説明

磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ

取り外し可能なインペラとインナードライブとを、異なるプラスチックで構成する。インナードライブリングは、インペラから伸長するドライブ突出部を受け止める。ブッシングが、インナードライブとインペラとを直接支持し、インペラからの延長部を維持するので、インナードライブ内の環状の溝と噛み合わさる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部品、すなわち取り外し可能なインペラおよびインナードライブを有する磁気駆動化学ポンプに関する。本出願は、2005年2月4日付けの米国仮特許出願番号60/650,645から優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気駆動遠心式ポンプには、吸い込まれたプロセス流体を含むウェット部分と、吸い込まれた流体に動力を与える駆動部を有するドライ部分と、が存在する。ドライ部分はポンプの周辺雰囲気に接するのみである。典型的な磁気駆動部の設計では、プラスチック格納シェルによりインナードライブとアウタードライブが隔離され、格納シェルは吸い込まれた流体が環境中に流出するのを防ぐ。一般的に電気モータが駆動するアウタードライブはドライ部分に配置され、ウェット部分に存在しポンプインペラに連結するインナードライブを磁気的に駆動する。磁気駆動ポンプはシールレスなので、塩酸、硝酸、次亜塩素酸ナトリウムのような酸性度の非常に高いプロセス流体や腐食性の非常に強いプロセス流体を吸い込むのに選択されることが多い。
【0003】
マグネットを含むインナードライブとインペラとは、通常、相互に一体成形されている。マグネットを覆うプラスチックコーティングは、マグネットの腐食を防止すると共にポンプを故障から守っている。一般的に、インペラは強度を与えるために繊維強化プラスチックで構成されるため、マグネットを覆うプラスチックも同じ材料で製造せざるを得ない。しかし、強化用繊維はプロセス流体のマグネット領域への侵入を許すので、腐食が生じる。従って、マグネットの被覆には非強化プラスチックを使用するのが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インナードライブから取り外し可能なインペラを有するインナードライブアセンブリが提案されている。装置の一例では、インペラからの五角形の伸長部をインナードライブ内の対応形状を有する開口部が受けることで、インナードライブからインペラへのトルク伝達が可能となる。インペラとインナードライブの接続部は、一般的に、プラスチックのコールドフローを起こし、プラスチックコーテングに不所望な変形をモータらす。
【0005】
取り外し可能なインペラとインナードライブとは、種々の締め付け具によりしっかり固定されている。一例では、複数のピンを使用してインペラとインナードライブとを固定している。別の装置の例では、弾力性のあるプラグ(prong)をインナードライブが受ける。ブッシングはインペラに設けられた締め付け具を直接支持するが、インナードライブを直接は支持しない。代わりにインナードライブはインペラにより支持され、ブッシングとインナードライブとの間の位置関係を望ましいものとするために、インナードライブとインペラ間の接合面の公差を厳密に維持する必要がある。
【0006】
前記諸問題を解決する改良された2つの部品、すなわち取り外し可能なインペラとインナードライブとが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、磁気ポンプ用インナードライブアセンブリに関する。インナードライブアセンブリはマグネットを有するインナードライブを含む。インナードライブは軸周囲を回転でき、インナードライブ内表面を含む。インペラは、インペラから軸方向に伸長する締め付け具により、インナードライブへ固定されている。インペラは、締め付け具が備えるインペラ内表面を含む。ブッシングは内表面同士を接合させ、インナードライブとインペラとを直接支持する。
【0008】
インナードライブは外表面と、この外表面に対して延在するドライブポケットと、を有する。ドライブ突出部(drive lug)がインペラから伸長し、これをドライブポケットが受けることでインナードライブからインペラへのトルク伝達が可能となる。外表面に対してドライブポケットを配置させることによりプロセス流体が溜まりにくくなり、これはポンプ稼動時に望ましい状態である。
【0009】
インナードライブはマグネットを覆うのに、非強化型プラスチックを利用する。インペラは繊維強化プラスチックで構成される。ドライブポケットを形成する金属製のドライブリングを、マグネットを支持する金属製ヨークの上に取り付ける。ドライブリングは金属製で、インナードライブ上の非強化型プラスチックを変形させることなくインペラへトルクを伝達する。ヨークは締め付け具から放射状に配置され、締め付け具領域に剛性を付与し、インナードライブとインペラ間の噛み合わせをより強く維持する。
【0010】
従って、本発明は改良された2つの部品、すなわち取り外し可能なインペラとインナードライブとを提供する。
【0011】
本発明の記載された特徴およびその他の特徴は、以下の詳細な説明を含む明細書および図面から明確に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
磁気駆動シールレス遠心式ポンプアセンブリ10を図1に示す。アセンブリ10はポンプ14を駆動するモータ12を含む。特に、モータ12は、駆動軸16とともにアウタードライブ18を回転駆動する。アウタードライブ18はハウジング20内に支持され、このハウジング20はドライ部分22を画定する。
【0013】
インナードライブアセンブリ23はインナードライブ24およびインペラ26を含む。インナードライブアセンブリ23は固定シャフト28上に取り付けられ、軸Aを中心に回転する。インナードライブアセンブリ23は、格納シェル30およびケーシング32内に配設され、ケーシング32はウェット部分34を規定する。ウェット部分34には、インペラ26により吸込口36から吐出口38へ向かって汲み上げられるプロセス流体が存在する。従来技術において周知なように、アウタードライブ18の回転に応じてインナードライブ24が回転駆動する。
【0014】
図2によれば、インナードライブ24は複数のマグネット42を支持するヨーク40を有し、マグネット42はヨーク40周囲に円周方向に配置される。スペーサーつまりドライブリング44は、マグネットに隣接するように締り嵌めでヨーク40上に取り付けられる。ヨーク40は、通常、磁性を有し、ドライブリング44は、通常、非磁性金属材料から構成される。
【0015】
インナードライブ24は、マグネット42やインナードライブの他の部材をプロセス流体から保護する非強化プラスチックコーティング46で被覆される。インペラ26がインナードライブ24から取り外し可能なので、インペラ26を繊維強化プラスチックで構成してもよく、これによりインペラ26に構造剛性が付与される。インナードライブ24およびインペラ26は相互に隣接する接合面67,69を有する(図3参照)。
【0016】
図2、図3A、図3Bによれば、ドライブリング44はその円周上に一定間隔でドライブリングポケット48を含む。ドライブリングポケット48は、インペラ26から軸方向に伸長するドライブ突出部50を受け止める。さらに具体的に、ドライブリング44はドライブリングポケット48を規定する空洞部47を有し、その最良の形態を図4に示す。
【0017】
好ましくは、ドライブリングポケット48がインナードライブ24の外表面52へ伸長され、プロセス流体がドライブリングポケット48内に溜まるを防ぐ。溜まったプロセス流体は、一般的に腐食性が強く、ポンプアセンブリ10を運転する技術者に危険を及ぼすこともある。
【0018】
図5および図6によれば、ドライブ突出部50は、ドライブリングポケット48内のプラスチックコーティング46に接するまでもしくは非常に近接するまで伸長されるのが好ましく、こうすることで過剰の流体がドライブリングポケット48に集積するのを防ぐ。ドライブ突出部50は距離を隔てた側面56を有し、これらの側面がドライブリング44の側壁面58と密接している。好ましくは、面56および面58が、軸Aを基点に伸長する半径Rに対して平行であることにより、インナードライブ24からインペラ26への効率的なトルク伝達が保証され且つコーティング46の変形が最小限に抑えられる。
【0019】
インナードライブ24はインナードライブ内表面62を含み、インペラ26はインペラ内表面64を含む。相補的な締め付け具60は、インナードライブ24とインペラ26とを噛み合せる。特に、インペラ26から軸方向に伸長する複数の延長部68は、インナードライブの内表面62から内向きに存在する環状の溝66あるいは個別の溝状セグメントまたはポケットと噛み合う。延長部68上の隆起部70は円周上を外向きに伸長し、これを環状の溝66が受ける。延長部68はインペラ内表面64を有する。内表面62および内表面64は一般的に円柱形であり、相互に位置合わせされるので、共通する直線が内表面62,64に沿って伸長する。インナードライブはブッシング76を回転的に位置決めするキー72を含む。また、ブッシング76とインナードライブ24との間に締り嵌めを利用してもよい。ブッシング76は、内表面62,64とブッシング76の外表面78とを噛み合わせることにより、インナードライブ24とインペラ26の両方を支持する。その結果、厳密な公差が要求されるインナードライブ24とインペラ26は相互に位置合わせをする必要がなくなり、代わりにブッシング76が直接的に位置合わせと支持を行う。
【0020】
ブッシング76はインペラ26上の肩74から軸方向に位置する。ブッシング76は延長部68を半径方向に維持し、環状の溝66との噛み合わせを維持する。
【0021】
本発明の好ましい形態を開示したが、当業者は、ある程度の変更が本発明の範囲であることを認識されるであろう。従って、本発明の明確な範囲と趣旨を理解するために以下の請求項を熟読されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】磁気駆動シールレス遠心式ポンプの断面図。
【図2】取り外し可能なインナードライブおよびインペラを有する本発明のインナードライブアセンブリの断面図。
【図3A】インナードライブの斜視図。
【図3B】インペラの斜視図。
【図4】本発明のインナードライブアセンブリで使用するドライブリングの斜視図。
【図5】インナードライブアセンブリの側面図。
【図6】図5における枠6で示したインナードライブアセンブリ部分の拡大断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットを有し、軸の周りを回転可能であるとともに、インナードライブ内表面を含むインナードライブと、
インペラであって、該インペラより軸方向に延びた締め付け具によって前記インナードライブに固定され、前記締め付け具によって提供されるインペラ内表面を有するインペラと、
前記インペラ内表面と組み合わさり、前記インナードライブおよび前記インペラを支持しているブッシングと、
を含むことを特徴とする磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項2】
前記インナードライブが非強化プラスチックで連続して被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項3】
前記内表面の各々が弓形であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項4】
前記内表面の各々が相互に位置合わせされ、前記内表面に沿って延びる軸方向の共通なエンドラインを有することを特徴とする請求項3に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項5】
前記内表面の各々が、前記ブッシングの外表面と接合する概ね円柱状の表面であることを特徴とする請求項4に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項6】
前記インナードライブが、前記インナードライブ内表面から放射状に外向きで存在する溝を含み、前記締め付け具が隆起部を含む延長部であって、前記隆起部を溝が受けるかまたは隆起部と溝が相補的に合致することを特徴とする請求項1に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項7】
軸の周りを回転可能であるとともに、かつ外表面およびこの外表面の端に存在するドライブポケットを有するインナードライブと、
トルクを前記インナードライブからインペラへ伝達するように、前記ドライブポケットに取り外し可能に受けられる軸方向に伸長したドライブ突出部を有するインペラと、
を含むことを特徴とする磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項8】
前記ドライブポケットおよび前記ドライブ突出部が、上記軸を基点とする半径方向と概ね平行な接合面を含むことを特徴とする請求項7に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項9】
前記ドライブ突出部が一般的に前記外表面に対して伸長されることを特徴とする請求項7に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項10】
前記インナードライブが、前記ドライブポケットを規定する金属製のドライブリングと、このドライブリングと前記ドライブ突出部との間に施されたプラスチックコーティングと、を含むことを特徴とする請求項7に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項11】
前記インナードライブが、マグネットを支持するヨークと、前記マグネットに近接して前記ヨークの上に取り付けられた前記ドライブリングと、を含むことを特徴とする請求項10に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項12】
締め付け具が前記インペラから軸方向に伸長され、該締め付け具は、前記インナードライブの相補的表面と、締め付け具から放射状に存在するヨークと、このヨークを被覆して相補的表面をもたらすプラスチックコーティングと、によって受けられることを特徴とする請求項11に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項13】
前記ドライブ突出部の軸方向の末端が前記インナードライブに近接する位置まで伸長されることを特徴とする請求項7に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項14】
非強化プラスチックで被覆されたマグネットを含むインナードライブと、
締め付け具により前記インナードライブへ取り外し可能に組み付けられ、かつ繊維強化プラスチックからなるインペラと、
を含むことを特徴とする磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項15】
前記インナードライブが軸の周りを回転可能であるとともに、マグネットを支持するヨークを含み、このヨークは、前記締め付け具から放射状に存在し、前記ヨークと前記締め付け具との間に非強化プラスチックが施されることを特徴とする請求項14に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項16】
前記締め付け具が前記インペラから軸方向に伸長されることを特徴とする請求項15に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項17】
ドライブリングが前記ヨーク上に取り付けられ、前記ドライブリングが前記インペラから軸方向に伸長されるドライブ突出部を受けるドライブポケットを規定し、ドライブリングとドライブ突出部との間に非強化プラスチックが施されることを特徴とする請求項15に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。
【請求項18】
前記ドライブリングおよび前記ドライブ突出部が、前記軸を基点とする半径方向と概ね平行な接合面を有することを特徴とする請求項17に記載の磁気ポンプ用インナードライブアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−530422(P2008−530422A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554321(P2007−554321)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/004250
【国際公開番号】WO2006/084268
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(500258053)サンダイン コーポレーション (11)
【氏名又は名称原語表記】Sundyne Corporation
【住所又は居所原語表記】14845 West 64th Avenue,Arvada,CO USA
【Fターム(参考)】