説明

磁気マスクホルダー

【課題】真空塗膜プロセス、特にスクリーンやディスプレー等のような大面積を持った基板上に有機エレクトロルミネッセンス物質(OLED)を微細構造化するためのプロセスのための、操作容易なマスクホルダーを提供する。
【解決手段】真空塗膜プロセスは、塗膜工程中基板(3)を受け入れる基板キャリア(2)を含み、基板キャリア(2)は1つ以上の磁石(4)を含む、また、マスク(6)は、マスクのフレームが、塗膜処理される基板に対して基板キャリアの磁石によって保持されるように、磁性体のフレームを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクホルダー、特にスクリーンやディスプレーなど好ましくは広い面積を持った基板上に有機エレクトロルミネッセンス物質(OLED)を微細構造化するためのマスクホルダーに関わる。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス物質(OLED)の発光特性を用いた、いわゆるOLEDディスプレーやスクリーンの製造においては、エレクトロルミネッセンス構造が対応する電極層によって作用され、発光が励起されるように、ガラスのような透明基板上に、相当する微細構造を持ったエレクトロルミネッセンス物質を塗布することが必要である。
【0003】
微細構造を持ったエレクトロルミネッセンス物質は通常真空塗膜処理によって塗布され、微細構造は通常相当するシャドウマスクによって生成される。これらのマスクは適切な方法で基板上に配設され、相当する塗膜チャンバーのなかを基板に添って移動され、それが可能である洗浄の後、再使用するため再度取り出される。
【0004】
微細構造の寸法微細化のために、マスクの非常に正確な位置決めが必須である。特に、いわゆるRGBディスプレーの製造では、ディスプレーの色彩表示のために赤、緑、青のピクセル域がお互いに近接して生成されなければならない。加えて、真空塗膜のプロセスは高度の純度を必要とし、マスクを取り扱う装置はいかなる不要な粒子も発生しないことが保証されなければならない。
【0005】
先行技術(DE29707686U1)によって、箔膜マスクのための磁力保持装置が知られている。そこでは、箔膜マスクが位置決めピンによって基板保持材上に配置され、そのマスクの上に塗膜される基板が置かれる。基板の上方に磁石装置が設置され、マスクと磁石装置の間に設置された強磁性体マスクの全表面を圧接する。このようなマスク保持の機構では、マスクと基板キャリアの機械的取り付けが好ましくない粒子の発生を促し、さらには、このような構造は、単純ですばやい、かつ、正確な位置決めや基板からマスクを取り除くことには不都合である。
【0006】
さらに、EP1202329A2では、基板保持材の後ろ側に設置した磁石装置によってマスク全面が基板に押し付けられるというマスク配置を述べている。その中で述べられているマスクは、通常マスクがそれによって作られる薄い箔にある程度の安定性を与えるための、マスクを側面から把持するための周辺フレームを有している。そのようにマスクと基板を磁力で誘引することでマスクと基板を充分に接触させることが出来、泡や、塗膜のシャープなエッヂをなくすることは出来るが、そのような構造は、特に真空下での迅速、正確なマスク交換処理には最適ではない。さらに、磁石は単にマスクと基板の全面接触や泡のない接触を生成するためには役立つが、基板キャリア上の基板が塗膜領域をマスクを伴って移動するような動的なシステムにおける保持方法には役立たない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、OLEDスクリーンやディスプレーの一貫生産の間の動的な真空塗膜処理用のマスクホルダーを提供することである。それは、従来技術野の欠点を回避し、特に正確、迅速、単純なマスク交換の可能性を保証し、また、塗膜中に移動する(動的)基板へマスクを確実に、信頼性高く配設することを保証する。特に、マスク交換のための当該装置は製造も容易で操作も単純である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板キャリアが1つ以上の磁石を有し、したがって直接的にまたは基板キャリアとマスクの間に設けられた基板と関連させて、塗膜装置を移動する間直接マスクを保持することを可能にすることを特徴とする。
【0009】
この構成によって、1つには、マスクを保持する機能が直接基板キャリアに移行するので、基板が注意深く取り扱われる。他には、磁気ホルダーのおかげで、真空塗膜装置の中を移動する間、マスクを簡単に取り扱え、また確実に保持することが保証される。基板キャリア上の磁石を予め定めた配置にすることによって、また、大面積の磁石と対向させて数個の磁石を分散配置することによって、対応する保持装置、好ましくはスイッチで切り替え可能な電磁石、と簡単に協働することが保証される。
【0010】
基板キャリア上のマスクホルダーの磁石は、永久磁石でも良いし電磁石でも良い。
磁石は、基板キャリアの基板受け入れ領域の周縁に、好ましくは互いに等しく間隔を空けられ、例えば、それらはリング状、矩形状、または多角形状に閉鎖帯を形成する。特に、そのような配置は、マスクの均一な保持を確実にする。好ましくは、磁石は基板キャリアの後面、すなわち、基板受け板に取り外し可能に設けられるマスク保持板または相当するフレームの反対側に配置される。好ましい実施例においては、磁石が基板受け板とマスク保持板の間に受け止められまたは保持されるように、基板受け板とマスク保持板の間にスペーサが設けられる。
【0011】
本発明によれば、マスクは基板キャリア上に磁石を配置したことに従って、少なくとも磁気エッジまたは磁気フレームを有する。エッジという語は、マスクが一体で出来ているときに用い、マスクという語は全体としてマスクが多数の部品、特にフレームとマスクが2つの異なった部品から成っているときに用いる。このように、非磁性のマスク材料も相応する磁性フレームの構成の中に取り入れることが出来、使用することが出来る。
【0012】
フレームを用いるときは、さらに、箔面の垂直方向に対してより大きな安定性を有するように、薄い箔状のマスクを箔面に沿って把持することも可能である。
さらに、マスクのエッジに関してフレームを使用する、または保持磁石を設けることによって、それらを対応する強い磁力によって安定的に取り付けることを可能にする。
【0013】
磁気ホルダーに加えて、更なる保持方法の可能性を補足することが出来る。例えば、基板キャリアの磁石を、マスクフレームの相当する凹み部分に確実に係合させる。
基板キャリアまたは基板と、マスクまたはフレームの設置面または接触面は、好ましくはマスクの全面が基板と接触するように形成される。
【0014】
さらに、磁気マスクの場合には特に、基板に対してマスク全面が圧接することを保証するために、マスク領域内の基板キャリア内、または基板キャリア部により多くの磁石を設けることが出来る。
【0015】
本発明の更なる優位点や特性、特徴は記載した図を用いた以下の実施例の詳細な説明で明白である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、真空塗膜装置、特にOLEDディスプレーまたはスクリーンを製造するため、有機エレクトロルミネッセンス物質を透明基板に連続(インライン)塗膜する装置の真空チャンバー用のマスク貼り付け装置の側面図および部分的断面図である。
【0017】
図1は、チャンバー壁または取り付け板1を通して見た断面と、チャンバーの壁内に挿入される取り付け板1を示している。これによれば、真空チャンバー内すなわち図1の取り付け板1の上方に、基板3が配置された基板キャリア2が示されている。基板キャリア2は、図示されていない移送装置または運搬装置によって真空チャンバー内を移動できる。
【0018】
図1に示す状態では、基板は、マスク6を基板3に配設し位置合わせを行うことが目的のマスク位置決め装置5を有するマスク貼り付け装置の上方に位置している。
マスク位置決め装置5は保持板またはフレーム8の周縁に並べられた多くの電磁石7を有する。一方、保持フレーム8は、真空密封ガイド19を介して他の装置12,13,14および16に繋がっており、基板キャリア2または基板3に対して保持板またはフレーム8の動きを可能にしている。これに関しては、水平駆動装置12によって水平方向移動が、縦駆動装置16によって縦方向移動、すなわち、図の平面から外れる方向への移動が、軸駆動装置13によって軸方向、すなわち軸15の方向の移動が容認される。さらに、回転駆動装置14が設けられ、保持板8の軸15周りの回転を可能にする。この12、13,14,16の駆動装置によって、保持板8は基板キャリアに対してどんな位置でも取れるようになる。
【0019】
マスク位置決め装置5の他に、いくつかの、実施例では4個の持ち上げ装置の形態の第2の移動装置が設けられる。この4個の持ち上げ装置18は、矩形の基板キャリアのコーナーを把持するために四角に配置される。持ち上げ装置18の先端には、基板キャリアが持ち上げ装置2と連結し、持ち上げ装置18が基板キャリア2を動かすことが出来るように、基板キャリア連結具10と協働する連結具11が備えられている。
【0020】
持ち上げ機構もしくは駆動装置18は、液圧または空圧式シリンダーを装備する、または、好ましい実施例においては、特別に均一、正確かつ円滑な作動を特性とするスピンドル駆動装置をも装備する。軸駆動装置13または他の駆動装置も同様に構成される。
【0021】
持ち上げ装置18およびマスク位置決め装置5の他に、さらに取り付け板1上に、窓部を通して基板3上のマスク6の位置を監視できる、好ましくは少なくとも2台のCCDカメラ17を備える。CCDカメラは監視部を構成し、基板に対するマスクの正確な位置をチェックする。位置が間違っていた時は、制御ユニット(図示せず)が作動し、マスク位置決め装置5の動きを制御する。装置12,14,16によって、保持フレーム8の位置は互いの直角方向および回転方向の調整が可能なので、マスク6は正確に位置決めされる。さらに、軸駆動装置13が基板3に対するマスク6の距離に関して位置調整を可能にする。総合して、マスク位置決め装置5がマスクの独立した3次元方向の正確な位置決めの可能性を与える。
【0022】
基板キャリア2は、基板3が配設される領域の周縁に多くの磁石が設けられ、その位置は電磁石7の位置と一致している。このことは、投入した基板とマスクが付着する位置を観察したとき、マスクを基板3の方に移動している間は電磁石7と基板キャリア2の磁石4は互いに正反対、すなわちその長手方向の軸が一つの軸上にあるように配設されることを意味する。磁石4は永久磁石でも電磁石でも良い。磁石4は、マスク保持フレーム9上に、基板キャリア2の後ろ側に設置される。マスクフレーム9は、基板キャリアの基板保持板上にスペーサ20を介して設けられる。これに関しては、マスク保持フレーム9は基板キャリア2の基板保持板にあらゆる適切な方法で、特に、分離可能に取り付けることが出来る。
【0023】
マスク保持フレーム9は、環状でも良いし、連続している板でも良い。特に、マスク保持フレームはその上に設けられる磁石4の磁石ヨークとしても作用する。
磁石4,7を基板3の受け入れ範囲のエッジの周りまたはそれに沿って環状もしくはフレーム状に配置することが、薄い箔状のマスクを充分に傷つけることなく、磁力によってマスク6に塗膜処理のための均一で充分な把持力をもたらす。
【0024】
マスクを基板に移す工程は次のように行われる。即ち、まず、マスク6がマスク送りによってマスク位置決め装置5に渡される。マスク6は、マスク位置決め装置5の保持フレーム8の周縁もしくは環状に設けた電磁石に相対する周縁磁石フレームまたはエッジ21(図4参照)を有し、マスク6は電磁石7の相応の励起に従って保持板8の電磁石7によってそのフレーム21またはエッジが把持される。
【0025】
マスク6が配設された基板3が、対応して予め決められたマスク位置決め装置5の位置に配設されると直ぐに、CCDカメラに補助された駆動装置12,14、16によって、基板3に対するマスク6の正確な水平位置、すなわちx/y座標に関する位置調整が行われる。
【0026】
マスク6が基板3の上方で正しい位置に調整された、すなわち、投影した場合に互いの位置が完全に一致している(full register or congruence identity is achieved in the projection )とき、基板3を伴った基板キャリア2は、基板キャリア連結具10の位置で持ち上げ装置8の連結具11によって把持され、図2に示すようにマスク6の磁気フレームまたはエッジが基板キャリアの磁石4上に位置するように持ち上げ装置18によってマスク6の方に後方から移動する。そして、マスク6が基板3の上に位置する。更に、もしくはその替わりに、軸駆動装置13によって基板もしくはマスク平面に垂直な動きを作用させることも出来る。
【0027】
その後、電磁石7を不作動化または切断し、基板3を持ち上げ装置18によって上方移動させる。
ここで、マスク6を伴った基板3は、基板キャリア2の磁石4が、フレーム21またはエッジによって支えられて基板3上にあるマスクを保持したまま更に真空塗膜装置内を移動できるようになる。
【0028】
これは、図4の平面図において特に明らかであって、そこには、マスク6とマスク6のフレームまたはエッジ21、および磁石4を示す。 磁石4は、それらの下に設けられた基板キャリア2(図示せず)上にあり、フレームまたはエッジ21の下に位置する。基板キャリアに設けた磁石4を介してマスクを保持するために選択された構成、特に基板のエッジの周縁もしくはそれに沿って環状またはフレーム状に磁石を配し、磁石と協働するためにマスクにフレームやエッジを設ける構成は、マスクの取り扱いを簡単にし、動的な塗膜処理のあいだ基板や基板キャリアに対してマスクの保持を確実にし、マスクの取り扱い中、すなわち、マスクの上げ下げの間に発生する粒子を大幅に削減することを確実にする。さらに、全体のシステムの高価でない設計と製造を可能にする。
【0029】
位置決め装置の中でマスクを上下動させたり、そのフレームやエッジでマスクを保持するために電磁石を使用することによって単純な移送が保証される。とりわけ均一で滑らかな動きや移送が得られる、特に、位置決め装置の縦方向調整および/または基板キャリアの持ち上げ装置にスピンドル駆動を用いた時がそうである。マスク6およびフレーム21は一体の形でもいくつかの小片の形でも良い。多片の形態のものをフレームと云い、一体の形態のものをエッジと云う。
【0030】
ここでは、基板にマスクを配設することのみを述べたが、基板からマスクを取り除くことも同じ装置で逆のやりかたで当然可能である。マスクの位置合わせを単に行わないだけである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】マスクが上位置にある状態のマスク貼り付け装置の側面図
【図2】マスクが基板に配設された状態の図1のマスク貼り付け装置
【図3】マスクが基板上に付着した状態の図1および図2のマスク貼り付け装置
【図4】フレーム付きマスクの平面図
【符号の説明】
【0032】
1 容器壁
2 基板キャリア
3 基板
4 磁石
5 マスク位置決め装置
6 マスク
7 電磁石
8 保持板またはフレーム
9 マスク保持フレーム
10 基板キャリア結合具
11 把持装置
12 水平駆動装置
13 軸駆動装置
14 回転駆動装置
15 位置決め軸
16 垂直駆動装置
17 カメラ
18 持ち上げ装置
19 ガイド
20 スペーサ
21 マスクフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大面積の基板、特に、塗膜工程中基板(3)を受け止める基板キャリア(2)を含む真空塗膜プロセスによって、有機エレクトロルミネッセンス(OLED)のスクリーンやディスプレー等を製造するためのエレクトロルミネッセンス物質を微細構造化するための、大面積の基板のためのマスクホルダーにおいて、
該基板キャリア(2)が、該基板キャリアの基板受け入れ領域の周縁もしくはそれに沿って互いに間隙を空けられ、該基板受け入れ領域に対向する後ろ側に位置する1つ以上の磁石を有し、マスク(6)がフレーム(21)を有し、該マスクの該フレームが塗膜処理される該基板に対して該基板キャリアの該磁石によって保持されることを特徴とするマスクホルダー。
【請求項2】
前記磁石(4)が永久磁石または電磁石であることを特徴とする請求項1記載のマスクホルダー。
【請求項3】
前記磁石(4)は前記基板キャリアの前記基板受け入れ領域のエッジの周縁もしくはそれに沿って互いに等しく間隔を空けられていることを特徴とする請求項1または2記載のマスクホルダー。
【請求項4】
前記基板(3)が、マスク(6)と基板キャリア(2)との間に設けられていることを特徴とする上記いずれかの請求項記載のマスクホルダー。
【請求項5】
前記フレーム(21)と前記マスク(6)は、一体に、または、多片に、または2つの異なった部品から構成されていることを特徴とする上記いずれかの請求項記載のマスクホルダー。
【請求項6】
前記基板キャリア(2)は、該基板キャリア(2)の前記磁石(4)を受け止めるためのマスク保持フレーム(9)を有することを特徴とする上記いずれかの請求項記載のマスクホルダー。
【請求項7】
前記磁石(4)がマスク保持フレーム(9)と前記基板キャリア(2)の基板受け板の後ろ側に配置されるように、前記マスク保持フレーム(9)が基板キャリアにスペーサ(20)を介して分離可能に配設されることを特徴とする請求項記載6のマスクホルダー。
【請求項8】
前記基板キャリア上における前記フレーム(21)の設置面は、前記マスク(6)位置の余地を取って、前記フレーム(21)に対して前記マスク(6)が前記基板(3)と全面接触するように位置調整されることを特徴とする上記いずれかの請求項記載のマスクホルダー。
【請求項9】
前記フレーム(21)は、環状、または矩形状、または多角形状であり、かつ/または前記マスク(6)を完全に取り囲むことを特徴とする上記いずれかの請求項記載のマスクホルダー。
【請求項10】
前記基板に対して前記マスク(6)を全面圧接するために、前記基板キャリア(2)に追加の磁石を設けることを特徴とする上記いずれかの請求項記載のマスクホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−302897(P2006−302897A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116325(P2006−116325)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(506136287)アプリート フィルムス ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー (5)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED FILMS GMBH & CO.KG
【Fターム(参考)】