に装着されている砥石と同一形状の、又は同一箇所を加工するためのそれぞれ複数の粗加工用と仕上げ加工用の小径砥石3を、その軸を鉛直方向にして保持している。砥石ホルダ5を1列に配置したときは、複数の砥石ホルダ5に保持された砥石の軸心が、横送り台21の移動方向と平行で、かつ砥石駆動軸41、46の軸心を通る鉛直平面s上に位置するように配置する(図3)。
【0035】
一方、図4に示すように、テーブル71に砥石ホルダ5を複数列にして配置したときは、列を選択するための前後送り装置74を設ける。前後送り装置74は、テーブル71を横送り台21の送り方向と直交する方向に移動して、選択した列の複数の砥石ホルダ5の軸心を小径砥石41の移動面上に位置させるものである。図4のように砥石ホルダ5を2列に配置したときは、前後送り装置74としてシリンダを設ける。シリンダ74の進退と横送り台21の移動とにより、小径砥石駆動軸41の軸心を2列に配置した複数の砥石ホルダ5の任意の1個の軸心と一致させることができる。
【0036】
また、図5に示すように、テーブルに代えて砥石駆動軸41の移動鉛直面上の軸回りに回転割り出しされるタレット75の各割り出し面に砥石ホルダ5を配置し、タレット75の割り出し回転により選択された砥石ホルダの小径砥石3を砥石駆動軸に装着することもできる。高さ検出用のタッチセンサ73などは、タレット75の割り出し面の一つに装着しておけばよい。また図には示してないが、テーブル71を鉛直軸回りに回転割り出しされる回転テーブルとして、その径方向を砥石駆動軸41の移動鉛直面上に位置させることにより、回転テーブル上に配置した砥石ホルダの1個を選択することもできる。
【0037】
図6及び7は、小径砥石3を保持した状態で示す砥石ホルダ5の断面側面図及び正面図である。小径砥石3の砥石軸51には、小径端側が対向する第1円錐面52と第2円錐面53とが形成されている。砥石3から遠い側、すなわちホルダや砥石駆動軸に装着された状態での上方の第1円錐面52は、下方の第2円錐面53より大径である。第2円錐面53の大径端に連接して、下方が小径となる第3円錐面59が形成されている。
【0038】
複数の砥石ホルダ5は、それぞれ、ボルト58で砥石マガジンのテーブル71に固定されている。各砥石ホルダ5は、小径砥石3及び第2円錐面53が通過可能な貫通孔54を備えた円錐凹面55を備えている。この円錐凹面55は、第1円錐面52と等しい頂角を備えている。砥石ホルダ5の円錐凹面55の下方には、120度の間隔でボール56を軸心に向けて付勢するばねを備えたボールプランジャ57が設けられている。3個のボールプランジャ57は、砥石軸の第1円錐面52が砥石ホルダの円錐凹面55に嵌合したときに先端のボール56が砥石軸の第2円錐面53に押接される位置に設けられている。ボール56から第2円錐面53に作用する押接力の分力により、第1円錐面52が円錐凹面55に押し付けられた状態で、各小径砥石3が砥石ホルダ5に保持されている。第2円錐面53の砥石側に設けた第3円錐面59は、ワークホルダ5に砥石3を挿入するときにボールプランジャ57を押し込むためのものである。
【0039】
次に上記構造の装置における小径砥石3の交換動作を説明する。制御器6から砥石交換指令が出力されると、加工中のワークの加工が終了して当該ワークがワークホルダ12上から搬出された後、小径砥石駆動軸41が予め定められたワーク排出位置に達するまで横送り台21が移動して、当該位置で小径砥石駆動軸のコレットチャック42を開いて摩耗した小径砥石を排出する。
【0040】
横送り台21は、更に移動して小径砥石駆動軸41の軸心を砥石マガジン上の砥石ホルダの1個の軸心と対向させ、昇降台28を下降した状態で縦送り台25を下降させる。そして、タッチセンサ73が縦送り台25の所定の下降位置を検出した時点で縦送り台25の下降を止め、小径砥石駆動軸のコレットチャックを閉じて、砥石ホルダ5に保持されている新しい小径砥石の砥石軸を把持する。
【0041】
砥石ホルダ5に保持されている小径砥石は、砥石軸の第1円錐面52と砥石ホルダの円錐凹面55との嵌合により、その軸方向を小径砥石駆動軸の軸方向と正確に一致させた状態で保持されているので、砥石ホルダ5で保持されている小径砥石は、正確な姿勢で小径砥石駆動軸41に装着される。この状態で縦送り台25を上昇させると、第2円錐面53の斜面に沿って3個のボールプランジャ57が押し込まれ、第2円錐面53がボールプランジャ57から離脱して新たな小径砥石3は上方へ移動可能な状態となり、縦送り台25が更に上昇することによって、砥石ホルダ5から離脱する。
【0042】
以上のようにして、摩耗した小径砥石が新しい小径砥石に交換された後、次のワークがワークホルダ12上に搬送されてワークの自動加工が継続される。砥石マガジン7に複数の小径砥石を装着しておけば、その複数個+1個の小径砥石が総て摩耗するまで人手を介することなく、周縁加工装置の自動運転を継続することができる。
【0043】
図8は、小径砥石の交換タイミングを示すフローチャートである。大径砥石によるワークの加工と小径砥石によるワークの加工とは、各ワーク毎に交互に行われる。図の例では、まず大径砥石によるワークの外周加工が行われた後、昇降台28の加工により工具が小径砥石3に変換されて、小径砥石によるワークの内周加工が行われる。小径砥石による加工が終了した後、使用中の小径砥石による加工個数が制御器6に設定された1個の砥石で加工可能なワークの個数に達したかどうかを判定し、加工個数が設定個数に達していれば、小径砥石を新しい砥石に交換する。また、加工中の小径砥石駆動モータ4の電流値が設定した電流値を超えたときに、砥石の摩耗による加工抵抗の増大とみなして、小径砥石3を新しい砥石に交換する。このような制御により、ワークを1個加工する毎に砥石交換を行っていた従来装置に比べて、加工能率及び連続自動加工時間を大幅に改善することができる。
【0044】
この発明の周縁加工装置を用いて、粗加工用と仕上げ加工用の小径砥石を用いて加工するときは、砥石マガジンに粗砥石と仕上げ砥石とを保持する。摩耗の激しい仕上げ用の小径砥石は、複数保持し、空の砥石ホルダを1個設ける。そして、小径砥石駆動軸41に装着された粗加工用の小径砥石で粗加工を行った後、使用中の粗砥石を空の砥石ホルダに差し込んで保持させ、仕上げ砥石を把持して、仕上げ加工を行う。そしてワークの搬出搬入時に、仕上げ砥石を元の砥石ホルダに戻し、先に保持させた粗砥石を把持して、次のワークの粗加工を行う。砥石が摩耗したら、前述した手順で摩耗した砥石を排出し、新しい砥石と交換する。このように、この発明の周縁加工装置では、粗加工用と仕上げ加工用の小径砥石を交換しながら加工を行うこともできる。
【0045】
更に、使用中の砥石又は砥石駆動軸41で新たに把持した砥石をタッチセンサ73上に移動して、小径砥石3の先端がタッチセンサ73に触れる高さまで砥石駆動軸41を下降させることにより、小径砥石3の折れを検出することができる。例えば小径砥石3によるワークの貫通孔の加工をする前に、上記方法で小径砥石先端の折れを検出するようにすれば、折れた小径砥石を用いて孔明け加工をしようとしたためにワークを割ってしまうというような事故を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ワーク軸
3 小径砥石
5 砥石ホルダ
6 制御器
7 砥石マガジン
12 ワークホルダ
15 主軸モータ
21 横送り台
23 横送りモータ
25 縦送り台
28 昇降台
41 小径砥石駆動軸
42 砥石チャック
45 大径砥石
46 大径砥石駆動軸
51 砥石軸
52 第1の円錐面
53 第2の円錐面
55 円錐凹面
57 押接具
71 テーブル
74 前後送り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端にワークホルダを備えて鉛直軸回りに回転するワーク軸と、このワーク軸の上方で水平方向に移動する横送り台と、この横送り台に設けた縦送り台と、この縦送り台に、横送り台の移動方向と平行でかつワーク軸の軸心を含む平面上にワーク軸と平行に軸支された砥石駆動軸と、この砥石駆動軸の下端の砥石チャックと、前記平面上で軸心を砥石駆動軸と平行にしてかつ工具の向きを砥石駆動軸に把持された工具と同方向にして複数の同一形状の砥石を保持する砥石マガジンとを備えた、硬質脆性板の周縁加工装置。
【請求項2】
前記砥石マガジンが、前記平面上に複数の小径砥石を1列にして保持している、請求項1記載の周縁加工装置。
【請求項3】
前記砥石マガジンが、テーブルと、当該テーブルを前記横送り台の移動方向と直交する方向に送る前後送り装置とを備え、当該テーブルが、小径砥石の軸心を前記平面及び当該平面と平行な他の平面上にそれぞれ複数個を位置させて、小径砥石を保持している、請求項1記載の周縁加工装置。
【請求項4】
前記砥石マガジンが、前記平面上に位置する水平方向又は鉛直方向の割り出し軸回りに回転割り出しされるタレットで複数個の小径砥石を保持している、請求項1記載の周縁加工装置。
【請求項5】
前記縦送り台に、前記砥石駆動軸と平行な大径砥石駆動軸が、その軸心を前記ワーク軸の軸心を通り前記横送り台の移動方向と平行な平面上に位置させて、軸支され、前記砥石駆動軸は、前記縦送り台に昇降台を介して軸支されている、請求項1、2、3又は4記載の周縁加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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