説明

磁気ディスク装置及び記録再生方法

【課題】 スライダに形成された記録用ヘッドと再生用ヘッドのヘッド間距離に起因して発生する再生時のエラー・レートを低減する。
【解決手段】 磁気ディスク59には、ヘッド間距離とヨー角により再生ヘッド202を目標位置201に位置づけたときに記録ヘッド204は位置206に位置づけられユーザ・データ205を記録する。目標位置に記録されたユーザ・データを再生するために再生ヘッドをDHO補正して位置づけた位置214には、DHO修正データ210が書き込まれている。プロセッサは、ユーザ・データの再生時にDHO修正データを読み取り、再生ヘッドの位置を位置206に修正してユーザ・データを再生するように前記磁気ディスク装置の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置において、スライダに形成された記録用ヘッドと再生用ヘッドの間隔に起因して発生する再生時のエラー・レートを低減する技術に関し、さらには狭トラック・ピッチの磁気ディスクにおける再生時のエラー・レートを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置では磁気ヘッドがスライダに形成され、ヘッド/スライダを構成している。磁気ディスクには、同心円上に複数のサーボ・トラックが書き込まれており、所定のサーボ・トラックに位置づけられたヘッド/スライダに対して磁気ディスクが回転することで対応するデータ・トラックの円周方向にデータの読み書きが行われていく。ロータリー式の磁気ディスク装置では、図10(A)に示すようにヘッド支持機構に支持されたヘッド/スライダ3がヘッド/支持機構の回転中心5までの距離を半径とする円周上を回動する。したがって、磁気ヘッドが磁気ディスク1の各サーボ・トラックに位置づけられるときにヘッド支持機構の回転中心5とヘッド/スライダ3の短手側の縁の中心を結ぶ線(以下、これを回動中心線という。)15と、ヘッド/スライダの中心位置におけるデータ・トラックの接線9、13との間にサーボ・トラックの半径方向に位置に応じて変化する角度が発生する。この角度を一般にヨー角という。
【0003】
磁気ディスク1に対してヘッド/スライダ3が内周側データ・トラック7に位置づけられているときは、サーボ・トラック7の接線9と回動中心線15とがθ1のヨー角を形成し、スライダ3が外周側サーボ・トラック11に位置づけられているときは、サーボ・トラック11の接線13と回動中心線15とがθ2のヨー角を形成する。図10(A)から明らかなように、ヨー角はヘッド/スライダ3の磁気ディスク上の半径方向の位置により異なった値となる。
【0004】
スライダには、図10(B)に示すようにMRヘッドまたはGMRヘッドといった再生ヘッド17と誘導型の記録ヘッド19が同一のスライダに形成されている。再生ヘッド17と記録ヘッド19とは回動中心線15がライト・ギャップおよびリード・ギャップの中心を通過するようにスライダの磁気ディスクに対する対向面に形成されている。再生ヘッド17と記録ヘッド19とは、回動中心線15の方向に所定のヘッド間隔Lで配置されている。
【0005】
したがって、記録ヘッド19と再生ヘッド17のヘッド間隔Lは、磁気ディスクの半径方向についてヨー角により変化する所定の距離が発生する。この距離を、デュアル・ヘッド間オフセット(以下、DHOという。)ということにする。DHOは、ヨー角とヘッド間隔Lで決まる物理的な距離であるが、磁気ディスク装置では、再生ヘッド17と記録ヘッド19との間隔を計算されたサーボ・トラックの数で認識して磁気ヘッドの位置決め制御に利用しているので、DHOを計算で求めたトラック数で表す場合もある。本明細書では、物理的な距離としてのDHOの値をDHO[距離]といい、サーボ・トラックの数として計算されたDHOの値をDHO[計算]ということにする。
【0006】
磁気ディスク装置では、データの書き込み時に再生ヘッド17で磁気ディスク上に書き込まれたサーボ・データを読み取って再生ヘッド17の位置を決めてから記録ヘッド19でユーザ・データを記録する。ヘッド/スライダ3の位置決め用に再生ヘッド17を使用し、書き込み用に再生ヘッド17からヘッド間距離Lだけ離れた位置にある記録ヘッド19を使用するため、磁気ディスクの半径方向における実際にユーザ・データが記録される位置は、位置決めに使用したサーボ・トラックの位置である目標位置からDHO[距離]だけオフセットした位置になる。したがって再生時には、目標位置からDHO[距離]だけオフセットした位置に再生ヘッド17を位置決めする必要がある。DHO[距離]は、磁気ディスクに対するスライダの位置すなわちヨー角で変化するので、再生ヘッドの位置ごとに再生ヘッドを正しく記録された位置に位置づけるためには、磁気ディスク装置がDHO[距離]を正確に認識する必要がある。
【0007】
特許文献1には、トラックの全サーボ・セクタに図6(b)のオフトラック計測用パターンを書き込んで、複合型ヘッドの再生時のオントラックの精度を向上させる技術を開示する。特許文献2には、記録ヘッドがトラックの中心にくるようにオフセット分だけずらしてトラックフォローイングする技術を開示する。
【特許文献1】特開2000−322848号公報
【特許文献2】特開平11−191274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目標位置に記録したユーザ・データを再生するために、目標位置となったサーボ・トラックの位置から実際にユーザ・データが記録された位置まで再生ヘッドを移動させる動作をDHO補正ということにする。磁気ディスク装置では、磁気ディスクに磁気ヘッドの位置を決めるためのサーボ・データが書き込まれている。サーボ・データは再生信号が磁気ディスクの半径方向における位置を示すように構成されたサーボ・トラックを含んでいる。サーボ・トラックは磁気ディスクの最内周サーボ・トラックから最外周サーボ・トラックまで一定の基準トラック・ピッチで書き込まれている。磁気ディスク装置のプロセッサは、位置決め制御プログラムを実行して再生したサーボ・データの信号から磁気ヘッドの磁気ディスク上の位置を認識する。
【0009】
位置決め制御プログラムは、各サーボ・トラックに対するDHO[距離]を直接認識することに代えて、DHO[計算]を利用して磁気ディスクから読み出したサーボ・データの情報に基づいてDHO補正を行っている。磁気ディスク装置の製造段階では、磁気ディスクにサーボ・データを書き込んだあとにすべてのサーボ・トラックについてDHOを実測する。実測したDHOをDHO[実測]ということにする。DHO[実測]は、DHO[距離]に対応するサーボ・トラックの数であり、ヘッド間距離L、サーボ・トラックのトラック・ピッチ、およびヨー角に依存する。
【0010】
磁気ディスク装置の製造段階ですべてのサーボ・トラックに関して実測したDHO[実測]をメモリに記憶しておき、データの記録再生時に使用する方法も考えられるが、メモリの容量が膨大になるので実際的ではない。一般的な磁気ディスク装置では、磁気ディスクの半径方向に選択した数ポイント分のDHO[実測]だけをメモリに記憶し、メモリに記憶したサーボ・トラック以外のサーボ・トラックに関しては、DHO補正する量をDHO[実測]から計算したDHO[計算]を使用して求めている。位置決め制御プログラムは、各サーボ・トラックに関するDHO[計算]を、DHO[実測]を記憶したサーボ・トラック間を直線補完式で補間計算したり、多項式近似による計算をしたりして求めている。
【0011】
DHO[計算]は、DHO[距離]に対応するサーボ・トラックの数に相当する。サーボ・データからは連続的にデータ・トラックの位置情報を獲得することができるので、サーボ・トラック数は1未満のトラック数までも計算される。よって、DHO補正するときにプロセッサが扱う量は、磁気ディスクから再生したサーボ・データの信号に基づいてカウントしたサーボ・トラックの数、またはDHO[計算]のサーボ・トラックの数ということになる。
【0012】
メモリに記憶されたDHO[実測]は、基準トラック・ピッチで書き込まれたサーボ・トラックについて実測された値であり、DHO[計算]は、サーボ・トラックが基準トラック・ピッチで書き込まれていることを前提にして求まるように位置決め制御プログラムは構成されている。したがって、DHO補正を行って、ユーザ・データの再生時に再生ヘッドの位置決めを正確に行うためには、磁気ディスクに書き込まれているサーボ・トラックのトラック・ピッチが磁気ディスクの全体に渡って基準トラック・ピッチに一致していることが必要である。
【0013】
しかし、実際に書き込まれるサーボ・トラックのトラック・ピッチは、セルフ・サーボ・ライト方式で書き込んでも、サーボ・トラック・ライタを使う方式で書き込んでも基準トラック・ピッチからずれることがある。特に、トラック・ピッチが狭くなるほどトラック・ピッチを厳密に基準トラック・ピッチに一致させることが困難になる。磁気ディスクのトラック・ピッチが局所的に基準トラック・ピッチからずれている場合には、その部分において補間計算や多項式近似ではユーザ・データが記録された位置を示すDHO[計算]を正しく計算することができないために、DHO補正にずれが生じユーザ・データの再生エラーが増大する。
【0014】
たとえば図11(A)において、サーボ・トラックのトラック・ピッチが基準トラック・ピッチPである300nmで磁気ディスクのサーボ・セクタに書き込まれているものとし、ある目標位置であるサーボ・トラック21においてスライダ3に形成された再生ヘッド17と記録ヘッド19のDHO[距離]27が3000nmあったとする。この場合、DHO[距離]27は3000/300=10トラックに相当するので、位置決め制御プログラムを再生時に目標トラック21に対するDHO[計算]28を10トラックと計算するように構成しておく。
【0015】
サーボ・トラック21を目標にしてユーザ・データを位置23に記録する時には、最初に再生ヘッド17を目標トラック21に位置決めする。記録ヘッド19は同一スライダ3に形成されているため、再生ヘッド17が位置決めされたサーボ・トラック21からDHO[距離]27だけ離れた位置23にあるデータ・セクタにユーザ・データ25を記録する。この場合記録ヘッド19がユーザ・データを記録した位置は、目標位置21から10トラック離れた位置23になる。このようにサーボ・トラックを目標位置にしてユーザ・データを磁気ディスクに記録するということは、記録ヘッドが目標サーボ・トラックからDHO[距離]だけ離れた位置に記録することに相当する。ここに、再生ヘッド17の位置または記録ヘッド19の位置という場合はリード・ギャップの中心またはライト・ギャップの中心を意味している。
【0016】
ユーザ・データ25を再生するときに位置決め制御プログラムは、サーボ・トラック21のDHO[計算]である10トラックという情報に基づいてDHO補正をする。具体的には、サーボ・トラック21から位置23に向かって再生ヘッド17を移動させてサーボ・トラックの数をカウントし、10トラック目の位置である位置23に再生ヘッド17を位置づける。サーボ・トラックのトラック・ピッチが基準トラック・ピッチに一致していればDHO[距離]とDHO[計算]だけサーボ・トラック数をカウントして得た距離とは一致し、再生ヘッド17は、目標位置21から3000nmオフセットした位置23に位置決めされる。位置23は磁気ディスクの半径方向の位置におけるユーザ・データ25が記録され位置の中心であり再生時の再生ヘッド17の理想的な位置である。
【0017】
一方、図11(B)のように磁気ディスクの局部的な領域でサーボ・トラック・ピッチP1が基準トラック・ピッチに比べて4%小さいとした場合には再生時に再生ヘッドをユーザ・データの中心に位置づけることができなくなる。目標サーボ・トラック29にデータを記録する時には、図11(A)の場合と同様に、目標位置29に再生ヘッドを位置決めする。記録ヘッド19は、再生ヘッド17が位置決めされた目標サーボ・トラック29からDHO[距離]27(3000nm)だけ離れた位置37にユーザ・データ39を記録する。
【0018】
再生時には、位置決め制御プログラムが直線補完式を使ってサーボ・トラック29のDHO[計算]33を10トラックと計算する。プロセッサはDHO補正をするために、サーボ・トラック29から位置37に向かって再生ヘッド17を移動させながら通過したサーボ・トラックの数をカウントし、10トラック目の位置である位置35に再生ヘッド17を位置づける。このときサーボ・トラックのトラック・ピッチP1は基準トラック・ピッチより4%小さいため、10トラック分の距離は10×300×(1−0.04)=2880nmとなり、位置35と実際にデータ39が記録された位置37との間には3000−2880=120nmのオフセットが生じる。オフセットの量は、DHO[距離]が大きくなるほど増大し、この例では1トラック・ピッチの40%にまで達するため、再生ヘッドはユーザ・データを再生することが困難になり再生エラーが発生する。
【0019】
そこで本発明の目的は、DHO補正の誤差に起因するユーザ・データの再生エラーを低減した磁気ディスク装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、トラック・ピッチの変動に起因するユーザ・データの再生エラーを低減した磁気ディスク装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、磁気ディスク装置における再生エラーを低減することができるユーザ・データの記録再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の態様は、記録ヘッドと再生ヘッドが所定の間隔で配置されているスライダと、前記スライダを搭載し回転軸を中心に回動動作をするヘッド支持機構と、目標位置に記録されたユーザ・データを再生するために前記再生ヘッドをDHO補正して位置づけた位置にDHO修正データが書き込まれている磁気ディスクと、前記DHO修正データを読み取り前記再生ヘッドの位置を修正して前記ユーザ・データを再生するように前記磁気ディスク装置の動作を制御するプロセッサとを有する磁気ディスク装置を提供する。
【0021】
DHO補正は、磁気ディスクに書き込まれたサーボ・データの情報に基づいて再生時に再生ヘッドをユーザ・データが記録された位置に位置づけるために行われる。DHO修正データは、DHO補正して位置づけられた再生ヘッドの位置が適切でない場合に、再生ヘッドの位置を修正するためのデータである。DHO修正データは、実際に目標位置に記録されたユーザ・データの位置をプロセッサが認識できる値であればよく、目標位置に記録されたユーザ・データの位置とDHO補正で再生ヘッドが位置づけられた位置との差に相当するサーボ・トラックの数とすることができる。DHO修正データを目標サーボ・トラックに対してDHO補正されて位置づけられた再生ヘッドの位置に書き込んでおくと、サーボ・トラックのトラック・ピッチが基準トラック・ピッチに対して局部的に変動していても再生ヘッドはDHO修正データを正確に読み取ることができる。そして、DHO修正データを使用してユーザ・データが記録された位置に再生ヘッドを正しく位置づけてユーザ・データを再生することができ、再生エラーを低減することができる。
【0022】
また、DHO修正データは、目標位置からユーザ・データが記録された位置までの磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックの数とすることができる。DHO修正データは、磁気ディスクの最内周サーボ・トラックから最外周サーボ・トラックまですべてのサーボ・トラックに関して書き込んでおけば、すべてのサーボ・トラックに関してDHO補正に対する修正動作が可能になる。DHO修正データはサーボ・トラックに書き込んでも、データ・セクタに書き込んでもよい。また、磁気ディスクの円周方向に複数書き込んでおけば、DHO補正した再生ヘッドの位置を修正するときに消費する磁気ディスクの回転待ちの時間を低減することができる。
【0023】
本発明の第2の態様は、記録ヘッドと再生ヘッドが所定の間隔で配置されているスライダと、前記スライダを搭載し回転軸を中心に回動動作をするヘッド支持機構と、ユーザ・データを記録する目標位置にDHO修正データが書き込まれた磁気ディスクと、前記再生ヘッドで前記DHO修正データを読み取り前記再生ヘッドの位置を修正して前記ユーザ・データを記録するように前記磁気ディスク装置の動作を制御するプロセッサとを有する磁気ディスク装置を提供する。
【0024】
ユーザ・データを記録するために再生ヘッドを位置づける目標サーボ・トラックにDHO修正データを書き込んでおけば、ユーザ・データの記録時に記録位置を修正することができる。ユーザ・データはDHO補正したときに再生ヘッドが位置づけられる位置に記録されているため、再生時のパフォーマンスの低下を来すことなく再生エラーを低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、DHO補正の誤差に起因するユーザ・データの再生エラーを低減した磁気ディスク装置を提供することができた。さらに本発明により、トラック・ピッチの変動に起因するユーザ・データの再生エラーを低減した磁気ディスク装置を提供することができた。さらに本発明により、磁気ディスク装置における再生エラーを低減することができるユーザ・データの記録再生方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明の実施の形態にかかる磁気ディスク装置50の概略構成を示す平面図である。ベース55には、磁気ディスク59とヘッド支持機構53が設けられている。ヘッド支持機構53はロータリー式アクチュエータといわれる構成を備え、先端側にヘッド/スライダを搭載してピボット軸57を中心に矢印Aまたは矢印B方向に回動動作をする。ヘッド/スライダには、再生ヘッドと記録ヘッドが所定の間隔を隔てて形成されている。
【0027】
図2は磁気ディスク59におけるサーボ・セクタ103とデータ領域105のフォーマット構成の一例を示す図である。磁気ディスク59のフォーマットは、データ面サーボ方式を採用する磁気ディスク装置に採用される。ただし、本発明はデータ面サーボ方式を採用する磁気ディスク装置に限定されるものではなく、サーボ面サーボ方式を採用する磁気ディスク装置に適用することもできる。データ面サーボ方式では、一つの磁気ディスク装置に磁気ディスクの記録面が複数存在している場合は各記録面が同様なフォーマット構成となる。サーボ・セクタ103は、図2(A)に示すように磁気ディスク59の記録面において半径方向に最内周側から最外周側に全体に渡って形成されている。サーボ・セクタ103はさらに放射状となるように磁気ディスクの円周方向に離散的に複数配置されており、それぞれのサーボ・セクタ103にはサーボ・データが記録されている。サーボ・セクタ103とデータ領域105とは磁気ディスク59の円周方向に交互に配置されている。
【0028】
また、磁気ディスク59のデータ領域105には、同心円状に複数のデータ・トラック101がサーボ・データにより定義されている。データ・トラックは、サーボ・データから得た位置情報に基づいて再生ヘッドを目標位置に位置づけたときに記録ヘッドによりユーザ・データが記録される円周方向の記録領域である。図2(B)に示すように各データ領域105は、たとえばそれぞれが512バイトのデータ記録領域を含むn個のデータ・セクタで構成されている。
【0029】
図3は、図2に示した磁気ディスク59のフォーマットを部分的に拡大した図である。図3には、データ領域105に定義したデータ・トラックN−1、データ・トラックN、データ・トラックN+1、およびデータ・トラックN+2とそれらにディスク円周方向において隣接するサーボ・セクタ103を示している。スライダに形成された記録ヘッドと再生ヘッドとの間には、ヨー角があるので隣接するデータ・トラック101とサーボ・セクタ103のサーボ・データとの間には直接の関連性はない。
【0030】
サーボ・セクタ103は、識別情報領域111と、バースト・パターン領域113とにより構成されている。バースト・パターン領域113には、磁気ディスク59の半径方向に沿ってそれぞれ配列されたメイン・バースト・パターン列113A、113B、およびサブ・バースト・パターン列113C、113Dが設けられている。各バースト・パターン列113A、113B、103Cおよび113Dは、ディスク半径方向の寸法が同一になるように書き込まれたバースト・パターンA、B、C、およびDで構成されている。
【0031】
メイン・バースト・パターン列113Aと113Bは、再生ヘッドをディスク半径方向に移動したとき再生信号の位相が相互に180度シフトする位置に記録されており、メイン・バースト・パターンを構成している。また、サブ・バースト・パターン列103Cと103Dは、再生ヘッド17をディスク半径方向に移動したとき再生信号の位相が相互に180度シフトする位置に記録されており、サブ・バースト・パターンを構成している。メイン・バースト・パターンとサブ・バースト・パターンとは、再生信号の位相が相互に90度シフトした関係となるように記録されている。
【0032】
各バースト・パターンのディスク半径方向の寸法すなわちバースト・パターンのピッチはサーボ・トラック・ピッチPを構成する。ここで、メイン・バースト・パターンAとメイン・バースト・パターンBが相互に遷移するディスク半径方向の位置をメイン・バースト・パターンの中心といい、サブ・バースト・パターンCとサブ・バースト・パターンDが相互に遷移するディスク半径方向の位置をサブ・バースト・パターンの中心ということにする。バースト・パターンはサーボ・トラックを構成し、メイン・バースト・パターンの中心がサーボ・トラックの中心となる。
【0033】
磁気ディスク59では、サーボ・トラックの中心とデータ・トラック101の中心とが一致している。ただし、本発明の範囲はこのような構成に限定されるものではなく、サーボ・トラックの中心とデータ・トラックの中心が一致しない構成であっても適用することができる。たとえば、特開2004−30778号公報では、メイン・バースト・パターンの中心とデータ・トラックの中心が一致しない磁気ディスク装置を開示している。また、後述するようにサーボ・データからは磁気ディスクの半径方向の連続的な位置を取得して1未満のトラック数をカウントすることができるので、サーボ・トラック・ピッチとデータ・トラック・ピッチとは必ずしも一致している必要はない。
【0034】
識別情報領域111の先頭には、サーボ・セクタ開始コードが記録されている。また、識別情報領域111には、サーボ・トラック識別番号を示すグレイコード(cyclic binary code:巡回2進符号)、およびサーボ・セクタ103の物理的識別番号を示すコード等が記録されている。
【0035】
図4は、図3に示したメイン・バースト・パターン列113A、113Bとサブ・バースト・パターン列113C、113Dを再生ヘッドで再生して位置情報信号(以下、PESという。)を生成する原理を説明する図である。メイン・バースト・パターン列113Aを構成するそれぞれのメイン・バースト・パターンは129A、131A、133Aと、メイン・バースト・パターン列113Bを構成するそれぞれのメイン・バースト・パターンは131B、133Bと、サブ・バースト・パターン列113Cを構成するそれぞれのサブ・バースト・パターンは135C、137C、139Cと、サブ・バースト・パターン列113Dを構成するそれぞれのサブ・バースト・パターンは135D、137D、139Dとして示している。
【0036】
一般にバースト・パターンを再生する再生ヘッドに形成するリード・ギャップの寸法は、エラー・レートの向上などの理由でサーボ・トラック・ピッチPまたはデータ・トラック・ピッチPよりも短くしている。よって、再生ヘッドを回転する磁気ディスクの半径方向に沿って移動させながら、図4(1)に示した各バースト・パターンを読み取って再生すると、メイン・バースト・パターン列113A、113Bからは、図4(2)に示すように変化するメイン位置検出信号(以下、MPESという。)が得られ、サブ・バースト・パターン列113C、113Dからは図4(3)に示すように変化するサブ位置検出信号(以下、SPESという。)が得られる。
【0037】
図4においては、磁気ディスク59上の半径方向の位置は再生ヘッドのリード・ギャップの中心、詳しくいえばリード・ギャップの磁気的な中心位置として示している。図4(2)に示すように、MPESは、再生ヘッドがメイン・バースト・パターン131Bと131Aで形成するメイン・バースト・パターンの中心143、およびメイン・バースト・パターン131Aと133Bで形成するメイン・バースト・パターンの中心145の近辺を通過する際に直線的に増加または減少するように変化しているが、サブ・バースト・パターン135Cと137Dで形成するサブ・バースト・パターンの中心147、およびサブ・バースト・パターン137Dと137Cで形成するサブ・バースト・パターンの中心149の近辺を通過する際には値が一定になる部分を含む。
【0038】
また、図4(3)に示すようにSPESは、サブ・バースト・パターンの中心147、およびサブ・バースト・パターンの中心149の近辺を通過する際には直線的に増加または減少するように変化しているが、メイン・バースト・パターンの中心143およびメイン・バースト・パターンの中心145の近辺を通過する際には値が一定になる部分を含む。
【0039】
これは先に述べたように、再生ヘッドのリード・ギャップの長手方向寸法が各バースト・パターンのディスク半径方向の長さよりも短くなっているために生じる。MPESまたはSPESの値が再生ヘッドを移動しても一定になる部分は不感帯といわれ、再生ヘッドが不感帯の位置にあるときはMPESまたはSPESから再生ヘッドの位置情報を得ることができない。本実施例では、メイン・バースト・パターンの中心143、145で代表されるサーボ・トラック・ピッチPの間に存在する再生ヘッドの位置を256通りのデジタル値で表すことにしている。磁気ディスク装置は、0ないし255のデジタル値から再生ヘッドのディスク半径方向の位置を認識する。
【0040】
MPESはバイアス値80hを中心にして変化している。一方、SPESの変化はMPESと同様であるが、その中心はバイアス値100hまたは0hである。磁気ディスク装置は、再生ヘッドのディスク半径方向における位置の変化をMPESまたはSPESの変化として認識するため、MPESは、直線的な変化をするメイン・バースト・パターンの中心143、145の近辺では位置情報としての利用が可能である。しかしMPESは、サブ・バースト・パターンの中心147、149の近辺では、再生ヘッドの位置が変化しても値が変化しないので位置情報として利用することができない。しかし、サブ・バースト・パターンの中心147、149の近辺では、SPESが直線的な変化をしているため、再生ヘッドがこの位置にあるときはSPESを利用するようにする。このように再生ヘッドの位置に応じて使用する位置情報信号をMPESとSPESとの間で切り替えることによりMPESおよびSPESからヘッドの位置制御にとって良好なPESを得ている。
【0041】
図4(4)は、MPESとSPESの直線部を組み合わせて生成したPESを示している。PESを生成する過程でSPESについては、SPESが増加する領域ではバイアス値100hを加え、減少する領域ではバイアス値を加えないようにしている。さらにその結果SPESが100hを超えることになる部分は100hから超えた値を100hから減算し、0h以下になる部分は0h以下の値の絶対値を0hに加えるように演算して、図4(4)のような0hと100hで折り返した繰り返し特性のPESを得ている。
【0042】
磁気ディスク装置がホスト装置から指示されたデータ・セクタを含むデータ・トラックまたはシリンダにアクセスするときは、ヘッド/スライダを目標位置に向けてシーク動作をさせ、再生ヘッドでサーボ・データを再生して識別情報領域111のグレイコードからサーボ・トラックの識別番号および通過したサーボ・トラックの数を認識する。また、目標とするサーボ・トラックの近辺では、バースト・パターンを使って正確な位置決めをしてフォローイング動作をするようになっている。
【0043】
サーボ・トラック・ピッチは磁気ディスクの全体に渡って一定となるように書き込まれているので、磁気ディスク装置は再生ヘッドの再生信号からサーボ・トラックの数をカウントすることで再生ヘッドの位置を認識することができる。1以上のサーボ・トラック数のカウントはグレイコードを使用し、1未満のサーボ・トラック数のカウントにはPESを使用することができる。たとえば、1サーボ・トラック・ピッチをPESから得た255のディジタル値に設定している場合は、0.5トラックは128として認識する。
【0044】
[第1実施例(再生時ヘッド位置修正)]
つぎに、サーボ・トラック・ピッチに局部的なバラツキがあっても再生ヘッドをユーザ・データが書き込まれた位置に正確に位置づけることができるデータの記録再生方法について図5、図6を参照して説明する。図5は、磁気ディスク59のサーボ・セクタ103の一部を示しており、図6は記録再生の手順を示すフローチャートである。再生ヘッドを正しく位置決めするために、磁気ディスク装置のプロセッサは位置決め制御プログラムを実行してDHO補正して位置づけた再生ヘッドの位置を修正する。
【0045】
ブロック251において、スライダ205には再生ヘッド202と記録ヘッド204が所定の間隔を空けて形成されている。サーボ・トラックは、基準トラック・ピッチP(300nm)でサーボ・セクタ103の半径方向の全体に渡って書き込まれているが、局部的な範囲のサーボ・トラックは図5に示すように基準トラック・ピッチに比べて4%短いトラック・ピッチP1(288nm)で書き込まれているものとする。
【0046】
磁気ディスク59のサーボ・セクタ103には、位置214にDHO修正データ210が記録されている。DHO修正データ210は、位置決め制御プログラムが、データ再生時に再生ヘッド202をDHO補正して位置づけた位置と、実際にユーザ・データが記録されていた位置の差を修正するためのデータである。DHO修正データ210は2〜3バイトのデータで、磁気ディスクの半径方向において最内周サーボ・トラックから最外周サーボ・トラックまで、すべてのサーボ・トラックについて書き込まれる。ただし、DHO修正データ210をトラック・ピッチが変動しているサーボ・トラックにだけ書き込んでおくようにしてもよい。またDHO修正データ210は、磁気ディスクの円周方向において同一サーボ・トラックに関して一つまたは複数のサーボ・セクタに書き込まれる。あるいは磁気ディスクの円周方向において同一サーボ・トラックに関連する一つまたは複数のデータ・セクタに書き込まれる。円周方向におけるDHO修正データの数が多いほどDHO補正を修正するときに磁気ディスクの回転待ち時間を短縮することができる。DHO修正データの書き込み方法については後述する。
【0047】
ここでユーザ・データの記録の対象となる目標サーボ・トラック201において再生ヘッド202と記録ヘッド204のDHO[距離]203が3000nmであるとする。磁気ヘッドには、DHO[距離]があるため、目標位置であるサーボ・トラック201と実際にユーザ・データが記録される磁気ディスクの半径方向における位置206は一致しない。ブロック253では、目標サーボ・トラック201にユーザ・データを記録するために、再生ヘッド202を目標サーボ・トラック201に位置づける。このとき、記録ヘッド204は再生ヘッド202から磁気ディスクの半径方向にDHO[距離]203だけ離れた位置206にあるデータ領域105にユーザ・データ205を記録する。このように目標サーボ・トラックにユーザ・データを記録するとは、目標サーボ・トラックに再生ヘッドを位置づけたときの記録ヘッドの位置でデータ領域105のデータ・セクタにユーザ・データを記録することを意味する。
【0048】
ブロック255では、目標サーボ・トラック201に記録されたユーザ・データを再生するために、位置決め制御プログラムは、DHO[実測]と直線補完式を使って目標サーボ・トラック201に対するDHO[計算]208を計算しサーボ制御部に指示する。DHO[計算]は、DHO[実測]が基準サーボ・トラック・ピッチPとヨー角に対するDHO[距離]に基づいているので、位置決め制御プログラムは、DHO[距離](3000nm)と基準サーボ・トラック・ピッチ(300nm)よりDHO[計算]を10トラックと計算する。サーボ制御部は、再生ヘッド202を位置206に向かって移動させながら、通過するデータ・トラックの数をグレイコードとバースト・パターンを使って10トラックだけカウントして位置214に再生ヘッドを位置づけてDHO補正をする。DHO補正が完了したあとで、リード/ライト・チャネルがユーザ・データを再生する。DHO補正は、目標サーボ・トラックに記録されたユーザ・データを再生するために、目標サーボ・トラックに関するDHO[計算]だけ実際に記録されているサーボ・トラックの数をカウントして再生ヘッドをユーザ・データが記録された位置に位置づける動作に相当する。
【0049】
目標サーボ・トラック201からDHO[計算]208に相当する10トラック離れた位置214は、この領域のトラック・ピッチP1が基準トラック・ピッチPより4%小さい288nmであるため、288×10=2880nmとなり、目標サーボ・トラック201から実際にユーザ・データが書き込まれた位置206までの距離(3000nm)より短くなる。よって、トラック・ピッチが基準トラック・ピッチから変動して磁気ディスクの領域では、DHO補正しても正確なユーザ・データの記録位置に再生ヘッドを位置づけることができない。DHO補正時のずれの量はDHO[距離]が長くなるほど、またはサーボ・トラック・ピッチが狭くなってDHO[計算]が増加するほど多くなる。
【0050】
ブロック257では、再生したユーザ・データに再生エラーが発生したか否かを判断する。位置214はユーザ・データが記録された位置206から参照番号209で示した量だけずれているため、再生データの信号出力が低下したり、隣接トラックに記録されたデータからの再生信号が混入したりして正しいデータを再生できず再生エラーが発生することがある。再生エラーは、データ・セクタに書き込まれたECCコードによるエラー訂正やエラー回復プロシジャ(ERP)を実行しても正しいデータを再生できない場合に発生する。ブロック257で再生エラーが発生しない場合は、ブロック269に移行して再生動作を終了する。DHO修正データを使ってDHO補正した再生ヘッドの位置を修正することは再生時のパフォーマンスに影響を与えるので、再生エラーの有無でDHO補正を修正するか否かを決めるパフォーマンスへの影響を軽減することができる。
【0051】
再生エラーが発生した場合は、ブロック259でDHO修正データ210を読み取る。DHO修正データ210は、DHO[距離]203と、磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラック数をDHO[計算]208だけカウントしてDHO補正した位置までの距離との差に相当するサーボ・トラックの数209であり、あらかじめ磁気ディスク装置の製造段階で磁気ディスクに書き込まれる。この場合は、DHO[距離]が3000nmでサーボ・トラック・ピッチP1が288nmなので、3000/288=10.4トラックとなり、DHO修正データは0.4トラックとなる。
【0052】
DHO修正データ210を読み取ったあとは、ブロック261に移行してDHO修正データの値が所定の値より大きいかどうかで再生ヘッド202の位置修正が必要かどうかを判断する。DHO修正データ210の値が所定の値より小さい場合は、DHO補正は正しく行われて再生エラーの原因は別にあることになるのでユーザ・データの再生動作を中断してブロック263に移行し、さらに高次のERPを実行したりハード・エラーを表明したりする。DHO修正データ210の値が所定の値より大きい場合は、トラック・ピッチが基準トラック・ピッチからずれてDHO補正で再生ヘッドがユーザ・データの記録位置に位置づけられていないことになるので、ブロック265に移行して再生ヘッド202の位置を修正する。
【0053】
ブロック265では、位置決め制御プログラムがDHO修正データ210に基づいてDHO[計算]212を算出してサーボ制御部が再生ヘッド202をユーザ・データが記録されていた位置206に位置づけ、リード/ライト・チャネルがブロック267で再度ユーザ・データを再生する。位置206はユーザ・データが記録された場所なのでこの時点でDHO補正は修正されて、DHO補正時の再生ヘッドの位置づけに起因した再生エラーは消滅する。DHO修正データ210は、位置214と位置216の差に相当するサーボ・トラック数に代えて目標サーボ・トラック201に関して位置206を示すDHO[計算]またはトラック数で構成してもよい。この場合、DHO修正データ210は、目標サーボ・トラック201のDHO[計算]の値に相当する10.4トラックが書き込まれる。
【0054】
つぎに、図7を参照してDHO修正データ210の書き込み方法を説明する。DHO修正データ210は、磁気ディスク装置のハードウエアの組み立てが終了したあとに行う試験/調整工程において試験プログラムを実行して磁気ディスクのサーボ・セクタに書き込む。DHO修正データは磁気ディスクのデータ領域に書き込んでもよいが、ここではサーボ・セクタに書き込むことを例にして説明する。
【0055】
図7は図5に示したのと同じ磁気ディスク59の記憶領域を示している。図7では、サーボ・トラック・ピッチP1は4%だけ基準サーボ・トラック・ピッチP(300nm)より短くなっており、目標サーボ・トラック201に対する記録ヘッド204と再生ヘッド202のDHO[距離]203は3000nmである。いま、目標サーボ・トラック201に対するDHO修正データ210を書き込む方法を説明する。最初に磁気ディスク装置のプロセッサは再生ヘッド202を目標サーボ・トラック201に位置づけて記録ヘッド204で位置206に試験データを記録する。
【0056】
続いてプロセッサは位置決め制御プログラムを実行して目標サーボ・トラック201に対するDHO[計算]を計算する。プロセッサは、サーボ・データから読み取ったグレイコードとサーボ・データから生成されたPESを使って、DHO[計算]208の位置に再生ヘッド202を位置づける。このようにプロセッサにより再生ヘッドの位置が制御されてDHO補正が行われる。基準トラック・ピッチ(300nm)とDHO[距離]203のもとで位置決め制御プログラムはDHO[計算]208を10トラックと計算し、DHO補正の結果再生ヘッド202は位置214に位置づけられる。リード/ライト・チャネルは位置214に再生ヘッド202が位置づけられたあとに再生ヘッド202で試験データを再生する。
【0057】
このとき再生ヘッド202が試験データを再生できない場合は、PESを利用して再生ヘッド202を少しずつ移動させ、再生ヘッド202が試験データを十分に再生できる位置まで移動させる。同時に、再生信号の大きさを監視して最も再生信号が大きくなる位置206に再生ヘッドを位置づける。位置214で再生ヘッド202が試験データを再生できる場合でも、閾値を決めて再生信号の大きさが所定値以下の場合は、PESを利用して再生信号が最も大きくなる位置に再生ヘッドを移動させる。
【0058】
再生ヘッド202が位置214で再生した試験データの再生信号が所定値以上の場合は、位置決め制御プログラムによるDHO補正を修正する必要がないので、以下に説明する手順の中で、DHO修正データとしてゼロまたは位置決め制御プログラムが算出するDHO[計算]の値(10トラック)を書き込む。試験プログラムは、位置206と位置214の差に相当するサーボ・トラックのトラック数306の値をメモリに記憶しておく。トラック数306は、DHO[計算]を修正するためのDHO[計算]の値に相当する。この場合DHO[計算]306は、3000nm/288nm−10で計算され+0.4トラックとなる。つぎに、DHO修正データを記録するときは、再生ヘッド202を目標サーボ・トラック201に位置づけたあと、DHO[計算]306だけシフトした位置308に再生ヘッド202を位置づける。このとき記録ヘッド204は、DHO[距離]203だけ離れた位置214に位置づけられる。試験プログラムは、記録ヘッド204でサーボ・セクタの位置214にDHO修正データ210を+0.4トラックと書き込む。
【0059】
目標サーボ・トラック201に対するDHO修正データの値は、位置206と位置214の差に相当する磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックのトラック数306である+0.4トラックまたは目標サーボ・トラック201に関する位置206のDHO[計算]である10.4トラックとなる。このようにして書き込まれたDHO修正データ210は、目標トラック201に対して位置決め制御プログラムがDHO[計算]208を計算してDHO補正し、再生ヘッド202を位置214に位置づけたときに正しく再生される。再生ヘッド202は、位置204と位置206との差のDHO[計算](+0.4トラック)または位置206のDHO[計算](10.4トラック)を再生して、位置決め制御プログラムが再生ヘッド202の位置を修正するようにサーボ制御部に指示する。DHO修正データがゼロまたは10トラックとなっていれば、位置決め制御プログラムは再生ヘッドの位置を修正しない。
【0060】
[第2実施例(記録時ヘッド位置修正)]
第1実施例では、DHO修正データを使って再生時にDHO補正を修正してデータを再生したが、つぎに、DHO修正データを使って再生ヘッドの位置を修正してユーザ・データを記録し、トラック・ピッチに局部的なバラツキがあっても位置決め制御プログラムによるDHO補正で再生ヘッドをユーザ・データを書き込んだ位置に位置づけることができるユーザ・データの記録再生方法について図8を参照して説明する。図8は、試験プログラムが、目標サーボ・トラック201にDHO修正データ310を書き込むときとユーザ・データを記録するときの手順を説明する図である。
【0061】
図8では、サーボ・トラック・ピッチP1およびDHO[距離]は図7と同じ構成になっている。試験データの記録方法は、図7で説明した手順と同じである。試験プログラムは、位置206と位置214の差に相当するトラック数であるDHO[計算]306の値をメモリに記憶したあとに、位置決め制御プログラムに対して記録ヘッド204を目標サーボ・トラック201に位置づけるための再生ヘッド202の位置を計算させ、再生ヘッド202をその位置に位置づける。
【0062】
つぎに記録ヘッド204が、目標サーボ・トラック201にDHO修正データ310を書き込む。DHO修正データ310は、位置206と位置214との差に相当するDHO[計算]306の値(+0.4トラック)である。このようにしてDHO修正データ310が目標サーボ・トラック201に記録された磁気ディスク59に対してデータを書き込むときは、最初に再生ヘッド202を目標サーボ・トラック201に位置づけてDHO修正データ310を読み取る。DHO修正データ310が所定の値より大きい場合は、位置決め制御プログラムは目標サーボ・トラック201からDHO修正データ310の+0.4トラックだけ上の方向にシフトした位置308に再生ヘッド202を位置づける。DHO修正データの符号が逆で−0.4トラックのときは、記録ヘッドを下の方向にシフトさせる。DHO修正データが所定の値より小さい場合は、記録時のパフォーマンスの低下を防止するためにユーザ・データの記録位置を修正しない。
【0063】
このとき記録ヘッド204はDHO[距離]203だけ離れた位置214に位置づけられ、記録ヘッド204はデータ領域の位置214にユーザ・データ313を記録する。位置214に記録されたユーザ・データ313を再生するために位置決め制御プログラムがDHO補正するときは、位置決め制御プログラムが目標サーボ・トラック201に対するDHO[計算]208を10トラックと計算するので、再生ヘッド202は位置214に位置づけられて記録されたユーザ・データ313を正確に読み取ることができる。図8に示したような記録時にユーザ・データの記録位置を修正する方法では、再生ヘッド204が常にDHO修正データを読み取って記録位置を修正するかどうかを判断することが必要になるので、この点で再生時にDHO補正を修正する方法より不利になる。しかし、記録時のアクセス時間よりも再生時のアクセス時間を重要視する用途では利便性が高い。
【0064】
図9は、図1に示した磁気ディスク装置50の主要部分のブロック図である。磁気ディスク装置50は、図1で説明した磁気ディスク59、再生ヘッド202、記録ヘッド204、ヘッド支持機構53、ボイス・コイル・モータ61を含む。再生ヘッド202および記録ヘッド204は同一のスライダに所定の間隔を隔てて形成され、スライダとともにヘッド/スライダを構成する。ヘッド支持機構53は、ボイス・コイル・モータ(以下、VCMという。)61により駆動されピボット軸57を中心に回動動作をしてヘッド/スライダを所定のトラックに位置づける。
【0065】
リード/ライト・チャネル65は、磁気ディスクから再生ヘッド202が再生した信号を処理して制御部67に送る。また、制御部67から受け取った記録信号を処理して記録電流を生成し記録ヘッド204に送る。リード/ライト・チャネル65はまた再生ヘッド202が再生したサーボ・データの信号を制御部67およびサーボ制御部75に送る。制御部67は、マイクロ・プロセッシング・ユニット(MPU)69、読み取り専用メモリ(ROM)71、およびランダム・アクセス・メモリ(RAM)73を含み、磁気ディスク装置50の動作全体を制御する。ROM71には、位置決め制御プログラムおよび磁気ディスク59の主要なサーボ・トラックに関して実測したDHOであるDHO[実測]を格納したDHOテーブルが記録されている。DHO[実測]は、磁気ディスクの半径方向の代表的な位置にあるサーボ・トラックについて磁気ディスク装置の製造段階で実測したサーボ・トラックの数である。DHOテーブルのDHO[実測]は、位置決め制御プログラムを実行するときにDHO[計算]のための直線補完式で使用するためにMPU69により参照される。
【0066】
MPU69は、位置決め制御プログラムを実行して、ユーザ・データの記録再生のために再生ヘッド202を位置づけるためのヘッド位置信号を生成しサーボ制御部75に送る。MPU69は、ユーザ・データを再生するときに再生ヘッドの位置を決めるためのDHO補正をするとき、DHO[実測]以外のサーボ・トラックに対するDHO[計算]を計算してサーボ制御部75に送る。さらに、MPU69は位置決め制御プログラムを実行して、リード/ライト・チャネル65から受け取ったDHO修正データの再生信号に基づいて、再生ヘッド202の位置を修正するためのサーボ・トラックのトラック数をサーボ制御部75に送る。
【0067】
サーボ制御部75は、R/Wチャネル65からサーボ・データの再生信号を受け取り、制御部67から指示された位置に再生ヘッド202を位置づけるための信号を生成してVCMドライバ63に送る。VCMドライバ63は、サーボ制御部75から受け取った信号を駆動電流に変換してVCM61に送る。VCM61は、ヘッド支持機構53を駆動して再生ヘッド202を所定のサーボ・トラックに位置づける。
【0068】
サーボ・トラックのトラック・ピッチの変動に基づくDHO補正のずれは、DHO[計算]の値の大きさに応じて累積される。したがって、本実施の形態にかかる記録再生方法は、サーボ・トラック・ピッチの狭い磁気ディスク装置で特に有効である。また、セルフ・サーボ・ライト方式でサーボ・データを書き込む磁気ディスク装置では、記録ヘッドの中心と再生ヘッドの中心が回動中心線上で一致しないでシフトしているので、DHO[距離]が長くなり対応するDHO[計算](トラック数)も多くなるので有効である。
【0069】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】磁気ディスク装置の平面図である。
【図2】磁気ディスクのフォーマットを示す図である。
【図3】磁気ディスクのフォーマットを拡大した図である。
【図4】サーボ・データから再生して得たPESを説明する図である。
【図5】第1実施例の記録再生にかかるサーボ・トラックの構成を示す図である。
【図6】第1実施例にかかる記録再生の手順を示すフローチャートである。
【図7】第1実施例にかかるDHO修正データを磁気ディスクに書き込むときの手順を示す図である。
【図8】第2実施例の記録再生にかかるサーボ・トラックの構成を示す図である。
【図9】磁気ディスク装置の要部を示すブロック図である。
【図10】DHOの発生原理を説明する図である。
【図11】トラック・ピッチにバラツキがあるときにDHO補正を正確に行えないことを説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
17、202 再生ヘッド
19、204 記録ヘッド
59 磁気ディスク
201 目標サーボ・トラック
202 再生ヘッド
205 スライダ
203 DHO[距離]
204 記録ヘッド
208 DHO[計算]
210、310 DHO修正データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと再生ヘッドが所定の間隔で配置されているスライダと、
前記スライダを搭載し回転軸を中心に回動動作をするヘッド支持機構と、
目標位置に記録されたユーザ・データを再生するために前記再生ヘッドをDHO補正して位置づけた位置にDHO修正データが書き込まれている磁気ディスクと、
前記DHO修正データを読み取り前記再生ヘッドの位置を修正して前記ユーザ・データを再生するように前記磁気ディスク装置の動作を制御するプロセッサと
を有する磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記DHO修正データがサーボ・セクタに記録されている請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記DHO修正データが前記磁気ディスクの最内周サーボ・トラックから最外周サーボ・トラックまですべてのサーボ・トラックに関して書き込まれている請求項2記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記DHO修正データが同一のサーボ・トラックに関して円周方向に複数書き込まれている請求項2記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記DHO修正データが前記磁気ディスクのデータ・セクタに記録されている請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記DHO修正データが前記磁気ディスクの円周方向において同一のサーボ・トラックに関する複数のデータ・セクタに記録されている請求項5記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記DHO修正データが、前記再生ヘッドを目標位置に位置づけたときの前記記録ヘッドの位置である第1の位置と、前記目標位置から前記第1の位置に向かって前記磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックの数をカウントしてDHO補正した位置である第2の位置との差に相当する前記サーボ・トラックの数である請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記DHO修正データは、前記目標位置から前記ユーザ・データが記録された位置までの前記磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックの数である請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
前記磁気ディスク装置がセルフ・サーボ・ライト方式でサーボ・データを前記磁気ディスクに書き込む請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
磁気ディスクと、記録ヘッドと再生ヘッドが所定の間隔で配置されているスライダとを有する磁気ディスク装置においてユーザ・データの記録再生をする方法であって、
前記再生ヘッドを目標位置に位置づけて前記記録ヘッドで第1の位置に前記ユーザ・データを記録するステップと、
前記第1の位置に対してDHO補正をして前記再生ヘッドを第2の位置に位置づけるDHO補正ステップと、
前記第2の位置で前記ユーザ・データの再生動作を行う第1の再生ステップと、
前記第2の位置に書き込まれた前記第1の位置と前記第2の位置の差に相当するDHO修正データを読み取るDHO修正データ読み取りステップと、
前記DHO修正データ読み取りステップに応答して前記再生ヘッドの位置を修正して前記ユーザ・データを再生する第2の再生ステップと
を有する記録再生方法。
【請求項11】
前記DHO補正ステップが、前記目標位置から前記第1の位置に向かって前記磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックをカウントするステップを含む請求項10記載の記録再生方法。
【請求項12】
前記第1の再生ステップが再生エラーを検出するステップを含む請求項10記載の記録再生方法。
【請求項13】
前記第2の再生ステップが、前記再生エラーが検出されたときだけ前記再生ヘッドの位置修正を行う請求項10記載の記録再生方法。
【請求項14】
記録ヘッドと再生ヘッドが所定の間隔で配置されているスライダと、
前記スライダを搭載し回転軸を中心に回動動作をするヘッド支持機構と、
ユーザ・データを記録する目標位置にDHO修正データが書き込まれた磁気ディスクと、
前記再生ヘッドで前記DHO修正データを読み取り前記再生ヘッドの位置を修正して前記ユーザ・データを記録するように前記磁気ディスク装置の動作を制御するプロセッサと
を有する磁気ディスク装置。
【請求項15】
前記DHO修正データが前記磁気ディスクの円周方向において同一サーボ・トラックに関連する複数のデータ・セクタに記録されている請求項14記載の磁気ディスク装置。
【請求項16】
前記DHO修正データが前記磁気ディスクの同一サーボ・トラックについて複数のサーボ・セクタに記録されている請求項14記載の磁気ディスク装置。
【請求項17】
前記DHO修正データは、前記目標位置から前記磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックの数をカウントして前記再生ヘッドをDHO補正した位置と前記目標位置に記録されたユーザ・データの位置との差に相当する前記サーボ・トラックの数である請求項14記載の磁気ディスク装置。
【請求項18】
サーボ・トラックが記録された磁気ディスクと、記録ヘッドと再生ヘッドが所定の間隔で配置されているスライダとを有する磁気ディスク装置においてユーザ・データの記録再生をする方法であって、
前記再生ヘッドを目標位置に位置づけて、DHO修正データを読み取るDHO修正データ読み取りステップと、
前記DHO修正データ読み取りステップに応答して前記記録ヘッドの位置を修正する位置修正ステップと、
前記位置が修正された記録ヘッドで前記ユーザ・データを記録するステップと
を有する記録再生方法。
【請求項19】
前記DHO修正データが、サーボ・トラックのピッチの変動に基づくDHO補正の誤差を修正する値である請求項18記載の記録再生方法。
【請求項20】
前記位置修正ステップが、前記修正データの値を判断して前記記録ヘッドの位置を修正しないステップを含む請求項18記載の記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−185478(P2006−185478A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376296(P2004−376296)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】