説明

磁化装置および管内移動装置

【課題】たとえ管の内径が異なっても、管部分を所望どおりに磁化させて、検査に必要な磁束を発生させることが可能な汎用性に優れた磁化装置を得る。
【解決手段】2つの磁石6の対向面のそれぞれが、管の内壁面と同方向に彎曲する彎曲面6aに形成されて磁石保持部材8の一端部に設けられ、両磁石保持部材8の彎曲面側の端部が、両磁石保持部材8間に延在する連結部材10と直交し、かつ、管の内壁面に沿う方向に延出する枢支軸11周りに回動自在に枢支連結され、両磁石保持部材8の他端部が、枢支軸11に平行な連結軸14を介してヒンジ機構15の両端部に回動自在に連結されて、ヒンジ機構15を構成する一対のヒンジ部材16が、枢支軸11に平行なヒンジ軸17を介して角度調整自在に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの磁石が一定の間隔を維持し、かつ、その2つの磁石の管の内壁に対向する対向面が、前記管の内壁面に沿って配置されて使用される磁化装置、および、その磁化装置を備えた管内移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような磁化装置は、例えば、2つの磁石により管部分を磁気飽和するように磁化させて、その磁化させた部分の磁束密度をコイルセンサで検出することにより、腐食による管の減肉部を検知する、いわゆる「磁気飽和渦流探傷法」による検査装置などに使用される。さらに、後に詳しく説明するように、管内を移動する移動装置本体を2つの磁石による磁気吸着力で管の内壁に押圧するためにも使用される。
そして、上述した検査装置を例にとると、従来、馬蹄形の磁石を使用し、その馬蹄形磁石の両端部を管の内壁面に沿って配置して管部分を磁化させるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−250822号公報(図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記公報に記載の装置では、馬蹄形磁石の両端部の面、つまり、管の内壁に対向する2つの対向面が、いずれも平坦な面に形成されているので、比較的大きな内径を有する管に対して有効であっても、小さな内径を有する管に対しては、検査対象となる管部分を所望どおりに磁化させることがむずかしいという問題がある。
つまり、2つの磁石の対向面が平坦であるため、内径の小さな管において、その管の内壁面に両対向面を対向させても、両対向面の内側部位が管の内壁面から大きく浮き上がることになり、そのため、磁石によって管部分を所望どおりに磁化させることができず、この点に問題がある。
【0005】
このような問題を解決するには、例えば、2つの磁石の対向面のそれぞれを管の内壁面と同方向に彎曲する彎曲面に形成することが考えられる。
しかしながら、その場合、磁石の彎曲面と管の内壁面の曲率半径が一致するか、あるいは、近似したものであれば問題はないが、彎曲面の曲率半径と内壁面の曲率半径が大きく異なり、彎曲面の曲率半径が内壁面の曲率半径に比べて大き過ぎると、2つの磁石の彎曲面の内側部位が管の内壁面から大きく浮き上がり、逆に、彎曲面の曲率半径が内壁面の曲率半径に比べて小さ過ぎると、2つの磁石の彎曲面の外側部位が管の内壁面から大きく浮き上がることになり、内径の異なる管に対応することができず、汎用性に欠けるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目したもので、その目的は、たとえ管の内径が異なっても、管部分を所望どおりに磁化させて、検査に必要な磁束を発生させることも、また、管内を移動する移動装置本体を管に押圧するのに必要な磁気吸着力を得ることも可能な汎用性に優れた磁化装置と、その磁化装置を備えた管内移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴構成は、2つの磁石が一定の間隔を維持し、かつ、その2つの磁石の管の内壁に対向する対向面が、前記管の内壁面に沿って配置されて使用される磁化装置であって、前記2つの磁石の対向面のそれぞれが、前記管の内壁面と同方向に彎曲する彎曲面に形成されて、それぞれ磁石保持部材の一端部に設けられ、それら両磁石保持部材の前記彎曲面側の端部が、前記両磁石保持部材間にわたって延在する連結部材と直交し、かつ、前記管の内壁面に沿う方向に延出する枢支軸周りにそれぞれ回動自在に枢支連結され、前記両磁石保持部材の他端部が、前記枢支軸に平行な連結軸を介してヒンジ機構の両端部にそれぞれ回動自在に連結されて、そのヒンジ機構を構成する一対のヒンジ部材が、前記枢支軸に平行なヒンジ軸を介して角度調整自在に連結されているところにある。
【0008】
本発明の第1の特徴構成によれば、管の内壁に対向する2つの磁石の対向面のそれぞれが、管の内壁面と同方向に彎曲する彎曲面に形成されて、それぞれ磁石保持部材の一端部に設けられているので、上述した従来技術のように、2つの磁石の対向面のそれぞれが、いずれも平坦な面に形成されている場合に比較して、磁石の対向面が管の内壁面に沿いやすくなり、管部分の磁化能力に優れたものとなる。
それに加えて、両磁石保持部材の彎曲面側の端部が、両磁石保持部材間にわたって延在する連結部材と直交し、かつ、管の内壁面に沿う方向に延出する枢支軸周りにそれぞれ回動自在に枢支連結され、両磁石保持部材の他端部が、枢支軸に平行な連結軸を介してヒンジ機構の両端部にそれぞれ回動自在に連結されて、そのヒンジ機構を構成する一対のヒンジ部材が、枢支軸に平行なヒンジ軸を介して角度調整自在に連結されているので、管の内径が特定の範囲内であれば、対象となる管の内径に応じて両ヒンジ部材間の角度を調整することにより、2つの磁石の対向面のそれぞれを管の内壁面に沿わせて対応することができ、例えば、検査に必要な磁束を発生させることも、また、管内を移動する移動装置本体を管に押圧するのに必要な磁気吸着力を得ることも可能な汎用性に優れた磁化装置を提供することができる。
【0009】
本発明の第2の特徴構成は、上記第1の特徴構成を備えた磁化装置で、前記2つの磁石によって前記管の内部に発生される磁束を検出するセンサが、前記連結部材に設けられているところにある。
【0010】
本発明の第2の特徴構成によれば、2つの磁石によって管の内部に発生される磁束を検出するセンサが、両磁石保持部材間にわたって延在する連結部材に設けられているので、たとえ対象となる管の内径が異なっても、2つの磁石により管の内部に所望どおりの磁束を発生させ、その磁束の密度や分布状態などをセンサで検出することにより、管の腐食による減肉部などの欠陥を確実に検出することができる。
【0011】
本発明の第3の特徴構成は、上記第1または第2の特徴構成を備えた磁化装置で、前記2つの磁石が電磁石であり、前記磁石保持部材が前記電磁石の磁心に構成されて、前記磁石保持部材に励磁コイルが巻回されているところにある。
【0012】
本発明の第3の特徴構成によれば、2つの磁石が電磁石であり、磁石保持部材が電磁石の磁心に構成されて、磁石保持部材に励磁コイルが巻回されているので、磁化装置を構成する磁気保持部材を電磁石の磁心に兼用することができ、装置の簡素化と低廉化を図ることができる。
【0013】
本発明の第4の特徴構成は、管内移動装置であって、上記第2の特徴構成を備えた磁化装置を移動装置本体に備えているところにある。
【0014】
本発明の第4の特徴構成によれば、上記第2の特徴構成を備えた磁化装置を移動装置本体に備えているので、上述したように、管の内径が特定の範囲内であれば対応可能であり、しかも、管内における移動装置本体の移動に伴って、2つの磁石により管の内部に所望どおりの磁束を発生させならが、その磁束の密度や分布状態などをセンサで検出することにより、管の腐食による減肉部などの欠陥を管の全長にわたって連続して検出することができる。
【0015】
本発明の第5の特徴構成は、管内移動装置であって、上記第1〜第3のいずれかの特徴構成を備えた磁化装置を移動装置本体に備え、その移動装置本体を前記管に押圧させるための磁気吸着力の発生手段として前記磁化装置を備えているところにある。
【0016】
本発明の第5の特徴構成によれば、上記第1〜第3のいずれかの特徴構成を備えた磁化装置を移動装置本体に備え、その移動装置本体を管に押圧させるための磁気吸着力の発生手段として磁化装置を備えているので、上述したように、管の内径が特定の範囲内であれば対応可能であり、しかも、管内における移動装置本体の移動に伴って、2つの磁石により所望どおりの磁気吸着力を確保して、例えば、移動装置本体を管の内壁面に押圧することができる。
【0017】
本発明の第6の特徴構成は、管内移動装置であって、上記第1〜第3のいずれかの特徴構成を備えた磁化装置を移動装置本体に備え、その移動装置本体が、前記管の内壁面に沿う螺旋状板状体からなるところにある。
【0018】
本発明の第6の特徴構成によれば、上記第1〜第3のいずれかの特徴構成を備えた磁化装置を移動装置本体に備えているので、磁化装置については、上述したように、管の内径が特定の範囲内であれば対応可能であり、その上、移動装置本体が、管の内壁面に沿う螺旋状板状体からなるので、たとえ管の内径が異なっても、移動装置本体も螺旋状板状体の弾性変形により対応可能となり、その結果、汎用性に優れた磁化装置付きの移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】管内移動装置の側面図
【図2】管内移動装置の縦断正面図
【図3】推進装置の斜視図
【図4】磁化装置を含む検査装置の正面図と斜視図
【図5】検査装置と管の関係を示す正面図
【図6】検査装置の作用を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による磁化装置および管内移動装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
管内移動装置は、図1および図2に示すように、移動装置本体としての螺旋状板状体1を備え、その螺旋状板状体1に複数の推進装置2と磁化装置3を備えて構成され、磁化装置3による磁気吸着力の発生下で、推進装置2の推進力により各種の管P(例えば、ガス管や水道管など)の内部を管Pの軸心X方向に沿って移動するように構成されている。
磁化装置3は、後に詳しく説明するように、管Pの内壁面Sに対する磁気吸着力によって螺旋状板状体1を拡径する役割を果たすものであり、したがって、本発明で対象とする管Pは、金属製のもの(例えば、鋼管や鋳鉄管など)であり、強磁性体材料からなるものが好ましい。そして、この管内移動装置は、例えば、管Pの状態を確認および検査するための機器類(カメラや各種の検査装置など)を管P内に送り込むために使用される。
【0021】
螺旋状板状体1は、樹脂や金属(例えば、ステンレス)などの可撓性を有する平板状部材が、螺旋状に複数ターン巻回されて形成されたものであり、したがって、縮径した状態で自然状態に戻ろうとする復元力を発生するとともに、径方向に弾性的に変形可能であり、螺旋径を管Pの内径に合わせて柔軟に変えることができる。
図1に示す実施形態では、螺旋状板状体1の中央部を中心とする三ターンについてはほぼ同一の螺旋径であり、両端部の二ターンについては、中央部よりも螺旋径が小さく、先端側に向かうに従って螺旋径が小さくなっている。したがって、前後進のいずれの方向に移動するときでも、螺旋径の小さな部分が先頭になるため、螺旋状板状体1が管Pの内壁面Sに引っ掛る可能性は少なく、たとえ局部的に段差を伴った小径部があっても、端部が先に進入するため、小径部に対しても管Pの内壁面Sに沿って円滑に進入することができる。
【0022】
推進装置2は、管Pの内壁面Sとの間の摩擦力により、螺旋状板状体1に対して推進力を付与するもので、図3に示すように、車輪2aとその車輪2aを回転駆動させるモータ2bとを備え、その車輪2aとモータ2bからなる複数の推進装置2が、螺旋状板状体1の延在方向に沿って螺旋状板状体1の内側に分散配置され、各モータ2bにはケーブル4を介して給電される。
各推進装置2の車輪2aは、螺旋状板状体1に形成された開口孔を貫通して、その一部が螺旋状板状体1の外側に突出して管Pの内壁面Sに接触するように構成されるとともに、螺旋状板状体1の軸心方向に対して特定の傾斜角αを有して配置され、そのため、螺旋状板状体1に対して軸心方向に傾斜する方向への駆動力が作用し、螺旋状板状体1は、管Pの軸心X方向へ内壁面Sに沿って螺旋状に移動するように、かつ、モータ2bの回転方向を変えることにより前後進のいずれの方向にも移動するように構成されている。
【0023】
磁化装置3は、管Pの内壁面Sに対して作用する磁気吸着力により、螺旋状板状体1に対して径方向外側への拡径力を付与するものである。すなわち、螺旋状板状体1の縮径に起因する復元力によりある程度の拡径力は確保されるが、その拡径力をより一層確実なものとするためのもので、螺旋状板状体1の中央部を中心とする三ターン部分における螺旋状板状体1の内側に設けられる。
その磁化装置3は、本実施形態の場合、図4および図6に示すように、管Pを磁化させることで管Pの腐食による減肉部Tなどを検査する検査装置5が有する2つの電磁石6を利用して拡径力を発生するように構成されている。
すなわち、磁化装置3は、2つの電磁石6が一定の間隔を維持し、かつ、その2つの電磁石6の管Pの内壁に対向する対向面6aが、螺旋状板状体1の移動に伴って管Pの内壁面Sに沿って配置されて螺旋状に移動するように構成されたものであり、検査装置5は、その磁化装置3に対して、管Pの内部に発生される磁束を検出するコイルセンサ7が付加されたものである。
【0024】
その磁化装置3を含有する検査装置5は、磁気飽和渦流探傷法により、検査対象の管P部分を磁気飽和するように磁化させ、その磁化させた部分の磁束密度に関する検出結果に基づいて減肉部Tの有無を検査するもので、2つの電磁石6と、磁束密度の変化を検出するコイルセンサ7を備え、各電磁石6の管Pの内壁に対向する対向面、換言すると、電磁石6の磁心となる磁石保持部材8の一端部のそれぞれが、管Pの内壁面Sと同方向に彎曲する彎曲面6aに形成されている。
その彎曲面6aの曲率半径は、管内移動装置が対象とする管Pの許容内径範囲のうち、最小内径の半径に設定するのが好ましいが、許容範囲の中間に位置する内径の半径に設定することもできる。また、電磁石6に代えて永久磁石を使用することもでき、その場合には、磁石保持部材8の管Pの内壁に対向する側にそれぞれ永久磁石を取り付け、その永久磁石の対向面を彎曲面6aに形成することになる。
【0025】
電磁石6の磁心となる磁石保持部材8には、それぞれ励磁コイル9が巻回されて電流が供給されるように構成され、その検査装置5に対する電力供給用ケーブルや信号線などは、図示はしていないが、例えば、モータ2bに電源を供給するケーブル4に併設される。
これら2つの磁石保持部材8の彎曲面6a側の端部は、両磁石保持部材8間にわたって両磁石保持部材8の外側に延在する2つの連結部材10(図4(b)では、手前側の連結部材10のみが見えている)の両端部において、その連結部材10と直交し、かつ、管Pの内壁面Sに沿う方向に延出して両連結部材10の両端部を連結する2本の枢支軸11周りにそれぞれ回動自在に枢支連結され、その2本の枢支軸11を介して、磁化装置3が螺旋状板状体1に保持されている。
【0026】
詳述すると、2本の枢支軸11は、それぞれ磁石保持部材8を貫通して磁石保持部材8の外側へ突出するように構成され、その磁石保持部材8から突出した枢支軸11の部位が、両連結部材10間にわたって固着連結され、それによって、2つの電磁石6の彎曲面6a間の間隔が一定に維持されて、両電磁石6の彎曲面6a部分が、枢支軸11周りにそれぞれ回動自在に構成されている。
さらに、螺旋状板状体1には、内側へ延出する合計4つのブラケット12(図4(b)では、手前側の2つのブラケット12のみが見えている)が取り付けられていて、両連結部材10よりも外側において、枢支軸11の先端部位が、ブラケット12に形成された長孔12a内に移動自在に挿入され、それによって、たとえ螺旋状板状体1の螺旋径が変わっても、両枢支軸11が一定の間隔を維持して各長孔12a内で移動可能にし、その状態で磁化装置3が螺旋状板状体1に保持されている。
そして、両連結部材10は、その長手方向の中央部において、枢支軸11と平行なセンサ保持部材13により互いに連結固定され、コイルセンサ7が、そのセンサ保持部材13を介して連結部材10に設けられている。
【0027】
両磁石保持部材8の他端部、つまり、彎曲面6aと反対側の端部は、枢支軸11に平行な連結軸14を介してヒンジ機構15の両端部にそれぞれ回動自在に連結されている。
つまり、ヒンジ機構15は、一対のヒンジ部材16と、その一対のヒンジ部材16の一端部を連結するヒンジ軸17により構成され、各ヒンジ部材16の遊端部に連結軸14を介して磁石保持部材8がそれぞれ回動自在に連結されている。そして、そのヒンジ機構15を構成する一対のヒンジ部材16は、ヒンジ軸17を緩めたり締め付けたりすることにより、その角度βが変更調整および固定自在に構成されている。
したがって、図5の(a)と(b)に示すように、対象とする管Pの内径に応じて、両ヒンジ部材16間の角度βを調整して固定することにより、管Pの内径が特定の範囲内(例えば、直径150mm〜300mm)であれば、たとえ内径が異なっても対応可能となり、両電磁石6の彎曲面6aを管Pの内壁面Sに沿わせて、管P部分を所望どおりに磁化させることができる。
【0028】
つぎに、管内移動装置の作動および検査装置5の作用などについて説明する。
管内移動装置は、螺旋状板状体1の中央部を中心とする三ターンにおける螺旋径が自然状態、つまり、径方向への復元力が発生しない状態を基準とし、その基準径よりも大きい内径を有する管P内を移動する際には、磁化装置3による管Pへの磁気吸着力により、螺旋状板状体1を管Pの内壁面Sに向けて押圧して拡径し、推進装置2の車輪2aと内壁面Sとの間で適切な摩擦力が確保されて移動する。
また、上記の基準径よりも小さい内径を有する管P内を移動する際には、螺旋状板状体1の復元力と磁化装置3による拡径力によって、推進装置2の車輪2aと内壁面Sとの間で適切な摩擦力が確保されて移動する。
いずれにせよ、管内移動装置の螺旋状板状体1は、各推進装置2の車輪2aの回転駆動により管Pの軸心X方向に沿って螺旋状に移動し、それに伴って、検査装置5の2つの電磁石6も、一定の間隔を維持し、かつ、その彎曲面6aが管Pの内壁面Sに沿うように螺旋状に移動する。
【0029】
この検査装置5の移動に際し、電磁石6により磁化された管Pの部分に腐食による減肉部Tがなければ、電磁石6による等磁力線は、図6(a)において破線で示す模式図のようになる。
しかし、管Pの外周面に腐食による減肉部Tがあれば、図6(b)に示す模式図ように、また、管Pの内周面に腐食による減肉部Tがあれば、図6(c)に示す模式図のようになり、減肉部Tがあると、減肉部Tがない場合に比べ磁束密度が増加するとともに、減肉部Tの箇所(外周面であるか内周面であるか)によって磁束分布が異なる。
このような磁束密度の変化は、コイルセンサ7により電気信号として検出されるため、管Pにおける減肉部Tの有無を検知することができ、また、上述したように、対象とする管Pの内径に応じて両ヒンジ部材16間の角度βを調整して固定することにより、管Pの内径が特定の範囲内であれば、両電磁石6の彎曲面6aを管Pの内壁面Sに沿わせて、管P部分を所望どおりに磁化させることが可能となる。
【0030】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、磁化装置3が、検査装置5の有する2つの電磁石6を利用して構成された例を示したが、磁化装置3を単独で構成して実施することもできる。
つまり、先の実施形態で示した検査装置5からコイルセンサ7を排除して磁化装置3とし、例えば、その磁化装置3を移動装置本体としての螺旋状板状体1に取り付けて、螺旋状板状体1を管Pに押圧させるための磁気吸着力の発生手段として使用し、その磁気吸着力により螺旋状板状体1を拡径して管Pの内壁面Sに押圧するように構成して実施することもできる。
【0031】
(2)先の実施形態では、センサ7としてコイルセンサを使用し、磁気飽和渦流探傷法により管Pの減肉部Tを検出する例を示したが、その他、センサ7として磁気センサを使用し、腐食による減肉部Tがあった場合に漏洩する漏洩磁束を検知する漏洩磁束探傷法により減肉部Tを検出するように構成することもできる。
また、これまでの実施形態では、管Pの腐食による減肉部Tの有無を検査する場合を例に説明したが、検査の対象は減肉部Tに限るものではなく、亀裂や継手の緩みなど、その他の欠陥を検出するように構成することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 移動装置本体(螺旋状板状体)
3 磁化装置(検査装置)
6 磁石(電磁石)
6a 彎曲面
7 センサ
8 磁石保持部材
9 励磁コイル
10 連結部材
11 枢支軸
14 連結軸
15 ヒンジ機構
16 ヒンジ部材
17 ヒンジ軸
P 管
S 管の内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの磁石が一定の間隔を維持し、かつ、その2つの磁石の管の内壁に対向する対向面が、前記管の内壁面に沿って配置されて使用される磁化装置であって、
前記2つの磁石の対向面のそれぞれが、前記管の内壁面と同方向に彎曲する彎曲面に形成されて、それぞれ磁石保持部材の一端部に設けられ、それら両磁石保持部材の前記彎曲面側の端部が、前記両磁石保持部材間にわたって延在する連結部材と直交し、かつ、前記管の内壁面に沿う方向に延出する枢支軸周りにそれぞれ回動自在に枢支連結され、前記両磁石保持部材の他端部が、前記枢支軸に平行な連結軸を介してヒンジ機構の両端部にそれぞれ回動自在に連結されて、そのヒンジ機構を構成する一対のヒンジ部材が、前記枢支軸に平行なヒンジ軸を介して角度調整自在に連結されている磁化装置。
【請求項2】
前記2つの磁石によって前記管の内部に発生される磁束を検出するセンサが、前記連結部材に設けられている請求項1に記載の磁化装置。
【請求項3】
前記2つの磁石が電磁石であり、前記磁石保持部材が前記電磁石の磁心に構成されて、前記磁石保持部材に励磁コイルが巻回されている請求項1または2に記載の磁化装置。
【請求項4】
請求項2に記載の磁化装置を移動装置本体に備えている管内移動装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁化装置を移動装置本体に備え、その移動装置本体を前記管に押圧させるための磁気吸着力の発生手段として前記磁化装置を備えている管内移動装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁化装置を移動装置本体に備え、その移動装置本体が、前記管の内壁面に沿う螺旋状板状体からなる管内移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−209049(P2011−209049A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76005(P2010−76005)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】