説明

磁気ディスク装置及び磁気ディスク媒体

【課題】 携帯型装置に用いる磁気ディスク装置において、大容量のデータの記録に要する時間の短縮と、再生時間の増加を図り、利便性を高める。
【解決手段】 サーボデータ部32の間にバースト信号を格納したサーボデータ部34を補間し、バースト信号の配置密度をk倍にする。データを記録するライト動作では、サーボデータ部32のみを利用してサーボ制御を行いつつ、ディスクを高回転速度で駆動し、記録時間の短縮を図る。データを再生するリード動作では、サーボデータ部32,34を利用して、ライト動作の1/kの低回転速度でサーボ制御の精度を確保する。再生を低回転速度で行うことで消費電力の低減が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置及び磁気ディスク媒体に関し、特に携帯型の装置に好適な磁気ディスク装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型のハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)の開発に伴い、携帯情報端末や携帯電話にHDDを内蔵し、このHDDに映像データやオーディオデータ(AVデータ)を蓄積して携帯先にて再生し利用する製品が開発されている。この携帯型の装置では、大容量記憶装置であるHDDにAVデータを格納し、再生時にはデータを磁気ディスク媒体から随時、半導体メモリで構成されたバッファメモリに転送し、このバッファメモリにより連続的な再生を実現する。
【0003】
このような用途の携帯型装置においては、内蔵HDDにAVデータを記録するのに要する時間はなるべく短く、一方、連続再生時間はなるべく長いことが好ましい。
【0004】
近年のHDDは回転速度の高速化により高いメディア転送レートが得られる。従来装置の例として、メディア転送レートが4MB/秒、また停止状態から高速回転の定常状態までの起動時間が5秒である内蔵HDDを考え、音楽データ及び画像データの蓄積・再生動作を検討してみる。
【0005】
まず、音楽データは、例えば、3、4曲に相当する20分程度の音楽に対して、20MB程度のMP3データとなる。このデータ量に対してリード時間自体は5秒であり、これに上述の所定の起動時間が加わり、HDDの駆動時間は10秒となる。すなわち、HDDは、5秒で高速回転状態まで加速するために電力を消費し、また5秒間、高速回転状態を維持するために電力を消費する。
【0006】
また、画像データは、例えば、2時間の映画等のコンテンツに対して、通常サイズのモニタでの再生も考慮したMPEG−2エンコードを行うと、4GB程度のデータとなり、また概ね4Mビット/秒の平均再生レートが必要である。例えば、HDDからバッファへ連続して転送するデータ量を20MBとすれば、HDDの駆動時間は上述の音楽データの例と同様、10秒である。上述の平均再生レートでは、20MBのデータは40秒で再生し終わる。すなわち、40秒置きに5秒の起動動作及び5秒の回転維持に電力を消費する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高速回転状態まで加速するための消費電力及び高速回転状態を維持するための消費電力を抑制することができれば、バッテリで駆動される携帯型装置における連続再生時間を長くすることが可能となる。よって、この消費電力の低減が従来の1つの課題であった。ここで、起動時の消費電力は、バッファメモリの容量を大きくして起動頻度を低減することで抑制を図ることができる。しかし、現状、数十MBといった大きな容量のメモリはコストが高く、携帯型装置に搭載することは難しいという問題がある。
【0008】
また、バッファメモリの容量が小さいと、HDDのオン/オフ回数が増加し、これは信頼性の低下や騒音増加の要因ともなり得るという問題がある。
【0009】
また、例えば、上に例示した4GB程度の大容量の画像コンテンツを小型の内蔵HDDに蓄積する場合には、当該HDDの転送レートを4MB/秒として、1000秒(約17分)を要する。つまり、例えば、家庭内で視聴していたコンテンツを外に持ち出す場合、この蓄積に要する時間が長すぎるという問題がある。ちなみに、携帯電話等の内蔵HDDに新たに画像データを記録する時間は、数分程度以下にしたい。
【0010】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、HDDへのデータの記録時間の短縮を図りつつ、消費電力の低減が図られる磁気ディスク装置及びそれに用いる磁気ディスク媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る磁気ディスク装置は、トラック内を区分する第1サーボデータ又は第2サーボデータが選択的に書き込まれた磁気ディスク媒体と、前記トラック内のユーザデータ部にユーザデータを記録するライト動作を高回転速度にて行い、前記トラック内のユーザデータ部からユーザデータを再生するリード動作を低回転速度にて行う制御回路と、を有し、前記第1サーボデータは、前記トラック上にて離散的に位置する第1サーボセクタを構成し、前記ライト動作及び前記リード動作のうち少なくとも前記ライト動作時に再生され、前記第2サーボデータは、前記第1サーボセクタ間に位置する第2サーボセクタを構成し、前記ライト動作及び前記リード動作のうち前記リード動作時にのみ再生されるものを含むことである。
【0012】
本発明に係る磁気ディスク媒体は、トラック内にサーボデータとユーザデータとが設けられた所謂セクタ・サーボ方式の磁気ディスク媒体であって、前記サーボデータには、データが書き込まれない所定長のギャップ領域が隣接して配置される第1サーボデータと、隣接する位置までデータが書き込み可能である第2サーボデータと、があり、前記トラック内には前記第1サーボデータ又は前記第2サーボデータが選択的に書き込まれている。前記所定長のギャップ領域は、記録再生ヘッドのデータを記録するライト素子とデータを再生するリード素子とのトラック方向の物理的な間隔以上のギャップ部として形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ライト動作を比較的高い回転速度で行い、一方、リード動作を比較的低い回転速度で行う。ライト動作を高速回転で行うことにより、データをHDDに記録する時間の短縮が図られる。一方、リード動作を低速回転で行うようにすると、起動時の加速を緩やかにしたり、例えば、定常回転時のパルス駆動の周波数の低減により、消費電力の低減が図られる。また、リード動作と並行してバッファメモリからのデータ再生が行われ、その再生済みのバッファ領域に新たにリード動作によりデータをバッファさせることができるので、1回の起動後、継続してHDDから読み出されるデータ量が増加し得る。すなわち、起動回数が抑制され、それによる消費電力の低減が図られる。この低速回転でのリード動作を、トラック上に配列されライト動作で用いられるサーボデータ(第1サーボデータ)だけを用いて行おうとすると、サーボデータを用いたフィードバック制御の周期が長くなり、ヘッドの位置制御上、好ましくない。そこで、リード動作にのみ用いられるサーボデータ(第2サーボデータ)を第1サーボデータ間に配置し、リード動作を安定して行うことを可能としている。また、第2サーボデータは第1サーボデータとは相違して、隣接してギャップ領域を設ける必要がないので、第2サーボデータを書き込むことによる磁気ディスク媒体のユーザ利用可能な記録容量の減少が抑制され、長時間のコンテンツをHDDに格納し持ち歩くことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る磁気ディスク装置の構成を示す概略のブロック図である。本装置は、磁気ディスク媒体(ディスク)2、スピンドルモータ(SPM)4、ヘッド素子(ヘッド)6、ヘッドアーム8、ボイスコイルモータ(VCM)10、ヘッドアンプ12、駆動回路14、リード・ライト回路16、インターフェース回路18、及びCPU20を含んで構成され、例えば、携帯情報端末や携帯電話に内蔵されて音楽データや映像データ等の蓄積・再生に利用される。
【0016】
ディスク2は、その表面に同心円状に複数設定されるトラックに沿って、磁気により情報を記録される。各トラックは予め書き込まれているサーボデータによって複数のサーボセクタに区分されている。
【0017】
ディスク2はSPM4により回転される。ヘッド6はヘッドアーム8の先端部に取り付けられる。ヘッドアーム8の向きはVCM10により変えられ、これにより、ヘッド6はトラック間を移動し、シーク動作が実現される。ヘッド6は、情報のライト時及びリード時には、回転するディスク2の表面に近接して配置され、ライト動作時には、ディスク2の表面にトラックに沿って変化する磁化パターンを形成し、一方、リード動作時には、ディスク2の表面に形成された磁化パターンによる磁界の変化を検知する。SPM4及びVCM10の駆動は、CPU20の制御の下、駆動回路14により行われる。
【0018】
ヘッド6は、ヘッドアンプ12を介してリード・ライト回路16に接続される。ヘッドアンプ12は、ヘッド6への電気信号、及びヘッド6からの電気信号を増幅する。リード・ライト回路16は、ヘッド6からの電気信号をヘッドアンプ12で増幅して、ディスク2に書き込まれたサーボデータを検出し、当該サーボデータに基づいてヘッド6の位置情報を求める。リード・ライト回路16は、ヘッド6の位置情報としてトラック番号及びサーボセクタ番号を求め、CPU20へ出力する。またリード・ライト回路16は、インターフェース回路18を介して、当該磁気ディスク装置を内蔵する携帯情報端末本体側の処理部との間でユーザデータの送受信を行う。
【0019】
データのライト時には、インターフェース回路18を介して、本体側処理部からデータ書き込み先のアドレス(ライトアドレス)とユーザデータとが入力される。インターフェース回路18はライトアドレスをCPU20へ出力し、ユーザデータをバッファリングする。CPU20は、ライトアドレスに基づいて、駆動回路14へ制御指示を与える。駆動回路14は、ライト動作の開始に際して、SPM4の駆動を開始し、それまで停止されていたディスク2の回転動作を起動させる。後述するように、ライト動作ではディスク2はリード動作時より高速に回転される。この回転速度の制御は、例えば、CPU20がライト動作かリード動作かに応じて、駆動回路14に回転速度の指示を与えることにより行うことができる。ディスク2の回転が定常状態に達すると、駆動回路14は、VCM10を駆動して、ライトアドレスに応じたトラックへヘッド6を移動させる。また、CPU20は、リード・ライト回路16から入力されるヘッド6の位置情報に基づいて、ライトアドレスに対応するデータセクタがヘッド6の位置へ到達するタイミングを計算する。そして、そのタイミングに応じて、当該ライトアドレスを書き込み先として指定されたユーザデータがインターフェース回路18のバッファメモリからリード・ライト回路16へ読み出される。当該ユーザデータは、リード・ライト回路16にて所定の変調がされた後、ヘッドアンプ12、ヘッド6を介してディスク2へ書き込まれる。
【0020】
一方、データのリード時には、インターフェース回路18は、本体側処理部からデータ読み出し先のアドレス(リードアドレス)を入力される。インターフェース回路18はリードアドレスをCPU20へ出力する。CPU20はリードアドレスに基づいて、駆動回路14へ制御指示を与える。駆動回路14はリード動作の開始に際して、SPM4の駆動を開始し、それまで停止されていたディスク2の回転動作を起動させる。リード動作でのディスク2の回転速度はライト動作時より低速に制御される。この回転速度の制御は、例えば、ライト時と同様にCPU20が行う。駆動回路14は例えばVCM10を駆動して、リードアドレスに応じたトラックへヘッド6を移動させる。リード・ライト回路16は、ヘッド6下を通過する各サーボデータから得たヘッド6の位置情報をCPU20へ出力する。CPU20は、リード・ライト回路16から入力されるヘッド6の位置情報に基づいて、リードアドレスに対応するサーボセクタが読み出されたタイミングを検知し、そのタイミングに応じて、当該リードアドレスのデータセクタを読み出し先としてそこに格納されているユーザデータを読み出す。このとき、ユーザデータはヘッド6、ヘッドアンプ12を介してディスク2から再生した信号から、リード・ライト回路16により復調される。リード・ライト回路16はユーザデータをインターフェース回路18へ出力し、インターフェース回路18はそのユーザデータをバッファリングする。インターフェース回路18は、当該リードアドレスに対応するユーザデータをバッファメモリから本体側処理部へ出力する。リード動作が完了した場合、又はバッファメモリがいっぱいになった場合には、CPU20は駆動回路14に対して、ディスク2の回転停止を指示する。
【0021】
図2は、ディスク2の各トラックの形式を示す模式図である。図において、ディスク2の回転によるトラックの移動方向は左向きである。トラックはサーボセクタに区切られ、各サーボセクタ30の先頭側にサーボデータ部32,34が配置され、それに続いてユーザデータ部36が配置される。本装置の各サーボセクタ30には2種類のサーボデータ部32,34のいずれかが配置される。
【0022】
サーボデータ部32は、従来のディスク装置で用いられるものと同じデータ構造を有し、具体的には、例えば、サーボAGC、トラック番号、サーボセクタ番号、バースト信号等の信号を内包する。サーボデータ部32の前方側には、後述する理由から、データが書き込まれない所定長のギャップ部38が隣接する。もう1種類のサーボデータ部34は、バースト信号フィールドからなり、サーボデータ部32に比べて小さなサイズに構成される。またサーボデータ部34は、サーボデータ部32とは異なりユーザデータ部36との間にギャップ部を有さず、両側ともユーザデータ部36に隣接する。
【0023】
サーボデータ部32は、例えば、4サーボセクタ毎に設けられ、ユーザデータのライト動作及びリード動作にて再生され利用される。一方、サーボデータ部34は、それぞれサーボデータ部32が配置される2つのサーボセクタ30-1の間に挟まれる他のサーボセクタ30-2〜30-4に設けられ、リード動作のみにおいて再生され利用される。
【0024】
なお、サーボセクタ番号はサーボデータ部32だけに格納されることから、一連のサーボセクタ30-1〜30-4を1つのサーボセクタと捉え、個々のサーボセクタ30-1〜30-4をサブサーボセクタといった概念で捉えてもよい。その場合、サーボデータ部32に格納されるサーボセクタ番号は、連番で定義することができる。
【0025】
図3は、トラック上を移動するヘッド6を示す模式図である。ヘッド6には、ディスク2からデータを再生するリード素子40、及びディスク2にデータを記録するライト素子42が、トラック方向に対して間隔を置いて配置される。ここで、リード素子40はライト素子42よりトラックの後方側に位置し、ライト素子42に先行してトラックを走査する。
【0026】
リード・ライト回路16は、ライト動作及びリード動作のいずれにおいても、リード素子40が検出するサーボデータ信号を監視する。リード・ライト回路16は、ライト動作においてはサーボデータ部32から得られるサーボデータのみ処理し、サーボデータ部34から得られるデータは無視する。つまり、ライト動作では、リード・ライト回路16は、リード素子40でサーボデータ部32から得られるサーボデータを読みつつ、ライト素子42に信号を供給しユーザデータ部36にデータを書き込む。リード素子40がサーボデータ部32に差し掛かったことが検知されると、ライト素子42が発生する磁界がリード素子40の読み取りに干渉することを避けるために、ライト素子42への信号の供給が停止される。そのため、リード素子40とライト素子42との間隔に応じたギャップ部38がサーボデータ部32の前方に隣接して形成される。一方、リード素子40がサーボデータ部34に差し掛かっても、サーボデータ部34のデータは無視されるため干渉は問題とされず、ライト素子42への信号の供給は停止する必要はない。よって、サーボデータ部34に隣接する位置までユーザデータを書き込むことができる。
【0027】
また、リード動作においては、ライト素子42への信号の供給は常時、停止されているので、リード素子40とライト素子42との間に信号干渉は生じない。リード・ライト回路16はリード動作時には、サーボデータ部32及びサーボデータ部34の両方から得られるデータを処理する。ここで、AGCゲイン調整やトラック番号、サーボセクタ番号の情報取得は、サーボデータ部32に基づいて行われ、サーボデータ部34の読み取り時には行われず、現状が維持される。
【0028】
駆動回路14はSPM4を制御し、ライト動作時にはディスク2を高速の回転速度Nwに設定し、一方、リード動作時には低速の回転速度Nrに設定する。例えば、Nwは7200rpmとされ、Nrはその1/4の1800rpmとされる。ライト動作時に利用されるサーボデータ部32のバースト信号のトラック当りの配置密度Bwと、リード動作時に利用されるサーボデータ部32及びサーボデータ部34両方のバースト信号のトラック当りの配置密度Brとする。例えば、Bwは100個/1周とされ、Brはその4倍の400個/1周とされる。ライト動作時に利用されるサーボデータ部32のバースト信号の配置密度Bwと、リード動作時に利用されるサーボデータ部32及びサーボデータ部34両方のバースト信号の配置密度Brとの比(Bw/Br)は、この回転速度の比(Nw/Nr)の逆数に対応している。これは、通常形式のサーボデータ部32のトラック上でのバースト信号の配置密度Bwと回転速度Nwとで定まるサーボ制御周期τwによってライト動作時のサーボ制御の精度を確保し得る場合に、低回転速度Nrのリード動作時にも同様にサーボデータ部32及びサーボデータ部34両方のトラック上でのバースト信号の配置密度Brと回転速度Nrとで定まるサーボ制御周期τrをライト時のサーボ制御周期τwとほぼ等しくするようにバースト信号の配置密度Brを設定すれば、サーボ制御の精度の確保が期待できることに基づいている。この理由から、上述のディスク2の構成では、バースト信号からなるサーボデータ部34でサーボデータ部32の間隔を補間し、バースト信号の配置密度Brを(Nw/Nr)Bwに相当する値、つまりBwの4倍に設定している。補間するサーボデータ部34の配置密度Br0は、(Nw/Nr−1)Bwとなる。この例では、サーボデータ部32で100個/1周有り、さらにサーボデータ部34で300個/1周分を補間し、配置密度Brでは400個/1周となる。このときのサーボ制御周期は、τw、τrともに約83μsとなる。
【0029】
従って、リード動作の回転速度Nrをより低速にする場合には、サーボデータ部32の間に、より多くのサーボデータ部34を配置することにより、リード動作時のサーボ制御の精度を確保することができる。
【0030】
ここでサーボデータ部32の間に配置するサーボデータ部34が増加するほど、ユーザデータを格納可能な容量が減少することは事実である。しかし、サーボデータ部34は上述のようにバースト信号のみを含み、そのデータサイズは小さい。さらに、サーボデータ部32と異なり、サーボデータ部34にはギャップ部38が付随しない。よって、実際に採用され得る低回転速度Nrに対して、サーボデータ部34を設けることによるユーザデータの蓄積可能容量の低下の影響は軽微である。
【0031】
図4は、ディスク2の各トラックの形式を示す別の模式図である。図2と異なる点を中心に説明する。図において、ディスク2の回転によるトラックの移動方向は左向きである。トラックはサーボセクタに区切られ、各サーボセクタ30の先頭側にサーボデータ部32,34が配置され、それに続いてユーザデータ部36が配置される。本装置の各サーボセクタ30には2種類のサーボデータ部32,34のいずれかが配置される。
【0032】
サーボデータ部32の前方側には、後述の理由から、データが書き込まれない所定長のギャップ部38が隣接する。また、サーボデータ部34は、後述の理由からユーザデータ部36との間にギャップ部を有するものと、ユーザデータ部36との間にギャップ部を持たないものとがある。
【0033】
サーボデータ部32は、例えば、8サーボセクタ毎に設けられ、ユーザデータのライト動作及びリード動作にて再生され利用される。一方、サーボデータ部34は、それぞれサーボデータ部32が配置される2つのサーボセクタ30-1の間に挟まれる他のサーボセクタ30-2〜30-8に設けられ、ユーザデータのライト動作及びリード動作にて再生され利用されるもの(30-5前部)と、リード動作のみにおいて再生され利用されるも(30-2〜4、30-6〜8の前部)のとがある。
【0034】
なお、サーボセクタ番号はサーボデータ部32だけに格納されることから、一連のサーボセクタ30-1〜30-8を1つのサーボセクタと捉え、個々のサーボセクタ30-1〜30-8をサブサーボセクタといった概念で捉えてもよい。その場合、サーボデータ部32に格納されるサーボセクタ番号は、連番で定義することができる。
【0035】
図5は、トラック上を移動するヘッド6を示す模式図である。ヘッド6には、ディスク2からデータを再生するリード素子40、及びディスク2にデータを記録するライト素子42が、トラック方向に対して間隔を置いて配置される。ここで、リード素子40はライト素子42よりトラックの後方側に位置し、ライト素子42に先行してトラックを走査する。
【0036】
リード・ライト回路16は、ライト動作及びリード動作のいずれにおいても、リード素子40が検出するサーボデータ信号を監視する。リード・ライト回路16は、ライト動作においてはサーボデータ部32及びサーボセクタ30-5のサーボデータ部34から得られるサーボデータのみを処理し、その他のサーボセクタ30-2〜4、サーボセクタ30-6〜8の前部に配置されたサーボデータ部34から得られるデータは無視する。つまり、ライト動作では、リード・ライト回路16は、リード素子40でサーボデータ部32及びサーボセクタ30-5のサーボデータ部34から得られるサーボデータを読みつつ、ライト素子42に信号を供給しユーザデータ部36にデータを書き込む。リード素子40がサーボデータ部32またはサーボセクタ30-5のサーボデータ部34に差し掛かったことが検知されると、ライト素子42が発生する磁界がリード素子40の読み取りに干渉することを避けるために、ライト素子42への信号の供給が停止される。そのため、リード素子40とライト素子42との間隔に応じたギャップ部38がサーボデータ部32及びサーボセクタ30-5のサーボデータ部34の前方に隣接して形成される。一方、リード素子40がその他のサーボデータ部34に差し掛かっても、サーボデータ部34のデータは無視されるため干渉は問題とされず、ライト素子42への信号の供給は停止する必要はない。よって、それらのサーボデータ部34(30-2〜4、30-6〜8の前部)では隣接する位置までユーザデータを書き込むことができる。
【0037】
また、リード動作においては、ライト素子42への信号の供給は常時、停止されているので、リード素子40とライト素子42との間に信号干渉は生じない。リード・ライト回路16はリード動作時には、サーボデータ部32及びサーボデータ部34の両方から得られるデータを処理する。ここで、AGCゲイン調整やトラック番号、サーボセクタ番号の情報取得は、サーボデータ部32に基づいて行われ、サーボデータ部34の読み取り時には行われず、現状が維持される。
【0038】
駆動回路14はSPM4を制御し、ライト動作時にはディスク2を高速の回転速度Nwに設定し、一方、リード動作時には低速の回転速度Nrに設定する。例えば、Nwは7200rpmとされ、Nrはその1/4の1800rpmとされる。ライト動作時に利用されるサーボデータ部32及びサーボセクタ30-5のサーボデータ部34のバースト信号のトラック当りの配置密度Bwと、リード動作時に利用されるサーボデータ部32及びサーボデータ部34両方のバースト信号のトラック当りの配置密度Brとする。例えば、Bwは100個/1周(従って、サーボデータ部32は50個/1周)とされ、Brはその4倍の400個/1周とされる。ライト動作時に利用されるサーボデータ部32及びサーボセクタ30-5のサーボデータ部34のバースト信号の配置密度Bwと、リード動作時に利用されるサーボデータ部32及びサーボデータ部34両方のバースト信号の配置密度Brとの比(Bw/Br)は、この回転速度の比(Nw/Nr)の逆数に対応している。これは、通常形式のサーボデータ部32及びサーボセクタ30-5のサーボデータ部34のトラック上でのバースト信号の配置密度Bwと回転速度Nwとで定まるサーボ制御周期τwによってライト動作時のサーボ制御の精度を確保し得る場合に、低回転速度Nrのリード動作時にも同様にサーボデータ部32及びサーボデータ部34両方のトラック上でのバースト信号の配置密度Brと回転速度Nrとで定まるサーボ制御周期τrをライト時のサーボ制御周期τwとほぼ等しくするようにバースト信号の配置密度Brを設定すれば、サーボ制御の精度の確保が期待できることに基づいている。この理由から、上述のディスク2の構成では、バースト信号からなるサーボデータ部34でサーボデータ部32の間隔を補間し、バースト信号の配置密度Brを(Nw/Nr)Bwに相当する値、つまりBwの4倍に設定している。補間するサーボデータ部34の配置密度Br0は、(Nw/Nr−1)Bwとなる。この例では、サーボデータ部32で50個/1周、Bwに含まれるサーボセクタ30-5のサーボデータ部34で50個/1周で、Bwは100個/1周有る。さらにBrに属するサーボデータ部34が300個/1周分で補間され、配置密度Brでは400個/1周となる。このときのサーボ制御周期は、τw、τrともに約83μsとなる。
【0039】
従って、リード動作の回転速度Nrをより低速にする場合には、サーボデータ部32及びサーボセクタ30-5のサーボデータ部34の間に、より多くのサーボセクタを定義し、それらにサーボデータ部34を配置することにより、リード動作時のサーボ制御の精度を確保することができる。
【0040】
ここで、ライト動作時に使用するサーボデータの一部をサーボデータ部34(サーボセクタ30-5)で構成することで、サーボ領域の削減を図っているが、サーボデータ部32及びサーボセクタ30-5のサーボデータ部34の間に配置するサーボデータ部34が増加するほど、ユーザデータを格納可能な容量が減少することは事実である。しかし、サーボデータ部34は上述のようにバースト信号のみを含み、そのデータサイズは小さい。さらに、リード動作のために補間するサーボデータ部34(30-2〜4、30-6〜8の前部)にはギャップ部38が付随しない。よって、実際に採用され得る低回転速度Nrに対して、サーボデータ部34を設けることによるユーザデータの蓄積可能容量の低下の影響は軽微である。
【0041】
以上の説明では、ユーザデータ部36については詳細に述べていないが、サーボデータ部32及びサーボデータ部34をサーボ制御の周期性を確保するように配置した場合、必ずしもその領域の大きさが同一となるとは限らない。例えば、サーボセクタ30-4、サーボセクタ30-8などのユーザデータ部36は、ギャップ部38やサーボデータ部32の領域が大きいことによって他のものよりも短くなることもある。また、他の部分のユーザデータ部36のサイズが異なることもあり得る。
【0042】
また、リード動作時のサーボ制御周期τrとライト動作時のサーボ制御周期τwとを等しくすることで、リード動作時とライト動作時のサーボ制御の精度を確保するように述べた。しかし、必ずしもリード動作時とライト動作時のサーボ制御周期を等しくする場合だけが望まれるわけではない。誤ってトラック中心から大きくズレて書き込まれると、隣接トラックのデータを上書きして消してしまったリ、正しくトラックの中心位置で再生しても再生できなくなるなどの問題が生じるので、ライト動作時には高いサーボ制御能力が求められる。一方、リード動作時には誤ってトラック中心からずれている状態でも信号再生機能、誤り訂正機能等の性能によって、正しく再生できる可能性がある。これらのことから、リード動作時のサーボ制御周期τrをライト動作時のサーボ制御周期τwに比べてある程度大きくすることが可能である。つまり、リード動作時に利用されるバースト信号のトラック当りの配置密度Brについては、サーボ制御周期τrとτwとを等しくする条件の時よりも低くすることが出来る。よって、リード動作時のために補間するサーボデータ部の数を減らすことも可能である。それにり、ユーザデータの蓄積可能容量の低下の影響を更に低減できる。
【0043】
本装置では、例えば、携帯情報端末に音楽データや映像データを格納して外出先に持ち出す場合等に、磁気ディスク装置にそれらデータを記録するライト動作が高回転速度で行われ、記録時間の短縮が可能となる。その一方で、音楽データや映像データの再生を行うリード動作では、ディスクは、例えば、ライト動作時の1/4といった低回転速度で駆動される。リード動作を低速回転で行うようにすると、起動時の加速が緩やかになることや、例えば、定常回転時のパルス駆動の周波数が低減されることにより、消費電力の低減が図られる。
【0044】
また、リード動作と並行して、音楽や映像の再生が進行する結果、インターフェース回路18のバッファメモリや情報端末装置本体側のバッファメモリの容量以上のデータ量を連続して、すなわちディスク2の回転を止めることなくディスク2から取り出すことが可能となる。これにより磁気ディスク装置の起動回数の低減が図られ、起動に要する電力消費が抑制される。この効果は、リード動作で再生されるデータレートが、情報端末装置本体側での音楽データや映像データの再生レートに近いほど大きくなる。よって、リード動作時の低回転速度は、音楽データや映像データの再生レートの変動幅をマージンとして考慮した上でなるべく当該再生レートに近づけることが消費電力低減に好適である。
【0045】
リード動作を低回転速度とすることで、ディスク2から読み出されるデータレートが低下する。これに対応して、デコード処理やエラー訂正処理等、リード・ライト回路16やインターフェース回路18で行われる処理も低速にすることができる。そこでCPU20は、リードデータを処理する処理回路を駆動するクロック発生回路を制御し、そのクロック周波数を回転速度に合わせて低下させる。これにより、再生系の処理回路での消費電力が低減される。
【0046】
磁気ディスク装置にデータを記録するライト動作が高回転速度で行われているときに、リード動作も割り込まれて発生するような使用法も想定される。その場合には、磁気ディスク媒体の回転速度を低回転速度に変更せずに、高回転速度で回転させたまま、ライト動作と同様に第1サーボデータによってサーボ制御を実施し、高速でリード動作をさせることも可能である。本発明を適用しても、このような高回転速度でのリード動作を妨げるものではない。但し、その場合には、低消費電力等の効果は得られない。
【0047】
なお、上述の構成ではサーボデータ部32はバースト信号を含むものであり、サーボデータ部34は、サーボデータ部32相互の間を基本的に等間隔に内分する位置に配置されている。これにより、バースト信号が一定の周期で検出され、安定したサーボ制御が実現される。この他、サーボデータ部32はバースト信号を除いたデータ構造とする一方、バースト信号を含むサーボデータ部34がトラックの全周に亘って均一に配置されるように構成しても、安定したサーボ制御を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態に係る磁気ディスク装置の構成を示す概略のブロック図である。
【図2】トラックの形式を示す模式図である。
【図3】トラック上を移動するヘッドを示す模式図である。
【図4】トラックの形式を示す別の模式図である。
【図5】トラック上を移動するヘッドを示す別の模式図である。
【符号の説明】
【0049】
2 ディスク、4 SPM、6 ヘッド、8 ヘッドアーム、10 VCM、12 ヘッドアンプ、14 駆動回路、16 リード・ライト回路、18 インターフェース回路、20 CPU、30 サーボセクタ、32,34 サーボデータ部、36 ユーザデータ部、38 ギャップ部、40 リード素子、42 ライト素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック内を区分する第1サーボデータ又は第2サーボデータが選択的に書き込まれた磁気ディスク媒体と、
前記トラック内のユーザデータ部にユーザデータを記録するライト動作を高回転速度にて行い、前記トラック内のユーザデータ部からユーザデータを再生するリード動作を低回転速度にて行う制御回路と、
を有し、
前記第1サーボデータは、前記トラック上にて離散的に位置する第1サーボセクタを構成し、前記ライト動作及び前記リード動作のうち少なくとも前記ライト動作時に再生され、
前記第2サーボデータは、前記第1サーボセクタ間に位置する第2サーボセクタを構成し、前記ライト動作及び前記リード動作のうち前記リード動作時にのみ再生されること、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気ディスク装置において、
トラック当りの前記ライト動作時に再生するサーボデータの位置情報検出用信号の配置密度に対する前記リード動作時に再生するサーボデータの位置情報検出用信号の配置密度の比は、前記低回転速度に対する前記高回転速度の比に応じて設定されること、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気ディスク装置において、
前記ライト動作時のサーボ制御周期に対して前記リード動作時のサーボ制御周期の方が大きいこと、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気ディスク装置において、
前記磁気ディスク媒体からデータを再生するリード素子及び前記磁気ディスク媒体にデータを記録するライト素子が前記トラック方向に対して間隔を置いて配置された磁気ヘッドと、
前記ライト動作及び前記リード動作を行うと共に、前記リード素子による再生時には前記ライト素子による記録を停止する制御回路と、
を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気ディスク装置において、
前記ライト素子は、前記磁気ディスク媒体の回転方向に関し前記リード素子より下流側に配置されること、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気ディスク装置において、
前記ライト動作時に再生される前記第1サーボセクタのサーボデータ部には、データを書き込まれない所定長のギャップ領域が隣接して配置され、
前記リード動作時にのみ再生される前記第2サーボセクタのサーボデータ部には、前記ギャップ領域がないこと、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁気ディスク装置において、
前記ギャップ領域は、前記第1サーボデータに対して当該磁気ディスク媒体の回転方向に関し前方側に隣接すること、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項8】
請求項6に記載の磁気ディスク装置において、
前記ギャップ領域は、記録再生ヘッドのデータを記録するライト素子とデータを再生するリード素子とのトラック方向の物理的な間隔以上のギャップ部として形成されること、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項9】
請求項1に記載の磁気ディスク装置において、
前記第2サーボセクタは、前記第1サーボセクタ間に位置する各サーボセクタであり、
前記第1サーボデータは、前記ライト動作時及び前記リード動作時に再生されること、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気ディスク装置において、
前記第1サーボデータは、前記第2サーボデータに比べてデータサイズが大きいものを少なくとも1個以上含むこと、を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気ディスク装置において、
前記第2サーボデータは、サーボデータの構成要素のうちバースト信号のみを含むこと、を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項12】
トラック内にサーボデータとユーザデータとが設けられた所謂セクタ・サーボ方式の磁気ディスク媒体において、
前記サーボデータにはデータが書き込まれない所定長のギャップ領域が隣接して配置される第1サーボデータと、
隣接する位置までデータが書き込み可能である第2サーボデータと、
があり、前記トラック内には前記第1サーボデータ又は前記第2サーボデータが選択的に書き込まれていること、
を特徴とする磁気ディスク媒体。
【請求項13】
請求項12に記載の磁気ディスク媒体において、
前記第1サーボデータは、前記トラック上にて周期的に配置されて各々サーボセクタを構成し、
前記第2サーボデータは、前記第1サーボデータ間にほぼ等間隔に配置されて各々サーボセクタを構成すること、
を特徴とする磁気ディスク媒体。
【請求項14】
請求項12に記載の磁気ディスク媒体において、
前記第1サーボデータは、前記第2サーボデータに比べてデータサイズが大きいものを少なくとも1個以上含むこと、を特徴とする磁気ディスク媒体。
【請求項15】
請求項14に記載の磁気ディスク媒体において、
前記第2サーボデータは、サーボデータの構成要素のうちバースト信号のみを含むこと、
を特徴とする磁気ディスク媒体。
【請求項16】
請求項12に記載の磁気ディスク媒体において、
前記ギャップ領域は、前記第1サーボデータに対して当該磁気ディスク媒体の回転方向に関し前方側に隣接すること、
を特徴とする磁気ディスク媒体。
【請求項17】
請求項12に記載の磁気ディスク媒体において、
前記ギャップ領域は、当該磁気ディスク媒体に対して情報を記録再生する記録再生ヘッドのデータを記録するライト素子とデータを再生するリード素子とのトラック方向の物理的な間隔以上のギャップ部として形成されていること、
を特徴とする磁気ディスク媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−294092(P2006−294092A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110735(P2005−110735)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】