説明

碍子解体装置

【課題】碍子解体装置の損傷を防止しつつ、碍子と碍子の内部を貫通するケーブルを確実に分離解体することのできる碍子解体装置を提供する。
【解決手段】碍子解体装置100は、内部にケーブルを保持した碍子を載置する架台110と、碍子を架台110の上に位置決めする碍子位置決め治具120と、碍子位置決め治具120によって位置決めされた碍子の上方に配置され、刃先が略平坦である1以上の刃130と、刃130を碍子に押圧して割裂させる押圧機構140とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碍子を割裂して分別処理するための碍子解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビフェニル(以下PCBと略称する)は、化学的に安定している、熱により分解しにくい、電気絶縁性に優れている、沸点が高い、不燃性であるなどの性質を有する物質である。このため、変圧器、安定器、開閉器、計器用変成器、コンデンサ、サージアブソーバ、遮断器、整流器、放電コイル、リアクトル等に使用する絶縁油、ボイラーや熱交換器の熱媒体等幅広い分野で使用されてきた。わが国では、これまで約59、000トンのPCBが生産され、このうち約54,000トンが国内で使用された(例えば非特許文献1)。
【0003】
近年、PCBの人体への有毒性が明らかになり、わが国では1972年からは、PCBの新たな製造はされなくなった。さらに、1973年に制定された「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づき、1974年からは、その製造、輸入等が事実上禁止となった。その後、我が国においては、高圧変圧器及び高圧コンデンサを始めとしたPCB廃棄物について、その処理体制の整備が著しく停滞していたため、長期にわたり処分がなされず、事業者において保管が行われてきた。このように処分のめどが立たないまま長期にわたる保管が継続する中で、PCB廃棄物の紛失等が発生し、環境汚染の進行が懸念される状況となっている。
【0004】
そこで「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が2001年に施行され、PCBおよびPCBを含む廃油等を15年以内に処分するよう義務付けた。
【0005】
従来からのPCBの処理法としては様々なものが提唱されており、代表的なものとしては、脱塩素化分解法、水熱酸化分解法、還元熱分解法、光分解法、プラズマ分解法などがある。
【0006】
しかし、PCBそれ自体を処理する前段階として、PCBが付着した機器を部材ごとに解体する必要がある。
【0007】
例えば、特許文献1(特開2006−334572号)には、PCB混入絶縁油を含有する変圧器の解体および洗浄方法が開示されている。特許文献1によれば、まずPCB混入絶縁油を含有する変圧器からPCB混入絶縁油を抜く油抜き工程、次に油抜きされた変圧器内に洗浄溶剤を導入して循環し、残存PCB混入絶縁油を洗浄除去する浸漬・循環洗浄工程、変圧器を洗浄装置に入る大きさに粗解体する粗解体工程、上述した解体単位で1次洗浄する1次洗浄工程、上述した解体単位をケース、金属、アルミナ、碍子、電線、コア、木、パッキンおよびその他部材にそれぞれ分別解体する解体工程、分別された各部材を2次洗浄する2次洗浄工程を経て、PCBが付着した機器を部材ごとに解体および洗浄できるとしている。
【0008】
特許文献1には、碍子解体工程に関しても記載されている。ただし特許文献1に開示されている解体工程における碍子解体工程は、「碍子の内部を貫通するケーブルがエポキシ樹脂等の接着剤で固定されているため、これを効率的に除去し、碍子部品と電線とに分別解体する」としているのみであり、具体的な解体方法については、「任意の方法で行うことができる」と記載されているに過ぎない。
【0009】
従来の碍子の具体的な解体方法の一例としては、架台の上に碍子を載置し、碍子位置決め治具によって碍子を位置決めした上で、先端の鋭利な刃を碍子に押圧して破砕する方法を採用していた。ここで、碍子は釣鐘型をしている場合が多いが、架台上に碍子を倒した状態で載置し、上記の刃は釣鐘型の碍子の側面に押圧する構成となっていた。
【特許文献1】特開2006−334572号
【非特許文献1】環境省 「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」 <インターネットURL http://www.env.go.jp/recycle/poly/plan/180320.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の解体方法では、刃が碍子表面の軸方向に対して平行に配置されており(縦割りする状態)、かつ碍子が陶器製であって堅固であることから、刃が碍子の上を滑ってしまう場合があった。刃が滑ってしまうと碍子を割り損なうばかりでなく、刃の先端に斜めに荷重がかかって欠損を生じたり、碍子位置決め治具に予期しない方向への荷重がかかって折損したりしてしまうおそれがあった。なお、刃を碍子の軸方向に対して直交方向に配置すれば(横割りする状態)、刃が滑ってしまうことを防止できるが、碍子が輪切り状態に分割されるため内部ケーブルを分離することができないという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであり、碍子解体装置の損傷を防止しつつ、碍子と碍子の内部を貫通するケーブルを確実に分離解体することのできる碍子解体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、内部にケーブルを保持した碍子を載置する架台と、上記碍子を架台の上に位置決めする碍子位置決め治具と、上記碍子位置決め治具によって位置決めされた碍子の上方に配置され、刃先が略平坦である1以上の刃と、上記刃を上記碍子に押圧して割裂させる押圧機構とを備えることを特徴とする碍子解体装置が提供される。
【0013】
すなわち、刃の刃先を略平坦としたことにより、刃を碍子に押圧した場合に面接触するため、碍子の表面を極めて滑りにくくすることができる。したがって、刃および碍子位置決め治具の損傷を招くことなく、碍子を確実に割裂して内部のケーブルを分離することができる。
【0014】
上述した解体装置の刃の刃先は碍子表面の湾曲方向において、刃の両端よりも中央部分が後退する方向に湾曲している形状を有していてもよい。これにより碍子の頂点を挟む2点で押圧することとなり、刃の中心に向かって求心力が働くために、刃をさらに滑りにくくすることができる。
【0015】
また碍子は釣鐘型であって、架台上に倒した状態で載置され、刃は複数枚備えられており、碍子の軸に対して略直交して配置された刃と、上述の碍子の軸に対して略平行に配置された刃とを備えていてもよい。軸に直交して配置された刃によれば碍子の中でも特に堅固な部分を確実に割裂させることができるとともに、軸に略平行に配置された刃によれば碍子の長手方向について効率的に割裂させることができる。したがって、これらを適切に組み合わせることにより、様々な碍子を確実に解体することができる。
【0016】
なお「釣鐘型の碍子」とは、一端がケーブルを保持するよう肉厚であって、他端が開口した形状をいう。このとき外径は部位により径の異なる円筒形であって、径が連続的に変化するもののほか、径が段階的に変化するもの(例えば二以上の円筒を継ぎ足した形状)も含めてよい。
【0017】
また「略直交」とは、刃がおおむね直交方向を向いていればよく、厳密に直交しているか否かを問わない趣旨である。同様に「略平行」とは、刃がおおむね軸方向を向いていればよく、厳密に平行であるか否かを問わない趣旨である。
【0018】
碍子は釣鐘型であって、架台上に倒した状態で載置され、刃は複数枚備えられており、碍子の両端に対応する位置に碍子の軸に対して略直交して配置した刃と、直交して配置された刃の間に上記の碍子の軸に対して略平行に配置した刃とを備えていてもよい。碍子は両端が中央部分と比較して堅固であるため、上記のような刃を配置することにより、碍子を容易かつ確実に解体することができる。
【0019】
上述した解体装置における刃は、碍子の軸に対して略直交に配置された刃と、略平行に配置された刃とが交互に配置されていてもよい。これにより、上述の釣鐘型碍子が軸方向に略直交かつ、略平行に解体され、特に碍子の寸法が長い場合にも確実に解体することができる。
【0020】
さらに,上述した解体装置における刃は,碍子の軸に対して略直行に配置された刃の方が,略平行に配置された刃よりも所定量下方にオフセットして取り付けられてもよい。これにより,強度が高い両端部の割裂を先に行い,その後支えを失った中間部のみの解体を行え,さらに容易に解体を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明にかかる碍子解体装置によれば、解体装置に設置された刃の刃先を略平坦にすることによって、刃が碍子の外周を滑ることなく、碍子とその内部に貫通するケーブルとを確実に分離解体することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
(第一実施形態)
旧式の変圧器やコンデンサなどに使用されていたPCBを処理(無害化)するためには、PCBが付着した機器を洗浄する必要がある。しかし、変圧器等の機器は内部に複雑な構造を有しているため、そのまま洗浄しても細かい箇所に浸透したPCBを効率的に洗浄することは困難である。そこでまず、機器を洗浄可能な程度に各部材に分解する必要がある。ここで資源の有効利用の観点から、各部材は再利用可能なものと不可能なものに分離し、可能な限り洗浄後に再利用することが好ましい。
【0024】
変圧器やコンデンサに使用されている碍子は、素材として再利用可能な部材の一つである。しかし碍子には多くの場合ケーブルが接着剤などによって固着されており、これを引き抜くことによって分離させることは困難である。また碍子として多く用いられる陶器は多孔質であるため、PCBが染み込んでいる場合が多い。このため碍子は割裂して解体する必要がある。
【0025】
図1は変圧器200から碍子240を粗解体する手順を示す図である。変圧器200は、ケース210、鉄芯220、巻き線230、碍子240等で構成されている。例えば、一般的に変圧器200はケース210、鉄芯220、巻き線230、碍子240、およびその他部材に解体される。本発明の実施形態である碍子解体装置100の処理対象となる碍子240については、まず内部を貫通するケーブル250ごと碍子240を、固定用ネジを外すことで変圧器200から取外す。取外されたケーブル250付き碍子240は、両端からはみ出ているケーブル250をニッパ260を用いて切断し、次に行う碍子240を解体する工程へと移行させる。
【0026】
図2に本実施形態にかかる碍子解体装置100の外観図を示す。本実施形態にかかる碍子解体装置100は、粗解体した碍子240を載置する架台110と、碍子240を架台110の上に位置決めする碍子位置決め治具120と、碍子位置決め治具120によって位置決めされた碍子240の上方に配置され、刃先が略平坦である1以上の刃130と、上述した刃130を碍子240に押圧して割裂させる押圧機構140とで構成される。さらに、本実施形態にかかる碍子解体装置100には、押圧機構140を作動させる作動スイッチ150と遮蔽扉160とが備えられている。
【0027】
架台110は、押圧機構140による碍子240を解体するため力を支持するものである。このため、架台110は押圧機構140の荷重に耐えるに十分な強度を有している。
【0028】
碍子位置決め治具120は、図2(b)に示すように、架台110の上平面の所定位置に複数の穴110aを設け、この穴110aに選択的にピン270を挿すことで構成されている。このようなピン270は、碍子240の位置を決めると同時に、碍子240の転動も防止する。このようにピン270の位置を変更可能とすることにより、異なる大きさの碍子に対応可能としている。
【0029】
押圧機構140は刃130を碍子240に押圧させる駆動源であり、例えば油圧シリンダや、電動モータ等を用いることができる。押圧機構140による刃130のストロークは、刃130が碍子240を解体できる程度まで下がればよい。
【0030】
作動スイッチ150は碍子解体装置100の両側面に2つ設置されており、2つを同時に作動させなければ、碍子解体装置100の押圧機構140が作動しない構成となっている。これにより、碍子解体装置100を作動させる際には、必ず両手で作動スイッチ150を作動させることとなる。このため作動部に手を入れたまま作動させてしまう可能性が著しく減少し、碍子解体装置100の作動部で手を挟むことを防止することができる。
【0031】
遮蔽扉160は好ましくは透明な樹脂板または樹脂幕であって、碍子解体装置100の前面に開閉可能に設置している。これにより、碍子240を割裂した際に破片が作業者に向かって飛散することを防止することができる。碍子240にはPCBが付着しているため、破片の飛散を防止することにより、作業者の安全を確保し、作業環境の向上を図ることができる。遮蔽扉160の材質に限定はないが、割れた碍子240で遮蔽扉160が壊れない強度を有するとよい。また、作業者から碍子240の割裂状態を目視できる透明な樹脂が好ましく、例えばアクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等を好適に用いることができる。
【0032】
図3(a)は、刃130の配置を示す上面図である。碍子解体装置100を構成する刃130は、碍子240の軸に略直交に配置された横刃130aと、軸と平行に配置された縦刃130bとを備えている。横刃130aは碍子240の両端に対応する位置に2枚配置されており、これらの間に碍子の中心軸と対向して(中心に合わせて)縦刃130bを配置している。
【0033】
碍子240は単なる円筒ではなく、ケーブルを保持する部分は肉厚となっており、また反対側の開口の周囲にも強度を向上させるための肉厚部が設けられている場合が多い。すなわち中間部よりも両端の方が強度が高くなっており、一つの刃で一様に割裂させるのは難しいという問題がある。
【0034】
強度が高い両端部については、横刃130aによって容易かつ確実に割裂させることができる。しかし、仮に横刃130aのみを設置した場合、碍子240が輪切り状態に分割されてしまうため、ケーブルを分離することが困難である。
【0035】
そこで本実施形態では、碍子解体装置100を構成する刃130は、碍子240の両端に対応する位置に2枚の横刃130aを配置し、その間に縦刃130bを配置している。これにより釣鐘型の碍子も容易かつ確実に解体することができる。
【0036】
また図3(a)に示すように、横刃130aの方が縦刃130bよりも所定量だけ下方にオフセットして取り付けられている。これにより横刃130aの方が縦刃130bよりも先に碍子240に押圧され、両端部の割裂が開始される。これにより縦刃は、支えを失った中間部のみを割裂させることとなり、さらに容易に解体を行うことができる。
【0037】
図3(b)は刃130の刃先を説明する拡大図斜視図である。図に示すように、横刃130aおよび縦刃130bの刃先は、略平坦となっている。
【0038】
仮に刃先を鋭利にした場合、碍子240は陶器でできているため、特に縦刃130bは碍子240の表面を滑るおそれがある。縦刃130bが碍子240の表面を滑ってしまうと碍子240を割り損なうおそれがあるばかりか、縦刃130bの先端に斜めに荷重がかかって刃が欠損するおそれがあり、また碍子位置決め治具120に予期しない方向への荷重がかかって折損するおそれがある。
【0039】
そこで本実施形態のように、特に縦刃130bの刃先を略平坦とすることにより、刃を碍子に押圧した場合に面接触するため、碍子の表面を極めて滑りにくくすることができる。したがって、刃および碍子位置決め治具の損傷を招くことなく、碍子を確実に割裂して内部のケーブルを分離することができる。
【0040】
刃130の刃先の厚さ(幅)は、碍子240の外径の10%程度が好ましい。仮に、刃130の刃先の厚さが碍子240の外径に比べて薄すぎる場合、刃130が碍子240の表面を滑ってしまうおそれがある。一方、刃130の刃先の厚さが碍子240の外径に比べて厚すぎる場合、刃130と碍子240の接触面積が広くなるため、碍子240が細かく粉砕されてしまうおそれがある。碍子240が粉砕されると、碍子240解体後のPCBを除去するための洗浄工程で溶媒と粉塵が混合してヘドロ状となり、溶媒の再利用が困難になるため好ましくない。
【0041】
本実施形態にかかる碍子解体装置100を構成する刃130の材質に限定はなく、碍子240を繰り返し割裂しうる剛性と強度を備えていればよい。例えば鋼材、特にステンレス鋼を好適に用いることができる。
【0042】
図4は本実施形態にかかる碍子解体装置100を用いて碍子240を割裂させる使用態様図である。以下に図4を用いて、本実施形態の碍子解体装置100を使用して碍子240を割裂させる手順を説明する。
【0043】
まず碍子解体装置100が作動していないことを確認し、碍子解体装置100の前面に設けられた遮蔽扉160(図2参照)を開扉する。次に図4aに示すように、粗解体された碍子240を、架台110の上に設置された碍子位置決め治具120に設置する。その後、前述した遮蔽扉160を閉扉する。
【0044】
図4(b)に示すように、遮蔽扉160が確実に閉扉されたことを確認した後、両手で作動スイッチ150を作動させる。すると押圧機構140が動作を開始し、押圧機構140に連結した刃130が碍子240に向かって移動する。
【0045】
図4(c)に示すように、刃130が押圧機構140によって碍子240に押圧され、これを割裂させる。押圧機構140のストロークは、碍子240を割裂しうる程度であればよく、例えばケーブル250の上端まででよい。
【0046】
上記説明した如く、本実施形態にかかる碍子解体装置は、刃130および碍子位置決め治具120の損傷を防止しつつ、碍子240とその内部を貫通するケーブルを確実に分離解体することができる。
【0047】
(第二実施形態)
本発明にかかる碍子解体装置100の第二実施形態について説明する。図5は第二実施形態にかかる刃の拡大斜視図であって、上記した第一実施形態と説明が重複する部分については、同一の符号を付して説明する。
【0048】
上記の第一実施形態にかかる碍子解体装置100を構成する刃130の刃先は、略平坦であると説明した。
【0049】
これに対し本実施形態では、刃130の刃先を、碍子表面の湾曲方向において、刃130の両端よりも中央部分が後退する方向に湾曲させている(以下「湾曲刃132」という。)。
【0050】
図5に示すように、湾曲刃132は、横刃130aに相当する直交湾曲刃132aと、縦刃130bに相当する平行湾曲刃132bとから構成される。直交湾曲刃132aは碍子240の軸に対して直交しているため、碍子表面の湾曲に対して長手方向に配置されている。従って直交湾曲刃132aは、刃の長手方向において両端よりも中央が後退する湾曲形状をなしている。平行湾曲刃132bは碍子240の軸と平行であるため、刃の厚み方向において両端(両縁)よりも中央が後退する湾曲形状をなしている。平行湾曲刃132bは、換言すれば、横刃130aの刃先に長手方向の溝が形成されている。
【0051】
上記のような湾曲刃132(直交湾曲刃132a、平行湾曲刃132b)を用いることにより、碍子に押圧すると碍子の頂点を挟む2点で押圧することとなり、刃の中心に向かって求心力が働くために、刃をさらに滑りにくくすることができる。これにより、碍子240に対する刃の滑動が極めて少なくなり、刃および碍子位置決め治具120の破損を極めて効果的に防止することができる。
【0052】
(第三実施形態)
本発明にかかる碍子解体装置100の第三実施形態について説明する。図6は第三実施形態にかかる刃の配置を示す上面図であって、上記した第一実施形態および第二実施形態と説明が重複する部分については、同一の符号を付して説明する。
【0053】
上記の第一実施形態にかかる碍子解体装置100を構成する刃130は、碍子240の両端に対応する位置に横刃130aを2枚、横刃130aの間に1枚の縦刃130bを備えていると説明した。
【0054】
しかし、碍子240の寸法が長い場合、すなわち縦刃130bが長くなってしまうような場合には、碍子の中途部に横刃130aを追加的に配置することでもよい。
【0055】
そこで図6に示すように、本実施形態においては、第一実施形態と同様に碍子240の両端に対応する位置に2枚の横刃130aを配置し、さらにその中途部に1枚以上の横刃130aを配置する(横刃130aは合計3枚以上となる)。そして、これら3枚以上の横刃130aのそれぞれの間に、縦刃130bを配置する。すなわち横刃130aと縦刃130bとは交互に配置される。
【0056】
上記構成によれば、寸法の長い碍子240であっても確実に解体することができる。また、釣鐘型でない矩形の碍子その他不規則な形状をした碍子に対しても、横刃と縦刃を交互に配置することにより効率的に割裂させることができ、作業対象に柔軟性を持たせることができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、上記実施形態では、一度に一つの碍子を解体しているが、複数の刃を並列に設置して、一度に複数の碍子を解体してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、碍子を割裂して分別処理するための解体装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】変圧器から碍子を粗解体する手順を示す図である。
【図2】第一実施形態にかかる碍子解体装置の外観図である。
【図3】第一実施形態にかかる碍子解体装置の刃の配置を示す上面図および刃の拡大斜視図である。
【図4】第一実施形態にかかる碍子解体装置を用いて碍子を割裂させる使用態様図である。
【図5】第二実施形態にかかる刃の拡大斜視図である。
【図6】第三実施形態にかかる刃の配置を示す上面図である。
【符号の説明】
【0061】
100 …碍子解体装置
110 …架台
120 …碍子位置決め治具
130 …刃
130a …横刃
130b …縦刃
132 …湾曲刃
132a …直交湾曲刃
132b …平行湾曲刃
140 …押圧機構
150 …作動スイッチ
160 …遮蔽扉
200 …変圧器
210 …ケース
220 …鉄芯
230 …線
240 …碍子
250 …ケーブル
260 …ニッパ
270 …ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にケーブルを保持した碍子を載置する架台と、
前記碍子を前記架台の上に位置決めする碍子位置決め治具と、
前記碍子位置決め治具によって位置決めされた碍子の上方向に配置され、刃先が略平坦である1以上の刃と、
前記刃を前記碍子に押圧して割裂させる押圧機構とを備えることを特徴とする碍子解体装置。
【請求項2】
前記刃の刃先が、碍子表面の湾曲方向において、刃の両端よりも中央部分が後退する方向に湾曲している形状を有する請求項1記載の碍子解体装置。
【請求項3】
前記碍子は釣鐘型であって、前記架台上に倒した状態で載置され、
前記碍子の軸に対して略直交して配置された刃と、
前記碍子の軸に対して略平行に配置された刃とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の碍子解体装置。
【請求項4】
前記碍子は釣鐘型であって、前記架台上に倒した状態で載置され、
前記碍子の両端に対応する位置に該碍子の軸に対して略直交して配置した刃と、
前記直交して配置された刃の間に前記碍子の軸に対して略平行に配置した刃とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の碍子解体装置。
【請求項5】
前記刃は、前記碍子の軸に対して略直交して配置された刃と、
略平行に配置された刃とが交互に配置されていることを特徴とする請求項3記載の碍子解体装置。
【請求項6】
前記刃は,前記碍子の軸に対して略直行して配置された刃の方が,略平行に配置された刃よりも所定量下方に取り付けられたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の碍子解体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−28652(P2009−28652A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195656(P2007−195656)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591130319)東電環境エンジニアリング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】