説明

磁気インク文字読み取り方法および磁気インク文字読み取り装置

【課題】大型化や高コスト化を招くことなく、磁気インク文字の読み取り動作を高速化できる磁気インク文字読み取り装置を提供すること。
【解決手段】磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド10、磁気ヘッド搬送機構12を駆動制御して小切手2の磁気インク文字2bを読み取る制御部26を有する。制御部26は、着磁処理を行なう往動では、左側走査経路部分112の左端のホームポジション10Aから内側走査経路部分111の内側の加速終了位置10Cまで磁気ヘッド10を加速して、磁気ヘッド10の移動速度を第1速度に到達させる(ステップST11)。読み取りを行なう復動では、折り返し位置10Bから内側走査経路部分111の開始位置10Eまで磁気ヘッド10を加速して磁気ヘッド10の移動速度を第1速度よりも遅い第2速度に到達させ(ステップST21)、その後は内側走査経路部分111を第2速度で移動させる(ステップST22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドを往復移動させて磁気インク文字の着磁および読み取りを行う磁気インク文字の読み取り方法および読み取り装置に関し、特に、その処理時間の短縮化に関する。
【背景技術】
【0002】
小切手などに印刷された磁気インク文字を読み取る磁気インク文字読み取り装置としては、読み取り前に磁気インク文字を磁化する着磁を行うものが知られている。特許文献1の磁気インク文字読み取り装置では、小切手を搬送するための搬送路に永久磁石と磁気ヘッドを搬送方向の上流側からこの順番で配置し、小切手が永久磁石を通過する際に磁気インク文字の着磁を行い、小切手が磁気ヘッドを通過する際に磁気インク文字の読み取りを行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−283401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、磁気ヘッドの側を小切手などの磁気インク文字に沿って往復移動させて読み取り動作を行う場合には、磁気ヘッドの往動時に当該磁気ヘッドを利用して磁気インク文字を着磁し、その復動時に着磁した磁気インク文字を読み取るようにすることが考えられる。この場合、磁気インク文字を精度良く読み取るためには、読み取り時における磁気ヘッドの移動速度を一定に保持する必要がある。このため、磁気ヘッドの復動時においては、その折り返し位置から磁気インク文字の読み取り開始位置に至るまでの間に、磁気ヘッドが一定の移動速度に到達するように加速でき、読取開始位置からは磁気ヘッドを一定速度で移動できるように、磁気ヘッドの移動速度制御を行う必要がある。
【0005】
このような磁気インク文字読み取り方法あるいは磁気インク文字読み取り装置の処理時間の短縮化を図るためには、読み取り時の磁気ヘッドの移動速度を高くすればよい。しかし、磁気ヘッドの移動速度を高めるためには、磁気ヘッドの駆動用モーターとして加速性能の高いものを用いるか、或いは、磁気ヘッドを加速するための移動距離を長くする必要がある。前者の場合には大型あるいは高価なモーターが必要になり、後者の場合には磁気ヘッドの移動距離が長くなるので装置の大型化を招いてしまう。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、装置の大型化やコスト高を招くことなく、磁気インク文字の読み取り処理時間の短縮化を達成可能な磁気インク文字読み取り方法および磁気インク文字読み取り装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、
磁気ヘッドを所定の走査経路に沿って往動させながら当該走査経路上に位置する磁気インク文字の着磁を行う着磁工程と、
前記磁気ヘッドを前記走査経路に沿って復動させながら、前記走行経路上における所定の読み取り区間内において着磁処理された前記磁気インク文字の読み取りを行う読み取り工程とを有し、
前記着磁工程では、前記走行経路上における前記磁気ヘッドの移動開始位置から前記読み取り区間内に設定した加速終了位置までの区間が前記磁気ヘッドを加速する着磁用加速区間として定められていることを特徴とする。
【0008】
本発明は、磁気インク文字の読み取り処理時間の短縮化を図るために、読み取りの前に行なわれる磁気インク文字の着磁処理に着目したものである。すなわち、着磁処理では走行経路上における読み取り区間内において磁気ヘッドの移動速度を一定に保持する必要がない点に着目して、往動時には、移動開始位置から読み取り区間の内側までを磁気ヘッドの加速区間として定めた。この結果、既存の走査経路内に磁気ヘッドを加速するための移動距離を長く確保できるので、装置の大型化を招くことなく往動時の磁気ヘッドの移動速度を高めることができる。また、磁気ヘッドの駆動用モーターとして加速性能の高い大型或いは高価な駆動用モーターを用いることなく、往動時の磁気ヘッドの移動速度を高めることができる。従って、装置の大型化やコスト高を招くことなく、磁気インク文字の読み取り処理時間の短縮化を図ることができる。
【0009】
本発明において、前記読み取り工程では、前記走行経路上において、前記磁気ヘッドの折り返し位置から前記読み取り区間の開始位置までが前記磁気ヘッドを加速する読み取り用加速区間とされ、前記読み取り区間が前記磁気ヘッドを一定速度で移動させる読み取り用定速区間とされ、前記読み取り区間の終了位置から前記移動開始位置まで前記磁気ヘッドを減速する読み取り用減速区間とされており、前記着磁工程では、前記読み取り区間内における前記加速終了位置から、当該読み取り区間内に定めた減速開始位置までが前記磁気ヘッドを一定側で移動させる着磁用定速区間とされ、前記減速開始位置から前記折り返し位置までが前記磁気ヘッドを減速させる着磁用減速区間とされていることが望ましい。このようにすれば、磁気ヘッドの往動時に、磁気ヘッドを減速させるための移動距離を十分に長く確保することができる。
【0010】
本発明において、磁気インク文字の着磁処理時間を読み取り時間よりも短縮化するためには、前記着磁用定速区間における前記磁気ヘッドの移動速度は、前記読み取り用定速区間における前記磁気ヘッドの移動速度よりも速いことが望ましい。
【0011】
この場合において、磁気ヘッドを往復移動させる移動速度制御を簡易にするためには、前記着磁用加速区間における前記磁気ヘッドの加速度は、前記読み取り用加速区間における前記磁気ヘッドの加速度と同一であることが望ましい。
【0012】
また、この場合において、磁気ヘッドを往復移動させる移動速度制御を簡易にするためには、前記着磁用減速区間における前記磁気ヘッドの減速度は、前記読み取り用減速区間における前記磁気ヘッドの減速度と同一であることが望ましい。
【0013】
次に本発明は、上記の磁気インク文字読み取り方法によって磁気インク文字を読み取る磁気インク文字読み取り装置とすることができる。本発明の磁気インク文字読み取り装置によれば、磁気インク文字の着磁および読み取りからなる磁気インク文字読み取り処理時間を短縮化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、着磁処理では走行経路上における読み取り区間内において磁気ヘッドの移動速度を一定に保持する必要がない点に着目して、往動時には、移動開始位置から読み取り区間の内側までを磁気ヘッドの加速区間として定めた。この結果、既存の走査経路内に磁気ヘッドを加速するための移動距離を長く確保できるので、装置の大型化を招くことなく往動時の磁気ヘッドの移動速度を高めることができる。また、磁気ヘッドの駆動用モーターとして加速性能の高い大型或いは高価な駆動用モーターを用いることなく、往動時の磁気ヘッドの移動速度を高めることができる。従って、装置の大型化やコスト高を招くことなく、磁気インク文字の読み取り処理時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】磁気インク文字読み取り装置を搭載する小切手処理装置の外観斜視図である。
【図2】小切手処理装置の概略縦断面図である。
【図3】小切手処理装置の下ケースの斜視図である。
【図4】磁気インク文字読み取り装置の主要部を取り出して示す説明図である。
【図5】走査経路を往復する磁気ヘッドの移動速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気インク文字読み取り装置を搭載する小切手処理装置を説明する。
【0017】
(小切手処理装置)
図1は本発明の磁気インク文字読み取り装置を搭載する小切手処理装置の外観斜視図である。図2は小切手処理装置の内部構造を示す概略縦断面図である。図3は小切手処理装置の下ケースを示す斜視図である。
【0018】
本例の小切手処理装置1は、銀行など金融機関の窓口に設置され、小切手2の決済を行う際などに使用される。小切手処理装置1は小切手2の所定の印刷領域2aに印刷されている磁気インク文字2bから磁気インク文字を読み取るとともに、小切手2に対する裏書の印刷や小切手2の表裏の面の光学的な読み取りを行う。図1に示すように、小切手処理装置1は、前側部分に操作パネル3aが設けられた上ケース3と、この上ケース3の下方に配置された直方体形状の下ケース4を備えている。下ケース4の前端部分は上ケース3の前面よりも前方に突出しており、下ケース4の前端部分と上ケース3の前面との間の部位には、装置幅方向の中央部分に小切手2を挿入するための媒体挿入口5が所定幅で開口している。
【0019】
図2、図3に示すように、小切手処理装置1の内部には、媒体挿入口5から挿入された小切手2を搬送するための媒体搬送路6が装置前後方向に直線状に延びるように構成されている。媒体搬送路6は下ケース4の上面に沿って一定幅で延びており、その幅寸法は媒体挿入口5の幅と同一寸法である。媒体搬送路6には、磁気インク文字読み取り位置A、印刷位置B、画像読み取り位置Cが前側からこの順番で設けられている。磁気インク文字読み取り位置Aには磁気インク文字読み取り装置7が配置され、印刷位置Bには印刷装置8が配置され、画像読み取り位置Cにはスキャナー装置9が配置されている。
【0020】
磁気インク文字読み取り装置7は、磁気インク文字読み取り位置Aにおいて、磁気ヘッド10を装置幅方向に往復移動させ、往路において媒体搬送路6に配置された小切手2に印刷されている磁気インク文字2bの着磁処理を行ない、復路において着磁処理された磁気インク文字2bを読み取る。磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド10と、磁気インク文字読み取り位置Aにおいて装置幅方向(媒体搬送方向と直交する方向)に延びる磁気ヘッド10の走査経路11と、磁気ヘッド10を走査経路11に沿って往復移動させるための磁気ヘッド搬送機構12と、磁気インク文字を読み取る際に、小切手2が移動する磁気ヘッド10から浮き上がらないように支持する媒体支持機構13を備えている。磁気ヘッド10、走査経路11および磁気ヘッド搬送機構12は下ケース4に構成されており、媒体支持機構13は上ケース3に搭載されている。
【0021】
印刷装置8は、印刷位置Bを記録媒体搬送に沿って搬送される小切手2の上面(裏面)に裏書などの印刷を行なう。印刷装置8は、印刷ヘッド14と、印刷ヘッド14による印刷位置Bを規定しているプラテン15と、印刷ヘッド14をプラテン15に沿って装置幅方向に往復移動させるための印刷ヘッド搬送機構16を備えている。印刷ヘッド14は、インクリボンに記録ワイヤを打ち当ててインクリボンのインクを小切手2に付着させて印刷するシリアル・インパクト・ドット・マトリクス(SIDM)プリントヘッドである。印刷ヘッド14および印刷ヘッド搬送機構16は上ケース3に搭載されており、プラテン15は下ケース4に搭載されている。
【0022】
スキャナー装置9は、画像読み取り位置Cを媒体搬送路6に沿って搬送される小切手2の上面および下面を光学的に読み取って、小切手2の表裏の面の画像情報を得る。スキャナー装置9は、上面を読み取るために上ケース3に搭載された第1スキャナー17と下面を読み取るために下ケース4に搭載された第2スキャナー18を備えている。各スキャナー17、18は媒体搬送路6を横断するよう配置されており、第1スキャナー17と第2スキャナー18は媒体搬送路6を挟んで対向している。
【0023】
媒体搬送路6における磁気インク文字読み取り位置Aと印刷位置Bの間、印刷位置Bと画像読み取り位置Cの間、および、画像読み取り位置Cの後方には、媒体搬送路6に沿って小切手2を搬送する媒体搬送機構の第1〜第3搬送ローラー対20、21、22が配置されている。各搬送ローラー対は、上ケース3に搭載された第1〜第3上側ローラー20a、21a、22aと、下ケース4に搭載された第1〜第3下側ローラー20b、21b、22bを備える。
【0024】
磁気インク文字読み取り位置Aと、最も前に位置する第1搬送ローラー対20の間には、図3に示すように、小切手2の媒体挿入口5への挿入を検出するための複数の媒体挿入検出器23が設けられている。媒体挿入検出器23は媒体搬送経路を挟んで対向する発光部と受光部を備える光透過型のフォトセンサーである。
【0025】
下ケース4における第1搬送ローラー対20と印刷位置Bの間には、複数枚の整列板24が装置幅方向に直線状に並んで配置されている。各整列板24は、媒体搬送方向と直交する矩形端面を備えており、各整列板24の矩形端面が媒体搬送路6内に進出した図2、図3に示す進出位置と、各整列板24の矩形端面が媒体搬送路6から退避した退避位置との間を進退可能となっている。
【0026】
各整列板24の装置幅方向の両側には、図3に示すように、一対の媒体整列検出器25が配置されている。一対の媒体整列検出器25は、それぞれ媒体搬送経路を挟んで対向する発光部と受光部を備える光透過型のフォトセンサーである。
【0027】
ここで、小切手処理装置1の制御系(不図示)は、CPUやROM、RAMを備える主制御部を中心に構成されている。主制御部には、媒体挿入検出器23および媒体整列検出器25からの信号が入力されるようになっている。主制御部はこれらの信号などに基づいて、磁気インク文字読み取り装置7、印刷装置8、スキャナー装置9、媒体搬送機構および整列板24を連携させて駆動制御する。また、主制御部には記憶部が接続されており、主制御部は、磁気インク文字読み取り装置7およびスキャナー装置9によって小切手2から読み取った磁気インク文字および画像情報をこの記憶部に記憶保持する。さらに、主制御部は、小切手2から読み取った磁気インク文字および画像情報を小切手処理装置1に接続されたホストコンピューター(不図示)に送信する。
【0028】
(小切手処理動作)
決済処理に際して、小切手2は、磁気インク文字2bが印刷された表面が下を向いた状態で媒体挿入口5に挿入される。小切手2の挿入が媒体挿入検出器23によって検出されると、整列板24は退避位置から進出位置に進出させられる。また、第1搬送ローラー対20が駆動され、小切手2は、媒体搬送路6に沿った媒体搬送方向を装置後方に向かって搬送される。ここで、搬送される小切手2の媒体搬送方向の下流側の端縁が整列板24に当接することにより、媒体搬送方向に対する傾き(スキュー)が適切な状態に直される。小切手2の傾きがなくなると、小切手2が当接している整列板24の両側に設けられた一対の媒体整列検出器25の受光部が小切手2により遮光されるので、これにより、小切手2が媒体搬送方向に対して適切な姿勢になったことが検出される。
【0029】
小切手2が媒体搬送方向に対して適切な姿勢になると、整列板24は退避位置に戻される。しかる後に、小切手2は磁気インク文字読み取り位置Aに搬送されて、停止する。小切手2が磁気インク文字読み取り位置Aにセットされると、小切手2の磁気インク文字2bの印刷領域2aは、走査経路11上に位置した状態となる。ここで、磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド10を走査経路11に沿って往動させながら、媒体搬送路6に配置された小切手2に印刷されている磁気インク文字2bの着磁処理を行い、復動させながら、着磁処理された磁気インク文字2bを読み取る。
【0030】
次に、小切手2は、画像読み取り位置Cを通過するように搬送される。この間に第1スキャナー17および第2スキャナー18は、小切手2の表裏の面を画像情報として読み取る。ここで、小切手2から読み取られた磁気インク文字および画像情報は、小切手処理装置1に接続されたホストコンピューターに送信される。ホストコンピューターでは、小切手処理装置1からの磁気インク文字および画像情報を利用して小切手2の決済処理を行なう。
【0031】
その後、小切手2は、印刷位置Bを通過するように搬送される。この間に、小切手2には印刷装置8による裏書の印刷が施される。裏書の印刷が終わると、小切手2は搬送されて、小切手処理装置1の背面側、或いは、媒体挿入口5から排出される。
【0032】
(磁気インク文字読み取り装置)
次に、図2〜図5を参照して、磁気インク文字読み取り装置7を詳細に説明する。図4は磁気インク文字読み取り装置の主要部を取り出して示す説明図である。図5は走査経路を往復する磁気ヘッドの移動速度を示すグラフである。
【0033】
磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド10、走査経路11、磁気ヘッド搬送機構12および媒体支持機構13を備えている。また、磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド10および磁気ヘッド搬送機構12を駆動制御して、媒体搬送路6の磁気インク文字読み取り位置Aに配置された小切手2の磁気インク文字2bを読み取る制御部26(図4参照)を備えている。
【0034】
磁気ヘッド10は、電力を供給することにより所定の磁界を発生させるとともに、読み取り部10aを通過する磁束の変化に応じた起電力を発生させる。
【0035】
走査経路11は、図3に示すように、下ケース4の上面部分に構成されている。走査経路11は、媒体搬送路6における媒体搬送方向と直交する方向に延びており、媒体搬送路6の内側に位置する内側走査経路部分(読み取り区間)111、内側走査経路部分111の左側に位置する左側走査経路部分112、および、内側走査経路部分111の右側に位置する右側走査経路部分113を備えている。内側走査経路部分111は走査経路11の装置幅方向の中央に位置しており、左側走査経路部分112と右側走査経路部分113とは同じ長さ寸法となっている。ここで、媒体挿入口5の装置幅方向の任意の位置に挿入された小切手2は、媒体搬送路6内を媒体搬送方向に対して適切な姿勢で搬送され、磁気インク文字読み取り位置Aにセットされる。小切手2が磁気インク文字読み取り位置Aにセットされると、小切手2の磁気インク文字2bの印刷領域2aが内側走査経路部分111上に配置された状態となる。
【0036】
磁気ヘッド搬送機構12は、図4に示すように、下ケース4に搭載される左右のフレーム部分41、42に平行に架け渡された2本のガイド軸121、122を備えている。2本のガイド軸121、122には、磁気ヘッド10を搭載した磁気ヘッドユニット123が移動可能に支持されている。2本のガイド軸121、122の下方には、磁気ヘッドユニット123をガイド軸121、122に沿って往復移動させるためのモーター124およびタイミングベルト125が配置されている。磁気ヘッドユニット123はタイミングベルト125の一部分に固定されており、モーター124が回転駆動されることによりタイミングベルト125が回転すると、磁気ヘッド10がガイド軸121、122に沿って移動する。図3、図4は磁気インク文字読み取り装置7の待機状態を示しており、磁気ヘッド10は左側走査経路部分112の左端のホームポジション10Aに停止している。
【0037】
媒体支持機構13は、図2に示すように、走査経路11と対向して装置幅方向に延びる支持面131aを備える媒体支持部材131を有している。媒体支持部材131は、支持面131aによって、走査経路11に沿って移動する磁気ヘッド10に小切手2を摺接可能な状態に支持する支持位置と、支持面131aが媒体搬送方向から上方に退避した退避位置との間を移動可能となっている。図2に示す待機状態では、媒体支持部材131は退避位置に退避している。小切手2が磁気インク文字読み取り位置Aにセットされると、媒体支持機構13は媒体支持部材131を退避位置から支持位置に移動させて、この小切手2を上面側から支持する。
【0038】
制御部26は、小切手処理装置1の主制御部からの磁気インク文字の読み取り命令を受信すると、磁気ヘッド10を走査経路11に沿って往動させながら小切手2に印刷されている磁気インク文字2bの着磁処理を行ない、復動させながら着磁処理した磁気インク文字2bを読み取る。小切手処理装置1の主制御部は、小切手2が磁気インク文字読み取り位置Aにセットされた後に、磁気インク文字の読み取り命令を発行する。
【0039】
磁気インク文字の読み取り命令を受信すると、制御部26は、左側走査経路部分112の左端のホームポジション(移動開始位置)10Aに停止している磁気ヘッド10に所定の電力を供給して、磁気ヘッド10から所定の磁界を発生させる。そして、磁気ヘッド搬送機構12のモーター124を駆動制御して、磁界を発生させた状態の磁気ヘッド10を、ホームポジション10Aから内側走査経路部分111を経由して右側走査経路部分113の右端の折り返し位置10Bに至る走査経路11の往路に沿って移動させる。この往動の間に、磁気インク文字読み取り位置Aにセットされた小切手2の磁気インク文字2bは、着磁される。
【0040】
ここで、往動時には、図5において点線で示すように、ホームポジション10Aから内側走査経路部分111の内側に設定されている加速終了位置10Cまでの区間(着磁用加速区間)で磁気ヘッド10を加速して、磁気ヘッド10の移動速度を第1速度に到達させる(ステップST11)。
【0041】
そして、内側走査経路部分111の内側に設定されている減速開始位置10Dまでの区間(着磁用定速区間)、磁気ヘッド10を第1速度で移動させる(ステップST12)。
【0042】
その後、減速開始位置10Dから折り返し位置10Bまでの区間(着磁用減速区間)で磁気ヘッド10を減速し、折り返し位置10Bで磁気ヘッド10を停止させる(ステップST13)。
【0043】
次に、制御部26は、磁気ヘッド搬送機構12のモーター124を駆動制御して、折り返し位置10Bから、内側走査経路部分111を経由してホームポジション10Aに至る走査経路11の復路に沿って磁気ヘッド10を移動させる。この復動の間に、磁気ヘッド10は、磁気インク文字2bを読み取る。
【0044】
復動時には、図5において一点鎖線で示すように、右側走査経路部分113で磁気ヘッド10を加速する。すなわち、折り返し位置10Bから内側走査経路部分111の開始位置(読み取り区間の開始位置)10Eまでの区間(読み取り用加速区間)で磁気ヘッド10を加速して、磁気ヘッド10の移動速度を第1速度よりも遅い磁気インク文字読み取り用の第2速度に到達させる(ステップST21)。
【0045】
そして、小切手2が配置されている内側走査経路部分111(読み取り用定速区間)では、磁気インク文字の読み取り精度を確保するために、磁気ヘッド10を第2速度で移動させる(ステップST22)。ここで、着磁処理された磁気インク文字2b上を磁気ヘッド10が通過すると電磁誘導によって磁気ヘッド10に起電力が発生するので、制御部26は発生した起電力に基づいて、磁気インク文字を読み取る。
【0046】
その後、内側走査経路部分111の終了位置(読み取り区間の終了位置)10Fからホームポジション10Aまでの区間(読み取り用減速区間)で磁気ヘッド10を減速し、ホームポジション10Aで磁気ヘッド10を停止させる(ステップST23)。
【0047】
(磁気インク文字読み取り装置の作用効果)
本例の磁気インク文字読み取り装置7は、磁気インク文字2bの着磁を行なう往動時の磁気ヘッド10の移動速度を、磁気インク文字2bの読み取りを行なう復動時の第2速度よりも高速な第1速度に到達させている。この結果、磁気インク文字2bの着磁処理を短縮化できるので、磁気インク文字の読み取り処理時間が短縮化される。
【0048】
また、磁気ヘッド10の往動時には、ホームポジション10Aから内側走査経路部分111の内側に設定した加速終了位置10Cまでの区間を、磁気ヘッド10を加速する加速区間としている。この結果、磁気ヘッド10を加速するための移動距離を既存の走査経路11内に長く確保することができるので、装置の大型化を招くことがない。また、磁気ヘッド10の駆動用モーター124として加速性能の高い大型或いは高価な駆動用モーターを用いることなく、磁気ヘッド11の移動速度を高めることができる。従って、装置の大型化やコスト高を招くことなく、磁気インク文字の読み取り処理時間の短縮化を達成できる。
【0049】
さらに、往動時には、内側走査経路部分111の内側に設定した減速開始位置10Dから折り返し位置10Bまでの区間を減速区間として、磁気ヘッド10を減速、停止させている。この結果、第2速度よりも高速な第1速度で移動する磁気ヘッド10を減速するための移動距離を、既存の走査経路11内に十分に長く確保することができる。
【0050】
また、本例では、図5に示すように、磁気ヘッド10を往動させるステップST11において、磁気ヘッド10の移動速度を第1速度に到達させるまでの加速度と、磁気ヘッド10を復動させるステップST21において磁気ヘッド10の移動速度を第2速度に到達させるまでの加速度を同じにしてある。従って、磁気ヘッド10を走査経路11に沿って往復移動させるための磁気ヘッド搬送機構12のモーター124の駆動制御を簡易にすることができる。すなわち、磁気ヘッド10を往復移動させる移動速度制御を簡易にすることができる。
【0051】
さらに、本例では、図5に示すように、磁気ヘッド10を減速する際の減速度を、往動と復動で同一にしてある。また、ステップST11、ST21における磁気ヘッド10の加速度と、ステップST13、ST23における磁気ヘッド10の減速度を同じにしてある。また、左側走査経路部分112と右側走査経路部分113は同じ長さ寸法なので、ホームポジション10Aと折り返し位置10Bが入れ替わった場合でも、磁気ヘッド搬送機構12のモーター124を入れ替わる前と同様に駆動制御して、磁気インク文字読み取り動作を行なうことができる。
【符号の説明】
【0052】
1・小切手処理装置、2・小切手、2a・印刷領域、2b・磁気インク文字、3・上ケース、3a・操作パネル、4・下ケース、5・媒体挿入口、6・媒体搬送路、7・磁気インク文字読み取り装置、8・印刷装置、9・スキャナー装置、10・磁気ヘッド、10a・読み取り部、10A・ホームポジション(移動開始位置)、10B・折り返し位置、10C・加速終了位置、10D・減速開始位置、10E・内側走査経路部分開始位置(読み取り区間開始位置)、10F・内側走査経路部分終了位置(読み取り区間終了位置)、11・走査経路、12・磁気ヘッド搬送機構、13・媒体支持機構、14・印刷ヘッド、15・プラテン、16・印刷ヘッド搬送機構、17・18・スキャナー、20・21・22・搬送ローラー対、23・媒体挿入検出器、24・整列板、25・媒体整列検出器、26・制御部、41・42・フレーム部分、111・内側走査経路部分(読み取り区間)、112・左側走査経路部分、113・右側走査経路部分、121・122・ガイド軸、123・磁気ヘッドユニット、124・モーター、125・タイミングベルト、131・媒体支持部材、131a・支持面、A・磁気インク文字読み取り位置、B・印刷位置、C・画像読み取り位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドを所定の走査経路に沿って往動させながら当該走査経路上に位置する磁気インク文字の着磁を行う着磁工程と、
前記磁気ヘッドを前記走査経路に沿って復動させながら、前記走行経路上における所定の読み取り区間内において着磁処理された前記磁気インク文字の読み取りを行う読み取り工程とを有し、
前記着磁工程では、前記走行経路上における前記磁気ヘッドの移動開始位置から前記読み取り区間内に設定した加速終了位置までの区間が前記磁気ヘッドを加速する着磁用加速区間として定められていることを特徴とする磁気インク文字読み取り方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記読み取り工程では、前記走行経路上において、前記磁気ヘッドの折り返し位置から前記読み取り区間の開始位置までが前記磁気ヘッドを加速する読み取り用加速区間とされ、前記読み取り区間が前記磁気ヘッドを一定速度で移動させる読み取り用定速区間とされ、前記読み取り区間の終了位置から前記移動開始位置まで前記磁気ヘッドを減速する読み取り用減速区間とされており、
前記着磁工程では、前記読み取り区間内における前記加速終了位置から、当該読み取り区間内に定めた減速開始位置までが前記磁気ヘッドを一定側で移動させる着磁用定速区間とされ、前記減速開始位置から前記折り返し位置までが前記磁気ヘッドを減速させる着磁用減速区間とされていることを特徴とする磁気インク文字読み取り方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記着磁用定速区間における前記磁気ヘッドの移動速度は、前記読み取り用定速区間における前記磁気ヘッドの移動速度よりも速いことを特徴とする磁気インク文字読み取り方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記着磁用加速区間における前記磁気ヘッドの加速度は、前記読み取り用加速区間における前記磁気ヘッドの加速度と同一であることを特徴とする磁気インク文字読み取り方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記着磁用減速区間における前記磁気ヘッドの減速度は、前記読み取り用減速区間における前記磁気ヘッドの減速度と同一であることを特徴とする磁気インク文字読み取り方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の磁気インク文字読み取り方法によって磁気インク文字を読み取る磁気インク文字読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−154768(P2011−154768A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16400(P2010−16400)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】