説明

磁気ヘッドの試験装置および試験方法

【課題】 磁気ヘッドに電磁波を作用させることによって、磁気ヘッドの特性をさらに精度よく試験することができ、磁気ヘッドの品質向上を図ることができる磁気ヘッドの試験装置および試験方法を提供する。
【解決手段】 MR素子を備える磁気ヘッドが形成された被試験体10に磁界を作用させる磁界発生手段20と、該磁界発生手段による磁界の強度を増減させた際に、前記被試験体に形成されている磁気ヘッドの前記MR素子の抵抗値の変化を測定する抵抗値検出手段30を備えた磁気ヘッドの試験装置において、前記被試験体10に電磁波を作用させ、電磁波が作用する環境下で前記被試験体の特性を検知するための電磁波発生手段40を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドの特性を試験する試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは一つのヘッド内に再生用の素子と記録用の素子を備えたものであり、セラミックからなるウエハに磁性膜等を所定パターンで成膜することによって形成される。実際の製造に際しては、1枚のウエハに多数個の磁気ヘッドを作り込み、最終的に再生用の素子と記録用の素子を備えた個片のスライダーとして形成される。
磁気ヘッドの再生用の素子に使用されるのはMR素子(磁気抵抗素子)であり、このMR素子は、外部から磁界が印加されると磁化方向が変化して電気抵抗が変化する磁気抵抗効果を利用したものである。
【0003】
このMR素子を備えた磁気ヘッドについては、外部磁界を印加したときの抵抗値変化を測定して素子の特性の良否を判定する特性試験を製造段階で行っている(たとえば、特許文献1参照)。この特性試験は、磁気ヘッドが作り込まれたウエハを、磁気ヘッドが一列状に配列されたロウバーに切り出した状態で行われる。すなわち、コイルに交流電流を供給してロウバーに印加する交流磁界を発生させ、この交流磁界内にロウバーを配置し、個々のMR素子に所定のセンス電流を供給した状態でMR素子の両端にあらわれる電圧を測定し、MR素子の抵抗値の変化を検知することによってMR素子の特性が試験される。
【特許文献1】特開平9−16921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ヘッドのとくに再生用の素子の特性の試験では、上述した外部磁界内における抵抗値の変化を測定する試験が基本的な試験内容となるが、磁気ヘッドに作用する外的な要因としては磁界以外に熱や電磁波があり、これらに対する耐性を試験するために、ロウバーを加熱環境下に置いて磁気特性を試験するといったことも行われている。また、最近は、媒体の高密度記録を可能にするため、磁気ヘッドに形成される素子がきわめて微細構造となってきているために、外的な電磁波の影響によってMR素子の特性や耐久性が劣化することが懸念されるようになってきた。
【0005】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、磁気ヘッドに外的に電磁波を作用させることによって、磁気ヘッドの特性をさらに精度よく試験することができ、磁気ヘッドの品質向上を図ることができる磁気ヘッドの試験装置および試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、MR素子を備える磁気ヘッドが形成された被試験体に磁界を作用させる磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界の強度を増減させた際に、前記被試験体に形成されている磁気ヘッドの前記MR素子の抵抗値の変化を測定する抵抗値検出手段を備えた磁気ヘッドの試験装置において、前記被試験体に電磁波を作用させ、電磁波が作用する環境下で前記被試験体の特性を検知するための電磁波発生手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、前記電磁波発生手段は、前記被試験体に作用させる電磁波の強度を可変とする発信機を備えていることを特徴とする。
また、前記電磁波発生手段は、前記被試験体に対する向き、距離、配置位置を可変とするアンテナを備えていることを特徴とする。
【0008】
また、MR素子を備える磁気ヘッドが形成された被試験体に磁界を作用させ、印加する磁界に対する前記MR素子の抵抗値を検知して前記MR素子の良否を試験する磁気ヘッドの試験方法において、前記被試験体に磁界を作用させる際に、同時に前記被試験体に電磁波を作用させることにより前記MR素子の特性を検知して前記磁気ヘッドの良否を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る磁気ヘッドの試験装置および試験方法によれば、被試験体に磁界を印加して磁気ヘッドに形成されているMR素子の特性を試験する際に、被試験体に同時に電磁波を作用させて試験することが可能となり、より信頼性の高い磁気ヘッドの試験を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明に係る磁気ヘッドの試験装置の構成を模式的に示したものである。
本発明に係る試験装置で試験対象とする被試験体10は、磁気ヘッドが作り込まれたウエハから切り出したロウバーである。本実施形態の試験装置は、被試験体10に作用させる磁界を発生する磁界発生手段20と、該磁界発生手段20により磁界の強度を増減させた際に、前記被試験体10に形成されている各々の磁気ヘッドのMR素子の前記磁界の強度に対する抵抗値の変化を測定する抵抗値検出手段30と、被試験体10に外部から電磁波を作用させる電磁波発生手段40とを備える。
【0011】
磁界発生手段20は被試験体10に交流磁界を作用させるもので、コイルに交流電流を通電させる電源部と、交流電流値を増減制御する制御部を備える。図1では、被試験体10に作用させる磁界を発生させる磁界発生手段20を模式的にN極20aとS極20bを対向させて配置した構造として示している。被試験体10であるロウバーは、N極20aとS極20bの間に配置される。
【0012】
MR素子の抵抗値を測定する抵抗値検出手段30は、被試験体10に形成されているMR素子にセンス電流を供給するセンス電流源と、MR素子の両端にあらわれる電圧を検知する電圧測定部を備える。MR素子に外部から磁界を作用させたときの抵抗値の変化は、この電圧測定部の電圧値とセンス電流値から求められる。
【0013】
被試験体10に外部から電磁波を作用させる電磁波発生手段40は、電磁波の発信機42と被試験体10に向けて電磁波を発信させるアンテナ44とを備える。発信機42は発信周波数および電磁波の強度を調節可能である。図1に示すアンテナ44はロッド状に形成したものであり、磁界発生手段20による磁界内に配置されている被試験体10に向けて電磁波を作用させることができるように、被試験体10との距離、配置位置、配置方向が適宜調節可能である。なお、被試験体10に対して電磁波を作用させるアンテナ44の配置数は1個に限らず、複数個配置することも可能である。
【0014】
本実施形態の試験装置を使用する際は、図1に示すように、磁界発生手段20による磁界内に被試験体10のロウバーを配置し、磁界発生手段20によって被試験体10に磁界を作用させると同時に、電磁波発生手段40によって被試験体10に電磁波を作用させて被試験体10を試験する。
被試験体10に作用させる磁界の強度によって被試験体10のMR素子の抵抗値がどのように変化するかは、磁界発生手段20により被試験体10に作用させる磁界を所定強度範囲に設定し、この範囲内で磁界を増減させ、そのときの抵抗値を測定することによって測定できる。この磁界に対するMR素子の抵抗値変化の測定は、従来のMR素子の特性試験の場合と同様である。
【0015】
本実施形態では、この磁界に対する抵抗値の変化の測定に加えて、被試験体10に電磁波を作用させることにより、電磁波が作用する環境下で被試験体10の磁界に対する抵抗値変化がどのようになるかを検知することができる。電磁波の影響を試験する際には、電磁波発生手段40の発信機42を制御して被試験体10に作用させる電磁波の強度や周波数を変えることによって、種々の電磁波の作用に対する被試験体10のMR素子の特性を検知することができる。
【0016】
このように、本実施形態の試験装置によれば、被試験体10に磁界を作用させると同時に被試験体10に電磁波を作用させた環境下でMR素子の特性を検査することができることから、磁気ヘッドの磁気抵抗特性に加えて磁気ヘッドに対する電磁波の影響についても試験することができ、より高品質の磁気ヘッドを提供することが可能となる。
もちろん、実際の試験では、電磁波を作用させずに磁気抵抗特性をのみを試験する試験と、電磁波を作用させて電磁波による影響下における磁気抵抗特性を試験して被試験体10を評価するようにしてもよい。
【0017】
図2は、電磁波発生手段40で使用するアンテナ44のいくつかの形態を示すものである。図2(a)は、ロッド状に形成したアンテナの例、図2(b)は、ロッド端をリング状としたアンテナの例、図2(c)は、ロッド端に複数の針状突起を配置した例、図2(d)は、ロッド端をリング状とし、リングの内周面に針状突起を設けた例である。
このように、被試験体10に電磁波を作用させるアンテナとしては適宜形態のものを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る磁気ヘッドの試験装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】試験装置の電磁波発生手段に用いるアンテナの例を示す説明図である。
【0019】
10 被試験体
20 磁界発生手段
20a N極
20b S極
30 抵抗値検出手段
40 電磁波発生手段
42 発信機
44 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MR素子を備える磁気ヘッドが形成された被試験体に磁界を作用させる磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界の強度を増減させた際に、前記被試験体に形成されている磁気ヘッドの前記MR素子の抵抗値の変化を測定する抵抗値検出手段を備えた磁気ヘッドの試験装置において、
前記被試験体に電磁波を作用させ、電磁波が作用する環境下で前記被試験体の特性を検知するための電磁波発生手段を備えていることを特徴とする磁気ヘッドの試験装置。
【請求項2】
前記電磁波発生手段は、前記被試験体に作用させる電磁波の強度を可変とする発信機を備えていることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドの試験装置。
【請求項3】
前記電磁波発生手段は、前記被試験体に対する向き、距離、配置位置を可変とするアンテナを備えていることを特徴とする請求項1または2記載の磁気ヘッドの試験装置。
【請求項4】
MR素子を備える磁気ヘッドが形成された被試験体に磁界を作用させ、印加する磁界に対する前記MR素子の抵抗値を検知して前記MR素子の良否を試験する磁気ヘッドの試験方法において、
前記被試験体に磁界を作用させる際に、同時に前記被試験体に電磁波を作用させることにより前記MR素子の特性を検知して前記磁気ヘッドの良否を判定することを特徴とする磁気ヘッドの試験方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−218656(P2007−218656A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37731(P2006−37731)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】