説明

磁気センサの検査装置及び検査方法

【課題】ウエハの状態で複数個の磁気センサを同時にかつ高精度に検査する。
【解決手段】ウエハ状態に並べられた複数の磁気センサが載置され水平方向及び垂直方向に移動可能なステージ12と、このステージ12の上方に対向配置され磁気センサのうちの少なくとも複数個を含む検査領域の各磁気センサに同時に接触可能なプローブ群13を有するプローブカード9と、このプローブカード9を介して対峙しプローブ群13の周辺に磁場を発生する複数の磁場発生コイル3〜8と、プローブカード9におけるプローブ群13の外側を囲むように配設された複数の磁場環境測定センサ14〜17と、これら磁場環境測定センサ14〜17の測定結果に基づき磁場発生コイル3〜8の出力を制御する磁場制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサの磁気特性を検査する装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサの磁気特性を検査する場合、ヘルムホルツコイル等の磁場発生コイルにより発生させた磁場内に磁気センサを配置し、その磁気センサの出力信号を測定するようにしている。この場合、パッケージ封入された後の磁気センサを1個ずつ検査するのでは、その取り扱いが煩雑であるとともに、検査で異常と判断された磁気センサの組み立てコストが無駄になるため、ウエハの状態で検査することが有効である。
磁気センサをウエハの状態で検査する技術として、例えば特許文献1及び特許文献2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1記載の技術は、ウエハの状態の磁気センサにコイルプローバの先端部分を近接させて磁気センサに磁界を印加し、磁気センサの出力信号をプローブで測定している。この特許文献1記載の技術においては、コイルプローバの先端部分から発生させることができる磁界が単一方向のため、複数方向の外部磁界に対する磁気センサの出力を検査するためには、コイルプローバと磁気センサとを相対的に回転させる必要がある。
【0004】
特許文献2記載の技術では、プローブカードに複数のコイルを設けておき、このプローブカードを、磁気センサが形成されているウエハに接触させた状態において、プローブカードのコイルに電流を供給して磁気センサに磁界を印加し、プローブカードによって磁気センサの出力信号を検出するようにしている。この場合、複数のコイルに供給する電流を変化させることにより磁気センサに印加する磁界の大きさや方向を変化させることができる。
【0005】
また、特許文献3記載の技術は、ウエハ状態の磁気センサの検査ではないが、基板状のテーブルに、磁気センサを配置するためのソケット、及び磁界発生用のコイルとともに、発生した磁界を検知する検知用センサが設けられ、その検知用センサの検知結果を磁界発生コイルにフィードバックしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−55977号公報
【特許文献2】特開2007−57547号公報
【特許文献3】特開2004−151056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ウエハの状態で磁気センサを検査する場合、磁気センサを1個ずつ検査するのではなく、複数個の磁気センサを同時に検査することができると効率的である。この場合、複数個の磁気センサを含む広い検査領域に磁場を発生させるため、コイルを大きくする必要があるが、特許文献1又は特許文献2記載の技術では、プローブカードにコイルを設けているため、その大型化には限界がある。また、検査領域内で発生する磁場に局所的にばらつきが生じる可能性があり、これら特許文献記載の技術のように、所望の磁場が発生しているか否かをコイルの電流によって判断するだけでは正確性に欠けるという問題がある。
【0008】
この場合、特許文献3記載のように、磁場検知のための検知用センサを設けてフィードバックすることが有効であるが、検知用センサがソケットやコイルとともに一つのテーブルに配置されるため、これらソケットやコイルの設置スペースとの干渉を避ける必要から、特許文献3ではソケットとは反対側のテーブルの裏面に配置しており、ソケット内の磁気センサに作用する磁場を正確に検知しているとは言い難く、検査精度低下の原因となり易い。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ウエハの状態で複数個の磁気センサを同時にかつ高精度に検査することができる検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁気センサの検査装置は、ウエハ状態に並べられた複数の磁気センサが載置され水平方向及び垂直方向に移動可能なステージと、このステージの上方に対向配置され前記磁気センサのうちの少なくとも複数個を含む検査領域の各磁気センサに同時に接触可能なプローブ群を有するプローブカードと、このプローブカードを介して対峙し前記プローブ群の周辺に磁場を発生する複数の磁場発生コイルと、前記プローブカードにおける前記プローブ群の外側を囲むように配設された複数の磁場環境測定センサと、これら磁場環境測定センサの測定結果に基づき前記磁場発生コイルの出力を制御する磁場制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の磁気センサの検査方法は、ウエハ状態に並べられた複数の磁気センサのうちの少なくとも複数個を含む検査領域の各磁気センサに同時に接触可能なプローブ群を有するプローブカードと、このプローブカードを介して対峙し前記プローブ群の周辺に磁場を発生する複数の磁場発生コイルと、前記プローブカードにおける前記プローブ群の外側を囲むように配設された複数の磁場環境測定センサとをこれらの相対位置を固定した状態に設けておき、前記ウエハ状態に並べられた複数の磁気センサをステージ上に載置し、このステージを水平方向及び垂直方向に移動して、前記プローブカードのプローブ群に前記磁気センサを複数個ずつ接触させながら、前記磁場発生コイルによって磁場を発生した状態で前記磁気センサの出力を検査するとともに、前記磁気センサの出力を検査するときに予め前記磁場環境測定センサの測定結果に基づき前記磁場発生コイルの出力をフィードバック制御することを特徴とする。
【0012】
すなわち、磁場発生コイルをプローブカード上ではなく、その外方に配置することにより、プローブ群の周辺の広い領域に磁場を発生し、その磁場発生状態においてプローブ群に複数個の磁気センサを接触することにより、これら複数個の磁気センサに同時に磁場を作用させて、これらを同時に検査することができる。また、その検査に際しては、プローブカードにおける測定領域内の磁場を磁場環境測定センサによって測定し、その結果を磁場発生コイルにフィードバックすることにより、測定領域内に所望の磁場を正確に発生させることができる。そして、ステージを移動しながら、ウエハ状態の各磁気センサを複数個ずつプローブ群に接触させて、連続的に検査することができる。
【0013】
また、本発明の磁気センサの検査装置において、前記プローブカードにおける各磁場環境測定センサの近傍位置に、温度環境測定センサが配設され、前記磁場制御部は、前記温度環境測定センサの測定結果に基づき前記磁場環境測定センサの測定結果を補正し、その補正した測定結果に基づき前記磁場発生コイルの出力を制御するものであるとよい。
磁場環境測定センサは温度によって感度が変わる場合があるので、各磁場環境測定センサ近傍に設けた温度環境測定センサの測定結果に基づき、磁場環境測定センサの測定結果を補正し、その補正した測定結果により磁場発生コイルの出力を制御することにより、環境の温度に影響されずに正確に磁気検査することができる。
【0014】
また、本発明の磁気センサの検査装置において、前記ステージに温度調整手段が設けられているとよい。
ステージを適宜の温度に設定して検査することにより、温度による磁気特性の変化も容易に検査することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁気センサを個片状態ではなくウエハ状態で検査するので、複数個の磁気センサに同時に磁場を作用させて、これらを同時に検査することができるとともに、プローブカードに設けた磁場環境測定センサによって測定領域の磁場を測定してフィードバックしているので、測定領域に所望の磁場を正確に発生させることができ、検査精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る磁気センサの検査装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の検査装置のシステムブロック図である。
【図3】図1の検査装置におけるステージとプローブカードとの水平面上の位置関係を示す平面図である。
【図4】図1の検査装置におけるプローブカードの正面図である。
【図5】図1の検査装置におけるプローブカード及びステージの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
本実施形態の磁気センサの検査装置1は、図1に示すように、枠状に形成した架台2に、6個の磁場発生コイル3〜8と1個のプローブカード9とが固定されるとともに、ウエハ状態の磁気センサ10からなるセンサ集合体11を載置する移動可能なステージ12が設けられている。
【0018】
磁場発生コイル3〜8は、それぞれ軸方向に沿って対向する2個を一組として構成されており、架台2の両側部、上部及び下部、前面及び背面でそれぞれ一組ずつ配設され、これら3組の磁場発生コイル3〜8が軸方向を相互に直交させていることにより、全体として正六面体を構成するように配置されている。
具体的には、架台2の両側部に、水平方向に沿う軸方向(X軸方向とする)を一致させた一組のX軸磁場発生コイル3,4が設けられ、これらX軸方向磁場発生コイル3,4の軸方向と直交する水平方向に軸方向(Y軸方向とする)を向けた一組のY軸方向磁場発生コイル5,6が架台2の前面及び背面に設けられ、これらX軸方向磁場発生コイル3,4とY軸方向磁場発生コイル5.6との両軸方向のいずれにも直交する垂直方向に軸方向(Z軸方向とする)を向けた一組のZ軸方向磁場発生コイル7.8が架台2の上部及び下部に設けられている。図1には、X軸、Y軸、Z軸の各軸を一点鎖線で示している。そして、これら各組の磁場発生コイル3〜8が、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3軸方向に磁界を発生することにより、これら磁場発生コイル3〜8の軸方向が交差する中心位置Cには、3軸の合成磁界が作用するようになっている。
【0019】
また、この磁場発生コイル3〜8により囲まれた空間の中心位置Cにおいて、架台2にプローブカード9が固定されている。図1には説明の便宜上、プローブカード9に対する固定部分は省略している。
このプローブカード9は、図5に示すように、その基部となるプリント配線板9aが水平方向に沿って固定されており、ウエハ状態に並べられているセンサ集合体11の多数の磁気センサ10のうち、平面視が正方形をなす特定の領域F内の複数個の磁気センサ10に対して同時に接触可能なプローブ群13,13…がプリント配線板9aから下方に向けて突出して設けられている。図3〜図5には、一つの磁気センサ10に接触されるプローブの集合を符号13で示しており、プローブ群13,13,…は、1個のプローブカード9に設けられるプローブのすべての集合体である。例えば、1個が2mm四方の磁気センサ10に対して、プローブ群13,13…は、縦5個×横5個の合計25個の磁気センサ10に同時に接触して検査することができるように、1枚のプローブカード9の1cm四方の領域に25組設けられている。
【0020】
この場合、図2及び図3にX,Yで示したように、これらプローブ群13,13…の集合体がなす四辺の中間位置(縦5個の中間位置及び横5個の中間位置)が磁場発生コイル3〜8のX軸及びY軸上に配置されるように架台2に固定されている。したがって、磁場発生コイル3〜8の軸方向が交差する中心位置Cは、これらプローブ群13,13,…により構成されるマトリクスの中心(3列3行目の中心)に配置される。
【0021】
そして、これらプローブ群13,13,…の集合体の外方であってプローブカード9の外周部に、複数の磁場環境測定センサ14〜17と温度環境測定センサ18〜21とが対をなすように設けられている。
各磁場環境測定センサ14〜17は、例えば、磁気抵抗効果素子等を用いたX軸、Y軸、Z軸の各方向に感度軸を有する三つのセンサチップを内蔵することにより、互いに90°異なる3軸方向に感度軸を有するセンサとされ、これらセンサチップに順次通電することにより、各軸方向の磁場を測定することができるようになっている。
【0022】
そして、これら磁場環境測定センサ14〜17は、プローブカード9の外周部においてプローブ群13がなす四辺の中間位置に一個ずつ対峙するように配置されていることにより、X軸方向磁場発生コイル3,4の磁界発生軸X及びY軸方向磁場発生コイル5,6の磁界発生軸Yに沿ってそれぞれ並ぶように配置されている。図3及び図4に示す例では、磁場環境測定センサ14,15がX軸、磁場環境測定センサ16,17がY軸に沿って並んでいる。これら各磁場環境測定センサ14〜17の近傍位置に各温度環境測定センサ18〜21が配設されている。
【0023】
ステージ12は、プローブカード9のプローブ群13,13,…よりも下方位置に配置され、ウエハ状態に並んだ磁気センサ10のセンサ集合体11を上面に載置して固定するようになっている。
これら磁気センサ10は、ウエハ表面に半導体プロセスによって作成され、ダイシングテープ(図示略)が貼付された状態で、そのダイシングテープ上で各個片に切断分離されたものであり、ダイシングテープ上にマトリクス状に貼付され、そのダイシングテープ毎、リング状のキャリア治具(図示略)に保持されている。そして、ステージ12は、このキャリア治具に保持された状態の磁気センサ10のセンサ集合体11が載置され、真空吸着によって固定するようになっている。また、ステージ12をX方向、Y方向及びZ方向に移動する図示略の移動手段が設けられている。
【0024】
一方、図2に示すように、磁場発生コイル3〜8には、駆動電源を備えた磁場制御部25が接続され、この磁場制御部25によって各磁場発生コイル3〜8の出力が制御される。また、プローブカード9には、テスト制御部26が接続され、このテスト制御部26では、予めプログラムされたテスト手順にしたがってプローブ群13,13,…を介して磁気センサ10に通電し、その出力から磁気センサ10の検出特性をチェックする機能を有している。また、このテスト制御部26は、磁場制御部25に対して磁場の大きさ、発生方向等に関する指令を出力する。
そして、磁場制御部25は、このテスト制御部26の指令値に対応して磁場発生コイル3〜8に駆動電圧を供給するとともに、磁場環境測定センサ14〜17からの測定結果が入力され、この測定結果に基づき磁場発生コイル3〜8の駆動電圧をフィードバック制御する。また、これら磁場環境測定センサ14〜17とともにプローブカード9に設けられている各温度環境測定センサ18〜21の測定結果に基づき、磁場制御部25では、温度により変動する磁場環境測定センサ14〜17の測定結果を補正し、磁場環境測定センサ14〜17の補正後の測定結果に応じて磁場発生コイル3〜8の出力を制御する。
【0025】
また、ステージ12の移動手段には、ステージ12のX方向、Y方向、Z方向の移動を制御するステージ制御部27が接続されている。
さらに、このステージ12は、図4に示すように内部に熱媒体流通管28が埋設されており、温度制御部29によって熱媒体の温度が制御され、表面を所望の温度に設定することができるようになっている。この温度制御部29もテスト制御部26からの指令に応じてステージ12を所定の温度に制御するもので、ステージ12に設けられたステージ温度センサ30またはプローブカード9に設けられた各温度環境測定センサ18〜21のいずれかの検出結果に基づきフィードバック制御される。
【0026】
なお、図1中符号31は、各制御部25,26,27,29が収納される制御ボックスを示している。また、プローブ群13,13,…には、例えばばね性を有するりん青銅が用いられ、架台2、ステージ12、キャリア治具等にはTi等が用いられるなど、それぞれ磁場発生時に磁気センサ10の出力に影響を与えないように非磁性材によって形成されている。
【0027】
このように構成した検査装置1を使用して磁気センサ10を検査する方法について説明する。
磁気センサ10は、ウエハ上に多数形成され、ダイシングテープの上でダイシングされた状態とされており、ダイシングテープはキャリア治具に保持されている。この状態では、各磁気センサ10は、相互に分離され個片化されているが、ダイシングテープ上にマトリクス状に並べられた状態で貼付され、センサ集合体11として保持されている。本発明では、この状態の磁気センサ10のセンサ集合体11を「ウエハ状態の磁気センサ」と称している。
このウエハ状態の磁気センサ(センサ集合体11)に対して、次の(1)〜(6)の手順によって磁気特性の検査が実施される。
【0028】
(1)ウエハ状態の磁気センサ(センサ集合体11)をステージ12の上に真空吸着によって固定するとともに、ステージ12の表面温度を所定の温度Taとするように熱媒体流通管28内に所定の熱媒体を流通する。このとき、ステージ12の温度をステージ温度センサ30により検出しながら、温度制御部29は、必要に応じて熱媒体の温度を変えるなどにより、ステージ12の表面温度を所定温度Taに設定する。
(2)ステージ12を移動することにより、プローブカード9のプローブ群13,13,…に磁気センサ10を対峙する。プローブ群13,13,…は、本実施形態の場合、前述したように縦5個×横5個の合計25個の磁気センサ10と対峙される。そして、ステージ12を上昇することにより、プローブ群13,13,…に各磁気センサ10を接触させる。
【0029】
(3)磁場制御部25により磁場発生コイル3〜8を駆動して、プローブ群13,13,…付近の測定領域Fにテスト制御部26からの指令に対応する所望の磁場を発生する。このとき、プローブカード9の外周部に設けられている磁場環境測定センサ14〜17の測定結果を磁場制御部25にフィードバックし、テスト制御部26からの指令値と比較することにより、磁場発生コイル3〜8に対する駆動を制御する。
また、磁場環境測定センサ14〜17とともにプローブカード9に設けられている温度環境測定センサ18〜21によって温度を測定し、磁場制御部25では、その測定結果に基づき、必要に応じて磁場環境測定センサ14〜17の温度による感度の変動を補正し、磁場環境測定センサ14〜17の補正後の測定結果により磁場発生コイル3〜8に対する駆動を制御する。
【0030】
(4)測定領域Fに所定温度Taで指定の磁場が発生していることが確認されたら、テスト制御部26からプローブ群13,13,…に通電して、測定領域F内の各磁気センサ10に対する所定の磁気テストが実施される。
(5)測定領域Fに配置された一つのブロックの磁気センサ(縦5個×横5個の合計25個の磁気センサ)10のテストが終了したら、ステージ12を下降することにより、プローブ群13,13,…との接触状態を解放する。
【0031】
(6)ステージ12を水平移動して、次のブロックの磁気センサ10をプローブ群13,13,…に対峙させ、上記の(2)〜(5)の操作を繰り返す。
この一連の操作を繰り返すことにより、所定温度Taのときの磁気テストについて、一つのウエハのすべての磁気センサ10をブロック毎にプローブ群13,13,…に同時に接触しながら実施する。
【0032】
所定温度Taにおいて、一つのウエハの磁気センサ10に対する磁気テストがすべて終了したら、次に、ステージ12の温度を前述とは異なる所定温度Tbに設定し、前述の(2)〜(6)と同様の操作を繰り返して、この所定温度Tbでの一つのウエハのすべての磁気センサ10をブロック毎に磁気テストする。
この所定温度Tbでの磁気テストが終了したら、一つのウエハの検査は終了である。
【0033】
以上の検査において、(3)の磁場のフィードバック制御の具体的方法は、特に限定されるものではないが、例えば次のようにして行われる。
測定領域Fに作用する磁場は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各磁場発生コイル3〜8からの磁場の合成された磁場となる。各磁場環境測定センサ14〜17は、いずれも3軸方向に測定可能であるので、その合成磁場の各軸方向の磁場強度を測定する。そして、プローブカード9に設けられている4個の磁場環境測定センサ14〜17のうち、X軸方向に並ぶ2個の磁場環境測定センサ14,15のX軸方向の測定結果の平均によりX軸方向の磁場の大きさを求め、Y軸方向に並ぶ2個の磁場環境測定センサ16,17のY軸方向の測定結果の平均によりY軸方向の磁場の大きさを求める。また、Z軸方向の磁場は、4個の磁場環境測定センサ14〜17のZ軸方向の測定結果の平均によって求める。
これら各軸方向の磁場の測定結果をテスト制御部26からの指令値と比較し、そのずれの大きさに応じて、対応する磁場発生コイル3〜8の出力を補正する。
【0034】
このフィードバック制御は、ステージ12を移動して、新たなブロックの磁気センサ10をプローブ群13,13,…に接触させた都度、行われる。
前述したように検査装置1の各構成要素は非磁性材によって構成されているため、ステージ12の移動等による磁場の変動は小さいと考えられるが、測定領域Fからは離間しているもののモータ等の駆動源も配置されているため、このステージ12の移動毎に新たに磁場環境を測定し、小さな変動も測定して磁場の駆動をフィードバック制御する。このとき、各磁場環境測定センサ14〜17に付属するように設けられている各温度環境測定センサ18〜21からの測定結果により、磁場環境測定センサ14〜17の測定結果を補正し、その補正した測定結果により磁場発生コイル3〜8に対する駆動を制御する。
【0035】
なお、ステージ12の温度は、このステージ12に設けたステージ温度センサ30あるいはプローブカード9に設けた各温度環境測定センサ18〜21のいずれかにより確認することができ、テスト制御部26からの指示に応じて温度制御部29によって熱媒体流通管28への熱媒体の流通が制御される。この熱媒体流通管28、ステージ温度センサ30又は温度環境測定センサ18〜21及び温度制御部29によってステージ12に対する温度調整手段が構成される。
【0036】
以上説明したように、この磁気センサの検査装置1では、磁気センサ10を個片状態ではなくウエハ状態で検査して、複数個の磁気センサ10に同時に磁場を作用させて、これらを同時に検査することができ、磁気センサ10のハンドリングを容易にして生産性を向上させることができる。
そして、その場合に、プローブカード9に磁場環境測定センサ14〜17を設けて、測定領域Fにおける磁場を測定しつつ磁場制御部25にフィードバックしているので、測定領域Fに所望の磁場を正確に発生させることができ、検査精度を高めることができる。また、その際に、温度特性を有する磁場環境測定センサ14〜17の測定結果を温度環境測定センサ18〜21の測定結果により補正し、その補正後の結果により磁場を制御しており、精度の高い磁気テストを実施することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、磁場環境測定センサ14〜17を測定領域Fの周囲に4個配設したが、この配置は限定されるものではなく、1個又は2個以上設けたものも含むものとする。また、すべて3軸のセンサとしたが、2軸センサ及び1軸センサの組み合わせ等としてもよい。
また、図5に示す例ではプローブ群13,13,…は垂直に突出しているが、傾斜する姿勢で突出していてもよい。
また、前記実施形態では、各磁気センサがダイシングテープに貼付された状態のものを検査対象としたが、ダイシングテープに貼付されていない状態でダイシングされていないウエハの状態のものを検査対象とすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…検査装置、2…架台、3〜8…磁場発生コイル、9…プローブカード、9a…プリント配線板、10…磁気センサ、11…センサ集合体(ウエハ状態の磁気センサ)、12…ステージ、13,13,…プローブ群、14〜17…磁場環境測定センサ、18〜21…温度環境測定センサ、25…磁場制御部、26…テスト制御部、27…ステージ制御部、28…熱媒体流通管、29…温度制御部、30…ステージ温度センサ、31…制御ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ状態に並べられた複数の磁気センサが載置され水平方向及び垂直方向に移動可能なステージと、このステージの上方に対向配置され前記磁気センサのうちの少なくとも複数個を含む検査領域の各磁気センサに同時に接触可能なプローブ群を有するプローブカードと、このプローブカードを介して対峙し前記プローブ群の周辺に磁場を発生する複数の磁場発生コイルと、前記プローブカードにおける前記プローブ群の外側を囲むように配設された複数の磁場環境測定センサと、これら磁場環境測定センサの測定結果に基づき前記磁場発生コイルの出力を制御する磁場制御部とを備えることを特徴とする磁気センサの検査装置。
【請求項2】
前記プローブカードにおける各磁場環境測定センサの近傍位置に、温度環境測定センサが配設され、前記磁場制御部は、前記温度環境測定センサの測定結果に基づき前記磁場環境測定センサの測定結果を補正し、その補正した測定結果に基づき前記磁場発生コイルの出力を制御するものであることを特徴とする請求項1記載の磁気センサの検査装置。
【請求項3】
前記ステージに温度調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気センサの検査装置。
【請求項4】
ウエハ状態に並べられた複数の磁気センサのうちの少なくとも複数個を含む検査領域の各磁気センサに同時に接触可能なプローブ群を有するプローブカードと、このプローブカードを介して対峙し前記プローブ群の周辺に磁場を発生する複数の磁場発生コイルと、前記プローブカードにおける前記プローブ群の外側を囲むように配設された複数の磁場環境測定センサとをこれらの相対位置を固定した状態に設けておき、前記ウエハ状態に並べられた複数の磁気センサをステージ上に載置し、このステージを水平方向及び垂直方向に移動して、前記プローブカードのプローブ群に前記磁気センサを複数個ずつ接触させながら、前記磁場発生コイルによって磁場を発生した状態で前記磁気センサの出力を検査するとともに、前記磁気センサの出力を検査するときに予め前記磁場環境測定センサの測定結果に基づき前記磁場発生コイルの出力をフィードバック制御することを特徴とする磁気センサの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36941(P2013−36941A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175337(P2011−175337)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】