磁気共鳴イメージング装置および方法
【課題】MRI検査において、検査部位と症例に最適な撮像プロトコルおよび撮像スライス位置を容易に設定可能にする。
【解決手段】MRI装置の制御部111は、検査部位、症例名などの入力を受け付けると、検査に最適な撮像プロトコルと推奨撮像スライス位置を、記憶装置115のライブラリーから読み出し、表示部108に表示させる。また、過去に撮像した撮像スライス位置と、現在設定中の撮像スライス位置の一致度を算出し、一致度の閾値を基準に、撮像を実行するか否かを判定する。あるいは、過去に撮像した撮像スライス位置と、現在設定中の撮像スライス位置の差分を算出し、現在設定中の撮像スライス位置を、過去に撮像した撮像スライス位置に合わせて撮像を行う。
【解決手段】MRI装置の制御部111は、検査部位、症例名などの入力を受け付けると、検査に最適な撮像プロトコルと推奨撮像スライス位置を、記憶装置115のライブラリーから読み出し、表示部108に表示させる。また、過去に撮像した撮像スライス位置と、現在設定中の撮像スライス位置の一致度を算出し、一致度の閾値を基準に、撮像を実行するか否かを判定する。あるいは、過去に撮像した撮像スライス位置と、現在設定中の撮像スライス位置の差分を算出し、現在設定中の撮像スライス位置を、過去に撮像した撮像スライス位置に合わせて撮像を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)装置に関し、特に検査内容に応じて自動的に最適な撮像プロトコルとスライス位置を提示することが可能なMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIを用いた検査では、症例に応じて様々な撮像プロトコルが用いられる。例えば心臓領域では、シネ撮像(機能/形態診断)、負荷/安静パーフュージョン(バイアビリティ診断)、遅延造影(バイアビリティ診断)、ブラックブラッド撮像(形態診断)、冠動脈撮像(形態診断)などの撮像手法を、被検者の症状や診断目的に応じて、様々に組み合わされた撮像プロトコルを作成し、実施される(非特許文献1)。撮像プロトコル(検査プロトコルとも呼ばれる)は、撮像シーケンス、撮像パラメータ及びそれらを特定するためのプロファイル情報を含むもので、被検者毎の症状、検査内容に応じて、検査の際に最適な撮像プロトコルを作成するのは非常に煩雑であり、検査の準備に時間を要する。
【0003】
その解決策として、特許文献1には、事前に登録したプロトコルを検査要求から検索するシステムが提案されている。しかし、プロトコルのみが決定しても、撮像スライスが目的部位に正確に設定できなくては、検査が実行できない。MRIは非侵襲であることから、術後の経過観察目的で、同一被検者の同一部位を繰り返し撮像するケースがある。この場合、同一被検者であっても、期間を空けて同一のスライス面を繰り返し撮像することは難しく、特に、前述の心臓撮像などのように、複雑なダブルオブリークのスライス面を設定する場合、期間を空けて同一断面を撮像することは非常に困難である。
【非特許文献1】CMR Image Acquisition Protocols V1.0, March 2007,SCMR
【特許文献1】特開2007−143719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、検査に最適なプロトコルのみならず、設定されたプロトコルに応じて適切なスライス位置を提示可能なMRI装置を提供することを課題とする。これにより、検査目的に適った画像を得ることができ、また時間的に隔たった検査であっても容易に過去の検査と同一断面を撮像することができるMRI装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明のMRI装置は、設定された撮像プロトコルに応じて最適なスライス位置を決定するスライス設定手段を備えることを特徴とし、さらに、過去の画像のスライス位置と決定されたスライス位置との一致度を判定する手段を備えることを特徴とする。
【0006】
すなわち、本発明のMRI装置は、磁気共鳴により被検体を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、前記撮像手段の動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、撮像プロトコルを設定するプロトコル設定手段と、プロトコル設定手段が設定した撮像プロトコルに基き、最適なスライス位置を決定するスライス設定手段とを備え、プロトコル設定手段が設定した撮像プロトコル及びスライス設定手段が決定した撮像スライスに従い、撮像を制御することを特徴とする。
【0007】
制御手段は、撮像プロトコルと撮像プロトコル毎に推奨されるスライス位置とをライブラリーとして記憶する記憶手段を備え、前記スライス設定手段は設定された撮像プロトコルに推奨されるスライス位置を前記記憶手段から読み出す。本発明のMRI装置において、制御手段は、被検体の検査内容の入力を受け付ける入力手段を備え、プロトコル設定手段は、入力手段を介して入力された検査内容に基き、前記記憶手段に記憶された撮像プロトコルのうち、少なくとも一つの、検査に最適な撮像プロトコルを決定する。またプロトコル設定手段が設定した撮像プロトコル及びスライス設定手段が決定した撮像スライスは、表示手段に表示される。
【0008】
さらに本発明のMRI装置は、被検体の過去の画像情報を記憶する記憶手段と、プロトコル設定手段が決定した撮像プロトコルと同じプロトコルで撮像された前記被検体の過去の画像を記憶手段から読み出し、過去の画像におけるスライス位置とスライス設定手段が決定したスライス位置とを比較する比較手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
比較手段による比較結果は、表示手段に表示され、それをもとにスライス設定手段が決定したスライス位置が適切かどうかをユーザーは判断できる。あるいは制御手段は、比較手段による比較結果をもとにスライス設定手段が決定したスライス位置が適切か否かを判定し、判定結果に基き撮像を実行する。ユーザーの判断あるいは制御手段による判定に従い、スライス設定手段は決定したスライス位置を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、検査部位、および、症例を指定すると、推奨プロトコルとスライス位置、および、被検体とスライス位置の関係が表示される。そのため、複雑なダブルオブリーク面のセッティングを要する検査であっても容易に準備ができる。尚且つ、過去のスライス位置に合わせての撮像も容易に可能であるため、期間を空けて同一スライス位置を撮像することが困難であった従来法に比べ、経過観察などで、同一のスライス位置の撮像を繰り返したい場合のセッティングも容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1に、本発明が適用される典型的なMRI装置の構成を示す。このMRI装置は、撮像手段として、被検体101の周囲に静磁場を発生する磁石102と、該空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル103と、この領域に高周波磁場を発生するRFコイル104と被検体101が発生するMR信号を検出するRFプローブ105を備えている。被検体101は、通常、ベッド112に横たわった状態で静磁場空間に挿入される。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源109からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイル104はRF送信部110の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFプローブ105の信号は、信号検出部106で検出され、信号処理部107で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像は表示部108で表示される。
【0013】
これら傾斜磁場電源109、RF送信部110、信号検出部106の動作は、パルスシーケンスと呼ばれる制御のタイムチャートに従い制御部111で制御される。制御部111には、RAM、ROM等の内部記憶装置のほかに、図2Aに示すように、磁気ディスク等の外部記憶装置115、マウス、キーボード等の入力装置113が備えられており、上記パルスシーケンスは、撮像方法によって異なる種々のパルスシーケンスが制御部111の記憶装置にプログラムとして格納されている。制御部111には、入力装置113を介して、撮像に必要なパラメータや検査内容が入力される。表示部108は、制御部111とユーザーとのインターフェイスであるGUIを表示する。
【0014】
本実施の形態のMRI装置は、制御部111は入力装置113からの入力を受付け、検査内容に応じた撮像プロトコルやスライス位置の決定を行なう。これらの機能を実現するための制御部111の詳細を図2Aに示す。図示するように、プロトコル設定部211、スライス設定部212、スライス比較部213、撮像制御部214およびこれら各部を制御する主制御部215を備えている。また記憶装置115には、検査部位や症例名毎に推奨される撮像プロトコルをライブラリー化したデータ、撮像プロトコル毎の撮像スライス位置(中心の座標と傾き)を示すデータが格納されている。また、過去に撮像した画像が、被検体名、検査部位、症例名、撮像手法などの情報とともに記憶されている。
【0015】
図2Bに記憶装置115に格納されているデータの一例を示す。この例では、検査部位と症例名称に対応して推奨されるプロトコルと、プロトコル毎のスライス位置が一つのテーブルに収められている。
【0016】
プロトコル設定部211は、入力装置113から検査部位、検査対象である症例名などを受け付けると、記憶装置115から、推奨される撮像プロトコルを読み出し、表示部108に表示させるとともに、入力装置113から撮像プロトコルを選択する指令を受付け、スライス設定部212及び撮像制御部214に渡す。
【0017】
スライス設定部212は、プロトコル設定部211で撮像プロトコルが設定されると、記憶装置115から設定された撮像プロトコルに対応する撮像スライス位置の情報を取り出し、表示部108にスライス面を表示させるとともに、入力装置113から撮像スライス位置を選択する指令を受け取り、スライス位置を設定する。あるいは後述するスライス比較部213からの比較結果を受け取り、スライス位置を設定する。そして、設定されたスライス位置の情報、すなわち中心座標と傾き(オブリーク)を撮像制御部214に渡す。
【0018】
スライス比較部213は、入力装置113からの指令によって、記憶装置115から指定された被検体の過去の画像とそれに付随する情報(スライス位置)を読み出し、読み出されたスライス位置とスライス設定部212で処理するスライス位置とを比較し、その結果をスライス設定部212に渡すと共に、表示部108に表示させる。
【0019】
撮像制御部214は、プロトコル設定部211で設定された撮像プロトコルの情報と、スライス設定部212で設定されたスライス位置の情報に従い、所定のパルスシーケンスを起動させるよう撮像を制御する。
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、上記構成のMRI装置による動作の実施の形態を説明する。本実施の形態では、検査部位が心臓である場合を例にして説明する。動作の手順を図3に、各段階における画面(UI例)を図4および図5に示す。
【0021】
まず、ユーザーは、検査部位と症例名称を入力する(ステップ301)。この入力を受けて、プロトコル設定部211は、記憶装置115に格納されたライブラリーから推奨プロトコルを読み出し、表示部108に表示する(ステップ302)。
【0022】
図4に、UI画面の一例を示す。画面上側には、入力された検査部位401と症例名称402がそれぞれ表示されるとともに、推奨プロトコル403が表示される。表示される推奨プロトコルは1つとは限らず、ユーザーが選択可能である。表示された推奨プロトコルのいずれかがユーザーによって選択されると(ステップ303)、スライス設定部212は、記憶装置115に格納されたスライス面情報から、選択された推奨プロトコルに最適な撮像スライス面を読み出し、画面下側のウインドウ404〜406に表示する(ステップ304〜306)。
【0023】
スライス面の表示方法としては、モデル上に表示する方法、実際に撮像した画像上に表示する方法があり、いずれを採用しても良い(ステップ304)。モデル上に表示する場合は(ステップ305)、図4に示すように、撮像断面に対応して設けられたウインドウ404〜406に、人体モデル411〜413、421〜423が描出される。具体的には、心臓の短軸を撮像断面とする場合、四腔を撮像断面とする場合、長軸を撮像断面とする場合の3つのケースについて、それぞれウインドウが設定され、これらウインドウに表示されたモデル411〜413、421〜423の上にスライス面400の例が示される。
【0024】
実際に撮像した画像上に表示する場合には、まずスカウト画像Loadボタン431〜433を操作することによって、スライス面を表示するウインドウ404〜406に被検体のスカウト画像を表示させる(ステップ306)。スカウト画像は、本撮像に先立ち、被検体について位置決めのために予め低空間分解能で撮像された画像であり、制御部111の記憶装置に記憶されている。図5にスカウト画像511〜513、521〜523がロードされた画面例を示す。図5において図4と同じ要素については同一の番号で示した。なお図4及び図5では、モデルはCOR断面像とAX断面像の2つが表示されているが、TRANS断面像を加えた3断面像を表示してもよいし、3断面像のいずれか1つあるいは2つでもよい。
【0025】
各ウインドウ404〜406にスカウト画像が表示されたならば、FOVの中心にしたい箇所510をマウスなどで指定する。FOVの中心を指定すると(ステップ307)、指定位置をFOVの中心として、予め登録されていた撮像スライス面500が表示される(ステップ308)。スカウト画像のロードは、モデル上にスライス面を表示させた後に行なってもよい(ステップ309)。このようにスライス面が表示されたならば、撮像断面を選択し、必要に応じて、表示された撮像スライス面を調整し(ステップ310、311)、撮像を開始する(ステップ312、313)。スカウト画像は実際の画像であるので、調整することなく設定された撮像プロトコルを実行し、撮像することも可能である。必要とする全ての撮像断面の撮像を実行するまで、上記ステップ303〜313を繰り返す。
【0026】
本実施の形態によれば、撮像プロトコルが設定されると、その撮像プロトコルで決まる撮像断面について最適なスライス面が設定されるので、ユーザーは撮像プロトコルが異なる毎にスライス面を設定しなおす必要がなく、円滑に撮像を進めることができる。特にスライス面の設定を実際に撮像したスカウト画像上に表示した場合には、スライス面の調整を省略するか、あるいは最低限の調整を行なえばよく、操作性が大幅に向上する。
【0027】
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、第1の実施の形態で設定された撮像スライス面を、過去に撮像した画像と比較し、どの程度撮像スライスが一致しているかを評価し、撮像を実行するか否か判断する機能が追加されている。本実施の形態は、同一被検体について過去のデータが保存されている場合に有効である。本実施の形態の動作の手順を図6に示す。以下、第1の実施の形態(図3)と同じ手順の説明は簡略にし、異なる手順を中心に説明する。
【0028】
まずユーザーが検査部位、症例名を入力すると、推奨プロトコルと撮像断面例が表示され、プロトコルを選択し、スカウト画像をロードするとスカウト画像を表示したウインドウに撮像スライスが表示される点は第1の実施の形態と同様である(ステップ301〜304)。
【0029】
次に撮像スライスを調整するために撮像断面を選択すると(ステップ600)、図7に示すように、撮像スライス位置設定ウインドウ711、712、713には、スカウト画像、および、撮像スライス700が表示されている。この画面(UI)の前回画像Loadボタン740を操作し、同じ撮像断面について過去のスライス面の画像をロードする(ステップ601、602)。過去の画像は、ウインドウ721に表示される。過去のスライスが複数ある場合には、任意のスライスを選択することが可能である。例えば、ウインドウ721に複数のスライスを順次表示させて、所望のスライスを選択するようにしてもよいし、過去の画像の一覧を別のウインドウに表示させて任意のスライスを選択するようにしてもよい。次に、ウインドウ711〜713上で設定されたスライス面700の画像をウインドウ722に表示される。
【0030】
ウインドウ722に表示させる画像としては、次の2つの画像を例示できる。一つは、ウインドウ721に表示されている過去の画像と同一心時相、同一空間分解能で撮像を実行することにより得た画像である。あるいは撮像時間を短縮するため、空間分解能を低くした状態や非同期で撮像した画像であってもよい。このような画像はスライス面200が設定された後、予備的な撮像を行うことにより取得する。
【0031】
もう一つの画像としては、スカウト画像を3Dデータで取得しておき、それを利用する。スライス面700を設定した時点で、3Dスカウト画像からスライス面700に相当するスライス面を切り出してウインドウ722に表示する。
【0032】
次に、ウインドウ721、722にそれぞれ表示された過去の画像と現スライス面の画像との一致度を判定するために、ROI731、732を設定する(ステップ603)。2つの画像の一致度の判定は、画像全体を比較して行うことも可能であるが、判定精度向上のため、撮影対象領域にROIを設定し、ROI内の一致度合いを判定することが望ましい。一致度は、例えば、全く不一致の場合を0、一致している場合を1とし、0〜1の数値741で表示する(ステップ604)。ユーザーはこの値を参考に、画像が一致していると判断できたら撮像をスタートする(ステップ605、606)。撮像スタートは、ユーザー操作ではなく、自動でも可能である。この場合、予め一致度に閾値を設定しておき、閾値を越えた場合、自動で撮像がスタートされる。
【0033】
2画像の一致度を算出する手法の一例を、図8を参照して説明する。まず、図7で示したように、ウインドウ801、811に表示されたスライス面の撮影対象部位(本例では心臓)にROI802、812を設定する。ROIはユーザーがマウスなどで任意領域を選択可能である。ROIが設定されると、ROI内のx、yいずれかの方向に沿って、信号値プロファイルを取得する。図8ではy方向のライン803、813ついて取得した信号値プロファイル804、814を示している。次いで取得された、両画像の信号値プロファイル間で、式(1)を用いて、相関係数を計算する(ステップ821)。
【0034】
プロファイルを(y1,y2) = {(y1i,y2i)}(i=1,2,…,n、nはライン数)とすると、
【数1】
【0035】
1ライン分の相関係数が求められたら、隣接するラインでも同様の処理を行い、ROI内の全ラインで相関係数を算出する(ステップ822)。全ライン分(nライン分)の相関係数が算出されたら、その平均値を求め(ステップ823)、平均値をROI内の画像一致度として表示する(ステップ824)。
【0036】
本実施の形態によれば、設定されたスライス面と比較対照とする過去の画像との一致度が算出されるので、数値として表示される一致度からユーザーは設定されたスライス面が適切かどうかを判断することができ、あるいは、算出された一致度を予め設定した閾値と比較することによりスライスの適切か否かの判定が行われ、撮像を実行することができる。これにより、同一被検体について期間をあけて検査を行なう場合にも、常に同一スライスの画像を比較することができ、診断の質を向上することができる。なお、本実施例においても、必要に応じて、過去の画像との一致度をチェックすればよく、一致度合いのチェック無しで、撮像を実行することも可能である。
【0037】
<第3の実施の形態>
本実施の形態も、スライス面を設定するまでの処理は、第1および第2の実施の形態と同様であるが、過去の画像を用いてスライス面の適否を判断する手法が第2の実施の形態と異なる。即ち、第2の実施の形態では、過去の画像と現在の画像の信号値の相関を取ることにより、設定されたスライス面の適否を判断したが、本実施の形態では、信号値の相関を取るのではなく、過去の画像において解剖学的に同一であることが判別できる位置の情報を利用して、スライスの適否を判断する。
【0038】
本実施の形態の手順を図9に示す。まず、過去のスカウト画像と、これから実行する撮像に使用するスカウト画像(現スカウト画像)をそれぞれロードする(ステップ900、910)。スカウト画像のロードは、例えば図10に示す画面のスカウト画像Loadボタン1053、1054を操作することにより開始される。これにより、図10に示すように、過去のスカウト画像および撮像スライス1010がウインドウ1011〜1013に、現スカウト画像および推奨撮像スライス1020が1021〜1023にそれぞれ表示される。ウインドウ1011〜1013にロードされる画像は、DICOMサーバなどに保存されているMRI以外の画像例えばCTなどの画像も可能である。スライス面1010、1020上にはそれぞれのFOV中心を示す点1015、1025が表示される。ここでユーザーは、過去、現スカウト画像上それぞれにて、任意の箇所1030、1040を指定する(ステップ901、911)。この2点は、解剖学的に同じと思われる箇所を指定する。例えば、図10の例では肩関節部分が指定されている。指定すると、図11に示すように、指定された点1030とFOV中心1015を結ぶベクトルAとその距離D、および撮像スライス1010の法線ベクトルAnとベクトルAのなす角度θAが算出される(ステップ902〜905)。すなわち、指定した点1030に対する撮像スライス1010のオブリーク、および距離が求められる。
【0039】
具体的には、点1030の座標を(ax1,ay1,az1)、FOV中心1015の座標を(ax2,ay2,az2)とした場合、図11中のベクトルAの成分(ax,ay,az)と大きさ|A|は、それぞれ次式(2)、(3)で表される。
【0040】
【数2】
【0041】
一方、スライス面1010の法線ベクトルAnの成分を(axn,ayn,azn)とすると、ベクトルAと法線ベクトルAnのなす角度θA、すなわち、点1030に対する撮像スライス1010のオブリークは、次式(4)で求められる。
【0042】
【数3】
【0043】
同様に、現スカウト画像上においても、点1040とFOV中心1025間のベクトルBおよび、撮像スライス1020の法線ベクトルAnから、基準とした点1040に対する撮像スライス1025のオブリーク((4)式にて算出されたsinθB)、および、距離が求められる(ステップ1012〜1014)。指定した点1030と点1040が解剖学的に近似的な位置あれば、こうして求めたオブリークsinθAとsinθBの差は、過去スカウト画像のスライス位置1015と現スカウト画像のスライス位置1025との差に相当する。そこで、オブリークsinθAとsinθBの差から、過去に撮像したスライス位置1010とこれから撮像するスライス位置1020の差を求める(ステップ920)。この差をもとに、図11に示すように、現スカウト画像を表示したウインドウ上で過去の撮像スライス位置に相当する撮像スライス位置(図中、点線で示す位置)を表示する(ステップ921)。図10の画面(UI)に表示されたスライスセットボタン1051が操作されると、スライス設定部212は現スカウト画像に表示された過去の撮像スライス位置に相当する位置をスライス位置として設定する(ステップ922)。その後、撮像STARTボタン1052を操作し撮像を実行する(ステップ923)。
【0044】
本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様に、同一被検体について期間をあけて検査を行なう場合にも、常に同一スライスの画像を比較することができ、診断の質を向上することができる。また画像の信号値の相関を計算する場合に比べ、少ない演算量で過去のスライス面と現在のスライス面との比較が可能である。
【0045】
以上、第2、第3の実施の形態として、これから撮像しようとするスライス面を過去のスライス面と比較する機能を備えたMRI装置の動作を説明したが、スライスの一致度を確認する手法は、これら実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示す図。
【図2A】制御部の詳細を示すブロック図
【図2B】記憶装置に記憶されているテーブルの一例を示す図
【図3】本発明の第1の実施の形態を示すフローチャート
【図4】第1の実施の形態のUI構成例を示す図
【図5】第1の実施の形態のUI構成例を示す図
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すフローチャート
【図7】第2の実施の形態のUI構成例を示す図
【図8】第2の実施の形態による一致度の計算方法を説明する図
【図9】本発明の第3の実施の形態を示すフローチャート
【図10】第3の実施の形態のUI構成例を示す図
【図11】第3の実施の形態によるスライス調整方法を説明する図
【符号の説明】
【0047】
101・・・被検体、102・・・静磁場磁石、103・・・傾斜磁場コイル、104・・・RFコイル、105・・・RFプローブ、106・・・信号検出部、107・・・信号処理部、108・・・表示部、109・・・傾斜磁場電源、110・・・RF送信部、111・・・制御部、112・・・ベッド、113・・・入力装置、115・・・記憶装置、211・・・プロトコル設定部、212・・・スライス設定部、213・・・スライス比較部、214・・・撮像制御部、215・・・主制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)装置に関し、特に検査内容に応じて自動的に最適な撮像プロトコルとスライス位置を提示することが可能なMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIを用いた検査では、症例に応じて様々な撮像プロトコルが用いられる。例えば心臓領域では、シネ撮像(機能/形態診断)、負荷/安静パーフュージョン(バイアビリティ診断)、遅延造影(バイアビリティ診断)、ブラックブラッド撮像(形態診断)、冠動脈撮像(形態診断)などの撮像手法を、被検者の症状や診断目的に応じて、様々に組み合わされた撮像プロトコルを作成し、実施される(非特許文献1)。撮像プロトコル(検査プロトコルとも呼ばれる)は、撮像シーケンス、撮像パラメータ及びそれらを特定するためのプロファイル情報を含むもので、被検者毎の症状、検査内容に応じて、検査の際に最適な撮像プロトコルを作成するのは非常に煩雑であり、検査の準備に時間を要する。
【0003】
その解決策として、特許文献1には、事前に登録したプロトコルを検査要求から検索するシステムが提案されている。しかし、プロトコルのみが決定しても、撮像スライスが目的部位に正確に設定できなくては、検査が実行できない。MRIは非侵襲であることから、術後の経過観察目的で、同一被検者の同一部位を繰り返し撮像するケースがある。この場合、同一被検者であっても、期間を空けて同一のスライス面を繰り返し撮像することは難しく、特に、前述の心臓撮像などのように、複雑なダブルオブリークのスライス面を設定する場合、期間を空けて同一断面を撮像することは非常に困難である。
【非特許文献1】CMR Image Acquisition Protocols V1.0, March 2007,SCMR
【特許文献1】特開2007−143719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、検査に最適なプロトコルのみならず、設定されたプロトコルに応じて適切なスライス位置を提示可能なMRI装置を提供することを課題とする。これにより、検査目的に適った画像を得ることができ、また時間的に隔たった検査であっても容易に過去の検査と同一断面を撮像することができるMRI装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明のMRI装置は、設定された撮像プロトコルに応じて最適なスライス位置を決定するスライス設定手段を備えることを特徴とし、さらに、過去の画像のスライス位置と決定されたスライス位置との一致度を判定する手段を備えることを特徴とする。
【0006】
すなわち、本発明のMRI装置は、磁気共鳴により被検体を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、前記撮像手段の動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、撮像プロトコルを設定するプロトコル設定手段と、プロトコル設定手段が設定した撮像プロトコルに基き、最適なスライス位置を決定するスライス設定手段とを備え、プロトコル設定手段が設定した撮像プロトコル及びスライス設定手段が決定した撮像スライスに従い、撮像を制御することを特徴とする。
【0007】
制御手段は、撮像プロトコルと撮像プロトコル毎に推奨されるスライス位置とをライブラリーとして記憶する記憶手段を備え、前記スライス設定手段は設定された撮像プロトコルに推奨されるスライス位置を前記記憶手段から読み出す。本発明のMRI装置において、制御手段は、被検体の検査内容の入力を受け付ける入力手段を備え、プロトコル設定手段は、入力手段を介して入力された検査内容に基き、前記記憶手段に記憶された撮像プロトコルのうち、少なくとも一つの、検査に最適な撮像プロトコルを決定する。またプロトコル設定手段が設定した撮像プロトコル及びスライス設定手段が決定した撮像スライスは、表示手段に表示される。
【0008】
さらに本発明のMRI装置は、被検体の過去の画像情報を記憶する記憶手段と、プロトコル設定手段が決定した撮像プロトコルと同じプロトコルで撮像された前記被検体の過去の画像を記憶手段から読み出し、過去の画像におけるスライス位置とスライス設定手段が決定したスライス位置とを比較する比較手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
比較手段による比較結果は、表示手段に表示され、それをもとにスライス設定手段が決定したスライス位置が適切かどうかをユーザーは判断できる。あるいは制御手段は、比較手段による比較結果をもとにスライス設定手段が決定したスライス位置が適切か否かを判定し、判定結果に基き撮像を実行する。ユーザーの判断あるいは制御手段による判定に従い、スライス設定手段は決定したスライス位置を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、検査部位、および、症例を指定すると、推奨プロトコルとスライス位置、および、被検体とスライス位置の関係が表示される。そのため、複雑なダブルオブリーク面のセッティングを要する検査であっても容易に準備ができる。尚且つ、過去のスライス位置に合わせての撮像も容易に可能であるため、期間を空けて同一スライス位置を撮像することが困難であった従来法に比べ、経過観察などで、同一のスライス位置の撮像を繰り返したい場合のセッティングも容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1に、本発明が適用される典型的なMRI装置の構成を示す。このMRI装置は、撮像手段として、被検体101の周囲に静磁場を発生する磁石102と、該空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル103と、この領域に高周波磁場を発生するRFコイル104と被検体101が発生するMR信号を検出するRFプローブ105を備えている。被検体101は、通常、ベッド112に横たわった状態で静磁場空間に挿入される。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源109からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイル104はRF送信部110の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFプローブ105の信号は、信号検出部106で検出され、信号処理部107で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像は表示部108で表示される。
【0013】
これら傾斜磁場電源109、RF送信部110、信号検出部106の動作は、パルスシーケンスと呼ばれる制御のタイムチャートに従い制御部111で制御される。制御部111には、RAM、ROM等の内部記憶装置のほかに、図2Aに示すように、磁気ディスク等の外部記憶装置115、マウス、キーボード等の入力装置113が備えられており、上記パルスシーケンスは、撮像方法によって異なる種々のパルスシーケンスが制御部111の記憶装置にプログラムとして格納されている。制御部111には、入力装置113を介して、撮像に必要なパラメータや検査内容が入力される。表示部108は、制御部111とユーザーとのインターフェイスであるGUIを表示する。
【0014】
本実施の形態のMRI装置は、制御部111は入力装置113からの入力を受付け、検査内容に応じた撮像プロトコルやスライス位置の決定を行なう。これらの機能を実現するための制御部111の詳細を図2Aに示す。図示するように、プロトコル設定部211、スライス設定部212、スライス比較部213、撮像制御部214およびこれら各部を制御する主制御部215を備えている。また記憶装置115には、検査部位や症例名毎に推奨される撮像プロトコルをライブラリー化したデータ、撮像プロトコル毎の撮像スライス位置(中心の座標と傾き)を示すデータが格納されている。また、過去に撮像した画像が、被検体名、検査部位、症例名、撮像手法などの情報とともに記憶されている。
【0015】
図2Bに記憶装置115に格納されているデータの一例を示す。この例では、検査部位と症例名称に対応して推奨されるプロトコルと、プロトコル毎のスライス位置が一つのテーブルに収められている。
【0016】
プロトコル設定部211は、入力装置113から検査部位、検査対象である症例名などを受け付けると、記憶装置115から、推奨される撮像プロトコルを読み出し、表示部108に表示させるとともに、入力装置113から撮像プロトコルを選択する指令を受付け、スライス設定部212及び撮像制御部214に渡す。
【0017】
スライス設定部212は、プロトコル設定部211で撮像プロトコルが設定されると、記憶装置115から設定された撮像プロトコルに対応する撮像スライス位置の情報を取り出し、表示部108にスライス面を表示させるとともに、入力装置113から撮像スライス位置を選択する指令を受け取り、スライス位置を設定する。あるいは後述するスライス比較部213からの比較結果を受け取り、スライス位置を設定する。そして、設定されたスライス位置の情報、すなわち中心座標と傾き(オブリーク)を撮像制御部214に渡す。
【0018】
スライス比較部213は、入力装置113からの指令によって、記憶装置115から指定された被検体の過去の画像とそれに付随する情報(スライス位置)を読み出し、読み出されたスライス位置とスライス設定部212で処理するスライス位置とを比較し、その結果をスライス設定部212に渡すと共に、表示部108に表示させる。
【0019】
撮像制御部214は、プロトコル設定部211で設定された撮像プロトコルの情報と、スライス設定部212で設定されたスライス位置の情報に従い、所定のパルスシーケンスを起動させるよう撮像を制御する。
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、上記構成のMRI装置による動作の実施の形態を説明する。本実施の形態では、検査部位が心臓である場合を例にして説明する。動作の手順を図3に、各段階における画面(UI例)を図4および図5に示す。
【0021】
まず、ユーザーは、検査部位と症例名称を入力する(ステップ301)。この入力を受けて、プロトコル設定部211は、記憶装置115に格納されたライブラリーから推奨プロトコルを読み出し、表示部108に表示する(ステップ302)。
【0022】
図4に、UI画面の一例を示す。画面上側には、入力された検査部位401と症例名称402がそれぞれ表示されるとともに、推奨プロトコル403が表示される。表示される推奨プロトコルは1つとは限らず、ユーザーが選択可能である。表示された推奨プロトコルのいずれかがユーザーによって選択されると(ステップ303)、スライス設定部212は、記憶装置115に格納されたスライス面情報から、選択された推奨プロトコルに最適な撮像スライス面を読み出し、画面下側のウインドウ404〜406に表示する(ステップ304〜306)。
【0023】
スライス面の表示方法としては、モデル上に表示する方法、実際に撮像した画像上に表示する方法があり、いずれを採用しても良い(ステップ304)。モデル上に表示する場合は(ステップ305)、図4に示すように、撮像断面に対応して設けられたウインドウ404〜406に、人体モデル411〜413、421〜423が描出される。具体的には、心臓の短軸を撮像断面とする場合、四腔を撮像断面とする場合、長軸を撮像断面とする場合の3つのケースについて、それぞれウインドウが設定され、これらウインドウに表示されたモデル411〜413、421〜423の上にスライス面400の例が示される。
【0024】
実際に撮像した画像上に表示する場合には、まずスカウト画像Loadボタン431〜433を操作することによって、スライス面を表示するウインドウ404〜406に被検体のスカウト画像を表示させる(ステップ306)。スカウト画像は、本撮像に先立ち、被検体について位置決めのために予め低空間分解能で撮像された画像であり、制御部111の記憶装置に記憶されている。図5にスカウト画像511〜513、521〜523がロードされた画面例を示す。図5において図4と同じ要素については同一の番号で示した。なお図4及び図5では、モデルはCOR断面像とAX断面像の2つが表示されているが、TRANS断面像を加えた3断面像を表示してもよいし、3断面像のいずれか1つあるいは2つでもよい。
【0025】
各ウインドウ404〜406にスカウト画像が表示されたならば、FOVの中心にしたい箇所510をマウスなどで指定する。FOVの中心を指定すると(ステップ307)、指定位置をFOVの中心として、予め登録されていた撮像スライス面500が表示される(ステップ308)。スカウト画像のロードは、モデル上にスライス面を表示させた後に行なってもよい(ステップ309)。このようにスライス面が表示されたならば、撮像断面を選択し、必要に応じて、表示された撮像スライス面を調整し(ステップ310、311)、撮像を開始する(ステップ312、313)。スカウト画像は実際の画像であるので、調整することなく設定された撮像プロトコルを実行し、撮像することも可能である。必要とする全ての撮像断面の撮像を実行するまで、上記ステップ303〜313を繰り返す。
【0026】
本実施の形態によれば、撮像プロトコルが設定されると、その撮像プロトコルで決まる撮像断面について最適なスライス面が設定されるので、ユーザーは撮像プロトコルが異なる毎にスライス面を設定しなおす必要がなく、円滑に撮像を進めることができる。特にスライス面の設定を実際に撮像したスカウト画像上に表示した場合には、スライス面の調整を省略するか、あるいは最低限の調整を行なえばよく、操作性が大幅に向上する。
【0027】
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、第1の実施の形態で設定された撮像スライス面を、過去に撮像した画像と比較し、どの程度撮像スライスが一致しているかを評価し、撮像を実行するか否か判断する機能が追加されている。本実施の形態は、同一被検体について過去のデータが保存されている場合に有効である。本実施の形態の動作の手順を図6に示す。以下、第1の実施の形態(図3)と同じ手順の説明は簡略にし、異なる手順を中心に説明する。
【0028】
まずユーザーが検査部位、症例名を入力すると、推奨プロトコルと撮像断面例が表示され、プロトコルを選択し、スカウト画像をロードするとスカウト画像を表示したウインドウに撮像スライスが表示される点は第1の実施の形態と同様である(ステップ301〜304)。
【0029】
次に撮像スライスを調整するために撮像断面を選択すると(ステップ600)、図7に示すように、撮像スライス位置設定ウインドウ711、712、713には、スカウト画像、および、撮像スライス700が表示されている。この画面(UI)の前回画像Loadボタン740を操作し、同じ撮像断面について過去のスライス面の画像をロードする(ステップ601、602)。過去の画像は、ウインドウ721に表示される。過去のスライスが複数ある場合には、任意のスライスを選択することが可能である。例えば、ウインドウ721に複数のスライスを順次表示させて、所望のスライスを選択するようにしてもよいし、過去の画像の一覧を別のウインドウに表示させて任意のスライスを選択するようにしてもよい。次に、ウインドウ711〜713上で設定されたスライス面700の画像をウインドウ722に表示される。
【0030】
ウインドウ722に表示させる画像としては、次の2つの画像を例示できる。一つは、ウインドウ721に表示されている過去の画像と同一心時相、同一空間分解能で撮像を実行することにより得た画像である。あるいは撮像時間を短縮するため、空間分解能を低くした状態や非同期で撮像した画像であってもよい。このような画像はスライス面200が設定された後、予備的な撮像を行うことにより取得する。
【0031】
もう一つの画像としては、スカウト画像を3Dデータで取得しておき、それを利用する。スライス面700を設定した時点で、3Dスカウト画像からスライス面700に相当するスライス面を切り出してウインドウ722に表示する。
【0032】
次に、ウインドウ721、722にそれぞれ表示された過去の画像と現スライス面の画像との一致度を判定するために、ROI731、732を設定する(ステップ603)。2つの画像の一致度の判定は、画像全体を比較して行うことも可能であるが、判定精度向上のため、撮影対象領域にROIを設定し、ROI内の一致度合いを判定することが望ましい。一致度は、例えば、全く不一致の場合を0、一致している場合を1とし、0〜1の数値741で表示する(ステップ604)。ユーザーはこの値を参考に、画像が一致していると判断できたら撮像をスタートする(ステップ605、606)。撮像スタートは、ユーザー操作ではなく、自動でも可能である。この場合、予め一致度に閾値を設定しておき、閾値を越えた場合、自動で撮像がスタートされる。
【0033】
2画像の一致度を算出する手法の一例を、図8を参照して説明する。まず、図7で示したように、ウインドウ801、811に表示されたスライス面の撮影対象部位(本例では心臓)にROI802、812を設定する。ROIはユーザーがマウスなどで任意領域を選択可能である。ROIが設定されると、ROI内のx、yいずれかの方向に沿って、信号値プロファイルを取得する。図8ではy方向のライン803、813ついて取得した信号値プロファイル804、814を示している。次いで取得された、両画像の信号値プロファイル間で、式(1)を用いて、相関係数を計算する(ステップ821)。
【0034】
プロファイルを(y1,y2) = {(y1i,y2i)}(i=1,2,…,n、nはライン数)とすると、
【数1】
【0035】
1ライン分の相関係数が求められたら、隣接するラインでも同様の処理を行い、ROI内の全ラインで相関係数を算出する(ステップ822)。全ライン分(nライン分)の相関係数が算出されたら、その平均値を求め(ステップ823)、平均値をROI内の画像一致度として表示する(ステップ824)。
【0036】
本実施の形態によれば、設定されたスライス面と比較対照とする過去の画像との一致度が算出されるので、数値として表示される一致度からユーザーは設定されたスライス面が適切かどうかを判断することができ、あるいは、算出された一致度を予め設定した閾値と比較することによりスライスの適切か否かの判定が行われ、撮像を実行することができる。これにより、同一被検体について期間をあけて検査を行なう場合にも、常に同一スライスの画像を比較することができ、診断の質を向上することができる。なお、本実施例においても、必要に応じて、過去の画像との一致度をチェックすればよく、一致度合いのチェック無しで、撮像を実行することも可能である。
【0037】
<第3の実施の形態>
本実施の形態も、スライス面を設定するまでの処理は、第1および第2の実施の形態と同様であるが、過去の画像を用いてスライス面の適否を判断する手法が第2の実施の形態と異なる。即ち、第2の実施の形態では、過去の画像と現在の画像の信号値の相関を取ることにより、設定されたスライス面の適否を判断したが、本実施の形態では、信号値の相関を取るのではなく、過去の画像において解剖学的に同一であることが判別できる位置の情報を利用して、スライスの適否を判断する。
【0038】
本実施の形態の手順を図9に示す。まず、過去のスカウト画像と、これから実行する撮像に使用するスカウト画像(現スカウト画像)をそれぞれロードする(ステップ900、910)。スカウト画像のロードは、例えば図10に示す画面のスカウト画像Loadボタン1053、1054を操作することにより開始される。これにより、図10に示すように、過去のスカウト画像および撮像スライス1010がウインドウ1011〜1013に、現スカウト画像および推奨撮像スライス1020が1021〜1023にそれぞれ表示される。ウインドウ1011〜1013にロードされる画像は、DICOMサーバなどに保存されているMRI以外の画像例えばCTなどの画像も可能である。スライス面1010、1020上にはそれぞれのFOV中心を示す点1015、1025が表示される。ここでユーザーは、過去、現スカウト画像上それぞれにて、任意の箇所1030、1040を指定する(ステップ901、911)。この2点は、解剖学的に同じと思われる箇所を指定する。例えば、図10の例では肩関節部分が指定されている。指定すると、図11に示すように、指定された点1030とFOV中心1015を結ぶベクトルAとその距離D、および撮像スライス1010の法線ベクトルAnとベクトルAのなす角度θAが算出される(ステップ902〜905)。すなわち、指定した点1030に対する撮像スライス1010のオブリーク、および距離が求められる。
【0039】
具体的には、点1030の座標を(ax1,ay1,az1)、FOV中心1015の座標を(ax2,ay2,az2)とした場合、図11中のベクトルAの成分(ax,ay,az)と大きさ|A|は、それぞれ次式(2)、(3)で表される。
【0040】
【数2】
【0041】
一方、スライス面1010の法線ベクトルAnの成分を(axn,ayn,azn)とすると、ベクトルAと法線ベクトルAnのなす角度θA、すなわち、点1030に対する撮像スライス1010のオブリークは、次式(4)で求められる。
【0042】
【数3】
【0043】
同様に、現スカウト画像上においても、点1040とFOV中心1025間のベクトルBおよび、撮像スライス1020の法線ベクトルAnから、基準とした点1040に対する撮像スライス1025のオブリーク((4)式にて算出されたsinθB)、および、距離が求められる(ステップ1012〜1014)。指定した点1030と点1040が解剖学的に近似的な位置あれば、こうして求めたオブリークsinθAとsinθBの差は、過去スカウト画像のスライス位置1015と現スカウト画像のスライス位置1025との差に相当する。そこで、オブリークsinθAとsinθBの差から、過去に撮像したスライス位置1010とこれから撮像するスライス位置1020の差を求める(ステップ920)。この差をもとに、図11に示すように、現スカウト画像を表示したウインドウ上で過去の撮像スライス位置に相当する撮像スライス位置(図中、点線で示す位置)を表示する(ステップ921)。図10の画面(UI)に表示されたスライスセットボタン1051が操作されると、スライス設定部212は現スカウト画像に表示された過去の撮像スライス位置に相当する位置をスライス位置として設定する(ステップ922)。その後、撮像STARTボタン1052を操作し撮像を実行する(ステップ923)。
【0044】
本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様に、同一被検体について期間をあけて検査を行なう場合にも、常に同一スライスの画像を比較することができ、診断の質を向上することができる。また画像の信号値の相関を計算する場合に比べ、少ない演算量で過去のスライス面と現在のスライス面との比較が可能である。
【0045】
以上、第2、第3の実施の形態として、これから撮像しようとするスライス面を過去のスライス面と比較する機能を備えたMRI装置の動作を説明したが、スライスの一致度を確認する手法は、これら実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示す図。
【図2A】制御部の詳細を示すブロック図
【図2B】記憶装置に記憶されているテーブルの一例を示す図
【図3】本発明の第1の実施の形態を示すフローチャート
【図4】第1の実施の形態のUI構成例を示す図
【図5】第1の実施の形態のUI構成例を示す図
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すフローチャート
【図7】第2の実施の形態のUI構成例を示す図
【図8】第2の実施の形態による一致度の計算方法を説明する図
【図9】本発明の第3の実施の形態を示すフローチャート
【図10】第3の実施の形態のUI構成例を示す図
【図11】第3の実施の形態によるスライス調整方法を説明する図
【符号の説明】
【0047】
101・・・被検体、102・・・静磁場磁石、103・・・傾斜磁場コイル、104・・・RFコイル、105・・・RFプローブ、106・・・信号検出部、107・・・信号処理部、108・・・表示部、109・・・傾斜磁場電源、110・・・RF送信部、111・・・制御部、112・・・ベッド、113・・・入力装置、115・・・記憶装置、211・・・プロトコル設定部、212・・・スライス設定部、213・・・スライス比較部、214・・・撮像制御部、215・・・主制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴により被検体を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、前記撮像手段の動作を制御する制御手段とを備える磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、撮像プロトコルを設定するプロトコル設定手段と、
前記プロトコル設定手段が設定した撮像プロトコルに基き、最適なスライス位置を決定するスライス設定手段とを備え、
前記プロトコル設定手段が設定した撮像プロトコル及び前記スライス設定手段が決定した撮像スライスに従い、撮像を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、撮像プロトコルと撮像プロトコル毎に推奨されるスライス位置とをライブラリーとして記憶する記憶手段を備え、前記スライス設定手段は設定された撮像プロトコルに推奨されるスライス位置を前記記憶手段から読み出すことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記被検体の検査内容の入力を受け付ける入力手段を備え、
前記プロトコル設定手段は、前記入力手段を介して入力された検査内容に基き、前記記憶手段に記憶された撮像プロトコルのうち、少なくとも一つの、検査に最適な撮像プロトコルを決定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記スライス設定手段が決定したスライス位置を、前記被検体の画像またはモデルに重畳して前記表示手段に表示させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記スライス設定手段が決定したスライス位置を調整するスライス調整手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記被検体の過去の画像情報を記憶する記憶手段と、
前記プロトコル設定手段が決定した撮像プロトコルと同じプロトコルで撮像された前記被検体の過去の画像を前記記憶手段から読み出し、前記過去の画像におけるスライス位置と前記スライス設定手段が決定したスライス位置とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基き前記スライス設定手段が決定したスライス位置を調整するスライス調整手段と、
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記比較手段は、前記過去の画像と、前記スライス設定手段が決定したスライス位置における画像との一致度を算出する算出手段、及び/又は、前記被検体の解剖学的特徴点に対する前記過去の画像のスライス位置のオブリーク及び前記被検体の解剖学的特徴点に対する決定されたスライス位置のオブリークを算出し、その差分を算出する算出手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記比較手段は、前記算出手段が算出した結果を前記表示手段に表示させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記算出手段が算出した値が、予め設定した閾値以内であるときに、前記決定されたスライス位置で撮像を実行することを備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
磁気共鳴イメージング装置におけるスライス位置決定方法であって、
予め記憶された撮像プロトコルとスライス位置との対応に基き、設定された撮像プロトコルに応じて最適なスライス位置を決定し、表示するステップと、
設定された撮像プロトコルと同じ撮像プロトコルで撮像した過去のスライス画像を表示するステップと、
前記決定された最適なスライス位置と前記過去のスライス画像におけるスライス位置との一致度を算出するステップと、
算出された一致度に基き、撮像するスライス位置を決定するステップとを含む方法。
【請求項1】
磁気共鳴により被検体を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、前記撮像手段の動作を制御する制御手段とを備える磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、撮像プロトコルを設定するプロトコル設定手段と、
前記プロトコル設定手段が設定した撮像プロトコルに基き、最適なスライス位置を決定するスライス設定手段とを備え、
前記プロトコル設定手段が設定した撮像プロトコル及び前記スライス設定手段が決定した撮像スライスに従い、撮像を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、撮像プロトコルと撮像プロトコル毎に推奨されるスライス位置とをライブラリーとして記憶する記憶手段を備え、前記スライス設定手段は設定された撮像プロトコルに推奨されるスライス位置を前記記憶手段から読み出すことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記被検体の検査内容の入力を受け付ける入力手段を備え、
前記プロトコル設定手段は、前記入力手段を介して入力された検査内容に基き、前記記憶手段に記憶された撮像プロトコルのうち、少なくとも一つの、検査に最適な撮像プロトコルを決定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記スライス設定手段が決定したスライス位置を、前記被検体の画像またはモデルに重畳して前記表示手段に表示させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記スライス設定手段が決定したスライス位置を調整するスライス調整手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記被検体の過去の画像情報を記憶する記憶手段と、
前記プロトコル設定手段が決定した撮像プロトコルと同じプロトコルで撮像された前記被検体の過去の画像を前記記憶手段から読み出し、前記過去の画像におけるスライス位置と前記スライス設定手段が決定したスライス位置とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基き前記スライス設定手段が決定したスライス位置を調整するスライス調整手段と、
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記比較手段は、前記過去の画像と、前記スライス設定手段が決定したスライス位置における画像との一致度を算出する算出手段、及び/又は、前記被検体の解剖学的特徴点に対する前記過去の画像のスライス位置のオブリーク及び前記被検体の解剖学的特徴点に対する決定されたスライス位置のオブリークを算出し、その差分を算出する算出手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記比較手段は、前記算出手段が算出した結果を前記表示手段に表示させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記算出手段が算出した値が、予め設定した閾値以内であるときに、前記決定されたスライス位置で撮像を実行することを備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
磁気共鳴イメージング装置におけるスライス位置決定方法であって、
予め記憶された撮像プロトコルとスライス位置との対応に基き、設定された撮像プロトコルに応じて最適なスライス位置を決定し、表示するステップと、
設定された撮像プロトコルと同じ撮像プロトコルで撮像した過去のスライス画像を表示するステップと、
前記決定された最適なスライス位置と前記過去のスライス画像におけるスライス位置との一致度を算出するステップと、
算出された一致度に基き、撮像するスライス位置を決定するステップとを含む方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−279218(P2009−279218A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135044(P2008−135044)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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