説明

磁化空気を用いた分解装置による廃棄物処理方法

【課題】簡易な構造で空気流入量調節が不要な磁化空気を用いた廃棄物分解装置による、廃棄物処理方法。
【解決手段】分解室、廃棄物投入口、分解灰排出口、通気管、通気管の端部に設けられた開口部、開口部の外側に設置された磁石、排気管を備え、通気管および通気管開口部には開閉機構が存在せず、通気管開口部は常時外気に開口し、1組の磁石による磁場の強さは1000ガウス〜1800ガウスの範囲にある、廃棄物分解装置を用いることを特徴とする、廃棄物処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化空気を用いた分解装置による廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に環境問題への関心が高まっており、廃棄物の処理に関して様々な取り組みがなされている。例えば日本では、ごみ類の分別回収、従来の埋め立て処理に代わる廃棄物処理、有害なダイオキシンを発生しない高性能焼却炉が普及しつつある。しかし、ごみの分別回収には設備や輸送手段のコストが高く、しかも様々な材料が複合する生活ごみでは適切な分別が難しい。また焼却処理には石油などの燃料が大量に必要であり、特に高性能焼却炉のコストは高い。このため、人口増加の著しい新興国では、分別回収や高性能焼却炉による適切な廃棄物処理が今なお十分でない。また日本のような先進国でも、二酸化炭素排出量を抑えるために、石油などの化石燃料の消費が少ない安全な廃棄物の処理方法が望まれている。
【0003】
ところで、空気に磁場を与えると、空気に含まれる単体気体ごとの磁場における挙動の違いから空気流が発生することが知られている。そこで、モーターなどによる吸排気処理を行うことなく、磁場によって空気流を発生させ、空気流に接する物質の分解反応を促進する技術が検討されてきた。特に、この技術を廃棄物の低温燃焼(分解)に利用する技術は、化石燃料を用いない環境配慮型の方法として注目されている。 磁化空気を用いた廃棄物処理装置及びこれを用いた廃棄物処理方法として、例えば以下の特許文献1〜8が知られているが、いずれの装置、方法でも、実用に供することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報WO2008/040159A1
【特許文献2】特許登録第4008181号公報
【特許文献3】特許登録第4108387号公報
【特許文献4】特許登録第4337128号公報
【特許文献5】実用新案登録第3128464号公報
【特許文献6】特開2010−5581号公報
【特許文献7】特開2010−155231号公報
【特許文献8】特開2010−58103号公報
【0005】
特許文献1に開示された装置は、空気導入管内に多くの磁石対を設置し、強く磁化された空気を導入する。比較的少ない磁化空気導入管で磁化空気を導入できるが、個々の磁化空気導入管の条件が全体として大きな影響を与える。このため、実際の使用においては、上記装置では分解室容量と磁化空気導入量のバランスをとることが困難であり、磁化空気導入管に設けられた開閉弁によって空気流量を頻繁に調節する必要があった。
特許文献2に開示された装置では、分解開始後に、空気取入口に設けられたバルブを絞ることによって、磁化空気導入量を調節することを特徴としている。しかし、実際には全てのバルブを短時間で最適状態に調節することは困難であった。
特許文献3に開示された装置では、特殊なハウジング内に設置された磁石によって磁化空気を供給することを特徴としている。また、2,500〜3,000ガウスの磁束密度が採用されている。この装置の場合、1つの供給路から強力に磁化された空気を装置内に導入するため、装置内に均一に磁化空気を供給することが困難であった。しかも、磁化空気供給路には流量調整バルブが不可欠であった。
特許文献4に開示された装置では、装置内に様々な長さの、あるいは、分岐した磁気空気供給管を使用する。しかし、実際には、最適な磁気空気供給管の選択が困難であり、磁化空気管のバルブハンドルで磁化空気量を調節しつつ使用しなければならなかった。
特許文献5,6,7に開示された装置でも、磁気空気管に流量調整バルブを設け、磁化空気の流量を調節しながら使用することを前提としている。しかし、実際には全てのバルブを短時間で最適状態に調節することは困難であった。
このように、特許文献1〜7に開示された磁化空気を用いた廃棄物処理装置及びこれを用いた廃棄物処理方法では、高効率で安定した廃棄物処理装置の実用化が不可能であった。また、磁化空気の流入調節手段を必須としているため、装置の構造が複雑であった。このため、設置場所やコストに応じた処理装置の小型化あるいは大型化も不可能であった。
また、特許文献8には、温水供給機能も兼ね備える装置が開示されているが、磁化空気供給管の構造の詳細は記載されていない。このためこの装置の実用化は困難であった。
さらに、特許文献1〜8に開示された装置では、排気の浄化機能が十分でなく、この点でも問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、簡易な構造で、磁化空気の調節を必要としない、磁化空気を用いた廃棄物処理装置を目的とする。本発明はまた、設置場所や設置コストに応じたサイズに変更でき、常時安定運転が可能な廃棄物処理装置を目的とする。また、本発明は、このような廃棄物処理装置を用いた簡便で環境に配慮した廃棄物処理方法を目的とする。
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、磁化空気を用いた廃棄物分解処理装置において、分解室の形状、通気管の数と位置、通気管の開口部の構造、磁力の強さなどの諸条件を特定の範囲に限定した場合に限り、上記目的が達成されることを見出した。
【0008】

第1の本発明は以下のものである。
分解室、分解室の上部に設けられた廃棄物投入口、分解室の下部に設けられた分解灰排出口、分解室の側壁を貫通し分解室外の空気を分解室内部に導入する通気管、分解室外にある通気管の端部に設けられた開口部、開口部の外側に設置された対向する1組の磁石、分解室で発生する排気ガスを放出する排気管を備え、しかも、以下の条件(3−1)〜(3−12)の条件を満たす廃棄物分解装置を用いることを特徴とする廃棄物処理方法。
(3−1)分解室の形状は直方体である。
(3−2)分解室の底面の隣り合う2辺のいずれもが30cm〜240cmの範囲にある長方形である。
(3−3)分解灰排出口が、側壁の1面に設けられる。
(3−4)通気管は、分解室の側壁高さの半分以下に位置する。
(3−5)分解灰排出口の中心を通り且つ分解室の底面に垂直な面で、分解室を左右に二等分した場合、通気管の数は左右で同じである。
(3−6)分解室の底面の周囲100cmに接する側壁に、通気管が3〜6本の範囲で設けられる。
(3−7)対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の数は同じである。
(3−8)対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の位置は、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。
(3−9)分解灰排出口の設けられた側壁にある通気管の少なくとも2本が、該側壁と対向する側壁に設けられた通気管と、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。
(3−10)通気管開口部が、直径が2mm〜15mmの円形である。
(3−11)通気管および上記通気管開口部には開閉機構が存在せず、上記通気管開口部は常時外気に開口する。
(3−12)上記1組の磁石によるそれぞれの磁力の強さは1000ガウス〜1800ガウスの範囲にある。
【0009】
第2の本発明は以下のものである。
分解室、分解室の上部に設けられた廃棄物投入口、分解室の下部に設けられた分解灰排出口、分解室の側壁を貫通し分解室外の空気を分解室内部に導入する通気管、分解室外にある通気管の端部に設けられた開口部、開口部の外側に設置された対向する1組の磁石、分解室で発生する排気ガスを放出する排気管を備え、しかも、以下の条件(4−1)〜(4−12)の条件を満たす廃棄物分解装置を用いることを特徴とする廃棄物処理方法。
(4−1)分解室の形状は直方体あるいは立方体である。
(4−2)分解室の底面は1辺が30cm〜240cmの範囲にある正方形である。
(4−3)分解灰排出口が、側壁の1面に設けられる。
(4−4)通気管は、分解室の側壁高さの半分以下に位置する。
(4−5)分解灰排出口の中心を通り且つ分解室の底面に垂直な面で、分解室を左右に二等分した場合、通気管の数は左右で同じである。
(4−6)分解室の底面の周囲100cmに接する側壁に、通気管が3〜6本の範囲で設けられる。
(4−7)対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の数は同じである。
(4−8)対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の位置
は、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。
(4−9)分解灰排出口の設けられた側壁にある通気管の少なくとも2本が、該側壁と対向する側壁に設けられた通気管と、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。
(4−10)通気管開口部が、直径が2mm〜15mmの円形である。
(4−11)通気管および上記通気管開口部には開閉機構が存在せず、上記通気管開口部は常時外気に開口する。
(4−12)上記1組の磁石によるそれぞれの磁力の強さは1000ガウス〜1800ガウスの範囲にある。
【0010】
第3の本発明は、さらに排気浄化装置を備える廃棄物分解装置を用いることを特徴とする、第1または2の廃棄物処理方法である。
である。
【0011】
第4の本発明は、排気浄化装置が排ガスフィルターを備える、第3の廃棄物処理方法である。
【0012】
第5の本発明は、排気浄化装置が、排気冷却部、シャワー洗浄部、シャワー水用フィルターを備えることを特徴とする、第3の廃棄物処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、分解室の形状が直方体あるいは立方体であり、磁化空気の通気管に設置する磁石はそれぞれ1対でよく、磁化空気流入量を調節する手段を設ける必要がない。分解室のサイズは、移動物(例えば船舶、車両など)に搭載可能な小型のものから、屋外で長期使用するための大型のものまで、様々に変更できる。本発明で用いる装置の底部に分解灰を設置し、廃棄物を投入し、加熱すれば、直ちに廃棄物の分解が開始し、持続する。したがって、本発明で用いる廃棄物分解装置及びこれを用いた廃棄物処理方法によって、安定した廃棄物の分解処理を、簡便な操作によって、低コストで、様々な場所で行うことができる。さらに本発明で用いる分解装置に排気浄化装置を設けた場合には、一層環境に配慮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で用いる分解装置の1例
【図2】参考例
【図3】本発明で用いる通気管の1例
【図4】上から見た本発明で用いる分解装置の断面の1例
【図5】本発明で用いる分解装置の排気浄化装置の1例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で用いる分解装置は分解室を備える。分解室の形状は直方体あるいは立方体である。廃棄物の分解中、分解室の中心温度が500℃前後に上昇するため、分解室には耐熱性材料を用いることが好ましい。分解室の材質は、例えば、ステンレス、鋼板などである。耐久性や熱遮断性を向上させるために、分解室を複層の壁で構成してもよい。
本発明で用いる分解室の底面は、全ての辺の長さが30cm〜240cmの範囲にある形状を有する。これは、例えば、隣り合う2辺のいずれもが30cm〜240cmの範囲にある長方形、1辺が30cm〜240cmの範囲にある正方形などである。1辺が30cm〜240cmの範囲にある正方形が、設計が簡便であり、設置が容易であるため、好ましい。
分解室の底面の全ての辺、軸、または直径の長さが30cmより短い場合には、処理可能な廃棄物の量が少なく実用的でない。分解室の底面の全ての辺の長さが240cmより長い場合には、廃棄物の処理効率が下がり、実用的でない。製造コストや処理容量からみて、底面の形状は、好ましくは各辺が50cm〜200cmの長方形または正方形であり、最も好ましくは1辺が50cm〜180cmの範囲の正方形である。
分解室の高さは、分解反応の安定性、設置の簡易性からみて、底面の辺の長さの0.8倍〜1.5倍となることが好ましい。中でも分解室の形状が略立方体である場合が好ましい。
【0016】
本発明で用いる装置は、分解室の上部に廃棄物投入口を、分解室の下部に分解灰排出口を備える。分解室の上部とは、分解室の側面のうち高さの2分の1を超える高さにある部分か、あるいは分解室の上面である。分解室の下部とは、分解室の側面のうち高さの2分の1未満にある部分である。取り扱い性から見て、分解灰排出口は、好ましくは、側壁に設けられる。廃棄物投入口および分解灰排出口の形状は、投入あるいは排出と密閉性に問題がなければいかなるものでもよい。
【0017】
本発明で用いる装置は、通気管を備える。通気管は分解室の側壁を貫通し分解室外の空気を分解室内部に導入する。通気管には分解室同様の耐熱性材料を用いることが好ましい。通気管は、分解室の側面の高さの半分以下、好ましくは分解室の側面の高さの3分の1以下に設けられる。
【0018】
分解灰排出口の中心を通り且つ分解室の底面に垂直な面で、分解室を左右に二等分した場合、通気管の数は左右で同じである。分解室の底面の周囲100cmに接する側壁に、通気管が3〜6本の範囲で設けられる。通気管の数が上記条件を外れると、分解反応の開始が遅れ、分解が安定して継続しない。
【0019】
特に、分解室の底面が長方形あるいは正方形の場合には、対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の数は同じである。さらに、対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の位置は、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。またさらに、分解灰排出口の設けられた側壁にある通気管の少なくとも2本が、該側壁と対向する側壁に設けられた通気管と、底面の対角線の交点に対し
て対称な位置にある。
分解室が直方体の場合に、通気管が上記のような対称性を欠くと、分解反応の開始が遅れ、分解が安定して継続しない。
【0020】
通気管の全長、通気管の分解室内外部の比は、分解室の内部に磁化空気を導入できるものであればよく、分解室の大きさによって適宜調節される。通気管の外径と内径は、開口部を形成できれば制限はなく、通気管の材質や通気管の強度に応じて適宜設定される。
【0021】
本発明で用いる装置には、通気管の分解室外にある端部に、開口部が設けられている。開口部の形状は、いずれの通気管でも等しい。具体的には、直径が2mm〜15mm、好ましくは3〜8mmの円形である。開口部の直径が2mmよりも小さいと、開口部から分解室に流入する磁化空気量が少ないため廃棄物の分解速度が低下するため、実用性を欠く。開口部の直径が15mmよりも大きいと、排気ガス中の有害成分が多くなるため、実用的性を欠く。本発明において、開口部は開閉機構を有さない。開口部は、常時、装置外の空気に接している。したがって、本発明で用いる装置では、磁化空気の調節は一切不要である。
【0022】
本発明で用いる装置には、上記開口部の外側に、対向する1組の磁石が設置されている。例えば、開口部に磁石を有するハウジングを連結させる。
磁石は永久磁石として知られるものであれば制限は無いが、入手容易性の面でフェライト磁石が好ましい。
上記磁石による磁力の強さは、1000ガウス〜1800ガウス、好ましくは1100ガウス〜1500ガウスの範囲にある。磁力の強さが1000ガウスよりも小さいと、上述のサイズの本発明で用いる分解室に十分な磁化空気を供給できず、分解が継続しない。磁力の強さが1800ガウスよりも大きいと、小型の分解室にとって過剰の磁化空気が供給される場合があり、分解装置を安定して運転できない。
【0023】
本発明で用いる装置は、さらに、分解室内の空気を分解室の外部に放出する排気管を備える。本発明で用いる装置からの排気は、ダイオキシンをほとんど含まず、環境基準を満足する。しかし、排気管を排気浄化装置に連結すれば、排気に含まれるタール分などの不純物や臭いを除去することができ、一層環境に配慮することができる。排気浄化装置としては、水やフィルターを用いて排気を浄化するものが一般的である。
【0024】
排気浄化装置は、例えば、排ガスフィルターを備えるものであってよい。この場合、セラミック製で耐熱性に優れた排ガスフィルターを用いることによって、高温の排気を直接浄化できる。この場合、フィルター交換だけで浄化機能を維持できる。
【0025】
排気浄化装置は、例えば、排気冷却部、シャワー洗浄部、シャワー水用フィルターを備えるものであってもよい。この場合、排気冷却部では排気を冷却すると共に、排気に含まれるタールなどの不純物を凝集させて除去する。シャワー洗浄部では、冷却後の排気をシャワー水流と接触させてさらに洗浄する。排気中の不純物はシャワー水中に移行し、排気は一層浄化される。結果として、冷却され、タール分や臭いが除かれた空気が装置外に放出される。シャワー洗浄に用いた水は、フィルターでろ過し、ポンプで再びシャワー洗浄部に戻すことができる。このような排気浄化装置では、比較的少ない水で排気冷却と浄化を共に行うことができる。
【0026】
本発明で用いる装置を用いた廃棄物処理方法は、様々な廃棄物に適用可能である。本発明の廃棄物の処理方法を開始する場合、まず、本発明で用いる分解装置の底部に、あらかじめ他の分解装置で分解処理が終わった分解灰を敷設する。次に、廃棄物を廃棄物投入口から分解室に投入する。投入する廃棄物は、生ごみ、廃木材、穀物かす、プラスチック、ゴムなどのいずれの廃棄物でもよく、これらの混合物でもよい。そして、分解灰排出口から短時間で熱源を接触して加熱する。加熱後は分解灰排出口を密閉する。分解室の底面付近には、常に最適量の磁化空気が最適な流路で供給されているから、加熱後直ちに分解反応が開始し、維持される。分解の進行にしたがって、廃棄物の体積は小さくなり、均一なセラミック粒子状の分解灰として、分解室下部に堆積する。最も底面にある分解灰を排出口から定期的に取り除くことで、新たな廃棄物を投入するための空間ができる。それと同時に、廃棄物と分解灰が磁化空気通気管付近に下降し、分解反応が未処理の廃棄物にも拡大、継続する。廃棄物の投入毎に加熱する必要は無い。処理中に外部から加熱する必要はない。分解室の攪拌も不要である。磁化空気の調節も必要としない。
【0027】
排気浄化装置は、例えば、排気冷却部、シャワー洗浄部、シャワー水用フィルターを備えるものであってもよい。この場合、排気冷却部では排気を冷却すると共に、排気に含まれるタールなどの不純物を凝集させて除去する。シャワー洗浄部では、冷却後の排気をシャワー水流と接触させてさらに洗浄する。排気中の不純物はシャワー水中に移行し、排気は一層浄化される。結果として、冷却され、タール分や臭いが除かれた空気が装置外に放出される。シャワー洗浄に用いた水は、フィルターでろ過し、ポンプで再びシャワー洗浄部に戻すことができる。このような排気浄化装置では、比較的少ない水で排気冷却と浄化を共に行うことができる。
【0028】
本発明の廃棄物処理方法は、様々な廃棄物に適用可能である。本発明の廃棄物の処理方法を開始する場合、まず、本発明で用いる分解装置の底部に、あらかじめ他の分解装置で分解処理が終わった分解灰を敷設する。次に、廃棄物を廃棄物投入口から分解室に投入する。投入する廃棄物は、生ごみ、廃木材、穀物かす、プラスチック、ゴムなどのいずれの廃棄物でもよく、これらの混合物でもよい。そして、分解灰排出口から短時間で熱源を接触して加熱する。加熱後は分解灰排出口を密閉する。分解室の底面付近には、常に最適量の磁化空気が最適な流路で供給されているから、加熱後直ちに分解反応が開始し、維持される。分解の進行にしたがって、廃棄物の体積は小さくなり、均一なセラミック粒子状の分解灰として、分解室下部に堆積する。最も底面にある分解灰を排出口から定期的に取り除くことで、新たな廃棄物を投入するための空間ができる。それと同時に、廃棄物と分解灰が磁化空気通気管付近に下降し、分解反応が未処理の廃棄物にも拡大、継続する。廃棄物の投入毎に加熱する必要は無い。処理中に外部から加熱する必要はない。分解室の攪拌も不要である。磁化空気の調節も必要としない。
【実施例】
【0029】
1辺が100cmの立方体形状の分解室に合計30本の通気管を設けた分解室を備える分解装置を用意した。通気管の開口部は直径6mmの円形とした。
(実施例1)
30本の通気管のうちの10本の通気管の開口部をステンレス鋼板で覆い、磁化空気が流入する通気管を20本にした。加熱後すぐに分解反応が開始し、その後も安定した分解が進んだ。排気ガスの成分を分析したところ、ダイオキシン含有量は基準値以下であった。
(実施例2)
30本の通気管のうちの15本の通気管の開口部をステンレス鋼板で覆い、磁化空気が流入する通気管を15本にした。加熱後すぐに分解反応が開始し、その後も安定した分解が進んだ。排気ガスの成分を分析したところ、ダイオキシン含有量は基準値以下であった。
(実施例3)
実施例1、実施例2で用いた分解装置の排気管を、図5で示す排気浄化装置に連結したところ、排気の色や臭いが除去された。
(比較例1)
30本の通気管のうちの20本の通気管の開口部をステンレス鋼板で覆い、磁化空気が流入する通気管を10本にした。加熱後に、分解反応が起こらず、運転不可能であった。
(比較例2)
30本の通気管の開口部を全て解放し、磁化空気が流入する通気管を30本にした。加熱後、装置内部で火炎が生じたため、消火した。この装置では廃棄物の低温分解は起こらず、磁化空気による分解処理を行うことができなかった。
(比較例3)
30本の通気管のうちの10本の通気管の開口部をステンレス鋼板で覆い、磁化空気が流入する通気管を20本にした。次に開口する20本の通気管の開口部板を取り外し、直径30mmの通気管の端部にキングストンバルブを取り付け、通気管を開閉自在にした。あらかじめすべてのバルブを適当に絞り、加熱した。加熱後にバルブを調節して分解を維持しようとしたが、数時間たっても分解が始まらなかった。数日間、調節を試みたが、分解処理は進行しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の処理方法は、化石燃料を用いずに、簡便な設備と操作によって、ダイオキシンの発生を抑え、各種廃棄物を分解灰に変換し減容・減量可することができる。本発明で用いる分解装置は船舶や車両等の移動物に搭載可能な小型のものから、屋外で長期使用される大型のものを含み、いずれのサイズであっても安定した高効率の処理能力が得られる。したがって、本発明は、低コストで効率のよい、環境に配慮した廃棄物の処理を可能にする。
このような特長を活かして、本発明は、災害時の移動可能な簡易型の廃棄物処理手段として利用できる。また本発明は、廃棄物の分別回収や大規模処理施設が未だ普及していない新興国において、簡便な設備で安定かつ安全に廃棄物処理を行う手段として有望である。
【符号の説明】
【0031】
1:分解装置
2:分解室
3:分解室の側壁
4:分解室の底面
5:廃棄物投入口
6:分解灰排出口
7:通気管
8:開口部
9:磁石
10:排気管
11:排気浄化装置
12:排気冷却部
13:排気の通路
14:シャワー洗浄部
15:シャワー水用フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解室、分解室の上部に設けられた廃棄物投入口、分解室の下部に設けられた分解灰排出口、分解室の側壁を貫通し分解室外の空気を分解室内部に導入する通気管、分解室外にある通気管の端部に設けられた開口部、開口部の外側に設置された対向する1組の磁石、分解室で発生する排気ガスを放出する排気管を備え、以下の条件(3−1)〜(3−12)の条件を満たす廃棄物分解装置を用いることを特徴とする、廃棄物処理方法。
(3−1)分解室の形状は直方体である。
(3−2)分解室の底面の隣り合う2辺のいずれもが30cm〜240cmの範囲にある長方形である。
(3−3)分解灰排出口が、側壁の1面に設けられる。
(3−4)通気管は、分解室の側壁高さの半分以下に位置する。
(3−5)分解灰排出口の中心を通り且つ分解室の底面に垂直な面で、分解室を左右に二等分した場合、通気管の数は左右で同じである。
(3−6)分解室の底面の周囲100cmに接する側壁に、通気管が3〜6本の範囲で設けられる。
(3−7)対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の数は同じである。
(3−8)対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の位置は、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。
(3−9)分解灰排出口の設けられた側壁にある通気管の少なくとも2本が、該側壁と対向する側壁に設けられた通気管と、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。
(3−10)通気管開口部が、直径が2mm〜15mmの円形である。
(3−11)通気管および上記通気管開口部には開閉機構が存在せず、上記通気管開口部は常時外気に開口する。
(3−12)上記1組の磁石によるそれぞれの磁力の強さは1000ガウス〜1800ガウスの範囲にある。
【請求項2】
分解室、分解室の上部に設けられた廃棄物投入口、分解室の下部に設けられた分解灰排出口、分解室の側壁を貫通し分解室外の空気を分解室内部に導入する通気管、分解室外にある通気管の端部に設けられた開口部、開口部の外側に設置された対向する1組の磁石、分解室で発生する排気ガスを放出する排気管を備え、以下の条件(4−1)〜(4−12)の条件を満たす廃棄物分解装置を用いることを特徴とする、廃棄物処理方法。
(4−1)分解室の形状は直方体あるいは立方体である。
(4−2)分解室の底面は1辺が30cm〜240cmの範囲にある正方形である。
(4−3)分解灰排出口が、側壁の1面に設けられる。
(4−4)通気管は、分解室の側壁高さの半分以下に位置する。
(4−5)分解灰排出口の中心を通り且つ分解室の底面に垂直な面で、分解室を左右に二等分した場合、通気管の数は左右で同じである。
(4−6)分解室の底面の周囲100cmに接する側壁に、通気管が3〜6本の範囲で設けられる。
(4−7)対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の数は同じである。
(4−8)対向する1組の分解灰排出口の設けられていない側壁において、通気管の位置は、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。
(4−9)分解灰排出口の設けられた側壁にある通気管の少なくとも2本が、該側壁と対向する側壁に設けられた通気管と、底面の対角線の交点に対して対称な位置にある。
(4−10)通気管開口部が、直径が2mm〜15mmの円形である。
(4−11)通気管および上記通気管開口部には開閉機構が存在せず、上記通気管開口部は常時外気に開口する。
(4−12)上記1組の磁石によるそれぞれの磁力の強さは1000ガウス〜1800ガウスの範囲にある。
【請求項3】
廃棄物分解装置が、さらに排気浄化装置を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の廃棄物処理方法。
【請求項4】
排気浄化装置が、排ガスフィルターを備えることを特徴とする、請求項3に記載の廃棄物処理方法。
【請求項5】
排気浄化装置が、排気冷却部、シャワー洗浄部、シャワー水用フィルターを備えることを特徴とする、請求項3に記載の廃棄物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−27861(P2013−27861A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61518(P2012−61518)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2011−164857(P2011−164857)の分割
【原出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(511182758)
【Fターム(参考)】