説明

磁性合金粉末およびその製造方法

【課題】 高い効率で、大きなエントロピー変化を持つ磁性合金粉末を提供する
【解決手段】 合金溶湯を回転する冷却ディスクに向けてガス噴霧することにより厚さが30μm以下の偏平状の磁性合金粉末作成し、水素を含む雰囲気中で熱処理することで、組成式でR(TM1-Xbc(但し、RはLaを必須として必要によりCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、Er、Tm、Y、Luからなる希土類元素の1種以上を含み、TMはFeを必須としてTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Znからなる遷移金属元素群より選択される1種以上を含む)の実質的にNaZn13型結晶構造を有する化合物相により構成される磁気冷凍用の磁性合金粉末を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン層の破壊や温室ガス排出により地球温暖化に悪影響をおよぼすフロンガスや代替フロンを使用する気体冷凍に代わる環境保全型の冷凍システムとして期待されている磁気冷凍技術に関するものである。磁気冷凍システムにおいては、外部の磁界変化に対して、磁性体内部で大きなエントロピー変化を示す磁気冷凍作業物質が必要である。本発明は、室温近傍で大きな磁気エントロピー変化を示す、R−TM−M−H系の磁性合金粉末およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在世界規模で、オゾン層破壊および地球温暖化が深刻な社会問題となっている。オゾン層破壊の原因がエアコンや冷蔵庫などの冷凍機に使用されるフロンガスであることが指摘され、1992年モントリオールで開催された国際会議において特定フロンの全廃が定められた。しかし、特定フロンの代替として使用が認められている。
いわゆる代替フロンにおいても二酸化炭素の数千倍から数万倍の温暖化効果が確認されており1997年の地球温暖化防止京都会議において削減対象となった。欧州では、自動車への代替フロンの搭載を全廃することが決定されている。このような状況から、より環境負荷の低い冷凍技術の開発実用化が望まれている。このような背景から、気体冷凍に代わる環境に優しい冷凍空調技術として磁気冷凍技術が注目されている。磁気冷凍は極低温域における冷却技術としては既に利用されている。しかし常温域では作業物質の格子振動による熱容量が大きいこと、また磁気系の熱ゆう乱によるエネルギーが大きくなるため実用化が困難であった。常温での磁気冷凍材料としては、安価で大きな磁気熱量効果が得られる磁性材料が必要とされている。
【0003】
従来常温磁気冷凍材料として室温付近に磁気変態点(キュリー温度)を有するGdおよびGd合金が知られているが、Gdは希土類元素の中では比較的稀少で高価な金属であり、工業的に実用性の高い磁気冷凍材料ではない。近年、Gdの代わる常温磁気冷凍材料として、常温近傍で一次相転移を示す磁性材料が注目されている。このような磁性材料は、キュリー点近傍の常磁性温度域で外部より磁界を印加することにより強磁性に磁気変態する磁性材料であり、比較的小さな外部磁界により大きな磁化変化に伴う大きなエントロピー変化(磁気熱量効果)が得られるという特長を有する。
このような磁性材料としては、Gd5Si2Ge2系、Mn(As-Sb)系、MnFe(P―As)系、La(Fe-Si)H系などが検討されている。これら提案されている常温磁気冷凍作業物質の中では、原材料コスト、環境負荷、製造工程の中での安全性等を考慮すると、La(Fe-Si)H系合金が実用材料として最も有望な作業物質と考えられる。本磁気冷凍材料に関しては、大学が主体となり物性研究を中心に検討が行われている。(非特許文献1,2,3)
【0004】
また特許文献1には、L(Fe1−X13系合金(MはSi、Alから選択された1種または2種以上)の100〜1500μmの粒子が磁気冷凍材料として有望であることが開示されている。
【0005】
常温磁気冷凍材料であるR‐Fe‐Si‐H系合金はNaZn13型結晶構造を有するR‐(Fe‐Si)13結晶格子中に水素を侵入型で固溶させることにより結晶格子を膨張させキュリー温度を上昇させることにより常温近傍にキュリー温度を持つ磁気冷凍材料である。本材料の製造方法としては、アーク溶解や高周波溶解により得られた鋳造合金を不活性雰囲気あるいは真空中で、1000℃以上で100時間以上の長時間溶体化熱処理し得られた合金を機械粉砕で数百μmの粉末とし、水素を含む雰囲気中で水素吸臓することにより製造されていた。(非特許文献4)
【0006】
一方、特許文献2においては、1000℃以上での溶体化を容易とするために、La‐Fe‐Si系合金溶湯を10℃/秒〜10℃/秒で急冷し、初晶として析出するα鉄を低減かつ微細に分散させた厚さ10〜300μmの薄帯を得ることにより、900〜1200℃で比較的短時間で溶体化処理を可能とする技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特許第3967572号公報
【特許文献2】特許第3630164号公報
【非特許文献1】固体物理 vol 37. (2002) 419
【非特許文献2】Appl. Phys. Lett. Vol 81 (2002) 1276
【非特許文献3】金 属 vol 137. (2003) 849
【非特許文献4】Appl. Phys. Lett. Vol 79 (2001) 653
【非特許文献5】平成15年NEDO研究成果報告 PJID 00A26019a
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のR‐Fe‐Si‐H系合金の製造方法には、以下の課題がある。磁気冷凍材料としては、比較的小さな外部磁界の変化で大きな磁化変化(エントロピー変化)を示す物質が好ましい。そのためにはR‐Fe‐Si合金中に出来るだけ均一に水素を固溶させる必要がある。合金中の水素濃度分布が不均一である場合には、X線回折図においては図4に示すように高水素固溶相と低水素固溶相に分離した回折線となり、このような合金の磁化の温度変化は、図7に示すように広い温度範囲で強磁性から常磁性に転移するため、磁気冷凍作業物質として大きな磁気エントロピー変化が得られないという問題点がある。この問題を改善する手段として、非特許文献5においては高圧水素中で水素吸臓処理を行い、一旦飽和量まで水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で脱水素熱処理を行うことにより水素固溶量を調整しキュリー温度を制御することが開示されている。しかしながら、この方法においては脱水素量が熱処理条件や試料の量により微妙に変化するため合金中の固溶水素量を所望の値に制御することは工業的には極めて難しく、安定に本材料を製造することが困難であるという問題がある。さらに、非特許文献5において合金の水素濃度をより容易に均一とする手段として、0.02MPaの密閉した低圧水素雰囲気中で長時間水素吸蔵反応を行うことにより、水素の拡散速度制御することが提案されているが、この方法でも水素を所望の濃度まで吸蔵させるために20時間以上の長時間を要するため工業的に大量の合金を製造することが困難であるという問題点がある。
よって、本発明では合金中の水素量を均一に調整できる簡易な磁気冷凍材料用の磁性合金粉末の製造方法および高い効率で、大きなエントロピー変化を持つ磁性合金粉末を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、実質的にNaZn13型結晶構造を有する化合物相により構成される磁気冷凍用の磁性合金粉末であって、厚さが30μm以下の偏平状であることを特徴とする。厚さ(t)と厚み方向と交差する面の長径(l)の比率l/t(アスペクト比)が5以上であるものが好ましい。
【0010】
本発明の磁性合金粉末は、組成式で、R(TMx1-x(但し、RはLaを必須として必要によりCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、Er、Tm、Y、Luからなる希土類元素の1種以上を含み、TMはFeを必須として必要によりTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Znからなる遷移金属元素群より選択される1種以上を含み、MはSiを必須として必要によりAl、Ga、Ge、Snからなる元素群より選択される少なくとも1種以上を含み、かつ、原子%で5.5≦a≦7.5、92.5≦b≦94.5、0.75≦X≦0.95であるものが好ましい。
【0011】
また、本発明の磁性合金粉末は、組成式でR(TM1-Xbc(但し、RはLaを必須として必要によりCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、Er、Tm、Y、Luからなる希土類元素の1種以上を含み、TMはFeを必須として必要によりTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Znからなる遷移金属元素群より選択される1種以上を含み、MはSiを必須としてAl、Ga、Ge、Snからなる元素群より選択される少なくとも1種以上を含み、かつ、原子%で5.5≦a≦7.5、80.5≦b≦92.5、0<c≦14、0.75≦X≦0.95)であるものが好ましい。この磁性合金粉末は、NaZn13相のX線回折の(531)面に相当する回折線の半価幅が0.5度以下のものが得られる。
【0012】
また、本発明は、実質的にNaZn13型結晶構造を有する化合物相により構成される磁気冷凍用の磁性合金粉末の製造方法であって、厚さが30μm以下の偏平状の磁性合金粉末を水素を含む雰囲気中で熱処理することを特徴とする。前記の偏平状の磁性合金粉末は、合金溶湯を回転する冷却ディスクに向けてガス噴霧することにより得ることができる。磁性合金粉末を水素雰囲気中で熱処理する前に、水素雰囲気以外の非酸素雰囲気中で1000℃以上で溶体化熱処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による、厚さ30μm以下の偏平状のR(TM1−X合金粉末に、水素を固溶させることにより、短時間の反応時間で大きなエントロピー変化を有するRa(TMxM1-x)bHc系磁気冷凍作業物質を安定に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示すような本発明のNaZn13型結晶構造を有する偏平状のR(TM1−X合金粉末は、所望の組成に配合し原料を1300℃以上の高温で溶融し、溶湯を高速で回転する円錐状のデイスク上に噴霧することにより得られる。本発明による偏平粉の製造装置を、図2に示す。溶湯を噴霧するガスの圧力、ノズル径、デイスクの回転速度、ノズルとデイスク間の距離を変化させることなどにより粉末の厚さやアスペクト比を制御することが可能である。噴霧圧力を3MPa以上、ノズル径3mm以下、デイスク回転数を500r.p.m.以上とすることで偏平粉末の厚さを30μm以下とすることが可能である。得られた偏平粉末を、1000℃以上で溶体化熱処理することにより、α-Fe相が5vol%以下で実質的にNaZn13単相のR(TM1−X合金粉末が得られる。この偏平粉末を、水素を含む反応ガス雰囲気中で200〜350℃で0.5〜2時間熱処理することにより水素濃度分布が粉末全体で均一な磁気冷凍作業物質を得ることが可能である。反応ガスとしては、水素、水素とアルゴンの混合ガス、アンモニアガス、などを使用することが可能である。30μm以下の偏平粉末を用いることにより、反応速度を向上し水素拡散時の表面と内部の濃度差を低減することが可能となり、水素濃度分布が粉末全体で均一な磁気冷凍作業物質が得られる。本製造方法によると、水素吸蔵反応後の熱処理が不要となり製造プロセスも簡略化できる。
【0015】
磁性粉末の均一性は粉末X線回折の特定回折線の半価幅と、磁化曲線の温度変化を測定することにより判定することが可能である。すなわち水素の濃度分布が不均一な場合は格子定数の異なる相が連続的に存在するため半価幅が広くなる。このような磁性合金粉末の温度変化は、磁性相のキュリー温度が局所的に異なり、一定の分布を持つため相変化に伴う磁化曲線の温度変化の傾きが小さくなり、磁気冷凍性能は著しく低下する。本発明の磁性合金は、良好な磁気冷凍性能を有し、NaZn13相のX線回折の(531)面に相当する回折線の半価幅が0.5度(ラジアン)以下とすることができる。
【0016】
本発明における、X線回折による半価幅は以下のように定義する。Cuをターゲットとして加速電圧50kV、加速電流200mAにて測定した粉末X線回折(図4)において、La(Fe・Si)13相のメインピークのひとつである、47度近傍に観察される(531)面の回折線の基線からの高さの1/2の位置における回折線の幅を半価幅として求めた。また磁化曲線の最大傾きは、印加磁界796kA/m(1kOe)で測定した磁化−温度曲線においてLa(Fe・Si)13相の磁気変態に伴い、磁化が急激に変化する領域での最大傾きを図6のように求めた。磁性体内でキュリー温度の分布(揺らぎ)が存在すると、この傾きは小さくなる。また強磁性のFe-Si相が多量に存在するとこの傾きが小さくなり好ましくない。
【0017】
(厚さとアスペクト比)
本発明による偏平粉末の厚さが、30μm超である場合は粉末内での水素濃度分布の均一性が低下するため好ましくない。水素濃度分布の均一性は、水素吸蔵後の合金粉末のX線回折線図の半価幅により判定することが出来る。水素濃度分布が不均一な場合は、図5に示すような(531)面に相当する半価幅の大きい回折線となる。粉末厚さに対するアスペクト比(l/t)は、図2に示すデイスクの傾斜角度やノズル径、噴霧圧力を変えることにより変化させることが可能である。水素吸蔵の反応時間を短くするためには、アスペクト比はより大きい方が好ましい。
【0018】
(組成の限定理由)
本発明による合金粉末は、組成式で、R(TMx1-x(但し、RはLaを必須として必要によりCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、Er、Tm、Y、Luからなる希土類元素の1種以上を含み、TMはFeを必須として必要によりTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Znからなる遷移金属元素群より選択される1種以上を含み、MはSiを必須として必要によりAl、Ga、Ge、Snからなる元素群より選択される少なくとも1種以上を含み、かつ、原子%で5.5≦a≦7.5、92.5≦b≦94.5、0.75≦X≦0.95で表記されるものが好ましい。この磁性合金は液体窒素温度においては強磁性を示し、常温では水素と窒素の固溶量により、強磁性あるいは常磁性を示す。ここで、実質的に結晶構造がNaZn13単相からなる、とは組織の95%以上がNaZn13相で構成されることを示す。
【0019】
希土類量aが5.5原子%未満あるいはbが94.5原子%超では、希土類元素が不足し反応生成物中に強磁性のFe-Si相が析出するため好ましくない。またaが7.5原子%超あるいはbが92.5原子%未満では、希土類元素が過剰となり合金中にRTMやRTMなどの希土類リッチな非磁性相あるいは希土類酸化物等が生成されるため水素吸蔵後の磁気熱量効果を低下させる。
【0020】
R元素の内、Laは50原子%以下とすることが好ましい。Laが50原子%を超えるとR元素を含む異相が析出し、実質的にNaZn13相単相とならないため好ましくない。Laの一部を50原子%以下の範囲で置換することにより、磁気変態温度(キュリー温度)を意図的に変えることが可能となる。
また、Feの一部をTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Znより選択される1種または1種以上で置換することにより、α鉄の析出を抑制したり、キュリー温度を制御したり、粉末の耐食性を改善したりすることが可能である。Fe量が少ないと磁気特性(飽和磁化)が低下するため、Fe量は80原子%以上が好ましい。
【0021】
また、本発明による水素吸蔵を行った合金粉末は、組成式でR(TM1-Xbc(但し、RはLaを必須として必要によりCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、Er、Tm、Y、Luからなる希土類元素の1種以上を含み、TMはFeを必須としてTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Znからなる遷移金属元素群より選択される1種以上を含み、MはSiを必須として必要によりAl、Ga、Ge、Snからなる元素群より選択される少なくとも1種以上を含み、かつ、原子%で5.5≦a≦7.5、80.5≦b≦92.5、0<c≦14、0.75≦X≦0.95)で表記されるものが好ましい。R量、遷移金属のb量の上限、下限の限定理由は前記した理由と同じである。
【0022】
水素量cは磁気熱量効果そのものには直接影響を及ぼさないが、cが増加すると結晶格子が膨張し磁気変態温度が上昇する。cの量を14原子%以下の範囲に制御することによりキュリー温度を245〜330Kの温度域で制御することが可能である。
【0023】
また、水素の一部が窒素に置換されてても良い。水素と窒素が共存する雰囲気ガス中で、適正な反応温度と反応時間、水素濃度を選択することにより、短時間で所定の水素量が固溶した均一な合金が得られる。水素および窒素を含む反応ガス中550〜700Kで、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間熱処理することにより、水素および窒素吸収分布が均一な磁性粉末を得ることが可能である。反応ガスとしては、水素と窒素の混合ガス、水素とアンモニアの混合ガス、アンモニアガスなどが使用できる。合金組成中の窒素は、原子%で0.07≦d<5.0の範囲にすることが好ましい。
【0024】
以下実施例により、本発明の効果を説明するが、本発明の効果はこれに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
原子%で、La7.3%、Fe80.0%、Si10.9%、Al1.8%の組成比の合金をアルミナ坩堝中で高周波溶解し、1450℃でノズル径2mmのノズルより出湯し、ガス圧6MPaで溶湯を噴霧し、回転数2000rpmで回転する傾斜角45度のCu製デイスク上で急冷凝固させ、厚さ10μmの偏平上のLa−Fe−Si−Al粉末を得た。この粉末をAr雰囲気中1050℃で2時間溶体化熱処理し、実質的にNaZn13単相の常磁性粉末とした。この粉末を、270℃で2時間水素分圧75%の水素とアルゴン混合ガス中で熱処理し水素を固溶させた。
水素固溶後の、合金粉末の磁化曲線およびX線回折図を図3および図4に示す。X線回折図の(531)面に相当する回折線の半価幅は、0.42度であり、図3の磁化-温度変化で磁気変態点近傍で急峻な磁化変化を示すことより、粉末中に均一に水素が固溶されていることがわかる。
【0026】
(実施例2)
原子%で、La7.3%、Fe80.0%、Si10.9%、Al1.8%の組成比の合金粉末を実施例1と同様に溶製し、1450℃でノズル径2mmのノズルより、ガス圧6MPaで溶湯を噴霧し、回転する傾斜角45度のCu製デイスク上で急冷凝固させた。デイスクの回転数を、3000〜200rpmと変化させることにより、偏平粉末の厚さを8μm〜25μmまで変化させた。これらの粉末を実施例1と同様の条件で溶体化処理した後、270℃で1時間水素分圧25%の水素とアルゴン混合ガス中で熱処理した。水素吸蔵粉末の磁化測定およびX線回折により得られた結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
原子%で、La7.3%、Fe80.0%、Si10.9%、Al1.8%の組成比の合金粉末を実施例1と同様に溶製し、溶湯を1450℃でノズル径を1.5mm〜4mm、噴霧ガス圧を2〜6MPa、回転数を500〜3000r.p.m変えて、傾斜角45度のCu製デイスク上で急冷凝固させ、偏平粉末の厚さを7μm〜38μmの間で変化させた。これらの粉末を実施例1と同様1050℃アルゴン中で溶体化処理した後、270℃で1時間水素分圧25%の水素とアルゴン混合ガス中で熱処理した。水素吸蔵粉末の磁化測定およびX線回折により測定した結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の偏平状の磁性合金粉末の外観写真。
【図2】本発明の製造方法に用いたデイスク急冷ガスアトマイズ装置の模式図。
【図3】本発明による水素吸蔵粉末の磁化曲線。
【図4】本発明による水素吸蔵粉末のX線回折図。
【図5】(513)面の回折線の半価幅の定義を説明する図。
【図6】実施例表に記載の磁化曲線の最大傾きの定義を説明する図。
【図7】平均粒径250μmのLa−Fe−Si合金粉末の磁化曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にNaZn13型結晶構造を有する化合物相により構成される磁気冷凍用の磁性合金粉末であって、厚さが30μm以下の偏平状であることを特徴とする磁性合金粉末。
【請求項2】
厚さ(t)と厚み方向と交差する面の長径(l)の比率l/t(アスペクト比)が5以上であることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金粉末。
【請求項3】
前記磁性合金粉末は、組成式で、R(TMx1-x(但し、RはLaを必須として必要によりCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、Er、Tm、Y、Luからなる希土類元素の1種以上を含み、TMはFeを必須として必要によりTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Znからなる遷移金属元素群より選択される1種以上を含み、MはSiを必須として必要によりAl、Ga、Ge、Snからなる元素群より選択される少なくとも1種以上を含み、かつ、原子%で5.5≦a≦7.5、92.5≦b≦94.5、0.75≦X≦0.95であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性合金粉末。
【請求項4】
前記磁性合金粉末は、組成式でR(TM1-Xbc(但し、RはLaを必須として必要によりCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、Er、Tm、Y、Luからなる希土類元素の1種以上を含み、TMはFeを必須として必要によりTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Znからなる遷移金属元素群より選択される1種以上を含み、MはSiを必須として必要によりAl、Ga、Ge、Snからなる元素群より選択される少なくとも1種以上を含み、かつ、原子%で5.5≦a≦7.5、80.5≦b≦92.5、0<c≦14、0.75≦X≦0.95)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性合金粉末。
【請求項5】
NaZn13相のX線回折の(531)面に相当する回折線の半価幅が0.5度以下であることを特徴とする請求項4に記載の磁性合金粉末。
【請求項6】
実質的にNaZn13型結晶構造を有する化合物相により構成される磁気冷凍用の磁性合金粉末の製造方法であって、厚さが30μm以下の偏平状の磁性合金粉末を水素を含む雰囲気中で熱処理することを特徴とする磁性合金粉末の製造方法。
【請求項7】
前記の偏平状の磁性合金粉末は、合金溶湯を回転する冷却ディスクに向けてガス噴霧することにより得たものであることを特徴とする請求項6に記載の磁性合金粉末の製造方法。
【請求項8】
磁性合金粉末を水素雰囲気中で熱処理する前に、水素を含まない非酸素雰囲気中で1000℃以上で溶体化熱処理することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の磁性合金粉末の製造方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−249702(P2009−249702A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100768(P2008−100768)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】