説明

磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置

【課題】 小型の磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置を提供する。
【解決手段】 所定の空間31を取り囲むように超常磁性体で形成された第1のシールド部材11と、第1のシールド部材11の外側を取り囲むように軟磁性体で形成された第2のシールド部材12とを備える磁気シールド装置とする。第2のシールド部材12によって、第2のシールド部材12で囲まれた空間内への外部磁界の侵入を防止できるとともに、第1のシールド部材11によって、第2のシールド部材12の残留磁化による磁界の第1のシールド部材11で囲まれた空間内への侵入を防止することができるので、第1のシールド部材11で囲まれた空間内に殆ど磁界が存在しない磁気シールド装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部からの磁界を遮蔽する磁気シールド装置として、透磁率が大きい軟磁性体で形成されたシールド部材で空間を取り囲んだ磁気シールド装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。このような磁気シールド装置によれば、外部からの磁界が、透磁率が高いシールド部材内を選択的に通過するため、シールド部材に囲まれた空間内への外部磁界の侵入を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−32434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の磁気センサ装置においては、軟磁性体が若干の残留磁化を有するため、軟磁性体で形成されたシールド部材の残留磁化によって生じる磁界が、僅かながらもシールド部材に囲まれた空間内に漏洩してしまうことがあるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、遮蔽する空間内への磁界の漏洩を低減することが可能な磁気シールド装置およびそれを用いた電流センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の磁気シールド装置は、所定の空間を取り囲むように超常磁性体で形成された第1のシールド部材と、該第1のシールド部材の外側を取り囲むように軟磁性体で形成された第2のシールド部材とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の磁気シールド装置は、前記第1の磁気シールド装置において、前記第2のシールド部材が、前記第1のシールド部材と間隔をあけて配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の電流センサ装置は、前記第1の磁気シールド装置と、前記空間に収容された電流センサとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁気シールド装置によれば、遮蔽する空間内への磁界の漏洩を低減することが可能な磁気シールド装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の磁気シールド装置を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の第2の例の磁気シールド装置を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の第3の例の電流センサ装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の磁気シールド装置ならびにそれを用いた電流センサ装置を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態の第1の例)
図1は、本発明の実施の形態の第1の例の磁気シールド装置を模式的に示す断面図である。
【0013】
本例の磁気シールド装置は、図1に示すように、第1のシールド部材11と、第2のシールド部材12と、スペーサ部材21とを備えている。
【0014】
第1のシールド部材11は、空間31を取り囲む箱形の形状を有しており、固体状の超常磁性体で形成されている。
【0015】
スペーサ部材21は、箱形の形状を有しており、固体状の非磁性体で形成されている。そして、スペーサ部材21は、第1のシールド部材11の外側の表面に接して第1のシールド部材11を取り囲むように形成されている。
【0016】
第2のシールド部材12は、箱形の形状を有しており、固体状の軟磁性体で形成されている。そして、第2のシールド部材12は、スペーサ部材21の外側の表面に接してスペーサ部材21を取り囲むように形成されている。すなわち、第2のシールド部材12は、第1のシールド部材11と間隔を開けて、第1のシールド部材11の外側を取り囲むように形成されている。
【0017】
このような構成を備える本例の磁気シールド装置によれば、透磁率が大きい軟磁性体で形成された第2のシールド部材12によって、第2のシールド部材12で囲まれた空間内への外部磁界の侵入を殆ど防止することができる。また、第2のシールド部材12が有する残留磁化によって、第2のシールド部材12で囲まれた空間内に生じる微弱な磁界を、第1のシールド部材11内を通過させることができる。これにより、第2のシールド部材12の残留磁化によって発生する磁界が、第1のシールド部材11で囲まれた空間内に侵入するのを防止することができる。しかも、第1のシールド部材11は、超常磁性体で形成されているため、残留磁化を有さない。よって、第1のシールド部材11で取り囲まれた空間内を磁界が殆ど存在しない空間にすることができる。
【0018】
また、本例の磁気シールド装置によれば、第1のシールド部材11と第2のシールド部材12とが間隔を開けて配置されていることから、第1のシールド部材11と第2のシールド部材12とが接触している場合と比較して、外部磁界の第2のシールド部材12で囲まれた空間内への漏洩をさらに低減することができる。
【0019】
本例の磁気シールド装置において、第1のシールド部材11を構成する超常磁性体としては、例えば、特開2001−6930号公報に記載された、金微粒子表面にチオール配位型有機ラジカル分子が化学吸着して形成された有機ラジカル化学吸着型金微粒子からなる無機複合型磁性薄膜である、超常磁性を示す有機・無機複合型磁性薄膜のような、既知の超常磁性体を好適に用いることができる。また、第2のシールド部材12を構成する軟磁性体としては、例えば、FeとNiとの合金であるパーマロイや、MoとFeとNiとの合金であるスーパーマロイや、純鉄のような、透磁率が大きい軟磁性体を好適に用いることができる。また、スペーサ部材21を構成する非磁性体としては、透磁率が極力小さいものが望ましく、例えばプラスチック等を好適に用いることができる。また、第1のシ
ールド部材11,第2のシールド部材12およびスペーサ部材21の厚さは、厚いほど磁気シールド性が高くなるので、得たい磁気シールド性に応じて適宜設定することができる。
【0020】
(実施の形態の第2の例)
図2は、本発明の実施の形態の第2の例の磁気シールド装置を模式的に示す断面図である。なお、本例においては、前述した実施の形態の第1の例と異なる部分について説明し、同様の要素には同様の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
本例の磁気シールド装置は、図2に示すように、第1のシールド部材11と、第2のシールド部材12と、容器22とを備えている。
【0022】
本例の磁気シールド装置においては、第1のシールド部材11として、流体状の超常磁性体である磁性流体が用いられている。そして、その磁性流体は、非磁性体で形成された箱状の容器22の壁内に設けられた密閉空間内に収容されている。
【0023】
また、本例の磁気シールド装置においては、スペーサ部材21は設けられておらず、容器22の外側の壁によって、第1のシールド部材11と第2のシールド部材12とが間隔を開けて配置されるようになっている。
【0024】
このような構成を備える本例の磁気シールド装置も、前述した実施の形態の第1の例の磁気シールド装置と同様に、第1のシールド部材11で取り囲まれた空間内を磁界が殆ど存在しない空間にすることができる。
【0025】
なお、本例の磁気シールド装置において使用する磁性流体としては、磁性体粒子の表面を界面活性剤で覆ってベース液中に浮遊させた磁性コロイド溶液のような、既知の磁性流体を好適に用いることができる。
【0026】
(実施の形態の第3の例)
図3は本発明の実施の形態の第3の例の電流センサ装置を模式的に示す断面図である。なお、本例においては、前述した実施の形態の第1の例と異なる部分について説明し、同様の要素には同様の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
本例の電流センサ装置は、図3に示すように、前述した実施の形態の第1の例の磁気シールド装置と、空間31に収容された電流センサ24と、該電流センサ24を支持する支持部材23a,23bとを備えている。すなわち、第1のシールド部材11と、第2のシールド部材12と、スペーサ部材21と、支持部材23a,23bと、電流センサ24とを備えている。
【0028】
支持部材23a,23bは、直方体状の形状を有しており、非磁性体で形成されている。そして、第1のシールド部材11で囲まれた空間31の中央に電流センサ24を固定する機能を有している。電流センサ24は、電流の周囲に発生する磁界によって電流の大きさを検知する既知の電流センサである。
【0029】
このような構成を備える本例の電流センサ装置によれば、第1のシールド部材11で取り囲まれた、磁界が殆ど存在しない空間31内に電流センサ24が収容されているため、検知する電流が発生させる磁界以外の磁界による影響を殆どなくすことができる。これにより、非常に高精度の電流センサ装置を得ることができる。
【0030】
なお、本例の電流センサ装置において、支持部材23a,23bを構成する非磁性体と
しては、透磁率が極力小さいものが望ましく、例えばプラスチック等を好適に用いることができる。
【0031】
(変形例)
本発明は前述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0032】
例えば、前述した実施の形態の第1〜第3の例においては、第1のシールド部材11と第2のシールド部材12とが間隔を開けて配置された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、第1のシールド部材11と第2のシールド部材12とが接触しても第1のシールド部材11で囲まれた空間内への外部磁界の漏洩を防止できる場合には、第1のシールド部材11と第2のシールド部材12とが接触して配置されるようにしても構わない。
【0033】
また、前述した実施の形態の第1〜第3の例においては、箱形の形状を有する第1のシールド部材11および第2のシールド部材12を使用した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、格子状の第1のシールド部材11および第2のシールド部材12を用いても良く、所定の間隙を有するような第1のシールド部材11および第2のシールド部材12であっても構わない。
【符号の説明】
【0034】
11:第1のシールド部材
12:第2のシールド部材
24:電流センサ
31:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間を取り囲むように超常磁性体で形成された第1のシールド部材と、該第1のシールド部材の外側を取り囲むように軟磁性体で形成された第2のシールド部材とを備えることを特徴とする磁気シールド装置。
【請求項2】
前記第2のシールド部材が、前記第1のシールド部材と間隔をあけて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気シールド装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁気シールド装置と、前記空間に収容された電流センサとを備えることを特徴とする電流センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117839(P2012−117839A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265355(P2010−265355)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】