説明

磁気プローブ

【課題】高分解能の磁気プローブを提供する。
【解決手段】常磁性コロイド粒子分散液を充填した管状容器34の先端部内側に常磁性シード31を固定してこの先端を磁界に近づけると、常磁性シード31を起点として常磁性コロイド粒子32が鎖状に凝集し、その凝集の長さは磁界の強さに依存する。そして、この現象を利用して、管状容器の先端部に形成された常磁性コロイド粒子32の凝集を観察すれば、磁気を検知でき、従来の磁気プローブ30とは全く異なるメカニズムを利用した新規な磁気プローブ30を提供できる。この磁気プローブ30においては、管状容器34の先端内側に固定される常磁性シード31として粒径数ナノメートル程度の超微粒子を用いた場合でも磁気を検知することができるので、数ナノメートルオーダーの高い空間分解能を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施態様は、測定対象の表面を走査して、又は、測定部位に近づけて、磁気を検知する磁気プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録、光磁気記録等の高密度化や磁気顕微鏡の開発等に伴って、微小な領域の磁気的な性質を評価する技術が求められている。このような技術として、ホールセンサプローブが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−281312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述のような従来のホールセンサプローブは、その先端の幅が細いものでも500nm以上であり、このため空間分解能もその程度に制限されていた。そこで、より高分解能の磁気プローブが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らの研究によれば、常磁性コロイド粒子分散液を充填した管状容器の先端部内側に常磁性シードを固定してこの先端を磁界に近づけると、常磁性シードを起点として常磁性コロイド粒子が鎖状に凝集し、その凝集の長さは磁界の強さに依存することが分かった。
そして、この現象を利用して、管状容器の先端部に形成された常磁性コロイド粒子の凝集を観察すれば、磁気を検知でき、従来の磁気プローブとは全く異なるメカニズムを利用した新規な磁気プローブを提供できることを見出した。
この磁気プローブにおいては、管状容器の先端内側に固定される常磁性シードとして粒径数ナノメートル程度の超微粒子を用いた場合でも磁気を検知することができるので、数ナノメートルオーダーの高い空間分解能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施態様の磁気プローブの概略図である。
【図2】本実施態様において利用する現象の写真である。
【図3A】本実施態様において利用する現象の写真である。
【図3B】本実施態様において利用する現象の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本実施態様について具体的に説明する。
本実施態様においては、常磁性コロイド粒子分散液中に常磁性シードを固定して、常磁性シードを磁界に近づけると、常磁性シードを起点として分散液中の常磁性コロイド粒子が鎖状に凝集すること、さらに、鎖状凝集の長さは磁界の強さに依存することを利用して、磁気を検知、測定する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「常磁性」には超常磁性も含む。
【0008】
常磁性シードを起点とした常磁性コロイド粒子の鎖状の凝集は、(1)磁界に近づけた常磁性シードが磁化され、次いで、(2)磁化された常磁性シードが発する磁界によりその周辺に分散していた常磁性コロイド粒子が磁化されて常磁性シードに付着し、さらに、(3)磁化された常磁性コロイド粒子が発する磁界によりその周辺に分散していた別の常磁性コロイド粒子が磁化されて付着し、磁気が減衰するまで次々と(3)が繰り返される結果生成されると考えられるが、これに限定されない。
【0009】
本実施態様において使用する管状容器は、例えば一端が閉じたキャピラリー等であり、その先端部に常磁性シードが固定されており、常磁性コロイド粒子分散液で充填される。管状容器は、少なくとも一端が閉じられていて、内部が観察可能なものであれば(すなわち、分散液を保持し、外部から常磁性コロイド粒子の凝集を観察できるものであれば)、特に限定はない。
常磁性コロイド粒子の鎖状凝集を常磁性コロイド粒子分散液の光透過率の変化によって検知する場合、使用する光源の光に対する管状容器の光透過率が高いと、分散液の光透過率変化を高感度で検出できるので、管状容器を構成する材料の種類は、使用する光源の波長に合わせて適宜選択してもよい。容器を構成する材料の具体例としては、ガラスや光透過性樹脂(例えば、アクリル系樹脂)等の透明材料が挙げられるが、これに限定されない。
【0010】
管状容器の断面形状に限定はなく、円や矩形が挙げられるが、これに限定されない。管状容器のサイズに限定なく、例えば、内径0.01〜3mm、長さ1〜5mmとしてもよい。
【0011】
管状容器の先端に固定する常磁性シードとしては、管状容器の先端に固定でき、常磁性を有するものであれば特に限定はない。
常磁性シードの粒径に限定はないが、粒径が小さいほど磁気プローブの分解能が高まる傾向がある。常磁性シードの粒径は、例えば、8〜30nm程度であってもよく、10〜40nm程度であってもよい。なお、本明細書において、粒径とは、二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、粒子の投影画像に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。
また、常磁性シードの1000Oeの磁界中における磁化の強さは、20〜30emu/g程度であってよく、さらに、40〜100emu/g程度であってもよい。
【0012】
常磁性シードの具体例としては、常磁性粉自体や、高分子材料からなる粒子中に常磁性粉を分散させたもの、高分子材料からなる芯材粒子の表面に常磁性粉を付着したもの、或は、担体粒子に常磁性粉を担持させたものが挙げられる。
ここで、常磁性粉の具体例としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄が挙げられるが、これに限定されない。また、常磁性粉の粒径は、例えば、1nm〜10nm程度であってもよい。磁性粉の粒径がこのような範囲内にあると、磁性粉は超常磁性を示すが、その粒径があまり大きくなると、磁性粉は強磁性に転じる傾向にある。
また、上記高分子材料の具体例としては、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリエステル等が挙げられるが、これに限定されない。常磁性シード中の常磁性粉の濃度は、例えば、3.0g/cm以上とすることができる。
【0013】
管状容器の先端に固定する常磁性シードの個数に限定はなく、例えば、1個でもよいし、複数個でもよい。常磁性シードの磁化の強さが同じ場合、常磁性シードが引きつけることのできる常磁性コロイド粒子の大きさは、常磁性シードの個数が多いほど大きくなる傾向にある。
【0014】
常磁性シードとして、針(棒)状粒子を使用することもできる。針状粒子のアスペクト比(短径と長径の比)は、1.5以上であってもよく、20以上であってもよく、250以上であってもよい。ここで、短径、長径とは、それぞれ、粒子の投影画像に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。また、常磁性シードの短径は、例えば、8〜30nm程度であってもよく、10〜40nm程度であってもよい。
常磁性シードとして針状粒子を使用すると、磁気プローブの感度及び分解能が高まる傾向がある。
針状粒子である常磁性シードとしては、針状の常磁性粉や常磁性粉を針状に配置したものが挙げられる。
【0015】
常磁性シードとして針状粒子を使用すると磁気プローブの感度が高まる(弱い磁界であっても比較的長い鎖状凝集が形成される)理由は次のように推測されるが、これに限定されない。
すなわち、磁性体からの距離がrの位置における磁性体が発生する磁界の強さは、磁性体が球状の場合には1/rに比例するのに対して、磁性体が針(棒)状の場合には1/rに比例するため、常磁性シードの形状が針(棒)状である方が磁気の減衰が緩やかであり、その結果、常磁性シードに連結する常磁性コロイド粒子の鎖状凝集が長くなる傾向にあり、感度が高まると推測される。
【0016】
また、常磁性シードとして針状粒子を使用すると磁気プローブの空間分解能が高まる理由は次のように推測されるが、これに限定されない。
すなわち、球状の常磁性体は等方性を有し、磁化される方向に特異性がないため、いかなる方向の磁界によっても磁化されると考えられる。そのため、常磁性シードとして球状のものを採用すると、その真下から発生している磁界だけでなく、付近で発生している磁界によっても磁化されこれを検知してしまうことがあり、その結果、空間分解能は常磁性シードの粒径より大きくなる傾向にあると考えられる。
これに対して、針(棒)状の常磁性体は異方性を有し、長軸方向にしか磁化されないと考えられる。そのため、常磁性シードとして球状のものを採用し、その長軸方向が磁気プローブの長手方向と一致するように常磁性シードを磁気プローブに固定すると、常磁性シードの真下から発生している磁界しか検知せず、その結果、常磁性シードの粒径(短径)と同じ大きさの空間分解能を実現できると推測される。
【0017】
常磁性粉を針状に配置した常磁性シードとしては、例えば、高分子材料からなる針状粒子中に常磁性粉を分散させたもの、高分子材料からなる針状粒子の表面に常磁性粉を付着させたもの、或は、カーボンナノチューブ等の針状形状の担体に常磁性粉を担持させたものが挙げられる。
この場合に使用する常磁性粉の形状は針状であってもよいし、針状でなくてもよい。各々は針状ではない常磁性粉でも、これを針状に複数個配置した集合体(常磁性体)は、針状の常磁性粉と同様に異方性を有する。
常磁性粉を針状に配置した常磁性シードの製造方法に限定はなく、例えば、Nano Lett., Vol.5, No.5, p.879−884 (2005).に開示されているような公知の方法で製造することができる。
【0018】
常磁性シードは管状容器の先端の内部又は外部に固定される。固定方法に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、管状容器選択と常磁性シードの一方又は両方を表面化学修飾し、表面化学修飾基の結合(イオン結合、共有結合等)を利用して化学的に固定してもよいし、高分子材料等を用いて物理的に接着して固定してもよい。
【0019】
次に、常磁性コロイド粒子分散液について説明する。本実施態様で使用する常磁性コロイド粒子分散液の常磁性コロイド粒子は、常磁性を有する粒子であれば特に限定はなく、固体であってもよいし、液体であってもよい。
常磁性コロイド粒子の具体例としては、前述の常磁性シードの説明、具体例で挙げたものと同じものを使用することができ、常磁性コロイド粒子中の常磁性粉の濃度は、例えば、1〜10g/cmとすることができる。
【0020】
常磁性コロイド粒子の粒径は、分散媒に分散する大きさであればよく、特に限定はない。一般に、分散質である常磁性コロイド粒子の粒径が小さい方が安定な分散が実現できる。本実施態様において、常磁性コロイド粒子の粒径は、例えば、10nm〜50μm程度であってもよく、50nm〜3μm程度であってもよい。なお、ここで、粒径とは、レーザ回析・光散乱法で測定されるストークス径をいう。
常磁性コロイド粒子の1000Oeの磁界中における磁化は、1〜1000emu/g程度であってよく、さらに、10〜100emu/g程度であってもよい。
【0021】
常磁性コロイド粒子の鎖状凝集を常磁性コロイド粒子分散液の光透過率の変化によって検知する場合、光透過率の測定に使用する光に対する吸収率又は反射率を増加させるために、磁性粒子の表面を測定用光源の光に対する吸収率又は反射率の高い材料で被覆してもよい。被覆材料の具体例としては、Au等が挙げられるが、これに限定されない。
【0022】
分散液の分散媒は、常磁性コロイド粒子を分散させることができるものであって、常磁性コロイド粒子の凝集を観察できるものであればよく、特に限定はない。
分散媒中の磁性粒子の分散が安定であると、安定した検出、定量を行うことができるので、分散媒の種類は、安定な分散が実現できるよう使用する磁性粒子に合わせ適宜選択してもよい。分散媒中の磁性粒子の分散の安定化のために、界面活性剤を用いることもできる。
また、常磁性コロイド粒子の鎖状凝集を常磁性コロイド粒子分散液の光透過率の変化によって検知する場合には、使用する光源の光に対する分散媒の光透過率が高いと、磁性粒子の整列による分散液の光透過率変化を高感度で検出できるので、分散媒の種類は、使用する光源の波長に合わせて適宜選択してもよい。
分散媒の具体例としては、水、生理食塩水等の水系溶媒やエタノール等の有機溶媒が挙げられるが、これに限定されない。
【0023】
分散媒の粘度が低いと、磁界の影響下においたときの常磁性コロイド粒子の移動(凝集)が容易になり、検知に要する時間が短くなるという利点がある。一方、分散媒の粘度が高いと、磁界の影響により生じた常磁性コロイド粒子の凝集が外部振動等により乱れることを防ぎ、安定した検知が可能になるという利点がある。
分散媒の粘度は、分散媒の種類を選択したり粘度調整剤を添加するなどして適宜調整してもよい。
また、分散液中の常磁性コロイド粒子の濃度に特に限定はなく、例えば、0.1〜10vol%としてもよい。
【0024】
磁気の検知、測定は、本実施態様の磁気プローブの先端部、すなわち、常磁性シードが固定されている部位を測定対象の表面を走査して、又は、磁界の発生が疑われる箇所に近づけることにより行う。磁気プローブの先端部の下で磁気が発生している場合には、先端部の分散液中で常磁性コロイド粒子が鎖状に凝集する。
【0025】
常磁性コロイド粒子の粒径が比較的大きい場合には、常磁性コロイド粒子の凝集の有無を目視又は画像処理によって確認し、これにより磁界の有無を検知することができる。
また、常磁性コロイド粒子の凝集の有無は分散液の光透過率(管状容器の断面方向の光透過率)の変化によっても確認することができる。具体的には、常磁性コロイド粒子が鎖状に凝集している部分ではそうでない部分よりも光透過率が低くなるため、管状容器中の分散液の先端部付近、及び、凝集が生じていない部分(例えば、反対側端部付近)の光透過率を測定し、その差異の有無によって磁界の有無を検知することができる。
【0026】
また、鎖状凝集の長さは磁界の強さに依存するので、鎖状凝集の長さを測定し、これを予め用意しておいた検量線と照らし合わせることにより磁界の強さを測定することができる。
鎖状凝集の長さは、目視又は画像処理によって確認してもよいし、或は、管状容器の一方の端部から多端に向って順次光透過率を測定していき、光透過率変化する箇所を特定することなどにより測定することもできるが、これに限定されない。
【0027】
常磁性コロイド粒子の鎖状凝集を常磁性コロイド粒子分散液の光透過率の変化によって検知する場合、分散液の光透過率を測定する際に使用する光は、管状容器を透過できる波長の光であればよく、特に限定はない。例えば、400nm〜1000nmの範囲の波長を有する非偏光を使用してもよい。
また、使用する光源は、分散液を入れた容器を透過できる波長の光を検出可能な強度で放射できるものであればよく、特に限定はない。光源の具体例としては、レーザ光源や、白熱灯、蛍光灯等の拡散光光源が挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
光透過率の測定は目視で行ってもよい。また、分散液を挟んで光源と反対側に分散液を透過した透過光の強度を測定するための光強度測定手段を設置し、これにより測定してもよい。光強度測定手段は、管状容器を透過した透過光の強度を測定できるものであればよく、特に限定はない。
光強度測定手段は、管状容器を透過した透過光を受光できる位置、すなわち、容器を挟んで光源と対面する位置に設置することができる。安定した測定を行うために、管状容器と光強度測定手段との間の距離、或いは、管状容器に対する光強度測定手段の相対的な位置を固定してもよい。
光強度測定手段には、さらに、先端部からの変位とその位置の光透過率を記録できる記録手段と、該記録手段の情報に基づいて常磁性コロイド粒子の凝集の長さを判断する判断手段を有していてもよい。さらに、この判断手段には、予め測定しておいた凝集の長さと磁界の強度との関係(検量線の情報)を保存した記憶手段を接続してもよい。
【0029】
本実施態様の磁気プローブの具体例について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施態様の磁気プローブ30の一例の概略図である。この磁気プローブは、内部先端に常磁性シード31が固定され、常磁性コロイド粒子32を分散媒33に分散させた常磁性コロイド粒子分散液を入れた管状容器34、光源35、該光源と管状容器34を挟んで対向する光強度測定手段36とから構成される。
【0030】
図1の例においては、常磁性シード31として、平均粒径10nmのFe粒子をその内部に100個充填したカーボンナノチューブ(内径約20nm)1個、常磁性コロイド粒子32としてMicromer社製磁性ビーズ(平均粒径8nmのFe粒子を分散させたポリスチレン微粒子、平均粒径:250nm、1000Oeの磁界中における磁化:43mg/g)、分散媒33として純水(常磁性コロイド粒子分散液の濃度は10vol%)、管状容器34として内径0.5mm×高さ2.0mmのガラス製キャピラリー、光源35として白熱灯(タングステンランプ)を用いている。
なお、常磁性シード(カーボンナノチューブ)のキャピラリー先端への固定は、キャピラリーの所定位置にカーボンナノチューブを置き、両者の接触点に電子線を照射することにより行うことができる。具体的には、Kleindiek社のマイクロマニピュレーター等を用いて走査型電子顕微鏡で観察しながら、カーボンナノチューブをガラス製キャピラリーの先端内部に接触させ、電子線を照射する。
【0031】
光源35と光強度測定手段36は、キャピラリーの長手方向に移動自在に設けられ、キャピラリー先端から任意の変位Xにおけるキャピラリーの光透過率(透過光強度)を測定することができる。
光強度測定手段36には、必要に応じて、情報処理部分(図示しない)が有線又は無線で接続される。情報処理部分は、キャピラリー先端からの変位Xとその位置におけるキャピラリーの透過光強度Iとを記憶するための記憶手段、及び、これらの情報に基づいて常磁性コロイド粒子の鎖状凝集の長さを判断する判断手段とから構成される。該判断手段には、強さが既知の磁界を用いて予め作成した鎖状凝集の長さと磁界の強度との関係(検量線の情報)が保存された検量線情報記憶手段が接続される。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本実施態様を詳細に説明するが、本実施態様は以下の実施例に限定されない。
[実施例1]
酸化ケイ素基板を用意し、その表面を格子状(30μm間隔で、各格子点の面積が約5μm×5μm)に3−(2アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン]で修飾した。次いで、[3−(2アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン]で修飾した部分に、常磁性(超常磁性)シード(カルボキシル基修飾Fe(マグネタイト)粒子(Micromod(ドイツ)社製nanomag−D PEG−COOH)、粒径:約130nm、1000Oeの磁界中における磁化:43emu/g)を、約5μm×5μmの各エリア内に約20個ずつ、[3−(2アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン]の末端のアミノ基と常磁性シードのカルボキシル基との間のイオン結合によって固定した。
また、平均粒径2.8μmの常磁性粒子(ポリマー−カルボキシル基修飾Fe(マグネタイト)粒子(Dynal社製M−270)を、常磁性粒子:水(体積比)=1:10となるように純水に分散させたコロイド分散液を用意した。
続いて、シャーレーに上述の常磁性シードを固定した酸化ケイ素基板を配置し、これに前述の常磁性コロイド粒子分散液を注ぎ、約250Oeの外部磁界(永久磁石)の上に静置した。
図2はこの系を真上から見たときの写真である。各常磁性シードが固定されたエリア上に常磁性コロイド粒子がトラップされ、連結して鎖状凝集を形成していることが確認できた。また、この系において、磁場をずらして鎖状凝集を傾けたところ、各エリアにはいずれも約8個の常磁性コロイド粒子が連結凝集していることが確認できた。
【0033】
[実施例2]
酸化ケイ素基板を用意し、その表面を格子状(30μm間隔で、格子点の面積が約5μm×5μm)にAu蒸着した。次いで、Au蒸着した部分に、(超常磁性)シード(チオール基で修飾したFe(マグネタイト)粒子、粒径:約8nm)を、約5μm×5μmの各エリア内に約500個づつ、Auと常磁性シードのチオール基との間の化学反応によって固定した。
続いて、シャーレーに上述の常磁性シードを固定した酸化ケイ素基板を配置し、これに実施例1で用意したものと同じ常磁性コロイド粒子分散液を注いだ。
図3Aはこの系を真上から見たときの写真である。図3A中、白く見えるのがAu蒸着エリアであり、黒っぽく見える丸が常磁性コロイド粒子である。常磁性コロイド粒子がランダムに分散しているのが確認できた。
次いで、前記シャーレーの真下に直径60mmのコイルを置き、これに1Aの直流電流を流して73Gの垂直磁場を発生させた。図3Bはこの系を真上から見たときの写真である。常磁性コロイド粒子がAu蒸着エリアにトラップされていることが確認できた。また、図3Aよりも、確認できる常磁性粒子の個数が少ないことから、常磁性コロイド粒子が画面に対し垂直に連結していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本実施態様の磁気プローブは、磁気の検知に利用できる。特に、本実施態様の磁気プローブは分解能が非常に高いため、磁気記録の読み出しや磁気顕微鏡に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
30 磁気プローブ
31 常磁性シード
32 常磁性コロイド粒子
33 分散媒
34 管状容器
35 光源
36 光強度測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が観察可能で、少なくとも一端が閉じられている管状容器と、
該管状容器の先端部に固定され、カーボンナノチューブとその内部に充填された常磁性粉を含む常磁性シードと、
該管状容器に充填された常磁性コロイド粒子分散液と、
該管状容器の光透過率を測定する手段と、
を含む磁気プローブ。
【請求項2】
内部が観察可能で、少なくとも一端が閉じられている管状容器と、
該管状容器の先端部に固定された常磁性シードと、
該管状容器に充填された常磁性コロイド粒子分散液と、
を含む磁気プローブ。
【請求項3】
前記磁性シードが、針状粒子である、請求項1に記載の磁気プローブ。
【請求項4】
前記磁性シードが、カーボンナノチューブと、その内部に充填された常磁性粉とを含む、請求項1に記載の磁気プローブ。
【請求項5】
前記管状容器の光透過率を測定する手段をさらに有する、請求項1に記載の磁気プローブ。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気プローブを有する、磁気記録再生装置。
【請求項7】
請求項1に記載の磁気プローブを有する、磁気顕微鏡。
【請求項8】
内部が観察可能で、少なくとも一端が閉じられている管状容器と、該管状容器の先端部に固定された常磁性シードと、該管状容器に充填された常磁性コロイド粒子分散液とを含む磁気プローブを配置し、
前記常磁性コロイド粒子を前記常磁性シードに順次付着させ、
前記管状容器の光透過率を測定する、
磁気検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2010−271179(P2010−271179A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123183(P2009−123183)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【特許番号】特許第4344782号(P4344782)
【特許公報発行日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(509059206)
【Fターム(参考)】