説明

硬質表面用洗浄剤

【課題】水まわりの硬質表面に対して良好な乾燥促進効果を付与でき、液体安定性に優れた洗浄剤を提供する。
【解決手段】(a)特定の構成単位を含むカチオン変性ポリビニルアルコール等のカチオン基を有する高分子化合物、(b)界面活性剤、及び水を含有する硬質表面用洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製品(例えば家庭内における水まわり設備等)、金属製品等、種々の硬質表面用の洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭における水まわりの設備である浴室、浴槽、シンク等では、使用時に蛇口やシャワーからの水の飛び散り等により、使用後の設備材質表面に水滴が付着、残留しやすい。これらの水滴の残留は、浴室の場合には、湿気がこもり、カビ等の発生につながりやすく、また、シンクの場合は、残留する水滴が付着時の形状を保ちながら徐々に乾燥し小さいリング状の跡がつきやすくなる。このような不都合な状態に対して、消費者の一般的な対応は、例えば、シンクの場合では、ふきん等で改めて水の拭き取りを行い美観を保つための労力を払ったり、また、浴室、浴槽の場合は、窓、ドアの開放、あるいは、換気扇の作動等により湿気を浴室から排除し、乾燥を促す労力を払っているが、保安上の問題や屋外からの汚染物質侵入の問題、あるいは省エネルギーの観点からいずれも満足のいく対処方法ではなかった。
【0003】
このような状況に対して消費者が手軽に浴室、浴槽、シンク等の水まわり設備に水滴を残さず素早く乾燥させる処理方法及び処理剤が求められていた。これまでに硬質表面の処理に関して開示されている技術として、特許文献1には、特定の界面活性剤とソイルリリースポリマーを含有する、自動車の塗装表面等の疎水性硬表面の洗浄防汚処理剤が、特許文献2、3には、界面活性剤と特定の水溶性ポリマーを含有する硬質表面用洗浄剤組成物が、特許文献4には、特定のカチオン性共重合ポリマーを含有する速乾性付与剤が開示されている。
【特許文献1】特開2002−265996号公報
【特許文献2】特開平8−253796号公報
【特許文献3】特開平8−253797号公報
【特許文献4】特開2003−183694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1〜4には、浴室、浴槽、シンク等の表面材質に対して乾燥を促進する効果は示されていない。このような状況から、手軽に浴室、浴槽、シンク等、水まわりの設備の硬質表面に水滴を残さず、素早く乾燥させる処理剤が求められている。また、こうした処理剤では、配合成分の相溶性が良好で液体安定性に優れたものが望ましい。
【0005】
従って、本発明の課題は、浴室、浴槽、シンク等の水まわりの硬質表面に対して乾燥を促進する効果を付与でき、液体安定性に優れた処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)下記一般式(1)で表される構成単位(a1)、下記一般式(2)で表される構成単位(a2)、及び下記一般式(3)で表される化合物を重合して得られる構成単位(a3)を含有する高分子化合物〔以下、(a)成分という〕、(b)界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、並びに(c)水を含有する硬質表面用洗浄剤に関する。
【0007】
【化2】

【0008】
〔式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基であり、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。Xは、炭素数1〜12のアルキレン基又は−CONHR8−である。ここでR8は、炭素数1〜5のアルキレン基である。R5は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR23C=C(R4)−X−である。R6は炭素数1〜3のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、R7は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基であり、Z-は陰イオンを示す。〕
【0009】
また、本発明は、上記本発明の硬質表面用洗浄剤を硬質表面に適用し、水が接触した後に水滴の残留を防止し、乾燥速度を向上させる方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本発明の洗浄剤を水まわりの硬質表面に塗布後、すすぎを行うことにより、硬質表面の水切れ性が高められ、水滴の残留を防止し、乾燥の促進ができ、且つ安定性に優れる硬質表面洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<(a)成分>
構成単位(a1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)とを有する(a)成分の高分子化合物は、構成単位(a2)の由来となる単量体化合物と構成単位(a3)の由来となる単量体化合物とを共重合し、部分的にケン化することで得ることができる。例えば、一般式(2)中のR1がメチル基である高分子化合物として、重合性カチオン単量体(構成単位(a3)の由来となる化合物)と酢酸ビニルの共重合体を部分ケン化することで得られるカチオン化ポリビニルアルコールを使用することができる。
【0012】
構成単位(a2)は、酢酸ビニル由来の基であることが好ましいが、本発明の水切れ性の作用効果から考える場合、前記一般式(2)のR1は炭素数1〜3のアルキル基であってもよい。
【0013】
構成単位(a3)を構成するための具体的な単量体化合物(一般式(3)で表される化合物)としては、下記の(i)〜(iii)から選ばれる化合物が挙げられ、このうち最も好ましいのは(i)及び(iii)から選ばれる化合物である。
【0014】
(i)ジアリルジアルキル(該アルキル基の炭素数は1〜3、好ましくはメチル)アンモニウム塩、好ましくはZ-が塩素イオンである塩。
(ii)N−(メタ)アクリロイルアミノアルキル(該アルキル基の炭素数は1〜5、好ましくは炭素数2〜3)−N,N−ジアルキル(該アルキル基の炭素数は1〜3、好ましくはメチル)アミンと酸との塩、好ましくはZ-が塩素イオンである塩。
(iii)N−(メタ)アクリロイルアミノアルキル(該アルキル基の炭素数は1〜5、好ましくは炭素数2〜3)−N,N,N−トリアルキル(該アルキル基の炭素数は1〜3、好ましくはメチル)アンモニウム塩、好ましくはZ-が塩素イオンである塩。
【0015】
本発明において構成単位(a1)及び構成単位(a2)を有する構成単位が優れた速乾性を対象物に付与することを可能にする。中でも特に、構成単位(a1)は、硬質表面に親水性を付与し、構成単位(a2)、及び構成単位(a3)は、硬質表面への吸着に作用する因子であり、特に構成単位(a3)は、配合成分の相溶性、液体安定性に作用する因子であると考えている。
【0016】
また、(a)成分においては、構成単位(a1)、(a2)、(a3)以外にも、本発明の効果を損ねない限りにおいて他の構成単位を含んでも良い。例えば−CH2CH2−、−CH2CH(COOH)−、−CH2C(CH3)(COOH)−、−CH2CH(Ph)−(Phはフェニル基)なる構成単位が挙げられる。
【0017】
(a)成分の構成単位中、構成単位(a1)、構成単位(a2)、及び構成単位(a3)の合計が50〜100モル%、更に80〜100モル%、特には実質100モル%であることが、配合成分の相溶性、液体安定性、及び効果の点から好ましい。
【0018】
また、(a)の構成単位中、カチオン基を含む構成単位(a3)の割合は0.01〜10モル%、更に0.01〜5モル%であることが、配合成分の相溶性、液体安定性、及び効果の点から好ましい。
【0019】
また、(a)成分においては、構成単位(a1)及び構成単位(a2)のモル比が、(a1)/(a2)で100〜1、好ましくは50〜1.3、更に好ましくは20〜1.5であることが、配合成分の相溶性、液体安定性、及び効果の点から好ましい。また、(a)成分の重量平均分子量は10,000〜1,000,000、更に10,000〜500,000、特に10,000〜200,000が好ましい。ここでいう重量平均分子量は、アセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリエチレングリコールを標準として求めることができる。
【0020】
<(b)成分>
(b)成分の界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0021】
陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18の高級脂肪酸塩、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)ベンゼンスルホン酸塩、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル塩、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル塩、α−オレフィン(炭素数10〜18)スルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(炭素数10〜18)の低級アルキル(炭素数1〜2)エステル塩、炭素数10〜18のアルケニルコハク酸塩、二級アルカンスルホン酸塩(炭素数13〜18)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩(炭素数10〜18)、ポリオキシエチレンアミドアルキルエーテルカルボン酸塩(炭素数8〜18)等が挙げられる。中でも洗浄時の泡立ちや油性汚れに対する洗浄性の観点から、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)ベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィン(炭素数10〜18)スルホン酸塩、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数1〜6)アルキル(炭素数10〜18)エーテル硫酸エステル塩から選ばれる陰イオン界面活性剤を配合することが好ましい。陰イオン界面活性剤の塩は、アルカリ金属塩、エタノールアミン塩、あるいはアンモニウム塩が好ましい。また、洗浄時の泡立ちとすすぎを容易にする観点から炭素数10〜18の脂肪酸のアルカリ金属塩、あるいはエタノールアミン塩、あるいはアンモニウム塩を界面活性剤の一部として配合することが好ましい。
【0022】
非イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数10〜18のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、炭素数10〜18の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8〜18の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられる。中でも油性汚れに対する洗浄性の観点から、炭素数10〜14のアルキル基を有するポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数5〜20)アルキルエーテルが好ましく、また、使用時の泡立ちの観点から炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド(糖縮合度1〜3)を配合することが好ましい。
【0023】
陽イオン界面活性剤としては、アルキル(炭素数10〜20)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(炭素数6〜14)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数6〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩、ベンゼトニウム塩等が挙げられる。
【0024】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイドや脂肪酸アミドプロピルアミンオキサイド等のアミンオキサイド、アルキル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミノプロピオン酸等が挙げられる。中でも洗浄時の泡立ちや石鹸カス等のスカム汚れに対する洗浄性の観点から、アルキル(炭素数10〜16)ジメチルアミンオキシド、炭素数12〜14の脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、アルキル(炭素数12〜14)アミノプロピオン酸を配合することが好ましい。
【0025】
これらの界面活性剤は複数を組み合わせて使用することが好ましい。
【0026】
<硬質表面用洗浄剤>
本発明の硬質表面用洗浄剤は、液体であり、(a)成分を0.01〜5質量%、特に0.03〜3質量%含有することが好ましい。また、(b)成分を0.1〜20質量%、更に0.3〜15質量%、特に0.5〜10質量%含有することが好ましい。(b)成分の一部として脂肪酸塩、もしくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、もしくはα−オレフィンスルホン酸塩などが気泡性、すすぎ性を調整する目的で配合されるが、その場合は、これらの洗浄剤中での含有量は0.05〜5質量%、更に0.1〜3質量%が好ましい。なお残部は水である。
【0027】
また、(a)成分と(b)成分の質量比は、(a)/(b)=1/500〜2/1、更に1/100〜1/1、特に1/50〜1/2が好ましい。
【0028】
本発明の硬質表面用洗浄剤には、炭素数1〜5の1価アルコール、炭素数2〜8の多価アルコール、または炭素数1〜8のアルキル基、あるいはアリール基を有するグリコールエーテル、または炭素数3〜8のアルキル基を有するグリセリルエーテル等の溶剤を、好ましくは洗浄剤中0.01〜20質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%の割合で配合することができる。溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、エチレングリコールモノアルキル(炭素数4〜8である)エーテル、ジエチレングリコールモノアルキル(炭素数4〜8である)エーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールアルキル(炭素数1〜4)エーテル、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数1〜5)フェニルエーテル及びアルキル基の炭素数が3〜8のモノアルキルグリセリルエーテルから選ばれる溶剤が挙げられる。中でも油性汚れに対する洗浄性の観点から、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数3)フェニルエーテルを配合することが好ましい。
【0029】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤には、キレート剤を、好ましくは洗浄剤中0.01〜15質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%の割合で配合することができる。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、アルキル(炭素数1〜3)グリシン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸−N,N−ジ酢酸、エチレンジアミン−N,N−ジコハク酸、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸から選ばれる多価カルボン酸及びそれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種以上、等が挙げられる。
【0030】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤には、ハイドロトロープ剤を、好ましくは洗浄剤中0.01〜15質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%の割合で配合することができる。ハイドロトロープ剤としては、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換したベンゼンスルホン酸又はその塩を挙げることができる。より具体的に好ましい例としては、p−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、p−クメンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸等が挙げられ、塩を用いる場合にはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が良好である。
【0031】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば香料、抗菌剤、粘度調整剤、顔料、染料、懸濁剤などを添加することができる。ただし、(a)成分以外のポリビニルアルコールないし変性ポリビニルアルコールは本発明の効果を損ねるおそれがあるため、(a)成分の質量%[A]に対して(a)成分以外のポリビニルアルコールないし変性ポリビニルアルコールの質量%[B]は、[B]/[A]=0.4以下、好ましくは0.25以下、更には0.1以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の硬質表面用洗浄剤は、硬質表面の処理に応じて組成を調整する。また、それぞれの濃厚溶液を調製しておき、使用時に希釈して用いることもできる。
【0033】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤の20℃におけるpHは、2〜11、更に3〜10、特に4〜8が作業時の安全性、及び基材に対する損傷性の点から好適である。pH調節剤としては塩酸や硫酸など無機酸や、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸などの有機酸などの酸剤や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン塩など、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤を、単独もしくは複合して用いても構わない。また、これらの酸剤とアルカリ剤を組み合わせて緩衝剤系として用いても構わない。
【0034】
硬質表面への本発明の洗浄剤の適用方法は、硬質表面の広さ(面積)等に応じて選択できる。例えば(a)成分の含有量が0.5質量%の水溶液を、10cm2あたり0.1〜3mL程度スプレーしてスポンジ等を用いて薄く塗りのばして処理することにより行うことができる。
【0035】
本発明の洗浄剤は、油汚れ、タンパク質汚れ、皮脂汚れ等に対する洗浄効果を有すると供に、疎水性の硬質表面に対して良好な親水性を付与することができ、しかもその持続効果にも優れる。従って、本発明により、本発明の硬質表面用洗浄剤を、疎水表面に適用することで、持続性のある親水性を付与する、硬質表面の処理方法が提供される。また、本発明の洗浄剤は、単に硬質表面を親水化するのみではなく、乾燥が促進される。これは硬質表面が親水化することで、表面に水滴がほとんど残らない水切れ現象(例えば、表面が一端水膜で覆われた後、やがて上端からゆっくりと水が切れていく現象等)が起こり、結果として硬質表面の乾燥が促進されると考えられる。また、ガラスやタイルなどの親水性表面に対しても上述の水切れ現象が起こり、乾燥が促進される。これらの効果を付与した硬質表面は、カビが発生し難いため、本発明の洗浄剤は防カビ処理用としても好適である。また、親水性が良好であるため硬質表面に付着した汚れ、特に疎水性汚れを水で容易に洗い流すことができるため、本発明の洗浄剤は防汚処理用としても好適である。これらのことから、本発明により、水が接触する環境、特に水が断続的に接触する環境に置かれ、且つ地面に対して傾斜ないし垂直に設置されている硬質表面に、本発明の硬質表面用洗浄剤を接触させることで、水が接触した際の硬質表面の水切れ性を向上させる方法が提供される。
【0036】
本発明の洗浄剤は、水まわりの設備等を構成する硬質表面、例えば、プラスチック、セラミックス及び金属から選ばれる材質からなる疎水性の硬質表面に対して適用されることが好ましく、具体的には強化プラスチック(FRP)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、ナイロン、ステンレス、タイルなどに対して適用されることが好ましい。
【実施例】
【0037】
表1に示す硬質表面用洗浄剤を調製し、以下の評価を行った。結果を表1に示す。なお、洗浄剤のpHは、水酸化ナトリウム及び塩酸により調整した。
【0038】
(1)相溶性
調製直後の洗浄剤の様子を目視観察し、以下の基準で相溶性を評価した。
○:沈殿物を生成せず、透明に溶解した。
×:沈殿又は濁りが生じた。
【0039】
(2)水切れ性
FRP製の浴槽(60cm×100cm×55cm)を用い、成人5人が入浴した後、1晩(9時間)放置し、その後排水し、自然乾燥した浴槽を評価用とした。市販のスプレヤーに表1の洗浄剤を充填し、上記浴槽に10mLスプレーし、スポンジで軽くこすった後、水ですすぎ、水切れ現象が起こるかどうかを視覚判定した。また、PVC製プレート(30cm×30cm)に2mLをスプレーし、スポンジで軽くこすった後、水ですすぎ、水切れ現象が起こるかどうかを視覚判定した。その際、以下の基準で水切れ性を評価した。
○:水切れ現象を起こす。
×:水切れ現象を起さない。
【0040】
【表1】

【0041】
(注)
表中の成分は以下のものである。
・カチオン変性PVA(ア):酢酸ビニルとN−メタクリロイルアミノプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライドとの共重合物の部分ケン化物(全構成単位中、構成単位(a1)、構成単位(a2)及び構成単位(a3)の合計は100モル%であり、構成単位(a3)は1.7モル%であり、構成単位(a1)及び構成単位(a2)のモル比は(a1)/(a2)=7.3である。分子量は約9万である。)
・カチオン変性PVA(イ):酢酸ビニルとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとの共重合物の部分ケン化物(全構成単位中、構成単位(a1)、構成単位(a2)及び構成単位(a3)の合計は100モル%であり、構成単位(a3)は0.9モル%であり、構成単位(a1)及び構成単位(a2)のモル比は(a1)/(a2)=6.7である。分子量は約9万である。)
・アニオン変性PVA:酢酸ビニルとマレイン酸との共重合物の部分ケン化物(ケン化度96モル%、アニオン変性度2モル%であり、分子量は約8万である。)
・未変性PVA:ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、分子量は約8万である。)
・アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:アルキル基の炭素数10〜16
・α−オレフィンスルホン酸ナトリウム:炭素数10〜18
・アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム:ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数2.0)アルキル(炭素数12〜16)エーテル硫酸エステルナトリウム
・高級脂肪酸ナトリウム:炭素数10〜18の脂肪酸ナトリウム
・アルキルアミノプロピオン酸ナトリウム:アルキル基の炭素数10〜14
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル:エチレンオキサイド平均付加モル数10、アルキル基の炭素数12〜16
・アルキルグリコシド:アルキル(炭素数10〜16)ポリグルコース(平均糖縮合度1〜2)
・脂肪酸アミドプロピルベタイン:ラウリン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−酢酸ベタイン
・アミンオキサイド:アルキル基の炭素数10〜14
・アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド:アルキル基の炭素数12〜16
・キレート剤:EDTA−4Na/クエン酸=4(質量比)の混合物
【0042】
なお、前記評価において検討された表1中の実施例1〜14の洗浄剤のうち、実施例3〜5、10〜12、及び14の洗浄剤は、特に泡立ちが良く、スポンジでの作業性が良好であったこと、また実施例4〜5、10〜12、及び14の洗浄剤は、特にすすぎ時の泡切れが良好であったことを参考までに記しておく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される構成単位(a1)、下記一般式(2)で表される構成単位(a2)、及び下記一般式(3)で表される化合物を重合して得られる構成単位(a3)を含有する高分子化合物、(b)界面活性剤、並びに(c)水を含有する硬質表面用洗浄剤。
【化1】


〔式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基であり、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。Xは、炭素数1〜12のアルキレン基又は−CONHR8−である。ここでR8は、炭素数1〜5のアルキレン基である。R5は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR23C=C(R4)−X−である。R6は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、R7は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基であり、Z-は陰イオンを示す。〕
【請求項2】
(a)の構成単位中、構成単位(a1)、構成単位(a2)及び構成単位(a3)の合計が50〜100モル%である請求項1記載の硬質表面用洗浄剤。
【請求項3】
(a)の構成単位中、構成単位(a3)が0.01〜10モル%である請求項1又は2記載の硬質表面用洗浄剤。
【請求項4】
(a)における構成単位(a1)及び構成単位(a2)のモル比が、(a1)/(a2)で100〜1である請求項1〜3の何れか1項記載の硬質表面用洗浄剤。
【請求項5】
(a)を0.01〜5質量%、(b)を0.01〜20質量%含有する請求項1〜4の何れか1項記載の硬質表面用洗浄剤。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の硬質表面用洗浄剤を硬質表面に適用し、水が接触した後に水滴の残留を防止し、乾燥速度を向上させる方法。

【公開番号】特開2007−308556(P2007−308556A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137675(P2006−137675)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】