説明

磁気ヘッド装置

【課題】磁気ヘッドからの出力波形の一部分において出力が変化していても出力変動を抑えることが可能な磁気ヘッド装置を提供する。
【解決手段】磁気情報記録媒体に記録された情報を再生する磁気ヘッド1と、磁気ヘッド1により再生された再生信号を利得で増幅する増幅部2と、増幅された再生信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して出力するA/D変換部3と、デジタル信号の出力値を既定の出力基準値と比較する信号比較部4aと、この出力値が出力基準値より大きい場合又は小さい場合に、この出力値を出力基準値に近づけるように利得を調整する利得制御部4bと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気情報記録媒体に記録された磁気情報を再生する磁気ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、磁気情報を記録する磁気記録媒体としては、クレジットカード,プリペイドカード又はキャッシュカード等のカード状媒体がある。このカード状媒体に形成された磁気ストライプには、例えば固有情報等の磁気情報が記録されている。
磁気データをカード状媒体に記録する際には、例えば、2種類の周波数の組み合わせからなるFM変調方式(F2F方式)が用いられる。FM変調方式で記録された磁気情報を再生するにあたって、カード状媒体の磁気ストライプに対して相対的に磁気ヘッドを接触・摺動させ、磁気情報をアナログ信号として取得した後、アナログ信号をAMP回路により増幅し、復調回路によりデジタル信号に変換したものがCPUに取り込まれる。
カード状媒体に記録された磁気情報を再生する磁気ヘッド装置において、ヘッドアンプの利得調整を自動で行うことができるものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の磁気記録情報再生装置(磁気ヘッド装置)は、初めに初期ゲインを設定した後に、磁気カードを取り込み、カード出力をADコンバータで測定した後に、磁気カードを停止する。磁気記録情報再生装置は、このカード出力が設定基準値より大きい場合はゲイン(利得)をマイナス1し、逆の場合はプラス1する。磁気カードリーダは、再び磁気カードを動かして、データを読み出し、磁気カードを停止して上記と同じ動作を繰り返す。磁気記録情報再生装置は、カード出力が設定基準値に一致するまでこの動作を繰り返してゲインを設定し、磁気カードのデータを読み出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−12008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気記録情報再生装置(磁気ヘッド装置)では、カード出力が設定基準値に一致するまで、何度も磁気カードを取り込む必要があり、ゲイン設定までに手間がかかるという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の磁気記録情報再生装置は、標準カードを用いてゲインを設定するものであるから、個々の磁気カードによる出力のバラツキ、磁気ヘッドの磨耗による出力の低下、カード搬送速度変化などによる出力変動には対応できないため、読取エラーを起こす場合があるという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気ヘッドからの出力波形の一部分において出力が変化していても出力変動を抑えることが可能な磁気ヘッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1) 磁気情報記録媒体に記録された情報を再生する磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドにより再生された再生信号を利得で増幅する増幅部と、増幅された前記再生信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して出力するA/D変換部と、前記デジタル信号の出力値を既定の出力基準値と比較する信号比較部と、前記出力値が前記出力基準値より大きい場合又は小さい場合に、前記出力値を前記出力基準値に近づけるように前記利得を調整する利得制御部と、を有することを特徴とする磁気ヘッド装置。
【0010】
本発明によれば、増幅部で増幅された再生信号を所定の周期でサンプリングしたサンプリング信号をデジタル信号に変換し、このデジタル信号の出力値を既定の出力基準値と比較して、出力値が出力基準値より大きい場合又は小さい場合に出力値を出力基準値に近づけるように利得を調整することにより、1回の磁気情報記録媒体の取り込みで利得の設定が終了するので、従来技術と比べて簡単に利得を設定することができる。
【0011】
また、本発明に係る磁気ヘッド装置は、再生信号をデジタル信号に変換するA/D変換部のサンプリングを利用して出力値と出力基準値を比較し、サンプリング毎に利得を調整するから、出力波形の一部分において出力が変化していても、出力変化に追従して利得を制御して出力変動を抑えることができ、磁気情報記録媒体に記録された情報の読み取り性能を向上することができる。
【0012】
(2) 前記利得制御部は、前記出力値と前記出力基準値との出力差に対して一定の割合で、前記出力値を前記出力基準値に近づけるように前記利得を調整することを特徴とする磁気ヘッド装置。
【0013】
本発明によれば、出力差に対して一定の割合で利得を調整することにより、1回のサンプリングで出力差の全てを打ち消すように利得を調整するのではなく、複数回のサンプリングにおいて徐々に利得を調整するから、一定の割合で利得を変化させることができる。このため、増幅された出力波形が滑らかに変化するので、一定の振幅の出力波形を得ることができる。
【0014】
(3) 前記利得制御部は、前記出力値と前記出力基準値との出力差に対して35〜65%の割合で、前記出力値を前記出力基準値に近づけるように前記利得を調整することを特徴とする磁気ヘッド装置。
【0015】
本発明によれば、複数回のサンプリングにおいて適正に利得を調整することができ、一定の割合で利得を変化させることができる。このため、増幅された出力波形が滑らかに変化するので、読み取りエラーを回避することができる。
【0016】
(4) 前記信号比較部は、1サンプリング毎に前記デジタル信号の出力値を既定の出力基準値と比較することを特徴とする磁気ヘッド装置。
【0017】
本発明によれば、1サンプリング毎に利得を調整することができるから、出力波形の一部分において出力値が変化していても、出力変化に追従して利得を調整(制御)して出力変動を抑えることができ、磁気情報記録媒体に記録された情報の読み取り性能を更に向上することができる。
【0018】
(5) 前記デジタル信号を記憶する記憶部を備え、前記信号比較部が前記記憶部に記憶されたデジタル信号の出力値を前記出力基準値と比較することを特徴とする磁気ヘッド装置。
【0019】
本発明によれば、再生信号をA/D変換したデジタル信号を全て記憶部に取り込んだ後に、デジタル信号の出力値を出力基準値と比較して可変利得を調整することができる。
【0020】
(6) 記磁気ヘッド装置を備えた磁気カードリーダであることを特徴とする磁気カードリーダ。
【0021】
本発明によれば、磁気カードリーダが、個々の磁気カードによる出力のバラツキ、磁気ヘッドの磨耗による出力の低下、カード搬送速度変化などによる出力変動を抑制して磁気カードの読み取りエラーを回避することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る磁気ヘッド装置は、サンプリング毎に利得を調整することができるから、磁気ヘッドからの出力が変化していても、出力変化に追従して利得を調整(制御)して出力変動を抑えることができ、読み取り性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1(A)】本発明の実施の形態に係る磁気ヘッド装置を備えた磁気カードリーダの制御系を示すブロック図である。
【図1(B)】本発明に係る磁気ヘッド装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明に係る磁気ヘッド装置の一実施例を示すフローチャートである。
【図3】利得調整を行わない場合の出力波形を示す図である。
【図4】利得調整を行った場合の出力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
磁気ヘッド装置を備えた磁気カードリーダにおいては、F及び2Fという2種類の周波数の組み合わせによって、"0"または"1"からなる2値のデータ信号を記憶するFM変調方式が一般に知られている。このFM変調方式によって記録された磁気情報の再生時には、カード状媒体の磁気ストライプに対して相対的に磁気ヘッドが接触・摺動することにより、磁気情報をアナログ信号の形態で再生し、磁気情報をアナログ信号として取得した後、アナログ信号をAMP回路により増幅し、復調回路によりデジタル信号に変換し、2値のデータ信号を復調するようになっている。
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
[磁気カードリーダの制御系の構成]
図1(A)は、本発明の実施の形態に係る磁気ヘッド装置を備えた磁気カードリーダの制御系を示すブロック図である。図1(B)は、本発明の実施の形態に係る磁気ヘッド装置10の一実施例を示す構成図である。
【0027】
図1(A)において、本発明の実施形態に係る磁気ヘッド装置10を備えた磁気カードリーダの制御系100は、主として、磁気ヘッド装置10と、磁気ヘッド装置10を含めた磁気カードリーダ全体を制御する回路して、CPU6、RAM61、ROM62とを、主に備えている。CPU6は、磁気カードリーダ全体の制御中枢を司るものであって、磁気ヘッド装置10を含めた磁気カードリーダの統合的な制御を行う。ROM62には、磁気カードリーダが、カード状媒体に記録された磁気情報の読取りや磁気記録媒体への磁気情報の記録を行うための基本プログラム等が格納されており、RAM61は、CPU6のワーキングエリアとして機能する。なお、RAM61及び/又はROM62は、CPU31内に組み込まれていてもよい(内蔵ROM等)。
また、磁気カードリーダの制御系100は、RS232C等の通信インターフェース(図示せず)を介してHOSTコンピュータ等の上位装置200と通信する。
【0028】
[磁気ヘッド装置の構成]
磁気ヘッド装置10は、図1(A)、(B)に示すように、磁気ヘッド1と、磁気ヘッド1から出力される磁気信号を処理する回路として、AMP回路、復調回路が構成され、処理された信号をCPU6に送信する通信インターフェイス5を有している。磁気ヘッド1により再生されたアナログ信号は、AMP(増幅)回路2において増幅・波形整形され、復調回路3、4において復調された後(読み取り信号の2値化、すなわちA/D変換などを行った後)、CPU6に送られる。なお、A/D変換を行う復調回路3、4は、CPU6に内蔵されていても構わない。また、CPU6は、RS232C等の通信インターフェースを介して上位装置200と通信する。
【0029】
つぎに、磁気ヘッド装置10について、より具体的な構成を図1(B)を用いて説明する。磁気ヘッド装置10は、磁気情報記録媒体としてのカード状媒体に記録された情報を再生する磁気ヘッド1と、磁気ヘッド1により再生された再生信号を可変利得で増幅する増幅部2と、増幅された再生信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して出力するA/D変換部3と、デジタル信号の出力値を既定の出力基準値と比較する信号比較部4aと、この出力値が出力基準値より大きい場合又は小さい場合に、この出力値を出力基準値に近づけるように可変利得を調整する利得制御部4bと、を有する。すなわち、増幅部2は、図1に示すAMP回路3に対応し、復調回路はA/D変換部3及び制御部4に対応している。
【0030】
本実施形態において、図1(B)に示すように、磁気ヘッド1は、磁気ヘッドTr1と、磁気ヘッドTr2と、磁気ヘッドTr3とを有しており、3チャンネル磁気ヘッドと呼ばれている。具体的には、カード状媒体上には、情報が記録された一本の磁気ストライプが形成されている。この磁気ストライプには、3本の磁気トラックが分割して形成されており、この分割された各磁気トラック位置に対応して独立した磁気ヘッドTr1、Tr2、Tr3が配置されている。これにより、磁気ストライプ上に形成された3本の磁気トラックは、各磁気ヘッドTr1、Tr2、Tr3を用いて個別に記録されている情報を再生している。
増幅部2は、磁気ヘッド1により再生された再生信号を可変利得で増幅する。具体的には、磁気ヘッドTr1により再生された再生信号を増幅する可変利得のオペアンプ2aと、磁気ヘッドTr2により再生された再生信号を増幅する可変利得のオペアンプ2bと、磁気ヘッドTr3により再生された再生信号を増幅する可変利得のオペアンプ2cとを有する。
【0031】
本実施形態では、磁気ヘッド1には、切替スイッチ12を介して、カード状媒体の取り込みを検知するカード検知回路11が設けられている。
カード検知回路11は、カード状媒体を取り込んだときに磁気ヘッド1より発生するアナログ信号が設定された閾値を越えるとカード検知信号を出力し、上位装置に送信する。上位装置は、カード検知信号を受信すると、磁気ヘッド装置10にウェイクアップ信号を送信する。
切替スイッチ12は、上位装置からウェイクアップ信号を受信すると、磁気ヘッド装置10を待機状態から動作状態に切り替える。
磁気ヘッド装置10は、待機状態では、各トラックの切替スイッチ12をカード検知回路11側に切り替えており、上位装置からウェイクアップ信号を受信すると、各トラックの切替スイッチ12を増幅部2側(動作状態)に切り替える。
【0032】
なお、磁気ヘッド装置10は、上位装置からのウェイクアップ信号を待たずに、カード検知回路11からのカード検知信号のみで切替スイッチ12を動作状態に切り替える構成にしてもよい。
【0033】
A/D変換部3は、アナログ信号に対して充分早いクロックでサンプリングして、アナログ信号のサンプリングデータをデジタル値に変換し、デジタル信号として出力する。
アナログスイッチ21は、磁気ヘッドTr1〜3のうち1つの磁気ヘッドを選択し、選択された磁気ヘッドで再生されたアナログ信号をA/D変換部3に取り込む。
22はバッファアンプであり、A/D変換部3に入力されるアナログ信号のノイズを抑制している。
【0034】
図1(B)において、4は、CPU又はロジック回路により構成される制御部であり、信号比較部4aと、利得制御部4bと、その他制御部を有する。制御部4には発信回路43を設けており、A/D変換部3でアナログ信号をデジタル信号に変換するためのクロックを生成する。また、制御部4には、第1記憶部41、第2記憶部42を設けてある。第1記憶部41は、SRAMなどの記憶装置であり、A/D変換部3で変換されたデジタル信号を記憶する。第2記憶部42は、レジスタなどの記憶装置であり、予めセットされた出力基準値を記憶している。なお、出力基準値は、予めセットされたものに限らず、読み取りの度に設定するものであってもよい。
【0035】
信号比較部4aは、1回のサンプリング毎に、デジタル信号の出力値を既定の出力基準値と比較する。なお、信号比較部4aは、数サンプリング毎に出力値を出力基準値と比較する構成としてもよく、ピーク出力値のみを出力基準値と比較する構成としてもよい。また、信号比較部4aは、A/D変換部3で変換されたデジタル信号を全て第1記憶部41に取り込んだ後に、第1記憶部41に記憶された出力値と出力基準値を比較するように構成してもよい。
【0036】
利得制御部4bは、上位装置200よりウェイクアップ信号を受信すると、増幅部2を構成する各オペアンプ2a,2b,2cの利得を初期値に設定し、1回のサンプリング毎に利得調整をする。利得制御部4bは、出力値が出力基準値になるように、出力値が出力基準値より大きい場合には、初期値にセットされた利得を減少し、出力値が出力基準値より小さい場合には、初期値にセットされた利得を増加する。なお、増幅部2のオペアンプ2a,2b,2cは、次の動作クロックで可変利得の設定が更新され、更新された利得でアナログ信号を増幅する。
【0037】
本実施形態では、つぎのようにして利得を求めて、調整している。
例えば、現在の出力値A<出力基準値Bの場合には、出力値A×α=A0により、仮の調整出力値A0を求める。次に、仮の調整出力値A0と出力基準値Bとの差を取り、その差に基いて、出力基準値Bに近づくような新たな利得α'を計算し求める。
この新たな利得α'が、次のサンプリング時に出力された出力値に対して、仮の調整出力値を求める際の利得となる。
【0038】
ここで、出力基準値Bに近づくような新たな可変利得α'としたのは、つぎのような理由からである。
利得を調整する場合に、1回のサンプリングで出力差の全てを打ち消す、すなわち、出力基準値Bとするように利得を調整すると、つぎのサンプルリング時に出力された出力波形に段差を生じ易くなるため好ましくない。そこで、出力差に対して例えば35〜65%の範囲の一定割合で徐々に出力基準値に近づけるように、利得を調整するようにしている。これにより、ノイズによる影響を取り除いて一定の振幅の出力波形を得ることができる。本実施形態の利得制御部4bは、出力差に対して50%に相当する値で利得を増減する。このようにして、利得制御部4bは、デジタル信号の出力値と既定の出力基準値との出力差に対して一定の割合で利得を調整している。
【0039】
[磁気記録情報の再生方法]
図2は、本発明に係る磁気ヘッド装置の一実施例を示すフローチャートであり、利得の調整手順を示している。
【0040】
磁気カードリーダなどに適用可能な磁気ヘッド装置においては、F及び2Fという2種類の周波数の組み合わせによって、"0"または"1"からなる2値のデータ信号を記憶するFM変調方式が一般に知られている。このFM変調方式によって記録された磁気情報の再生時には、カード状媒体の磁気ストライプに対して相対的に磁気ヘッドが接触・摺動することにより、磁気情報をアナログ信号の形態で再生し、磁気情報をアナログ信号として取得した後、アナログ信号をAMP回路により増幅し、復調回路によりデジタル信号に変換し、2値のデータ信号を復調するようになっている。
【0041】
上述のとおり、磁気情報をカード状媒体に記録する際には、例えば、2種類の周波数の組み合わせからなるFM変調方式(F2F方式)が用いられる。FM変調方式で記録された磁気情報を再生するにあたって、カード状媒体の磁気ストライプに対して相対的に磁気ヘッド1を接触・摺動させ、磁気情報をアナログ信号として取得した後、アナログ信号をAMP回路2により増幅し、復調回路3、4によりデジタル信号に変換したものがCPU6に取り込まれる。
磁気ヘッド装置10は、カード状媒体を取り込むと、磁気ヘッド1よりアナログ信号が出力される。カード検知回路11は、このアナログ信号が設定された閾値を越えるとカード検知信号を出力し、上位装置200に送信する。上位装置200は、カード検知信号を受信すると、磁気カードリーダのCPU6にウェイクアップ信号を送信する。CPU6は、上位装置200からウェイクアップ信号を受信すると、切替スイッチ12を待機状態から動作状態に切り替える。
【0042】
磁気ヘッド1で再生されたアナログ信号は、初めに利得(ゲイン)を初期値にセットされたオペアンプ2a,2b,2cを有する増幅部2で増幅される(S1)。
【0043】
その後、A/D変換部3は、アナログ信号に対して充分早いクロックでサンプリングして、アナログ信号のサンプリングデータをデジタル値に変換して出力する(S2)。
磁気ヘッド1が複数の磁気ヘッドTr1〜3を有する場合、磁気カードリーダ10は、アナログスイッチ21にて1つの磁気ヘッドを選択し、選択された磁気ヘッドで再生されたアナログ信号をA/D変換部3に取り込む。
【0044】
信号比較部4aは、1回のサンプリング毎に、A/D変換部3からのサンプリングデータの出力値(デジタル値)Aと、予めメモリ42にセットされた出力基準値Bを比較する(S3)。
【0045】
利得制御部4bは、出力値Aが出力基準値Bになるように、出力値Aが出力基準値Bより大きい(A>B)場合には、初期値にセットされた利得を減少し、出力値Aが出力基準値Bより小さい(A<B)場合には、初期値にセットされた利得を増加する(S4,S5)。
【0046】
本発明の磁気ヘッド装置10は、出力値Aと出力基準値Bの出力差|A−B|の全てを打ち消すように利得を調整するのではなく、出力差|A−B|に対してある一定の割合(例えば50%)に相当する値で利得を増減する。これにより、磁気ヘッド装置10は、出力値Aと出力基準値Bの差が大きい場合でも、利得を急激に変化させないから、出力波形に段ができて読み取りエラーが生じるのを回避することができる。
【0047】
S2からS5の動作は、サンプリングが終了するまで行われる(S6)。
この一連の動作のうち、出力値Aと出力基準値Bの比較及び利得の調整は、A/D変換部3で変換されたデジタル信号を全て第1記憶部41に取り込んだ後に処理してもよい。
【0048】
[磁気記録情報の復調方法]
磁気ヘッド装置10は、増幅部2で増幅され、A/D変換部3でA/D変換されたデジタル信号より、制御部4にて波形のピーク(山、谷)を検出する。また、制御部4では、検出されたピーク位置より、ピークとピークの間隔を計測し、この間隔(インターバル)が基準インターバルから設定される閾値を越える時は"0"、閾値以下の時は"1"と判定される。判定された各デジタル信号は、インターフェイス(シリアルIFロジカル)5を介してCPU6に送信される。
【0049】
この閾値は、カード状媒体をモータにより一定速度で搬送するモータ式磁気カードリーダでは、磁気記録密度・カード搬送速度に応じて固定値となり、カード状媒体を手で走査する手動式磁気カードリーダでは、過去のインターバルから設定される。
【0050】
磁気ヘッド装置10は、上記の一連の動作を取り込んだ全データに対して行い、リード結果を制御部4よりリードクロック、リードデータ信号、リードイネーブル信号にて、CPU6(または上位装置200)に送信する。リードクロックはリードデータを読むタイミングを示す信号であり、リードデータは0、1で表現されたデジタルの磁気情報であり、リードイネーブルは磁気情報のリードが有効であることをCPU6(または上位装置200)に通知する信号である。リードイネーブル信号がONのとき、CPU6はリードデータを取り込む。リードクロック、リードデータ信号、リードイネーブル信号は、直接上位装置200に送信してもよいし、シリアルIFロジック5を経由して汎用IF(USB,RS232C)を内蔵したCPU6等に接続して上位装置200にリードデータ信号を送信してもよい。磁気ヘッド装置10は、CPU6を使用した場合には、上位装置200より、磁気リードの動作モード(信号の極性を変える、ピーク検出の閾値を変えるなど)を設定することも可能である。
【0051】
(本実施形態の主な効果)
磁気ヘッド装置10は、以上説明したように、1回の磁気記録媒体取り込みで利得の調整を行えるので、従来技術と比べて簡単に利得を調整することができる。また、本磁気ヘッド10装置は、1サンプリング毎に利得を調整することができるから、出力波形の一部分において出力が変化していても、出力変化に追従して利得を制御して出力変動を抑えることができ、読み取り性能を向上することができる。
【0052】
(他の実施形態)
磁気カードリーダ10は、磁気カードに記録された情報の取り込みが終わると、切替スイッチ12を切り替えて、再び待機状態に戻ることで省電力状態となる。磁気データは随時上位装置から参照できるように、上位装置と磁気カードリーダ10との通信回路と、磁気データを保持したメモリは、常時動作状態としておく。
【0053】
また、磁気カードリーダ10は、上位装置へ送信するデータを暗号化して送信することにより、セキュリティ性を高めることができる。磁気カードリーダ10は、構成される回路素子を小型のものを使用し、回路基板を磁気ヘッド1内に埋め込んで樹脂で封止することにより、回路の信号をプローブで測定できなくなることから、磁気データを不正に取得されなくなる。磁気カードリーダ10は、ピーク検知の閾値(スライスレベル)を出力レベルに応じて可変としてもよい。
【0054】
信号比較部は、A/D変換部のサンプリングに1対1で対応して1サンプリング毎に出力値を出力基準値と比較する構成としてもよく、数サンプリング毎に出力値を出力基準値と比較する構成としてもよい。
【0055】
既定の出力基準値は、予めメモリにセットされたものに限らず、読み取りの度に設定するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る磁気ヘッド装置は、個々の磁気記録情報媒体による出力のバラツキ、磁気ヘッドの磨耗による出力の低下、磁気記録情報媒体搬送速度変化などによる出力変動を抑制して、磁気記録情報媒体の読み取りエラーを回避することができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 磁気ヘッド
2 増幅部
3 A/D変換部
4 制御部
4a 信号比較部
4b 利得制御部
5 汎用IF
6 CPU
10 磁気ヘッド装置
11 カード検知回路
12 切替スイッチ
21 アナログスイッチ
22 バッファアンプ
41 SRAM
42 メモリ
43 発信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気情報記録媒体に記録された情報を再生する磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドにより再生された再生信号を利得で増幅する増幅部と、
増幅された前記再生信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して出力するA/D変換部と、
前記デジタル信号の出力値を既定の出力基準値と比較する信号比較部と、
前記出力値が前記出力基準値より大きい場合又は小さい場合に、前記出力値を前記出力基準値に近づけるように前記利得を調整する利得制御部と、を有することを特徴とする磁気ヘッド装置。
【請求項2】
前記利得制御部は、前記出力値と前記出力基準値との出力差に対して一定の割合で、前記出力値を前記出力基準値に近づけるように前記利得を調整することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド装置。
【請求項3】
前記利得制御部は、前記出力値と前記出力基準値との出力差に対して35〜65%の割合で、前記出力値を前記出力基準値に近づけるように前記利得を調整することを特徴とする請求項2記載の磁気ヘッド装置。
【請求項4】
前記信号比較部は、1サンプリング毎に前記デジタル信号の出力値を既定の出力基準値と比較することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の磁気ヘッド装置。
【請求項5】
前記デジタル信号を記憶する記憶部を備え、前記信号比較部が前記記憶部に記憶されたデジタル信号の出力値を前記出力基準値と比較することを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の磁気ヘッド装置。
【請求項6】
前記磁気ヘッド装置を備えた磁気カードリーダであることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の磁気カードリーダ。

【図1(A)】
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【図1(B)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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