説明

硬質表面用殺菌洗浄剤組成物

【課題】 芽胞形成菌やカビに対して高い殺菌効果を示す硬質表面用殺菌洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 (A)多価アルコールと有機酸とのエステルと(B1)過酸化水素とを、水中で特定のモル比で、且つpH8〜12で反応させて得られた有機過酸、並びに水を含有し、25℃におけるpHが1以上7未満である硬質表面用殺菌洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、金属、ガラス、タイル等の硬質表面の殺菌洗浄に適した硬質表面用殺菌洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造工場、医薬品製造工場、病院、養護施設や、厨房、トイレ等、衛生的な環境が望まれる施設は多い。これらにおいて、衛生的な環境を維持するためには、床、壁等や使用器具等のこまめな殺菌処理が不可欠である。
【0003】
これらの硬質表面の殺菌や洗浄には、界面活性剤や殺菌剤等を配合した液体あるいは粉末の洗浄剤、殺菌剤、殺菌洗浄剤が主に使用されている。そして、工業的な製造プロセスに殺菌洗浄工程を組み込む場合は、有効成分の供給、混合、適用(塗布、噴霧等)等の工程が自動化されている場合が多い。
【0004】
こうした硬質表面の殺菌洗浄に用いられる殺菌洗浄剤として、塩素系の殺菌剤を含むものが知られている。例えば、特許文献1には、次亜塩素酸塩、両性界面活性剤及び/又は陽イオン界面活性剤、pH調整剤を含有する硬質表面用殺菌洗浄剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、特定の長鎖アミンオキサイド混合物を含む水性組成物に、次亜塩素酸塩を使用できることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−342496号
【特許文献2】特表平9−500680号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の硬質表面用の殺菌洗浄剤は、殺菌しにくい芽胞菌の形成する芽胞や、カビに対しての殺菌効果が低く、十分な殺菌洗浄効果を得るにはかなりの高温・長時間の処理が必要であった。食品加工工場や病院等では、床、壁、設備、器具等の硬質表面は、微生物汚染が生じやすいため、こうした硬質表面の十分な殺菌洗浄は重要である。
【0006】
酸素系殺菌剤を用いた硬質表面用殺菌剤組成物は、環境への影響が穏和である点では有利であるが、細菌芽胞などの薬剤耐性の強い微生物に対する殺菌効果については、更なる向上が望まれる。芽胞形成菌に対しては、過酢酸を含む殺菌剤がある程度の効果を示すことは知られているが、臭気の点で使いにくく、作業環境は不良となる等の問題がある。
【0007】
本発明の課題は、芽胞形成菌等、薬剤耐性の高い微生物に対してもより高い殺菌効果を示す、酸素系の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステル〔以下、(A)成分という〕と(B1)過酸化水素〔以下、(B1)成分という〕とを、水中で、(A)/(B1)=1/10〜20/1のモル比で、且つpH8〜12で反応させて得られた有機過酸、並びに水を含有し、25℃におけるpHが1以上7未満である硬質表面用殺菌洗浄剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルと(B1)過酸化水素とを、(A)/(B1)=1/10〜20/1のモル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満とする工程を有する、硬質表面用殺菌洗浄剤組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬質表面に対して優れた洗浄力を示し、且つ、通常の操作よりも低温、短時間の処理でも芽胞やカビに対して優れた殺菌力を示す硬質表面用殺菌洗浄剤組成物が得られる。また、本発明の組成物は、臭気の問題もなく、作業環境への影響も少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<(A)成分>
(A)成分の多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルは、過酸化水素と反応して有機過酸を生じるものである。
【0012】
(A)成分を構成するための多価アルコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類、グルコース、ショ糖、果糖、ソルビトール、ペンタエリスリトール、アルキルポリグリコシド、アルキルフラノシド等の糖類が挙げられる。
【0013】
また、(A)成分を構成するための有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オクタン酸等の脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸等が挙げられるが、好ましくは炭素数1〜8の飽和又は不飽和の脂肪族モノ又はジカルボン酸が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜8の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、更に好ましくは炭素数1〜8の脂肪酸が挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜8の脂肪酸が挙げられる。(A)成分のエステル化度は限定されない。
【0014】
具体的な(A)成分としては、グリセリンと炭素数1〜8の脂肪族モノカルボン酸のエステルが好ましく、なかでもトリアセチンが好ましい。
【0015】
本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は、(A)成分と(B1)成分とを、水中で、(A)/(B1)=1/10〜20/1のモル比で、且つpH8〜12で反応させて得られた有機過酸、並びに水を含有し、25℃におけるpHが1以上7未満のものである。すなわち、本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は、上記の通り、(A)成分と(B1)成分とを、水中で、特定のモル比で、且つpH8〜12で反応させ、次いでpHを1以上7未満、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5に調整してなるものである。
【0016】
本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は、(A)成分、(B1)成分以外にも、界面活性剤、無機又は有機の塩類、キレート剤、香料、顔料、染料等を含有することができる。
【0017】
更なる洗浄力の向上のために用いられる界面活性剤としては、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられ、陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。界面活性剤は単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド、アルキルジメチルアミノ脂肪酸ベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等のベタインなどが挙げられる。なかでも、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルアミンオキシドが好ましい。また、陽イオン界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられるが、このうち第4級アンモニウム塩が特に好ましい。第4級アンモニウム塩としては、4つの置換基の少なくとも1つが総炭素数8〜28のアルキル又はアルケニル基であり、残余がベンジル基、炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である化合物が挙げられる。総炭素数8〜28のアルキル又はアルケニル基は、この炭素数の範囲で、アルコキシル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルアミノ基、アルケノイルアミノ基、アルカノイルオキシ基又はアルケノイルオキシ基で置換されていてもよい。両性界面活性剤及び/又は陽イオン界面活性剤の配合量は、組成物中に1ppm〜5重量%、更に5ppm〜1重量%、特に10ppm〜0.5重量%が好ましい。
【0019】
また、陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤は汚れに対する浸透性向上や泡立ち性向上のために配合することが好ましい。陰イオン界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸エステル塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸エステル塩、高級アルコールエーテル置換の酢酸塩、脂肪酸とアミノ酸の縮合物、脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、脂肪酸アミドのアルキル化スルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、アミドエーテルカルボン酸又はその塩、エーテルカルボン酸又はその塩、N−アシル−N−メチルタウリン又はその塩、アミドエーテル硫酸又はその塩、N−アシルグルタミン酸又はその塩、N−アミドエチル−N−ヒドロキシエチル酢酸又はその塩、アシルオキシエタンスルホン酸又はその塩、N−アシル−β−アラニン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルグリシン又はその塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボニルメチル硫酸又はその塩等が挙げられる。陰イオン界面活性剤の配合量は、組成物中に1ppm〜5重量%、更に10ppm〜0.5重量%、特に50ppm〜0.5重量%が好ましい。
【0020】
また、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEと記す)アルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン・POE(ブロック又はランダム)アルキルエーテル、POEアリールフェニルエーテル、POEスチレン化フェニルエーテル、POEトリベンジルフェニルエーテル等の1価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤;(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド等の多価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。非イオン界面活性剤の配合量は、組成物中に1ppm〜5重量%、更に10ppm〜1重量%、特に100ppm〜0.5重量%が好ましい。
【0021】
塩類は、pH調整剤として用いられる他に、主として殺菌薬剤の安定化の目的で用いられ、具体的には、コハク酸、マロン酸、クエン酸、グルコン酸、グルタル酸等のカルボン酸金属塩等の有機塩、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、リン酸等のリン酸化合物金属塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩等の無機塩が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリポリリン酸、ポリヒドロキシアクリル酸、有機ホスホン酸等又はこれらの塩が挙げられる。
【0023】
また、本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物中の水の量は、組成物中、50重量%以上100重量%未満、更に60重量%以上100重量%未満、特に70重量%以上100重量%未満が好ましい。また、本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は有機過酸を含有する水溶液であり、当該組成物中の有機過酸濃度は、10〜20,000ppm、更に10〜10,000ppmであることが好ましい。また、本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は、過酸化水素含有量が0.5重量%以下、更に0.3重量%以下、特に0.2重量%以下であることが、殺菌効果の点で好ましい。この過酸化水素含有量は、当該組成物の調製直後、更には使用時に達成されることが好ましい。
【0024】
本発明において、有機過酸と界面活性剤の重量比は、安定性の観点から、界面活性剤/有機過酸=0.01〜20が好ましく、0.1〜10がより好ましく、0.5〜5が特に好ましい。
【0025】
本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は、高い殺菌効果を有するために、種々の微生物が存在する様々な被殺菌物を殺菌対象とすることができる。例えば、細菌類では大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、緑濃菌等の食中毒や院内感染等の起因菌、黒コウジカビ、カンジダ菌等の真菌類、更には殺菌剤に強い耐性を有する枯草菌等の細菌芽胞や黒コウジカビ等の真菌胞子が挙げられる。このうち、細菌芽胞とは、増殖に適さない環境において作られる耐久性を有する休眠細胞であり、菌体の外側には多重の層状外殻を有している。このような細菌芽胞は薬剤や熱などに対する耐久性が非常に高く、一般的な殺菌では完全に死滅させることは困難である。しかし、本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物によれば、このような細菌芽胞に対しても十分な殺菌効果が得られる。
【0026】
このように、本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は、殺菌スペクトルが広く、細菌類のみならず、真菌類や芽胞に対する効果も高いため、種々の硬質表面に対する殺菌洗浄に有用である。
【0027】
本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は、以下のような殺菌洗浄剤製造用組成物から調製することができる。
【0028】
(1)(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステル及び(B1)過酸化水素を含有し、水分含有量が1〜25重量%である殺菌洗浄剤製造用組成物(以下、第1の殺菌洗浄剤製造用組成物という)。
【0029】
(2)(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステル、及び(B1)過酸化水素又は(B2)水中で過酸化水素を放出する無機過酸化物を、(A)と(B1)又は(A)と(B2)から発生する(B1)のモル比が(A)/(B1)=1/10〜20/1で含有する殺菌洗浄剤製造用組成物であって、pHを8〜12とした後、pHを1以上7未満として調製された水溶液として用いられる殺菌洗浄剤製造用組成物(以下、第2の殺菌洗浄剤製造用組成物という)。
【0030】
(3)(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステル、及び(B1)過酸化水素又は(B2)水中で過酸化水素を放出する無機過酸化物を、(A)と(B1)又は(A)と(B2)から発生する(B1)のモル比が(A)/(B1)=1/10〜20/1で配合して得られる殺菌洗浄剤製造用組成物であって、pHを8〜12とした後、pHを1以上7未満として調製された水溶液として用いられる殺菌洗浄剤製造用組成物(以下、第3の殺菌洗浄剤製造用組成物という)。
【0031】
以下、(B2)水中で過酸化水素を放出する無機過酸化物を(B2)成分とし、(B1)成分と(B2)成分を合わせて(B)成分として説明する。
【0032】
なお、(B)成分のうち、(B2)成分から発生する過酸化水素のモル数とは、過マンガン酸滴定法により求められる(B2)成分中の過酸化水素濃度(重量%)に、組成物中の(B2)成分の配合量(g)を乗じて、過酸化水素の分子量である34で除することにより求められる値である。
【0033】
<(B)成分>
(B)成分うち、(B2)成分の水中で過酸化水素を放出する無機過酸化物は、殺菌洗浄剤製造用組成物が液状の場合は過酸化水素が、粒状、粉状等、固体状の場合は、過炭酸塩、過ホウ酸塩が好ましく、特に過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
<第1の殺菌洗浄剤製造用組成物>
本発明の第1の殺菌洗浄剤製造用組成物は、(A)成分と(B1)成分とを含有するが、貯蔵中の(A)成分と(B1)成分の反応を抑制して組成物の安定性を維持する点から、組成物中の水分含有量は1〜25重量%であり、更に5〜20重量%、特に5〜15重量%が好ましい。
【0035】
本発明の第1の殺菌洗浄剤製造用組成物は、有機過酸を得るための成分を含有する1液型の液状組成物である。第1の殺菌洗浄剤製造用組成物中の(A)成分の含有量は、20〜90重量%、更に30〜90重量%、特に40〜80重量%が好ましく、(B1)成分の含有量は、1〜30重量%、更に5〜25重量%、特に10〜25重量%が好ましい。また、(A)成分と(B1)成分のモル比は、(A)/(B1)=1/10〜20/1、更に1/10〜10/1、特に1/5〜10/1であることが好ましい。また、(A)成分のエステル基1個あたりの(B1)成分のモル比は、効率的に有機過酸を生成し、かつ未反応の過酸化水素を低減させる観点から、2倍モル以下が好ましく、特に0.3〜2倍モルが好ましい。
【0036】
また、第1の殺菌洗浄剤製造用組成物は、必要に応じて、キレート剤、pH調整剤、溶剤等を含有することができる。FeやCr等の金属イオンの微量混入による触媒的分解を抑制するためにキレート剤は有用である。第1の殺菌洗浄剤製造用組成物の原液pH(20℃)は、貯蔵安定性の点から、0.5〜6が好ましく、さらに1〜5が好ましく、特に1〜4が好ましい。pH調整剤としての作用とキレート剤としての作用を兼ね備えたものが好ましく、具体的には、リン酸、重合リン酸、有機ホスホン酸、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、若しくはこれらの塩が好ましい。中でも、有機ホスホン酸若しくはその塩が好ましい。溶剤としては、多価アルコール溶剤が好ましく、プロピレングリコール等のグリコール溶剤が特に好ましい。
【0037】
<第2の殺菌洗浄剤製造用組成物>
本発明の第2の殺菌洗浄剤製造用組成物は、(A)成分と(B)成分を含有するが、両者の比率は、(B1)成分と(A)成分が効率的に反応する範囲であることが好ましく、有機過酸生成効率、殺菌効果、製剤安定性等を考慮すると、(A)成分と(B1)成分とのモル比が、(A)/(B1)=1/10〜20/1であり、1/10〜10/1、更に1/5〜10/1であることが好ましい。また、(A)成分のエステル基1個あたりの(B1)成分のモル比は、効率的に有機過酸を生成し、かつ未反応の過酸化水素を低減させる観点から、2倍モル以下が好ましく、特に0.3〜2倍モルが好ましい。(B2)成分を用いる場合も、上記範囲の(B1)成分を発生する量で配合することが好ましい。
【0038】
好ましくはこのモル比を満たした上で、本発明の第2の殺菌洗浄剤製造用組成物は、(A)成分を0.1〜90重量%、更に0.5〜70重量%、特に1〜50重量%、(B)成分を、(B1)成分として、0.1〜50重量%、更に0.1〜30重量%、特に0.1〜20重量%含有することが好ましい。
【0039】
本発明の第2の殺菌洗浄剤製造用組成物は、使用時には、pHを8〜12、好ましくは9〜11とし(第一工程)、次いでpH1以上7未満、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5とすることで(第二工程)、殺菌洗浄剤組成物である水溶液が調製される。第一工程では、アルカリ性のpH調整剤を、第二工程では酸性のpH調整剤を用いるのが好ましい。このpHは、使用時のものでよいが、好ましくは25℃において上記pHを満たすことである。なお、上記した本発明の第1の殺菌洗浄剤製造用組成物も同様に使用することができる。
【0040】
アルカリ性のpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリ金属塩、リン酸3ナトリウム等のアルカリ性を呈するリン酸アルカリ金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩が挙げられるが、アルカリ度や水溶性の観点より水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、リン酸3ナトリウムやリン酸3カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩が好ましい。また、酸性のpH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸が挙げられるが、酸度や水溶性の観点より硫酸やリン酸等の液体無機酸やクエン酸や酢酸等の高水溶性有機酸が好ましい。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらpH調整剤は、そのまま本発明の第2の殺菌洗浄剤製造用組成物中に存在してよい。なお、上記した本発明の第1の殺菌洗浄剤製造用組成物にもこれらpH調整剤を存在させることができる。
【0041】
本発明の第2の殺菌洗浄剤製造用組成物は、(A)成分、(B)成分以外にも、前記したような界面活性剤、無機又は有機の塩類、キレート剤、香料、顔料、染料等を含有することができる。なお、上記した本発明の第1の殺菌洗浄剤製造用組成物にもこれら成分を存在させることができる。
【0042】
本発明の第2の殺菌洗浄剤製造用組成物はさまざまな形態をとることができるが、液状の場合、流動性の高いものが好ましく、水溶液の他、流動性のあるスラリー、ゲル、ペースト状等であってもよい。また、固体状の場合、粒状、粉状、顆粒状、ペレット状等の形状が挙げられる。
【0043】
本発明の第2の殺菌洗浄剤製造用組成物は、配合成分のすべてをまとめて包装したものでもよいが、安定性の観点から、(A)成分と(B)成分とを別々に包装した複数剤型のものが好ましい。例えば、(A)成分を含む組成物の包装体(1)と、(B)成分を含む組成物の包装体(2)と、最終的にpHを1以上7未満とするためのpH調整剤(クエン酸等の酸性pH調整剤)を含む組成物の包装体(3)とからなる三剤型の殺菌洗浄剤製造用組成物とすることができる。この場合、包装体(2)にアルカリ剤を配合しておき、包装体(1)と包装体(2)の混合物がpH8〜12となるように調整することが好ましい。また、特に粉末の組成物の場合、(A)成分と(B)成分が1つの包装体中に共存することも可能であり、例えば、(A)成分と(B)成分とpHを8〜12に調整するためのアルカリ剤とを含む組成物の包装体(I)と、最終的にpHを1以上7未満とするためのpH調整剤(クエン酸等の酸性pH調整剤)を含む組成物の包装体(II)とからなる二剤型の殺菌洗浄剤製造用組成物とすることができる。
【0044】
本発明の第2の殺菌洗浄剤製造用組成物は、使用時には、先の第一工程、第二工程によりpHを調整することで、有機過酸を含有する殺菌洗浄剤組成物である水溶液が調製される。当該水溶液中の有機過酸濃度は、10〜20,000ppm(重量比、以下同様)、更に10〜10,000ppmであることが好ましい。また、当該水溶液中の過酸化水素含有量は0.5重量%以下、更に0.3重量%以下、特に0.2重量%以下であることが、殺菌効果の点で好ましい。これらの知見は、上記した本発明の第1の殺菌洗浄剤製造用組成物においても同様である。
【0045】
<第3の殺菌洗浄剤製造用組成物>
本発明の第3の殺菌洗浄剤製造用組成物は、上記本発明の(A)成分と(B)成分とを配合して得られるものであり、第2の殺菌洗浄剤製造用組成物同様、(A)成分と(B)成分由来の(B1)成分とのモル比が、(A)/(B1)=1/10〜20/1であり、pHを8〜12とした後、pHを1以上7未満として調製された水溶液として用いられるものである。(A)成分、(B)成分の具体的な化合物や、好ましい(A)/(B1)のモル比も第2の殺菌洗浄剤製造用組成物と同様である。また、第3の殺菌洗浄剤製造用組成物にも、前記した界面活性剤、無機又は有機の塩類、キレート剤、香料、顔料、染料等を含有することができ、包装の態様も同様とすることができる。
【0046】
<殺菌洗浄剤キット>
本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物を得るための好適な殺菌洗浄剤キットは、本発明に係る殺菌洗浄剤製造用組成物と、該組成物によってもたらされる(A)成分と(B1)成分の反応を開始させる反応開始剤〔以下、(C)成分という〕と、pH調整剤〔以下、(D)成分という〕とを含んで構成される。また、殺菌洗浄剤キットは、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含んで構成されることもできる。
【0047】
本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物を得るための殺菌洗浄剤キットは、有機過酸製造時の簡便性を考慮して、配合成分の全てをまとめて包装した1剤型でもよいが、貯蔵時の安定性を考慮して、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分とを個別に包装した複数剤型であってもよい。好ましい殺菌洗浄剤キットの剤型としては、有機過酸製造時の簡便性と製造用組成物の貯蔵安定性との両観点を考慮して、(A)〜(D)成分のうち2成分以上を含む組成物を包装した包装体を含む2剤型、若しくは3剤型等の複数剤型である。
【0048】
(A)成分と(B1)成分は、水中ではアルカリ条件(水温5〜50が好適)で反応して有機過酸を生成するため、(C)成分として、このようなpHを与える成分が使用できる。具体的には、アルカリ性のpH調整剤として例示した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリ金属塩、リン酸3ナトリウム等のアルカリ性を呈するリン酸アルカリ金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩が挙げられるが、アルカリ度や水溶性の観点より水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、リン酸3ナトリウムやリン酸3カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩が好ましい。
【0049】
一方、有機過酸を含有する殺菌洗浄剤は、酸性であることが殺菌効果の点で好ましいため、(D)成分は(C)成分によりアルカリ領域にあったpHを酸性領域にできる成分が使用される。具体的には、酸性のpH調整剤として例示した塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸が挙げられるが、酸度や水溶性の観点より硫酸やリン酸等の液体無機酸やクエン酸や酢酸等の高水溶性有機酸が好ましい。
【0050】
殺菌洗浄剤キットの具体的な剤型としては、
(I)(A)成分と(B)成分とを含有する殺菌洗浄剤製造用組成物の包装体(X1)、(C)成分を含有する組成物の包装体(X2)、(D)成分を含有する組成物の包装体(X3)を含む3型以上の剤型
(II)(A)成分を含有する組成物の包装体(Y1)、(B)成分と(C)成分とを含有する組成物の包装体(Y2)、(D)成分を含有する組成物の包装体(X3)を含む3型以上の剤型
(III)(A)成分と(B)成分と(C)成分とを含有する組成物の包装体(Z1)、(D)成分を含有する組成物の包装体(Z2)を含む2剤型以上の剤型
が挙げられる。
【0051】
(I)の剤型では、殺菌洗浄剤製造用組成物の形態は、粉末状、固体状、液状等、限定されるものではないが、簡便性の観点から液状がより好ましい。液状の形態をとる場合、貯蔵中の(A)成分と(B)成分の反応を抑制して安定性を維持するために、当該液状組成物中の水分含有量は1〜25重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%であり、5〜15重量%が更により好ましい。また、必要に応じて、当該液状組成物にキレート剤、溶剤を添加することができる。FeやCr等の金属イオンの微量混入による触媒的分解を抑制するためにキレート剤は有用である。また、当該液状組成物の原液pH(20℃)は、貯蔵安定性に関与するため、0.5〜6が好ましく、より好ましくは1〜5で、1〜4が更により好ましい。前記の通り、pH調整剤としての作用とキレート剤としての作用を兼ね備えた成分を用いることが好ましく、具体的には、リン酸、重合リン酸、有機ホスホン酸、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、若しくはこれらの塩が好ましい。中でも、有機ホスホン酸若しくはその塩が好ましい。溶剤としては、多価アルコール溶剤が好ましく、プロピレングリコール等のグリコール溶剤が特に好ましい。
【0052】
また、(I)の剤型で殺菌洗浄剤製造用組成物が粉末、固形状の形態をとる場合は、(B)成分として過炭酸ナトリウムや過硼酸ナトリウム等を用いることが好ましい。同様に、(II)の剤型や(III)の剤型でも、貯蔵安定性の観点から、(B)成分を含む組成物は、(B)成分として過炭酸ナトリウムや過硼酸ナトリウム等を用いた粉末、固形状の形態が好適である。
【0053】
これら各剤型における(A)〜(D)成分の含有量は、前記した本発明の第1〜第3の殺菌洗浄剤製造用組成物の用法に基づき、それぞれに適した範囲を選定することができる。また、(A)〜(D)成分以外の成分は、これら(A)〜(D)成分を含む何れかの包装体に配合しても、他の包装体に配合しても、何れでも良い。
【0054】
上記の殺菌洗浄剤製造用組成物や殺菌洗浄剤キットは、(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルと(B1)過酸化水素とを、(A)/(B1)=1/10〜20/1のモル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満とする工程を有する、硬質表面用殺菌洗浄剤組成物の製造方法に適用できる。
【0055】
本発明の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物は、自動スプレー装置、スプレーガンを用いる系でも好適である。また、増泡剤添加による泡洗浄殺菌も可能である。
【実施例】
【0056】
実施例1
以下において%は重量%を意味する。
【0057】
<殺菌洗浄剤組成物(I)の調製>
(A)トリアセチン(コグニスジャパン社製、有効分100%)50g、(B)過酸化水素(宇部ケミラ社製、有効分60%)25gをイオン交換水850gと混合し、この中に水酸化ナトリウム27%、有機ホスホン酸(商品名:ディクエスト2010、ソルーシア社製、)1.3%を含有するアルカリ水溶液75gを注ぎ5分間混合攪拌した。その後、直ちに硫酸30%、リン酸6%からなる混合酸液を75g添加して、有機過酸を含有する殺菌洗浄剤組成物(I)を調製した。該組成物(I)のpH(25℃)は約2であり、過酸化水素含有量は約1500ppmであった。
【0058】
<殺菌洗浄剤組成物(II)の調製>
(A)D−グルコース−O−ペンタアセテート(試薬:東京化成社製、有効分100%)50g、(B)過酸化水素(宇部ケミラ社製、有効分60%)25gをイオン交換水850gと混合し、この中に水酸化ナトリウム27%、有機ホスホン酸(商品名:ディクエスト2010、ソルーシア社製、)1.3%を含有するアルカリ水溶液75gを注ぎ5分間混合攪拌した。その後、直ちに硫酸30%、リン酸6%からなる混合酸液を75g添加して、有機過酸を含有する殺菌洗浄剤組成物(II)を調製した。該組成物(II)のpH(25℃)は約2であり、過酸化水素含有量は約1500ppmであった。
【0059】
<有機過酸濃度の測定>
100mLビーカーに調製した殺菌洗浄剤組成物(I)又は(II)を約1g精秤し、イオン交換水約50mLと過酸化水素分解剤(商品名:アスクスーパーG、三菱ガス化学社製)約1mLを注ぎよく攪拌して組成物中の過酸化水素のみを分解した。その後、20%硫酸5mLと10%ヨウ化カリウム水溶液5mLを注ぎ攪拌し、0.1mol/Lチオ流酸ナトリウム水溶液で滴定し、以下の式により有機過酸濃度(過酢酸濃度として)を求めた。
有機過酸(過酢酸)濃度(%)=T×38/W/100
T:0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴定所要量(mL)
W:殺菌洗浄剤組成物の採取量(g)
【0060】
<評価>
上記殺菌洗浄剤組成物(I)、(II)及び表1、2に示す成分を用いて得た組成物を、表1、2の有機過酸濃度になるように水で希釈した試験水溶液を用いて、以下の方法で洗浄力及び殺菌力の評価試験を行った。結果を表1、2に示す。尚、殺菌洗浄剤組成物の比較対照品として、殺菌剤成分が無い場合や、代表的な酸素系殺菌剤である過酸化水素と塩素系殺菌剤である次亜塩素酸ナトリウムを用いた配合物を作製し、同様の評価試験を行った。
【0061】
(1)洗浄力評価試験
洗浄力油汚れと蛋白質汚れのそれぞれのモデル汚れを作製後、JIS K−3362 9.2台所用合成洗剤の洗浄力評価方法に準じたリーナツ試験改良法でそれぞれの洗浄力を評価した。
【0062】
(1−1)油汚れ洗浄力評価
牛脂と大豆油を体積比1:1で混合した油脂20g、モノオレイン0.25g及びオイルレッド0.1gをクロロホルム60mLに溶かして油汚れ液を調製する。清浄なスライドガラスを6枚1組とし、1mgまでそれぞれの質量を測定しておく。25±1℃の油汚れ液中にスライドガラスを1枚ずつ約55mmのところまで約2秒間浸し、油汚れを付着させた後取り出す。スライドガラスの下部に付着した油汚れのたまりは清浄なガーゼ等の布や濾紙を用いて吸い取らせ、油汚れの付着を均一な状態にして、25±1℃で風乾し質量を測定する。風乾放置時間1時間以上2時間以内にモデル汚れガラス片を試験に用いる。この際、モデル汚れガラス片の6枚あたりの油汚れ付着量は0.140±0.010gになるようにする。
【0063】
このモデル汚れガラス片6組を、25±2℃で5分間、リーナツ改良洗浄機を用いて洗浄し、イオン交換水で25±2℃30秒間すすぐ。すすぎが終了したガラス片は、一昼夜風乾させる。洗浄力の評価は、モデル汚れガラス片の洗浄前後の重量より算出する。即ち、洗浄前と洗浄後の重量差を求め、次式により洗浄率(%)を算出する。
洗浄率(%)=〔(洗浄前重量−洗浄後重量)/汚垢付着量〕×100
6枚のガラス片についてそれぞれの洗浄率を求め、最大値と最小値を除いた4枚の洗浄率の平均値をその組成物の洗浄率とした。
【0064】
(1−2)蛋白質汚れ洗浄力評価
脱脂粉乳20gを60℃のイオン交換水で希釈溶解し、合計100gとし、蛋白質汚れ液とする。25ア1℃の蛋白質汚れ液に清浄なスライドガラスを1枚ずつ約55mmのところまで約2秒間浸し、蛋白質汚れを付着させた後取り出す。スライドガラスの下部に付着した蛋白質汚れのたまりは清浄なガーゼ等の布や濾紙を用いて吸い取らせ、蛋白質汚れの付着を均一な状態にして、25ア1℃で風乾する。これをもう一度繰り返し、片面の汚れを完全に除去後、風乾し110℃で1時間変性を行い、試験片とする。この試験片を12時間以上24時間以内に試験に用いる。試験片を、25ア2℃で5分間、リーナツ改良洗浄機を用いて洗浄し、イオン交換水で25ア2℃30秒間すすぐ。すすぎ後、70℃で30分乾燥し、エリスロシン1重量%溶液で着色後、着色面積(S1)を写真判定により測定し、初期(洗浄前)の蛋白質汚れ付着面積(S0)から洗浄率(%)を次式により算出する。
洗浄率(%)=〔(S0−S1)/S0〕×100
6枚のガラス片についてそれぞれの洗浄率を求め、最大値と最小値を除いた4枚の洗浄率の平均値をその組成物の洗浄率とした。
【0065】
(1−3)泡による油汚れ洗浄力評価
牛脂と大豆油を体積比1:1で混合した油脂20g、モノオレイン0.25g及びオイルレッド0.1gをクロロホルム60mLに溶かして油汚れ液を調製する。清浄なスライドガラス(76mm×26mm×1mm)を6枚1組とし、1mgまでそれぞれの質量を測定しておく。25±1℃の油汚れ液中にスライドガラスを1枚ずつ約55mmのところまで約2秒間浸し、油汚れを付着させた後取り出す。スライドガラスの下部に付着した油汚れのたまりは清浄なガーゼ等の布や濾紙を用いて吸い取らせ、油汚れの付着を均一な状態にして、25±1℃で風乾し質量を測定する。風乾放置時間1時間以上2時間以内にモデル汚れガラス片を試験に用いる。この際、モデル汚れガラス片の6枚あたりの油汚れ付着量は0.140ア0.010gになるようにする。
【0066】
300mLビーカーに、試験水溶液300mL(25℃)を入れ、先端にエアーストーンを取り付けたシリコンホースを試験水溶液中に沈め、エアーポンプで空気を送り(流量1.5リットル/分)、泡を発生させる。あふれた泡に、モデル汚れガラス片を1枚ずつ5分間接触させ、イオン交換水で25ア2℃30秒間すすぐ。すすぎが終了したガラス片は、一昼夜風乾させる。洗浄力の評価は、モデル汚れガラス片の洗浄前後の重量より算出する。即ち、洗浄前と洗浄後の重量差を求め、次式により洗浄率(%)を算出する。
洗浄率(%)=〔(洗浄前重量−洗浄後重量)/汚垢付着量〕×100
6枚のガラス片についてそれぞれの洗浄率を求め、最大値と最小値を除いた4枚の洗浄率の平均値をその組成物の洗浄率とした。
【0067】
(2)殺菌力評価試験
芽胞形成菌である枯草菌(Bacillus subtilis ATCC6633)をSCD寒天培地(日本製薬(株)製)に30℃で約1週間前培養した後、寒天培地上に形成されたコロニーをかきとり、1mLの滅菌水に懸濁し、検鏡して細菌芽胞(以下芽胞という)の形成を確認した。65℃、30分間の熱処理後、2回遠心洗浄を行った後、適量の滅菌水で約108cell/mLの菌濃度に調整した。この芽胞菌液1.0mLを、上記(1)洗浄力評価試験と同様に調製して1枚のモデル汚れガラス片に均一に接種した後、風乾し殺菌試験用ガラス片を得た。
【0068】
殺菌試験用ガラス片を、上記(1)洗浄力評価試験の(1−3)項と同様に発生させた試験水溶液の泡に5分間接触させ、すぐに滅菌水ですすいだ。ガラス片表面が乾燥する前に、ガラス片の所定面積(20mm×20mm)を滅菌綿棒で拭き取り、この綿棒を1mLの滅菌水(3.3%チオ硫酸ナトリウム加)に浸漬し付着物を懸濁した。その懸濁液の100μLを後培養用SCD培地(日本製薬(株)製)2.0mLの入った滅菌済み試験管へ接種した。これを35℃で48時間培養し、菌の発育を肉眼で観察し、菌の育成がない場合を「○」、ある場合を「×」とした。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表中の過酸化水素の濃度は過酸化水素有効分濃度を、また次亜塩素酸ナトリウム濃度は有効塩素濃度を示す。また、界面活性剤は以下のものである。
(1):エマール20C〔花王(株)製、有効分25%〕を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。
(2):アンヒトール20N〔花王(株)製、有効分35%〕を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。
(3):サニゾールC〔花王(株)製、有効分50%〕を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。
(4):マイドール12〔花王(株)製、有効分40%〕を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。
(5):エマルゲン106〔花王(株)製、有効分100%〕を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルと(B1)過酸化水素とを、水中で、(A)/(B1)=1/10〜20/1のモル比で、且つpH8〜12で反応させて得られた有機過酸、並びに水を含有し、25℃におけるpHが1以上7未満である硬質表面用殺菌洗浄剤組成物。
【請求項2】
過酸化水素含有量が0.5重量%以下である請求項1記載の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A)を構成する有機酸が、炭素数1〜8の脂肪酸である請求項1又は2記載の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に界面活性剤を含有する請求項1〜3の何れか1項記載の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物。
【請求項5】
界面活性剤が、陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上である請求項4記載の硬質表面用殺菌洗浄剤組成物。
【請求項6】
(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルと(B1)過酸化水素とを、(A)/(B1)=1/10〜20/1のモル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満とする工程を有する、硬質表面用殺菌洗浄剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−45147(P2006−45147A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230323(P2004−230323)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】