確度改善性乾燥剤
サンプル中の分析対象物の濃度を測定するためのバイオセンサシステムは、複数の試験センサを含み、乾燥剤を含む容器を含む。複数の試験センサが、容器中に50℃の温度で二週間密封されたのち容器から取り出され、その後、各試験センサが、少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続されたのち分析対象物を含む複数のサンプルの一つの接触し、複数のサンプルが、10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物濃度を有し、各サンプル中の分析対象物濃度が試験センサ及び計測装置によって計測される場合、各計測される分析対象物濃度のバイアスは±10mg/dL又は±10%の範囲内である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、参照されることによって全体として本明細書に組み込まれる、2010年1月22日出願の「Accuracy Improving Desiccants」と題する米国特許仮出願第61/297,515号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、生物学的流体、たとえば全血、血清、血漿、尿、唾液、間質液又は細胞内液の分析結果を提供する。一般に、バイオセンサは、試験センサ中に存在するサンプルを分析する計測装置を有する。サンプルは一般に、液状の形態にあり、生物学的流体又は生物学的流体の派生物、たとえば抽出物、希釈物、ろ液又は還元凝結物であることができる。バイオセンサによって実施される分析は、生物学的流体中の一つ以上の分析対象物の存在及び/又は濃度を決定する。分析対象物の例は、アルコール、グルコース、尿酸、乳酸、コレステロール、ビリルビン、遊離脂肪酸、トリグリセリド、タンパク、ケトン体、フェニルアラニン又は酵素を含む。分析は、生理学的異常の診断及び治療に有用であることがある。たとえば、糖尿病の個人は、バイオセンサを使用して全血中のグルコースレベルを測定することができ、その情報を自らの食事及び/又は投薬の調節に使用することができる。
【0003】
バイオセンサは、一つ以上の分析対象物を分析するように設計されることができ、様々なサンプル量を使用することができる。一部のバイオセンサは、一滴、たとえば0.25〜15マイクロリットル(μL)量の全血を分析することができる。バイオセンサは、ベンチトップ、ポータブル及び類似の計測装置を使用して実現することができる。ポータブル計測装置は、手持ち型であることができ、サンプル中の一つ以上の分析対象物の同定及び/又は定量を可能にすることができる。ポータブル計測装置の例は、Bayer HealthCare(Tarrytown, New York)のBREEZE(登録商標)及びCONTOUR(登録商標)計を含み、ベンチトップ計測装置の例は、CH Instruments(Austin, Texas)から市販されているElectrochamical Workstationを含む。
【0004】
電気化学的バイオセンサにおいて、分析対象物の濃度は、入力信号がサンプルに印加されたとき、分析対象物又は分析対象物に反応を示す種の、酸化/還元又はレドックス反応によって生成される電気信号から測定される。入力信号は、一つの電気パルスとして印加されることもできるし、多数のパルス、シーケンス又はサイクルとして印加されることもできる。レドックス物質、たとえばメディエータ、酵素又は類似種をサンプルに加えて、レドックス反応中の第一の種から第二の種への電子の移動を強化することもできる。レドックス物質は、一つの分析対象物と反応して、それにより、生成される出力信号の一部分への特異性を提供することができる。
【0005】
電気化学的バイオセンサは、通常、試験センサ中の電気導体と接続する電気接点を有する計測装置を含む。試験センサは、生命体の外側、内側又は部分的な内側での使用に適合されることができる。生命体の外側で使用される場合、生物学的流体のサンプルが試験センサ中のサンプル貯留部に導入される。試験センサは、分析のためにサンプルを、導入する前、導入した後又は導入する間に、計測装置の中に配置することができる。生命体の内側又は部分的に内側にある場合、試験センサを継続的にサンプル中に浸漬しておくこともできるし、サンプルを断続的に試験センサに導入することもできる。試験センサは、サンプルの一定量を部分的に孤立させる貯留部を含むこともできるし、サンプルに通じていることもできる。同様に、サンプルは、試験センサ中を連続的に流れることもできるし、分析のために中断されることもできる。
【0006】
試験センサは、電極を絶縁基板上に配置又はプリントし、一つ以上の導体上に一つ以上の試薬組成物を配置することによって形成することができる。作用電極及び対電極が同じ組成物によってコートされている場合のように、二つ以上の導体が同じ試薬組成物によってコートされることもできる。当業者に公知の多数の技術を使用して、試薬組成物を試験センサ上に配置することができる。試薬組成物は、試薬液として導体上に配置したのち、乾燥させることができる。サンプルが試験センサに導入されると、試薬組成物は再水和し始める。
【0007】
各導体上に配置される試薬組成物は、同じであってもよいし異なってもよい。たとえば、作用電極の試薬組成物は、酵素、メディエータ及びバインダを含むことができ、対電極の試薬組成物は、作用電極のメディエータと同じであってもよいし異なってもよいメディエータ及びバインダのみを含むことができる。試薬組成物は、分析対象物の酸化又は還元を促進するための電離剤、たとえばオキシドレダクターゼ及び分析対象物と作用電極との間の電子の移動を支援するメディエータ又は他の物質を含むことができる。
【0008】
試験センサが使用される前に、試薬組成物の一つ以上の成分が化学的変質を受けることがある。特に、特定の条件下、メディエータの酸化状態が時間とともに変化することがあると考えられる。メディエータ、たとえばフェリシアン化物ならび有機キノン類及びハイドロキノン類は水の存在において還元を受けることがある。試薬組成物中の還元されたメディエータの存在は、センサのバックグラウンド電流の増大を生じさせて、特に分析対象物の低濃度のサンプルの場合、不正確な試験結果を招くおそれがある。
【0009】
一般に、試薬の組成における望ましくない、及び/又は、早期の化学的変質は、試験センサを乾燥剤に近接させて貯蔵することによって抑止される。乾燥剤は、一般に、試薬組成物の劣化を防止して試験センサの所望の貯蔵寿命を維持するために、試験センサの最初のパッケージング、たとえばボトル又はフォイルパウチの中で使用される。試験センサ貯蔵システムのための従来の乾燥剤は、試験センサを収容するパッケージの中に漏入するおそれのある水分(水蒸気)を速やかに吸湿することができる。試験センサを保護するために使用される乾燥剤の例は、低湿度環境下でさえ水分を速やかに吸湿するモレキュラーシーブ(分子篩:molecular sieve)を含む。
【0010】
乾燥剤による試験センサの保護の欠点は、試薬組成物の一つ以上の成分が、組成物中でそれらの機能を保持するために、しきい値レベルの水分を要することがあるということである。たとえば、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ酵素(FAD−GDH)は、その本来の活性配置を維持するために、いくらかの残留水分を要すると考えられる。試薬組成物からの水分のしきい値レベル未満への涸渇は、酵素配座変化及び不活性化を招くおそれがある。
【0011】
試験センサの過度な乾燥化による酵素の活性の損失は、一般に、過剰量の酵素を試薬組成物に含めることによって、又は、酵素を安定化させると考えられる物質を試薬組成物に加えることによって対処される。試験センサの試薬組成物中の酵素を安定化させることができる物質の例は、糖、たとえば、トレハロース又はスクロース及び糖アルコール、たとえば、マンニトール、マルチトール又はソルビトールを含む。これらの物質は、酵素の活性を保存するために凍結乾燥法において使用することができる。たとえばEP1785483A1を参照すること。しかし、酵素又は他の固体、たとえば安定剤の高い配合量が他の難題を呈することもある。酵素成分は一般に高価であるため、酵素の配合量を試験に必要なレベルよりも増すことは望ましくない。加えて、酵素又は他の固体は、特に低めの温度で、サンプルによる試薬組成物の再水和を減速させるので、より長い試験時間を生じさせることがある。分析対象物及び/又は試薬組成物中の他の成分、たとえばメディエータとの相互作用に求められるよりも多い、試験センサ中の過剰な酵素も、また、センサの確度を下げるおそれがある。
【0012】
したがって、改良されたバイオセンサシステム、特にサンプル中の分析対象物の濃度のますます正確な、及び/又は、高精度の測定を提供することができる、及び/又は、ますます短い分析時間を提供することができるバイオセンサシステムの必要性が絶えず存在する。そのうえ、所望の確度、精度、及び/又は、分析時間を提供しながらも、より広い範囲の貯蔵条件で、増大した貯蔵寿命を有する改良されたバイオセンサシステムの必要性が存在する。本発明のシステム、装置及び方法は、従来のバイオセンサシステムに伴う欠点の少なくとも一つを解消する。
【発明の概要】
【0013】
一つの実施態様において、本発明は、サンプル中の分析対象物の濃度を測定するための、複数の試験センサを含むバイオセンサシステムを提供する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体を含み、さらに、作用電極の上、又は、近くに配置された試薬組成物を含む。バイオセンサシステムは、さらに、乾燥剤を含む容器を含む。複数の試験センサが、容器中に50℃の温度で、二週間密封されたのち、容器から取り出され、その後、各試験センサが、少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続されたのち、分析対象物を含む複数のサンプルの一つと接触する。複数のサンプルは、10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有する。各サンプル中の分析対象物の濃度が試験センサ及び計測装置によって計測される場合の、各計測される分析対象物の濃度のバイアス(許容誤差)は、100mg/dL未満の分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±10mg/dLの範囲内であり、そして、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±10%の範囲内である。
【0014】
もう一つの実施態様において、本発明は、サンプル中の分析対象物の濃度を測定するための、複数の試験センサを含むバイオセンサシステムを提供する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体を含み、さらに、作用電極の上又は近くに配置された、レドックス酵素を含む試薬組成物を含む。バイオセンサシステムは、さらに、乾燥剤を含む容器を含む。複数の試験センサが、容器中に50℃の温度で二週間密封されたのち、容器から取り出されたとき、各試験センサの試薬組成物は、レドックス酵素の活性の少なくとも75%を保持する。
【0015】
本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定められ、発明の概要における記述によっては影響されない。
【0016】
以下の図面及び詳細な説明を参照すると、本発明をより良く理解することができる。図面中の構成部品は必ずしも原寸に比例せず、本発明の原理を説明することに重点を置いたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有する全血サンプルの場合の試験センサからの出力信号を表す。試験センサは、モレキュラーシーブ乾燥剤とともに密封しておいたものである。
【図1B】1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有する全血サンプルの場合の試験センサからの出力信号を表す。試験センサは、シリカゲル乾燥剤とともに密封しておいたものである。
【図1C】1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有する全血サンプルの場合の試験センサからの出力信号を表す。試験センサは、乾燥剤なしで密封しておいたものである。
【図2A】50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合の試験バイアスのグラフを表す。
【図2B】50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合の試験バイアスのグラフを表す。
【図3A】様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中に密封されていた試験センサに関する、グルコースを含まない全血サンプルのグルコース試験の場合のバックグラウンド電流のグラフを表す。
【図3B】様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中に密封されていた試験センサに関する、グルコースを含まない全血サンプルのグルコース試験の場合のバックグラウンド電流のグラフを表す。
【図4】様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中に、−20℃、50℃又は室温で二週間貯蔵された試験センサに関するセンサ内の酵素の活性のグラフを表す。
【図5】様々なタイプの乾燥剤とともに50℃の温度で二週間密封されていた試験センサならびに酵素安定剤を有する試薬組成物及び酵素安定剤を有しない試薬組成物に関するセンサ内の酵素の活性(「%酵素回復率」)のグラフを表す。
【図6】試験センサが、試験センサの作用電極上で様々なレベルの酵素密度を有する場合、50℃の温度で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータの、−20℃で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータに対する変化のグラフを表す。
【図7】試験センサを使用して生物学的流体のサンプル中の分析対象物の濃度を測定するバイオセンサの概略図を示す。
【図8】乾燥剤及び複数の試験センサを含む密封容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
バイオセンサシステムは、容器中に残留水分レベルを保持する乾燥剤を有する容器の中に密封された試験センサを含む。低湿度環境において、乾燥剤は水分を速やかには吸湿せず、それが、試験センサの試薬組成物が酵素をその活性構成に維持することに役立つ水分レベルを維持することを許すことができる。そのような乾燥剤を含む容器の中に貯蔵された試験センサは、従来の乾燥剤を含む容器又は乾燥剤を含まない容器の中に貯蔵された比較可能な試験センサよりも、正確及び/又は高精度である分析対象物の濃度の計測値を提供することができる。このように、上記試験センサは、非最適な条件下に長期間貯蔵された場合でさえ、一貫して正確な試験を短い試験時間で提供する。
【0019】
バイオセンサシステムは、それぞれが少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体を含む複数の試験センサ、及び作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物を含む。バイオセンサシステムは、さらに、乾燥剤を含む容器を含む。複数の試験センサは容器の中に密封されている。
【0020】
容器中の乾燥剤は、好ましくは、40℃で10%〜20%相対湿度(RH)の環境と接したとき、水分(水蒸気)重量の最大で15%を吸湿する。より好ましくは、乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で10%を吸湿する。もっとも好ましくは、乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の5%〜10%を吸湿する。
【0021】
40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の5%〜10%を吸湿する乾燥剤の例はシリカゲルを含む。シリカゲルは、0%〜約60%のRH値の場合、周囲環境の相対湿度にほぼ比例するレベルで水分を吸湿することができる。対照的に、試験センサに従来から使用されているモレキュラーシーブ乾燥剤は、10%〜20%のRHを有する環境から多量の水分を速やかに吸湿することができる。モレキュラーシーブは、40℃で5%RHの環境と接したとき、水分重量の15%〜20%を吸湿することができ、その後、相対湿度が高まるとともに、最小量のさらなる水分を吸湿することができる。
【0022】
40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿することができる乾燥剤の例はポリマー配合モレキュラーシーブの組成物を含む。乾燥剤をポリマーとブレンドすることによって乾燥剤の効能を下げることができる。ポリマー中の乾燥剤は部分的にしか環境に暴露されないため、水分の吸湿は、純粋な乾燥剤の吸湿速度よりも低い速度でしか起こらない。40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿することができる乾燥剤のもう一つの例はモレキュラーシーブとシリカゲルとのブレンドを含む。ブレンド中のモレキュラーシーブ及びシリカゲルのタイプ及び相対量の選択が、低い相対湿度でブレンド組成物によって吸湿される全水分の調整を許すことができる。
【0023】
図1A〜1Cは、1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有し、40%のヘマトクリット含有率を有する全血サンプルの場合の試験センサからの出力信号を表す。試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤「モレキュラーシーブ13x」22.5mgを有する容器(図1A)、試験センサ1個あたりシリカゲル30mgを有する溶器(図1B)又は乾燥剤なしの容器(図1C)の中に密封されていた。容器のタイプごとに、各容器の半分量を50℃で二週間貯蔵し、もう半分量を−20℃で二週間貯蔵した。50℃で二週間の熱ストレス環境は、バイオセンサのパーフォーマンスをその貯蔵寿命の最後で評価するために一般に使用される加速ストレス条件である。貯蔵期間ののち、試験センサを使用して全血サンプルの電気化学的試験を実施した。
【0024】
米国特許出願公開公報2008/0173552及び米国特許出願公開公報2009/0145779に記載されているように、計測装置によって試験センサに入力される信号は、ゲート制御された電流測定用パルスシーケンスであり、一つ以上の出力電流値が、サンプルの分析対象物の濃度と相関する。ゲート制御された電流測定用パルスシーケンス及び出力電流値と分析対象物の濃度との相関に関するこれらの特許出願の開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。図1A〜1Cのグラフを生成するために使用されたパルスは、七つの緩和(relaxation)によって分けられた八つの励起(excitation)を含むものであった。第二から第八までの励起は持続時間が約0.4秒であり、第二から第七までの緩和は持続時間が約1秒であった。第二から第八までの励起中、三つの出力電流値を記録した。
【0025】
一つ以上の出力電流値とサンプルの分析対象物の濃度との相関は、分析中の特定の時間における出力電流を、分析対象物を含有する一連の原液中の分析対象物の既知の濃度に対してプロットすることによって作成することができる。入力信号からの出力電流値をサンプルの分析対象物の濃度と相関させるために、励起による初期電流値は、好ましくは、減衰(decay)中でそれに続く電流値よりも大きい。好ましくは、サンプルの分析対象物の濃度と相関した出力電流値は、試験センサの最大運動性能を反映する電流データを含む減衰から取り出される。出力電流の基礎にあるレドックス反応の速度は多数の要因によって影響を受ける。これらの要因は、試薬組成物が再水和する速度、酵素系が分析対象物と反応する速度、酵素系が電子をメディエータに移動する速度及びメディエータが電子を電極に移動する速度を含むことができる。
【0026】
試験センサの最大運動性能は、ゲート制御電流測定シーケンスの励起中、減衰する電流値を有する励起の初期電流値が、多数の励起に関して最大になったとき、到達することができる。好ましくは、試験センサの最大運動性能は、減衰する電流値を有する励起に関して得られた最後の電流値が、多数の励起に関して得られた最大で最後の電流値になったとき、到達する。より好ましくは、試験センサの最大運動性能は、減衰する電流値を有する励起の初期電流値が、多数の励起に関して最大であり、同じ励起に関して得られた最後の電流値が、多数の励起に関して得られた最大の最後の電流値になったとき、到達する。最大運動性能は、減衰する電流値を有する最初の励起において、到達することもできるし、減衰する電流値を有する後続の励起、たとえば第二、第三又は第四以降の励起において到達することもできる。
【0027】
最大運動性能は、分析対象物を含有するサンプルが試験センサと接触したのち、電気化学的に試験センサが、その最大出力電流値を得る時間であるパラメータ「ピーク時間」として表すことができる。最大出力電流値は、好ましくは、サンプルの分析対象物の濃度との相関のために使用される。好ましくは、試験センサのピーク時間は、サンプルを試験センサに導入してから約7秒未満であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約5秒未満である。好ましくは、ピーク時間は、サンプルを試験センサに導入してから約0.4〜7秒の範囲内であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約0.6〜約6.4秒の範囲内であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約1.1〜約3.5秒の範囲内である。
【0028】
図1Aを参照すると、従来の乾燥剤を有する容器の中に密封されていた試験センサは、50℃で二週間貯蔵された場合、−20℃で二週間貯蔵された場合よりも長いピーク時間を有した。対照的に、シリカ乾燥剤とともに密封されたセンサ(図1B)又は乾燥剤なしで密封されたセンサ(図1C)は、50℃で二週間貯蔵された場合、−20℃で二週間貯蔵された場合に対してピーク時間の増加を示さなかった。
【0029】
試験センサのグルコース結果は一般に固定時点における計測電流から導出されるため、試験センサの電流プロフィールの変化は、一貫性を欠くグルコース試験結果を招くことがある。この増大した誤差は、10秒以下のような短めの時間で実施された試験の場合に特に顕著である。図1A〜1Cに関して検査した試験センサの場合、従来の乾燥剤とともに密封された試験センサの電流プロフィールの変化は、バイオセンサのバイアスにおける望ましくない増大を生じさせた。
【0030】
バイオセンサの計測性能はその確度及び/又は精度として決定される。確度及び/又は精度の増大はバイオセンサの計測性能の改善を提供する。確度は、参照分析対象物の表示値に比較した場合の、バイオセンサの分析対象物の表示値のバイアスとして表すことができ、より大きなバイアスがより低い確度を表す。精度は、平均値に対する多数の分析対象物の表示値の間のバイアスの分布又はばらつきとして表すことができる。バイアスとは、バイオセンサから測定された一つ以上の値と、生物学的流体中の分析対象物の濃度に関する一つ以上の承認された参照値と、の間の差である。したがって、計測された分析における一つ以上の誤差は、バイオセンサシステムの測定された分析対象物の濃度にバイアスを生じさせることになる。バイアスは、サンプル中の分析対象物の濃度に依存して「絶対バイアス」又は「%バイアス」として表すことができる。絶対バイアスは、計測の単位、たとえばmg/dLで表すことができ、100mg/dL未満の分析対象物の濃度の場合に使用することができる。%バイアスは、参照値に対する絶対バイアス値の割合として表すことができ、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度の場合に使用することができる。承認された参照値は、参照計器、たとえばYSI Inc.(Yellow Springs, Ohio)から市販されているYSI 2300 STAT PLUS(商標)グルコース分析装置を用いて得ることができる。
【0031】
図2A及び2Bは、40%のヘマトクリット含有率を有し、50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合のバイアス値のグラフを示す。分析に使用された試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x0〜22.5mgを有する容器(図2A)又は試験センサ1個あたりシリカゲル0〜30mgを有する容器の中に密封され、50℃の温度で二週間貯蔵されたものであった。
【0032】
乾燥剤なし(乾燥剤0mg/試験センサ)では、試験センサ熱ストレス後の血中グルコース試験は、低いグルコース量(50mg/dL)を含有するサンプルの場合には15mg/dLの正のバイアスを有し、100mg/dL及び400mg/dLのグルコース濃度を有するサンプルの場合には7〜10%のバイアスを有し、高いグルコース量(600mg/dL)を含有するサンプルの場合にはバイアスをほぼ有しなかった。試験センサを従来のモレキュラーシーブ乾燥剤とともに密封すると(図2A)、低及び正常グルコース量を有するサンプルの場合の正のバイアスが補正されたが、600mg/dLグルコースを有するサンプルの場合の試験バイアスは、乾燥剤レベルが増すとともに−10%及び−15%に増大した。対照的に、30mg/センサのシリカゲルとともに貯蔵されたセンサの場合の試験バイアスは、100mg/dL未満のグルコースを有するサンプルの場合には5mg/dLの範囲内であり、100mg/dL〜600mg/dLのグルコースを有するサンプルの場合には±5%の範囲内であった(図2B)。
【0033】
従来の乾燥剤の存在において50℃で二週間密封された試験センサの場合の試験ピーク時間及び試験バイアスの増大は、乾燥剤なしで、又はより弱いシリカゲル乾燥剤とともに密封されて同様に処理された試験センサの場合の結果と比較した場合、驚くべきものである。一般に、乾燥剤は、試験センサの使用の前に、メディエータをはじめとする試薬層の成分の変質を防ぐために使用されてきた。したがって、特に高いグルコース濃度を有するサンプルを試験する場合、従来の乾燥剤との試験センサの貯蔵が、乾燥剤なしで、又はより活動性が低い乾燥剤とともに貯蔵された同等の試験センサと比べて、試験センサの確度及び/又はその貯蔵寿命を損なうということは予想外であろう。
【0034】
乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサを使用して、一定範囲の濃度にわたる既知の濃度の分析対象物を有するサンプルの分析対象物の含量を計測したのち、実際の濃度に対する計測値のバイアスを計算することによって評価することができる。一例においては、複数の試験センサを、乾燥剤を含む容器中に、50℃の温度で二週間密封する。各試験センサは、少なくとも二つでそのうち一つが作用電極である導体、及び作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物を含む。次いで、試験センサを容器から取り出し、各試験センサを、少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続する。ひとたび接続したならば、各試験センサをサンプルの一つと接触させ、それを使用してサンプル中の分析対象物の濃度を計測する。この例において、10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、各計測される分析対象物の濃度のバイアスは、好ましくは、100mg/dL未満の分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±10mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±10%の範囲内である。「10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度」とは、サンプルの少なくとも一つが10mg/dLの分析対象物の濃度を有し、他のサンプルの少なくとも一つが600mg/dLの分析対象物の濃度を有することをいう。残りのサンプルがあるならば、それらのサンプルは、10mg/dL〜600mg/dLの分析対象物の濃度を有することができる。
【0035】
上記例において、各計測される分析対象物の濃度のバイアスは、好ましくは、100mg/dL未満の分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±7mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±7%の範囲内である。より好ましくは、各計測される分析対象物の濃度のバイアスは、100mg/dL未満の分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±5mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±5%の範囲内である。好ましくは、この例において、複数の試験センサの数は、少なくとも10であり、好ましくは、少なくとも25、少なくとも50又は少なくとも100である。好ましくは、この例において、サンプルは、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有する。
【0036】
乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサを使用して、既知の分析対象物の濃度を有するサンプルの分析対象物の含量を計測したのち、計測値の変動係数(%CV)を計算することによって評価することができる。上記例において、各計測される分析対象物の濃度の%CVは最大で2.5%である。より好ましくは、この例において、各計測される分析対象物の濃度の%CVは最大で2%である。
【0037】
表1は、42%のヘマトクリット含有率を有し、50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合の%CVを一覧にしたものである。試験に使用された試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x0〜22.5mgを有する容器又は試験センサ1個あたりシリカゲル0〜30mgを有する容器の中に密封され、50℃で二週間貯蔵されたものであった。一覧にした各結果は10個の試験センサに基づく。
【0038】
【表1】
【0039】
表2は、試験センサを−20℃で二週間貯蔵した場合の、表1に記載されたグルコース試験の場合の%CVを一覧にしたものである。一覧にした各結果は10個の試験センサに基づく。
【0040】
【表2】
【0041】
乾燥剤なし(乾燥剤0mg/試験センサ)では、試験センサ熱ストレス(50℃で二週間)後の血中グルコース試験は、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合で1.3〜2.4%の変動係数を示した。試験センサを従来のモレキュラーシーブ乾燥剤(7.5又は22.5mg/試験センサ)又はシリカゲル10.0mg/試験センサとともに密封しても、血中グルコース試験の%CVの上限は下がらなかった。しかし、試験センサをシリカゲル30.0mg/試験センサとともに密封すると、血中グルコース試験の%CVの上限は1.5%に低下した。また、試験センサを−20℃で二週間貯蔵した場合にも、血中グルコース試験に関して同様な傾向が計測された。両方の貯蔵条件のセットの場合、シリカゲル30.0mg/試験センサとともに密封された試験センサを使用して実施された血中グルコース試験は、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合で2.1%未満の%CV値を示した。
【0042】
図3A及び3Bは、グルコースを含まない全血サンプルのグルコース試験の場合のバックグラウンド電流のグラフを表す。試験に使用された試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x0〜22.5mgを含有する容器(図3A)又は試験センサ1個あたりシリカゲル0〜30mgを有する容器(図3B)の中に密封され、−20℃、室温(「RT」25℃)又は50℃で二週間貯蔵されたものであった。サンプルはグルコースを含有しなかったため、計測されたバックグラウンド電流は、還元された酸化状態にある物質、たとえば還元されたメディエータの存在によるものである。
【0043】
容器中に、乾燥剤なしで貯蔵された試験センサは、熱ストレス後、バイオセンサバックグラウンド電流の大きな増大を示した。これは、乾燥剤が、おそらくはメディエータの自己還元を防ぐことにより、試験センサ中に低いバックグラウンド電流を維持するのに重要であるという従来の理論と合致している。図2A及び2Bに示す低グルコース量のサンプルの場合、センサバックグラウンド電流の増大が正の試験バイアスに寄与したかもしれない。従来のモレキュラーシーブ乾燥剤の存在において貯蔵された試験センサ(図3A)は、低いバックグラウンド電流を維持するのに、シリカゲルの存在において貯蔵された試験センサの場合(図3B)よりも少ない乾燥剤しか要しなかった。したがって、従来の乾燥剤は、メディエータの早期還元を阻止するというその所期の機能を達成すると思われた。
【0044】
図1〜6で使用された試験センサの試薬組成物中のメディエータは、2電子移動メディエータ3−(2′,5′−ジスルホフェニルイミノ)−3H−フェノチアジンビスナトリウム塩であった。試験センサの貯蔵中の水分の認められる効果は、他の2電子移動メディエータ、たとえば他の有機キノン類及びヒドロキノン類にも当てはまると考えられる。そのようなメディエータの例は、フェナントロリンキノン、フェノチアジン及びフェノキサジン誘導体、たとえば3−フェニルイミノ−3H−フェノチアジン類(PIPT)及び3−フェニルイミノ−3H−フェノキサジン類(PIPO)、3−(フェニルアミノ)−3H−フェノキサジン類、フェノチアジン類ならびに7−ヒドロキシ−9,9−ジメチル−9H−アクリジン−2−オン及びその誘導体を含む。試験センサの貯蔵中の水分の認められる効果はまた、1電子移動メディエータ、たとえば1,1′−ジメチルフェロセン、フェロシアン化物及びフェリシアン化物、ルテニウム(III)及びルテニウム(II)ヘキサアミンにも当てはまると思われる。
【0045】
ピーク時間、バイアス及び/又は精度に関する驚くべき結果に考えられる一つの説明は、より活動性が低い乾燥剤が予想外に高いレベルで酵素を保護することができるということである。シリカゲルのような、より活動性が低い乾燥剤は、従来の乾燥剤よりもFAD−GDH酵素との適合性が高いと思われたが、それでも、メディエータのための十分な保護を提供した。特に高グルコース量サンプルの場合、これまで、試験バイアスに対する酵素の活性の損失の影響が過小評価されていたのかもしれない。
【0046】
図4は、様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中に、−20℃(菱形記号)、50℃(三角形記号)又は室温(四角形記号)で二週間貯蔵された試験センサに関するセンサ内FAD−GDH酵素の活性のグラフを示す。黒塗りの記号は従来のモレキュラーシーブ乾燥剤に対応し、白抜きの記号はシリカゲル乾燥剤に対応する。いずれの乾燥剤も−20℃では酵素の活性の損失が認められないように示されている。乾燥剤なし(乾燥剤0mg/センサ)でパッケージングされたセンサの場合、50℃で二週間の貯蔵ののち、センサの酵素の活性の約10%の損失が生じた。モレキュラーシーブとともにパッケージングされたセンサの場合(黒塗りの三角記号)、センサ1個あたり乾燥剤7mgの相対的に低いレベルでさえ、酵素の活性は約60%に低下した。対照的に、シリカゲルとともにパッケージングされたセンサの酵素の活性は約25%高く、75〜80%の酵素の活性を維持した(白抜きの三角形記号)。室温でさえ、モレキュラーシーブとともにパッケージングされた試験センサ(黒塗りの四角形記号)は、シリカゲルとともに貯蔵された試験センサの場合(白抜きの四角形記号)よりも約5%低い酵素の活性を示した。
【0047】
図4の結果は、図1〜3の結果と組み合わさると、FAD−GDH酵素がその本来の構造及び活性を維持するためにしきい値レベルの水分を必要とするという分析と合致している。600mg/dLグルコースの場合の、モレキュラーシーブ乾燥剤の増加とともに起こる負のバイアスの増大(図2A)は、モレキュラーシーブ乾燥剤とともに貯蔵された試験センサの場合のFAD−GDH酵素の活性のほぼ40%の損失(図4)と相関した。対照的に、600mg/dLグルコースの場合の、シリカゲル乾燥剤の増加とともに起こる相対的に一定かつゼロに近いバイアス(図2B)は、シリカゲル乾燥剤とともに貯蔵された試験センサの場合のFAD−GDH酵素の活性のわずか20〜25%の損失(図4)と相関した。
【0048】
図5は、50℃で二週間密封されていた試験センサ、様々なタイプの乾燥剤を有する容器ならびに酵素安定剤ソルビトールを有する試薬組成物及び酵素安定剤ソルビトールを有しない試薬組成物の場合のセンサ内FAD−GDH酵素の活性(「%酵素回復率」)のグラフを示す。使用された乾燥剤は、シリカゲル(SG)、モレキュラーシーブ13x(MS−13x)、モレキュラーシーブ4Aを含有するボトルスリーブ(Bottle−MS)ならびに二つの異なるポリマー配合乾燥剤、すなわちモレキュラーシーブでコートされたポリプロピレンフィルム(SLF/MS)及びシリカゲルでコートされたポリプロピレンフィルム(SLF/SG)であった。ポリマー配合乾燥剤はMultisorb Technologies(Buffalo, NY)から得たものであった。
【0049】
水、80ミリモル(mM)3−(2′,5′−ジスルホニルイミノ)−3H−フェノチアジンビスナトリウム塩メディエータ、1マイクロリットルあたり3.75酵素単位FAD−GDH、0.2%(w/w)重量平均分子量(Mw)300,000のヒドロキシエチレンセルロース(HEC)バインダ、0.362%(w/w)Mw90,000のHECバインダ、112.5mM Na2HPO4バッファ塩、0.225%(w/w)N−オクタノイル−N−メチル−D−グルカミン(MEGA-8)及び0.01%(w/w)タウリン酸ナトリウムメチルココイル(Geropon TC-42)を含む試薬液を塗布し、乾燥させることにより、「PD18コントロール(PD18-control)」及び「PD16コントロール(PD18-control)」と標識した、試験センサのための試薬組成物を形成した。試薬液が0.4%(w/w)ソルビトールをも含むことを除いて「PD18コントロール」と標識されたセンサの場合と同様に、「PD18+0.4%ソルビトール」と標識された試験センサのための試薬組成物を形成した。
【0050】
純粋なモレキュラーシーブ乾燥剤(MS−13x)又はボトル乾燥剤スリーブ(Bottle−MS)とともに貯蔵された試験センサは酵素の活性の約30%の低下を示したが、シリカゲル乾燥剤(SG)とともに貯蔵された試験センサは15%の低下しか示さなかった。0.4%ソルビトールによる酵素の安定化が酵素の活性の損失を減らした。しかし、ここでもまた、モレキュラーシーブ乾燥剤とともに貯蔵された試験センサは2倍の量の酵素不活性化を許した。純粋なモレキュラーシーブ乾燥剤又はシリカゲル乾燥剤とともに貯蔵されたPD18コントロール試験センサとPD16コントロール試験センサとの間の酵素回復率の差は実験誤差の範囲内であると考えられる。
【0051】
モレキュラーシーブ乾燥剤とポリプロピレンとのブレンド(SLF/MS)は、シリカゲル乾燥剤によって提供されるものと同等の酵素の活性の保持力を提供した。このように、モレキュラーシーブの乾燥能力の阻害が、酵素が熱ストレスがかかる中でその活性を保持することを可能にした。また、シリカゲルの乾燥能力が阻害された。試験確度の低下は、熱ストレスがかかる中の水分から他の試薬組成物成分を保護することの欠如に関連づけることができる。
【0052】
乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサが様々な条件で貯蔵されたのち、保持されている試験センサの試薬組成物中のレドックス酵素の活性を計測することによって評価することができる。一例において、複数の試験センサを、乾燥剤を含む容器中に、50℃の温度で二週間密封する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び作用電極の上又は近くに配置されたレドックス酵素を含む試薬組成物を含む。次いで、試験センサを容器から取り出し、各試験センサの試薬組成物中のレドックス酵素の活性を計測する。この例において、各試験センサの試薬組成物は、好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも75%を保持する。より好ましくは、この例において、各試験センサの試薬組成物は、好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも80%を保持し、より好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも85%を保持する。好ましくは、この例において、複数の試験センサの数は、少なくとも10であり、好ましくは、少なくとも25、少なくとも50又は少なくとも100である。
【0053】
一つ以上の出力電流値、たとえば図1A〜1Cに示す出力電流値とサンプルの分析対象物の濃度との相関は、計測における誤差を考慮するように調節することもできる。バイオセンサ分析に関連する誤差を補正するための一つの手法は、出力電流値の中間電流値から抽出される指数関数によって出力電流値からサンプル中の分析対象物の濃度を測定するための相関を調節することである。指数関数は、出力電流値から分析対象物の濃度を測定するための相関を、測定される分析対象物の濃度のバイアスを生じさせるおそれのある分析における一つ以上の誤差に関して補正することができる。指数関数は、分析における一つ以上の誤差による、分析対象物の濃度と出力電流値との間の相関における%バイアスに対応する。
【0054】
グルコース試験%バイアスは、一つ以上の誤差パラメータから得られる一つ以上のΔS値によって表すことができる。ΔS値は、一つ以上の誤差パラメータから決定される、分析対象物の濃度と出力電流値との間の相関の傾斜偏差を表す。相関の傾斜は、サンプルのグルコース濃度の所与の変化に関する出力電流の変化に対応する。傾斜又は傾斜の変化に対応する指数関数を正規化して、出力電流値の変化の統計的効果を減らし、出力電流値の変動の微分を改善し、出力電流値の計測を標準化し、それらを組み合わせて実施すること、などができる。調節された相関は、生物学的サンプル中の分析対象物の濃度を出力電流値から測定するために使用することができ、従来のバイオセンサに比較して改善された確度及び/又は精度を有することができる。指数関数及びΔS値を使用する誤差補正は、たとえば、米国特許出願公開公報2009/0177406及び2009年12月8日出願の「Complex Index Functions」と題する国際特許出願PCT/US2009/067150号に記載されている。指数関数及びΔS値を使用する誤差補正に関するこれらの特許出願の開示は参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0055】
したがって、ΔS/Sを表す指数関数を使用して、サンプルグルコース濃度に応答する出力電流値をサンプルの補正グルコース濃度に変換することができる。あるいはまた、指数関数及び等式、たとえばGcorr=Graw/(1+f(Index))(式中、Gcorrは、サンプルの補正グルコース濃度であり、Grawは、補正なしのサンプルの測定分析対象物の濃度であり、f(Index)は指数関数である)を使用して、非補正グルコース濃度値から補正グルコース濃度値を決定することもできる。
【0056】
指数関数は、出力信号、たとえば図1A〜1Cに示す出力信号から抽出される比を含むことができる。たとえば、R3=i3,3/i3,1(式中、i3,3は、第三の信号減衰に関して記録された第三の電流値を示し、i3,1は、第三の信号減衰に関して記録された第一の電流値を示す)のように、個々のパルス信号減衰サイクル内で出力信号値を比較することができる。もう一つの例においては、R4/3=i4,3/i3,3(式中、i4,3は、第四の信号減衰に関して記録された第三の電流値を示す)のように、別々のパルス信号減衰サイクルの間で出力信号値を比較することもできる。指数関数は、出力信号から抽出された各比(ratios)の組み合わせを含むことができる。一例において、指数関数は、各比(ratios)の簡単な比(ratio)、たとえばRatio3/2=R3/R2を含むことができる。もう一つの例において、指数関数は、より簡単な指数関数のより複雑な組み合わせを含むこともできる。たとえば、指数関数Index-1をIndex-1=R4/3−Ratio3/2として表すこともできる。もう一つの例においては、指数関数Index-2をIndex-2=(R4/3)p−(Ratio3/2)q(式中、p及びqは、独立して、正の数である)で表すこともできる。
【0057】
好ましくは、指数関数は、ヘマトクリット含有率の変動に関連する誤差を補正する。たとえば、従来のバイオセンサシステムは、サンプルの実際のヘマトクリット含有率にかかわらず、全血サンプルの場合で40%(v/v)ヘマトクリット含有率を仮定してグルコース濃度を報告するように構成されていることがある。これらのシステムにおいて、40%未満又は40%超のヘマトクリットを含有する血液サンプルに対して実施されるグルコース計測は誤差を含み、したがって、ヘマトクリット効果に起因するバイアスを有する。
【0058】
ヘマトクリット含有率の変動に伴う誤差を補正する指数関数の計算は、ヘマトクリット含有率とともに変化する出力信号を生成する試験センサを使用することによって容易にすることができる。一部のバイオセンサの場合、R5/4比パラメータが、サンプル中のヘマトクリットの指標として働き、計測分析対象物の濃度を、サンプル中のヘマトクリット含有率を考慮して調節するために使用されている。R5/4比パラメータは、図1A〜1Cのゲート制御電流測定パルスシーケンスの4番目及び5番目のパルスに応答して分析対象物によって生成された電流の間の関係を表す。
【0059】
図6は、試験センサが、試験センサの作用電極上で異なるレベルの酵素密度を有する場合の、50℃で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータの、−20℃で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータに対する変動のグラフを示す。二つのタイプのデータ点は二つの異なるアニオン界面活性剤Phospholan CS131(ノニルフェノールエトキシレートホスフェート)及びGeropon TC-42を表す。
【0060】
高めの酵素濃度において、50℃で貯蔵した試験センサと−20℃で貯蔵した試験センサとでR5/4比パラメータの間の差は小さかった。この傾向は、試薬組成物に使用された両タイプのアニオン界面活性剤に関して明白であった。R5/4比パラメータは、分析対象物の計測値を補正するための指数関数における変数として使用することができるため、環境要因によるパラメータの低めの変動が望ましい。したがって、より活動性が低い乾燥剤によって提供される酵素の活性の保持力の増大は、補正率の可変性を減らすというさらなる恩典を提供することができる。
【0061】
図1〜6で使用された試験センサの試薬組成における酵素はFAD−GDH酵素であった。試験センサの貯蔵中の残留水分の認められる効果は、他の酵素、たとえばアルコールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、β−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ(GOx)、グルコースデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ及び3−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼにも当てはまると考えられる。
【0062】
好ましい酵素系は酸素非依存性であり、したがって、実質的に酸素によって酸化されない。一つのそのような酸素非依存性酵素ファミリーがグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である。様々な補酵素又は補因子を使用すると、GDHは、様々なメディエータによって異なるやり方で媒介されることができる。GDHとの関連に依存して、FAD−GDHの場合のように、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)のような補因子をホスト酵素によって堅く保持することもできるし、PQQ−GDHの場合のように、ピロロキノリンキノン(PQQ)のような補因子をホスト酵素に共有結合させることもできる。これらの酵素系それぞれにおける補因子は、ホスト酵素又は補酵素によって永久的に保持されることができ、酵素系が試薬液に加えられる前にアポ酵素が再構成されることができる。補酵素はまた、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD/NADH+の場合又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NADP/NADPH+をNAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(NAD−GDH)と組み合わせた場合のように、ホスト酵素の触媒機能を支援するために、独立して試薬液中のホスト酵素部分に加えることもできる。
【0063】
試験センサのための試薬組成物又は試薬組成物を形成するための試薬液の成分は、たとえば、米国特許出願公開公報2009/0178936及び2009年12月7日出願の「Low Total Salt Reagent Compositions And Systems For Biosensors」と題する国際特許出願PCT/US2009/066963に記載されている。試薬組成物を形成するための試薬組成物成分及び液に関するこれらの特許出願の開示は参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0064】
試験センサ中の酵素の活性及び試験センサの試験性能の両方が、センサの容器中に使用される乾燥剤のタイプによって影響されると思われる。水分重量の最大で15%を吸湿する、又は水分重量の最大で10%又は5%〜10%を吸湿する乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接すると、酵素をその活性状態に保持することを可能にする残留水分レベルを試薬組成物中に提供することができる。対照的に、モレキュラーシーブのような活動性の乾燥剤による試薬組成物の過度の乾燥は酵素不活性化を招くおそれがある。より活動性が低い乾燥剤は、パッケージ中の湿度レベルが20%RHを超えたときのみ雰囲気から水を吸湿することにより、試験センサの容器中のメディエータと酵素とで正反対の水分要件を均衡させることができる。したがって、より活動性が低い乾燥剤は、酵素の活性に悪影響を及ぼすことなく、メディエータを高い水分から保護することができる。
【0065】
図7は、試験センサを使用して生物学的流体のサンプル中の分析対象物の濃度を測定するバイオセンサ700の略図を示す。バイオセンサ700は、計測装置702及び試験センサ704を含み、これらは、ベンチトップ装置、ポータブル又は手持ち装置などを含む分析計器として実現することができる。バイオセンサ700は、グルコース、尿酸、乳酸、コレステロール、ビリルビンなどの濃度を含む分析対象物の濃度を測定するために使用することができる。特定の構成が示されているが、バイオセンサ700は、さらなる構成部品を有するものを含め、他の構成を有することもできる。
【0066】
試験センサ704は、貯留部708及び開口712付きの流路710を形成するベース706を有する。貯留部708及び流路710は、通気口712付きのふたによって覆われることもできる。貯留部708は、部分的に閉じ込められた容積を画定する。貯留部708は、液体サンプルの保持を支援する組成物、たとえば水膨潤性ポリマー又は多孔性ポリマーマトリックスを含むことができる。試薬を貯留部708及び/又は流路710の中に置くことができる。作用電極707における試薬組成物は、低総塩量試薬組成物を含み、一つ以上の酵素系、メディエータ及び類似種を含むことができる。対電極705は、同じ又は異なる試薬組成物、好ましくは酵素系を欠く試薬組成物を使用して形成することができる。試験センサ704はまた、貯留部708に隣接して配置されたサンプルインタフェース714を有することができる。サンプルインタフェース714は貯留部708を部分的又は完全に包囲することができる。試験センサ704は他の構成を有することもできる。
【0067】
サンプルインタフェース714は、作用電極707及び対電極705に接続された導体709を有する。電極は、実質的に同じ面にあってもよいし、二つ以上の面にあってもよい。電極704、705は、ベース706の、貯留部708を形成する面に配置されることができる。電極704、705は、貯留部708の中に延びる、又は突出することもできる。誘電層が導体709及び/又は電極704、705を部分的に覆うこともできる。サンプルインタフェース714は他の電極及び導体を有することもできる。
【0068】
計測装置702は、センサインタフェース718及びディスプレイ720に接続された電気回路716を含む。電気回路716は、信号生成器724、省略可能な温度センサ726及び記憶媒体728に接続されたプロセッサ722を含む。
【0069】
信号生成器724は、プロセッサ722に応答して電気入力信号をセンサインタフェース718に提供する。電気入力信号は、センサインタフェース718により、電気入力信号を生物学的流体のサンプルに印加するためのサンプルインタフェース714に送信されることができる。電気入力信号は、電位又は電流であることができ、多数のパルス、シーケンス又はサイクルとして印加することができる。信号生成器724はまた、生成器・記録器として、センサインタフェースからの出力信号を記録することができる。
【0070】
省略可能な温度センサ726は、試験センサ704の貯留部中のサンプルの温度を測定する。サンプルの温度は、計測することもできるし、出力信号から計算することもできるし、周囲温度又はバイオセンサシステムを実現する装置の温度の計測値と同じ又は同程度と推定することもできる。温度は、サーミスタ、温度計、赤外センサ、サーモパイル又は他の温度感知装置を使用して計測することができる。他の技術を使用してサンプル温度を測定することもできる。
【0071】
記憶媒体728は、磁気、光学又は半導体メモリ、別の記憶装置などであることができる。記憶媒体728は、固定メモリ装置、リムーバブルメモリ装置、たとえばメモリカード、遠隔アクセス媒体などであることができる。
【0072】
プロセッサ722が、記憶媒体728中に記憶されたコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコード及びデータを使用して分析対象物の分析及びデータ処理を実施する。プロセッサ722は、センサインタフェース718における試験センサ704の存在、試験センサ704へのサンプルの塗布、ユーザ入力などに応答して分析対象物の分析を開始することができる。プロセッサ722は、信号生成器724に対し、電気入力信号をセンサインタフェース718に提供するよう命令する。プロセッサ722は、省略可能な温度センサ726からサンプル温度を受けることもできる。プロセッサ722はセンサインタフェース718から出力信号を受ける。出力信号は、貯留部708中の分析対象物のレドックス反応に応答して生成される。
【0073】
プロセッサ722は、好ましくは、出力信号を計測して励起からの電流値を得る。初期電流値は、その後の減衰中及びサンプルを試験センサ704に導入してから約3秒未満内の電流値よりも大きい。より好ましくは、プロセッサ722は、出力信号を計測して、704においてサンプルを試験センサに導入してから約3秒未満内の電流値を得、第一の電流値に続く電流値が低下し続ける励起から記録される第一の電流値を得る。さらに好ましくは、プロセッサ722は、出力信号を計測して、704においてサンプルを試験センサに導入してから約3秒未満内の電流値を得、第一の電流値に続く電流値が低下し続ける励起から記録される第一の電流値を得、試験センサの最大運動性能中の電流値を得る。
【0074】
一つ以上の得られた電流値は、プロセッサ722中で一つ以上の相関式を使用して、サンプルの分析対象物の濃度と相関させられる。分析対象物の分析の結果は、ディスプレイ720に出力することもできるし、記憶媒体728に記憶することもできる。好ましくは、分析対象物の分析の結果は、サンプルを試験センサに導入してから5秒以内にディスプレイ720に出力され、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから3秒以内にディスプレイ720に出力される。
【0075】
分析対象物の濃度及び出力電流値に関する相関式は、図式的に、数学的に、それらの組み合わせなどによって示すことができる。相関式は、記憶媒体728に記憶されているプログラム番号(PNA)テーブル、別のルックアップテーブルなどによって示すことができる。分析対象物の試験の実施に関する命令は、記憶媒体728に記憶されたコンピュータ読み取り可能なソフトウェアコードによって提供されることができる。コードは、本明細書に記載される機能性を記述又は制御するオブジェクトコード又は他のコードであることができる。分析対象物の分析からのデータは、プロセッサ722中での減衰率、K定数、比などの決定を含む一つ以上のデータ処理に付すことができる。
【0076】
センサインタフェース718は、試験センサ704のサンプルインタフェース714中の導体709と接続又は電気的に連絡する接点を有する。センサインタフェース718は、接点を介して信号生成器724からの電気入力信号をサンプルインタフェース714中の導体709に伝達する。センサインタフェース718はまた、接点を介してサンプルからの出力信号をプロセッサ722及び/又は信号生成器724に伝達する。
【0077】
ディスプレイ720はアナログ又はデジタルであることができる。ディスプレイは、LCD、LED、OLED又は数値の表示値を表示するように適合された他のディスプレイであることができる。
【0078】
使用中、サンプルを開口712に導入することにより、分析のためのサンプルが貯留部708の中に移送される。サンプルは、事前に含まれていた空気を押し出しながら流路710中を流れて貯留部708を満たす。サンプルは、流路710及び/又は貯留部708中に置かれた試薬と化学反応する。好ましくは、サンプルは流体であり、より好ましくは液体である。
【0079】
試験センサ704は計測装置702に隣接して配置される。隣接とは、サンプルインタフェース714がセンサインタフェース718と電気的に連絡する位置を含む。電気的連絡とは、センサインタフェース718中の接点とサンプルインタフェース714中の導体709との間の入力及び/又は出力信号の有線又は無線の伝送を含む。
【0080】
図8は、乾燥剤及び複数の試験センサ830を含む容器810を含むバイオセンサシステム800を示す。容器810は、試験センサ830を容器810中に密封することができる栓812を含む。容器810は、容器中の別個のパッケージ中に乾燥剤820を含むことができる。容器810は、栓812の中に乾燥剤822を含むこともできる。容器810は、容器の壁の中に乾燥剤824を含むこともできる。容器810は、容器の底に乾燥剤826を含むこともできる。容器810は、プラスチック、金属箔及び/又はガラスを含む多様な材料でできていることができる。容器810中の乾燥剤の量及びタイプは、所定の水分レベルを容器中に提供するように選択することができる。
【0081】
本発明の様々な実施態様を記載したが、当業者には、本発明の範囲内で他の実施態様及び具現化が可能であることが明かであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物に照らして以外、限定されない。
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、参照されることによって全体として本明細書に組み込まれる、2010年1月22日出願の「Accuracy Improving Desiccants」と題する米国特許仮出願第61/297,515号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、生物学的流体、たとえば全血、血清、血漿、尿、唾液、間質液又は細胞内液の分析結果を提供する。一般に、バイオセンサは、試験センサ中に存在するサンプルを分析する計測装置を有する。サンプルは一般に、液状の形態にあり、生物学的流体又は生物学的流体の派生物、たとえば抽出物、希釈物、ろ液又は還元凝結物であることができる。バイオセンサによって実施される分析は、生物学的流体中の一つ以上の分析対象物の存在及び/又は濃度を決定する。分析対象物の例は、アルコール、グルコース、尿酸、乳酸、コレステロール、ビリルビン、遊離脂肪酸、トリグリセリド、タンパク、ケトン体、フェニルアラニン又は酵素を含む。分析は、生理学的異常の診断及び治療に有用であることがある。たとえば、糖尿病の個人は、バイオセンサを使用して全血中のグルコースレベルを測定することができ、その情報を自らの食事及び/又は投薬の調節に使用することができる。
【0003】
バイオセンサは、一つ以上の分析対象物を分析するように設計されることができ、様々なサンプル量を使用することができる。一部のバイオセンサは、一滴、たとえば0.25〜15マイクロリットル(μL)量の全血を分析することができる。バイオセンサは、ベンチトップ、ポータブル及び類似の計測装置を使用して実現することができる。ポータブル計測装置は、手持ち型であることができ、サンプル中の一つ以上の分析対象物の同定及び/又は定量を可能にすることができる。ポータブル計測装置の例は、Bayer HealthCare(Tarrytown, New York)のBREEZE(登録商標)及びCONTOUR(登録商標)計を含み、ベンチトップ計測装置の例は、CH Instruments(Austin, Texas)から市販されているElectrochamical Workstationを含む。
【0004】
電気化学的バイオセンサにおいて、分析対象物の濃度は、入力信号がサンプルに印加されたとき、分析対象物又は分析対象物に反応を示す種の、酸化/還元又はレドックス反応によって生成される電気信号から測定される。入力信号は、一つの電気パルスとして印加されることもできるし、多数のパルス、シーケンス又はサイクルとして印加されることもできる。レドックス物質、たとえばメディエータ、酵素又は類似種をサンプルに加えて、レドックス反応中の第一の種から第二の種への電子の移動を強化することもできる。レドックス物質は、一つの分析対象物と反応して、それにより、生成される出力信号の一部分への特異性を提供することができる。
【0005】
電気化学的バイオセンサは、通常、試験センサ中の電気導体と接続する電気接点を有する計測装置を含む。試験センサは、生命体の外側、内側又は部分的な内側での使用に適合されることができる。生命体の外側で使用される場合、生物学的流体のサンプルが試験センサ中のサンプル貯留部に導入される。試験センサは、分析のためにサンプルを、導入する前、導入した後又は導入する間に、計測装置の中に配置することができる。生命体の内側又は部分的に内側にある場合、試験センサを継続的にサンプル中に浸漬しておくこともできるし、サンプルを断続的に試験センサに導入することもできる。試験センサは、サンプルの一定量を部分的に孤立させる貯留部を含むこともできるし、サンプルに通じていることもできる。同様に、サンプルは、試験センサ中を連続的に流れることもできるし、分析のために中断されることもできる。
【0006】
試験センサは、電極を絶縁基板上に配置又はプリントし、一つ以上の導体上に一つ以上の試薬組成物を配置することによって形成することができる。作用電極及び対電極が同じ組成物によってコートされている場合のように、二つ以上の導体が同じ試薬組成物によってコートされることもできる。当業者に公知の多数の技術を使用して、試薬組成物を試験センサ上に配置することができる。試薬組成物は、試薬液として導体上に配置したのち、乾燥させることができる。サンプルが試験センサに導入されると、試薬組成物は再水和し始める。
【0007】
各導体上に配置される試薬組成物は、同じであってもよいし異なってもよい。たとえば、作用電極の試薬組成物は、酵素、メディエータ及びバインダを含むことができ、対電極の試薬組成物は、作用電極のメディエータと同じであってもよいし異なってもよいメディエータ及びバインダのみを含むことができる。試薬組成物は、分析対象物の酸化又は還元を促進するための電離剤、たとえばオキシドレダクターゼ及び分析対象物と作用電極との間の電子の移動を支援するメディエータ又は他の物質を含むことができる。
【0008】
試験センサが使用される前に、試薬組成物の一つ以上の成分が化学的変質を受けることがある。特に、特定の条件下、メディエータの酸化状態が時間とともに変化することがあると考えられる。メディエータ、たとえばフェリシアン化物ならび有機キノン類及びハイドロキノン類は水の存在において還元を受けることがある。試薬組成物中の還元されたメディエータの存在は、センサのバックグラウンド電流の増大を生じさせて、特に分析対象物の低濃度のサンプルの場合、不正確な試験結果を招くおそれがある。
【0009】
一般に、試薬の組成における望ましくない、及び/又は、早期の化学的変質は、試験センサを乾燥剤に近接させて貯蔵することによって抑止される。乾燥剤は、一般に、試薬組成物の劣化を防止して試験センサの所望の貯蔵寿命を維持するために、試験センサの最初のパッケージング、たとえばボトル又はフォイルパウチの中で使用される。試験センサ貯蔵システムのための従来の乾燥剤は、試験センサを収容するパッケージの中に漏入するおそれのある水分(水蒸気)を速やかに吸湿することができる。試験センサを保護するために使用される乾燥剤の例は、低湿度環境下でさえ水分を速やかに吸湿するモレキュラーシーブ(分子篩:molecular sieve)を含む。
【0010】
乾燥剤による試験センサの保護の欠点は、試薬組成物の一つ以上の成分が、組成物中でそれらの機能を保持するために、しきい値レベルの水分を要することがあるということである。たとえば、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ酵素(FAD−GDH)は、その本来の活性配置を維持するために、いくらかの残留水分を要すると考えられる。試薬組成物からの水分のしきい値レベル未満への涸渇は、酵素配座変化及び不活性化を招くおそれがある。
【0011】
試験センサの過度な乾燥化による酵素の活性の損失は、一般に、過剰量の酵素を試薬組成物に含めることによって、又は、酵素を安定化させると考えられる物質を試薬組成物に加えることによって対処される。試験センサの試薬組成物中の酵素を安定化させることができる物質の例は、糖、たとえば、トレハロース又はスクロース及び糖アルコール、たとえば、マンニトール、マルチトール又はソルビトールを含む。これらの物質は、酵素の活性を保存するために凍結乾燥法において使用することができる。たとえばEP1785483A1を参照すること。しかし、酵素又は他の固体、たとえば安定剤の高い配合量が他の難題を呈することもある。酵素成分は一般に高価であるため、酵素の配合量を試験に必要なレベルよりも増すことは望ましくない。加えて、酵素又は他の固体は、特に低めの温度で、サンプルによる試薬組成物の再水和を減速させるので、より長い試験時間を生じさせることがある。分析対象物及び/又は試薬組成物中の他の成分、たとえばメディエータとの相互作用に求められるよりも多い、試験センサ中の過剰な酵素も、また、センサの確度を下げるおそれがある。
【0012】
したがって、改良されたバイオセンサシステム、特にサンプル中の分析対象物の濃度のますます正確な、及び/又は、高精度の測定を提供することができる、及び/又は、ますます短い分析時間を提供することができるバイオセンサシステムの必要性が絶えず存在する。そのうえ、所望の確度、精度、及び/又は、分析時間を提供しながらも、より広い範囲の貯蔵条件で、増大した貯蔵寿命を有する改良されたバイオセンサシステムの必要性が存在する。本発明のシステム、装置及び方法は、従来のバイオセンサシステムに伴う欠点の少なくとも一つを解消する。
【発明の概要】
【0013】
一つの実施態様において、本発明は、サンプル中の分析対象物の濃度を測定するための、複数の試験センサを含むバイオセンサシステムを提供する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体を含み、さらに、作用電極の上、又は、近くに配置された試薬組成物を含む。バイオセンサシステムは、さらに、乾燥剤を含む容器を含む。複数の試験センサが、容器中に50℃の温度で、二週間密封されたのち、容器から取り出され、その後、各試験センサが、少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続されたのち、分析対象物を含む複数のサンプルの一つと接触する。複数のサンプルは、10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有する。各サンプル中の分析対象物の濃度が試験センサ及び計測装置によって計測される場合の、各計測される分析対象物の濃度のバイアス(許容誤差)は、100mg/dL未満の分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±10mg/dLの範囲内であり、そして、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±10%の範囲内である。
【0014】
もう一つの実施態様において、本発明は、サンプル中の分析対象物の濃度を測定するための、複数の試験センサを含むバイオセンサシステムを提供する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体を含み、さらに、作用電極の上又は近くに配置された、レドックス酵素を含む試薬組成物を含む。バイオセンサシステムは、さらに、乾燥剤を含む容器を含む。複数の試験センサが、容器中に50℃の温度で二週間密封されたのち、容器から取り出されたとき、各試験センサの試薬組成物は、レドックス酵素の活性の少なくとも75%を保持する。
【0015】
本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定められ、発明の概要における記述によっては影響されない。
【0016】
以下の図面及び詳細な説明を参照すると、本発明をより良く理解することができる。図面中の構成部品は必ずしも原寸に比例せず、本発明の原理を説明することに重点を置いたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有する全血サンプルの場合の試験センサからの出力信号を表す。試験センサは、モレキュラーシーブ乾燥剤とともに密封しておいたものである。
【図1B】1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有する全血サンプルの場合の試験センサからの出力信号を表す。試験センサは、シリカゲル乾燥剤とともに密封しておいたものである。
【図1C】1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有する全血サンプルの場合の試験センサからの出力信号を表す。試験センサは、乾燥剤なしで密封しておいたものである。
【図2A】50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合の試験バイアスのグラフを表す。
【図2B】50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合の試験バイアスのグラフを表す。
【図3A】様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中に密封されていた試験センサに関する、グルコースを含まない全血サンプルのグルコース試験の場合のバックグラウンド電流のグラフを表す。
【図3B】様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中に密封されていた試験センサに関する、グルコースを含まない全血サンプルのグルコース試験の場合のバックグラウンド電流のグラフを表す。
【図4】様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中に、−20℃、50℃又は室温で二週間貯蔵された試験センサに関するセンサ内の酵素の活性のグラフを表す。
【図5】様々なタイプの乾燥剤とともに50℃の温度で二週間密封されていた試験センサならびに酵素安定剤を有する試薬組成物及び酵素安定剤を有しない試薬組成物に関するセンサ内の酵素の活性(「%酵素回復率」)のグラフを表す。
【図6】試験センサが、試験センサの作用電極上で様々なレベルの酵素密度を有する場合、50℃の温度で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータの、−20℃で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータに対する変化のグラフを表す。
【図7】試験センサを使用して生物学的流体のサンプル中の分析対象物の濃度を測定するバイオセンサの概略図を示す。
【図8】乾燥剤及び複数の試験センサを含む密封容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
バイオセンサシステムは、容器中に残留水分レベルを保持する乾燥剤を有する容器の中に密封された試験センサを含む。低湿度環境において、乾燥剤は水分を速やかには吸湿せず、それが、試験センサの試薬組成物が酵素をその活性構成に維持することに役立つ水分レベルを維持することを許すことができる。そのような乾燥剤を含む容器の中に貯蔵された試験センサは、従来の乾燥剤を含む容器又は乾燥剤を含まない容器の中に貯蔵された比較可能な試験センサよりも、正確及び/又は高精度である分析対象物の濃度の計測値を提供することができる。このように、上記試験センサは、非最適な条件下に長期間貯蔵された場合でさえ、一貫して正確な試験を短い試験時間で提供する。
【0019】
バイオセンサシステムは、それぞれが少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体を含む複数の試験センサ、及び作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物を含む。バイオセンサシステムは、さらに、乾燥剤を含む容器を含む。複数の試験センサは容器の中に密封されている。
【0020】
容器中の乾燥剤は、好ましくは、40℃で10%〜20%相対湿度(RH)の環境と接したとき、水分(水蒸気)重量の最大で15%を吸湿する。より好ましくは、乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で10%を吸湿する。もっとも好ましくは、乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の5%〜10%を吸湿する。
【0021】
40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の5%〜10%を吸湿する乾燥剤の例はシリカゲルを含む。シリカゲルは、0%〜約60%のRH値の場合、周囲環境の相対湿度にほぼ比例するレベルで水分を吸湿することができる。対照的に、試験センサに従来から使用されているモレキュラーシーブ乾燥剤は、10%〜20%のRHを有する環境から多量の水分を速やかに吸湿することができる。モレキュラーシーブは、40℃で5%RHの環境と接したとき、水分重量の15%〜20%を吸湿することができ、その後、相対湿度が高まるとともに、最小量のさらなる水分を吸湿することができる。
【0022】
40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿することができる乾燥剤の例はポリマー配合モレキュラーシーブの組成物を含む。乾燥剤をポリマーとブレンドすることによって乾燥剤の効能を下げることができる。ポリマー中の乾燥剤は部分的にしか環境に暴露されないため、水分の吸湿は、純粋な乾燥剤の吸湿速度よりも低い速度でしか起こらない。40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿することができる乾燥剤のもう一つの例はモレキュラーシーブとシリカゲルとのブレンドを含む。ブレンド中のモレキュラーシーブ及びシリカゲルのタイプ及び相対量の選択が、低い相対湿度でブレンド組成物によって吸湿される全水分の調整を許すことができる。
【0023】
図1A〜1Cは、1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有し、40%のヘマトクリット含有率を有する全血サンプルの場合の試験センサからの出力信号を表す。試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤「モレキュラーシーブ13x」22.5mgを有する容器(図1A)、試験センサ1個あたりシリカゲル30mgを有する溶器(図1B)又は乾燥剤なしの容器(図1C)の中に密封されていた。容器のタイプごとに、各容器の半分量を50℃で二週間貯蔵し、もう半分量を−20℃で二週間貯蔵した。50℃で二週間の熱ストレス環境は、バイオセンサのパーフォーマンスをその貯蔵寿命の最後で評価するために一般に使用される加速ストレス条件である。貯蔵期間ののち、試験センサを使用して全血サンプルの電気化学的試験を実施した。
【0024】
米国特許出願公開公報2008/0173552及び米国特許出願公開公報2009/0145779に記載されているように、計測装置によって試験センサに入力される信号は、ゲート制御された電流測定用パルスシーケンスであり、一つ以上の出力電流値が、サンプルの分析対象物の濃度と相関する。ゲート制御された電流測定用パルスシーケンス及び出力電流値と分析対象物の濃度との相関に関するこれらの特許出願の開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。図1A〜1Cのグラフを生成するために使用されたパルスは、七つの緩和(relaxation)によって分けられた八つの励起(excitation)を含むものであった。第二から第八までの励起は持続時間が約0.4秒であり、第二から第七までの緩和は持続時間が約1秒であった。第二から第八までの励起中、三つの出力電流値を記録した。
【0025】
一つ以上の出力電流値とサンプルの分析対象物の濃度との相関は、分析中の特定の時間における出力電流を、分析対象物を含有する一連の原液中の分析対象物の既知の濃度に対してプロットすることによって作成することができる。入力信号からの出力電流値をサンプルの分析対象物の濃度と相関させるために、励起による初期電流値は、好ましくは、減衰(decay)中でそれに続く電流値よりも大きい。好ましくは、サンプルの分析対象物の濃度と相関した出力電流値は、試験センサの最大運動性能を反映する電流データを含む減衰から取り出される。出力電流の基礎にあるレドックス反応の速度は多数の要因によって影響を受ける。これらの要因は、試薬組成物が再水和する速度、酵素系が分析対象物と反応する速度、酵素系が電子をメディエータに移動する速度及びメディエータが電子を電極に移動する速度を含むことができる。
【0026】
試験センサの最大運動性能は、ゲート制御電流測定シーケンスの励起中、減衰する電流値を有する励起の初期電流値が、多数の励起に関して最大になったとき、到達することができる。好ましくは、試験センサの最大運動性能は、減衰する電流値を有する励起に関して得られた最後の電流値が、多数の励起に関して得られた最大で最後の電流値になったとき、到達する。より好ましくは、試験センサの最大運動性能は、減衰する電流値を有する励起の初期電流値が、多数の励起に関して最大であり、同じ励起に関して得られた最後の電流値が、多数の励起に関して得られた最大の最後の電流値になったとき、到達する。最大運動性能は、減衰する電流値を有する最初の励起において、到達することもできるし、減衰する電流値を有する後続の励起、たとえば第二、第三又は第四以降の励起において到達することもできる。
【0027】
最大運動性能は、分析対象物を含有するサンプルが試験センサと接触したのち、電気化学的に試験センサが、その最大出力電流値を得る時間であるパラメータ「ピーク時間」として表すことができる。最大出力電流値は、好ましくは、サンプルの分析対象物の濃度との相関のために使用される。好ましくは、試験センサのピーク時間は、サンプルを試験センサに導入してから約7秒未満であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約5秒未満である。好ましくは、ピーク時間は、サンプルを試験センサに導入してから約0.4〜7秒の範囲内であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約0.6〜約6.4秒の範囲内であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約1.1〜約3.5秒の範囲内である。
【0028】
図1Aを参照すると、従来の乾燥剤を有する容器の中に密封されていた試験センサは、50℃で二週間貯蔵された場合、−20℃で二週間貯蔵された場合よりも長いピーク時間を有した。対照的に、シリカ乾燥剤とともに密封されたセンサ(図1B)又は乾燥剤なしで密封されたセンサ(図1C)は、50℃で二週間貯蔵された場合、−20℃で二週間貯蔵された場合に対してピーク時間の増加を示さなかった。
【0029】
試験センサのグルコース結果は一般に固定時点における計測電流から導出されるため、試験センサの電流プロフィールの変化は、一貫性を欠くグルコース試験結果を招くことがある。この増大した誤差は、10秒以下のような短めの時間で実施された試験の場合に特に顕著である。図1A〜1Cに関して検査した試験センサの場合、従来の乾燥剤とともに密封された試験センサの電流プロフィールの変化は、バイオセンサのバイアスにおける望ましくない増大を生じさせた。
【0030】
バイオセンサの計測性能はその確度及び/又は精度として決定される。確度及び/又は精度の増大はバイオセンサの計測性能の改善を提供する。確度は、参照分析対象物の表示値に比較した場合の、バイオセンサの分析対象物の表示値のバイアスとして表すことができ、より大きなバイアスがより低い確度を表す。精度は、平均値に対する多数の分析対象物の表示値の間のバイアスの分布又はばらつきとして表すことができる。バイアスとは、バイオセンサから測定された一つ以上の値と、生物学的流体中の分析対象物の濃度に関する一つ以上の承認された参照値と、の間の差である。したがって、計測された分析における一つ以上の誤差は、バイオセンサシステムの測定された分析対象物の濃度にバイアスを生じさせることになる。バイアスは、サンプル中の分析対象物の濃度に依存して「絶対バイアス」又は「%バイアス」として表すことができる。絶対バイアスは、計測の単位、たとえばmg/dLで表すことができ、100mg/dL未満の分析対象物の濃度の場合に使用することができる。%バイアスは、参照値に対する絶対バイアス値の割合として表すことができ、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度の場合に使用することができる。承認された参照値は、参照計器、たとえばYSI Inc.(Yellow Springs, Ohio)から市販されているYSI 2300 STAT PLUS(商標)グルコース分析装置を用いて得ることができる。
【0031】
図2A及び2Bは、40%のヘマトクリット含有率を有し、50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合のバイアス値のグラフを示す。分析に使用された試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x0〜22.5mgを有する容器(図2A)又は試験センサ1個あたりシリカゲル0〜30mgを有する容器の中に密封され、50℃の温度で二週間貯蔵されたものであった。
【0032】
乾燥剤なし(乾燥剤0mg/試験センサ)では、試験センサ熱ストレス後の血中グルコース試験は、低いグルコース量(50mg/dL)を含有するサンプルの場合には15mg/dLの正のバイアスを有し、100mg/dL及び400mg/dLのグルコース濃度を有するサンプルの場合には7〜10%のバイアスを有し、高いグルコース量(600mg/dL)を含有するサンプルの場合にはバイアスをほぼ有しなかった。試験センサを従来のモレキュラーシーブ乾燥剤とともに密封すると(図2A)、低及び正常グルコース量を有するサンプルの場合の正のバイアスが補正されたが、600mg/dLグルコースを有するサンプルの場合の試験バイアスは、乾燥剤レベルが増すとともに−10%及び−15%に増大した。対照的に、30mg/センサのシリカゲルとともに貯蔵されたセンサの場合の試験バイアスは、100mg/dL未満のグルコースを有するサンプルの場合には5mg/dLの範囲内であり、100mg/dL〜600mg/dLのグルコースを有するサンプルの場合には±5%の範囲内であった(図2B)。
【0033】
従来の乾燥剤の存在において50℃で二週間密封された試験センサの場合の試験ピーク時間及び試験バイアスの増大は、乾燥剤なしで、又はより弱いシリカゲル乾燥剤とともに密封されて同様に処理された試験センサの場合の結果と比較した場合、驚くべきものである。一般に、乾燥剤は、試験センサの使用の前に、メディエータをはじめとする試薬層の成分の変質を防ぐために使用されてきた。したがって、特に高いグルコース濃度を有するサンプルを試験する場合、従来の乾燥剤との試験センサの貯蔵が、乾燥剤なしで、又はより活動性が低い乾燥剤とともに貯蔵された同等の試験センサと比べて、試験センサの確度及び/又はその貯蔵寿命を損なうということは予想外であろう。
【0034】
乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサを使用して、一定範囲の濃度にわたる既知の濃度の分析対象物を有するサンプルの分析対象物の含量を計測したのち、実際の濃度に対する計測値のバイアスを計算することによって評価することができる。一例においては、複数の試験センサを、乾燥剤を含む容器中に、50℃の温度で二週間密封する。各試験センサは、少なくとも二つでそのうち一つが作用電極である導体、及び作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物を含む。次いで、試験センサを容器から取り出し、各試験センサを、少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続する。ひとたび接続したならば、各試験センサをサンプルの一つと接触させ、それを使用してサンプル中の分析対象物の濃度を計測する。この例において、10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、各計測される分析対象物の濃度のバイアスは、好ましくは、100mg/dL未満の分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±10mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±10%の範囲内である。「10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度」とは、サンプルの少なくとも一つが10mg/dLの分析対象物の濃度を有し、他のサンプルの少なくとも一つが600mg/dLの分析対象物の濃度を有することをいう。残りのサンプルがあるならば、それらのサンプルは、10mg/dL〜600mg/dLの分析対象物の濃度を有することができる。
【0035】
上記例において、各計測される分析対象物の濃度のバイアスは、好ましくは、100mg/dL未満の分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±7mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±7%の範囲内である。より好ましくは、各計測される分析対象物の濃度のバイアスは、100mg/dL未満の分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±5mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、±5%の範囲内である。好ましくは、この例において、複数の試験センサの数は、少なくとも10であり、好ましくは、少なくとも25、少なくとも50又は少なくとも100である。好ましくは、この例において、サンプルは、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有する。
【0036】
乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサを使用して、既知の分析対象物の濃度を有するサンプルの分析対象物の含量を計測したのち、計測値の変動係数(%CV)を計算することによって評価することができる。上記例において、各計測される分析対象物の濃度の%CVは最大で2.5%である。より好ましくは、この例において、各計測される分析対象物の濃度の%CVは最大で2%である。
【0037】
表1は、42%のヘマトクリット含有率を有し、50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合の%CVを一覧にしたものである。試験に使用された試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x0〜22.5mgを有する容器又は試験センサ1個あたりシリカゲル0〜30mgを有する容器の中に密封され、50℃で二週間貯蔵されたものであった。一覧にした各結果は10個の試験センサに基づく。
【0038】
【表1】
【0039】
表2は、試験センサを−20℃で二週間貯蔵した場合の、表1に記載されたグルコース試験の場合の%CVを一覧にしたものである。一覧にした各結果は10個の試験センサに基づく。
【0040】
【表2】
【0041】
乾燥剤なし(乾燥剤0mg/試験センサ)では、試験センサ熱ストレス(50℃で二週間)後の血中グルコース試験は、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合で1.3〜2.4%の変動係数を示した。試験センサを従来のモレキュラーシーブ乾燥剤(7.5又は22.5mg/試験センサ)又はシリカゲル10.0mg/試験センサとともに密封しても、血中グルコース試験の%CVの上限は下がらなかった。しかし、試験センサをシリカゲル30.0mg/試験センサとともに密封すると、血中グルコース試験の%CVの上限は1.5%に低下した。また、試験センサを−20℃で二週間貯蔵した場合にも、血中グルコース試験に関して同様な傾向が計測された。両方の貯蔵条件のセットの場合、シリカゲル30.0mg/試験センサとともに密封された試験センサを使用して実施された血中グルコース試験は、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合で2.1%未満の%CV値を示した。
【0042】
図3A及び3Bは、グルコースを含まない全血サンプルのグルコース試験の場合のバックグラウンド電流のグラフを表す。試験に使用された試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x0〜22.5mgを含有する容器(図3A)又は試験センサ1個あたりシリカゲル0〜30mgを有する容器(図3B)の中に密封され、−20℃、室温(「RT」25℃)又は50℃で二週間貯蔵されたものであった。サンプルはグルコースを含有しなかったため、計測されたバックグラウンド電流は、還元された酸化状態にある物質、たとえば還元されたメディエータの存在によるものである。
【0043】
容器中に、乾燥剤なしで貯蔵された試験センサは、熱ストレス後、バイオセンサバックグラウンド電流の大きな増大を示した。これは、乾燥剤が、おそらくはメディエータの自己還元を防ぐことにより、試験センサ中に低いバックグラウンド電流を維持するのに重要であるという従来の理論と合致している。図2A及び2Bに示す低グルコース量のサンプルの場合、センサバックグラウンド電流の増大が正の試験バイアスに寄与したかもしれない。従来のモレキュラーシーブ乾燥剤の存在において貯蔵された試験センサ(図3A)は、低いバックグラウンド電流を維持するのに、シリカゲルの存在において貯蔵された試験センサの場合(図3B)よりも少ない乾燥剤しか要しなかった。したがって、従来の乾燥剤は、メディエータの早期還元を阻止するというその所期の機能を達成すると思われた。
【0044】
図1〜6で使用された試験センサの試薬組成物中のメディエータは、2電子移動メディエータ3−(2′,5′−ジスルホフェニルイミノ)−3H−フェノチアジンビスナトリウム塩であった。試験センサの貯蔵中の水分の認められる効果は、他の2電子移動メディエータ、たとえば他の有機キノン類及びヒドロキノン類にも当てはまると考えられる。そのようなメディエータの例は、フェナントロリンキノン、フェノチアジン及びフェノキサジン誘導体、たとえば3−フェニルイミノ−3H−フェノチアジン類(PIPT)及び3−フェニルイミノ−3H−フェノキサジン類(PIPO)、3−(フェニルアミノ)−3H−フェノキサジン類、フェノチアジン類ならびに7−ヒドロキシ−9,9−ジメチル−9H−アクリジン−2−オン及びその誘導体を含む。試験センサの貯蔵中の水分の認められる効果はまた、1電子移動メディエータ、たとえば1,1′−ジメチルフェロセン、フェロシアン化物及びフェリシアン化物、ルテニウム(III)及びルテニウム(II)ヘキサアミンにも当てはまると思われる。
【0045】
ピーク時間、バイアス及び/又は精度に関する驚くべき結果に考えられる一つの説明は、より活動性が低い乾燥剤が予想外に高いレベルで酵素を保護することができるということである。シリカゲルのような、より活動性が低い乾燥剤は、従来の乾燥剤よりもFAD−GDH酵素との適合性が高いと思われたが、それでも、メディエータのための十分な保護を提供した。特に高グルコース量サンプルの場合、これまで、試験バイアスに対する酵素の活性の損失の影響が過小評価されていたのかもしれない。
【0046】
図4は、様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中に、−20℃(菱形記号)、50℃(三角形記号)又は室温(四角形記号)で二週間貯蔵された試験センサに関するセンサ内FAD−GDH酵素の活性のグラフを示す。黒塗りの記号は従来のモレキュラーシーブ乾燥剤に対応し、白抜きの記号はシリカゲル乾燥剤に対応する。いずれの乾燥剤も−20℃では酵素の活性の損失が認められないように示されている。乾燥剤なし(乾燥剤0mg/センサ)でパッケージングされたセンサの場合、50℃で二週間の貯蔵ののち、センサの酵素の活性の約10%の損失が生じた。モレキュラーシーブとともにパッケージングされたセンサの場合(黒塗りの三角記号)、センサ1個あたり乾燥剤7mgの相対的に低いレベルでさえ、酵素の活性は約60%に低下した。対照的に、シリカゲルとともにパッケージングされたセンサの酵素の活性は約25%高く、75〜80%の酵素の活性を維持した(白抜きの三角形記号)。室温でさえ、モレキュラーシーブとともにパッケージングされた試験センサ(黒塗りの四角形記号)は、シリカゲルとともに貯蔵された試験センサの場合(白抜きの四角形記号)よりも約5%低い酵素の活性を示した。
【0047】
図4の結果は、図1〜3の結果と組み合わさると、FAD−GDH酵素がその本来の構造及び活性を維持するためにしきい値レベルの水分を必要とするという分析と合致している。600mg/dLグルコースの場合の、モレキュラーシーブ乾燥剤の増加とともに起こる負のバイアスの増大(図2A)は、モレキュラーシーブ乾燥剤とともに貯蔵された試験センサの場合のFAD−GDH酵素の活性のほぼ40%の損失(図4)と相関した。対照的に、600mg/dLグルコースの場合の、シリカゲル乾燥剤の増加とともに起こる相対的に一定かつゼロに近いバイアス(図2B)は、シリカゲル乾燥剤とともに貯蔵された試験センサの場合のFAD−GDH酵素の活性のわずか20〜25%の損失(図4)と相関した。
【0048】
図5は、50℃で二週間密封されていた試験センサ、様々なタイプの乾燥剤を有する容器ならびに酵素安定剤ソルビトールを有する試薬組成物及び酵素安定剤ソルビトールを有しない試薬組成物の場合のセンサ内FAD−GDH酵素の活性(「%酵素回復率」)のグラフを示す。使用された乾燥剤は、シリカゲル(SG)、モレキュラーシーブ13x(MS−13x)、モレキュラーシーブ4Aを含有するボトルスリーブ(Bottle−MS)ならびに二つの異なるポリマー配合乾燥剤、すなわちモレキュラーシーブでコートされたポリプロピレンフィルム(SLF/MS)及びシリカゲルでコートされたポリプロピレンフィルム(SLF/SG)であった。ポリマー配合乾燥剤はMultisorb Technologies(Buffalo, NY)から得たものであった。
【0049】
水、80ミリモル(mM)3−(2′,5′−ジスルホニルイミノ)−3H−フェノチアジンビスナトリウム塩メディエータ、1マイクロリットルあたり3.75酵素単位FAD−GDH、0.2%(w/w)重量平均分子量(Mw)300,000のヒドロキシエチレンセルロース(HEC)バインダ、0.362%(w/w)Mw90,000のHECバインダ、112.5mM Na2HPO4バッファ塩、0.225%(w/w)N−オクタノイル−N−メチル−D−グルカミン(MEGA-8)及び0.01%(w/w)タウリン酸ナトリウムメチルココイル(Geropon TC-42)を含む試薬液を塗布し、乾燥させることにより、「PD18コントロール(PD18-control)」及び「PD16コントロール(PD18-control)」と標識した、試験センサのための試薬組成物を形成した。試薬液が0.4%(w/w)ソルビトールをも含むことを除いて「PD18コントロール」と標識されたセンサの場合と同様に、「PD18+0.4%ソルビトール」と標識された試験センサのための試薬組成物を形成した。
【0050】
純粋なモレキュラーシーブ乾燥剤(MS−13x)又はボトル乾燥剤スリーブ(Bottle−MS)とともに貯蔵された試験センサは酵素の活性の約30%の低下を示したが、シリカゲル乾燥剤(SG)とともに貯蔵された試験センサは15%の低下しか示さなかった。0.4%ソルビトールによる酵素の安定化が酵素の活性の損失を減らした。しかし、ここでもまた、モレキュラーシーブ乾燥剤とともに貯蔵された試験センサは2倍の量の酵素不活性化を許した。純粋なモレキュラーシーブ乾燥剤又はシリカゲル乾燥剤とともに貯蔵されたPD18コントロール試験センサとPD16コントロール試験センサとの間の酵素回復率の差は実験誤差の範囲内であると考えられる。
【0051】
モレキュラーシーブ乾燥剤とポリプロピレンとのブレンド(SLF/MS)は、シリカゲル乾燥剤によって提供されるものと同等の酵素の活性の保持力を提供した。このように、モレキュラーシーブの乾燥能力の阻害が、酵素が熱ストレスがかかる中でその活性を保持することを可能にした。また、シリカゲルの乾燥能力が阻害された。試験確度の低下は、熱ストレスがかかる中の水分から他の試薬組成物成分を保護することの欠如に関連づけることができる。
【0052】
乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサが様々な条件で貯蔵されたのち、保持されている試験センサの試薬組成物中のレドックス酵素の活性を計測することによって評価することができる。一例において、複数の試験センサを、乾燥剤を含む容器中に、50℃の温度で二週間密封する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び作用電極の上又は近くに配置されたレドックス酵素を含む試薬組成物を含む。次いで、試験センサを容器から取り出し、各試験センサの試薬組成物中のレドックス酵素の活性を計測する。この例において、各試験センサの試薬組成物は、好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも75%を保持する。より好ましくは、この例において、各試験センサの試薬組成物は、好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも80%を保持し、より好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも85%を保持する。好ましくは、この例において、複数の試験センサの数は、少なくとも10であり、好ましくは、少なくとも25、少なくとも50又は少なくとも100である。
【0053】
一つ以上の出力電流値、たとえば図1A〜1Cに示す出力電流値とサンプルの分析対象物の濃度との相関は、計測における誤差を考慮するように調節することもできる。バイオセンサ分析に関連する誤差を補正するための一つの手法は、出力電流値の中間電流値から抽出される指数関数によって出力電流値からサンプル中の分析対象物の濃度を測定するための相関を調節することである。指数関数は、出力電流値から分析対象物の濃度を測定するための相関を、測定される分析対象物の濃度のバイアスを生じさせるおそれのある分析における一つ以上の誤差に関して補正することができる。指数関数は、分析における一つ以上の誤差による、分析対象物の濃度と出力電流値との間の相関における%バイアスに対応する。
【0054】
グルコース試験%バイアスは、一つ以上の誤差パラメータから得られる一つ以上のΔS値によって表すことができる。ΔS値は、一つ以上の誤差パラメータから決定される、分析対象物の濃度と出力電流値との間の相関の傾斜偏差を表す。相関の傾斜は、サンプルのグルコース濃度の所与の変化に関する出力電流の変化に対応する。傾斜又は傾斜の変化に対応する指数関数を正規化して、出力電流値の変化の統計的効果を減らし、出力電流値の変動の微分を改善し、出力電流値の計測を標準化し、それらを組み合わせて実施すること、などができる。調節された相関は、生物学的サンプル中の分析対象物の濃度を出力電流値から測定するために使用することができ、従来のバイオセンサに比較して改善された確度及び/又は精度を有することができる。指数関数及びΔS値を使用する誤差補正は、たとえば、米国特許出願公開公報2009/0177406及び2009年12月8日出願の「Complex Index Functions」と題する国際特許出願PCT/US2009/067150号に記載されている。指数関数及びΔS値を使用する誤差補正に関するこれらの特許出願の開示は参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0055】
したがって、ΔS/Sを表す指数関数を使用して、サンプルグルコース濃度に応答する出力電流値をサンプルの補正グルコース濃度に変換することができる。あるいはまた、指数関数及び等式、たとえばGcorr=Graw/(1+f(Index))(式中、Gcorrは、サンプルの補正グルコース濃度であり、Grawは、補正なしのサンプルの測定分析対象物の濃度であり、f(Index)は指数関数である)を使用して、非補正グルコース濃度値から補正グルコース濃度値を決定することもできる。
【0056】
指数関数は、出力信号、たとえば図1A〜1Cに示す出力信号から抽出される比を含むことができる。たとえば、R3=i3,3/i3,1(式中、i3,3は、第三の信号減衰に関して記録された第三の電流値を示し、i3,1は、第三の信号減衰に関して記録された第一の電流値を示す)のように、個々のパルス信号減衰サイクル内で出力信号値を比較することができる。もう一つの例においては、R4/3=i4,3/i3,3(式中、i4,3は、第四の信号減衰に関して記録された第三の電流値を示す)のように、別々のパルス信号減衰サイクルの間で出力信号値を比較することもできる。指数関数は、出力信号から抽出された各比(ratios)の組み合わせを含むことができる。一例において、指数関数は、各比(ratios)の簡単な比(ratio)、たとえばRatio3/2=R3/R2を含むことができる。もう一つの例において、指数関数は、より簡単な指数関数のより複雑な組み合わせを含むこともできる。たとえば、指数関数Index-1をIndex-1=R4/3−Ratio3/2として表すこともできる。もう一つの例においては、指数関数Index-2をIndex-2=(R4/3)p−(Ratio3/2)q(式中、p及びqは、独立して、正の数である)で表すこともできる。
【0057】
好ましくは、指数関数は、ヘマトクリット含有率の変動に関連する誤差を補正する。たとえば、従来のバイオセンサシステムは、サンプルの実際のヘマトクリット含有率にかかわらず、全血サンプルの場合で40%(v/v)ヘマトクリット含有率を仮定してグルコース濃度を報告するように構成されていることがある。これらのシステムにおいて、40%未満又は40%超のヘマトクリットを含有する血液サンプルに対して実施されるグルコース計測は誤差を含み、したがって、ヘマトクリット効果に起因するバイアスを有する。
【0058】
ヘマトクリット含有率の変動に伴う誤差を補正する指数関数の計算は、ヘマトクリット含有率とともに変化する出力信号を生成する試験センサを使用することによって容易にすることができる。一部のバイオセンサの場合、R5/4比パラメータが、サンプル中のヘマトクリットの指標として働き、計測分析対象物の濃度を、サンプル中のヘマトクリット含有率を考慮して調節するために使用されている。R5/4比パラメータは、図1A〜1Cのゲート制御電流測定パルスシーケンスの4番目及び5番目のパルスに応答して分析対象物によって生成された電流の間の関係を表す。
【0059】
図6は、試験センサが、試験センサの作用電極上で異なるレベルの酵素密度を有する場合の、50℃で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータの、−20℃で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータに対する変動のグラフを示す。二つのタイプのデータ点は二つの異なるアニオン界面活性剤Phospholan CS131(ノニルフェノールエトキシレートホスフェート)及びGeropon TC-42を表す。
【0060】
高めの酵素濃度において、50℃で貯蔵した試験センサと−20℃で貯蔵した試験センサとでR5/4比パラメータの間の差は小さかった。この傾向は、試薬組成物に使用された両タイプのアニオン界面活性剤に関して明白であった。R5/4比パラメータは、分析対象物の計測値を補正するための指数関数における変数として使用することができるため、環境要因によるパラメータの低めの変動が望ましい。したがって、より活動性が低い乾燥剤によって提供される酵素の活性の保持力の増大は、補正率の可変性を減らすというさらなる恩典を提供することができる。
【0061】
図1〜6で使用された試験センサの試薬組成における酵素はFAD−GDH酵素であった。試験センサの貯蔵中の残留水分の認められる効果は、他の酵素、たとえばアルコールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、β−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ(GOx)、グルコースデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ及び3−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼにも当てはまると考えられる。
【0062】
好ましい酵素系は酸素非依存性であり、したがって、実質的に酸素によって酸化されない。一つのそのような酸素非依存性酵素ファミリーがグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である。様々な補酵素又は補因子を使用すると、GDHは、様々なメディエータによって異なるやり方で媒介されることができる。GDHとの関連に依存して、FAD−GDHの場合のように、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)のような補因子をホスト酵素によって堅く保持することもできるし、PQQ−GDHの場合のように、ピロロキノリンキノン(PQQ)のような補因子をホスト酵素に共有結合させることもできる。これらの酵素系それぞれにおける補因子は、ホスト酵素又は補酵素によって永久的に保持されることができ、酵素系が試薬液に加えられる前にアポ酵素が再構成されることができる。補酵素はまた、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD/NADH+の場合又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NADP/NADPH+をNAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(NAD−GDH)と組み合わせた場合のように、ホスト酵素の触媒機能を支援するために、独立して試薬液中のホスト酵素部分に加えることもできる。
【0063】
試験センサのための試薬組成物又は試薬組成物を形成するための試薬液の成分は、たとえば、米国特許出願公開公報2009/0178936及び2009年12月7日出願の「Low Total Salt Reagent Compositions And Systems For Biosensors」と題する国際特許出願PCT/US2009/066963に記載されている。試薬組成物を形成するための試薬組成物成分及び液に関するこれらの特許出願の開示は参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0064】
試験センサ中の酵素の活性及び試験センサの試験性能の両方が、センサの容器中に使用される乾燥剤のタイプによって影響されると思われる。水分重量の最大で15%を吸湿する、又は水分重量の最大で10%又は5%〜10%を吸湿する乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接すると、酵素をその活性状態に保持することを可能にする残留水分レベルを試薬組成物中に提供することができる。対照的に、モレキュラーシーブのような活動性の乾燥剤による試薬組成物の過度の乾燥は酵素不活性化を招くおそれがある。より活動性が低い乾燥剤は、パッケージ中の湿度レベルが20%RHを超えたときのみ雰囲気から水を吸湿することにより、試験センサの容器中のメディエータと酵素とで正反対の水分要件を均衡させることができる。したがって、より活動性が低い乾燥剤は、酵素の活性に悪影響を及ぼすことなく、メディエータを高い水分から保護することができる。
【0065】
図7は、試験センサを使用して生物学的流体のサンプル中の分析対象物の濃度を測定するバイオセンサ700の略図を示す。バイオセンサ700は、計測装置702及び試験センサ704を含み、これらは、ベンチトップ装置、ポータブル又は手持ち装置などを含む分析計器として実現することができる。バイオセンサ700は、グルコース、尿酸、乳酸、コレステロール、ビリルビンなどの濃度を含む分析対象物の濃度を測定するために使用することができる。特定の構成が示されているが、バイオセンサ700は、さらなる構成部品を有するものを含め、他の構成を有することもできる。
【0066】
試験センサ704は、貯留部708及び開口712付きの流路710を形成するベース706を有する。貯留部708及び流路710は、通気口712付きのふたによって覆われることもできる。貯留部708は、部分的に閉じ込められた容積を画定する。貯留部708は、液体サンプルの保持を支援する組成物、たとえば水膨潤性ポリマー又は多孔性ポリマーマトリックスを含むことができる。試薬を貯留部708及び/又は流路710の中に置くことができる。作用電極707における試薬組成物は、低総塩量試薬組成物を含み、一つ以上の酵素系、メディエータ及び類似種を含むことができる。対電極705は、同じ又は異なる試薬組成物、好ましくは酵素系を欠く試薬組成物を使用して形成することができる。試験センサ704はまた、貯留部708に隣接して配置されたサンプルインタフェース714を有することができる。サンプルインタフェース714は貯留部708を部分的又は完全に包囲することができる。試験センサ704は他の構成を有することもできる。
【0067】
サンプルインタフェース714は、作用電極707及び対電極705に接続された導体709を有する。電極は、実質的に同じ面にあってもよいし、二つ以上の面にあってもよい。電極704、705は、ベース706の、貯留部708を形成する面に配置されることができる。電極704、705は、貯留部708の中に延びる、又は突出することもできる。誘電層が導体709及び/又は電極704、705を部分的に覆うこともできる。サンプルインタフェース714は他の電極及び導体を有することもできる。
【0068】
計測装置702は、センサインタフェース718及びディスプレイ720に接続された電気回路716を含む。電気回路716は、信号生成器724、省略可能な温度センサ726及び記憶媒体728に接続されたプロセッサ722を含む。
【0069】
信号生成器724は、プロセッサ722に応答して電気入力信号をセンサインタフェース718に提供する。電気入力信号は、センサインタフェース718により、電気入力信号を生物学的流体のサンプルに印加するためのサンプルインタフェース714に送信されることができる。電気入力信号は、電位又は電流であることができ、多数のパルス、シーケンス又はサイクルとして印加することができる。信号生成器724はまた、生成器・記録器として、センサインタフェースからの出力信号を記録することができる。
【0070】
省略可能な温度センサ726は、試験センサ704の貯留部中のサンプルの温度を測定する。サンプルの温度は、計測することもできるし、出力信号から計算することもできるし、周囲温度又はバイオセンサシステムを実現する装置の温度の計測値と同じ又は同程度と推定することもできる。温度は、サーミスタ、温度計、赤外センサ、サーモパイル又は他の温度感知装置を使用して計測することができる。他の技術を使用してサンプル温度を測定することもできる。
【0071】
記憶媒体728は、磁気、光学又は半導体メモリ、別の記憶装置などであることができる。記憶媒体728は、固定メモリ装置、リムーバブルメモリ装置、たとえばメモリカード、遠隔アクセス媒体などであることができる。
【0072】
プロセッサ722が、記憶媒体728中に記憶されたコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコード及びデータを使用して分析対象物の分析及びデータ処理を実施する。プロセッサ722は、センサインタフェース718における試験センサ704の存在、試験センサ704へのサンプルの塗布、ユーザ入力などに応答して分析対象物の分析を開始することができる。プロセッサ722は、信号生成器724に対し、電気入力信号をセンサインタフェース718に提供するよう命令する。プロセッサ722は、省略可能な温度センサ726からサンプル温度を受けることもできる。プロセッサ722はセンサインタフェース718から出力信号を受ける。出力信号は、貯留部708中の分析対象物のレドックス反応に応答して生成される。
【0073】
プロセッサ722は、好ましくは、出力信号を計測して励起からの電流値を得る。初期電流値は、その後の減衰中及びサンプルを試験センサ704に導入してから約3秒未満内の電流値よりも大きい。より好ましくは、プロセッサ722は、出力信号を計測して、704においてサンプルを試験センサに導入してから約3秒未満内の電流値を得、第一の電流値に続く電流値が低下し続ける励起から記録される第一の電流値を得る。さらに好ましくは、プロセッサ722は、出力信号を計測して、704においてサンプルを試験センサに導入してから約3秒未満内の電流値を得、第一の電流値に続く電流値が低下し続ける励起から記録される第一の電流値を得、試験センサの最大運動性能中の電流値を得る。
【0074】
一つ以上の得られた電流値は、プロセッサ722中で一つ以上の相関式を使用して、サンプルの分析対象物の濃度と相関させられる。分析対象物の分析の結果は、ディスプレイ720に出力することもできるし、記憶媒体728に記憶することもできる。好ましくは、分析対象物の分析の結果は、サンプルを試験センサに導入してから5秒以内にディスプレイ720に出力され、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから3秒以内にディスプレイ720に出力される。
【0075】
分析対象物の濃度及び出力電流値に関する相関式は、図式的に、数学的に、それらの組み合わせなどによって示すことができる。相関式は、記憶媒体728に記憶されているプログラム番号(PNA)テーブル、別のルックアップテーブルなどによって示すことができる。分析対象物の試験の実施に関する命令は、記憶媒体728に記憶されたコンピュータ読み取り可能なソフトウェアコードによって提供されることができる。コードは、本明細書に記載される機能性を記述又は制御するオブジェクトコード又は他のコードであることができる。分析対象物の分析からのデータは、プロセッサ722中での減衰率、K定数、比などの決定を含む一つ以上のデータ処理に付すことができる。
【0076】
センサインタフェース718は、試験センサ704のサンプルインタフェース714中の導体709と接続又は電気的に連絡する接点を有する。センサインタフェース718は、接点を介して信号生成器724からの電気入力信号をサンプルインタフェース714中の導体709に伝達する。センサインタフェース718はまた、接点を介してサンプルからの出力信号をプロセッサ722及び/又は信号生成器724に伝達する。
【0077】
ディスプレイ720はアナログ又はデジタルであることができる。ディスプレイは、LCD、LED、OLED又は数値の表示値を表示するように適合された他のディスプレイであることができる。
【0078】
使用中、サンプルを開口712に導入することにより、分析のためのサンプルが貯留部708の中に移送される。サンプルは、事前に含まれていた空気を押し出しながら流路710中を流れて貯留部708を満たす。サンプルは、流路710及び/又は貯留部708中に置かれた試薬と化学反応する。好ましくは、サンプルは流体であり、より好ましくは液体である。
【0079】
試験センサ704は計測装置702に隣接して配置される。隣接とは、サンプルインタフェース714がセンサインタフェース718と電気的に連絡する位置を含む。電気的連絡とは、センサインタフェース718中の接点とサンプルインタフェース714中の導体709との間の入力及び/又は出力信号の有線又は無線の伝送を含む。
【0080】
図8は、乾燥剤及び複数の試験センサ830を含む容器810を含むバイオセンサシステム800を示す。容器810は、試験センサ830を容器810中に密封することができる栓812を含む。容器810は、容器中の別個のパッケージ中に乾燥剤820を含むことができる。容器810は、栓812の中に乾燥剤822を含むこともできる。容器810は、容器の壁の中に乾燥剤824を含むこともできる。容器810は、容器の底に乾燥剤826を含むこともできる。容器810は、プラスチック、金属箔及び/又はガラスを含む多様な材料でできていることができる。容器810中の乾燥剤の量及びタイプは、所定の水分レベルを容器中に提供するように選択することができる。
【0081】
本発明の様々な実施態様を記載したが、当業者には、本発明の範囲内で他の実施態様及び具現化が可能であることが明かであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物に照らして以外、限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の分析対象物の濃度を測定するためのバイオセンサシステムであって、
少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び
前記作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物
をそれぞれが含む複数の試験センサ、ならびに
乾燥剤を含む容器
を含み、
前記複数の試験センサが、
前記容器中に50℃の温度で二週間密封されたのち前記容器から取り出され、
その後、各試験センサが、前記少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続されたのち分析対象物を含む複数のサンプルの一つに接触され、
各サンプル中の分析対象物濃度が前記試験センサ及び前記計測装置によって計測され、
前記複数のサンプルが、10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物濃度を有し、
各計測される分析対象物濃度のバイアスが、
100mg/dL未満の分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±10mg/dLの範囲内であり、
少なくとも100mg/dLの分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±10%の範囲内である
バイオセンサシステム。
【請求項2】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿する、
請求項1記載のバイオセンサシステム。
【請求項3】
前記乾燥剤がポリマー配合モレキュラーシーブを含む、
請求項2記載のバイオセンサシステム。
【請求項4】
前記乾燥剤がモレキュラーシーブとシリカゲルとのブレンドを含む、
請求項2記載のバイオセンサシステム。
【請求項5】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で10%を吸湿する、
請求項1記載のバイオセンサシステム。
【請求項6】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で5%〜10%を吸湿する、
請求項1記載のバイオセンサシステム。
【請求項7】
前記乾燥剤がシリカゲルを含む、
請求項5又は6記載のバイオセンサシステム。
【請求項8】
前記容器が試験センサ1個あたり最大で30mgのシリカゲルを含む、
請求項7記載のバイオセンサシステム。
【請求項9】
前記容器が試験センサ1個あたり最大で10mgのシリカゲルを含む、
請求項7記載のバイオセンサシステム。
【請求項10】
前記複数の試験センサが少なくとも10個の試験センサを含む、
請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項11】
前記複数の試験センサが少なくとも25個の試験センサを含む、
請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項12】
前記複数の試験センサが少なくとも50個の試験センサを含む、
請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項13】
前記複数の試験センサが少なくとも100個の試験センサを含む、
請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項14】
各計測される各分析対象物濃度の前記バイアスが、100mg/dL未満の分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±7mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±7%の範囲内である、
請求項1〜13のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項15】
各計測される各分析対象物濃度の前記バイアスが、100mg/dL未満の分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±5mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±5%の範囲内である、
請求項1〜13のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項16】
前記複数のサンプルが、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物濃度を有する、
請求項1〜13のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項17】
サンプル中の分析対象物の濃度を測定するためのバイオセンサシステムであって、
少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び
前記作用電極の上又は近くに配置された、レドックス酵素を含む試薬組成物、
をそれぞれが含む複数の試験センサ、ならびに
乾燥剤を含む容器
を含み、
前記複数の試験センサが、前記容器中に50℃の温度で二週間密封されたのち前記容器から取り出されたとき、各試験センサの前記試薬組成物が前記レドックス酵素の活性の少なくとも75%を保持する
バイオセンサシステム。
【請求項18】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿する、
請求項17記載のバイオセンサシステム。
【請求項19】
前記乾燥剤が、ポリマー配合モレキュラーシーブを含む、
請求項18記載のバイオセンサシステム。
【請求項20】
前記乾燥剤が、モレキュラーシーブとシリカゲルとのブレンドを含む、
請求項18記載のバイオセンサシステム。
【請求項21】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で10%を吸湿する、
請求項17記載のバイオセンサシステム。
【請求項22】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で5%〜10%を吸湿する、
請求項17記載のバイオセンサシステム。
【請求項23】
前記乾燥剤が、シリカゲルを含む、
請求項21又は22記載のバイオセンサシステム。
【請求項24】
前記容器が、試験センサ1個あたり最大で30mgのシリカゲルを含む、
請求項23記載のバイオセンサシステム。
【請求項25】
前記容器が、試験センサ1個あたり最大で10mgのシリカゲルを含む、
請求項23記載のバイオセンサシステム。
【請求項26】
前記複数の試験センサが、少なくとも10個の試験センサを含む、
請求項17〜25のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項27】
前記複数の試験センサが、少なくとも25個の試験センサを含む、
請求項17〜25のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項28】
前記複数の試験センサが、少なくとも50個の試験センサを含む、
請求項17〜25のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項29】
前記複数の試験センサが、少なくとも100個の試験センサを含む、
請求項17〜25のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項30】
各試験センサの前記試薬組成物が、前記レドックス酵素の活性の少なくとも80%を保持する、
請求項17〜29のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項31】
各試験センサの前記試薬組成物が、前記レドックス酵素の活性の少なくとも85%を保持する、
請求項17〜29のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項1】
サンプル中の分析対象物の濃度を測定するためのバイオセンサシステムであって、
少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び
前記作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物
をそれぞれが含む複数の試験センサ、ならびに
乾燥剤を含む容器
を含み、
前記複数の試験センサが、
前記容器中に50℃の温度で二週間密封されたのち前記容器から取り出され、
その後、各試験センサが、前記少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続されたのち分析対象物を含む複数のサンプルの一つに接触され、
各サンプル中の分析対象物濃度が前記試験センサ及び前記計測装置によって計測され、
前記複数のサンプルが、10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物濃度を有し、
各計測される分析対象物濃度のバイアスが、
100mg/dL未満の分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±10mg/dLの範囲内であり、
少なくとも100mg/dLの分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±10%の範囲内である
バイオセンサシステム。
【請求項2】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿する、
請求項1記載のバイオセンサシステム。
【請求項3】
前記乾燥剤がポリマー配合モレキュラーシーブを含む、
請求項2記載のバイオセンサシステム。
【請求項4】
前記乾燥剤がモレキュラーシーブとシリカゲルとのブレンドを含む、
請求項2記載のバイオセンサシステム。
【請求項5】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で10%を吸湿する、
請求項1記載のバイオセンサシステム。
【請求項6】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で5%〜10%を吸湿する、
請求項1記載のバイオセンサシステム。
【請求項7】
前記乾燥剤がシリカゲルを含む、
請求項5又は6記載のバイオセンサシステム。
【請求項8】
前記容器が試験センサ1個あたり最大で30mgのシリカゲルを含む、
請求項7記載のバイオセンサシステム。
【請求項9】
前記容器が試験センサ1個あたり最大で10mgのシリカゲルを含む、
請求項7記載のバイオセンサシステム。
【請求項10】
前記複数の試験センサが少なくとも10個の試験センサを含む、
請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項11】
前記複数の試験センサが少なくとも25個の試験センサを含む、
請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項12】
前記複数の試験センサが少なくとも50個の試験センサを含む、
請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項13】
前記複数の試験センサが少なくとも100個の試験センサを含む、
請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項14】
各計測される各分析対象物濃度の前記バイアスが、100mg/dL未満の分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±7mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±7%の範囲内である、
請求項1〜13のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項15】
各計測される各分析対象物濃度の前記バイアスが、100mg/dL未満の分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±5mg/dLの範囲内であり、少なくとも100mg/dLの分析対象物濃度を有するサンプルの場合、±5%の範囲内である、
請求項1〜13のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項16】
前記複数のサンプルが、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物濃度を有する、
請求項1〜13のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項17】
サンプル中の分析対象物の濃度を測定するためのバイオセンサシステムであって、
少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び
前記作用電極の上又は近くに配置された、レドックス酵素を含む試薬組成物、
をそれぞれが含む複数の試験センサ、ならびに
乾燥剤を含む容器
を含み、
前記複数の試験センサが、前記容器中に50℃の温度で二週間密封されたのち前記容器から取り出されたとき、各試験センサの前記試薬組成物が前記レドックス酵素の活性の少なくとも75%を保持する
バイオセンサシステム。
【請求項18】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿する、
請求項17記載のバイオセンサシステム。
【請求項19】
前記乾燥剤が、ポリマー配合モレキュラーシーブを含む、
請求項18記載のバイオセンサシステム。
【請求項20】
前記乾燥剤が、モレキュラーシーブとシリカゲルとのブレンドを含む、
請求項18記載のバイオセンサシステム。
【請求項21】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で10%を吸湿する、
請求項17記載のバイオセンサシステム。
【請求項22】
前記乾燥剤が、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で5%〜10%を吸湿する、
請求項17記載のバイオセンサシステム。
【請求項23】
前記乾燥剤が、シリカゲルを含む、
請求項21又は22記載のバイオセンサシステム。
【請求項24】
前記容器が、試験センサ1個あたり最大で30mgのシリカゲルを含む、
請求項23記載のバイオセンサシステム。
【請求項25】
前記容器が、試験センサ1個あたり最大で10mgのシリカゲルを含む、
請求項23記載のバイオセンサシステム。
【請求項26】
前記複数の試験センサが、少なくとも10個の試験センサを含む、
請求項17〜25のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項27】
前記複数の試験センサが、少なくとも25個の試験センサを含む、
請求項17〜25のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項28】
前記複数の試験センサが、少なくとも50個の試験センサを含む、
請求項17〜25のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項29】
前記複数の試験センサが、少なくとも100個の試験センサを含む、
請求項17〜25のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項30】
各試験センサの前記試薬組成物が、前記レドックス酵素の活性の少なくとも80%を保持する、
請求項17〜29のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【請求項31】
各試験センサの前記試薬組成物が、前記レドックス酵素の活性の少なくとも85%を保持する、
請求項17〜29のいずれか1項記載のバイオセンサシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2013−518255(P2013−518255A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550193(P2012−550193)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2011/022258
【国際公開番号】WO2011/091363
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(507021757)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (33)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2011/022258
【国際公開番号】WO2011/091363
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(507021757)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (33)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
【Fターム(参考)】
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