説明

磁性微粒子を含有する導電性流体

本発明は磁性材料のマイクロメートル粒子Aと導電性流体Bからなる複合材料に関する。本発明に係る材料は、材料Aが磁性の化合物及び合金から選択され、平均粒径が0.1μmと10μmの範囲にある粒子の形態にあり、支持流体Bは材料Aのキュリー温度未満の温度で液体である金属、金属合金、および塩から、あるいはそれらの混合物から選択される導電性流体の形態にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料の粒子と導電性液体によって形成される複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
強磁性流体は、支持液体の安定な懸濁液中の磁性粒子によって形成される液体材料である。支持液体がイオン性液体である場合、こうした材料の導電率は非常に低く、支持液体が有機溶媒である場合、絶縁性である可能性がある。
【0003】
その適用分野を広げるために、強磁性流体材料に導電特性を与えるための様々な試みがなされてきた。例えば、F.E.Luborsky(「J.of the Electrochem.Soc.」、第108巻、No.12、1961年、1138〜1145頁)は、電気化学セル(その陰極は水銀フィルムであり、電解質は鉄の塩の溶液である)中の水銀へのFeの導入を記載している。その意図される目的は、永久磁石を生成することである。
【0004】
S.W.Charlesら[「Thermomechanics of magnetic fluids(1975)」、Hemisph.Publ.Corp、Washington 1978年(27〜43頁)]は、Feの塩を含有する電解質を使用するFeをHgに、あるいはHg/Snアマルガムに電気化学的に導入することからなる方法による強磁性流体の製造について記載している。Hg中への、あるいはアマルガム中へのその分散を促進するために、陰極の表面に形成されたFe粒子は、撹拌にかけられる。HgにSnを添加することにより、強磁性流体系の安定性は大幅に向上するが、Fe粒子のある程度の凝集は持続することが観察される。
【0005】
導電性液体におけるニッケル粒子の懸濁液は、I.Ya.Kaganら(「Magnitnaya Gidrodinamika」、第6巻、No.3、155〜157頁、1970年)によって記載されている。こうした懸濁液は、金属液体(すなわち、232℃より上の温度で液体であるスズ、271℃より上の温度で液体であるビスマス、または、組成物に応じて11℃または15.8℃より上の温度で液体であるIngasと表されるIn−Ga−Sn合金)に、約50μmのサイズのニッケル粒子を導入することによって製造された。著者によれば、当該の金属液体によるニッケルのある種の濡れ性が存在するので、また、ニッケルと前記金属液体の密度が類似であるので、こうした組成を有する強磁性流体懸濁液は、成分の単純混合によって得られるはずである。しかし、こうした方法は、磁性粒子を構成する金属と、導電性液体を構成する金属が、ほとんどまたは全く相互親和性を示さないような、また、導電性液体金属による磁性粒子構成金属の濡れ性が、低いまたはゼロであるような導電性強磁性流体の産生には適用可能でない。
【0006】
S.Linderothら(「J.Appl.Phys.」68(8)15/04/1991、5124〜5126頁)は、水銀ベースの強磁性流体を製造する2つの方法を記載している。第1の方法によれば、NaBH4水溶液を、当該の遷移金属のイオンを含有する水溶液に一滴ずつ加えることによって、混合された(Fe−Co−B、Fe−Ni−B、Fe−B、Co−B、またはNi−B)粒子が製造され、次いで、得られた混合された粒子の水性の懸濁液に水銀が加えられ、その混合物が撹拌にかけられる。この第1の方法によって、(それらの粒子が、Fe−Ni−B、Co−B、またはNi−B粒子である場合に、Hgに導入される前に蒸留水で洗浄されないという条件で)上述の混合された粒子のHg中の懸濁液を得ることが可能になる。しかし、加えられるNaBH4化合物は元々、最終生成物の化学組成に組み込まれているので、この方法は、他の「磁気化合物/導電性液体」対に対して一般化することはできない。第2の方法によれば、遊離鉄が、濃HClに溶解され、この溶液にHgCl2が加えられ、適切な量の濃NaOH水溶液を加えることによってpHが約3に調節され、次いで、凝集を減少させるためにNaBH4が加えられる。この方法では、鉄および水銀が、その発生が制御されない化学プロセスによって同時に産生される。一般的なケースでは、粒子が常に存在することが確実とはならず、制御されていない組成の合金が形成される可能性がある。この方法は、明らかに常に可能とは限らない当該の金属のイオン性溶液を有することを必要とする。最後に、NaBH4は良い還元剤であるが、必ずしもすべての金属に適しているというわけではない。
【0007】
例えば、特に、自動車、耐震装置、防振装置、船橋楼甲板、およびクラッチ中の緩衝装置などの粘弾性伝達システム中に、磁気粘性特性を有する流体を使用することが知られている。使用される流体は一般に、液体(低揮発性の合成油または炭化水素、シリコーン油、または完全な密閉を伴う低伸張用途のための水性流体など)中に分散するミクロンサイズの磁性粒子によって形成される。しかし、こうした流体は、特に200℃より上の高温にさらされる装置の緩衝装置には使用することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来の技術のシステムの欠点すなわち温度の制約を解決する磁気粘性流体として働くことが可能な材料を提供することである。
【0009】
この目的のために、本発明の主題は、複合材料を生成するための方法、得られる材料、および磁気粘性流体としてのその使用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による方法は、磁性材料Aの前駆物質を電気伝導流体Bに導入することであり、この方法は、以下の電気化学セル中で電気化学的に行われる:
−電解質が、平均粒径が1μmと10μmの間の粒子の形の材料Aの前駆物質を含有するイオン伝導性媒質からなり;
−材料Aの前駆物質は、溶液中の非イオン性前駆物質であり;
−陰極が、100mA/cm2と3A/cm2の間の電流密度を出力することが可能な電位供給源に連結された導電性流体Bのフィルムからなり;
−陽極が、この方法の条件下では酸化されない材料(例えばプラチナまたはガラス状炭素)からなり;
−陰極が、陽極に対して負の電位差を受ける。
【0011】
電気分解は、陰極での電位の変化を制御することによって、電流制御することもできるし、(ポテンシオスタットタイプの制御デバイスを使用して)基準電極に対する電位を制御することによって、電位制御することもできる。材料AとBとの間の界面張力を低下させるために、陰極に適用される電位は、すべての場合において、可能な限り最も陰性でなければならないが、効率に対して、また生成物の安定性に対して不利益な、水素の過剰な発生またはアマルガムの形成などの他の電気化学反応を誘導しないように制限されなければならない。
【0012】
陽極は、多孔質壁によって陰極から隔てられた区画に入れることができる。電気分解が電位制御される場合、セルはさらに、基準電極を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
磁性材料Aの前駆物質は、磁性の金属および金属酸化物から、また磁性合金から選ぶことができる。金属および金属酸化物としては、鉄、酸化鉄、コバルト、およびニッケルを挙げることができる。合金としては、透磁率の高い鋼および合金を挙げることができる。透磁率の高い合金とは、初期透磁率が1000を超える合金である。こうした合金は、Dunod(Paris、1956年)によって発行された、M.G.Sayによる研究「Alliages magnetiques et ferrites」の第2章、[Magnetic alloys and ferrites]に具体的に記載されている。透磁率の高い合金の例としては、特に、鉄−ケイ素合金、およびMu−metal(R)またはPermalloy(R)という名前で販売されている基本的にNiおよびFeからなる合金を挙げることができる。また、アモルファス磁性合金としては、例えば、約20%のB、C、Si、またはPを含有するFe、Co、およびNiの合金、およびナノ結晶性の磁性合金(例えばFe/Cu/Nb/Si/B合金およびFe/Zr/B/Cu合金など)などを挙げることができる。
【0014】
磁性材料の前駆粒子は、サイズ分布が均質である平均粒径を有する実質的に球状の粒子であり得る。これらは、電解質を構成している液体媒質に、一方の粒子群の平均サイズが他方の粒子群とは異なる2群の形で導入することができる。第2の群の平均粒子サイズは、1μmから10μmの間の範囲外であり得る。第2の群は、例えば、平均サイズが0.5から数ミリメートル(例えば1から2mm)の間にある粒子によって形成される可能性がある。
【0015】
磁性材料の前駆粒子は、さらに、第1の磁性材料Aの前駆物質の粒子の群によって、また、Aについて定義された群から選ばれた第2の磁性材料A’の前駆物質の粒子の群によって形成されることができる。
【0016】
これらの粒子は、上で定義した通りに使用することもできるが、導電性流体B中で、Aに対して親和性を有する金属でコートした後で使用することもできる。
【0017】
この方法を実施する場合、使用される材料Aの前駆物質および導電性流体Bのそれぞれの量は、BへのAの溶解性の程度を考慮すると、導電性流体Bにおける磁性材料Aの最終の粒子濃度が、分散して二相分散または固体分散となる(これは沈殿をもたらすであろう)上述の値よりも小さいままであるような量である。この値の決定は、当業者の権限内である。
【0018】
用語「電気伝導性流体」は、電気分解が起こる温度範囲内で、約1000オーム/センチメートルよりも電気抵抗力が小さい流体を意味するものと理解される。
【0019】
導電性流体Bは、材料Aのキュリー温度未満の温度で液体である金属、金属合金、および塩から、あるいはそれらの混合物から選ばれる。
【0020】
電気伝導性流体Bが金属である場合、これは、これと組み合わされる磁性材料Aのキュリー点未満の温度で、それ自体で、あるいはそれらのうちのいくつかの混合物の形で液体である金属から選ばれる可能性がある。例としては、Hg、Ga、In、Sn、As、Sb、アルカリ金属、およびそれらの混合物、特に、Ga、In、Sn、As、Sb、Li、K、およびCsを挙げることができる。
【0021】
電気伝導性流体Bが融解された金属合金である場合、これは、特にIn/Ga/As合金、Ga/Sn/Zn合金、In/Bi合金、ウッド合金、ニュートン合金、Arcet合金、リヒテンベルグ合金、およびローズ合金から選ぶことができる。いくつかのこうした合金は、市販品として入手できる。これらのうちのいくつかの組成と融点を、以下に示す:

組成(重量%) Tm(℃)
21.5In−62.5Ga−16.0Sn 10.7
17.6In−69.8Ga−12.5Sn 10.8
82.0Ga−12.0Sn−6.0Zn 17
67In−33Bi 70
ウッド合金:50Bi−25Pb−12.5Sn−12.5Cd 70
ニュートン合金:50Bi−31.2Pb−18.8Sn 97
アクレット合金:50Bi−25Sn−25Pb 98
リヒテンベルグ合金:50Bi−20Sn−30Pb 100
ローズ合金:50Bi−22Sn−28Pb 109
【0022】
導電性流体Bが塩である場合、これは、以下から選ぶことができる:
−アルキル基が1から18個の炭素原子を含むアルキルアンモニウム硝酸塩、グアニジウム硝酸塩、イミダゾリウム硝酸塩、およびイミダゾリニウム硝酸塩;
−150℃より上の温度で液体であるアルカリ金属クロロアルミン酸塩;
−BF4-、PF6-、またはトリフルオロ酢酸アニオン、および、アミジニウム[RC(=NR2)NR2+、グアニジウム[R2N−C(=NR2)−NR2+、ピリジニウム


、イミダゾリウム

、およびイミダゾリニウム

、トリアゾリウム

イオンから選ばれるカチオンを含む塩(ここでは、各置換基Rは、他とは独立に、H、または1から8個の炭素原子を有するアルキル基を表し、前記塩は、最高10mS/cmの伝導率を有し、かつ非常に安定である)。一例として、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを挙げることができる。
【0023】
電気伝導性流体Bが、所与の金属からなる場合、安定な液相(または、前記金属が水銀である場合には液体アマルガム)を形成することができ、かつ導電性流体内で粒子Aの分散を安定化させ、その凝集を妨げる1種または複数の成分を、これに加えることができる。例えば、Bが水銀である場合、Sn、Ag、Cu、Cd、Zn、Tl、Pb、In、As、またはSbを、固相を形成させるであろうよりも少ない割合で、その中に加えることができる。
【0024】
不純物の存在により、磁性材料Aと導電性流体Bとの間の界面特性、またその結果として導電性流体Bによる材料Aの濡れ性は著しく変化しやすくなる。所与のA/B対に対して本発明の方法を実施することによって、適切な結果が得られないならば、不純物の性質およびレベルを確認することが推奨される。
【0025】
Aの前駆粒子は、イオン伝導性媒質に、次いで、電気分解中の電気伝導性液体Bに(すなわちBに対する所望の濃度が得られるまで徐々に)導入することができる。この場合、Aの前駆物質が導入されると同時に電流密度および/または電位が変化し、それによって、場合によっては、Aの前駆粒子とは異なるA’の前駆粒子を導入することが可能になる。
【0026】
イオン伝導性媒質は非酸化性媒質であることが好ましい。これは、溶媒に非酸化性酸(例えばHCl)を、または強い塩基を入れた溶液によって形成することができる。溶媒は、水、極性の有機液体、または融解された塩であり得る。極性の有機液体は、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート、およびN−メチルピロリドンから選ぶことができる。融解された塩は、電気伝導性流体として定義されるものから選ぶことができる。
【0027】
陰極が連結される電位供給源は、陰極の少なくとも約100mA/cm2の電流密度を出力することが可能でなければならない。
【0028】
電気化学セルが電位制御される場合、これは、必然的に基準電極を含み、陰極と前記基準電極の電位差の差は、液体Bによる粒子Aの濡れを可能にするために、AとBの間の界面張力が低下させられるような範囲内に固定される。例えば、粒子AがFe粒子であり、液体BがHgである場合、電圧は、基準電極に対して−1Vと−3Vの間である。
【0029】
電気化学セルが定電流方式で作動する場合、すなわち、それが電流制御される場合、かつ基準電極を含む場合、陰極と基準電極との間の電位差が、セルが電位制御される場合に定義される範囲に制限されるように、電流を減少させる作用閾値を課すことが必要である。
【0030】
電気化学セルが、制御デバイスを用いずに電流制御される場合、かつそれが基準電極を含まない場合、例えば一時的な基準電極を使用して、所定の制限に対して全体の電位をモニタリングすることが必要である。
【0031】
実際には、電流制御される方式で作動する場合、基準電極を含む電気化学セルを使用することが好ましい。
【0032】
電気化学的製造を実施する特に好ましい方式では、電解質/陰極の境界領域から形成される磁性粒子Aを減ずるために、その形成の初期段階におけるその増殖の速度を制御するために、磁場は、陰極の平面に対して垂直に適用される。実施の別の方法では、前記垂直な磁場が存在する場合にもしない場合にも、このプロセスを電流または電位制御する際に、パルスまたはAC成分が重ね合わせられることによって、合成を受ける材料に対して他のタイプの作用が与えられる可能性がある。
【0033】
このプロセスの最後に、陰極を構成する導電性流体は、磁気粒子Aが非常に濃縮され、本発明の電気伝導性強磁性流体材料を構成する。
【0034】
本発明の方法は、磁性粒子を構成する材料と、電気伝導性流体を構成する材料が、ほとんどまたは全く相互親和性を示さない場合、また、電気伝導性流体による磁性材料の濡れが、あるとしてもごくわずかである場合に、磁性材料の前駆物質から、また、電気伝導性流体から複合材料を製造するのに特に有用である。
【0035】
本発明による組成材料は、以下のような支持流体Bと磁性材料Aの粒子によって形成される:
・材料Aが、磁性金属、磁性金属酸化物、および磁性合金から選ばれ、かつ平均粒径が0.1μmと10μmの間の粒子の形であり;かつ
・支持流体Bが、材料Aのキュリー温度未満の温度で液体である金属、金属合金、および塩、またはそれらの混合物から選ばれる導電性流体である。
【0036】
本発明による材料は、高い動作温度に適合し、高い導電率を有し、高い熱伝導率を有し、それによって、高温での非常に集中的な操作レジメンによって生成される熱を引き出すのに好都合である。異種性にもかかわらず、これは、密度が近い場合に、BによってAが良く濡れるので安定なままであることが可能である。
【0037】
磁性材料Aの例としては、上で定義された磁性の金属および金属酸化物、ならびに磁性合金を挙げることができる。
【0038】
材料Aは、サイズ分布が均質である平均粒径を有する粒子によって形成されることが好ましい。
【0039】
さらに、これは、一方の粒子群の平均サイズが他方の粒子群とは異なる2群によって形成される可能性がある。第2の群の平均粒子サイズは、1μmから10μmの間の範囲外であり得る。材料は、例えば、平均サイズが1μmから10μmの間である粒子と、平均サイズが0.5から数ミリメートル、例えば1mmから2mmの間である粒子を含有することが可能である。
【0040】
さらに、磁性材料の粒子は、第1の磁性材料Aの群によって、また、Aについて定義される群から選ばれる第2の磁性材料A’の群によって形成することができる。
【0041】
本発明の方法によって得られる複合材料では、磁性粒子の量は、最大でも、分散が二相分散または固体分散になる閾値に等しい。
【0042】
一実施形態では、導電性流体Bは、Ga、In、As、Sb、Li、K、およびCsから選ばれる。別の実施形態では、電気伝導性流体Bは、In/Ga/As合金、Ga/Sn/Zn合金、In/Bi合金、ウッド合金、ニュートン合金、Arcet合金、リヒテンベルグ合金、およびローズ合金から選ばれる融解された金属合金である。第三の実施形態では、電気伝導性流体Bは、以下から選ばれる塩である:
−アルキル基が1から18個の炭素原子を含むアルキルアンモニウム硝酸塩、グアニジウム硝酸塩、イミダゾリウム硝酸塩、およびイミダゾリニウム硝酸塩;
−150℃より上の温度で液体であるアルカリ金属クロロアルミン酸塩;ならびに
−BF4-、PF6-、またはトリフルオロ酢酸アニオン、および、アミジニウム[RC(=NR2)−NR2+、グアニジウム[R2N−C(=NR2)−NR2+、ピリジニウム

、イミダゾリウム

、イミダゾリニウム

、およびトリアゾリウム

イオンから選ばれるカチオンを含む塩(ここでは各置換基Rは、他とは独立に、1から8の炭素原子を有するHまたはアルキル基を表す)。
【0043】
本発明による方法によって得られる複合材料の例として、以下の材料を挙げることができる:
・Feまたは鋼粒子 Hg内
・Feまたは鋼粒子 Ga内
・CoまたはNi粒子 Hg内
・Fe粒子 Ga+Sn内
・Fe粒子 ウッド合金内
・鉄/ケイ素合金粒子 ウッド合金内
【0044】
本発明の複合材料は、ナノテクノロジー、マイクロマシン、磁気流体力学、およびマイクロフルイディクスなどの多くの分野で好都合に使用することができる電気伝導性強磁性流体材料である。
【0045】
これは、当然、導電性を示さない従来の強磁性流体材料の様々な用途に対して、すなわち、緩衝装置などの粘弾性送信システム中に、特に自動車、耐震装置、防振装置、船橋楼甲板、およびクラッチ中に、(ただし、こうした用途が微粒子と適合する条件で)使用することができる。
【0046】
本発明を、いくつかの特定の典型的な実施形態によって以下で例示するが、本発明は、これに限定されない。
【0047】
これらの実施例では、以下の出発生成物を使用した:
・水銀
・ガリウム
・直径が約10μmの球状粒子からなる、Riedel−de Haenによって参照312〜31下で販売されている粉末状の鉄(分析用の還元鉄)
・直径が1.5mmの(1%炭素および1%クロミウムを含む鉄でできている)100C6スチールボール
・ウッド合金
・InGaSn(21.5/62.5/16)合金
・スズ
・粉末状の鉄/ケイ素合金。
【0048】
これらの材料は、電位供給源に連結されかつ撹拌手段が提供され、陰極が電気伝導性流体Bの層によって形成され、プラチナ電極が陰極と接触され、第2のプラチナ電極が陽極として作動し、カロメル電極が基準電極として作用する電気化学セル中で製造された。
【実施例1】
【0049】
Fe/Hg強磁性流体材料
材料の製造:
5.261gの水銀(材料B)を、セルの底に入れ、10mlの0.1M HClO4を加え、この混合物を加熱した。電位供給源によって、2本のプラチナ電極の間に4Vの電位差が生じ、これによって、約20mAの電流が誘起された。次に、0.528gの粉末状の鉄を、10分毎に20mgの量で加えた。水銀とカロメル基準電極との間の電位差は、この操作の期間を通じて、約−1.5ボルトのままであった。鉄粒子を水銀層に組み込むことをより容易にする、また、水銀の表面で水素泡が粗大化するのを防止するために、水銀の層を軽く撹拌した。
【0050】
得られた材料の特徴付け:
得られた材料における鉄の体積分率は、0.14±0.01であった。
【0051】
この材料の測定された飽和磁化は、266kA/mであった。
【0052】
低磁場での初期磁化率は、1.86であった。
【0053】
体積分率が10%である標本について測定された導電率は、65μΩ.cmであった(不確かさは±15%と推定された)。
【実施例2】
【0054】
Fe/Ga強磁性流体材料
材料の製造:
5.2gのガリウム(材料B)を、セルの底に入れ、10mlの0.1M HClを加え、この混合物を35℃の温度に加熱し、次いで2本のプラチナ電極間に10Vの電位差を与えた。次に、0.76gの粉末状の鉄を、10分の間隔をあけて5回に分けて加えた。各添加時には、ガリウムの下に鉄を持ってくるために磁石を使用し、この磁石を使用して軽く撹拌した。
【0055】
得られた材料の特徴付け:
得られた材料における鉄の体積分率は、0.1であった。
【0056】
この材料の測定された飽和磁化は、190kA/mであった。
【0057】
低磁場での初期磁化率は、1であった。
【0058】
融点は、27℃と27.5℃の間であり、標本は、約22℃まで過冷却されたままであることが可能だった。
【0059】
低伝導率の液体のために構築された、解像度が15±10μΩ.cmである「4点」導電セルを使用して導電率を測定した。これは、前記セルによって測定することが可能であった限界値に非常に近く、純粋なガリウムのその値、約20μΩ.cmとほとんど違わなかった。
【実施例3】
【0060】
Fe/ウッド合金強磁性流体材料
材料の製造:
9gのウッド合金(材料B)を、セルの底に入れ、10mlの0.1M HClを加え、この混合物を80℃の温度に加熱し、続いて、2本のプラチナ電極間に4.5Vの電位差を与えた。次に、0.972gの粉末状の鉄を、5分の間隔をあけて5回に分けて加えた。
【0061】
得られた材料の特徴付け:
得られた材料における鉄の体積分率は、約0.1であった。
【0062】
この材料の飽和磁化は、150kA/mであった。
【0063】
低磁場での初期磁化率は、0.57であった。
【0064】
材料の融点は、71.6℃±0.2℃であり、この材料は、約68℃まで過冷却されたままに保つことが可能であった。
【実施例4】
【0065】
鉄/InGaSn合金強磁性流体材料
材料の製造:
融点が10.7℃である3.6gのInGaSn(21.5/62.5/16)合金(材料B)を、セルの底に入れ、10mlの0.1M HClを加えた。この混合物を55℃の温度に加熱し、次いで、2本のプラチナ電極間に5Vの電位差、2分ごとに10秒間10Vの電位を与えた。次に、0.325gの粉末状の鉄を、5分の間隔をあけて4回に分けて加えた。
【0066】
得られた材料の特徴付け:
得られた材料における鉄の体積分率は、約0.065であった。
【0067】
この材料の飽和磁化は、113kA/mであった。
【0068】
低磁場での初期磁化率は、0.55であった。
【実施例5】
【0069】
Fe/Ga+Sn強磁性流体材料
材料の製造:
5.2gのガリウム(材料B)を、セルの底に入れ、10mlの0.1M HClを加えた。この混合物を35℃の温度に加熱し、0.145gのスズを加え、続いて、2本のプラチナ電極間に4.5Vの電位差を与えた。次に、0.3gの粉末状の鉄を、10分の間隔をあけて2回に分けて加えた。各添加時には、ガリウムの下に鉄を持ってくるために磁石を使用し、この磁石を使用して軽く撹拌した。さらに、0.17gのスズ、それに続いて0.64gの鉄を3回に分けて加えた。HClの濃度を、適切な量を加えることによって再調整した(HClは、長時間の電気分解中に消費され、電流の低下が引き起こされた)。2本のプラチナ電極の間の電圧差を8Vに上げた。
【0070】
材料の特徴付け:
得られた材料における鉄の体積分率は、約0.1であった。
【0071】
この材料の飽和磁化は、182kA/mであった。
【0072】
低磁場での初期磁化率は、1.1であった。
【実施例6】
【0073】
鉄/鋼/Hg強磁性流体材料
材料の製造:
8.694gの水銀(材料B)を、セルの底に入れ、10mlの0.1M HClを加え、この混合物を50℃に加熱した。電位供給源によって、2本のプラチナ電極間に6Vの電位差が生じ、これによって、約250mAの電流が誘起された。次に、0.2gのスチールボールと0.54gの粉末状の鉄を加えた。磁性材料を水銀層に組み込むことをより容易にする、また、水銀の表面で水素泡が粗大化するのを防止するために、水銀の層を軽く撹拌した。
【0074】
得られた材料の特徴付け:
得られた材料における鉄の体積分率は、0.127であった。
【0075】
この材料の測定された飽和磁化は、250kA/mであった。
【0076】
低磁場での初期磁化率は、1.45であった。
【実施例7】
【0077】
鉄/鋼/Ga強磁性流体材料
材料の製造:
4.86gのガリウム(材料B)を、セルの底に入れ、10mlの0.2M HClを加えた。この混合物を50℃の温度に加熱し、2本のプラチナ電極間に11Vの電位差を与えた。次に、0.2gのスチールボールと0.142gの鉄粉末を加えた。次いで、ガリウムの下に鉄を持ってくるために磁石を使用し、この磁石を使用して軽く撹拌した。
【0078】
得られた材料の特徴付け:
得られた材料における鉄の体積分率は、0.04であった。
【0079】
この材料の測定された飽和磁化は、72kA/mであった。
【0080】
低磁場での初期磁化率は、0.42であった。
【実施例8】
【0081】
FeSi/ウッド合金強磁性流体材料
材料の製造:
5.25gのウッド合金(材料B)を、セルの底に入れ、10mlの0.1M HClを加えた。この混合物を75℃の温度に加熱し、次いで2本のプラチナ電極間に6Vの電位差を与えた。次に、0.37gの粉末状の鉄/ケイ素合金(平均サイズ10ミクロン)を、5分の間隔をあけて5回に分けて加えた。各添加後、2本の電極間の電位差を、30秒間12Vに上げた。
【0082】
得られた材料の特徴付け:
得られた材料における磁性材料の体積分率は、約0.08であった。
【0083】
この材料の飽和磁化は、137kA/mであった。
【0084】
低磁場での初期磁化率は、1.8であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料Aの前駆物質を電気伝導性流体Bに導入することからなる磁性材料Aと電気伝導性流体Bを含む導電性強磁性流体材料を製造するための方法であって、この方法は電気化学セル中で電気化学的に実施され、前記電気化学セルにおいて:
・電解質は、平均粒径が0.1μmと10μmの間の粒子の形の材料Aの前駆物質を含有するイオン伝導性媒質からなり;
・材料Aの前駆物質は、溶液中の非イオン性前駆物質であり;
・陰極は、100mA/cm2と3A/cm2の間の電流密度を出力することが可能な電位供給源に連結された導電性流体Bのフィルムからなり;
・陽極は、この方法の条件下では酸化されない材料からなり;
・陰極は、陽極に対して負の電位差を受けるものである、前記方法。
【請求項2】
磁性材料Aの前駆物質が、鉄、鉄酸化物、コバルト、ニッケル、および磁性合金から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前駆粒子が、実質的に球形である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前駆粒子が、一方の粒子群が他方の粒子群の平均サイズとは異なる二つの粒子群からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第2の粒子群の平均サイズが、1μmから10μmの間の範囲外である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前駆粒子が、第1の磁性材料Aの前駆物質の粒子群と、Aについて定義された群から選ばれる第2の磁性材料A’の前駆物質の粒子群とによって形成することができる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
磁性粒子の量は、分散が二相分散または固体分散になる閾値以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
イオン伝導性媒質が、溶媒に非酸化性酸を、または強塩基を入れた溶液によって形成される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
溶媒が、水、極性の有機液体、および融解された塩から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
電気伝導性流体Bが、材料Aのキュリー温度未満の温度で液体である金属、金属合金、および塩、あるいはそれらの混合物から選ばれる、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
電気伝導性流体Bが、これと組み合わされる磁性材料Aのキュリー点未満の温度で、それ自体で、あるいはそれらの混合物の形で液体である金属から選ばれる金属である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電気伝導性流体Bが、Ga、In、As、Sb、Li、K、およびCs、ならびにそれらの混合物から選ばれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電気伝導性流体Bが、In/Ga/As合金、Ga/Sn/Zn合金、In/Bi合金、ウッド合金、ニュートン合金、Arcet合金、リヒテンベルグ合金、およびローズ合金から選ばれる融解された金属合金である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
電気伝導性流体Bが、以下から選ばれる塩である、請求項10に記載の方法:
−アルキル基が1から18個の炭素原子を含むアルキルアンモニウム硝酸塩、グアニジウム硝酸塩、イミダゾリウム硝酸塩、およびイミダゾリニウム硝酸塩;
−150℃より上の温度で液体であるアルカリ金属クロロアルミン酸塩;ならびに
−BF4-、PF6-、またはトリフルオロ酢酸アニオン、および、アミジニウム[RC(=NR2)−NR2+、グアニジウム[R2N−C(=NR2)−NR2+、ピリジニウム

、イミダゾリウム

、イミダゾリニウム

、およびトリアゾリウム

イオンから選ばれるカチオンを含む塩(ここでは各置換基Rは、他とは独立に、H、または1から8個の炭素原子を有するアルキル基を表す)。
【請求項15】
電気伝導性流体Bが、Hg、Sn、Na、Bi、Hg/Sn合金、およびIn/Ga/Sn合金から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
1種または複数の成分が、電気伝導性流体Bを形成する金属に加えられ、この成分は安定な液相または前記金属が水銀である場合には液体アマルガムを形成することができる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項12、13、および14のいずれか1項に記載の方法によって得られる複合材料。
【請求項18】
・材料Aが、平均粒径が0.1μmと10μmの間である粒子の形の磁性金属、磁性金属酸化物、および磁性合金から選ばれ、かつ
・支持流体Bが、Ga、In、Sn、As、Sb、Li、K、およびCs、ならびにそれらの混合物の金属群から、In/Ga/As合金、Ga/Sn/Zn合金、In/Bi合金、ウッド合金、ニュートン合金、Arcet合金、リヒテンベルグ合金、およびローズ合金からなる金属合金群から、材料Aのキュリー温度未満の温度で液体である塩およびそれらの混合物から選ばれる導電性流体であることを特徴とする、
磁性材料Aと液体支持体Bからなる、請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
電気伝導性流体Bが、以下から選ばれる塩である請求項18に記載の複合材料:
−アルキル基が1から18個の炭素原子を含むアルキルアンモニウム硝酸塩、グアニジウム硝酸塩、イミダゾリウム硝酸塩、およびイミダゾリニウム硝酸塩;
−150℃より上の温度で液体であるアルカリ金属クロロアルミン酸塩;ならびに
−BF4-、PF6-、またはトリフルオロ酢酸アニオン、および、アミジニウム[RC(=NR2)−NR2+、グアニジウム[R2N−C(=NR2)−NR2+、ピリジニウム


、イミダゾリウム

、イミダゾリニウム

、およびトリアゾリウム

イオンから選ばれるカチオンを含む塩(ここでは各置換基Rは、他とは独立に、H、または1から8個の炭素原子を有するアルキル基を表す)。
【請求項20】
磁性材料Aが、鉄、コバルト、ニッケル、酸化鉄、およびFe/Si合金から選ばれる、請求項17から19のいずれか1項に記載の材料。
【請求項21】
磁性粒子の量は、分散が二相分散または固体分散になる閾値以下である請求項17から20のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項22】
一方で、磁性材料の実質的に球状の粒子を含有する、請求項17から21のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項23】
一方の粒子群の平均サイズが他方の粒子群とは異なる二つの磁性材料粒子群を含む、請求項17から22のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項24】
第2の粒子群の平均サイズが、1μmから10μmの間の範囲外である、請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
磁性材料粒子が、第1の磁性材料Aの群と、Aについて定義される群から選ばれる第2の磁性材料A’の群とによって形成することができる請求項17から24のいずれか1項に記載の複合材料。

【公表番号】特表2008−547234(P2008−547234A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518909(P2008−518909)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001470
【国際公開番号】WO2007/000510
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507018539)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー (10)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【Fターム(参考)】