磁化検出方法および装置
【課題】高密度に記録された磁化情報を読み取る検出方法および装置を提供する。
【解決手段】磁化3,4として情報が記録された磁気記録媒体50の表面に金属探針5をナノメートルオーダの距離に近づけ、その領域に入射光120を偏光方向を変調しながら照射し、トンネル電流もしくは反射偏光強度の偏光依存性を測定する。
【解決手段】磁化3,4として情報が記録された磁気記録媒体50の表面に金属探針5をナノメートルオーダの距離に近づけ、その領域に入射光120を偏光方向を変調しながら照射し、トンネル電流もしくは反射偏光強度の偏光依存性を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化情報の読み取りを行う方法、およびその装置に関し、記録膜の磁化状態の変化に伴う入射光の偏光状態の変化とプラズモン増大効果を利用して、磁化情報の読みとり行う新規な磁化検出技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のハードディスクドライブ装置(HDD)や光磁気ディスクにおける磁化情報の読み出しには、GMR(Giant Magneto-resistance)効果を用いた素子や、磁気光学効果に基づく入射光の偏光状態の変化を検出することで、記録媒体の磁化情報を検出する方法が用いられている。一方、高密度化による記録単位の狭小化に伴い、記録媒体のより小さな領域を検出できる素子が求められている。光磁気ディスクにおいては、磁気光学効果に基づく光の偏光状態の変化を利用して磁化を検出しているが、より波長の短い青色レーザなどを用いたり、光プローブによる近接場効果を用いて、検出領域をより小さくしようと試みられている。例えば、特許文献1には、光ファイバープローブに、ある周波数で変調した偏光を入射し、光ファイバープローブ先端の微小開口から出射して記録媒体を透過した偏光成分を測定することで、磁気光学効果により記録媒体の磁化を測定する手法が記載されている。
【0003】
原子レベルの空間分解能を得ることが可能な手法として、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いた手法が知られている。金属探針を用いた磁化情報の読み出し手法として、例えば、特許文献2には、磁性金属探針と、非磁性層/強磁性記録層から構成される記録媒体との間に流れるトンネル電流が、磁性金属探針と強磁性記録層の磁化が平行か反平行かで変化することを用いて、強磁性記録層の磁化方向を検出する方法が記載されている。特許文献3,4には、強磁性体金属層/非磁性金属層/強磁性体金属層の三層膜構造の電子状態が、磁化方向に依存して変化することを利用して、トンネル電流により検出する方法が記載されている。また、特許文献5には、記録媒体に対向してプローブ電極を対向配置し、電圧を印加することにより励起された記録媒体の発光状態を光検出する手法が記載されている。これらの金属探針による磁化検出技術は、原子レベルの情報を再生する技術として有望である。
【0004】
また、磁化検出技術ではないが、金属表面に金属探針を近づけて光を照射した場合、トンネル電流が増大することが知られている。例えば、非特許文献1には、金属表面と金属探針との間に光を照射しプラズモンを励起することで、大きな直流電流が流れることが記載されている。また、特許文献6には、ギャップを有する金属板にレーザ光を入射し、二つの金属板の間隙に電界を集中させることで、金属板の間隙直下の媒体を加熱することにより磁化を書き込みやすくできることが記述されている。
【特許文献1】特開平10−325840号公報
【特許文献2】特開平9−134551号公報
【特許文献3】特開2004−342183号公報
【特許文献4】特開2005−108302号公報
【特許文献5】特開平5−250735号公報
【特許文献6】特開2002−298302号公報
【非特許文献1】N. Kroo et al, Europhys. Lett., 15, 289(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のGMR素子は、素子の膜厚を小さくすることができないために、記録媒体との距離や検出領域を小さくすることが困難になることが予想される。一方、より高感度が期待されるTMR(Tunneling Magneto-resistance)効果を用いた素子も、同様の問題とともに、トンネル効果を用いることで素子自体の抵抗が大きいことから、GHzを越える動作に耐えられるかが懸念されている。特許文献1に記載された方法は、近接場効果を用いることや、様々な複屈折要因により偏光度が低下したりすることにより、100nm以下の空間分解能を得るのは困難である。また、特許文献2〜4に記載された方法は、金属探針を用いたSTS(scanning tunneling spectroscopy)技術によるものであり、媒体表面の構造の変化に伴いトンネル電流に変化が生じるため、ノイズが生じる問題がある。
【0006】
本発明は、媒体表面の構造の変化によるノイズを低減する局所磁化検出手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では、記録媒体の磁気記録層に面内磁化によって情報が記録されている場合、記録媒体に対向して金属探針を配置する。この磁気記録層に接して金属探針側に導電性の保護膜、例えばAuの保護膜があってもよい。金属探針をこの記録媒体に近づけ、記録媒体と金属探針間に、磁化方向と入射面が平行になるように偏光を照射する。磁化方向に依存して、記録媒体と金属探針間のトンネル電流が偏光依存性を持つため、その偏光依存性を検出することにより、記録媒体の磁化方向をSN良く検出することができる。記録媒体の磁気記録層に媒体面に垂直な方向に磁化によって情報が記録されている場合、媒体面に近接して、中空のギャップを有する金属板を設置し、偏光を入射する。この場合には、反射光の偏光依存性を検出することにより、記録媒体の局所的な磁化方向をSN良く検出することができる。これらの手法により、光の集光径よりもはるかに小さな領域の磁化情報をSN良く検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高密度に記録された磁気記録媒体における磁化検出方法および装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図を参照して、本発明による磁化検出原理と共に、その実施例を説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1による磁化検出装置を示す概念図である。磁気記録媒体50は、基板100上に順次積層して形成された強磁性層1、保護膜2からなる多層膜41によって構成されている。強磁性層1は、磁化の向きによって情報を記録する磁気記録層である。この多層膜41の保護膜2に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離に金属探針5が配置されている。金属探針5は、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持されている。保護膜2と金属探針5との距離を制御するために、別途トンネル電流をフィードバック信号として用いても良く、また、原子間力顕微鏡における光てこ方式を用いてフィードバック信号を生成してもよい。また、距離制御用の探針を金属探針5とは別に設けても良い。
【0010】
多層膜41を構成する強磁性層1としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性単体金属またはその合金、パーマロイが使用できる。保護膜2には、例えばAuのような非磁性貴金属を用いることができる。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1は必ずしも金属である必要はない。
【0011】
強磁性層1に書き込まれた面内方向の局所的な磁化情報3、ないしは4は、以下に示すように、金属探針5と多層膜41との間に流れるトンネル電流を用いて読み出すことができる。
【0012】
磁化情報をトンネル電流により読み出す際に、まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、レンズ9により集光されて金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される。変調器8は、ポッケルスセルのような電気光学効果により、変調信号に基づく印加電圧14により入射光の偏光状態を変調するものである。レンズ9の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属探針5と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0013】
図2は、図1を右側面から見た図である。磁気記録媒体50は基板100上に順次積層して形成された強磁性層1、保護膜2よりなる多層膜41より構成されている。この多層膜41の保護膜2の面に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離にスライダ機構6に保持された金属探針5が配置される。金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される偏光120は、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0014】
入射面に平行で探針方向の電界成分(p偏光成分)は、EP=E0Cos(θ)Sin(Φ)Sin(ωt)、入射面に垂直方向の電界成分(s偏光成分)は、ES= E0Sin(θ)Sin(ωt)と書ける。一方、誘電率εxx,εxyの媒質に、pもしくはs偏光を入射させたときの反射率は、次のように表される。
rsp=rps=εxyCos(Φ)Sin(γ)/(εxxCos(γ)(Sqrt(εxx)Cos(γ)+Cos(Φ))(Sqrt(εxx)Cos(Φ)+Cos(γ)))
rpp=(Sqrt(εxx) Cos(Φ)- Cos(γ))/(Sqrt(εxx) Cos(Φ)+ Cos(γ))
ここで、rspはp偏光が入射したときのs偏光反射率、rpsはs偏光が入射したときのp偏光反射率、rppはp偏光が入射したときのp偏光反射率、γ=Sin-1(1/ Sqrt(εxx) Sin(Φ))である。
【0015】
入射光120の偏光がAの場合の探針方向電界eAとBの場合の探針方向電界eBは、次のように表される。
eA= E0((1+rpp) Cos(θ) Sin(Φ) Sin(ωt)- rsp Sin (θ) Sin(Φ) Sin(ωt))
eB= E0((1+rpp) Cos(θ) Sin(Φ) Sin(ωt)+ rsp Sin (θ) Sin(Φ) Sin(ωt))
【0016】
図3(a)は、磁化が入射方向に平行な場合、すなわち磁化3の場合の、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界最大値の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2+(EB)2)/2で割った探針方向電界の二乗の変化率を、入射角度Φおよび偏光方向θの関数として示したものである。本実施例では、磁性層としてFe、入射光の波長として800nmを用いた。800nmにおけるFeの複素誘電率としては、εxx=-3.83+22.1I,εxy=-1.33+0.024Iを用いた。探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、-0.1〜-40%変化する様子が分かる。
【0017】
一方、図3(b)は、磁化が入射方向に反平行な場合、すなわち磁化4の場合の、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2+(EB)2)/2で割った探針方向電界の二乗の変化率を、入射角度Φおよび偏光方向θの関数として同様に示したものである。探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、+0.1〜+40%変化する様子が分かる。
【0018】
検出されるトンネル電流の大きさは探針方向電界の二乗に比例するため、磁化方向が入射方向に平行か反平行かに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時のトンネル電流の大小が変化する。すなわち、入射光120の偏光を図4(c)に示すようにAとBとに時間的に変調した場合、属探針5と多層膜41との間に流れるトンネル電流は、磁化が入射方向に平行な場合には図4(a)のようになり、磁化が入射方向に反平行な場合には図4(b)のようになる。このように、属探針5と多層膜41との間に流れるトンネル電流は、磁化が入射方向に平行な場合と、磁化が入射方向に反平行な場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的なトンネル電流の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数十%の変化率を得ることが可能である。ただし、図3(a)(b)によれば、変化率はΦにはあまり依存せず、θがπ/2に近くなると大きくなるが、例えばθがπ/2に近くなると得られるトンネル電流の大きさは小さくなる。図5に示すように、探針方向電界の二乗の差(EA)2-(EB)2の絶対値が最大になるのは、Φ〜3π/8、θ〜π/4であるため、Φは3π/8近傍、θはπ/4≦θ<π/2とすることが望ましい。
【0019】
図1に示すように、トンネル電流は、磁気記録媒体50と金属探針5との間に電圧Eを印加することにより、電流計7により検出される。信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、トンネル電流信号16は、ロックインアンプ12に入力され、トンネル電流信号16中の変調周波数成分17だけが検出され、その正負から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0020】
トンネル電流は、探針直下の情報を反映するため、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、トンネル電流の大きさを検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、入射方向に平行か反平行かを検出することが可能である。
【0021】
また、入射光の波長、金属探針5と磁気記録媒体50との距離、金属探針5および保護膜2の材質を適当に選ぶことで、プラズモン増大効果により、平均的なトンネル電流の大きさSavをμAレベルまで増幅することが可能である。トンネル電流を用いた検出手法にはショットノイズが発生するがμAレベルのトンネル電流を用いることで、GHzレベルの読み出し動作が20dB程度のS/N比で可能である。
【0022】
[実施例2]
図6は、本発明の実施例2による磁化検出装置を示す概念図である。
実施例1と同様に、磁気記録媒体50は基板100上に順次積層して形成された強磁性層1、保護膜2からなる多層膜41によって構成されている。強磁性層1は、磁化の向きによって情報を記録する磁気記録層である。この多層膜41の保護膜2の面に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離に金属探針5が配置されている。金属探針5は、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持されている。保護膜2と金属探針5との距離を制御するために、別途トンネル電流をフィードバック信号として用いても良く、また、原子間力顕微鏡における光てこ方式を用いてフィードバック信号を生成してもよい。
【0023】
多層膜41を構成する強磁性層1としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性単体金属またはその合金、パーマロイが使用できる。保護膜4には、例えばAuのような非磁性貴金属を用いることができる。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1は必ずしも金属である必要はない。
【0024】
強磁性層1に書き込まれた面内方向の局所的な磁化情報3、ないしは4は、以下に示すように、金属探針5と多層膜41との間に偏光したレーザ光120を入射し、その反射光122の多層膜41に垂直で金属探針軸方向の偏光成分を偏光板20および検出器21で検出することにより、読み出すことができる。
【0025】
磁化情報を読み出す際に、まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、レンズ9により集光されて金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される。変調器8は、ポッケルスセルのような電気光学効果により、変調信号に基づく印加電圧14により入射光の偏光状態を変調するものである。レンズ9の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属探針5と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0026】
実施例1の図2と同様に、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される偏光120は、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0027】
磁化が入射方向に平行な場合、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、図3(a)に示されるように-0.1〜-40%変化する。一方、磁化が入射方向に反平行な場合、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として図3(b)に示されるように、+0.1〜+40%変化する。
【0028】
反射光122の探針方向の偏光成分は、偏光板20および検出器21によりその強度が検出される。検出される光強度は探針方向電界の二乗に比例するため、磁化方向が入射方向に平行か反平行かに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時の光強度が変化する。すなわち図4と同様に、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、検出される反射光の探針方向の偏光成分の強度は、磁化が入射方向に平行な場合と、磁化が入射方向に反平行な場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的な光強度の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数十%の変化率を得ることが可能である。ただし、実施例1の図5の場合と同様に、探針方向電界の二乗の差(EA)2-(EB)2の絶対値が最大になるのは、Φ〜3π/8、θ〜π/4であるため、Φは3π/8近傍、θはπ/4≦θ<π/2とすることが望ましい。
【0029】
図6に示すように、信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、反射偏光強度信号22は、ロックインアンプ12に入力され、反射偏光強度信号22中の変調周波数成分17だけが検出され、その正負から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0030】
反射光の偏光強度は、探針と表面とのプラズモン増大効果により探針直下の局所的な情報を強く反映する。したがって、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、反射偏光強度を検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、入射方向に平行か反平行かを検出することが可能である。
【0031】
[実施例3]
図7は、本発明の実施例3による磁化検出装置を示す概念図である。
実施例1と同様に、磁気記録媒体50は、基板100上に順次積層して形成された強磁性層1、保護膜2からなる多層膜41によって構成されている。強磁性層1は、磁化の向きによって情報を記録する磁気記録層である。ここで、強磁性層1中の磁化方向3,4は、面方向に垂直である。この多層膜41の保護膜2の面に対向して、10nmオーダーの極めて近い距離に金属板30が配置されている。金属板30は、半球型レンズ26の底面に形成され、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持されている。
【0032】
金属板30の上面図を図8に示す。金属板30は、頂点を持つ金属片31と32、および金属片33と34が中空のギャップを持って相対する構造を持っている。相対する金属片31,32、および金属片33,34の構造は、それぞれのギャップの方向が、入射光120の入射面に対して金属片31,32は平行に、金属片33,34は垂直になっている。
【0033】
多層膜41を構成する強磁性層1は垂直磁気異方性を持ち、例えばTbFeCoなどの希土類と遷移金属のアモルファス合金や、Co/Pt多層膜などである。保護膜2には、例えばAuのような非磁性貴金属を用いることができる。
【0034】
強磁性層1に書き込まれた面に垂直方向の局所的な磁化情報3、ないしは4は、以下に示すように、金属板30のギャップ近傍に偏光したレーザ光120を入射し、その反射光122の偏光成分を偏光板20および検出器21で検出することにより、読み出すことができる。
【0035】
磁化情報を読み出す際に、まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属板30のギャップ近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、半球型レンズ26により集光されて金属板30のギャップ近傍に照射される。変調器8は、ポッケルスセルのような電気光学効果により、変調信号に基づく印加電圧14により入射光の偏光状態を変調するものである。半球型レンズ26の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属板30と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0036】
図9は、図7を右側面から見た図である。図9に示すように、金属板30のギャップ近傍に照射される偏光120は、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0037】
誘電率εxx,εxyの媒質に、pもしくはs偏光を入射させたときの反射率は、次のように表される。
rsp=rps=-εxyCos(Φ) /( Sqrt(εxx) (Sqrt(εxx)Cos(γ)+Cos(Φ))(Sqrt(εxx)Cos(Φ)+Cos(γ)))
rpp=(Sqrt(εxx) Cos(Φ)- Cos(γ))/(Sqrt(εxx) Cos(Φ)+ Cos(γ))
ここで、rspはp偏光が入射したときのs偏光反射率、rpsはs偏光が入射したときのp偏光反射率、rppはp偏光が入射したときのp偏光反射率、γ=Sin-1(1/ Sqrt(εxx) Sin(Φ))である。
【0038】
入射光120の偏光がAの場合の入射面に平行方向の電界eAと、Bの場合の入射面に平行方向の電界eBは、次のように表される。
eA= E0(rpp Cos(θ) Sin(ωt)- rps Sin (θ) Sin(ωt))
eB= E0(rpp Cos(θ) Sin(ωt)+ rps Sin (θ) Sin(ωt))
【0039】
図10(a)は、磁化が上向きの場合について、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の、入射面に平行方向の電界最大値の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2+(EB)2)/2で割った変化率を、入射角度Φおよび偏光方向θの関数として示したものである。本実施例では、磁性層の複素誘電率としてFeと同じεxx=-3.83+22.1I,εxy=-1.33+0.024I、入射光の波長として800nmを用いた。入射面に平行方向の電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、-200〜+200%変化する様子が分かる。
【0040】
一方、図10(b)は、磁化が下向きの場合について、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の、入射面に平行方向の電界最大値の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2-(EB)2)/2で割った変化率を、入射角度Φ、偏光方向θの関数として同様に示したものである。入射面に平行方向の電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、+200〜-200%変化する様子が分かる。図10(a)(b)を比較すると明らかなように、一定の入射角度Φ、偏光方向θのもとで、磁化が上向きか下向きかで、変化率の正負が逆転する。
【0041】
反射光122の入射面に平行方向の偏光成分は、偏光板20および検出器21によりその強度が検出される。検出される光強度は入射面に平行方向の電界の二乗に比例するため、磁化方向が上向きか下向きかに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時の光強度が変化する。すなわち図11に示すように、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、検出される反射光の入射面に平行方向の偏光成分の強度は、磁化が上向きの場合と、磁化が下向きの場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的な光強度の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数百%とすることが可能である。ただし、入射面に平行方向の電界最大値の二乗の差(EA)2-(EB)2の絶対値が最大になるのは、図12に示すように、Φ〜0もしくは〜0.48π、θ〜π/4であるため、Φは0<Φ≦0.48π、θは〜π/4とすることが望ましい。
【0042】
図7に示すように、信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、反射偏光強度信号22は、ロックインアンプ12に入力され、反射偏光強度信号22中の変調周波数成分17だけが検出され、その正負から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0043】
反射光の偏光強度は、探針と表面とのプラズモン増大効果により探針直下の局所的な情報を強く反映する。したがって、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、反射偏光強度を検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、上向きか下向きかを検出することが可能である。
【0044】
[実施例4]
図13は、本発明の実施例4による磁化検出装置を示す概念図である。
図13と図1とを対比すると容易に分かるように、実施例4においては、磁気記録媒体50は基板100上に形成された反強磁性層44、強磁性層43、非磁性層42、強磁性層1、保護膜2より構成されている点が実施例1と異なる。ここで、反強磁性層44は必ずしもなくてもよい。多層膜41を構成する強磁性層1および強磁性層43としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性単体金属またはその合金、パーマロイが使用できる。非磁性層42は、例えばAu,Cu,Ptである。保護膜2は、例えばAuのような非磁性貴金属である。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1および強磁性層43は必ずしも金属である必要はない。多層膜41の保護膜2の面に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離に金属探針5が配置されている。金属探針5は、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持される。
【0045】
この実施例4においても、実施例1と同様、強磁性金属層1の面内磁化方向が、金属探針5と多層膜41との間に流れるトンネル電流を用いて検出できる。まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、レンズ9により集光されて金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属探針5と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0046】
金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される偏光120は、図2に示したように、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。磁化方向が入射方向に平行か反平行かに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時のトンネル電流の大小が変化する。すなわち図14に示すように、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、磁化が入射方向に平行な場合(図14(a))と、磁化が入射方向に反平行な場合(図14(b))とでは位相が逆転し、かつ、平均的なトンネル電流の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、実施例1の場合と同様に、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数十%の変化率を得ることが可能である。
【0047】
ただし本実施例における強磁性層/非磁性層/強磁性層を含む記録媒体においては、特許文献3,4に記載されているように、強磁性層間の磁化の平行、反平行に依存して電子状態が異なるため、電子状態に依存する誘電率も異なる。したがって、図14のΔS、ΔS’に示すように、偏光方向を変調したときのトンネル電流の変化は、その振幅が強磁性層間の磁化の平行、反平行で異なるため、上述した位相だけでなく振幅の変化として検出することも可能である。
【0048】
[実施例5]
図15は、本発明の実施例5による磁化検出装置を示す概念図である。
図15と図6とを対比すると容易に分かるように、実施例5においては、磁気記録媒体50は基板100上に形成された反強磁性層44、強磁性層43、非磁性層42、強磁性層1、保護膜2より構成されている点が実施例2と異なる。ここで、反強磁性層44は必ずしもなくてもよい。多層膜41を構成する強磁性層1および強磁性層43としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性単体金属またはその合金、パーマロイが使用できる。非磁性層42は、例えばAu,Cu,Ptである。保護膜2は、例えばAuのような非磁性貴金属である。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1および強磁性層43は必ずしも金属である必要はない。多層膜41の保護膜2の面に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離に金属探針5が配置される。金属探針5は、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持される。
【0049】
この実施例5においても、実施例2と同様、金属探針5と多層膜41との間に偏光したレーザ光120を入射し、その反射光122の多層膜41に垂直で金属探針軸方向の偏光成分を偏光板20および検出器21で検出することにより、強磁性金属層1の面内磁化方向を読み出すことができる。
【0050】
磁化情報を読み出す際に、まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、レンズ9により集光されて金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される。レンズ9の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属探針5と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0051】
金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される偏光120は、図2に示すように、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0052】
入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θ、および磁化が入射方向に平行か反平行かに依存して、図3(a)(b)に示したように数十%変化する。
【0053】
反射光122の探針方向の偏光成分は、偏光板20および検出器21によりその強度が検出される。検出される光強度は探針方向電界の二乗に比例するため、磁化方向が入射方向に平行か反平行かに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時の光強度が変化する。すなわち図14と同様に、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、検出される反射光の探針方向の偏光成分の強度は、磁化が入射方向に平行な場合と、磁化が入射方向に反平行な場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的な光強度の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数十%の変化率を得ることが可能である。
【0054】
ただし、本実施例における強磁性層/非磁性層/強磁性層を含む記録媒体においては、特許文献3,4に記載されているように、強磁性層間の磁化の平行、反平行に依存して電子状態が異なるため、電子状態に依存する誘電率も異なる。したがって、図14のΔS、ΔS’に示すように、偏光方向を変調したときの光強度の変化は、その振幅が強磁性層間の磁化の平行、反平行で異なるため、上述した位相だけでなく振幅の変化として検出することも可能である。
【0055】
図15に示すように、信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、反射偏光強度信号22は、ロックインアンプ12に入力され、反射偏光強度信号22中の変調周波数成分17だけが検出され、その振幅の正負もしくは絶対値から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0056】
反射光の偏光強度は、探針と表面とのプラズモン増大効果により探針直下の局所的な情報を強く反映する。したがって、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、反射偏光強度を検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、入射方向に平行か反平行かを検出することが可能である。
【0057】
[実施例6]
図16は、本発明の実施例6による磁化検出装置を示す概念図である。
図16と図7とを対比すると容易に分かるように、実施例6においては、磁気記録媒体50は基板100上に形成された反強磁性層44、強磁性層43、非磁性層42、強磁性層1、保護膜2より構成されている点が実施例3と異なる。ここで、反強磁性層44は必ずしもなくてもよい。多層膜41を構成する強磁性層1および強磁性層43は垂直磁気異方性を持ち、例えばTbFeCoなどの希土類と遷移金属のアモルファス合金や、Co/Pt多層膜などである。非磁性層42は、例えばAu,Cu,Ptである。保護膜2は、例えばAuのような非磁性貴金属である。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1およびは強磁性層43は必ずしも金属である必要はない。
【0058】
強磁性層1に書き込まれた面に垂直方向の局所的な磁化情報3、ないしは4は、実施例3と同様に、金属板30のギャップ近傍に偏光したレーザ光120を入射し、その反射光122の偏光成分を偏光板20および検出器21で検出することにより、読み出すことができる。
【0059】
半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直な方向から測ってΦの角度で、金属板30のギャップ近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、半球型レンズ26により集光されて金属板30のギャップ近傍に照射される。半球型レンズ26の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属板30と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。また、図9に示したように、金属板30のギャップ近傍に照射される偏光120は、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0060】
磁性層1の磁化が上向きか下向きかに依存して、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の、入射面に平行方向の電界の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2+(EB)2)/2で割った変化率は、図10(a)(b)に示したように、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、-200〜+200%変化し、かつ、変化率の正負が逆転する。
【0061】
反射光122の入射面に平行方向の偏光成分は、偏光板20および検出器21によりその強度が検出される。検出される光強度は入射面に平行方向の電界の二乗に比例するため、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、検出される反射光の入射面に平行方向の偏光成分の強度は、磁化が上向きの場合と、磁化が下向きの場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的な光強度の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数百%の変化率を得ることが可能である。
【0062】
ただし、本実施例における強磁性層/非磁性層/強磁性層を含む記録媒体においては、特許文献3,4に記載されているように、強磁性層間の磁化の平行、反平行に依存して電子状態が異なるため、電子状態に依存する誘電率も異なる。したがって、図14のΔS,ΔS’と同様に、偏光方向を変調したときの光強度の変化は、その振幅が強磁性層間の磁化の平行、反平行で異なるため、上述した位相だけでなく振幅の変化として検出することも可能である。
【0063】
図16に示すように、信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、反射偏光強度信号22は、ロックインアンプ12に入力され、反射偏光強度信号22中の変調周波数成分17だけが検出され、振幅の正負もしくは絶対値から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0064】
反射光の偏光強度は、探針と表面とのプラズモン増大効果により探針直下の局所的な情報を強く反映する。したがって、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、反射偏光強度を検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、上向きか下向きかを検出することが可能である。
【0065】
[実施例7]
図17から21を参照して、本発明の実施例7について説明する。
本実施例では、磁化を記録する強磁性層が、レジストパターニング、イオンミリング、レジスト除去等の半導体製造に広く用いられているリソグラフィー技術により、図17,19,20,21に示すように、ドット状にパターニングされており、柱状のナノピラー60,61,62,63,64,65,66,67が規則的に多数離間して形成されている。図18は、例えば図17の場合のドットの配列の鳥瞰図を示す。図17および図19は層面内に磁化がある場合、図20、図21は層面に垂直に磁化がある場合を示す。ここで、図19、図21に示すように、非磁性金属層42も含めた多層膜構造のナノピラーとしても良い。
【0066】
本実施例においては、個々の記録単位となる領域がドット状にパターニングされており、例えば図17において記録領域対応の柱状のナノピラー60,61が形成されている点において実施例1と異なる。ここで、ナノピラーと言うのは、平面上の大きさがnm単位のレベルの直径を持つ楕円あるいは四角の柱、と言う意味である。ナノピラーにすることで、隣接した記録領域の影響を受けにくくなり、記録特性が向上する。
【0067】
ナノピラーは、現在の磁気記録ディスクの記録フォーマットに対応できるように、配列されて構成されるのが良い。また、各ピラー間は、図17,19,20,21に示すように、保護膜2により間隙が埋められていることが望ましい。
【0068】
図17および図19のように層面内に磁化がある場合、実施例1,2と同様に金属探針のトンネル電流や、反射偏光強度の偏光依存性利用して磁化を検出することができる。また、図20、図21のように層面に垂直に磁化がある場合、実施例3と同様に反射偏光強度の偏光依存性利用して磁化を検出することができる。
【0069】
[実施例8]
図22は、本発明の実施例5に相当する磁気記録装置の構成概要を示す斜視図である。
前述の各実施例で説明した多層膜41、例えば、強磁性層1、保護膜2、基板100から成る多層膜41を、円板状の記録媒体70として形成する。また、実施例7で述べたように、記録層をドット状のパターンとしてもよい。これまでの実施例で述べた、金属探針もしくは金属板、入射偏光発生手段、反射光検出手段は、アーム72の先端部に設けられたスライダ6の下部に取り付けられる。73はアーム72の回転支持軸であり、アーム72は一般の磁気ディスク装置と同様の機構により位置制御され、円板状の記録媒体70を一般の磁気ディスク装置と同様にスピンドルモータ81により回転中心71を軸として回転させると、空気力学的な作用によりスライダ6は所定の距離だけ浮上する。したがって、スライダ6は多層膜41に対向して、前述の実施例で説明したと同様に、ほぼ一定の距離をもって多層膜41に対向配置される。
【0070】
円板状記録媒体70に書き込まれた磁化方向が媒体面内を向いている場合、実施例1もしくは2で述べた方法により書き込まれた磁化方向を読み取ることが可能である。ただし実施例1,2で述べたように、書き込まれた磁化方向と入射光の入射面が平行になるように入射光学系もしくは記録磁化方向を調整する必要がある。また、媒体面に垂直に磁化が向いている場合、実施例3で述べた方法により書き込まれた磁化方向を読み取ることが可能である。金属探針によるトンネル電流を用いて磁化を読み取る場合、多層膜41は導電性があり、導電性回転軸71を通じて接地されている。
【0071】
信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14により、入射光の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、トンネル電流信号もしくは反射偏光強度信号80は、ロックインアンプ12に入力され、信号80中の変調周波数成分17だけが検出され、その正負から読み取り制御器82により円板状記録媒体70に書き込まれた磁化情報が読み取られる。読み取り制御器から出される制御信号84によりアーム制御用モータ83を制御し、読み取り位置を制御することができる。
【0072】
図23は、読み取り位置の制御を説明する図である。読み取り位置の制御に当たっては、検出信号の位置依存性を用いて、記録位置のサーボ信号とすることが可能である。円板状記録媒体70において、磁化が記録されている記録マーク87の部分からは、実施例1,2,3で述べたように大きな偏光依存性の信号が得られるが、磁化が記録されていない部分には偏光依存性はない。したがって、例えば図23に示すように、記録マーク87として千鳥格子パターンなどの位置検出パターンを書き込むと、読み取り位置がトラック86からずれるとサーボ信号強度が減少する。この信号振幅差からトラック86の位置を検出することが可能である。
【0073】
さらに、スライダ6に書き込み用磁気ヘッド85を装着することで、一般の磁気ディスク装置と同様の磁気記録再生装置が実現できる。
【0074】
図24は、金属探針を用いた磁化読み取り方法に基づく磁気記録再生装置のスライダ6の概要を示す図である。読み取り用の金属探針5と書き込み用の磁気ヘッド85が、スライダ6の下部に取り付けられている。半導体レーザ90から出射された光は、偏光板91、位相板92、導波路93、変調器94を通り、金属探針5の先端部に照射される。導波路91の端面95を適当な角度で切っておくと屈折により光路が曲がるため、金属探針5の先端部に効率良く光を照射することが可能である。また、この端面95に適当な曲率を持たせることで、レンズ効果により金属探針5の先端部に効率良く光を照射することができる。変調器94は、電界により屈折率を変調できるポッケルスセルであり、実施例1で述べたように偏光変調を行うことでトンネル電流を測定することにより、多層膜41に記録された磁化の向きを検出することが可能である。また、図25に示すように、偏光板98、光検出器99を装着することで、実施例2で述べたように反射偏光強度を測定して多層膜41に記録された磁化の向きを検出することができる。
【0075】
図26は、金属探針5の代わりに、金属膜の尖鋭パターン96を金属探針として用いたスライダを示す図である。97はこの尖鋭パターン金属膜96を右方向から見た図であり、尖鋭パターン金属膜96の尖った先端は、多層膜41に対向するように位置付けられている。この尖鋭パターン96は、例えばAuで作成することができ、レジストパターニング、イオンミリング、レジスト除去等の半導体製造に広く用いられているリソグラフィー技術により形成したのち、スライダ6に接着しても良い。同様に、偏光変調を行うことでトンネル電流を測定することにより、多層膜41に記録された磁化の向きを検出することが可能である。また、図27に示すように、金属膜の尖鋭パターン96の裏面に偏光板98、光検出器99を装着することで、実施例2で述べたように反射偏光強度を測定して多層膜41に記録された磁化の向きを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1による磁化検出装置を示す概念図。
【図2】図1を右側面から見た図。
【図3】偏光状態を変化させた時の探針方向電界の二乗の変化率を示す図であり、(a)は磁化が入射光の入射方向に平行な場合の図、(b)は反平行な場合の図。
【図4】(a)は磁化が入射光の入射方向に平行な場合のトンネル電流の時間変化を示す図、(b)は磁化が入射光の入射方向に反平行な場合のトンネル電流の時間変化を示す図、(c)は入射偏光状態の時間変化を示す図。
【図5】偏光状態を変化させた時の探針方向電界の二乗の大きさの差を示す図。
【図6】本発明の実施例2による磁化検出装置を示す概念図。
【図7】本発明の実施例3による磁化検出装置を示す概念図。
【図8】金属板の上面図。
【図9】図7を右側面から見た図。
【図10】入射光の偏光状態を変化させた時の入射面に平行方向の電界の二乗の変化率を示す図であり、(a)は磁化が上向きの場合の図、(b)は磁化が下向きの場合の図。
【図11】(a)は磁化が上向きの場合の入射面に平行方向の反射偏光強度の時間変化を示す図、(b)は磁化が下向きの場合の入射面に平行方向の反射偏光強度の時間変化を示す図、(c)は入射偏光状態の時間変化を示す図。
【図12】偏光状態を変化させた時の探針方向電界の二乗の大きさの差を示す図。
【図13】本発明の実施例4による磁化検出装置を示す概念図である。
【図14】(a)は磁化が入射光の入射方向に平行な場合のトンネル電流の時間変化を示す図、(b)は磁化が入射光の入射方向に反平行な場合のトンネル電流の時間変化を示す図、(c)は入射偏光状態の時間変化を示す図。
【図15】本発明の実施例5による磁化検出装置を示す概念図。
【図16】本発明の実施例6による磁化検出装置を示す概念図。
【図17】ナノピラーの構造を示す図。
【図18】ナノピラーの構造を示す鳥瞰図。
【図19】ナノピラーの構造を示す図。
【図20】ナノピラーの構造を示す図。
【図21】ナノピラーの構造を示す図。
【図22】磁気記録装置の構成概要を示す斜視図。
【図23】読み取り位置の制御を説明する図。
【図24】スライダの概要を示す図。
【図25】スライダの概要を示す図。
【図26】スライダの概要を示す図。
【図27】スライダの概要を示す図。
【符号の説明】
【0077】
1…強磁性層、2…保護膜、3,4…磁化、5…金属探針、6…スライダ、7…電流計、8…変調器、9…レンズ、10…電源、11…信号発生器、12…ロックインアンプ、13…信号読み取り器、14…変調電圧、15…変調信号、16…トンネル電流信号、17…変調周波数成分,18…位相板、19,20…偏光板、21…光検出器、22…反射偏光強度信号、25…支え、26…半球型レンズ、30…金属板、31,32,33,34…金属片、41…多層膜、42…非磁性層、43…強磁性層、44…反強磁性層、50…磁気記録媒体、60〜67…ナノピラー、70…円板状記録媒体、71…回転軸、72…アーム、73…アーム回転軸、80…検出信号、81…スピンドルモータ、82…読み取り制御器、83…アーム制御用モータ、84…アーム制御信号、85…磁気ヘッド、86…トラック、87…記録マーク、90…半導体レーザ、91…偏光板、92…位相板、93…導波路、94…変調器、95…導波路端面、96,97…尖鋭パターン、98…偏光板、99…光検出器、100…基板、120…入射光、121…半導体レーザ、122…反射光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化情報の読み取りを行う方法、およびその装置に関し、記録膜の磁化状態の変化に伴う入射光の偏光状態の変化とプラズモン増大効果を利用して、磁化情報の読みとり行う新規な磁化検出技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のハードディスクドライブ装置(HDD)や光磁気ディスクにおける磁化情報の読み出しには、GMR(Giant Magneto-resistance)効果を用いた素子や、磁気光学効果に基づく入射光の偏光状態の変化を検出することで、記録媒体の磁化情報を検出する方法が用いられている。一方、高密度化による記録単位の狭小化に伴い、記録媒体のより小さな領域を検出できる素子が求められている。光磁気ディスクにおいては、磁気光学効果に基づく光の偏光状態の変化を利用して磁化を検出しているが、より波長の短い青色レーザなどを用いたり、光プローブによる近接場効果を用いて、検出領域をより小さくしようと試みられている。例えば、特許文献1には、光ファイバープローブに、ある周波数で変調した偏光を入射し、光ファイバープローブ先端の微小開口から出射して記録媒体を透過した偏光成分を測定することで、磁気光学効果により記録媒体の磁化を測定する手法が記載されている。
【0003】
原子レベルの空間分解能を得ることが可能な手法として、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いた手法が知られている。金属探針を用いた磁化情報の読み出し手法として、例えば、特許文献2には、磁性金属探針と、非磁性層/強磁性記録層から構成される記録媒体との間に流れるトンネル電流が、磁性金属探針と強磁性記録層の磁化が平行か反平行かで変化することを用いて、強磁性記録層の磁化方向を検出する方法が記載されている。特許文献3,4には、強磁性体金属層/非磁性金属層/強磁性体金属層の三層膜構造の電子状態が、磁化方向に依存して変化することを利用して、トンネル電流により検出する方法が記載されている。また、特許文献5には、記録媒体に対向してプローブ電極を対向配置し、電圧を印加することにより励起された記録媒体の発光状態を光検出する手法が記載されている。これらの金属探針による磁化検出技術は、原子レベルの情報を再生する技術として有望である。
【0004】
また、磁化検出技術ではないが、金属表面に金属探針を近づけて光を照射した場合、トンネル電流が増大することが知られている。例えば、非特許文献1には、金属表面と金属探針との間に光を照射しプラズモンを励起することで、大きな直流電流が流れることが記載されている。また、特許文献6には、ギャップを有する金属板にレーザ光を入射し、二つの金属板の間隙に電界を集中させることで、金属板の間隙直下の媒体を加熱することにより磁化を書き込みやすくできることが記述されている。
【特許文献1】特開平10−325840号公報
【特許文献2】特開平9−134551号公報
【特許文献3】特開2004−342183号公報
【特許文献4】特開2005−108302号公報
【特許文献5】特開平5−250735号公報
【特許文献6】特開2002−298302号公報
【非特許文献1】N. Kroo et al, Europhys. Lett., 15, 289(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のGMR素子は、素子の膜厚を小さくすることができないために、記録媒体との距離や検出領域を小さくすることが困難になることが予想される。一方、より高感度が期待されるTMR(Tunneling Magneto-resistance)効果を用いた素子も、同様の問題とともに、トンネル効果を用いることで素子自体の抵抗が大きいことから、GHzを越える動作に耐えられるかが懸念されている。特許文献1に記載された方法は、近接場効果を用いることや、様々な複屈折要因により偏光度が低下したりすることにより、100nm以下の空間分解能を得るのは困難である。また、特許文献2〜4に記載された方法は、金属探針を用いたSTS(scanning tunneling spectroscopy)技術によるものであり、媒体表面の構造の変化に伴いトンネル電流に変化が生じるため、ノイズが生じる問題がある。
【0006】
本発明は、媒体表面の構造の変化によるノイズを低減する局所磁化検出手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では、記録媒体の磁気記録層に面内磁化によって情報が記録されている場合、記録媒体に対向して金属探針を配置する。この磁気記録層に接して金属探針側に導電性の保護膜、例えばAuの保護膜があってもよい。金属探針をこの記録媒体に近づけ、記録媒体と金属探針間に、磁化方向と入射面が平行になるように偏光を照射する。磁化方向に依存して、記録媒体と金属探針間のトンネル電流が偏光依存性を持つため、その偏光依存性を検出することにより、記録媒体の磁化方向をSN良く検出することができる。記録媒体の磁気記録層に媒体面に垂直な方向に磁化によって情報が記録されている場合、媒体面に近接して、中空のギャップを有する金属板を設置し、偏光を入射する。この場合には、反射光の偏光依存性を検出することにより、記録媒体の局所的な磁化方向をSN良く検出することができる。これらの手法により、光の集光径よりもはるかに小さな領域の磁化情報をSN良く検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高密度に記録された磁気記録媒体における磁化検出方法および装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図を参照して、本発明による磁化検出原理と共に、その実施例を説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1による磁化検出装置を示す概念図である。磁気記録媒体50は、基板100上に順次積層して形成された強磁性層1、保護膜2からなる多層膜41によって構成されている。強磁性層1は、磁化の向きによって情報を記録する磁気記録層である。この多層膜41の保護膜2に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離に金属探針5が配置されている。金属探針5は、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持されている。保護膜2と金属探針5との距離を制御するために、別途トンネル電流をフィードバック信号として用いても良く、また、原子間力顕微鏡における光てこ方式を用いてフィードバック信号を生成してもよい。また、距離制御用の探針を金属探針5とは別に設けても良い。
【0010】
多層膜41を構成する強磁性層1としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性単体金属またはその合金、パーマロイが使用できる。保護膜2には、例えばAuのような非磁性貴金属を用いることができる。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1は必ずしも金属である必要はない。
【0011】
強磁性層1に書き込まれた面内方向の局所的な磁化情報3、ないしは4は、以下に示すように、金属探針5と多層膜41との間に流れるトンネル電流を用いて読み出すことができる。
【0012】
磁化情報をトンネル電流により読み出す際に、まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、レンズ9により集光されて金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される。変調器8は、ポッケルスセルのような電気光学効果により、変調信号に基づく印加電圧14により入射光の偏光状態を変調するものである。レンズ9の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属探針5と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0013】
図2は、図1を右側面から見た図である。磁気記録媒体50は基板100上に順次積層して形成された強磁性層1、保護膜2よりなる多層膜41より構成されている。この多層膜41の保護膜2の面に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離にスライダ機構6に保持された金属探針5が配置される。金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される偏光120は、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0014】
入射面に平行で探針方向の電界成分(p偏光成分)は、EP=E0Cos(θ)Sin(Φ)Sin(ωt)、入射面に垂直方向の電界成分(s偏光成分)は、ES= E0Sin(θ)Sin(ωt)と書ける。一方、誘電率εxx,εxyの媒質に、pもしくはs偏光を入射させたときの反射率は、次のように表される。
rsp=rps=εxyCos(Φ)Sin(γ)/(εxxCos(γ)(Sqrt(εxx)Cos(γ)+Cos(Φ))(Sqrt(εxx)Cos(Φ)+Cos(γ)))
rpp=(Sqrt(εxx) Cos(Φ)- Cos(γ))/(Sqrt(εxx) Cos(Φ)+ Cos(γ))
ここで、rspはp偏光が入射したときのs偏光反射率、rpsはs偏光が入射したときのp偏光反射率、rppはp偏光が入射したときのp偏光反射率、γ=Sin-1(1/ Sqrt(εxx) Sin(Φ))である。
【0015】
入射光120の偏光がAの場合の探針方向電界eAとBの場合の探針方向電界eBは、次のように表される。
eA= E0((1+rpp) Cos(θ) Sin(Φ) Sin(ωt)- rsp Sin (θ) Sin(Φ) Sin(ωt))
eB= E0((1+rpp) Cos(θ) Sin(Φ) Sin(ωt)+ rsp Sin (θ) Sin(Φ) Sin(ωt))
【0016】
図3(a)は、磁化が入射方向に平行な場合、すなわち磁化3の場合の、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界最大値の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2+(EB)2)/2で割った探針方向電界の二乗の変化率を、入射角度Φおよび偏光方向θの関数として示したものである。本実施例では、磁性層としてFe、入射光の波長として800nmを用いた。800nmにおけるFeの複素誘電率としては、εxx=-3.83+22.1I,εxy=-1.33+0.024Iを用いた。探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、-0.1〜-40%変化する様子が分かる。
【0017】
一方、図3(b)は、磁化が入射方向に反平行な場合、すなわち磁化4の場合の、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2+(EB)2)/2で割った探針方向電界の二乗の変化率を、入射角度Φおよび偏光方向θの関数として同様に示したものである。探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、+0.1〜+40%変化する様子が分かる。
【0018】
検出されるトンネル電流の大きさは探針方向電界の二乗に比例するため、磁化方向が入射方向に平行か反平行かに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時のトンネル電流の大小が変化する。すなわち、入射光120の偏光を図4(c)に示すようにAとBとに時間的に変調した場合、属探針5と多層膜41との間に流れるトンネル電流は、磁化が入射方向に平行な場合には図4(a)のようになり、磁化が入射方向に反平行な場合には図4(b)のようになる。このように、属探針5と多層膜41との間に流れるトンネル電流は、磁化が入射方向に平行な場合と、磁化が入射方向に反平行な場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的なトンネル電流の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数十%の変化率を得ることが可能である。ただし、図3(a)(b)によれば、変化率はΦにはあまり依存せず、θがπ/2に近くなると大きくなるが、例えばθがπ/2に近くなると得られるトンネル電流の大きさは小さくなる。図5に示すように、探針方向電界の二乗の差(EA)2-(EB)2の絶対値が最大になるのは、Φ〜3π/8、θ〜π/4であるため、Φは3π/8近傍、θはπ/4≦θ<π/2とすることが望ましい。
【0019】
図1に示すように、トンネル電流は、磁気記録媒体50と金属探針5との間に電圧Eを印加することにより、電流計7により検出される。信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、トンネル電流信号16は、ロックインアンプ12に入力され、トンネル電流信号16中の変調周波数成分17だけが検出され、その正負から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0020】
トンネル電流は、探針直下の情報を反映するため、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、トンネル電流の大きさを検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、入射方向に平行か反平行かを検出することが可能である。
【0021】
また、入射光の波長、金属探針5と磁気記録媒体50との距離、金属探針5および保護膜2の材質を適当に選ぶことで、プラズモン増大効果により、平均的なトンネル電流の大きさSavをμAレベルまで増幅することが可能である。トンネル電流を用いた検出手法にはショットノイズが発生するがμAレベルのトンネル電流を用いることで、GHzレベルの読み出し動作が20dB程度のS/N比で可能である。
【0022】
[実施例2]
図6は、本発明の実施例2による磁化検出装置を示す概念図である。
実施例1と同様に、磁気記録媒体50は基板100上に順次積層して形成された強磁性層1、保護膜2からなる多層膜41によって構成されている。強磁性層1は、磁化の向きによって情報を記録する磁気記録層である。この多層膜41の保護膜2の面に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離に金属探針5が配置されている。金属探針5は、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持されている。保護膜2と金属探針5との距離を制御するために、別途トンネル電流をフィードバック信号として用いても良く、また、原子間力顕微鏡における光てこ方式を用いてフィードバック信号を生成してもよい。
【0023】
多層膜41を構成する強磁性層1としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性単体金属またはその合金、パーマロイが使用できる。保護膜4には、例えばAuのような非磁性貴金属を用いることができる。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1は必ずしも金属である必要はない。
【0024】
強磁性層1に書き込まれた面内方向の局所的な磁化情報3、ないしは4は、以下に示すように、金属探針5と多層膜41との間に偏光したレーザ光120を入射し、その反射光122の多層膜41に垂直で金属探針軸方向の偏光成分を偏光板20および検出器21で検出することにより、読み出すことができる。
【0025】
磁化情報を読み出す際に、まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、レンズ9により集光されて金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される。変調器8は、ポッケルスセルのような電気光学効果により、変調信号に基づく印加電圧14により入射光の偏光状態を変調するものである。レンズ9の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属探針5と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0026】
実施例1の図2と同様に、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される偏光120は、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0027】
磁化が入射方向に平行な場合、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、図3(a)に示されるように-0.1〜-40%変化する。一方、磁化が入射方向に反平行な場合、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として図3(b)に示されるように、+0.1〜+40%変化する。
【0028】
反射光122の探針方向の偏光成分は、偏光板20および検出器21によりその強度が検出される。検出される光強度は探針方向電界の二乗に比例するため、磁化方向が入射方向に平行か反平行かに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時の光強度が変化する。すなわち図4と同様に、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、検出される反射光の探針方向の偏光成分の強度は、磁化が入射方向に平行な場合と、磁化が入射方向に反平行な場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的な光強度の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数十%の変化率を得ることが可能である。ただし、実施例1の図5の場合と同様に、探針方向電界の二乗の差(EA)2-(EB)2の絶対値が最大になるのは、Φ〜3π/8、θ〜π/4であるため、Φは3π/8近傍、θはπ/4≦θ<π/2とすることが望ましい。
【0029】
図6に示すように、信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、反射偏光強度信号22は、ロックインアンプ12に入力され、反射偏光強度信号22中の変調周波数成分17だけが検出され、その正負から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0030】
反射光の偏光強度は、探針と表面とのプラズモン増大効果により探針直下の局所的な情報を強く反映する。したがって、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、反射偏光強度を検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、入射方向に平行か反平行かを検出することが可能である。
【0031】
[実施例3]
図7は、本発明の実施例3による磁化検出装置を示す概念図である。
実施例1と同様に、磁気記録媒体50は、基板100上に順次積層して形成された強磁性層1、保護膜2からなる多層膜41によって構成されている。強磁性層1は、磁化の向きによって情報を記録する磁気記録層である。ここで、強磁性層1中の磁化方向3,4は、面方向に垂直である。この多層膜41の保護膜2の面に対向して、10nmオーダーの極めて近い距離に金属板30が配置されている。金属板30は、半球型レンズ26の底面に形成され、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持されている。
【0032】
金属板30の上面図を図8に示す。金属板30は、頂点を持つ金属片31と32、および金属片33と34が中空のギャップを持って相対する構造を持っている。相対する金属片31,32、および金属片33,34の構造は、それぞれのギャップの方向が、入射光120の入射面に対して金属片31,32は平行に、金属片33,34は垂直になっている。
【0033】
多層膜41を構成する強磁性層1は垂直磁気異方性を持ち、例えばTbFeCoなどの希土類と遷移金属のアモルファス合金や、Co/Pt多層膜などである。保護膜2には、例えばAuのような非磁性貴金属を用いることができる。
【0034】
強磁性層1に書き込まれた面に垂直方向の局所的な磁化情報3、ないしは4は、以下に示すように、金属板30のギャップ近傍に偏光したレーザ光120を入射し、その反射光122の偏光成分を偏光板20および検出器21で検出することにより、読み出すことができる。
【0035】
磁化情報を読み出す際に、まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属板30のギャップ近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、半球型レンズ26により集光されて金属板30のギャップ近傍に照射される。変調器8は、ポッケルスセルのような電気光学効果により、変調信号に基づく印加電圧14により入射光の偏光状態を変調するものである。半球型レンズ26の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属板30と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0036】
図9は、図7を右側面から見た図である。図9に示すように、金属板30のギャップ近傍に照射される偏光120は、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0037】
誘電率εxx,εxyの媒質に、pもしくはs偏光を入射させたときの反射率は、次のように表される。
rsp=rps=-εxyCos(Φ) /( Sqrt(εxx) (Sqrt(εxx)Cos(γ)+Cos(Φ))(Sqrt(εxx)Cos(Φ)+Cos(γ)))
rpp=(Sqrt(εxx) Cos(Φ)- Cos(γ))/(Sqrt(εxx) Cos(Φ)+ Cos(γ))
ここで、rspはp偏光が入射したときのs偏光反射率、rpsはs偏光が入射したときのp偏光反射率、rppはp偏光が入射したときのp偏光反射率、γ=Sin-1(1/ Sqrt(εxx) Sin(Φ))である。
【0038】
入射光120の偏光がAの場合の入射面に平行方向の電界eAと、Bの場合の入射面に平行方向の電界eBは、次のように表される。
eA= E0(rpp Cos(θ) Sin(ωt)- rps Sin (θ) Sin(ωt))
eB= E0(rpp Cos(θ) Sin(ωt)+ rps Sin (θ) Sin(ωt))
【0039】
図10(a)は、磁化が上向きの場合について、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の、入射面に平行方向の電界最大値の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2+(EB)2)/2で割った変化率を、入射角度Φおよび偏光方向θの関数として示したものである。本実施例では、磁性層の複素誘電率としてFeと同じεxx=-3.83+22.1I,εxy=-1.33+0.024I、入射光の波長として800nmを用いた。入射面に平行方向の電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、-200〜+200%変化する様子が分かる。
【0040】
一方、図10(b)は、磁化が下向きの場合について、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の、入射面に平行方向の電界最大値の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2-(EB)2)/2で割った変化率を、入射角度Φ、偏光方向θの関数として同様に示したものである。入射面に平行方向の電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、+200〜-200%変化する様子が分かる。図10(a)(b)を比較すると明らかなように、一定の入射角度Φ、偏光方向θのもとで、磁化が上向きか下向きかで、変化率の正負が逆転する。
【0041】
反射光122の入射面に平行方向の偏光成分は、偏光板20および検出器21によりその強度が検出される。検出される光強度は入射面に平行方向の電界の二乗に比例するため、磁化方向が上向きか下向きかに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時の光強度が変化する。すなわち図11に示すように、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、検出される反射光の入射面に平行方向の偏光成分の強度は、磁化が上向きの場合と、磁化が下向きの場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的な光強度の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数百%とすることが可能である。ただし、入射面に平行方向の電界最大値の二乗の差(EA)2-(EB)2の絶対値が最大になるのは、図12に示すように、Φ〜0もしくは〜0.48π、θ〜π/4であるため、Φは0<Φ≦0.48π、θは〜π/4とすることが望ましい。
【0042】
図7に示すように、信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、反射偏光強度信号22は、ロックインアンプ12に入力され、反射偏光強度信号22中の変調周波数成分17だけが検出され、その正負から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0043】
反射光の偏光強度は、探針と表面とのプラズモン増大効果により探針直下の局所的な情報を強く反映する。したがって、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、反射偏光強度を検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、上向きか下向きかを検出することが可能である。
【0044】
[実施例4]
図13は、本発明の実施例4による磁化検出装置を示す概念図である。
図13と図1とを対比すると容易に分かるように、実施例4においては、磁気記録媒体50は基板100上に形成された反強磁性層44、強磁性層43、非磁性層42、強磁性層1、保護膜2より構成されている点が実施例1と異なる。ここで、反強磁性層44は必ずしもなくてもよい。多層膜41を構成する強磁性層1および強磁性層43としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性単体金属またはその合金、パーマロイが使用できる。非磁性層42は、例えばAu,Cu,Ptである。保護膜2は、例えばAuのような非磁性貴金属である。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1および強磁性層43は必ずしも金属である必要はない。多層膜41の保護膜2の面に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離に金属探針5が配置されている。金属探針5は、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持される。
【0045】
この実施例4においても、実施例1と同様、強磁性金属層1の面内磁化方向が、金属探針5と多層膜41との間に流れるトンネル電流を用いて検出できる。まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、レンズ9により集光されて金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属探針5と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0046】
金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される偏光120は、図2に示したように、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。磁化方向が入射方向に平行か反平行かに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時のトンネル電流の大小が変化する。すなわち図14に示すように、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、磁化が入射方向に平行な場合(図14(a))と、磁化が入射方向に反平行な場合(図14(b))とでは位相が逆転し、かつ、平均的なトンネル電流の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、実施例1の場合と同様に、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数十%の変化率を得ることが可能である。
【0047】
ただし本実施例における強磁性層/非磁性層/強磁性層を含む記録媒体においては、特許文献3,4に記載されているように、強磁性層間の磁化の平行、反平行に依存して電子状態が異なるため、電子状態に依存する誘電率も異なる。したがって、図14のΔS、ΔS’に示すように、偏光方向を変調したときのトンネル電流の変化は、その振幅が強磁性層間の磁化の平行、反平行で異なるため、上述した位相だけでなく振幅の変化として検出することも可能である。
【0048】
[実施例5]
図15は、本発明の実施例5による磁化検出装置を示す概念図である。
図15と図6とを対比すると容易に分かるように、実施例5においては、磁気記録媒体50は基板100上に形成された反強磁性層44、強磁性層43、非磁性層42、強磁性層1、保護膜2より構成されている点が実施例2と異なる。ここで、反強磁性層44は必ずしもなくてもよい。多層膜41を構成する強磁性層1および強磁性層43としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性単体金属またはその合金、パーマロイが使用できる。非磁性層42は、例えばAu,Cu,Ptである。保護膜2は、例えばAuのような非磁性貴金属である。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1および強磁性層43は必ずしも金属である必要はない。多層膜41の保護膜2の面に対向して、1nmオーダーの極めて近い距離に金属探針5が配置される。金属探針5は、ハードディスク装置におけるのと同様のスライダ機構6に保持される。
【0049】
この実施例5においても、実施例2と同様、金属探針5と多層膜41との間に偏光したレーザ光120を入射し、その反射光122の多層膜41に垂直で金属探針軸方向の偏光成分を偏光板20および検出器21で検出することにより、強磁性金属層1の面内磁化方向を読み出すことができる。
【0050】
磁化情報を読み出す際に、まず、半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直方向から測ってΦの角度で、金属探針5と保護膜2との間近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、レンズ9により集光されて金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される。レンズ9の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属探針5と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。
【0051】
金属探針5と保護膜2との間近傍に照射される偏光120は、図2に示すように、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0052】
入射光120の偏光がAの場合とBの場合の探針方向電界の二乗の変化率は、入射角度Φ、偏光方向θ、および磁化が入射方向に平行か反平行かに依存して、図3(a)(b)に示したように数十%変化する。
【0053】
反射光122の探針方向の偏光成分は、偏光板20および検出器21によりその強度が検出される。検出される光強度は探針方向電界の二乗に比例するため、磁化方向が入射方向に平行か反平行かに依存して、偏光方向A,Bのそれぞれの時の光強度が変化する。すなわち図14と同様に、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、検出される反射光の探針方向の偏光成分の強度は、磁化が入射方向に平行な場合と、磁化が入射方向に反平行な場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的な光強度の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数十%の変化率を得ることが可能である。
【0054】
ただし、本実施例における強磁性層/非磁性層/強磁性層を含む記録媒体においては、特許文献3,4に記載されているように、強磁性層間の磁化の平行、反平行に依存して電子状態が異なるため、電子状態に依存する誘電率も異なる。したがって、図14のΔS、ΔS’に示すように、偏光方向を変調したときの光強度の変化は、その振幅が強磁性層間の磁化の平行、反平行で異なるため、上述した位相だけでなく振幅の変化として検出することも可能である。
【0055】
図15に示すように、信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、反射偏光強度信号22は、ロックインアンプ12に入力され、反射偏光強度信号22中の変調周波数成分17だけが検出され、その振幅の正負もしくは絶対値から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0056】
反射光の偏光強度は、探針と表面とのプラズモン増大効果により探針直下の局所的な情報を強く反映する。したがって、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、反射偏光強度を検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、入射方向に平行か反平行かを検出することが可能である。
【0057】
[実施例6]
図16は、本発明の実施例6による磁化検出装置を示す概念図である。
図16と図7とを対比すると容易に分かるように、実施例6においては、磁気記録媒体50は基板100上に形成された反強磁性層44、強磁性層43、非磁性層42、強磁性層1、保護膜2より構成されている点が実施例3と異なる。ここで、反強磁性層44は必ずしもなくてもよい。多層膜41を構成する強磁性層1および強磁性層43は垂直磁気異方性を持ち、例えばTbFeCoなどの希土類と遷移金属のアモルファス合金や、Co/Pt多層膜などである。非磁性層42は、例えばAu,Cu,Ptである。保護膜2は、例えばAuのような非磁性貴金属である。保護膜2は金属である必要があるが、強磁性層1およびは強磁性層43は必ずしも金属である必要はない。
【0058】
強磁性層1に書き込まれた面に垂直方向の局所的な磁化情報3、ないしは4は、実施例3と同様に、金属板30のギャップ近傍に偏光したレーザ光120を入射し、その反射光122の偏光成分を偏光板20および検出器21で検出することにより、読み出すことができる。
【0059】
半導体レーザ121からの光120を、磁気記録媒体50の面に垂直な方向から測ってΦの角度で、金属板30のギャップ近傍に照射する。半導体レーザ121からの光120は、偏光板19、位相板18、変調器8により偏光の向きが変調され、半球型レンズ26により集光されて金属板30のギャップ近傍に照射される。半球型レンズ26の代わりに凹面鏡を用いて集光してもよい。入射光のエネルギーを適当に選ぶことにより、金属板30と保護膜2との間にプラズモンを効率よく励起することが可能である。また、図9に示したように、金属板30のギャップ近傍に照射される偏光120は、磁気記録媒体50の面に垂直な方向に対して±θの角度を持つ二種類の直線偏光AとBである。
【0060】
磁性層1の磁化が上向きか下向きかに依存して、入射光120の偏光がAの場合とBの場合の、入射面に平行方向の電界の二乗の差(EA)2-(EB)2を、その平均値((EA)2+(EB)2)/2で割った変化率は、図10(a)(b)に示したように、入射角度Φ、偏光方向θの関数として、-200〜+200%変化し、かつ、変化率の正負が逆転する。
【0061】
反射光122の入射面に平行方向の偏光成分は、偏光板20および検出器21によりその強度が検出される。検出される光強度は入射面に平行方向の電界の二乗に比例するため、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調した場合、検出される反射光の入射面に平行方向の偏光成分の強度は、磁化が上向きの場合と、磁化が下向きの場合とでは位相が逆転し、かつ、平均的な光強度の大きさSavに対する変化率ΔS/ Savは、入射角度Φ、偏光方向θを適当に選ぶことにより数百%の変化率を得ることが可能である。
【0062】
ただし、本実施例における強磁性層/非磁性層/強磁性層を含む記録媒体においては、特許文献3,4に記載されているように、強磁性層間の磁化の平行、反平行に依存して電子状態が異なるため、電子状態に依存する誘電率も異なる。したがって、図14のΔS,ΔS’と同様に、偏光方向を変調したときの光強度の変化は、その振幅が強磁性層間の磁化の平行、反平行で異なるため、上述した位相だけでなく振幅の変化として検出することも可能である。
【0063】
図16に示すように、信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14を変調器8に印加することにより、入射光120の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、反射偏光強度信号22は、ロックインアンプ12に入力され、反射偏光強度信号22中の変調周波数成分17だけが検出され、振幅の正負もしくは絶対値から読み取り器13により磁気記録媒体50に書き込まれた磁化情報が読み取られる。
【0064】
反射光の偏光強度は、探針と表面とのプラズモン増大効果により探針直下の局所的な情報を強く反映する。したがって、入射光120の偏光をAの場合とBの場合とに時間的に変調しながら、反射偏光強度を検出することで、強磁性層1に記録された局所的な磁化方向が、上向きか下向きかを検出することが可能である。
【0065】
[実施例7]
図17から21を参照して、本発明の実施例7について説明する。
本実施例では、磁化を記録する強磁性層が、レジストパターニング、イオンミリング、レジスト除去等の半導体製造に広く用いられているリソグラフィー技術により、図17,19,20,21に示すように、ドット状にパターニングされており、柱状のナノピラー60,61,62,63,64,65,66,67が規則的に多数離間して形成されている。図18は、例えば図17の場合のドットの配列の鳥瞰図を示す。図17および図19は層面内に磁化がある場合、図20、図21は層面に垂直に磁化がある場合を示す。ここで、図19、図21に示すように、非磁性金属層42も含めた多層膜構造のナノピラーとしても良い。
【0066】
本実施例においては、個々の記録単位となる領域がドット状にパターニングされており、例えば図17において記録領域対応の柱状のナノピラー60,61が形成されている点において実施例1と異なる。ここで、ナノピラーと言うのは、平面上の大きさがnm単位のレベルの直径を持つ楕円あるいは四角の柱、と言う意味である。ナノピラーにすることで、隣接した記録領域の影響を受けにくくなり、記録特性が向上する。
【0067】
ナノピラーは、現在の磁気記録ディスクの記録フォーマットに対応できるように、配列されて構成されるのが良い。また、各ピラー間は、図17,19,20,21に示すように、保護膜2により間隙が埋められていることが望ましい。
【0068】
図17および図19のように層面内に磁化がある場合、実施例1,2と同様に金属探針のトンネル電流や、反射偏光強度の偏光依存性利用して磁化を検出することができる。また、図20、図21のように層面に垂直に磁化がある場合、実施例3と同様に反射偏光強度の偏光依存性利用して磁化を検出することができる。
【0069】
[実施例8]
図22は、本発明の実施例5に相当する磁気記録装置の構成概要を示す斜視図である。
前述の各実施例で説明した多層膜41、例えば、強磁性層1、保護膜2、基板100から成る多層膜41を、円板状の記録媒体70として形成する。また、実施例7で述べたように、記録層をドット状のパターンとしてもよい。これまでの実施例で述べた、金属探針もしくは金属板、入射偏光発生手段、反射光検出手段は、アーム72の先端部に設けられたスライダ6の下部に取り付けられる。73はアーム72の回転支持軸であり、アーム72は一般の磁気ディスク装置と同様の機構により位置制御され、円板状の記録媒体70を一般の磁気ディスク装置と同様にスピンドルモータ81により回転中心71を軸として回転させると、空気力学的な作用によりスライダ6は所定の距離だけ浮上する。したがって、スライダ6は多層膜41に対向して、前述の実施例で説明したと同様に、ほぼ一定の距離をもって多層膜41に対向配置される。
【0070】
円板状記録媒体70に書き込まれた磁化方向が媒体面内を向いている場合、実施例1もしくは2で述べた方法により書き込まれた磁化方向を読み取ることが可能である。ただし実施例1,2で述べたように、書き込まれた磁化方向と入射光の入射面が平行になるように入射光学系もしくは記録磁化方向を調整する必要がある。また、媒体面に垂直に磁化が向いている場合、実施例3で述べた方法により書き込まれた磁化方向を読み取ることが可能である。金属探針によるトンネル電流を用いて磁化を読み取る場合、多層膜41は導電性があり、導電性回転軸71を通じて接地されている。
【0071】
信号発生器11により発生した変調信号に基づき電源10により生成された変調電圧14により、入射光の偏光状態は、Aの状態とBの状態に変調される。変調信号15と、トンネル電流信号もしくは反射偏光強度信号80は、ロックインアンプ12に入力され、信号80中の変調周波数成分17だけが検出され、その正負から読み取り制御器82により円板状記録媒体70に書き込まれた磁化情報が読み取られる。読み取り制御器から出される制御信号84によりアーム制御用モータ83を制御し、読み取り位置を制御することができる。
【0072】
図23は、読み取り位置の制御を説明する図である。読み取り位置の制御に当たっては、検出信号の位置依存性を用いて、記録位置のサーボ信号とすることが可能である。円板状記録媒体70において、磁化が記録されている記録マーク87の部分からは、実施例1,2,3で述べたように大きな偏光依存性の信号が得られるが、磁化が記録されていない部分には偏光依存性はない。したがって、例えば図23に示すように、記録マーク87として千鳥格子パターンなどの位置検出パターンを書き込むと、読み取り位置がトラック86からずれるとサーボ信号強度が減少する。この信号振幅差からトラック86の位置を検出することが可能である。
【0073】
さらに、スライダ6に書き込み用磁気ヘッド85を装着することで、一般の磁気ディスク装置と同様の磁気記録再生装置が実現できる。
【0074】
図24は、金属探針を用いた磁化読み取り方法に基づく磁気記録再生装置のスライダ6の概要を示す図である。読み取り用の金属探針5と書き込み用の磁気ヘッド85が、スライダ6の下部に取り付けられている。半導体レーザ90から出射された光は、偏光板91、位相板92、導波路93、変調器94を通り、金属探針5の先端部に照射される。導波路91の端面95を適当な角度で切っておくと屈折により光路が曲がるため、金属探針5の先端部に効率良く光を照射することが可能である。また、この端面95に適当な曲率を持たせることで、レンズ効果により金属探針5の先端部に効率良く光を照射することができる。変調器94は、電界により屈折率を変調できるポッケルスセルであり、実施例1で述べたように偏光変調を行うことでトンネル電流を測定することにより、多層膜41に記録された磁化の向きを検出することが可能である。また、図25に示すように、偏光板98、光検出器99を装着することで、実施例2で述べたように反射偏光強度を測定して多層膜41に記録された磁化の向きを検出することができる。
【0075】
図26は、金属探針5の代わりに、金属膜の尖鋭パターン96を金属探針として用いたスライダを示す図である。97はこの尖鋭パターン金属膜96を右方向から見た図であり、尖鋭パターン金属膜96の尖った先端は、多層膜41に対向するように位置付けられている。この尖鋭パターン96は、例えばAuで作成することができ、レジストパターニング、イオンミリング、レジスト除去等の半導体製造に広く用いられているリソグラフィー技術により形成したのち、スライダ6に接着しても良い。同様に、偏光変調を行うことでトンネル電流を測定することにより、多層膜41に記録された磁化の向きを検出することが可能である。また、図27に示すように、金属膜の尖鋭パターン96の裏面に偏光板98、光検出器99を装着することで、実施例2で述べたように反射偏光強度を測定して多層膜41に記録された磁化の向きを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1による磁化検出装置を示す概念図。
【図2】図1を右側面から見た図。
【図3】偏光状態を変化させた時の探針方向電界の二乗の変化率を示す図であり、(a)は磁化が入射光の入射方向に平行な場合の図、(b)は反平行な場合の図。
【図4】(a)は磁化が入射光の入射方向に平行な場合のトンネル電流の時間変化を示す図、(b)は磁化が入射光の入射方向に反平行な場合のトンネル電流の時間変化を示す図、(c)は入射偏光状態の時間変化を示す図。
【図5】偏光状態を変化させた時の探針方向電界の二乗の大きさの差を示す図。
【図6】本発明の実施例2による磁化検出装置を示す概念図。
【図7】本発明の実施例3による磁化検出装置を示す概念図。
【図8】金属板の上面図。
【図9】図7を右側面から見た図。
【図10】入射光の偏光状態を変化させた時の入射面に平行方向の電界の二乗の変化率を示す図であり、(a)は磁化が上向きの場合の図、(b)は磁化が下向きの場合の図。
【図11】(a)は磁化が上向きの場合の入射面に平行方向の反射偏光強度の時間変化を示す図、(b)は磁化が下向きの場合の入射面に平行方向の反射偏光強度の時間変化を示す図、(c)は入射偏光状態の時間変化を示す図。
【図12】偏光状態を変化させた時の探針方向電界の二乗の大きさの差を示す図。
【図13】本発明の実施例4による磁化検出装置を示す概念図である。
【図14】(a)は磁化が入射光の入射方向に平行な場合のトンネル電流の時間変化を示す図、(b)は磁化が入射光の入射方向に反平行な場合のトンネル電流の時間変化を示す図、(c)は入射偏光状態の時間変化を示す図。
【図15】本発明の実施例5による磁化検出装置を示す概念図。
【図16】本発明の実施例6による磁化検出装置を示す概念図。
【図17】ナノピラーの構造を示す図。
【図18】ナノピラーの構造を示す鳥瞰図。
【図19】ナノピラーの構造を示す図。
【図20】ナノピラーの構造を示す図。
【図21】ナノピラーの構造を示す図。
【図22】磁気記録装置の構成概要を示す斜視図。
【図23】読み取り位置の制御を説明する図。
【図24】スライダの概要を示す図。
【図25】スライダの概要を示す図。
【図26】スライダの概要を示す図。
【図27】スライダの概要を示す図。
【符号の説明】
【0077】
1…強磁性層、2…保護膜、3,4…磁化、5…金属探針、6…スライダ、7…電流計、8…変調器、9…レンズ、10…電源、11…信号発生器、12…ロックインアンプ、13…信号読み取り器、14…変調電圧、15…変調信号、16…トンネル電流信号、17…変調周波数成分,18…位相板、19,20…偏光板、21…光検出器、22…反射偏光強度信号、25…支え、26…半球型レンズ、30…金属板、31,32,33,34…金属片、41…多層膜、42…非磁性層、43…強磁性層、44…反強磁性層、50…磁気記録媒体、60〜67…ナノピラー、70…円板状記録媒体、71…回転軸、72…アーム、73…アーム回転軸、80…検出信号、81…スピンドルモータ、82…読み取り制御器、83…アーム制御用モータ、84…アーム制御信号、85…磁気ヘッド、86…トラック、87…記録マーク、90…半導体レーザ、91…偏光板、92…位相板、93…導波路、94…変調器、95…導波路端面、96,97…尖鋭パターン、98…偏光板、99…光検出器、100…基板、120…入射光、121…半導体レーザ、122…反射光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内磁化の方向により情報が記録された磁気記録層を有する記録媒体に対向して金属探針を配置し、前記金属探針が対向している前記記録媒体の領域に偏光状態を変調した入射光を照射し、前記金属探針と前記記録媒体表面との間に流れるトンネル電流の変化、もしくは前記金属探針と前記記録媒体の表面から反射される反射光の偏光強度の変化により前記金属探針が対向している記録媒体の領域の磁化の方向を検出することを特徴とする磁化検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の磁化検出方法において、前記記録媒体の面に垂直な方向に対して±θの角度をなす直線偏光を交互に入射させることを特徴とする磁化検出方法。
【請求項3】
面内磁化の方向により情報が記録された磁気記録層を有する記録媒体と、
前記記録媒体に対向して配置された金属探針と、
光源と、
前記光源からの光を、前記記録媒体の前記金属探針が対向している領域に入射させる手段と、
前記光源から出射されて前記記録媒体に入射する入射光の偏光状態を変調する変調手段と、
前記金属探針と前記記録媒体の表面との間に流れるトンネル電流もしくは前記記録媒体の表面で反射された反射光の偏光強度を検出する検出手段とを有し、
前記検出手段によって検出した、前記入射光の偏光状態の変調に起因する前記トンネル電流の変化もしくは前記反射光の偏光強度の変化により、前記記録媒体の前記金属探針が対向している領域の磁化の方向を検出することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の磁化検出装置において、前記変調手段は、前記入射光の偏光方向を前記記録媒体の面に垂直な方向に対して±θの角度をなす方向に交互に変えることを特徴とする磁化検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の磁化検出装置において、前記記録媒体は、基板上に強磁性層、非磁性層、強磁性層が形成された多層膜構造、もしくは基板上に反強磁性層、強磁性層、非磁性層、強磁性層が形成された多層膜構造を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項6】
請求項3記載の磁化検出装置において、前記磁気記録層は、記録される情報単位に空間的に分割された磁化領域を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項7】
請求項3記載の磁化検出装置において、前記記録媒体を回転駆動する駆動手段と、一端が回転可能に支持され他端が前記記録媒体上に延伸されたアームと、前記アームの先端に設けられたスライダとを有し、前記金属探針は前記スライダに設けられており、前記記録媒体の回転により前記スライダが浮上して前記金属探針と前記記録媒体との距離がほぼ一定に維持されることを特徴とする磁化検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の磁化検出装置において、前記スライダは、前記光源からの光を前記金属探針の先端付近に導波し、入射する手段を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項9】
請求項7記載の磁化検出装置において、前記金属探針は前記スライダに設けられた先鋭な先端を有する金属パターンからなり、前記金属パターンの先端に前記光源からの光を導波し、入射する手段を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項10】
層面に垂直な磁化の方向により情報が記録された磁気記録層を有する記録媒体と、
前記記録媒体に対向して配置され、ギャップを介して相対する金属片を有する金属板と、
光源と、
前記光源からの光を、前記記録媒体の前記金属板が対向している領域に入射させる手段と、
前記光源から出射されて前記記録媒体に入射する入射光の偏光状態を変調する変調手段と、
前記記録媒体の表面で反射された反射光の偏光強度を検出する検出手段とを有し、
前記検出手段によって検出した、前記入射光の偏光状態の変調に起因する前記反射光の偏光強度の変化により、前記記録媒体の前記金属探板が対向している領域の磁化の方向を検出することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項11】
請求項10記載の磁化検出装置において、前記変調手段は、前記入射光の偏光方向を前記記録媒体の面に垂直な方向に対して±θの角度をなす方向に交互に変えることを特徴とする磁化検出方法。
【請求項12】
請求項10記載の磁化検出装置において、前記記録媒体は、基板上に強磁性層、非磁性層、強磁性層が形成された多層膜構造、もしくは基板上に反強磁性層、強磁性層、非磁性層、強磁性層が形成された多層膜構造を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項13】
請求項10記載の磁化検出装置において、前記磁気記録層は、記録される情報単位に空間的に分割された磁化領域を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項14】
請求項10記載の磁化検出装置において、前記記録媒体を回転駆動する駆動手段と、一端が回転可能に支持され他端が前記記録媒体上に延伸されたアームと、前記アームの先端に設けられたスライダとを有し、前記金属板は前記スライダに設けられており、前記記録媒体の回転により前記スライダが浮上して前記金属板と前記記録媒体との距離がほぼ一定に維持されることを特徴とする磁化検出装置。
【請求項15】
請求項14記載の磁化検出装置において、前記スライダは、前記光源からの光を前記金属板の前記ギャップに導波し、入射する手段を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項1】
面内磁化の方向により情報が記録された磁気記録層を有する記録媒体に対向して金属探針を配置し、前記金属探針が対向している前記記録媒体の領域に偏光状態を変調した入射光を照射し、前記金属探針と前記記録媒体表面との間に流れるトンネル電流の変化、もしくは前記金属探針と前記記録媒体の表面から反射される反射光の偏光強度の変化により前記金属探針が対向している記録媒体の領域の磁化の方向を検出することを特徴とする磁化検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の磁化検出方法において、前記記録媒体の面に垂直な方向に対して±θの角度をなす直線偏光を交互に入射させることを特徴とする磁化検出方法。
【請求項3】
面内磁化の方向により情報が記録された磁気記録層を有する記録媒体と、
前記記録媒体に対向して配置された金属探針と、
光源と、
前記光源からの光を、前記記録媒体の前記金属探針が対向している領域に入射させる手段と、
前記光源から出射されて前記記録媒体に入射する入射光の偏光状態を変調する変調手段と、
前記金属探針と前記記録媒体の表面との間に流れるトンネル電流もしくは前記記録媒体の表面で反射された反射光の偏光強度を検出する検出手段とを有し、
前記検出手段によって検出した、前記入射光の偏光状態の変調に起因する前記トンネル電流の変化もしくは前記反射光の偏光強度の変化により、前記記録媒体の前記金属探針が対向している領域の磁化の方向を検出することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の磁化検出装置において、前記変調手段は、前記入射光の偏光方向を前記記録媒体の面に垂直な方向に対して±θの角度をなす方向に交互に変えることを特徴とする磁化検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の磁化検出装置において、前記記録媒体は、基板上に強磁性層、非磁性層、強磁性層が形成された多層膜構造、もしくは基板上に反強磁性層、強磁性層、非磁性層、強磁性層が形成された多層膜構造を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項6】
請求項3記載の磁化検出装置において、前記磁気記録層は、記録される情報単位に空間的に分割された磁化領域を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項7】
請求項3記載の磁化検出装置において、前記記録媒体を回転駆動する駆動手段と、一端が回転可能に支持され他端が前記記録媒体上に延伸されたアームと、前記アームの先端に設けられたスライダとを有し、前記金属探針は前記スライダに設けられており、前記記録媒体の回転により前記スライダが浮上して前記金属探針と前記記録媒体との距離がほぼ一定に維持されることを特徴とする磁化検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の磁化検出装置において、前記スライダは、前記光源からの光を前記金属探針の先端付近に導波し、入射する手段を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項9】
請求項7記載の磁化検出装置において、前記金属探針は前記スライダに設けられた先鋭な先端を有する金属パターンからなり、前記金属パターンの先端に前記光源からの光を導波し、入射する手段を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項10】
層面に垂直な磁化の方向により情報が記録された磁気記録層を有する記録媒体と、
前記記録媒体に対向して配置され、ギャップを介して相対する金属片を有する金属板と、
光源と、
前記光源からの光を、前記記録媒体の前記金属板が対向している領域に入射させる手段と、
前記光源から出射されて前記記録媒体に入射する入射光の偏光状態を変調する変調手段と、
前記記録媒体の表面で反射された反射光の偏光強度を検出する検出手段とを有し、
前記検出手段によって検出した、前記入射光の偏光状態の変調に起因する前記反射光の偏光強度の変化により、前記記録媒体の前記金属探板が対向している領域の磁化の方向を検出することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項11】
請求項10記載の磁化検出装置において、前記変調手段は、前記入射光の偏光方向を前記記録媒体の面に垂直な方向に対して±θの角度をなす方向に交互に変えることを特徴とする磁化検出方法。
【請求項12】
請求項10記載の磁化検出装置において、前記記録媒体は、基板上に強磁性層、非磁性層、強磁性層が形成された多層膜構造、もしくは基板上に反強磁性層、強磁性層、非磁性層、強磁性層が形成された多層膜構造を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項13】
請求項10記載の磁化検出装置において、前記磁気記録層は、記録される情報単位に空間的に分割された磁化領域を有することを特徴とする磁化検出装置。
【請求項14】
請求項10記載の磁化検出装置において、前記記録媒体を回転駆動する駆動手段と、一端が回転可能に支持され他端が前記記録媒体上に延伸されたアームと、前記アームの先端に設けられたスライダとを有し、前記金属板は前記スライダに設けられており、前記記録媒体の回転により前記スライダが浮上して前記金属板と前記記録媒体との距離がほぼ一定に維持されることを特徴とする磁化検出装置。
【請求項15】
請求項14記載の磁化検出装置において、前記スライダは、前記光源からの光を前記金属板の前記ギャップに導波し、入射する手段を有することを特徴とする磁化検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2007−102899(P2007−102899A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290255(P2005−290255)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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