説明

磁歪式トルクセンサ、この磁歪式トルクセンサを搭載した電動アシスト自転車及び電動パワーステアリング装置

【課題】検出精度の高い磁歪式トルクセンサを提供することを課題とする。
【解決手段】回転軸に形成された磁歪部と、この磁歪部の外周を囲うよう配置されるボビンと、このボビンに巻かれて磁歪部の磁気特性の変化を検出するコイルとからなる磁歪式トルクセンサにおいて、ボビンは、磁歪部に接触した状態で、磁歪部に対して相対回転可能に嵌合されている。
【効果】ボビンが磁歪部に接触しているため、コイルを磁歪部の近傍に配置することができる。コイルとボビンとが近いため、コイル又はボビンに生じた温度変化が素早く他方の部材に伝わる。素早く伝えることで、コイルと磁歪部との間の温度差を素早く補正する。素早く補正することで、磁歪式トルクセンサの高い検出精度を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪式トルクセンサ、磁歪式トルクセンサを搭載した電動アシスト自転車及び磁歪式トルクセンサを搭載した電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の踏力に応じてモータが作動し、このモータの力で乗員の踏力を補助する電動アシスト自転車が広く知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1に示されるような、電動アシスト自転車は、乗員の踏力を検知するために、磁歪式トルクセンサを備えている。磁歪式トルクセンサは、クランク軸の外周に沿って配置される部材であり、コイルと磁歪部とを備えている。
【0004】
乗員がペダルを漕ぐことで、クランク軸に捩りトルクが発生する。磁歪部がクランク軸の外周面に形成されているため、クランク軸に捩りトルクが発生することにより、磁歪部の磁界が変化する。磁界の変化を検出し、変化に応じて制御部がモータを作動させる。モータは、スプロケット及びチェーンを介して後輪を回転させる。乗員の足踏みトルクに、モータが後輪を回転させる補助トルクが加わることにより、乗員は小さい踏力で電動アシスト自転車を走行させることができる。
【0005】
ところで、電動アシスト自転車は、様々な温度条件下で走行する。例えば、走行中に、気温が変化することがある。磁歪式トルクセンサを構成するコイルと磁歪部とは、それぞれ別の部材に支持されているため、外気温の変化がコイルに伝わるまでの時間と、磁歪部に伝わるまでの時間とに差が生じ得る。即ち、コイルと磁歪部との温度が異なる状況が生じ得る。コイルと磁歪部との温度が異なることで、検出される足踏みトルクに誤差が生じる。検出された足踏みトルクが実際の踏力よりも小さい場合は、本来得られるモータの補助力よりも小さな補助トルクがモータから出力される。モータからの補助トルクが小さいと、乗員は大きな力でペダルを漕がなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−53069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、検出精度の高い磁歪式トルクセンサの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、回転軸に形成された磁歪部と、この磁歪部の外周を囲うよう配置されるボビンと、このボビンに巻かれて磁歪部の磁気特性の変化を検出するコイルとからなる磁歪式トルクセンサにおいて、ボビンは、磁歪部に接触した状態で、磁歪部に対して相対回転可能に嵌合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、ボビンは、回転軸に支持されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、ボビンの外周面は、隙間を有してケースに覆われていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、磁歪部は、回転軸の全周にわたって形成された、実質的に均一な厚さの1枚の磁歪膜であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明では、コイルに通電するための端子は、ボビンからケースを貫通し、端子とケースとの間には、弾性部材が介在していることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の磁歪式トルクセンサを、自転車用ペダルクランクによって発生した、足踏みトルクを検出するための足踏みトルクセンサとして用い、足踏みトルクに基づいて、電動モータが発生した補助トルクを駆動車輪に付加する電動アシスト自転車に搭載されるものであり、回転軸は、中空軸によって構成され、この中空軸の中には、ペダルクランクを有したクランク軸が相対回転可能に嵌合され、このクランク軸は、中空軸に対してワンウェイクラッチによって連結されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、回転軸の軸方向の端部には、ワンウェイクラッチを収納するために拡径された収納部が形成され、この収納部の軸方向の一端面は、ボビンの軸方向の位置決めをなしていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の磁歪式トルクセンサは、ステアリングハンドルで発生したステアリング系の操舵トルクを検出するための操舵トルクセンサとして用いられ、操舵トルクに基づいて電動モータが発生した補助トルクを操舵車輪に付加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、コイルの巻かれているボビンが、磁歪部に接触した状態で、磁歪部に対して相対回転可能に嵌合されている。ボビンが磁歪部に接触しているため、コイルを磁歪部の近傍に配置することができる。コイルとボビンとが近いため、コイル又はボビンに生じた温度変化が素早く他方の部材に伝わる。素早く伝えることで、コイルと磁歪部との間の温度差を素早く補正する。素早く補正することで、磁歪式トルクセンサの高い検出精度を確保することができる。また、コイルと磁歪部との隙間が小さく近接させられるので高い検出感度を得ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ボビンは回転軸に支持されている。回転軸には、磁歪部が形成されており、この磁歪部にボビンが接触している。このため、回転軸に対して曲げ方向の負荷が加わった場合に、ボビンは回転軸に追従する。ボビンにはコイルが巻かれているため、回転軸に対して曲げ方向の負荷が加わった場合に、コイルも追従する。コイルを回転軸に追従させることで、コイルと磁歪部との距離を一定に保つことができる。一定に保つことで磁歪式トルクセンサの検出精度を高めることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、ボビンは、隙間を有してケースに覆われている。ボビンの外周面に隙間があることで、ボビンに巻かれるコイルもケースに対して隙間を有して覆われる。コイルとケースとの間に隙間があることで、この隙間が空気の層となる。空気の層を有することで、ケースの外の温度変化がコイルに伝わり難くなる。ケース外部の温度変化を伝え難くすることにより、コイルと磁歪部との温度差が生じ難くなり、磁歪式トルクセンサの検出精度を高めることができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、磁歪部は、回転軸の全周にわたって形成された、実質的に均一な厚さの1枚の磁歪膜である。均一な厚さの磁歪膜を用いることで、磁歪部全体の温度が安定する。磁歪部全体の温度が安定することで、検出精度がさらに高まる。
【0020】
請求項5に係る発明では、端子とケースとの間には、弾性部材が介在している。弾性部材が介在していることで、外部からケースに伝わる振動を弾性部材で吸収することができる。即ち、ケースから端子へ向かって外力が加わることを防止できる。端子へ外力が加わることを防止することで、ボビンへ外力が加わることを防止し、ボビン及びボビンに巻かれるコイルを有効に保護することができる。また、ケースからの熱を弾性部材によって断熱できる。
【0021】
一方、回転軸に力が加わり、この力がボビンに伝わることがある。ボビンから延びる端子とケースとの間には、弾性部材が介在している。弾性部材が介在していることで、ケースと端子との間に加わる力を吸収することができる。相対的にケースから受ける力を小さくすることができ検出精度を向上できる。
【0022】
請求項6に係る発明では、磁歪式トルクセンサを電動アシスト自転車に搭載した。磁歪式トルクセンサは、回転軸で直接ボビンを支持する構成である。回転軸とボビンとをそれぞれ別部材で支持する構成に比べ、磁歪式トルクセンサを小型化することができる。磁歪式トルクセンサを小型化することにより、クランク軸近傍をコンパクトにすることができる。ペダルの踏み操作の障害となり得る部品をコンパクト化することにより、これらの部品をペダルの回転する軌道から離して配置することができる。離して配置することにより、ペダルを踏みやすくすることができる。また、コンパクト化することにより、外観性を高めることができる。
【0023】
請求項7に係る発明では、回転軸の端部を拡径して収納部を形成し、この収納部の一端面が、ボビンの軸方向の位置決めをなしているので、コイル位置と磁歪部との相対位置を正確に決めることができるばかりか、位置決め用の新たな部材が不要なので小型化することができる。また、ボビンの軸方向の位置決めをし、軸方向への移動を防止することにより、路上の段差等の乗り越え時に振動や衝撃を受けても、検出を安定させることができ、磁歪式トルクセンサの検出精度を高めることができる。
【0024】
請求項8に係る発明では、磁歪式トルクセンサを電動パワーステアリング装置に搭載した。磁歪式トルクセンサは、回転軸で直接ボビンを支持する構成である。回転軸とボビンとをそれぞれ別部材で支持する構成に比べ、磁歪式トルクセンサを小型化することができる。ケースなどの別部品に依存しないので、磁歪式トルクセンサ単独で性能を出すことができ、電動パワーステアリングの形式によらずに同一のものが搭載できる。また、磁歪式トルクセンサの外形を小型化することができるので、電動パワーステアリング装置を小径化してコンパクトにでき、今まで搭載できなかった車両にも搭載を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る磁歪式トルクセンサを搭載した電動アシスト自転車の側面図である。
【図2】図1に示されるパワーユニットの模式図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図3に示された回転軸の斜視図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図5に示された減速機とモータとの関係を説明する図である。
【図7】本発明の実施例2に係る磁歪式トルクセンサを搭載した電動パワーステアリング装置の模式図である。
【図8】図7に示された電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】図9に示された磁歪式トルクセンサの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、電動アシスト自転車10(以下、単に「電動自転車10」という。)は、乗員の足踏みトルクと、乗員の足踏みトルクに基づいて、電動モータが発生する補助トルクとにより走行する車両である。
【0028】
このような電動自転車10は、ヘッドパイプ11と、このヘッドパイプ11に操舵自在に取付けられるフロントフォーク12と、このフロントフォーク12の下端に回転自在に取付けられる前輪13と、ヘッドパイプ11の上部に取付けられ車体を操舵するハンドル14と、ヘッドパイプ11から下方へ且つ車体後方に向かって延びているダウンフレーム15と、このダウンフレーム15の後端から車体後方に延びているロアフレーム16と、このロアフレーム16の後端部から上方へ延びているシートパイプ17と、このシートパイプ17の上端に設けられ乗員が着座するシート18と、このシート18の下方でシートパイプ17に取付けられているバッテリ21と、シートパイプ17の上部及び下部から後方に向かって延びる略V字形状のリヤフレーム22と、このリヤフレーム22の後端に回転可能に支持されている後輪24と、乗員が踏むペダル58を含み後輪24を駆動するパワーユニット30とからなる。
【0029】
図2に示すように、パワーユニット30は、乗員がペダル58を踏むことで捩りトルクを検出する磁歪式トルクセンサ40と、後輪24に取付けられ走行速度を計測するスピードセンサ31と、これらのスピードセンサ31及び磁歪式トルクセンサ40が接続されている制御部33とを備えている。制御部33は、磁気特性の変化から乗員の踏力を計算すると共に、回転数から車速を計算する。計算により得られた値に基づき、制御部33は電動モータ32(以下単に「モータ32」という。)を制御する。
【0030】
モータ32は、制御部33の制御信号に基づき、踏力トルクに応じた補助トルクを発生して、減速機34に伝える。減速機34は、補助トルクを加えるための補助スプロケット35に接続され、補助スプロケット35は、チェーン36を介して後輪24に接続されている。電動自転車10は、乗員がペダル58を踏むことによる足踏みトルクに、モータ32が発生した補助トルクを加えた複合トルクによって走行する。
磁歪式トルクセンサ40について、次図以降で詳細に説明する。
【0031】
図3に示すように、磁歪式トルクセンサ40は、先端にペダル(図1、符号58)が取付けられているペダルクランク41と、このペダルクランク41の端部(図面左側)に設けられたワンウェイクラッチ43と、このワンウェイクラッチ43を介してペダルクランク41に接続される回転軸44と、この回転軸44の外周面に形成されている磁歪部45,46(図4も参照)と、これらの磁歪部45,46の外周に配置されているコイルユニット70とからなる。
【0032】
回転軸44は、中空軸によって構成されている。この中空軸の中には、ペダルクランク41を有したクランク軸56が相対回転可能に嵌合されている。このクランク軸56は、中空軸に対してワンウェイクラッチ43によって連結されている。
【0033】
クランク軸56の両端部は、一端側が、回転軸44のすべり軸受47を介して、軸受51によりケース48に回転可能に支持され、他端側が、軸受52によりケース48に回転可能に支持され、両端のみがケース48から突出すると共に、回転軸44はクランク軸56に回転可能に支持されている。従って、磁歪式トルクセンサ40は、ケース48に回転可能に支持されている。ケース48は、開放した一端がリッド48bによって塞がれており、内部に回転軸44と、磁歪式トルクセンサ40とを収納している。リッド48bは、ケース本体48aにボルト53によって取付けられている。
【0034】
ペダルクランク41は、クランク軸56と、このクランク軸56の両端からクランク軸56に対して垂直に延びるクランクアーム57,57と、クランクアーム57,57の先端に取付けられているペダル(図1、符号58)とからなる。
【0035】
図4も参照し、クランク軸56の外周に配置される回転軸44の一端には、セレーション部61が形成されている。このセレーション部61に、乗員の踏力を後輪(図1、符号24)に伝達するための駆動スプロケット62が嵌合されている。図1も参照し、駆動スプロケット62は、チェーン36を介して後輪24に接続されている。
【0036】
一方、回転軸44の他端にはワンウェイクラッチ43を収納するために拡径された収納部65が形成されている。収納部65は、周方向に広がる拡径部65aと、この拡径部65aから延びワンウェイクラッチ43を囲う壁部65bとからなる。壁部65bは、磁歪部45,46から離れる方向に延びている。
【0037】
図3に戻り、コイルユニット70は、回転軸44に支持され磁歪部45,46に接触するボビン71と、このボビン71に巻かれ磁歪部45,46で発生した磁気特性の変化を検出するコイル72,73と、これらのコイル72,73及びボビン71を囲うハウジング74と、このハウジング74の外周面に固定されているヨーク75とからなる。
【0038】
回転軸44には、磁歪部45,46が形成されており、この磁歪部45,46にボビン71が接触している。このため、回転軸44に対して曲げ方向の負荷が加わった場合に、ボビン71は回転軸44に追従する。追従するために、磁歪部45,46とコイル72,73との距離の変化を抑制することができる。磁歪部45,46とコイル72,73との距離の変化を抑制することにより、磁歪式トルクセンサ40の検出感度を安定させ検出精度を高めることができる。
【0039】
加えて、ボビン71が磁歪部45,46に接触しているため、コイル72,73を磁歪部45,46の近傍に配置することができる。コイル72,73とボビン71とが近いため、大きい感度を得ることができるばかりか、コイル72,73又はボビン71に生じた温度変化が素早く他方の部材に伝わる。素早く伝えることで、コイル72,73と磁歪部45,46との間の温度差を素早く小さくなるように補正する。素早く補正することで、磁歪式トルクセンサ40の検出を安定化させ、高い検出精度を確保することができる。
【0040】
ボビン71を覆っているハウジング74は、回転軸44に接触しない。必要な部位のみを接触させることで、回転軸44が回転する際の抵抗を低減させることができる。
【0041】
ハウジング74及びヨーク75の外周面は、隙間78を有してケース48に覆われている。即ち、ハウジング74に覆われているボビン71の外周面もケース48に対して隙間78を有して設けられている。ボビン71の外周に隙間78があることで、ボビン71に巻かれるコイル72,73もケース48に対して隙間78を有して覆われる。コイル72,73とケース48との間に隙間78があることで、この隙間78が空気の層、即ち断熱層となる。空気の層を間に有することで、ケース48の外の温度変化がコイル72,73に伝わり難くなる。外部の温度変化がコイル72,73に伝わり難くなることにより、急な温度変化を防止することができる。急な温度変化を防止することで、コイル72,73の検出を安定化させ、検出精度を高めることができる。
【0042】
加えて、ハウジング74とケース48との間に隙間78を有していることにより、回転軸44に曲げが入力されても、ハウジング74(ボビン71)がケース48と回転軸44とに挟まれることを防止することができる。ボビン71が回転軸44とケース48とにはさまれて圧迫されることを防止できる。
【0043】
ボビン71からケース48を貫通し、コイル72,73に通電するための端子81がハウジング74に一体的に形成されている。端子81は、通電部81aと、この通電部81aを囲う周壁部81bとからなる。
【0044】
端子81とケース48との間には、弾性部材としてのシール83が介在されている。シール83が介在していることで、外部からケースに伝わる振動をシール83で吸収することができる。即ち、ケース48から端子81へ向かって外力が加わることを防止できる。端子81へ外力が加わることを防止することで、ボビン71へ外力が加わることを防止することができる。ボビン71への外力の伝達を防止することで、より安定した状態で回転軸44の捩りトルクを検出することができる。より安定した状態で捩りトルクを検出することで、検出精度を高めることができる。弾性部材には、シール83の他にも板ばね等の任意の部材を用いることができる。
【0045】
一方、回転軸44に力が加わり、この力がボビン71に伝わることがある。ボビン71から延びる端子81とケース48との間には、シール83が介在している。シール83が介在していることで、ケース48と端子81との間に加わる力を吸収することができる。相対的にケース48から受ける力を小さくすることができる。
【0046】
なお、弾性部材にシール83を用いた場合は、ケース48によって囲われた領域の密閉性を高めることができる。密閉性を高めることにより、ケース48内の隙間78の急激な温度変化を防止することができる。急な温度変化を防止することで、コイル72,73の検出精度を高めることができる。
【0047】
ハウジング74は、一端が板ばね85に接触している。この板ばね85によりハウジング74は、回転軸44の収納部65に向かって付勢されている。ハウジング74は、他端が収納部65の拡径部65aに接触することで、位置決めされている。即ち、ハウジング74に覆われているボビン71も、収納部65によって位置決めされている。収納部65の一端面が、ボビン71の軸方向の位置決めをなしている。ボビン71の軸方向の位置決めをし、軸方向への移動を防止することにより、コイル位置と磁歪部との相対位置を正確に決めることができるばかりか位置決め用の新たな部材が不要なので小型化できる。また、磁歪式トルクセンサ40の検出精度を高めることができる。
【0048】
また、回転軸44は、ワンウェイクラッチ43を収納するための必要な部位のみを拡径している。必要な部位のみを拡径することで、回転軸44の小型化を図ることができる。
加えて、回転軸44の一部を利用して位置決めを行っているため、位置決めを行うための部材を別途追加する必要がない。数ない部品点数で位置決めを行うことができ、有益である。
【0049】
磁歪部45,46は、回転軸44の全周にわたって形成された、実質的に均一な厚さの1枚の磁歪膜である。均一な厚さの磁歪膜を用いることで、磁歪部45,46全体の温度が安定する。磁歪部45,46全体の温度が安定することで、捩りトルクの検出精度が高まる。
【0050】
乗員がペダル(図1、符号58)を踏むことで、クランクアーム57及びクランク軸56は回転する。一方、回転軸44は、ワンウェイクラッチ43を介してクランク軸56に接続されている。ワンウェイクラッチ43を介していることにより、車両が前進する方向にクランク軸56を回転させている場合にのみ、回転軸44は回転する。コイルユニット70は回転しない。コイルユニット70に一体的に形成されている端子81がケース48から貫通することで、コイルユニット70の回り止めの役割を果たしている。端子81を利用してコイルユニット70の回転を防止することができる。
【0051】
本発明に係る電動自転車によれば以下のことがいえる。
電動自転車10に搭載される磁歪式トルクセンサ40は、回転軸44で直接ボビン71を支持する構成である。回転軸44とボビン71とをそれぞれ別部材で支持する構成に比べ、磁歪式トルクセンサ40を小型化することができる。磁歪式トルクセンサ40を小型化することにより、クランク軸56近傍をコンパクトにすることができ、乗員が漕ぐペダルクランク41のペダルの踏み操作の障害となり得る部品をコンパクト化することにより、これらの部品をペダルの回転する軌道から離して配置することができる。離して配置することにより、ペダルを踏みやすくすることができる。また、コンパクト化することにより、外観性を高めることができる。
【0052】
図5及び図6に示すように、モータ32は、車両の進行方向に対して傾けた状態で車体87に取付けられている。車両の進行方向に対して傾けることで、車両の幅方向に対してコンパクトにモータ32を配置することができる。車両の幅方向に対してコンパクトにすることで、乗員の足がモータ32に接触することを防止することができる。
【0053】
減速機34は、モータ32の出力軸に取付けられたウォーム32aと、ウォーム32aに噛み合うウォームホイール34aとからなる、ウォームギヤ機構である。
減速機34及び補助スプロケット35を支持する補助トルク用回転軸91は、軸受92,93を介して車体87に取り付けられている。補助トルク用回転軸91は、内軸94と外軸95とからなる二重軸の構造を呈している。即ち、内軸94を外軸95で囲い、内軸94と外軸95とは、ワンウェイクラッチ96によって連結されている。
【0054】
補助トルク用回転軸91の内軸94の先端にセレーション部94aが形成されており、このセレーション部94aに補助スプロケット35が嵌合されている。また、補助トルク用回転軸91の外軸95に減速機34が嵌合されている。
【0055】
モータ32の軸部32aが回転することで、この軸部32aに接続される減速機34及び外軸95が回転する。軸部32aが車両の前進する方向に回転した場合のみ、ワンウェイクラッチ96を介して内軸94が回転する。内軸94が回転することで、補助スプロケット35が回転する。仮に補助スプロケット35に接続されるチェーン36が、車両の前進する方向と逆に変位した場合には、内軸94のみが回転する。外軸95、減速機34、モータ32の軸部32aは回転しない。
【0056】
本発明に係る磁歪式トルクセンサ40は、車両の電動パワーステアリング装置にも用いることができる。電動パワーステアリング装置が搭載された車両を例に以下説明する。
【実施例2】
【0057】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7に示されるように、電動パワーステアリング装置100は、車両のステアリングハンドル121から車両の操舵車輪129,129(例えば前輪)に至るステアリング系120と、このステアリング系120に補助トルクを加える補助トルク機構140とからなる。
【0058】
ステアリング系120は、ステアリングハンドル121にステアリングシャフト122及び自在軸継手123,123を介して回転軸124(ピニオン軸124)を連結し、回転軸124にラックアンドピニオン機構125を介してラック軸126を連結し、ラック軸126の両端に左右のタイロッド127,127及びナックル128,128を介して左右の操舵車輪129,129を連結したものである。
【0059】
ラックアンドピニオン機構125は、回転軸124に形成されたピニオン131と、ラック軸126に形成されたラック132とからなる。
【0060】
ステアリング系120によれば、運転者がステアリングハンドル121を操舵することで、この操舵トルクによりラックアンドピニオン機構125及び左右のタイロッド127,127を介して、左右の操舵車輪129,129を操舵することができる。
【0061】
補助トルク機構140は、ステアリングハンドル121に加えたステアリング系120の操舵トルクを操舵トルクセンサとしての磁歪式トルクセンサ150で検出し、この磁歪式トルクセンサ150のトルク検出信号に基づき制御部142で制御信号を発生し、この制御信号に基づき操舵トルクに応じた補助トルクをモータ143で発生し、この補助トルクをウォームギヤ機構144を介して回転軸124に伝達し、さらに、補助トルクを回転軸124からステアリング系120のラックアンドピニオン機構125に伝達するようにした機構である。
【0062】
電動パワーステアリング装置100によれば、運転者の操舵トルクにモータ143の補助トルクを加えた複合トルクにより、ラック軸126で操舵車輪129,129を操舵することができる。
【0063】
図8に示されるように、ラック軸収納部材146は車幅方向(図左右方向)に延びており、ラック軸126を軸方向にスライド可能に収容している。ラック軸126は、ラック軸収納部材146から突出した長手方向両端にボールジョイント147,147を介してタイロッド127,127を連結している。
【0064】
図9及び図10に示すように、磁歪式トルクセンサ150は、回転軸124の外周面に形成されている磁歪部155,156と、これらの磁歪部155,156の外周に配置され回転軸124に対して相対的に回転可能なコイルユニット160とからなる。このような磁歪式トルクセンサ150は、ケース158に軸受159を介して収納されている。ケース158は、複数の部材158a,158bからなる。
【0065】
コイルユニット160は、回転軸124に支持され磁歪部155,156に接触するボビン161と、このボビン161に巻かれ磁歪部155,156で発生した磁気特性の変化を検出するコイル162,163と、これらのコイル162,163及びボビン161を囲うハウジング164と、このハウジング164の外周面に固定されているヨーク165とからなる。ハウジング164及びヨーク165の外周面は、隙間168を有してケース158に覆われている。
【0066】
ボビン161からケース158を貫通し、コイル162,163に通電するための端子171がハウジング164に一体的に形成されている。端子171は、通電部171aと、この通電部171aを囲う周壁部171bとからなる。端子171とケース158との間には、弾性部材としてのシール173が介在されている。
【0067】
磁歪式トルクセンサ150を電動パワーステアリング装置100に搭載した場合も、磁歪式トルクセンサ150の高い検出精度を確保することができる。
【0068】
加えて、回転軸124とボビン161とをそれぞれ別部材で支持する構成に比べ、磁歪式トルクセンサ150を小型化することができる。磁歪式トルクセンサ150を小型化することで、電動パワーステアリング装置100をコンパクトにすることができる。ケースなどの別部品に依存しないので、磁歪式トルクセンサ単独で性能を出せ、電動パワーステアリングの形式によらずに同一のものが搭載できる。また、磁歪式トルクセンサの外形を小型化することができるので、電動パワーステアリング装置を小径化してコンパクトにでき、今まで搭載できなかった車両にも搭載を可能にすることができる。
【0069】
尚、本発明に係る磁歪式トルクセンサは、電動アシスト自転車又は電動パワーステアリング装置に搭載する場合を例に説明したが、その他の用途にも適用することができ、これらの形式のものに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の磁歪式トルクセンサは、電動アシスト自転車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0071】
10…電動アシスト自転車(電動自転車)、24…後輪(駆動車輪)、32…モータ、40,150…磁歪式トルクセンサ、41…ペダルクランク、43…ワンウェイクラッチ、44,124…回転軸、45,46,155,156…磁歪部、48,158…ケース、56…クランク軸、65…収納部、71,161…ボビン、72,73,162,163…コイル、78,168…隙間、81,171…端子、83,173…シール(弾性部材)、100…電動パワーステアリング装置、120…ステアリング系、121…ステアリングハンドル、129…操舵車輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に形成された磁歪部と、この磁歪部の外周を囲うよう配置されるボビンと、このボビンに巻かれて前記磁歪部の磁気特性の変化を検出するコイルと、からなる磁歪式トルクセンサにおいて、
前記ボビンは、前記磁歪部に接触した状態で、前記磁歪部に対して相対回転可能に嵌合されていることを特徴とする磁歪式トルクセンサ。
【請求項2】
前記ボビンは、前記回転軸に支持されていることを特徴とする請求項1記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項3】
前記ボビンは、隙間を有してケースに覆われていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項4】
前記磁歪部は、前記回転軸の全周にわたって形成された、実質的に均一な厚さの1枚の磁歪膜であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項5】
前記コイルに通電するための端子は、前記ボビンから前記ケースを貫通し、
前記端子と前記ケースとの間には、弾性部材が介在していることを特徴とする請求項3記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の磁歪式トルクセンサは、自転車用ペダルクランクによって発生した、足踏みトルクを検出するための足踏みトルクセンサとして用いられ、前記足踏みトルクに基づいて、電動モータが発生した補助トルクを駆動車輪に付加する電動アシスト自転車に搭載されるものであり、
前記回転軸は、中空軸によって構成され、この中空軸の中には、前記ペダルクランクを有したクランク軸が相対回転可能に嵌合され、
このクランク軸は、前記中空軸に対してワンウェイクラッチによって連結されていることを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項7】
前記回転軸の軸方向の端部には、前記ワンウェイクラッチを収納するために拡径された収納部が形成され、
この収納部の軸方向の一端面は、前記ボビンの軸方向の位置決めをなしていることを特徴とする請求項6記載の電動アシスト自転車。
【請求項8】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の磁歪式トルクセンサは、ステアリングハンドルで発生したステアリング系の操舵トルクを検出するための操舵トルクセンサとして用いられ、前記操舵トルクに基づいて電動モータが発生した補助トルクを操舵車輪に付加することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−113713(P2013−113713A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260134(P2011−260134)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】