説明

磁力選別装置及び磁力選別方法

【課題】 高精度の磁力選別を効率的かつ連続して行う。
【解決手段】 上部の原材料供給部12と下部の原材料排出部13との間に高さ方向の磁力選別空間部14を構成してなる選別筐体11と、この選別筐体11の磁力選別空間部14内に互いに平行な状態でかつそれぞれ回転自在に支持された複数個の磁力選別ロール19〜22とを備える。各磁力選別ロール19〜22が、磁力選別空間部14内に千鳥状に配列されて高さ方向に並んで設けられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉体等の非磁性原材料に混入された磁性不純物を磁力によって吸着除去して選別する磁力選別装置及び磁力選別方法に関し、さらに詳しくは鉄等の磁性不純物を高精度に除去することが必要な非水系二次電池の正極材の製造工程等に適用して好適な磁力選別装置及び磁力選別方法に関する。
【0002】
【従来の技術】携帯電子機器においては、経済性や省資源化或いは利便性から、一般に繰り返し充電が可能な二次電池が電源として用いられている。二次電池については、機器を小型軽量に保持するとともに長時間の使用を可能とする、小型軽量で高容量特性を有する非水系リチウムイオン二次電池(以下、リチウムイオン二次電池と略称する。)が注目されている。リチウムイオン二次電池は、鉛電池やニッケルカドミウム電池或いはニッケル水素電池等の従来の二次電池と比較して、上述した特性や高電圧出力を得られることから汎用されている。
【0003】かかるリチウムイオン二次電池は、フィルム状の集電体に電極活物質が塗布されて電極材を形成し、この電極材をフィルタを介して巻回或いは折り畳んで積層して非水電解質とともに電池缶に封装してなる。ところで、リチウムイオン二次電池は、例えば正極活物質中に鉄等の金属不純物が混入していた場合に、この金属不純物が充電中にイオンとして析出してセパレータ中をブリッジして負極との間で内部ショートを生じるといった問題がある。
【0004】電極材は、例えば破砕機、焼成ホッパ、スクリューフィーダ、粉砕機、パルスエアー捕集器、粉砕ホッパ、軽量ホッパ、計量器、プラネタリーミキサ等の各装置を経て製造される。電極材製造工程においては、上述した各装置を空気搬送管によって連結して電極材を連続して製造する。電極材製造工程においては、一般に空気搬送管に防錆性を有し、充分な機械的強度を有するステンレス鋼管等が用いられている。電極材製造工程においては、閉鎖型ラインを構成すると等の万全の対策を講じているが、例えば空気搬送管の内面が削られて金属不純物が混入する虞があった。
【0005】一方、上述した原材料中の不純物の混入問題は、リチウムイオン二次電池ばかりでなく、例えばポリカーボネート樹脂によって成形されるコンパクトディスクやミニディスク等の光記録媒体等においても、極めて重要な解決課題となっている。かかる光記録媒体等の製造工程においても、混入する不純物の多くが鉄やSUS(ステンレス鋼)等の工程中に一般に用いられている金属不純物である。また、原材料中の不純物の混入問題は、食品加工物や医薬品においてもその対策が極めて重要となっている。
【0006】製造工程においては、原材料中の金属不純物の混入に対して磁石を有する各種の磁力選別装置を用いた磁力選別が行われている。図5に示した懸架型磁力選別装置100は、原材料200が一対の搬送ロール101a、101b間に掛け渡されて無端走行されるベルトコンベア102上に一端側に設けたフィーダ103から供給される。懸架型磁力選別装置100は、ベルトコンベア102の上方に位置して接離自在に磁力選別ユニット104a、104bが配置されており、これら磁力選別ユニット104が原材料200の搬送に伴って下降動作する。各磁力選別ユニット104には、磁石105が設けられており、搬送される原材料200に鉄等の磁性金属不純物が混入していると、これを吸着して除去する。懸架型磁力選別装置100は、ベルトコンベア102の他端から選別済みの原材料200を次工程へと供給する。
【0007】図6に示した格子型磁力選別装置110は、同図(A)に示すように上部に供給口112が設けられるとともに、下部に排出口113が設けられた全体箱状の筐体111を備えている。格子型磁力選別装置110は、筐体111の内部に同図(B)に示す磁力選別ユニット114が多段に収納されている。磁力選別ユニット114は、枠体115に複数個の円柱状磁石116が格子状に配列されてなる。格子型磁力選別装置110は、供給口112から原材料200が筐体111の内部に供給されると、各磁力選別ユニット114の磁石116の間をぬうようにして落下して排出口113から排出される。格子型磁力選別装置110は、落下する原材料200から混入した磁性金属不純物を磁石116によって吸着除去する。
【0008】図7に示したベルトコンベア型磁力選別装置120も、原材料200が一対の搬送ロール121a、121b間に掛け渡されて無端走行されるベルトコンベア122上に一端側に設けた振動供給型フィーダ123から連続して供給される。ベルトコンベア型磁力選別装置120は、後端側の搬送ロール121bに磁石が組み込まれて磁化状態にある。ベルトコンベア型磁力選別装置120は、フィーダ123から攪拌された状態で供給される原材料200がベルトコンベア122上を搬送されて端部まで達すると、磁化状態にある搬送ロール121bにより磁性金属不純物がそのままベルトコンベア122上に吸着保持され、選別された原材料200のみが落下する。ベルトコンベア型磁力選別装置120は、ベルトコンベア122上に吸着された磁性金属不純物が搬送ロール121bを通過すると、ベルトコンベア122から自重で落下することで連続して磁力選別を行うことが可能となる。
【0009】図8に示したロール型磁力選別装置130も、上述した磁力選別装置120と同様の磁力選別動作を行うが、ベルトコンベア122に代えて磁石を組み込んだ選別ロール131が備えられている。ロール磁力選別装置130は、フィーダ132から原材料200が直接ロール131の外周面上に供給されることで、混入した磁性金属不純物を吸着除去する。
【0010】図9に示したドラム型磁力選別装置140は、上述したロール型磁力選別装置130と構成をほぼ同様とする磁力選別装置であるが、選別ドラム141の内部に半円形断面の磁石142を固定して設けた構成に特徴を有している。ドラム型磁力選別装置140は、フィーダ142から原材料200が直接選別ドラム141の外周面上に供給されるが、磁石142の対応領域において混入した磁性金属不純物を吸着除去する。ドラム型磁力選別装置140は、選別ドラム141に吸着された磁性金属不純物が磁石142の対応領域を通過すると自重で落下することで、連続して磁力選別を行うことが可能となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、磁力選別装置は、選別効率が磁石自体の強さ、磁石と原材料との実距離、接触確率等によって決定される。上述した従来の各磁力選別装置は、いずれも充分な磁気力が得られないために高精度の磁力選別が行い得ない、処理能力が小さい、磁性金属不純物の除去処理が面倒であるとともに再混入が生じやすいといった問題があった。
【0012】例えば、懸架型磁力選別装置100は、ベルトコンベア102に対して磁力選別ユニット104が接離動作されるが、原材料200との間隔があるために充分な磁力をこの原材料200に対して作用し得ず高精度の磁力選別が行い得ないといった問題があった。また、懸架型磁力選別装置100は、ベルトコンベア102上に原材料200が厚みを有して搬送される場合に磁力選別ユニット104の磁力が内層まで作用されず高精度の磁力選別が行い得ないといった問題があった。さらに、懸架型磁力選別装置100は、磁力選別ユニット104に付着した磁性金属不純物を取り除く必要があり、連続選別が行い得ないために選別効率が悪いといった問題があった。
【0013】格子型磁力選別装置110は、比較的構造が簡易であり、多数個の磁石116を有することで比較的高精度でかつ効率的な磁力選別が行われるといった特徴を有している。しかしながら、この格子型磁力選別装置110も、1ロット分の原材料200の磁力選別を行った後に、筐体111から磁力選別ユニット114を取り出してそれぞれの磁石116に付着した磁性金属不純物を取り除く必要があり、連続選別が行い得ないために工程全体の効率が悪いといった問題があった。
【0014】ベルトコンベア型磁力選別装置120は、ベルトコンベア122に付着した磁性金属不純物が搬送ロール121bを通過すると自重で落下することで、原材料200の磁力選別を連続して行うことが可能である。しかしながら、ベルトコンベア型磁力選別装置120は、搬送ロール121bの外周部のわずかな間で磁力選別を行う構造であることから高精度の選別が行い得ないといった問題がある。しかも、ベルトコンベア型磁力選別装置120は、ベルトコンベア122を介して原材料200に磁力を作用させるために磁力が弱く、またベルトコンベア122側に吸着された磁性金属不純物が原材料200とともに流れ落ちて再び混入するといった問題があった。
【0015】ロール型磁力選別装置130は、選別ロール131に磁石が組み込まれることによって構造の簡易化、小型化が図られるとともに、比較的大きな磁力を原材料200に直接作用させることが可能であるといった特徴を有している。ロール型磁力選別装置130においては、1ロット分の原材料200の磁力選別を行った後に、選別ロール131に吸着された磁性金属不純物を取り除く必要があり、連続選別が行い得ないために工程全体の効率が悪いといった問題があった。
【0016】ドラム型磁力選別装置140は、ロール型磁力選別装置130と同様に構造が簡易で小型であるとともに、選別ドラム141に吸着された磁性金属不純物が磁石142から離れた位置で自重で落下することで、原材料200の磁力選別を連続して行うことが可能である。しかしながら、ドラム磁力選別装置140は、選別ドラム141の外周部のわずかな間で磁力選別を行う構造であることから高精度の選別が行い得ないといった問題がある。また、ドラム磁力選別装置140においては、選別ドラム141を介して磁石142の磁力が原材料200に作用するために大きな磁力を得ることが困難であり、吸着された磁性金属不純物が原材料200とともに流れ落ちて再び混入するといった問題があった。
【0017】上述した磁力選別装置、格子型磁力選別装置110、ベルトコンベア型磁力選別装置120、ロール型磁力選別装置130及びドラム型磁力選別装置140について、以下の条件によって選別能力の比較を行い表1の結果を得た。
原材料:リチウムイオン二次電池用正極活物質を想定して、平均粒径15μmのLiCoO10Kg中に高純度化学研究所製の最大粒径150μm以下のNi粉を混入したサンプルを製作した。
評価方法:100ccポリ容器内に、各選別装置において選別処理した後の原材料50gと、直径1cm、高さ5mm、表面磁力約1.0T(10,000ガウス)のネオジ磁石1個と、純水75mlとを入れて1時間ロールミルにより攪拌後、磁石付着物を、濃硫酸で溶解、蒸発乾固後0.1N塩酸で再溶解、50mlメスアップした溶液をセイコー電子製ICP発光分光分析機SPS-1200VRによって定量。
【0018】各磁力選別装置の概略仕様は次の通りである。なお、各磁力選別装置には、表面磁力が約1.1Tのネオジウム−ホウ素マグネットが用いられている。各磁力選別装置には、格子型磁力選別装置110を除いて振動型フィーダが備えられている。
・格子型磁力選別装置110:筐体111内にそれぞれ7本の磁石116を組み込んだ4個の磁力選別ユニット114を収納。各磁力選別ユニット114の処理面は約30cm四方。
・ベルトコンベア型磁力選別装置120:直径約8cm、軸長約25cmの磁石使用。
・ロール型磁力選別装置130:直径約8cm、軸長約20cmの磁石使用。
・ドラム型磁力選別装置140:直径約35cm、幅約30cmのドラム使用。
【0019】
【表1】


【0020】表1から明らかなように、Niを効率的に選別する磁力選別効率は、Ni定量値のようにロール型磁力選別装置130が最大で、以下ベルトコンベア型磁力選別装置120、格子型磁力選別装置110、ドラム型磁力選別装置140の順となった。磁力選別装置においては、備えられる磁石自体の磁力強度、磁石と被選別物である原材料との距離、処理速度、及び磁石と原材料との接触確率等により磁力選別効率が決定される。
【0021】選別速度については、表1の処理時間の欄から明らかなように、格子型磁力選別装置110が最大であり、その他の磁力選別装置についてはほとんど有為差が無かった。選別速度については、原材料を振動型フィーダにより供給するか否かによって大きな影響がある。なお、ベルトコンベア型磁力選別装置120については、ベルトコンベア122上に多量の原材料が付着した状態で駆動される。かかる現象は、例えば1ロット分の原材料の選別を行う場合には特に問題は無いものの、原材料の歩留りが低下し、付着した未選別の原材料の混入或いは選別力の低下等の問題があり好ましくない。
【0022】表1におけるロール型磁力選別装置130の下欄は、原材料を直接供給することにより処理時間の短縮化を図った場合である。ロール型磁力選別装置130においては、原材料の供給方法を代えて格子型磁力選別装置110と同等の高速処理化を図った場合に、格子型磁力選別装置110よりも高い磁力選別効率が得られる。ロール型磁力選別装置130は、磁石自体の磁束量が大きく、より高精度の磁力選別を行うことが可能であり、性能が最も高いと評価できる。
【0023】ロール型磁力選別装置130について、上述した原材料を用いてロール131の回転速度(60rpmと120rpm)と磁力選別効率の関係、回転速度60rpm一定で多数回選別処理(但し、各パス毎にロール131の清掃実施)を行った場合のパス回数と磁力選別効率の関係及び回転速度60rpm一定での連続処理を行った場合の磁力選別効率の関係とについて検証をおこない、その結果を表2に示した。
【0024】
【表2】


【0025】表2から明らかなように、ロール型磁力選別装置130においては、ロール131の回転数を大きくすることにより磁力選別効率の向上が図られる。この理由は、ロール131の回転数を上げることによって、凝集した状態で供給される原材料がロール131の外周面に供給される際にバラされて選別効率が向上すると推察される。ロール型磁力選別装置130においては、ロール131の回転数を調整自在とすることが好ましい。
【0026】ロール型磁力選別装置130においては、パス回数が増えるにしたがって、各パス毎の磁力選別効率が低下するものの残存磁性不純物の成分量も確実に減少するようになる。ロール型磁力選別装置130においては、処理量を増やすほど磁力選別効率が低下する。この原因は、パス回数の増加に伴ってロール131に吸着されたNiが後から供給される原材料によって剥ぎ落とされるものと推察される。例えばリチウムイオン二次電池においては、正極活物質に含まれる磁性材成分は極めて微量であり、磁力選別効率の向上、すなわち高精度の磁力選別が必須となる。
【0027】ロール型磁力選別装置130においては、ロール131を未清掃状態で駆動するにしたがって、徐々に磁力選別効率が低下する。この原因は、ロール131に吸着されたNiが脱落したりNi層が厚くなって磁力が低下するといったことによるものと推察される。この現象は、SUSや酸化鉄のような磁性の弱いものについて顕著である。
【0028】上述した従来の磁力選別装置は、格子型磁力選別装置110以外は選別部位が開放された構造であるために供給された原材料が周囲に飛散する。この原材料の飛散は、比重が小さく、微粒であるほど顕著となるために、未選別分が選別分に混入することにより選別効率が低下するといった問題を生じさせる。
【0029】上述した検討結果から明らかなように、磁力選別装置については、基本形態としてロール型が有効であり、短時間での多数回選別処理が行われ、かつロールの自動清掃が可能とされた構造であることが理想である。したがって、本発明は、上述した従来の磁力選別装置及び磁力選別方法の問題点を解決し、高精度の磁力選別を効率的かつ連続して行うことを可能とする理想的な磁力選別装置及び磁力選別方法を提供することを目的に提案されたものである。
【0030】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成する本発明にかかる磁力選別装置は、上部の原材料供給部と下部の原材料排出部との間に高さ方向の磁力選別空間部を構成してなる選別筐体と、この選別筐体の磁力選別空間部内に互いに平行な状態でかつそれぞれ回転自在に支持された複数個の磁力選別ロールとを備え、各磁力選別ロールが磁力選別空間部内に千鳥状に配列されて高さ方向に並んで設けられてなる。
【0031】以上のように構成された本発明にかかる磁力選別装置によれば、原材料供給部から供給された原材料が、高さ方向に配置された大きな磁力を有する複数個の磁力選別ロールに対してその外周面に原材料が直接接触しながら重力により落下することから、それぞれの磁力選別ロールの磁力損失がほとんどなく原材料に対して磁力が有効に作用されて磁性不純物を高精度に吸着するとともに早い選別速度を以って除去するようになる。磁力選別装置によれば、高精度の磁化選別を効率的に行って原材料を次工程へと大量供給することで、高精度の製品を生産性の向上を図って製造することを可能とする。
【0032】また、本発明にかかる磁力選別装置は、選別筐体に、互いに平行に対峙して対向空間内に磁力選別空間部を構成する一対の隔壁が設けられることにより磁力選別空間部を挟んで高さ方向の一対の磁性不純物排出空間部が構成され、これら磁性不純物排出空間部内に各磁力選別ロールにそれぞれ対応して複数個の払拭部材が配置されてなる。磁力選別装置は、各磁力選別ロールの外周面の一部が隔壁に設けられた開口部を介して磁性不純物排出空間部内に突出されるとともに、この突出された外周面において払拭部材がそれぞれ当接する。
【0033】以上のように構成された本発明にかかる磁力選別装置によれば、磁力選別空間部内において各磁力選別ロールにより原材料から磁性不純物を吸着除去するとともに、各磁力選別ロールの外周面に吸着した磁性不純物が払拭部材によって磁性不純物排出空間部内において払拭除去されて磁性不純物排出空間部から排出される。したがって、磁力選別装置によれば、各磁力選別ロールによる磁性不純物の選別とクリーニングとが同時に行われるようになり、工程能率の向上が図られるようになるとともに、除去された磁性不純物の再混入が確実に防止される。
【0034】また、上述した目的を達成する本発明にかかる磁力選別方法は、上部の原材料供給部と下部の原材料排出部との間に高さ方向の磁力選別空間部を構成してなる選別筐体と、磁力選別空間部内に互いに平行な状態でかつそれぞれ回転自在に支持された複数個の磁力選別ロールとを備え、これら磁力選別ロールが磁力選別空間部内に千鳥状に配列されて高さ方向に並んで設けられてなる磁力選別装置が用いられる。磁力選別方法は、原材料供給部から選別筐体内に原材料を供給し、原材料が重力により磁力選別空間部を落下しながら各磁力選別ロールの外周部の間をすり抜ける際に、これら各磁力選別ロールにより混入した磁性不純物が吸着除去されることにより磁力選別を行い、選別済みの原材料を次工程へと供給する。
【0035】本発明にかかる磁力選別方法によれば、磁力選別装置によって、原材料供給部から供給された原材料が高さ方向に配置された大きな磁力を有する複数個の磁力選別ロールに対してその外周面に原材料が直接接触しながら重力により落下する間に磁力選別が行われる。磁力選別方法によれば、磁力選別装置によって、それぞれの磁力選別ロールの磁力損失がほとんどなく原材料に対して磁力が有効に作用されて磁性不純物の選別が行われることで磁性不純物が早い選別速度を以って高精度に選別されるようになり、高精度の製品を生産性の向上を図って製造することを可能とする。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態として示す磁力選別装置10は、リチウムイオン二次電池1の製造工程に設置され、詳細を後述するように前工程から供給される正極活物質の原材料9から鉄等の磁性金属不純物9aを吸着除去する。なお、磁力選別装置10は、例えばコンパクトディスク等の円盤状記録媒体の製造工程やその他の工業製品或いは食品加工物や医薬品の製造工程等にも広く用いられる。
【0037】リチウムイオン二次電池1は、図4に示すように、帯状の正極材2と負極材3とがセパレータ4を介して積層されるとともに渦巻き状に巻回されて電池素子を構成し、この電池素子が非水電解液とともに有底円筒形の電池缶5内に収納される。リチウムイオン二次電池1は、電池缶5の上端開口部に蓋体6がかしめ付けられて電池素子と非水電解液とを電池缶5内に密封している。
【0038】正極材2は、フィルム状のアルミニウム箔等からなる正極集電体の両面或いは片面に正極活物質が塗布されるとともに、正極集電体の一端部に蓋体6に接続される正極リード7を取り付けてなる。正極活物質には、例えばLiMO(M:一種類以上の遷移金属、x:電池の放電状態により異にし、通常0.05以上1.10以下)に示す高電圧の発生或いはエネルギー密度に優れた特性を有するリチウム複合酸化物やその他の金属酸化物、金属硫化物が用いられる。
【0039】正極活物質は、ポリフッ化ビニリデン等の結合剤が混合されるとともに導電剤として炭素粉末等が添加され、n−メチルピロリドン等の有機溶媒に分散されてスラリー状の正極材塗料を生成する。正極材2は、ドクターブレード法等によって正極材塗料を正極集電体に均一に塗布した後に高温乾燥処理を施して有機溶媒を飛ばし、さらにロールプレスによる加圧処理を施して正極活物質層を正極集電体上に高密度化して成膜形成してなる。
【0040】負極材3は、フィルム状の銅箔等からなる負極集電体の両面或いは片面に負極活物質が塗布されるとともに、負極集電体の一端部に電池缶5と接続される負極リード8を取り付けてなる。負極活物質には、例えばリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な炭素材料やポリアセチレン、ポリピロール等の高分子材料或いはSnO等の酸化物が用いられる。負極活物質は、ポリフッ化ビニリデン等の結合剤が混合され、n−メチルピロリドン等の有機溶媒に分散されてスラリー状の負極材塗料を生成する。負極材3は、ドクターブレード法等によって負極材塗料を負極集電体に均一に塗布した後に高温乾燥処理を施して有機溶媒を飛ばし、さらにロールプレスによる加圧処理を施して負極活物質層を負極集電体上に高密度化して成膜形成してなる。
【0041】非水電解液は、電解質を有機溶媒中に溶解させた溶液が用いられる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等が用いられる。かかる有機溶媒は、1種類が単独で用いられ或いは2種類以上が混合して用いられる。
【0042】電解質としては、上述した有機溶媒に溶解可能でありかつイオン伝導性を有するリチウム塩が用いられ、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等が用いられる。これら電解質も、1種類が単独で用いられ或いは2種類以上が混合して用いられる。
【0043】ところで、正極活物質は、例えば粉砕機、焼成ホッパ、スクリューフィーダ、粉砕機、パルスエアー捕集器、粉砕ホッパー、計量器、プラネタリーミキサ等の装置を有する製造工程によって製造される。製造工程は、上述した各装置間を空気搬送管によって連結し、閉鎖型ラインを構成して正極活物質の製造を行う。製造工程においては、正極活物質の原材料9に含まれ或いは工程中で混入する鉄等の磁性不純物9aを高精度に除去するために、磁力選別装置10が設置される。
【0044】磁力選別装置10は、図1及び図2に示すように、詳細を省略する基台に対して垂直状態で支持される角筒状の選別筐体11を備える。選別筐体11には、上部に原材料供給開口部12が開口されるとともに下部に原材料排出開口部13が開口され、これら原材料供給開口部12と原材料排出開口部13との間に高さ方向の磁力選別空間部14が内部に構成されてなる。選別筐体11には、磁力選別空間部14が互いに平行に対峙する一対の隔壁15、16間に構成され、第1の隔壁15と筐体前面板11aとの間に磁力選別空間部14と高さ方向の第1の磁性不純物排出空間部17が構成されるとともに第2の隔壁16と筐体背面板11bとの間に第2の磁性不純物排出空間部18が構成されてなる。
【0045】磁力選別装置10には、磁力選別空間部14をそれぞれ横断して高さ方向に並べられた第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22が備えられている。また、磁力選別装置10には、第1の磁性不純物排出空間部17内に第1の払拭ローラ23と第2の払拭ローラ24とが備えられ、第2の磁性不純物排出空間部18内に第3の払拭ローラ25と第4の払拭ローラ26とが備えられている。磁力選別装置10は、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22と第1の払拭ローラ23乃至第4の払拭ローラ26とを、それぞれの支軸19a乃至26aを相対する筐体側板11c、11d間に回転自在に支架することにより各ローラを磁力選別空間部14及び第1の磁性不純物排出空間部17と第2の磁性不純物排出空間部18内にそれぞれ回転自在に配置してなる。
【0046】なお、第1の払拭ローラ23乃至第4の払拭ローラ26は、それぞれ第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22とほぼ同長とされる。第1の払拭ローラ23乃至第4の払拭ローラ26については、例えば第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22の外周部にそれぞれ当接するブラシ部材であってもよく、またブレード部材であってもよい。第1の払拭ローラ23乃至第4の払拭ローラ26には、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22とそれぞれ連動する適宜の回転駆動機構が付設されているが、特に回転駆動機構を不要としてもよい。
【0047】磁力選別装置10には、図示しないが第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22を回転駆動するローラ駆動機構が備えられる。磁力選別装置10は、第1の磁力選別ロール19と第3の磁力選別ロール21とを図2矢印で示すように反時計方向に回転駆動するとともに、第2の磁力選別ロール20と第4の磁力選別ロール22とを時計方向に回転駆動する。
【0048】磁力選別装置10は、第1の磁力選別ロール19と第3の磁力選別ロール21とが、図2に示すようにそれぞれの支軸19a、21aを第1の隔壁15側でかつ互いに同軸上に位置するようにして磁力選別空間部14に配置してなる。磁力選別装置10は、第2の磁力選別ロール20と第4の磁力選別ロール22とが、同図に示すようにそれぞれの支軸20a、22aを第1の隔壁15側でかつ互いに同軸上に位置するようにして磁力選別空間部14内に配置してなる。
【0049】磁力選別装置10は、第1の磁力選別ロール19と第2の磁力選別ロール20とが相対する外周面の一部を高さ方向に対して重なり合うようにし、同様にして第2の磁力選別ロール20と第3の磁力選別ロール21とが相対する外周面の一部を高さ方向に対して重なり合うようにし、さらに第3の磁力選別ロール21と第4の磁力選別ロール22とが相対する外周面の一部を高さ方向に対して重なり合うようにして磁力選別空間部14内に配置してなる。
【0050】磁力選別装置10は、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22が、相対する外周部間に軸方向の全長に亘って間隙を構成するようにしてそれぞれ磁力選別空間部14内に配置してなる。磁力選別装置10は、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22間にそれぞれ構成された間隙が磁力選別空間部14内において原材料9の流路を構成し、この間において混入した磁性不純物9aの磁力選別を行う。磁力選別装置10は、上述した構成から、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22を磁力選別空間部14内に高さ方向に並んで千鳥状に配列してなる。
【0051】磁力選別装置10には、図2に示すように、第1の磁力選別ロール19と第3の磁力選別ロール21とに対向して第1の隔壁15に第1の開口部27と第2の開口部28が開口され、また第2の磁力選別ロール20と第4の磁力選別ロール22とに対向して第2の隔壁16に第3の開口部29と第4の開口部30が開口されている。第1の開口部27乃至第4の開口部30は、それぞれ第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22の軸長よりもやや大きな長さを有するとともに、これら第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22の外周面の一部をそれぞれ第1の磁性不純物排出空間部17と第2の磁性不純物排出空間部18に突出させるに足る幅を以って形成されている。
【0052】磁力選別装置10は、図2に示すように、第1の磁性不純物排出空間部17内において第1の開口部27から突出された第1の磁力選別ロール19の外周面に第1の払拭ローラ23が当接するとともに、第3の開口部29から突出された第3の磁力選別ロール21の外周面に第3の払拭ローラ25が当接されてなる。また、磁力選別装置10は、第2の磁性不純物排出空間部18内において第2の開口部28から突出された第2の磁力選別ロール20の外周面に第1の払拭ローラ23が当接するとともに、第4の開口部30から突出された第4の磁力選別ロール22の外周面に第4の払拭ローラ26が当接されてなる。
【0053】磁力選別装置10は、上述した第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22が、原材料9に対して充分な磁力を作用させるためにそれぞれ10,000ガウス以上の磁力を有する磁石体によって構成される。磁力選別装置10は、詳細を後述するが第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22が、それぞれの磁力方向を外周面から軸方向に対して直交する方向に発生するように着磁されている。なお、磁力選別装置10は、後述するように第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22にそれぞれ永久磁石を用いるが、電磁石や超伝導磁石も用いられる。
【0054】第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22の構成について図3に示した第1の磁力選別ロール19を参照して詳細に説明する。磁力選別ロール19は、合金製の芯材31の外周部に、複数個のリング状単磁石32と鉄等のリング状磁性部材33とを組み合わせた組磁石34を軸装して構成してなる。磁力選別ロール19は、芯材31の両端から支軸19aの両端がそれぞれ突出されてなる。磁力選別ロール19は、図示しないが、各単磁石32毎に或いは組磁石34の全体を付着物による汚損を防止したり摩耗や破損を防止したりして保護する保護部材によって包み込むようにしてもよい。保護部材は、例えばステンレス鋼やチタン等によって形成され、単磁石22と磁力選別空間部14との間隔が大きくなるほど磁力が急激に減衰することからできうる限り薄厚に形成される。
【0055】単磁石32には、例えばフェライト磁石、アルニコ磁石、サマコバ磁石、ネオジ磁石等の永久磁石が用いられる。単磁石32は、効率的な磁力選別を行うために、ネオジ磁石等のように大磁力特性を有する永久磁石が好適に用いられる。各単磁石32は、それぞれ軸方向の着磁が行われており、同極を互いに対向するようにして磁性材33を挟んで軸方向に直列に組み合わされて長軸の組磁石25を構成する。組磁石25は、芯材31上に軸装されることによって磁力選別ロール19を構成してなる。磁力選別ロール19は、長軸の組磁石25が同図破線で示すように外周面と直交する方向に対して大きな磁力を生じている。したがって、磁力選別ロール19は、磁力選別空間部14内に横断するようにして配置されることにより、この磁力選別空間部14に対して大きな磁力が原材料9の流路を横切るように作用する。
【0056】磁力選別装置10は、図1に示すように原材料供給開口部12を上側にして基台に設置され、原材料供給開口部12に対応して配置された供給フィーダ35から原材料9が供給される。磁力選別装置10は、原材料9が磁力選別空間部14内を自重で落下する間に第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22により混入した磁性不純物9aを吸着除去し、選別済みの原材料9を原材料排出開口部13から排出フィーダ36へと排出して次工程へと供給する。磁力選別装置10は、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22によって吸着除去した磁性不純物9aを第1の磁性不純物排出空間部17と第2の磁性不純物排出空間部18とから磁性不純物排出ホッパ37a、37bへと排出する。
【0057】磁力選別装置10においては、図2に示すように原材料供給開口部12から供給された原材料9が、第1の磁力選別ロール19の外周部上を直接その自重により落下する過程で混入した磁性不純物9aをこの第1の磁力選別ロール19の外周部に吸着する。磁力選別装置10においては、同図矢印で示すように原材料9が第1の磁力選別ロール19を超えて第2の磁力選別ロール20の外周部上へと落下することで、この第2の磁力選別ロール20により第1の磁力選別ロール19で除去し得なかった磁性不純物9aを吸着除去する。磁力選別装置10においては、以下同様にして第3の磁力選別ロール21及び第4の磁力選別ロール22によって磁性不純物9aの吸着除去処理を行う。
【0058】磁力選別装置10においては、上述したように磁力選別空間部14内に第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22を高さ方向に千鳥状に配列するとともに、それぞれの磁力が磁力選別空間部14を横断する方向に強く作用するように構成されている。磁力選別装置10においては、かかる構成により供給された原材料9がその落下速度を低減されるとともに第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22に対してそれぞれ充分な接触距離を保持されて磁力選別空間部14内を落下することで、原材料9から混入された磁性不純物9aを高精度に選別除去する。
【0059】磁力選別装置10においては、磁力選別空間部14内において第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22がそれぞれの外周部に磁性不純物9aを吸着する。磁力選別装置10においては、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22が回転して磁力選別空間部14から第1の磁性不純物排出空間部17或いは第2の磁性不純物排出空間部18内に達すると、それぞれに当接した第1の払拭ローラ23乃至第4の払拭ローラ26により吸着した磁性不純物9aが払拭除去される。磁力選別装置10においては、払拭除去された磁性不純物9aが第1の磁性不純物排出空間部17或いは第2の磁性不純物排出空間部18内を落下することで、磁力選別空間部14内を落下する原材料9に再混入することは無い。
【0060】磁力選別装置10においては、上述した処理を受けて磁力選別空間部14内において磁性不純物9aを高精度に選別除去した原材料9を原材料排出開口部13から排出フィーダ36へと排出し、この排出フィーダ36を介して次工程へと供給する。磁力選別装置10においては、第1の磁性不純物排出空間部17或いは第2の磁性不純物排出空間部18内を落下した磁性不純物9aが磁性不純物排出ホッパ37に貯められて適宜廃棄処分が行われるようにする。
【0061】上述した磁力選別装置10について、先の磁力選別装置の評価方法と同様の方法によりNi粉末を混合した正極活物質材料と定量法とにより磁力選別効率の評価を行い、従来のロール型磁力選別装置130との対比を表3に示した。なお、同表において多段式の表示が磁力選別装置10に関する評価値であり、ロール型の表示がロール型磁力選別装置130に関する評価値である。磁力選別装置10については、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22が60rpmで回転駆動される。
【0062】
【表3】


【0063】磁力選別装置10においては、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22により4回の連続選別が行われ、上段の磁力選別ロールから下段の磁力選別ロールに落下する際に原材料9の塊がバラされて磁性不純物の捕集効率の向上が図られる。磁力選別装置10においては、閉鎖された磁力選別空間部14内において磁力選別が行われるとともに、除去された磁性不純物9aが第1の磁性不純物排出空間部17及び第2の磁性不純物排出空間部18に分流されて排出される。磁力選別装置10においては、第1の磁力選別ロール19乃至第4の磁力選別ロール22が常に第1の払拭ローラ23乃至第4の払拭ローラ26によって清掃されることにより、磁力の劣化が抑制されるとともに吸着した磁性不純物9aが剥離して原材料9に再混入することが防止される。したがって、磁力選別装置10は、表3から明らかなように、ロール型磁力選別装置130によって4回の選別処理を行った場合と比較して極めて高精度の磁力選別を行う。
【0064】
【実施例】上述した磁力選別装置10によって磁性不純物の選別を行った原材料9を用いて以下の仕様でリチウムイオン二次電池1を製作し、従来の磁力選別装置によって磁性不純物の選別を行った原材料200を用いて製作されたリチウムイオン二次電池を比較例としてその評価を行った。
【0065】(実施例)上述した磁力選別装置10によって磁力選別を行った正極活物質10Kgを用いて、以下の仕様の実施例1のリチウムイオン二次電池を製作した。
LiCoO2(平均粒径15μm) 100重量部 ポリフッ化ビニリデン(平均分子量30万) 5重量部 カーボンブラック(平均粒径15μm) 10重量部 n−メチル−2−ピロリドン 100重量部以上の組成の懸濁液をディスパーにて4時間混合して正極材塗料を製作し、この正極材塗料を厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後にロールプレス機にて圧縮した後にスリッタにて裁断して正極原反を作成した。
【0066】
人造グラファイト(平均粒径20μm) 100重量部 ポリフッ化ビニリデン(平均分子量30万) 15重量部 n−メチル−2−ピロリドン 200重量部以上の組成の懸濁液をディスパーにて4時間混合して負極材塗料を製作し、この負極材塗料を厚さ15μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥後にロールプレス機にて圧縮した後にスリッタにて裁断して負極原反を作成した。
【0067】リチウムイオン二次電池は、上述した正極原反と負極原反とを所定の大きさに切断して正極材と負極材とを形成した後にそれぞれにリードを溶着する。リチウムイオン二次電池は、正極材に対して、厚みが25μmの微多孔膜ポリエチレンセパレータ、負極材、厚みが25μmの微多孔膜ポリエチレンセパレータを順次積層して電池素子を形成する。リチウムイオン二次電池は、各リードが互いに対角線上に位置するように配され、正極リードが中心となるようにセンターピンの外周にロール状に巻回する。リチウムイオン二次電池は、電極材よりも長尺とされたポリエチレンセパレータが、電極材の巻回体の外周において巻き付けられた後に粘着テープにより固定される。
【0068】リチウムイオン二次電池は、負極リードを厚みが0.25mmの鋼板製の電池缶の底面に溶接した後に、絶縁板を介して電池素子が電池缶に収納される。リチウムイオン二次電池は、電池缶内に、1リットルのエチレンカーボネートと1.2−ジメトキシエタンの混合溶液からなる有機溶媒に1モルのLiPFを溶解してなる非水系電解液を注入し、さらに電池素子の上部に絶縁板、ガスケット、安全弁、PTC素子を配置した後に正極リードを蓋体に溶接する。リチウムイオン二次電池は、蓋体を電池缶に嵌合するとともに電池缶の外周縁にかしめ処理を施して完成される。
【0069】(比較例1)上述した従来の格子型磁力選別装置110によって磁力選別を行った正極活物質を用いて、上述した実施例と同様の工程を経てリチウムイオン二次電池を製作した。
【0070】(比較例2)磁力選別工程を全く経ない正極活物質を用いて上述した実施例と同様の工程を経てリチウムイオン二次電池を製作した。
【0071】(評価)以上のようにして製作された実施例1のリチウムイオン二次電池及び比較例1及び比較例2のリチウムイオン二次電池について、内部ショート発生率及び磁性成分が原因のショート発生率について、以下の方法によってそれぞれの評価を行った。
【0072】内部ショート発生率の調査は、製作した各リチウムイオン二次電池を25℃、60RH%の環境条件下で12時間放置した後に、0.2C定電流条件で4.25Vまで充電し、さらにこの電圧条件で2時間の定電圧充電を行った。各リチウムイオン二次電池について、充電終了後、上述した環境条件下で12時間放置した後に電圧測定を行い、4.2Vに達しないものを不良とした。
【0073】ショート発生率の調査は、上述した内部ショート発生率調査の結果不良判定を行ったリチウムイオン二次電池についてこれを分解してセパレータを取り出して目視検査を行い、このセパレータに変色部位が生じていた場合に当該箇所において内部ショートが発生したと判断してその分析を行った。分析には、EDX−EPMA(エネルギー分散型X線回析・電子プローブ微量回析:フィリップ社製の走査型電子顕微鏡XL30FEG、同社製のX線検出器EDAXDX4i)を用い、セパレータの変色部位の元素分析を行った。分析の結果、鉄及びニッケルが強く検出されたリチウムイオン二次電池については、磁性不純物に起因して内部ショートが発生したものとし、その割合を算出した。
【0074】実施例のリチウムイオン二次電池及び比較例1、比較例2のリチウムイオン二次電池についての評価結果は、表4に示す通りであった。
【0075】
【表4】


【0076】表4から明らかなように、実施の形態として示した磁力選別装置10を用いて磁力選別を行った実施例のリチウムイオン二次電池は、格子型磁力選別装置110を用いて磁力選別を行った比較例1及び比較例2のリチウムイオン二次電池と比較して、内部ショート率及び磁性成分起因率が低下しており不良発生が大幅に低減されている。磁力選別装置10は、上述した正極活物質のサンプルによる評価と同様に、リチウムイオン二次電池の形態においても磁性不純物を高精度に選別除去することが明らかである。
【0077】なお、上述した実施の形態として示した磁力選別装置10は、高さ方向に千鳥状に配列した4個の磁力選別ロール19乃至22を備えたが、磁力選別ロールをさらに多段に設けることによってより高精度の磁力選別が可能となる。また、磁力選別装置10は、磁性選別空間部14と平行に第1の磁性不純物排出空間部17と第2の磁性不純物排出空間部18とを設けたが、例えば各磁力選別ロール19乃至22に対して払拭ローラを軸方向に移動させてそのクリーニングを行うことで、磁性不純物排出空間部を側方に配置するようにしてもよい。
【0078】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、高さ方向に配置された大きな磁力を有する複数個の磁力選別ロールに対して原材料供給部から供給された原材料が直接接触しながら重力により落下して順次磁力選別が行われることから、原材料に対して磁力が有効に作用されて磁性不純物を高精度に吸着するとともに早い選別速度を以って除去することが可能となる。したがって、本発明によれば、原材料供給部から選別筐体内に原材料が連続して供給されて高精度の磁力選別を行って次工程へと供給することから、製造工程の効率化が図られて高精度、高品質の製品が製造されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる磁力選別装置の概略構成図である。
【図2】同磁力選別装置の要部縦断面図である。
【図3】同磁力選別装置に備えられる磁力選別ロールの説明図である。
【図4】リチウムイオン二次電池の縦断面図である。
【図5】従来の懸架型磁力選別装置の概略構成図である。
【図6】従来の格子型磁力選別装置を示し、同図(A)は斜視図、同図(B)は選別ユニットの斜視図である。
【図7】従来のベルトコンベア型磁力選別装置の概略構成図である。
【図8】従来のロール型磁力選別装置の概略構成図である。
【図9】従来のドラム型磁力選別装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 リチウムイオン二次電池、9 原材料、10 磁力選別装置、11 選別筐体、12 原材料供給開口部、13 原材料排出開口部、14 磁力選別空間部、15,16 隔壁、17,18 磁性不純物排出空間部、19乃至22 磁力選別ロール、23乃至26 払拭ローラ、27乃至30 開口部、32 単磁石、33 磁性材、34 組磁石、35 供給フィーダ、36 排出フィーダ、37 磁性不純物排出フィーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上部の原材料供給部と下部の原材料排出部との間に高さ方向の磁力選別空間部を構成してなる選別筐体と、上記選別筐体の磁力選別空間部内に互いに平行な状態でかつそれぞれ回転自在に支持された複数個の磁力選別ロールとを備え、上記各磁力選別ロールが、上記磁力選別空間部内に千鳥状に配列されて高さ方向に並んで設けられることを特徴とする磁力選別装置。
【請求項2】 上記各磁力選別ロールが、それぞれの磁力方向が外周面に対して直交する方向に発生するように着磁されることを特徴とする請求項1に記載の磁力選別装置。
【請求項3】 上記各磁力選別ロールに、10,000ガウス以上の磁力を有する磁石が用いられることを特徴とする請求項1に記載の磁力選別装置。
【請求項4】 上記各磁力選別ロールの外周面にそれぞれ当接しながら回転する複数個の払拭部材を備え、これら払拭部材によって上記各磁力選別ロールの外周面に吸着した磁性不純物を払拭除去することを特徴とする請求項1に記載の磁力選別装置。
【請求項5】 上記選別筐体には、互いに平行に対峙して対向空間内に上記磁力選別空間部を構成する一対の隔壁が設けられることにより上記磁力選別空間部を挟んで高さ方向の一対の磁性不純物排出空間部が構成されるとともに、これら磁性不純物排出空間部内に上記各磁力選別ロールにそれぞれ対応して複数個の払拭部材が配置され、上記各磁力選別ロールの外周面の一部が上記隔壁に設けられた開口部を介して上記磁性不純物排出空間部内に突出されるとともに、この突出された外周面において上記払拭部材がそれぞれ当接することにより外周面に吸着した磁性不純物が払拭除去されて上記磁性不純物排出空間部から排出されることを特徴とする請求項1に記載の磁力選別装置。
【請求項6】 上部の原材料供給部と下部の原材料排出部との間に高さ方向の磁力選別空間部を構成してなる選別筐体と、上記磁力選別空間部内に互いに平行な状態でかつそれぞれ回転自在に支持された複数個の磁力選別ロールとを備え、これら磁力選別ロールが上記磁力選別空間部内に千鳥状に配列されて高さ方向に並んで設けられてなる磁力選別装置が用いられ、上記選別筐体内に原材料を供給して上記磁力選別空間部を通過する間に混入した磁性不純物を吸着除去することにより磁力選別を行った後に、選別済原材料を次工程へと供給することを特徴とする磁力選別方法。
【請求項7】 磁力方向が外周面に対して直交する方向に発生するように着磁された上記各磁力選別ロールが用いられることを特徴とする請求項6に記載の磁力選別方法。
【請求項8】 10,000ガウス以上の磁力を有する多数個の磁石からなる上記各磁力選別ロールが用いられることを特徴とする請求項6に記載の磁力選別方法。
【請求項9】 上記各磁力選別ロールの外周面にそれぞれ当接しながら回転する複数個の払拭部材を備えた上記磁力選別装置が用いられ、上記各払拭部材によって上記各磁力選別ロールの外周面に吸着した磁性不純物を払拭除去することを特徴とする請求項6に記載の磁力選別方法。
【請求項10】 上記選別筐体内に互いに平行に対峙して対向空間内に上記磁力選別空間部を構成する一対の隔壁を設けることにより上記磁力選別空間部を挟んで高さ方向の一対の磁性不純物排出空間部が構成されるとともにこれら磁性不純物排出空間部内に上記各磁力選別ロールにそれぞれ対応して複数個の払拭部材を配置し、上記各磁力選別ロールの外周面の一部が上記隔壁に設けられた開口部を介して上記磁性不純物排出空間部内に突出されるとともにこの突出された外周面において上記払拭部材がそれぞれ当接するようにした上記磁力選別装置が用いられ、上記各磁力選別ロールによって原材料の磁力選別を行いながら、外周面に吸着した磁性不純物を上記払拭部材によって払拭除去して上記磁性不純物排出空間部から排出することにより、連続磁力選別を行うことをことを特徴とする請求項6に記載の磁力選別方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−10728(P2003−10728A)
【公開日】平成15年1月14日(2003.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−197250(P2001−197250)
【出願日】平成13年6月28日(2001.6.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】