説明

磁気ヘッド置換モジュール、当該磁気ヘッドモジュールを備えた決済端末装置及び当該決済端末装置を用いたカードの情報保護方法

【課題】カード等の磁気媒体に記録された情報の保護のために、読み取ったカードの情報を、置換キー情報を用いて暗号化する磁気ヘッド置換モジュール、当該磁気ヘッド置換モジュールを備えた決済端末装置及び当該決済端末装置を用いたカードの情報保護方法を提供する。
【解決手段】置換キー情報を記録した記録部150と、磁気媒体に記録された情報をアナログ情報として読み取るためのコイルを備えたヘッドコア部110と、ヘッドコア部110で読み取ったアナログ情報をデジタル情報に復調する復調部120と、記録部150に記録された置換キー情報を用いて、復調部120で復調されたデジタル情報の配列順序を置換する置換制御部130と、置換制御部130で置換されたデジタル置換情報を送信するヘッド通信部140とを有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドモジュール、当該磁気ヘッドモジュールを備えた決済端末装置及び当該決済端末装置を用いたカードの情報保護方法に関するものであって、特にカード等の磁気媒体に記録された情報の保護のために、カードから読み取った情報を、置換キー情報を用いて暗号化し、合成樹脂でモールディングした磁気ヘッド置換モジュール、当該磁気ヘッド置換モジュールを備えた決済端末装置及び当該決済端末装置を用いたカードの情報保護方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品を購入するか、サービスの提供を受けるためにクレジットカードを用いる場合、決済端末装置は、クレジットカードに対する信用を照会することになる。クレジットカードに対する信用照会のために、決済端末装置は、磁気ヘッドモジュールでクレジットカードに記録されたカードの情報を読み取る。即ち、磁気ヘッドモジュールは、クレジットカードに磁気記録されたカード種別、カード発行会社、カード番号及び有効期限などのカードの情報を読み取る。そして、決済端末装置は、インターネットなどの通信回線を通して、カードの情報を金融会社、又はサービス会社のカードサーバーに送信する。
【0003】
カードサーバーは、受信したカードの情報を用いてクレジットカードの信用を照会し、その照会結果を決済端末装置に送信する。決済端末装置はクレジットカードに対する信用照会の結果が正常である場合、商品の購入、又はサービスの提供に対する費用処理を行う。
【0004】
従って、クレジットカードを取り扱う決済端末装置は、クレジットカードから読み取ったカードの情報が外部に漏れることを防止する必要がある。このために決済端末装置はカードの情報を暗号化し、また公認認証などの多様な保護技術を用いてカードサーバーにカードの情報を送信する。
【特許文献1】特開2001−338251
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、決済端末装置内部におけるカードの情報の保護には脆弱な部分が多くある。このような脆弱な部分を改善するために、磁気ヘッドモジュールにDESなどの一般的な暗号化技術が導入されている。しかし、磁気ヘッドモジュールに導入される暗号化技術は全てDESなどの一般的な暗号化技術を用いるため、データ処理速度が遅く、また暗号化されたカードの情報の解読が容易である。
【0006】
更に、磁気ヘッドモジュールに暗号化技術が導入されていても、カードの情報が暗号化される前までの、例えば、カードからアナログ情報を読み取る磁気ヘッド等が外部に露出されている構成の場合には、依然としてカードの情報が外部に漏洩する危険がある。
【0007】
そこで本発明は、カード等の磁気媒体に記録された情報の保護のために、読み取ったカードの情報を、置換キー情報を用いて暗号化する磁気ヘッド置換モジュール、当該磁気ヘッド置換モジュールを備えた決済端末装置及び当該決済端末装置を用いたカードの情報保護方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、カード等の磁気媒体に記録された情報の保護のために、読み取ったカードの情報が暗号化される前までの構成をモールディングで一体化した磁気ヘッド置換モジュール、当該磁気ヘッド置換モジュールを備えた決済端末装置及び当該決済端末装置を用いたカードの情報保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、請求項1の発明では、置換キー情報を記録した記録部と、
磁気媒体に記録された情報をアナログ情報として読み取るためのコイルを備えたヘッドコア部と、
前記ヘッドコア部で読み取ったアナログ情報をデジタル情報に復調する復調部と、
前記記録部に記録された置換キー情報を用いて、前記復調部で復調されたデジタル情報の配列順序を置換する置換制御部と、
前記置換制御部で置換されたデジタル置換情報を送信するヘッド通信部とを有する、磁気ヘッド置換モジュールとした。
【0010】
請求項2の発明では、前記記録部に記録された置換キー情報は、ISO-7811規格のトラック毎に異なる置換キー値を有する、請求項1に記載の磁気ヘッド置換モジュールとした。
【0011】
請求項3の発明では、前記置換制御部は、電源供給が遮断された場合、前記記録部に記録された置換キー情報を削除する、請求項1又は2に記載の磁気ヘッド置換モジュールとした。
【0012】
請求項4の発明では、前記ヘッド通信部は、前記置換制御部で置換されたデジタル置換情報の各ビットを8ビットに変更して送信する、請求項1〜3のいずれかに記載の磁気ヘッド置換モジュールとした。
【0013】
請求項5の発明では、前記ヘッドコア部を受容し、コア端子を備えたシールドケースと、
前記復調部と前記置換制御部とが搭載されたPCB組立部と、
前記PCB組立部を受容した補助ハウジングを更に含み、
前記補助ハウジングが前記シールドケースに取り付けられた状態で、合成樹脂で前記ヘッドコア部、前記コア端子、前記復調部及び前記置換制御部がモールディングされ、前記シールドケース及び補助ハウジングが一体化されている、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気ヘッド置換モジュールとした。
【0014】
請求項6の発明では、前記PCB組立部にはPCBの一面に前記復調部が搭載され、前記PCBの他面には前記置換制御部が搭載されている、請求項5に記載の磁気ヘッド置換モジュールとした。
【0015】
請求項7の発明では、置換キー情報を記録した記録部と、
磁気媒体に記録された情報をアナログ情報として読み取るためのコイルを備えたヘッドコア部と、
前記ヘッドコア部で読み取ったアナログ情報をデジタル情報に復調する復調部と、
前記記録部に記録された置換キー情報を用いて、前記復調部で復調されたデジタル情報の配列順序を置換する置換制御部と、
前記置換制御部で置換されたデジタル置換情報を送信するヘッド通信部とを有する磁気ヘッド置換モジュールと、
前記ヘッド通信部と通信する端末通信部と、
前記ヘッド通信部に置換キー情報を送信するため、前記ヘッド通信部からデジタル置換情報を受信するために前記端末通信部を制御し、また前記端末通信部で受信したデジタル置換情報を逆置換する端末制御部とを有する決済処理モジュールとを含む、決済端末装置とした。
【0016】
請求項8の発明では、磁気媒体に記録された磁気情報を読み取るための磁気ヘッド置換モジュールと、前記磁気ヘッド置換モジュールを制御するための決済処理モジュールとを含む決済端末装置を用いたカードの情報保護方法において、
前記決済処理モジュールが、前記磁気ヘッド置換モジュールに置換キー情報を送信する段階と、
前記磁気ヘッド置換モジュールが、前記決済処理モジュールから送信された置換キー情報を記録部に記録する段階と、
前記磁気ヘッド置換モジュールが、磁気媒体に記録されたカード情報をデジタル情報に復調し、置換キー情報を用いて復調されたデジタル情報の配列順序を置換して前記決済処理モジュールに送信する段階と、
前記決済処理モジュールが、前記磁気ヘッド置換モジュールから受信したデジタル置換情報を逆置換する段階とを含む、決済端末装置を用いたカードの情報保護方法とした。
【0017】
請求項9の発明では、前記決算処理モジュールが、前記置換キー情報を送信する段階で、当該置換キー情報として、ISO-7811規格のトラック毎に異なる置換キー値を送信し、
前記磁気ヘッド置換モジュールが、前記置換キー情報を前記記録部に記録する段階で、ISO-7811規格の各トラック毎に異なる置換キー値を夫々記録する、請求項8に記載の決済端末装置を用いたカードの情報保護方法とした。
【0018】
請求項10の発明では、前記磁気ヘッド置換モジュールは、電源供給が遮断された場合、前記記録部に記録された置換キー情報を削除する段階を更に含む、請求項8又は9に記載の決済端末装置を用いたカードの情報保護方法とした。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜10の発明によれば、置換キー情報を用いて、カードのデジタル情報の配列順序を置換し、カードの情報を暗号化する構成とすることによって、カードの情報の解読可能性を低めると共に、カードの情報を暗号化する速度を向上させることができ、またこのような特徴を有する磁気ヘッド置換モジュール及び当該磁気ヘッド置換モジュールを備えた決済端末装置を低コストで実現することができる。
【0020】
また特に請求項2及び9の発明によれば、ISO-7811規格の各トラック毎に異なる置換キー値が記録部に記録されるため、カードの情報に対して高いレベルの安全性を維持することができる。
【0021】
また特に請求項3及び10の発明によれば、置換制御部は、電源供給が遮断された場合、記録部に記録された置換キー情報を削除する構成としたため、置換キー情報が削除されると、配列順序を置換されたカードのデジタル置換情報を逆置換してカードの元の情報を得ることができず、カードの情報に対して安全性を維持することができる。
【0022】
また特に請求項4の発明によれば、ヘッド通信部は、置換制御部で置換されたデジタル置換情報の各ビットを8ビットに変更して送信する構成としたため、当該カードの情報の汎用性が高くなり、決済処理モジュール等で利用する際に利用しやすくなる。
【0023】
また特に、請求項5及び6の発明によれば、ヘッドコア部、コア端子、復調部及び置換制御部を合成樹脂でモールディングする構成とすることによって、カードの情報に対する保安性を向上させることができる。
【0024】
また特に、請求項6の発明によれば、PCBの一面に復調部を搭載し、他面に置換制御部を搭載する構成とすることによって、磁気ヘッド置換モジュールの高さを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、置換キー情報を記録した記録部と、磁気媒体に記録された情報をアナログ情報として読み取るためのコイルを備えたヘッドコア部と、前記ヘッドコア部で読み取ったアナログ情報をデジタル情報に復調する復調部と、前記記録部に記録された置換キー情報を用いて、前記復調部で復調されたデジタル情報の配列順序を置換する置換制御部と、前記置換制御部で置換されたデジタル置換情報を送信するヘッド通信部とを有する構成とすることによって、カードの情報の解読可能性を低めると共に、カードの情報を暗号化する速度を向上させることができ、かつ低コストで構成することができる。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の一実施例による磁気ヘッド置換モジュール、当該磁気ヘッド置換モジュールを備えた決済端末装置及び当該決済端末装置を用いたカードの情報保護方法を、添付した例示図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施例による決済端末装置10のブロック図である。
【0028】
図1に示したように、決済端末装置10は、磁気ヘッド置換モジュール100及び決済処理モジュール200を有する。
【0029】
磁気ヘッド置換モジュール100は、ヘッドコア部110、復調部120、置換制御部130、ヘッド通信部140、及び記録部150を有する。
【0030】
ヘッドコア部110は、磁気媒体、例えば、クレジットカード(図示省略)に記録されている情報をアナログ情報として読み取るためのコイルを備える。従って、決済端末装置10にクレジットカードを近接させる等して、決済端末装置10が、クレジットカードの情報を読み取るようにすると、ヘッドコア部110はクレジットカードに記録されている情報をアナログ情報として読み取る。
【0031】
復調部120は、ヘッドコア部110が読み取ったアナログ情報をデジタル情報に復調する。復調部120はそれ自体で一つのIC(=集積回路)で提供されても良いし、また、複数の機能を有する一つのマイコンICの機能の一部として提供されても良い。
【0032】
置換制御部130は、記録部150に記録された置換キー情報を用いて、復調部120で復調されたデジタル情報の配列順序を置換する。また、置換制御部130は後述する多様な制御を更に行う。
【0033】
ヘッド通信部140は、置換制御部130で置換されたデジタル置換情報を決済処理モジュール200に送信する。また、ヘッド通信部140は、デジタル置換情報を8ビットに変更して送信する構成としても良い。8ビットに変更して送信する構成にすれば、当該カードの情報の汎用性が高くなり、決済処理モジュール200等で利用する際に利用しやすくなる。
【0034】
記録部150は、置換制御部130の制御プログラムが記録されたROM152と、多数のデータを記録するためのRAM154を有している。特にRAM154には、決済処理モジュール200から受信した置換キー情報と、復調部120で復調されたカードのデジタル情報が記録される。
【0035】
また、ISO(=International Organization for Standardization)-7811規格は、磁気媒体であるカードの前面または裏面のどちらかに位置決めされて、3つの縦の平行トラックに分けられた、0.5インチ幅の磁気ストライプのために定義されている国際標準である。このISO7811規格に従い、カードに設けられている磁気ストライプには、通常、3つのトラックが設けられている。各トラックは、7ビットにエンコーディングされ、読み取りのみが可能な第1トラックと、5ビットにエンコーディングされ、読み取りのみが可能な第2トラックと、5ビットにエンコーディングされ、読み取り及び書き込みが可能な第3トラックとに分類されている。RAM154には、置換キー情報として、第1〜第3の各トラック毎に異なる置換キー値が記録される。各トラック毎に異なるキー値がRAM154に記録されるため、カードの情報に対し高いレベルの安全を維持することができる。
【0036】
一方、置換制御部130、ヘッド通信部140、及び記録部150は夫々単一のICで提供されても良いし、これら各部の機能を有する一つのマイコンICで提供されても良い。
【0037】
磁気ヘッド置換モジュール100は、決済処理モジュール200から電源の供給を受ける。図1に示したように、置換制御部130には、電源端子(Vdd)132を介して、決済処理モジュール200から供給された電源が提供され、また電源安定化のために、コンデンサ(Cl)134が連結されている。また置換制御部130には電源感知端子(Vdd-Int)136が設けられており、決済処理モジュール200から電源が遮断されたか、否かを感知する。
【0038】
これにより、磁気ヘッド置換モジュール100が決済処理モジュール200から分離されると、電源感知端子(Vdd-Int)136に電源遮断信号が提供されるため、置換制御部130は、記録部150のRAM154に記録された置換キー情報を削除する。置換キー情報が削除されると、配列順序を置換されたカードのデジタル置換情報を逆置換してカードの元の情報を得ることができず、カードの情報に対して安全性を維持することができる。
【0039】
決済処理モジュール200は、第1端末通信部210、端末制御部220、端末記録部230、第2端末通信部240、キーボード250、表示部260、及び電源部270を有する。
【0040】
第1端末通信部210は、磁気ヘッド置換モジュール100のヘッド通信部140と通信するためのインタフェースである。第1端末通信部210を介して、端末制御部220は磁気ヘッド置換モジュール100のヘッド通信部140から送信されたデジタル置換情報を受信し、また磁気ヘッド置換モジュール100のヘッド通信部140に置換キー情報を送信する。
【0041】
端末制御部220は、第1端末通信部210から入力されたデジタル置換情報を端末記録部230のRAM234に記録する。そして、端末記録部230のRAM234等に記録された置換キー情報を用いて、RAM234に記録されたデジタル置換情報を逆置換してカードの元の情報を得る。
【0042】
端末記録部230は、端末制御部220の制御プログラムが記録されたROM232、及び多数のデータを記録するためのRAM234を有する。即ち、RAM234には磁気ヘッド置換モジュール100から受信したデジタル置換情報が記録される。置換キー情報はROM232に記録することもできるが、置換キー値の変更のためにRAM234に記録することが望ましい。
【0043】
第2端末通信部240は、カードの情報をインターネット等の通信回線280を通して外部装置であるカードサーバー(図示省略)に送信するための通信インタフェースである。第2端末通信部240を介してカードの情報を送信する前に、端末制御部220はカードの情報の保護のために、カードサーバーが対応可能な暗号化法を用いてカード情報を暗号化する。
【0044】
キーボード250は、商品購入、又はサービス提供による金額を入力するためのユーザーインタフェースである。
【0045】
表示部260は、カードサーバーからの照会結果の内容を表示するユーザーインタフェースである。
【0046】
電源部270は、決済処理モジュール200に必要な電源と磁気ヘッド置換モジュール100に必要な電源を供給する。このため、電源部270はDC-DC変換器を有する。
【0047】
図2は、本発明の一実施例による決済端末装置10を用いたカードの情報保護方法を説明する流れ図である。
【0048】
まず、磁気ヘッド置換モジュール100が決済処理モジュール200に連結されると、磁気ヘッド置換モジュール100の置換制御部130は、記録部150に記録されたDLL(=Dynamic Link Library)プログラムに沿って動作し、決済処理モジュール200は端末記録部230に記録されたDLLに沿って動作する(S202)。
【0049】
そして、端末制御部220は第1端末通信部210を制御し、磁気ヘッド置換モジュール100の記録部150に記録された置換キー情報を要請する置換キー情報要請信号を、磁気ヘッド置換モジュール100に送信する(S204)。磁気ヘッド置換モジュール100のヘッド通信部140は、置換キー情報要請信号を受信して置換制御部130に伝達する。置換制御部130は記録部150に記録された置換キー情報を読み取り、ヘッド通信部140を介して決済処理モジュール200に出力する(S206)。
【0050】
決済処理モジュール200の端末制御部220は、第1端末通信部210を介して入力された置換キー情報が、端末記録部230に記録されている置換キー情報と同一であるか否かを判定する(S208)。そして、磁気ヘッド置換モジュール100から出力された置換キー情報と決済処理モジュール200に記録されている置換キー情報が異なる場合、端末制御部220は端末記録部230に記録されている置換キー情報を、磁気ヘッド置換モジュール100に送信するために、第1端末通信部210を制御する(S210)。この場合に、置換キー情報はISO-7811規格の各トラック毎に異なる置換キー値を有する。
【0051】
磁気ヘッド置換モジュール100の置換制御部130は、ヘッド通信部140を介して入力された置換キー情報を、記録部150に記録する(S212)。なお、置換キー情報がISO-7811規格の各トラック毎に異なる置換キー値を有する場合、置換制御部130は記録部150の該当アドレスに各々の置換キー値を記録する。
【0052】
磁気媒体、例えばクレジットカードを、決済端末装置10に近接させる等して、決済端末装置10が、クレジットカードの情報を読み取るようにすると、ヘッドコア部110はクレジットカードに記録された情報をアナログ情報として読み取って、出力する。そして、復調部120はヘッドコア部110から出力されたアナログ情報をデジタル情報に復調し、置換制御部130はこのデジタル情報を記録部150に記録する(S214)。
【0053】
磁気ヘッド置換モジュール100の置換制御部130は、記録部150に記録された置換キー情報を用いて、記録部150に記録されたデジタル情報の配列順序を置換する(S216)。この場合、磁気ヘッド置換モジュール100の置換制御部130は、記録部150に記録されたデジタル情報のうち、トラックIDが「!」であるものは、第1トラック用に記録された置換キー値を用いて置換を行い、トラックIDが「?」であるものは、第2トラック用に記録された置換キー値を用いて置換を行い、トラックIDが「^」であるものは、第3トラック用に記録された置換キー値を用いて置換を行う。
【0054】
ヘッド通信部140は、置換制御部130で置換されたデジタル置換情報を決済処理モジュール200に送信する(S218)。なお、置換制御部130はデジタル置換情報の送信が正常に行われた場合、記録部150に記録された当該カードのデジタル情報を削除する構成としても良い。またヘッド通信部140は、デジタル置換情報の各ビットを8ビットに変換してから、決済処理モジュール200に送信する構成としても良い。そのような構成とすれば、当該カードの情報の汎用性が高くなり、決済処理モジュール200等で利用する際に利用しやすくなる。
【0055】
端末制御部220は、第1端末通信部210から入力されたデジタル置換情報をRAM234に記録する。そして、端末記録部230に記録された置換キー情報を用いて、RAM234に記録されたデジタル置換情報を逆置換してカードの元の情報を得る(S220)。
【0056】
端末制御部220は、逆置換して得たカードの元の情報に基づいて、決済情報を処理する(S222)。即ち、端末制御部220は、逆置換して得たカードの元の情報を、第2端末通信部240を介してカードサーバー(図示省略)に送信し、カードサーバーから受信した照会結果に基づいて、決済情報を処理する。端末制御部220はカードの元の情報に基づいて決済情報が正常に処理された場合、新しい置換キー情報を、第1端末通信部210を介して磁気ヘッド置換モジュール100に送信する。
【0057】
磁気ヘッド置換モジュール100が、決済処理モジュール200から分離された、又は決済端末装置10の電源が遮断された場合、磁気ヘッド置換モジュール100の電源感知端子(Vdd-Int)136に電源遮断信号が提供され、置換制御部130は記録部150のRAM154に記録された置換キー情報を削除する(S224)。置換キー情報が削除されると、配列順序を置換されたカードのデジタル置換情報を逆置換してカードの元の情報を得ることができず、カードの情報に対して安全性を維持することができる。
【0058】
そして、磁気ヘッド置換モジュール100に電源が再び供給されると、上述のステップ202に戻って、図2の流れに沿った動作を繰り返す。
【0059】
図3は、決済端末装置10の復調部120によって復調されたデジタル情報の配列順序を置換し、さらに、カードの元の情報を得るために逆置換する流れを示した図である。
【0060】
図3の(a)は、記録部150に記録されたカードのデジタル情報の一例を示したものであり、図3の(b)は、置換キー情報を用いて、当該カードのデジタル情報の配列順序を、置換した後のデジタル置換情報を示したものである。なお置換キー情報とは、この図3の場合では、例えば「19番の『1』は38番目に置き換える」、「5番の『1』は4番目に置き換える」、「23番の『0』は25番目に置き換える」という置き換え方を示した情報であって、これら38個の情報を全て合わせたものが、置換キー情報として、RAM154及びRAM234に記憶されている。また、図3の(c)は、決済処理モジュール200が受信した当該デジタル置換情報を示したものであり、図3の(d)は、置換キー情報を用いて、当該デジタル置換情報を逆置換して得た、カードの元の情報を示したものである。
【0061】
3DES暗号法を用いた場合に、情報を暗号化するまでにかかる時間は、通常600ms〜700msであるが、本実施例で示した置換キー情報を用いて、カードのデジタル情報の配列順序を置換して、情報を暗号化するまでにかかる時間は最大100msである。また、3DES暗号法を用いた場合の解読率は1/5.5×10n(n=19)であるが、本実施例で示した暗号法の解読率は1/1.809×10n(n=75)である。即ち、ISO-7811規格の第1トラック又は第3トラックを使用する場合、最小ビット数は約700個であり、第2トラックを使用する場合、最小ビット数は約250個である。第2トラックのデジタル情報の配列順序を、置換キー情報を用いて置換する場合、解読可能な場合の数は2n(n=250)であり、全部置換する場合、解読率は1/1.809×10n(n=75)となり、事実上、解読が不可能となる。
【0062】
図4は、配列順序を置換したデジタル置換情報の各ビットを8ビットに変換する流れを示した図である。
【0063】
図4の(a)は10進数で表示したカードのアナログ情報の一例を示したものであり、図4の(b)は、図3の(a)と同様に当該アナログ情報を復調したデジタル情報を示したものであり、図4の(c)は、図3の(b)と同様に置換キー情報を用いて、当該デジタル情報の配列順序を置換したデジタル置換情報を示したものであり、図4の(d)は、当該デジタル置換情報の各ビットを8ビット、即ちASCIコードに変換した情報を示したものである。
【実施例2】
【0064】
図5は、本発明の他の実施例による決済端末装置の磁気ヘッド置換モジュール500の構成を示した図であり、図6は、図5に示された磁気ヘッド置換モジュール500の構成をモールディングした構成を示した図である。
【0065】
図5に示したように、磁気ヘッド置換モジュール500は、主として、シールドケース510、PCB(=Printed Circuit Board)組立部520、及び補助ハウジング530を有する。
【0066】
シールドケース510は金属等で構成され、ヘッドコア部110を受容する(図示省略)。シールドケース510はヘッドコア部110から読み取ったカードのアナログ情報を復調IC524に伝達するためのコア端子512を備える。
【0067】
PCB組立部520はPCB522と、PCB522の両面に搭載された復調IC524及びマイコンIC526と通信端子528とを有する。復調IC524は前記復調部120をIC化したものであり、マイコンIC526は置換制御部130、ヘッド通信部140、記録部150等の複数の機能を有するICである。PCB522の両面に各々復調IC524とマイコンIC526を搭載することにより、磁気ヘッド置換モジュール500の高さを低減することができる。通信端子528は、RS-232方式またはUSB方式で決済処理モジュール200に連結され、決済処理モジュール200から送信された置換キー情報を受信し、決済処理モジュール200にデジタル置換情報を送信する。
【0068】
補助ハウジング530はPCB組立部520を受容し、プラスチック等で構成される。補助ハウジング530を、シールドケース510に付着させた状態で、シールドケース510及び補助ハウジング530の内部に合成樹脂等を充填し、当該樹脂でヘッドコア部110、コア端子512、復調IC524及びマイコンIC526をモールディングして、図6に示したように、シールドケース510と補助ハウジング530とを一体化させる。このようにモールディングすることによって、カードの情報に対する保安性を向上させることができる。
【0069】
なお、本実施例における決済端末装置の上記以外の構成及び作用は、実施例1の決済端末装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0070】
本発明の保護範囲は特許請求の範囲により解釈されるべきである。また、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者なら、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正及び変更が可能であり、本発明と同等な範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る実施例1の決済端末装置10のブロック図である。
【図2】本発明に係る実施例1の決済端末装置10を用いたカードの情報保護方法を説明する流れ図である。
【図3】本発明に係る実施例1の、カードのデジタル情報の配列順序を置換し、またカードの元の情報を得るために逆置換する流れを示した概念図である。
【図4】配列順序が置換されたデジタル置換情報の各ビットを8ビットに変更する流れを示した概念図である。
【図5】本発明に係る実施例2の決済端末装置の磁気ヘッド置換モジュールの構成を示した斜視図である。
【図6】本発明に係る実施例2の決済端末装置の磁気ヘッド置換モジュールをモールディングした状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
10:決済端末装置、
100:磁気ヘッド置換モジュール、110:ヘッドコア部、120:復調部、130:置換制御部、132:電源端子、134:コンデンサ、136:電源感知端子、140:ヘッド通信部、150:記録部、152:ROM、154:RAM、200:決済処理モジュール、210:第1端末通信部、220:端末制御部、230:端末記録部、232:ROM、234:RAM、240:第2端末通信部、250:キーボード、260:表示部、270:電源部、280:通信回線、500、磁気ヘッド置換モジュール、510:シールドケース、512:コア端子、520:PCB組立部、522:PCB、524:復調IC、526:マイコンIC、528:通信端子、530:補助ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換キー情報を記録した記録部と、
磁気媒体に記録された情報をアナログ情報として読み取るためのコイルを備えたヘッドコア部と、
前記ヘッドコア部で読み取ったアナログ情報をデジタル情報に復調する復調部と、
前記記録部に記録された置換キー情報を用いて、前記復調部で復調されたデジタル情報の配列順序を置換する置換制御部と、
前記置換制御部で置換されたデジタル置換情報を送信するヘッド通信部とを有することを特徴とする、磁気ヘッド置換モジュール。
【請求項2】
前記記録部に記録された置換キー情報は、ISO-7811規格のトラック毎に異なる置換キー値を有することを特徴とする、請求項1に記載の磁気ヘッド置換モジュール。
【請求項3】
前記置換制御部は、電源供給が遮断された場合、前記記録部に記録された置換キー情報を削除することを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気ヘッド置換モジュール。
【請求項4】
前記ヘッド通信部は、前記置換制御部で置換されたデジタル置換情報の各ビットを8ビットに変更して送信することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の磁気ヘッド置換モジュール。
【請求項5】
前記ヘッドコア部を受容し、コア端子を備えたシールドケースと、
前記復調部と前記置換制御部とが搭載されたPCB組立部と、
前記PCB組立部を受容した補助ハウジングを更に含み、
前記補助ハウジングが前記シールドケースに取り付けられた状態で、合成樹脂で前記ヘッドコア部、前記コア端子、前記復調部及び前記置換制御部がモールディングされ、前記シールドケース及び補助ハウジングが一体化されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気ヘッド置換モジュール。
【請求項6】
前記PCB組立部にはPCBの一面に前記復調部が搭載され、前記PCBの他面には前記置換制御部が搭載されていることを特徴とする、請求項5に記載の磁気ヘッド置換モジュール。
【請求項7】
置換キー情報を記録した記録部と、
磁気媒体に記録された情報をアナログ情報として読み取るためのコイルを備えたヘッドコア部と、
前記ヘッドコア部で読み取ったアナログ情報をデジタル情報に復調する復調部と、
前記記録部に記録された置換キー情報を用いて、前記復調部で復調されたデジタル情報の配列順序を置換する置換制御部と、
前記置換制御部で置換されたデジタル置換情報を送信するヘッド通信部とを有する磁気ヘッド置換モジュールと、
前記ヘッド通信部と通信する端末通信部と、
前記ヘッド通信部に置換キー情報を送信するため、前記ヘッド通信部からデジタル置換情報を受信するために前記端末通信部を制御し、また前記端末通信部で受信したデジタル置換情報を逆置換する端末制御部とを有する決済処理モジュールとを含むことを特徴とする、決済端末装置。
【請求項8】
磁気媒体に記録された磁気情報を読み取るための磁気ヘッド置換モジュールと、前記磁気ヘッド置換モジュールを制御するための決済処理モジュールとを含む決済端末装置を用いたカードの情報保護方法において、
前記決済処理モジュールが、前記磁気ヘッド置換モジュールに置換キー情報を送信する段階と、
前記磁気ヘッド置換モジュールが、前記決済処理モジュールから送信された置換キー情報を記録部に記録する段階と、
前記磁気ヘッド置換モジュールが、磁気媒体に記録されたカード情報をデジタル情報に復調し、置換キー情報を用いて復調されたデジタル情報の配列順序を置換して前記決済処理モジュールに送信する段階と、
前記決済処理モジュールが、前記磁気ヘッド置換モジュールから受信したデジタル置換情報を逆置換する段階とを含むことを特徴とする、決済端末装置を用いたカードの情報保護方法。
【請求項9】
前記決算処理モジュールが、前記置換キー情報を送信する段階で、当該置換キー情報として、ISO-7811規格のトラック毎に異なる置換キー値を送信し、
前記磁気ヘッド置換モジュールが、前記置換キー情報を前記記録部に記録する段階で、ISO-7811規格の各トラック毎に異なる置換キー値を夫々記録することを特徴とする、請求項8に記載の決済端末装置を用いたカードの情報保護方法。
【請求項10】
前記磁気ヘッド置換モジュールは、電源供給が遮断された場合、前記記録部に記録された置換キー情報を削除する段階を更に含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の決済端末装置を用いたカードの情報保護方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−165162(P2011−165162A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138905(P2010−138905)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(500533743)株式会社テクレコ (2)
【Fターム(参考)】