説明

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法およびガラス基板ホルダ

【課題】 ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止し、低粗さおよび平坦度に優れた、新規かつ改良された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスクの製造方法を提供する。
【解決手段】 化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に円板状のガラス基板を浸漬しイオン交換させてガラス基板の化学強化を行う化学強化工程と、化学強化工程によって熱を帯びたガラス基板をガラス基板ホルダに保持した状態で冷却する冷却工程と、を含む本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板ホルダ200の保持部210は、ガラス基板10の主表面12と面取面16との境界部に当接し、点接触によってガラス基板を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化工程および冷却工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法およびガラス基板ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化技術の高度化に伴い、情報記録技術、特に磁気記録技術は著しく進歩している。このような磁気記録媒体のひとつであるHDD(ハードディスクドライブ)等の磁気記録媒体用基板としては、アルミニウム基板が広く用いられてきた。しかし、磁気ディスクの小型化、薄板化、および高密度記録化に伴い、アルミニウム基板に比べ基板表面の平坦性及び基板強度に優れたガラス基板の需要が高まっている。
【0003】
また、磁気記録技術の高密度化に伴い、磁気ヘッドも薄膜ヘッドから磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)、大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)へと推移してきており、磁気ヘッドの基板からの浮上量も小さくなってきている。
【0004】
詳細に説明すると、LMR(水平磁気記録)型やPWR(垂直磁気記録)型のHDDでは、当該HDDが起動された後、磁気ヘッドが磁気ディスク上で完全浮上或いは擬似接触走行し、磁気ヘッドへの漏洩磁束を利用して、情報の読み書きを行う。即ち、情報を書き込む場合には、磁気ヘッドの誘導コイルに電流を流して生じる漏洩磁束によりディスク上の磁性膜を磁化し、また情報を読み出す場合には、磁化されている磁気ディスクからの漏洩磁束を磁気ヘッドの誘導コイル或いはMR/GMR/TMR素子が信号を感知して誘起電流へ変換する。
【0005】
近年における高記録密度化の要求を達成するためには、この磁気ヘッドの磁気ディスクに対する浮上量をより小さくすることが必須課題である。即ち、磁気ヘッドと磁気ディスクとの間にある漏洩磁束の広がりを小さく抑えることで磁気ディスク上に形成される磁化領域を小さくすることができ、単位面積あたりに存在する磁化領域の数を増やすことが可能となる。こうして高記録密度化が達成される。
【0006】
しかし、HDDにおいては磁気ヘッドと磁気ディスクを数十m/secという高速度で相対運動させる必要があり、数十nm以下まで狭小化されている浮上量を如何にそのような高速相対運動の環境下で保持するかが一つの大きな解決課題となっている。
【0007】
その解決課題項目の一つとして挙げられるのが、表面うねりに代表される磁気ディスク表面形状を表す評価指標である。その因子が部分的な不均一性を有すると、磁気ヘッドの浮上や擬似浮上が阻害され、磁気ディスク間との浮上量を安定維持することが困難となる。
【0008】
上記MR/GMR/TMRのような磁気抵抗効果型素子を搭載した磁気ヘッドには固有の障害としてサーマルアスペリティ障害を引き起こす場合がある。サーマルアスペリティ障害は、磁気ディスク面上の微小な凸或いは凹形状上を磁気ヘッドが浮上飛行しながら通過するときに、空気の断熱圧縮または接触により磁気抵抗効果型素子が加熱され、読み出しエラーを生じる障害である。高記録密度化には浮上量の低減は欠かせないが、磁気ディスクに表面うねりがあると、サーマルアスペリティ障害を回避するため浮上量を小さくできないという問題がある。
【0009】
従って、このような磁気ヘッドに対して、磁気ディスクの表面は極めて高度な平滑度および平坦度が求められる。また塵埃や異物が付着したまま磁性層を形成すると凸部が形成されてしまうため、ガラス基板には、塵埃や異物を完全に除去する高度な洗浄も求められている。
【0010】
このような磁気ディスク用のガラス基板は、複数の工程を経由して形成される。まず、1枚のウェハを円盤状に切削し、さらに内孔を開けてガラス基板の形を形成する。その後、切削したガラス基板の外周端面および内周端面の面取りを行い、両端面を研磨する。続いて、ガラス基板の主表面も研磨され、最後に研磨が完了したガラス基板に化学強化処理を施す。
【0011】
この化学強化処理を行う化学強化工程は、例えば、アルカリ塩の溶融塩を加熱溶融し、処理対象のガラス基板をガラス基板ホルダに収納、保持した状態で上記溶融塩(化学強化処理液)中に浸漬し、イオン交換させることによって行われる。ここでガラス基板ホルダを利用しているのは、ガラス基板の表面全体を満遍なく化学強化処理液に浸すためである。
【0012】
そしてガラス基板の化学強化工程が完了すると、ガラス基板は、ガラス基板ホルダに保持された状態のままで冷却される。しかし、上記化学強化処理液の温度は400°C程度の高温であるためガラス基板ホルダに保持したまま単に冷却工程を行うとガラス基板に歪みや反りが生じていた。かかる問題を解決するため、化学強化処理液の凝固点を下げ、ガラス基板に生じる反りを低減する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−192239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一方、最近では、記録密度をより一層向上させるために、垂直磁気記録方式が採用されつつある。この垂直磁気記録媒体の場合には、面内磁気記録方式の場合と比べて、ガラス基板の加工精度の影響がより顕著に現れやすい。このため、ガラス基板としては、より一層の低粗さと平坦度、形状の精度が求められている。
【0014】
上述したように、ガラス基板ホルダにガラス基板が保持されたまま冷却された場合、ガラス基板の局部、および化学強化処理液がガラス基板内で局所的に留まっている部分は他の部分と比べて冷却速度が異なってしまい(温度分布が異なり)、それが反作用という形で物理的な力をガラス基板に与える結果となり、局所的に抗力が生じ、歪みや反り、さらには、カケやワレが生じてしまう。
【0015】
このような冷却速度が異なる領域ができるのは、ガラス基板ホルダの保持部とガラス基板との熱容量の違いに基づいた、ガラス基板における、ガラス基板ホルダと接している部分とそれ以外の部分との間の温度変化の違いに起因している。従って、表面積の割合が相対的に高い、即ち、板厚が薄いガラス基板ほど、歪みや反りが顕著に現れることとなる。
【0016】
また、化学強化処理液が基板上に付着したままの状態で固まり、その固まった部分を後の洗浄工程で洗浄しきれず一部が残ったままになると、ガラス基板の平坦度を著しく悪化させる原因となる。
【0017】
このような冷却工程に基づくガラス基板の平坦度の悪化は従来許容される範囲であったが、近年の磁気ディスクの小型化によってガラス基板も薄くなってきていること、および垂直磁気記録方式ではガラス基板の表面の凹凸が磁性層などの表層によって増大されてしまうことなどから、従来よりもさらに厳密に平坦度が求められるようになってきている。
【0018】
本願発明者らは、上記の課題について鋭意検討した結果、ガラス基板の特に主表面上に局所的に残存する化学強化処理液を速やかに取出できるようにガラス基板ホルダを構成することで、主表面から化学強化処理液を迅速かつ確実に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明は、従来のガラス基板の冷却工程が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ガラス基板に歪みや反りさらにはワレやカケが生じるのを防止し、低粗さおよび平坦度に優れた、新規かつ改良された磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法およびガラス基板ホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に円板状のガラス基板を浸漬しイオン交換させてガラス基板の化学強化を行う化学強化工程と、化学強化工程によって熱を帯びたガラス基板をガラス基板ホルダに保持した状態で冷却する冷却工程と、を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板ホルダの保持部は、ガラス基板の主表面と面取面との境界部に当接し、点接触によってガラス基板を保持することを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が提供される。
【0021】
かかる構成により、ガラス基板と保持部との接触面積を最小限に留め、ガラス基板と保持部との間で化学強化処理液が固化するのを防止でき、ガラス基板全体の温度変化を均一化することが可能となる。従って、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。保持部は、ガラス基板を点接触のみで保持することも可能である。
【0022】
保持部における境界部との2つの接触点を含む断面形状は略V字に形成されてもよい。
【0023】
かかる構成により、ガラス基板の特に主表面上に局所的に残存する化学強化処理液を速やかに取出でき、主表面から化学強化処理液を迅速かつ確実に除去することが可能となる。従って、ガラス基板と保持部とがより確実に点のみで接触することとなる。
【0024】
また、上記略V字形に形成することで、ガラス基板が少し傾いて保持部に当接したとしても境界部との点接触が維持されるので、当該ガラス基板ホルダにガラス基板を適当に配置したとしてもガラス基板と保持部との接触面積を最小限に維持することが可能となる。
【0025】
保持部は、複数の糸が略V字形状に張架して形成され、ガラス基板の主表面と糸とのなす角が45°未満であってもよい。
【0026】
面取面は主表面に対して45°の傾きを有して形成される。従って、主表面と糸とのなす角を45°未満とすることで、ガラス基板と糸とが、面取面もしくは主表面に面もしくは線接触することなく、境界部のみに点接触するので、ガラス基板と保持部との接触面積を最小限に維持することが可能となる。
【0027】
糸は、弾性を有するように張架していてもよい。保持部に弾性を持たせることで、従来の剛体の保持部と比較して剛性が低減され、ガラス基板の伸縮を吸収することが可能となり、ガラス基板にかかる反作用力が低減される。また、ガラス基板をガラス基板ホルダに配する際の衝撃や、ガラス基板ホルダの移動等による振動がガラス基板に伝達するのを緩和することが可能となり、ガラス基板に不要な荷重をかけなくて済む。
【0028】
糸は、金属ワイヤであってもよい。金属ワイヤは、耐環境性に強く、熱膨張率が低いため、化学強化における高温においても変形しない。また、経年による劣化が少ないため、適切な弾性(張力)を維持できる。従って、煩雑なメンテナンスの回数を削減でき、安定して低粗さおよび平坦度に優れたガラス基板を供給することが可能となる。
【0029】
境界部は曲面にて形成され、保持部は境界部の曲面に点接触してもよい。かかる構成により、ガラス基板が少し傾いて保持部に当接したとしても境界部との点接触が維持され、ガラス基板と保持部との接触面積を最小限に維持することが可能となる。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に円板状のガラス基板を浸漬しイオン交換させてガラス基板の化学強化を行う化学強化工程と、化学強化工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程と、を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、冷却工程では、ガラス基板が点接触によって保持されていることを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が提供される。
【0031】
また、当該磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により得られたガラス基板の表面に、少なくとも磁性層を形成する工程を含む磁気ディスクの製造方法も提供される。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に円板状のガラス基板を浸漬しイオン交換させてガラス基板の化学強化を行った後に、化学強化において熱を帯びたガラス基板を冷却するために用いられるガラス基板ホルダであって、ガラス基板の主表面と面取面との境界部に当接し、点接触によってガラス基板を保持することを特徴とする、ガラス基板ホルダが提供される。
【0033】
上述した磁気ディスク用ガラス基板の製造方法における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、磁気ディスクの製造方法やガラス基板ホルダにも適用可能である。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように本発明によれば、ガラス基板と保持部との接触面積を最小限に留めることでガラス基板全体の冷却速度を均一に保ち、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止でき、優れた平坦度を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0036】
磁気ディスク用ガラス基板は、複数の工程を経由して形成される。そして、その最終段階では、化学強化工程および冷却工程が遂行される。ガラス基板は、化学強化工程および/または冷却工程の間、ガラス基板ホルダに保持されている。以下、本発明の実施形態の理解を容易にするため、その前提となる化学強化工程および冷却工程を詳細に説明する。
【0037】
(化学強化工程)
化学強化工程において、化学強化処理槽は、化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液にガラス基板を浸漬し、ガラス基板(Liイオンを含むアルミノシリケートガラス)の一部のイオン、例えば、LiイオンおよびNaイオン等の一価の金属イオンを化学強化処理液中の上記イオンより大きなイオン径を有する一価のイオン、例えば、Naイオン、Kイオン、Agイオン等に置換する。かかるイオン交換法によりガラス基板表面には圧縮応力層が形成され、割れやクラックが生じにくい大きな機械的強度を得ることができる。
【0038】
このようなNaイオン、Kイオンを含む上記化学強化処理液(処理溶融塩)としては、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸銀およびその混合溶融塩を用いるのが好ましいが、硝酸塩に限定されるものではなく、硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物などを用いてもよい。
【0039】
かかる化学強化処理液の温度は、ガラス基板の材質の歪点よりも好ましくは50〜150°C程度低く設定し、より好ましくは化学強化処理液自体の温度が350〜400°C程度に設定される。これは、ガラス基板の材質の歪点よりも150°Cより低く設定すると、化学強化が十分に行われず、50°Cより高く設定すると、化学強化工程においてガラス基板に歪みが生じやすくなるからである。
【0040】
このような化学強化によってガラス基板の表面および端面には圧縮応力層が形成される。端面、特に内周端面に形成される圧縮応力層が本実施形態における内周端面の変形を招き、その膨張(伸び)量が変化量として把握される。この圧縮応力層の厚みは、その化学強化の化学強化処理条件を調整して20〜250μmとするのが好ましい。これは、20μm未満では、ガラス基板の強度が低下する恐れがあり、250μmを超える場合、その製造効率が不必要に悪くなるからである。
【0041】
(冷却工程)
化学強化処理液を用いた化学強化工程が終了した後、化学強化処理液から引き上げられたガラス基板ホルダには複数枚のガラス基板が保持されている。この冷却工程では、ガラス基板の主表面上に化学強化処理液がない状態で冷却することが好ましいが、ガラス基板とガラス基板を保持する保持部との接触点には表面張力により多くの溶融液が残存してしまう場合がある。そして、冷却工程において溶解液が凝固すると、ガラス基板の保持部との接触点とそうでない部分(非接触部分)とで熱膨張差が起き、保持部との接触点のみで膨張した状態が維持され他の部分より遅れて凝縮されるので、歪みや反りを生じてしまう。
【0042】
図1は、このような歪みや反りの原因を説明するための説明図である。ここでは、ガラス基板ホルダ100の複数の保持部110で形成されるスロットに、ガラス基板10が保持されている。歪みや反りは、ガラス基板の面内における温度分布が原因であり、その温度分布は、ガラス基板10と保持部110との温度変化の差から生じる。この温度変化の差は、筐体の体積(熱容量)と表面積とによる周囲媒体への熱の放出量(移動量)の違いがら生じ、従って、体積に対して表面積が大きいガラス基板の方が、所定の筐体強度を要し必然的に体積が大きくなるガラス基板ホルダと比較して冷却され易いこととなる。このようにしてガラス基板と保持部との間に温度変化の差が生じる。
【0043】
上記のような温度変化の差が生じると、今度は、ガラス基板ホルダ100からガラス基板10に保持部110を介して熱エネルギーの移動が生じる。従って、ガラス基板10の保持部110との接触領域112においては、冷却を妨げる方向に熱エネルギーが働き、ガラス基板10の接触点周辺の接触部分114では他の部分である非接触部分116より遅れて温度が低くなる。従って、ガラス基板10面内の温度分布や温度変化推移は不均一となる。
【0044】
図2は、ガラス基板10の底面を保持するように配置された保持部110の接触状態を説明するための図1AA’線における縦断面図である。ガラス基板10は、保持部110に載置されているに過ぎず、何ら固定されていないので、保持部110内で、ガラス基板主表面に直交する方向に遊びを有している。しかし、本実施形態によるV字溝が形成された保持部110には重力の働きによりガラス基板10の底面と2つの接触領域112で当接し、かつ、周囲には化学強化処理液118が充填される。従って、ガラス基板10の底面に配置された保持部110では、ガラス基板10との接触面積が非常に大きくなり、それに伴って冷却工程における熱エネルギーの移動が増大する。このような保持部110との温度変化の差が、ガラス基板10の面内における熱膨張差を生み、歪みや反りを起こす原因となる。
【0045】
図3は、ガラス基板10の側面を保持するように配置された保持部110の接触状態を説明するための図1BB’線における横断面図である。この場合も、ガラス基板10は、保持部110に固定されていないので、保持部110の片側にのみ傾いて当接する。従って、接触領域112も片側一点となる。このような側面に配置された保持部110では、化学強化処理液118が重力により残留することもなく、図3に示すように表面張力による微少の化学強化処理液118のみが残存する。
【0046】
この場合、保持部110との接触面積が小さく、残存する化学強化処理液118の量も少ないので、一見歪みや反りも低減されるように思われる。しかし、歪みや反りは、温度変化がガラス基板10の表裏で相異する場合にも生じ得る。これは、保持部110との接触部分とその他の部分との熱膨張差による歪みのメカニズムと等しく、その対象が、ガラス基板10の外周端面の表側と裏側とに置き換わっただけである。
【0047】
図4は、表裏の温度変化差でガラス基板10が歪むことを説明するための横断面図である。ガラス基板10は面120と面122とを有し、図4では、ガラス基板10の外周端面の面122側が保持部110に接触している。従って、面122側は、面120側に比べて冷却速度が遅れ、熱膨張された状態が維持されるので、図4のように面122側のみが基板半径方向に延伸し、面120方向に凹形状となる反りが発生する。干渉縞を測定するオプティカルフラットを通じてこの反りによる起伏を測定したところ、その値は、8nmにも及んでいる。従って、歪みや反りを防止するためには、ガラス基板10と保持部110との温度変化差と同様に、ガラス基板10の表裏面での温度変化差も考慮しなければならないことが理解できる。
【0048】
本願発明者は、歪みや反りの原因が、ガラス基板と保持部との大きな接触領域による熱の移動から生じていることに着目し、ガラス基板の特に主表面上に局所的に残存する化学強化処理液を速やかに取出できるようにガラス基板ホルダを構成することで、主表面から化学強化処理液を迅速かつ確実に除去できることを見出し、ガラス基板と保持部との接触面積を最小限に抑えることで、ガラス基板の歪みや反りを解消することを可能にした。ここでは、まず、化学強化工程後の冷却工程に用いる本実施形態のガラス基板ホルダ200を説明する。
【0049】
(ガラス基板ホルダ200)
図5は、ガラス基板ホルダ200の構成を示した斜視図である。かかるガラス基板ホルダ200は、保持部210と、固定部220と、を含んで構成され、少なくとも冷却工程の間、ガラス基板10を保持する。
【0050】
かかるガラス基板ホルダ200は、冷却工程前段の化学強化工程にも併用されてもよいし、冷却工程のみ用いられるとしてもよい。換言すると、当該ガラス基板ホルダ200にガラス基板10を保持した状態で化学強化し、その後、そのガラス基板10が保持された状態を維持したまま冷却工程を行うとしてもよいし、化学強化工程後に、加熱されたガラス基板10を当該ガラス基板ホルダ200に移し替えて冷却工程を行うとしてもよい。かかる化学強化工程は、ガラス基板10全体を化学強化することを想定しているが、ガラス基板10の一部分、例えば、端面(面取り面も含む)のみ化学強化する場合や、主表面のみ化学強化することもできる。
【0051】
上記保持部210は、土台となる板材212を板状の薄板を湾曲させて形成し、膨出側の表面には突部が長手方向に向かって波状になるように複数形成され、膨出側の突部間に形成されたU字溝部に糸214をV字形状に張架して形成する。そして、かかるV字形状の糸214にガラス基板10を載置する。
【0052】
上記糸214は、金属ワイヤで形成されてもよい。金属ワイヤは、耐環境性に強く、熱膨張率が低いため、化学強化における高温においても変形しない。また、経年による劣化が少ないため、長期間に渡って適切な弾性(張力)を維持できる。従って、煩雑なメンテナンスの回数を削減でき、安定して低粗さおよび平坦度に優れたガラス基板を供給することが可能となる。
【0053】
図6および図7は、保持部210がガラス基板10を保持する構造を詳細に示した縦断面図である。ここで、図6の(a)は、ガラス基板ホルダ200の底面における保持部210を、図7は、側面における保持部210を示している。図6(a)に示すように、板材212に張架されて形成された糸214は、ガラス基板10の主表面12と、主表面12と端面14との間に形成された面取面16との2つの境界部18における接触点を含む断面形状が略V字になるように形成される。このような保持部210の構造は側面においても同様に形成される(図7参照)。
【0054】
かかる構成により、ガラス基板10の特に主表面12上に局所的に残存する化学強化処理液を速やかに取出でき、主表面12から化学強化処理液を迅速かつ確実に除去することが可能となる。従って、ガラス基板10と保持部210とがより確実に点のみで接触することとなる。
【0055】
また、図6(a)のように糸214を略V字形に形成することで、ガラス基板10が保持部210に垂直な方向から少し傾いたとしても境界部18との点接触が維持されるので、当該ガラス基板ホルダ200にガラス基板10を適当に配置したとしてもガラス基板10と保持部210との接触面積を最小限に維持することが可能となる。
【0056】
また、略V字形状に張架された糸214と境界部18との接触点における主表面12と糸214とのなす角20は45°未満であってもよい。
【0057】
本実施形態の面取面16は主表面12に対して45°の傾きを有して形成される。従って、主表面12と糸214とのなす角20を45°未満とすることで、ガラス基板10と糸214とが、面取面16もしくは主表面12に面もしくは線接触することなく境界部18のみに点接触する。
【0058】
さらに言えば、主表面12と糸214とのなす角20は、図6(b)に示すように22.5°とすることが望ましい。主表面12と糸214とのなす角20を22.5°とすることで、面取面16と糸214とのなす角22も22.5°となり、主表面12および面取面16と糸214との接触角が均等になる。従って、主表面12および面取面16と糸214との表面張力を最小限に抑えることができるので、残留する化学強化処理液を低減することができる。
【0059】
このようにガラス基板10の主表面12上に局所的に残存する化学強化処理液を速やかに取出することで、主表面12から化学強化処理液を迅速かつ確実に除去し、ガラス基板と保持部との間で化学強化処理液が固化するのを防止できる。また、接触面積を低減することで、ガラス基板10と保持部210との熱の移動を抑制する。こうして、ガラス基板10全体の温度変化を均一化することが可能となり、ガラス基板10に歪みや反りが生じるのを防止することができる。
【0060】
ここで、もし、ガラス基板10の面取面16と端面14との境界で保持した場合、糸214が浅い角度で交差することになるので、その表面張力により化学強化処理液が取出できず、多くの化学強化処理液が残留して固化することとなる。従って、糸214を、上述したように主表面12と面取面16との境界部18に当接することは本実施形態において非常に重要な意味を有している。
【0061】
また、糸214は、弾性を有するように張架していてもよい。保持部210に弾性を持たせることで、従来の剛体の保持部と比較して剛性が低減され、ガラス基板10の伸縮を吸収することが可能となり、ガラス基板10にかかる反作用力が低減される。
【0062】
また、ガラス基板10をガラス基板ホルダ200に配する際の衝撃や、ガラス基板ホルダ200の移動等による振動がガラス基板10に伝達するのを緩和することが可能となり、ガラス基板10に不要な荷重をかけなくて済む。さらに、ガラス基板10の側面においては、図7に示すように保持部210の弾性によってガラス基板10が押圧固定され、ガラス基板ホルダ200内における遊びによって振動するのを防止することができる。
【0063】
また、境界部18は、曲率半径(1/R)が5(=1/0.200mm)〜200(=1/0.005mm)の曲面にて形成され、糸214は境界部18の曲面に点接触してもよい。かかる構成により、ガラス基板10が少し傾いて糸214に当接したとしても境界部18との点接触が維持され、ガラス基板10と保持部210との接触面積を最小限に維持することが可能となる。
【0064】
上記固定部220は、保持部210を固定する2枚の保持固定部222と、その保持固定部222の強度を高めるため、保持固定部222に連結される4枚の補強板224とから構成される。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法では、ガラス基板ホルダ200の保持部210にガラス基板10を保持させた状態で、ガラス基板10を冷却する。このとき、ガラス基板10主表面に付着していた化学強化処理液は、糸214を辿って速やかに取出され、主表面12から化学強化処理液が迅速かつ確実に除去される。
【0066】
かかる構成により、ガラス基板10全体の冷却速度を均一化することが可能となり、ガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。従って、優れた平坦度を有する磁気ディスク用ガラス基板を生成することができ、歩留まりを上げ、安定して高い生産性を得ることが可能となる。
【0067】
また、上述した冷却工程のみならず、その前工程の化学強化工程においても、ガラス基板ホルダ200と接触している部分と、他の接触していない部分とで加熱速度の差が生じ、やはり、局所的な歪みや反りが発生する。このような歪みや反りは、磁気ディスク面上の微小な凸或いは凹形状となり、上述したサーマルアスペリティ障害を引き起こす原因となる。
【0068】
化学強化工程においても、本実施形態のガラス基板ホルダ200を利用しガラス基板10と保持部210との接触面積を最小化することで、ガラス基板10と保持部210とを断熱し、ガラス基板10全体の温度変化を均一化することが可能となる。従って、化学強化工程においてもガラス基板に歪みや反りが生じるのを防止することができる。また、ここでは、ガラス基板10全体を化学強化することを前提にしているが、ガラス基板10を部分的に、例えば、端面14(面取面16を含んでもよい)のみを化学強化対象とすることもできる。
【0069】
こうして、LMR(水平磁気記録)ならびPWR(垂直磁気記録)型HDDにおける磁気ヘッドスライダーの浮上や擬似浮上走行特性に対する阻害を緩和し、さらに高い記録密度を実現することが可能となる。
【0070】
以下、上述した化学強化を行う化学強化工程や冷却工程の実施例を説明する。
【0071】
[実施例1]
本実施例においては、以下の工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクを製造した。特に、(6)化学強化工程および冷却工程では、本実施形態による化学強化工程および冷却工程が適用されている。
【0072】
(1)形状加工工程及び第1ラッピング工程
まず、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラスを得た。なお、アルミノシリケートガラスとしては、化学強化用のガラスを使用した。ダイレクトプレス以外に、フュージョン法、ダウンドロー法、またはフロート法で形成したシートガラスから研削砥石で切り出して円盤状の磁気ディスク用ガラス基板を得てもよい。なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiO:58〜75重量%、Al:5〜23重量%、LiO:3〜10重量%、NaO:4〜13重量%を主成分として含有する化学強化ガラスを使用した。また、上記ガラスとしてアルミノシリケートガラス以外にもソーダライムガラス等を用いることもできる。
【0073】
次に、この板状ガラスの両主表面をラッピング加工し、ディスク状のガラス母材とした。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行った。具体的には、板状ガラスの両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液を板状ガラスの主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行った。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス母材を得た。
【0074】
(2)切り出し工程(コアリング、フォーミング)
次に、ダイヤモンドカッタを用いてガラス母材を切断し、このガラス母材から、円盤状のガラス基板を切り出した。次に、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に円孔を形成し、ドーナツ状のガラス基板とした(コアリング)。そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施した(フォーミング)。
【0075】
(3)第2ラッピング工程
次に、得られたガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行った。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
【0076】
(4)端面研磨工程
次に、ガラス基板の端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、パーティクル等の発塵を防止できる鏡面状態に加工された。
【0077】
(5)主表面研磨工程
主表面研磨工程として、まず第1研磨工程を施した。この第1研磨工程は、前述のラッピング工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とするものである。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行った。研磨液としては、酸化セリウム砥粒を用いた。
【0078】
この第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0079】
次に、主表面研磨工程として、第2研磨工程を施した。この第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、主表面の鏡面研磨を行った。研磨液としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒を用いた。
【0080】
この第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPAの各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には、超音波を印加した。
【0081】
(6)化学強化工程および冷却工程
次に、前述のラッピング工程及び研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施した。このように化学強化を行うことにより、磁気ディスク基板の表層部に高い圧縮応力を生じさせることができ、耐衝撃性を向上させることができる。
【0082】
化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を準備し、この化学強化溶液を400°Cに加熱しておくとともに、洗浄済みのガラス基板を300°Cに予熱し、化学強化溶液中に約3時間浸漬することによって行った。この浸漬の際には、本実施形態におけるガラス基板ホルダを適用した。かかるガラス基板ホルダは複数のガラス基板を端面で保持している。従って、ガラス基板の表面全体を化学強化させることができる。
【0083】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100μm〜200μmであった。
【0084】
かかる化学強化工程に本実施形態によるガラス基板ホルダを利用した場合、化学強化溶液中に浸漬されたガラス基板とガラス基板ホルダとの間に熱移動が生じないので、平坦度が良好なガラス基板が生成される。
【0085】
続いて、化学強化工程を終えたガラス基板を、本実施形態のガラス基板ホルダに保持したまま、20°Cの水槽に浸漬して冷却し、約10分間維持した。そして、冷却を終えたガラス基板を、約40°Cに加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行った。さらに、硫酸洗浄を終えたガラス基板を、純水、IPAの各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。なお、各洗浄槽には超音波を印加した。
【0086】
本実施形態によるガラス基板ホルダは、このような冷却工程においても、ガラス基板とガラス基板ホルダとの間に熱移動を生じさせないので、さらに平坦度が良好なガラス基板が生成される。
【0087】
[比較]
ここで、本実施形態により生成された磁気ディスクと、従来の比較例(本発明のガラス基板ホルダを用いることなく、冷却したもの)とを比較してワレやカケ・反り等により不良品と判定されたものの発生率を比較した。かかるワレやカケ・不良品は、サンプル数100,000に対して目視または測定器を用いて測定される。
【表1】

【0088】
上記の如く、第1ラッピング工程、切り出し工程、第2ラッピング工程、端面研磨工程、主表面研磨工程、化学強化工程を施すことにより、平坦、かつ、平滑な、高剛性の磁気ディスク用ガラス基板を得た。
【0089】
(7)精密洗浄工程
次に、テクスチャーを形成した磁気ディスク用ガラス基板の精密洗浄を行った。これはヘッドクラッシュやサーマルアスペリティ障害の原因となる研磨剤残渣や外来の鉄系コンタミなどを除去し、表面が平滑で清浄なガラス基板を得るためのものである。精密洗浄工程としては、アルカリ性水溶液による洗浄の後に、水リンス洗浄、IPA洗浄工程を行った。
【0090】
(8)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られたガラス基板の両面に、ガラス基板の表面にCr合金からなる付着層、CoTaZr基合金からなる軟磁性層、Ruからなる下地層、CoCrPt基合金からなる垂直磁気記録層、水素化炭素からなる保護層、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を順次成膜することにより、垂直磁気記録ディスクを製造した。なお、本構成は垂直磁気ディスクの構成の一例であるが、面内磁気ディスクとして磁性層等を構成してもよい。
【0091】
得られた磁気ディスクについて異物により磁性層等の膜に欠陥が発生していないことを確認した。また、グライドテストを実施したところ、ヒット(ヘッドが磁気ディスク表面の突起にかすること)やクラッシュ(ヘッドが磁気ディスク表面の突起に衝突すること)は認められなかった。さらに、磁気抵抗型ヘッドで再生試験を行ったところ、サーマルアスペリティによる再生の誤動作は認められなかった。
【0092】
また、このように本実施形態のガラス基板ホルダを用いて磁気ディスク用ガラス基板を製造した場合と、比較例の方法にて製造されたガラス基板とをそれぞれ、磁気ディスクとした場合には、本実施形態によって製造されたガラス基板を用いて製造された磁気ディスクのほうがヘッドクラッシュ率が小さいことがわかった。
【0093】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0094】
なお、本明細書の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法における各工程は、必ずしも明細書中に記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、化学強化工程またはその後の冷却工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、磁気ディスクの製造方法およびガラス基板ホルダに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】歪みや反りの原因を説明するための説明図である。
【図2】ガラス基板の底面を保持するように配置された保持部の接触状態を説明するための図1AA’線における縦断面図である。
【図3】ガラス基板の側面を保持するように配置された保持部の接触状態を説明するための図1BB’線における横断面図である。
【図4】表裏の温度変化差でガラス基板が歪むことを説明するための横断面図である。
【図5】ガラス基板ホルダの構成を示した斜視図である。
【図6】保持部がガラス基板を保持する構造を詳細に示した縦断面図である。
【図7】保持部がガラス基板を保持する構造を詳細に示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0097】
10 …ガラス基板
100 …ガラス基板ホルダ
110、210 …保持部
112 …接触領域
114 …接触部分
116 …非接触部分
118 …化学強化処理液
200 …ガラス基板ホルダ
214 …糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に円板状のガラス基板を浸漬しイオン交換させて該ガラス基板の化学強化を行う化学強化工程と、該化学強化工程によって熱を帯びたガラス基板をガラス基板ホルダに保持した状態で冷却する冷却工程と、を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記ガラス基板ホルダの保持部は、前記ガラス基板の主表面と面取面との境界部に当接し、点接触によって該ガラス基板を保持することを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記保持部における前記境界部との2つの接触点を含む断面形状は略V字に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記保持部は、複数の糸が略V字形状に張架して形成され、前記ガラス基板の主表面と該糸とのなす角が45°未満であることを特徴とする、請求項2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記糸は、弾性を有するように張架していることを特徴とする、請求項3に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記糸は、金属ワイヤであることを特徴とする、請求項4に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記境界部は曲面にて形成され、前記保持部は該境界部の曲面に点接触することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に円板状のガラス基板を浸漬しイオン交換させて該ガラス基板の化学強化を行う化学強化工程と、該化学強化工程によって熱を帯びたガラス基板を冷却する冷却工程と、を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記冷却工程では、前記ガラス基板が点接触によって保持されていることを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
当該磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により得られたガラス基板の表面に、少なくとも磁性層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項9】
化学強化塩を加熱溶解した化学強化処理液に円板状のガラス基板を浸漬しイオン交換させて該ガラス基板の化学強化を行った後に、該化学強化において熱を帯びたガラス基板を冷却するために用いられるガラス基板ホルダであって、
前記ガラス基板の主表面と面取面との境界部に当接し、点接触によって前記ガラス基板を保持することを特徴とする、ガラス基板ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−171502(P2008−171502A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3943(P2007−3943)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(503069159)ホーヤ ガラスディスク タイランド リミテッド (85)
【Fターム(参考)】