説明

磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置

【課題】回収効率に優れ、粒度の揃った良質な磁性酸化物ナノ粒子を容易に製造することができる磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置を提供する。
【解決手段】反応容器12に収納された、金属錯体または金属塩を含有する前駆体溶液11に、紫外レーザー光発生装置13により、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射して、磁性酸化物ナノ粒子を析出させる。前駆体溶液11は、鉄錯体または鉄塩を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ用途などへ利用可能な磁性酸化物ナノ粒子コロイド溶液を製造するための磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネタイトなど鉄酸化物磁性体は、天然で最も一般的に存在する強磁性体であるため、永久磁石、磁気記録材料あるいは高周波デバイスなどの各種磁気デバイス材料として古くから用いられている。
【0003】
また、このような酸化物磁性体微粒子の分散溶液も、以前よりハードディスクなどの高速回転軸あるいは真空装置のシーリングなどの用途に用いられている“磁性流体”として知られているが、近年“磁性ビーズ”としてバイオ用途への応用が注目されるようになっており、具体的には次のような用途が開発あるいは製品化されている。
【0004】
1.マーカとしての応用:イムノアッセイなどに用いるマーカとしては、現在、可視域での吸収による光学的な識別をその原理とした、金あるいは銀の貴金属ナノ粒子あるいはCdSeなどの化合物半導体ナノ粒子(量子ドット)が、主に開発・製品化されている。しかし、マグネタイトなどの磁性体ナノ粒子を利用すれば、光学的な識別に比べて10〜1000倍、その感度を向上させることが可能であると言われており、実際にこれらのシステムが製品化されている。また、核磁気共鳴画像法(MRI)においては、通常HOのHのNMRを利用しているが、磁性体ナノ粒子を造影剤として用いれば、画像の鮮明化が可能であり、これに関しても実際に製品化がなされている。
【0005】
2.磁気分離:DNAなどの生体物質に磁性体ナノ粒子を結合させることにより、外部磁場によるDNA抽出などの生体物質の操作が可能になる。このようなDNA抽出装置のシステム開発が、実際に行われている。
【0006】
3.ハイパーサーミア:磁性体ナノ粒子に対して交流磁場を印加すると発熱するという原理を用いて、外部磁場によって腫瘍などの患部にナノ粒子を集中させることにより、局所加熱による治療が可能になる。
【0007】
4.ドラックデリバリ:薬剤などを付加した磁性体ナノ粒子を体内に侵入させ、磁場によって移動させ、患部に局所的に薬剤を集中させることによって効果的な治療が可能になる。
【0008】
以上のような用途に用いる磁性酸化物ナノ粒子コロイド溶液の合成方法としては、共沈法あるいはポリオールプロセスなどの溶液の化学反応に基づいた方法が用いられるのが一般的であり、真空装置を利用するような物理的手法はあまり用いられない。
【0009】
酸化物ナノ粒子の合成方法としては、化学的手法以外に、レーザー照射による合成方法も報告されている。そのひとつは、無機原料をガス化し、このガスに炭酸ガスレーザーなどの赤外レーザー光を照射する「レーザパイロリシス」である(例えば、特許文献1参照)。この製法においては、無機原料ガスと一緒に、エチレンなどの赤外光を吸収するガスを混合する必要があり、この吸収ガスが発生する熱による分解によってナノ粒子が生成される。この方法では、錯体あるいは吸収ガス中のカーボンが混在する場合がしばしばある。
【0010】
「液相中レーザーアブレーション」と呼ばれるナノ粒子合成も試みられている(例えば、特許文献2参照)。この製法は、分散剤(界面活性剤)を含む溶媒中に金属ターゲットを配置し、液体中でレーザーアブレーションを行う製法である。このナノ粒子生成の原理は、真空中でのレーザーアブレーションと基本的に同じである。
【0011】
【特許文献1】特許第3268793号公報
【特許文献2】特開2004−283924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1記載の、「レーザパイロリシス」による方法では、生成ナノ粒子の回収効率が良くないという課題があった。また、レーザー光を吸収して熱に変換する役割を担う特殊な「レーザー光吸収ガス」が必要になるという課題があった。特許文献2記載の「液相中レーザーアブレーション」による方法では、金属ターゲット材料を準備する必要があるため、所定の磁性酸化物ナノ粒子の製造が難しいという課題があった。
【0013】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、回収効率に優れ、粒度の揃った良質な磁性酸化物ナノ粒子を容易に製造することができる磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁性酸化物ナノ粒子の製造方法は、金属錯体または金属塩を含有する前駆体溶液に、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射して、磁性酸化物ナノ粒子を析出させることを、特徴とする。
【0015】
本発明に係る磁性酸化物ナノ粒子の製造装置は、金属錯体または金属塩を含有する前駆体溶液を収納するための、紫外光を透過可能な反応容器と、前記反応容器に収納された前記前駆体溶液に、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射可能に設けられた紫外レーザー光発生装置とを、有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置は、粒度分布の変動係数を最小で10%以下まで抑えた、粒度の揃った良質な磁性酸化物ナノ粒子を容易に製造することができる。また、磁性酸化物ナノ粒子の回収効率に優れている。レーザー光の照射のみの一段での合成であるため、前駆体溶液からオンデマンドで容易に磁性酸化物ナノ粒子を製造することができる。
本発明では、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射することが重要であり、波長400nmを超える波長のレーザー光を用いた場合、高品質の磁性酸化物ナノ粒子は得られない。また、レーザー光以外の光ではほとんど還元されず実用的な生成効率が得られない。照射するレーザー光の強度は10mJ以上、より好ましくは100mJ以上、特に300mJ乃至500mJであることが好ましい。条件にもよるが、パルスレートは10Hz乃至50Hz、照射時間は10乃至60分が好ましい。
【0017】
本発明に係る磁性酸化物ナノ粒子の製造方法は、鉄錯体または鉄塩を含有する前駆体溶液に、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射して、超常磁性または強磁性を示す鉄酸化物ナノ粒子を析出させてもよい。この場合、生体適合性の高い鉄酸化物ナノ粒子を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回収効率に優れ、粒度の揃った良質な磁性酸化物ナノ粒子を容易に製造することができる磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図4は、本発明の実施の形態の磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置を示している。
図1に示すように、磁性酸化物ナノ粒子の製造装置10は、前駆体溶液11と反応容器12と紫外レーザー光発生装置13と温度制御器14と冷却器15とを有している。
【0020】
前駆体溶液11は、金属錯体または金属塩を含有している。生成する磁性酸化物ナノ粒子としては、特にマグネタイトFeあるいはマグヘマイトγ−Feなどの磁性鉄酸化物ナノ粒子を主な対象としている。鉄酸化物ナノ粒子生成に用いる前駆体溶液11としては、塩化鉄などの塩類ではなく、鉄アセチルアセトネートあるいは鉄ペンタカルボニルなどの錯体を含む溶液を用いるのが好ましい。これは、鉄塩よりも鉄錯体の方が還元されやすく、ナノ粒子が形成されやすいためであり、鉄塩を用いる場合には、ジオール、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどの還元剤を適宜添加することが好ましい。実際、塩化鉄のみ溶解した溶液への照射では、鉄がほとんど還元されないことが確認されている。
【0021】
鉄ペンタカルボニルは、鉄ベースのナノ粒子の生成が容易であるため、よく利用される錯体である。この試薬は、室温で液体であるため何らかの溶媒へ溶解させる必要はなく、高濃度のナノ粒子生成が可能である。しかし、大気中で容易に反応し、また有毒でもあるため、不活性雰囲気中あるいはマイクロリアクタ・マイクロ化学チップなどの密閉空間中で照射・反応させることが好ましい。
【0022】
なお、マグネタイトは、スピネル構造を有するが、この鉄原子の一部を各種元素で置換したスピネルフェライトナノ粒子の合成も可能である。置換元素としては、Co、Mn、Ni、Cu、Znなどが可能であるが、Co置換のフェライトは異方性が大きいため、ナノ粒子にした場合の利点が大きい。スピネルフェライトのほかに、六方晶のマグネトプランバイト(M)型フェライト、あるいは希土類元素を含むガーネットフェライトナノ粒子も可能である。特に、BaあるいはSr置換のM型フェライトは、永久磁石としても利用されており、磁気異方性が大きいため、より小さい粒径まで強磁性を保てる。
【0023】
フェライト酸化物以外に、Fe、Co、Mnなどの磁性元素を含む、La−(Fe、Co)−O系あるいはLa−Sr−Mn−O系などのペロブスカイト構造の磁性酸化物ナノ粒子も合成可能である。以上の鉄以外の元素を含む場合には、前駆体溶液11として、各元素のアセチルアセトネート、カルボニルなどの錯体、あるいは塩化物・硝酸塩などの塩類を用いることができる。
【0024】
前駆体溶液11の溶媒としては、水あるいは各種アルコールなどOH基を有する各種極性溶媒、あるいはエーテル類などの無極性の各種有機溶媒が可能であるが、これは溶解させる金属錯体、金属塩の溶解特性に応じて選択する必要がある。また、アルコール類などの還元性溶媒の方が、ナノ粒子は生成されやすい。
【0025】
前駆体溶液11には、ナノ粒子分散剤を添加した方が好ましい。一般的に、分散剤添加により粒成長が抑制され、また合成後も凝集しにくく、安定性が高いためである。前駆体溶液11に分散剤を添加した場合には、無機ナノ粒子表面を有機分散剤が覆うため、無機・有機複合ナノ粒子が得られる。分散剤としては、各種市販の界面活性剤が利用可能であるが、水とエタノールなどの溶媒を用いる場合には、ポリビニールピロリドン(PVP)などのポリマー、クエン酸、L−アスコルビン酸などが、有機溶媒を用いる場合には、オレイン酸などのカルボン酸、オレイルアミンなどのアミン類、ドデカンチオールなどのチオール類などが使用可能である。バイオ用途を考慮すると、一般的にはPVPなどのポリマー類が望ましいが、付加させる生体物質の種類あるいは表面電荷なども考慮して、個別に検討する必要がある。前駆体溶液中の前駆体および分散剤の濃度は、限定されないが、例を挙げれば、それぞれ0.1mMから100mMである。
【0026】
また、前駆体溶液11に酸化剤を添加してもよい。しかし、貴金属以外で特殊な分散剤を用いない場合には、通常酸化剤を添加しなくとも、合成と同時あるいは合成後に一定時間放置することにより、自然酸化して酸化物ナノ粒子を生成することができる。
【0027】
なお、マグネタイトあるいはマグへマイトなどの磁性鉄酸化物は、ミクロンオーダの粒径までは強磁性を示すが、粒径がナノメートルオーダの領域まで小さくなってくると、熱擾乱によって強磁性の磁気秩序が保てなくなり、超常磁性を示すようになる。超常磁性状態では、一般に飽和磁化の値は小さくなるが、磁化の残留成分がないため凝集しにくく、また超常磁性ナノ粒子は粒径が小さく表面積が大きくなるために、表面に多くの生体物質を付加させることも可能になる。一方、強磁性状態の微粒子は、飽和磁化が大きいため外部磁場での操作がしやすいが、粒径を大きくする必要があるため、表面積が小さくなり生体物質の付加量は小さくなる。目的によっては、粒径の大きい強磁性微粒子を用いる方が良い場合もあるが、最近のバイオ用途では、粒径の小さな超常磁性ナノ粒子への要求が大きくなっている。
【0028】
図1に示すように、反応容器12は、紫外光を透過可能な石英製、または紫外透過樹脂製のフラスコから成っている。反応容器12は、前駆体溶液11を収納している。
【0029】
図1に示すように、紫外レーザー光発生装置13は、反応容器12に収納された前駆体溶液11に、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射可能に設けられている。紫外レーザー光発生装置13としては、F、ArF、KrF、XeCl、XeFなどの各種ハロゲンガスを用いるエキシマレーザー装置、およびNd−YAGレーザーなどの固体レーザー光を波長変換素子によって紫外領域まで短波長化したレーザー光などが利用可能である。しかし、これらのレーザー装置は、一般に大型であるため、製造装置全体を小型化するためには、通常の円柱状ではなく円盤状のレーザー結晶を用いる小型のロータリディスクレーザー装置などが好ましい。
【0030】
さらに小型化するためには、半導体レーザダイオードモジュールを用いることも可能である。最近では、数十mW以上の出力を持つ375nmあるいは400nm前後のものも市販されるようになっているため、これらを複数束ねて高出力化し、利用することも可能である。また、半導体レーザダイオードモジュールは低出力であるため、微小空間で反応を行うマイクロリアクタへの照射に利用するのが好ましい。
【0031】
前駆体溶液11が鉄などの遷移元素を含む場合には、分解還元されにくいため、通常のビーカあるいはフラスコレベルの体積への照射には、紫外レーザパワーを100mJ以上にすることが好ましい。
【0032】
図1に示すように、温度制御器14は、マグネティックスターラと一体型の装置から成り、反応容器12を上載可能になっている。温度制御器14は、ペルチェ素子などの冷却素子およびヒータの両方が組み込まれている。温度制御器14は、紫外レーザー光照射中の前駆体溶液11が、反応熱または紫外レーザー光によって一般的に昇温するため、反応中の前駆体溶液11の温度条件を一定にするよう、前駆体溶液11の温度を制御可能になっている。また、温度制御器14は、紫外レーザー光照射中の前駆体溶液11の均一な反応を促進するよう、マグネティックスターラにより、前駆体溶液11を十分に撹拌可能になっている。
【0033】
図1に示すように、冷却器15は、冷却水チラー15aを有している。冷却器15は、沸点の低い溶媒を用いたとき紫外レーザー光照射中に溶媒が蒸発するため、その溶媒蒸気を冷却して還流を行うよう、反応容器12の上部開口に配置されている。
【0034】
本発明の実施の形態の磁性酸化物ナノ粒子の製造方法は、磁性酸化物ナノ粒子の製造装置10を使用して磁性酸化物ナノ粒子を生成することができる。本発明の実施の形態の磁性酸化物ナノ粒子の製造方法では、反応容器12に収納された前駆体溶液11に、紫外レーザー光発生装置13により、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射して、磁性酸化物ナノ粒子を析出させることができる。
【0035】
なお、分解反応の促進および撹拌の効果を得るために、紫外レーザー光照射中の前駆体溶液11に超音波振動を加えることが好ましい。また、照射後に生成されるナノ粒子コロイド溶液には、未分解の金属塩・金属錯体または分解後の各種イオン類などの生成物が含まれているため、これらを除去するため、ナノ粒子コロイド溶液に対してフィルタあるいは脱塩装置による処理を行うことが好ましい。
【0036】
このように、本発明の実施の形態の磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置10は、バイオ用途などへ利用可能な粒度の揃った良質な磁性酸化物ナノ粒子を容易に製造することができる。また、磁性酸化物ナノ粒子の回収効率に優れている。紫外レーザー光の照射のみの一段での合成であるため、前駆体溶液11からオンデマンドで容易に磁性酸化物ナノ粒子を製造することができる。
【実施例1】
【0037】
以下に本発明の実施例を示す。
表1に、Fe酸化物ナノ粒子合成用の前駆体溶液11の調製表を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
前駆体溶液11に、KrFエキシマレーザー発生装置(波長248nm、LAMBDA PHYSIK AG社製)を用いて、紫外レーザー光を照射した。レーザー照射条件は、レーザパワー〜300mJ、パルスレート40Hz、照射時間20分である。
【0040】
紫外レーザー光照射後のナノ粒子コロイド溶液は、鉄アセチルアセトネート錯体溶液の赤色から透明な茶色へと変化し、ポリオールプロセスで合成したマグネタイトコロイド溶液とほぼ同様の色を示した。また、長期間保存後も沈殿は見られなかった。
【0041】
合成されたナノ粒子コロイド溶液に対して、動的光散乱法(DLS)に基づいた粒度分布の測定を行った(Malvern Instruments Ltd社製)。その測定結果を、図2に示す。図2に示すように、粒径100nm付近に非常にシャープな分布のピークが得られた。分布曲線へのガウシアンフィッティングにより、変動係数(標準偏差σ/平均μ)の評価を行った結果、粒度分布の変動係数が10%を切っており、非常に揃った粒度であることがわかった。
【0042】
振動試料型磁力計(VSM、玉川製作所製)を用い、最大磁場30kOeまで印加して、室温でのナノ粒子の磁化測定を行った。その結果を、図3に示す。図3に示すように、保磁力および残留成分のない超常磁性的な挙動を示すループが得られた。合成されたナノ粒子は、非磁性のヘマタイトα−Fe相ではなく、バルク状態で強磁性を示すマグヘマイトγ−FeあるいはマグネタイトFe相であると考えられる。
【0043】
金属原料として鉄アセチルアセトネートの代わりに塩化鉄を用い、その他の条件は表1に基づいた調製溶液で、同様の実験を行った。この場合には、黒色のナノ粒子コロイド溶液が得られたが、TEM観察およびEDS分析の結果、塩化鉄がほとんど還元されず、塩化物の粒子のみが観察された。
【実施例2】
【0044】
金属原料錯体として鉄ペンタカルボニルを用いて、実施例1と同一条件で、合成実験を行った。鉄ペンタカルボニルは、液体で大気中で反応するため、アルゴンガスを反応容器12内に流し不活性雰囲気とした。合成されたナノ粒子コロイド溶液に対して、DLSによる粒度分布測定を行い、その結果を図4に示す。図4に示すように、実施例1と同様に、シャープな粒度分布が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態の磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置を示す側面図である。
【図2】図1に示す磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置により、前駆体溶液として鉄アセチルアセトネート錯体を用いて合成されたFe酸化物ナノ粒子の動的光散乱法による粒度分布を示すグラフである。
【図3】図2に示すFe酸化物ナノ粒子の磁化ループを示すグラフである
【図4】図1に示す磁性酸化物ナノ粒子の製造方法および磁性酸化物ナノ粒子の製造装置により、前駆体溶液として鉄ペンタカルボニル錯体を用いて合成されたFe酸化物ナノ粒子の動的光散乱法による粒度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
10 磁性酸化物ナノ粒子の製造装置
11 前駆体溶液
12 反応容器
13 紫外レーザー光発生装置
14 温度制御器
15 冷却器
15a 冷却水チラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属錯体または金属塩を含有する前駆体溶液に、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射して、磁性酸化物ナノ粒子を析出させることを、特徴とする磁性酸化物ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
鉄錯体または鉄塩を含有する前駆体溶液に、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射して、超常磁性または強磁性を示す鉄酸化物ナノ粒子を析出させることを、特徴とする磁性酸化物ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
金属錯体または金属塩を含有する前駆体溶液を収納するための、紫外光を透過可能な反応容器と、
前記反応容器に収納された前記前駆体溶液に、波長400nm以下の紫外レーザー光を照射可能に設けられた紫外レーザー光発生装置とを、
有することを特徴とする磁性酸化物ナノ粒子の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−251871(P2008−251871A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91898(P2007−91898)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(506214460)株式会社スリー・アール (7)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】