説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】より良好な条件で撮像目的となる血管を血流像として収集することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、フロー選択用傾斜磁場パルスを含むプリパルス部と、前記プリパルス部に続くデータ収集用のイメージングシーケンスとを有し、前記プリパルス部と前記イメージングシーケンスとの間に前記フロー選択用傾斜磁場パルスとは異なる他のパルスが印加されるパルスシーケンスを設定し、前記パルスシーケンスを心電同期で印加する撮像条件として設定する撮影条件設定手段と、設定した前記パルスシーケンスに従ってイメージングスキャンを実行するスキャン実行手段と、前記イメージングスキャンによって収集されたデータから血流像を生成する血流像生成手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴(MR:magnetic resonance)信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、血流像を得る手法としてMRAが知られている。MRAのうち、造影剤を使用しないものは非造影MRAと呼ばれる。非造影MRAでは、ECG(electro cardiogram)同期を行って心臓から拍出された速い流速の血流を捕捉することにより良好に血管を描出するFBI(Fresh Blood Imaging)法が考案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このFBI法による非造影MRAでは、ECG同期の遅延時間を変えて撮像した画像データ間で差分を取ることにより動静脈を分離したMRA像が得られる。さらにFBI法においてspoilerパルスを印加することにより、収縮期における動脈信号を抑制するFlow-Spoiled FBI法が考案されている。すなわち、Flow-Spoiled FBI法では、心筋の拡張期と収縮期における動脈信号の差が画像化される。
【0005】
さらに、FBI法において、低流速の血流を描出するために、読出し(RO:readout)方向にグラジエントパルス(Gspoil)を、傾斜磁場パルスにディフェーズパルスまたはリフェーズパルスを印加するFlow-dephasing法が考案されている(例えば特許文献2参照)。このFlow-dephasing法によれば、ディフェーズパルスまたはリフェーズパルスの作用により、流速の速い血流からの信号値と低流速の血流からの信号値との相対的な信号差を増大させることができる。そして、この相対的な信号差から動静脈を明瞭に分離することが可能となる。
【0006】
すなわち、動静脈を明瞭に分離するためには、拡張期と収縮期とで信号差を大きくすることが重要となる。拡張期と収縮期とで信号差を大きくするためには、収縮期における血流からの信号強度を小さくする必要がある。しかしながら特に下肢MRAにおいては、静脈も動脈も流速が遅いため、拡張期と収縮期とで信号差が小さくなり動静脈分離が困難となる。そこで、RO方向への適切な強度のグラジエントパルスが設定され、設定されたグラジエントパルスにより、収縮期における動脈からの血流信号が抑制される。これにより、拡張期と収縮期とで動脈からの信号差を大きくすることができる。この状態で、拡張期における血流信号が収集される。そして、拡張期において収集された血流信号には、差分処理や最大値投影(MIP:Maximum Intensity Projection)処理が施され、動脈のみが描出される。
【0007】
さらに、FBI法に併用される技術として、適切な心電同期の遅延時間を測定するためのECG−prepという技術が考案されている(例えば特許文献3参照)。ECG−prepは、イメージング用のFBIスキャンに先立って、適切な心電同期の遅延時間を決定するための準備スキャンであるECG−prepスキャンを行い、ECG−prepスキャンによって決定したECG遅延時間でFBIスキャンを実行するものである。ECG−prepスキャンは、ECG信号のR波からの遅延時間を徐々に変化させでデータ収集を行うことにより互いに時相が異なる複数のシングルショット画像を得るスキャンである。このECG−prepスキャンによって得られた複数の画像から適切に血管が描出された画像を選択することにより、FBIスキャンにおけるECG遅延時間を決定することができる。これにより、流速の速い血流を、より流速が遅い時相において描出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−5144号公報
【特許文献2】特開2003−135430号公報
【特許文献3】米国特許第6144201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のFlow-Spoiled FBI法では、イメージング用のシーケンスとしてFASE(fast advanced spin echo)シーケンスが使用され、収縮期における動脈からの血流信号を抑制するためにRO方向にグラジエントパルスが印加される。また、Flow-Adjusted FBIと呼ばれる技術では、RO方向のみならず位相エンコード(PE: phase encode)方向にもグラジエントパルスが印加される。そして、グラジエントパルスの印加によって、より良好な動静脈分離が図られている。
【0010】
しかしながら、より動静脈分離能を向上させるためにグラジエントパルスのSpoiler強度を増加させようとすると、エコー間隔(ETS: echo train spacing)を長くする必要がある。この結果、ETSの増加に伴って時間分解能が低下し、流速が速い血管の動静脈分離が困難になるという問題がある。
【0011】
また、従来のFlow-dephasing法では、FASE法によるスキャンにおいてRO方向の傾斜磁場にDephasingパルスを印加するため、血管の描出能が血管の方向に依存することとなり、結果的に血管の描出能に限界があるという問題がある。
【0012】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、より良好な条件で撮像目的となる血管を血流像として収集することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、フロー選択用傾斜磁場パルスを含むプリパルス部と、前記プリパルス部に続くデータ収集用のイメージングシーケンスとを有し、前記プリパルス部と前記イメージングシーケンスとの間に前記フロー選択用傾斜磁場パルスとは異なる他のパルスが印加されるパルスシーケンスを設定し、前記パルスシーケンスを心電同期で印加する撮像条件として設定する撮影条件設定手段と、設定した前記パルスシーケンスに従ってイメージングスキャンを実行するスキャン実行手段と、前記イメージングスキャンによって収集されたデータから血流像を生成する血流像生成手段と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図。
【図2】図1に示す磁気共鳴イメージング装置におけるコンピュータ32の機能ブロック図。
【図3】図2に示すパルスシーケンス設定部において設定されるフロー制御プリパルス部の一例を示す図。
【図4】図2に示すパルスシーケンス設定部において設定されるフロー制御プリパルス部の別の例を示す図。
【図5】図2に示すパルスシーケンス設定部により血流像の収集用に設定されるパルスシーケンスの目的となるスキャンの実行順序を示す図。
【図6】図2に示すパルスシーケンス設定部において設定されるDWI-Prepシーケンスの一例を示す図。
【図7】図2に示すパルスシーケンス設定部においてMPGパルスの強度を設定する際に参照される血管の走行方向の一例を示す図。
【図8】スクロール収集によって収集されるECHOデータのk空間上における配置順序を示す図。
【図9】図2に示すパルスシーケンス設定部において設定されるイメージングスキャン用のシーケンスの一例を示す図。
【図10】図2に示すパルスシーケンス設定部において設定されるECHOデータの収集タイミングの一例を示す図。
【図11】図1に示す磁気共鳴イメージング装置により、血流像を収集する際の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
【0017】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイルユニット23およびRFコイル24を図示しないガントリに内蔵した構成である。
【0018】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0019】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0020】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0021】
傾斜磁場コイルユニット23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイルユニット23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
【0022】
また、傾斜磁場コイルユニット23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイルユニット23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0023】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0024】
RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0025】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したパルスシーケンスを記憶する機能と、記憶した所定のパルスシーケンスで規定される撮影条件に従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。シーケンスコントローラ31から送信器29に与えられる制御情報としては、送信のフリップ角に相当するRFパルス電流の強度や送信位相も含まれる。
【0026】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるMR信号の検波およびA/D変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0027】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0028】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、被検体PのECG信号を取得するECGユニット38が備えられる。ECGユニット38により取得されたECG信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
【0029】
尚、ECG信号の代わりに脈波同期(PPG: peripheral pulse gating)信号を取得することもできる。PPG信号は、例えば指先の脈波を光信号として検出した信号である。PPG信号を取得する場合には、PPG信号検出ユニットが設けられる。
【0030】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、特定の回路を設けてコンピュータ32を構成してもよい。
【0031】
図2は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20におけるコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0032】
コンピュータ32は、プログラムによりシーケンスコントローラ制御部40、k空間データベース41、画像再構成部42、画像データベース43、血流像作成部44、パルスシーケンス設定部45として機能する。
【0033】
シーケンスコントローラ制御部40は、入力装置33またはその他の構成要素からの情報に基づいてパルスシーケンス設定部45から受けた所要のパルスシーケンスをシーケンスコントローラ31に与えることにより駆動制御させる機能と、シーケンスコントローラ31からk空間データである生データを受けてk空間データベース41に形成されたk空間(フーリエ空間)に配置する機能とを有する。また、シーケンスコントローラ制御部40は、パルスシーケンスの実行に必要なパラメータを入力装置33またはその他の構成要素から取得してシーケンスコントローラ31に与えることができるように構成される。このとき、シーケンスコントローラ制御部40は、必要に応じてECGユニット38により取得されたECG信号に基づいて心電同期でスキャンが実行されるようにシーケンスコントローラ31を駆動制御できるように構成される。
【0034】
このため、k空間データベース41には、受信器30において生成された各生データがk空間データとして保存され、k空間データベース41に形成されたk空間にk空間データが配置される。
【0035】
画像再構成部42は、k空間データベース41からk空間データを取り込んで3次元(3D)フーリエ変換処理等の所定の画像再構成処理を施すことにより、被検体Pの3次元画像データを再構成して画像データベース43に書き込む機能を有する。ただし、2Dフーリエ変換処理等の処理により一旦2D画像データ等の中間的なデータを作成した後、3D画像データを再構成するようにしてもよい。
【0036】
このため、画像データベース43には、被検体Pの3D画像データが保存される。
【0037】
血流像作成部44は、画像データベース43から画像データを読み込んで血流像を生成する機能を有する。FBI法による撮像の場合には、ECG信号による心電同期下において収集された心筋の拡張期における動脈が強調された画像データと収縮期における動脈が抑制された画像データとの差分処理によって静動脈分離した血流像を生成することができる。そこで、血流像作成部44には、画像データベース43から心筋の拡張期および収縮期における3D画像データを読み込んで、差分処理を行うことにより静脈データをキャンセルし、動脈データを血流像として抽出する機能が備えられる。ただし、差分処理を行わずに血流像を生成することも可能である。差分処理を行わない場合には、心筋の収縮期において画像データを収集すれば、静動脈分離が容易となる。以降では、差分処理を伴って血流像を生成する場合について説明する。
【0038】
更に、血流像作成部44には、必要に応じて、血流像に対してMIP処理等の各種処理を施す機能が備えられる。また、血流像作成部44は、最終的に作成された血流像を表示装置34に与えて表示させる機能を有する。
【0039】
ただし、画像再構成部42を設けずに、血流像作成部44がk空間データベース41から読み込んだ生データから血流像を作成するように構成してもよい。また、MIP画像、SVR(Shaded volume rendering)画像その他の3次元画像を血流像として作成するようにしてもよい。
【0040】
すなわち、磁気共鳴イメージング装置20には、画像再構成部42や血流像作成部44により生データから血流像を生成する機能が備えられる。
【0041】
パルスシーケンス設定部45は、撮影条件として非造影血流像を収集するためのパルスシーケンスを設定する機能と、設定したパルスシーケンスをシーケンスコントローラ制御部40に与えて所望の撮影条件に従うスキャンの実行を可能とする機能とを有する。
【0042】
血流像の収集用のイメージングシーケンスとしては、radial scan, line scan, spiral scan用の任意のシーケンスを用いることができる。具体的にはイメージングシーケンスとして、balanced SSFP(steady state free precession)シーケンス、FSE(fast spin echo)シーケンス、EPI(echo planar imaging)シーケンス、FASEシーケンス、half-Fourier FSEシーケンス等の血流像収集に適した任意のシーケンスを用いることにより動静脈を描出することができる。
【0043】
ただし、balanced SSFPシーケンスを用いた撮像やFSEシーケンスを用いてPROPELLER (Periodically Rotated Overlapping ParallEL Lines with Enhanced Reconstruction)法による撮像を行えば、対象となる血流の方向性に依存せずにデータを収集することが可能となる。従って、イメージングシーケンスとしてbalanced SSFPシーケンスやFSEシーケンスを用いれば、任意方向に走行する血管からの信号を収集することができる。balanced SSFPシーケンスは、繰り返しの励起ごとに横磁化の位相を揃える、或いはSSFP状態で信号を収集するシーケンスである。また、PROPELLER法は、FSEシーケンスにより、傾斜磁場を変化させてk空間上で原点を通る放射状にデータを収集する方法である。より具体的には、PROPELLER法では、1TR (繰り返し時間:repetition time)内でブレードを形成する複数の平行なデータ群が収集され、ブレードをTRごとに回転することでk空間上のデータが埋められる。
【0044】
尚、イメージングシーケンスとしてSSFPシーケンスに類するシーケンスを用いることもできる。例えば、SSFPシーケンスはスピンエコーとstimulatedエコーとを使用して撮像するシーケンスであるが、自由誘導減衰(FID: free induction decay)信号とスピンエコーおよびstimulatedエコーを結合させて撮像するシーケンスをイメージングシーケンスとして用いてもよい。
【0045】
イメージングシーケンスによるイメージングスキャンは、前述のように必要に応じてECG信号を利用した心電同期下で行うことができる。すなわち、心電同期下においてイメージングスキャンを実行すれば、心筋の拡張期や収縮期等所望の心時相において画像データを収集することができる。特に、FBI法による撮像の場合には、拡張期と収縮期といった互いに異なる心時相においてそれぞれ複数のエコー信号で構成されるエコー信号セットを収集し、各エコー信号セットに基づいてそれぞれ生成された画像データを差分処理することによって血流像を得ることができる。
【0046】
さらに、イメージングシーケンスの前に、被検体の血液の流速に対する画像値(画素値)の対応関係を変化させるフロー制御プリパルス部を付加することができる。このフロー制御プリパルス部では、フロー制御パルスとしての機能を有するフロー選択用傾斜磁場パルスを印加することができる。
【0047】
尚、フロー選択用傾斜磁場パルスを印加するためのフロー制御プリパルス部とSSFPシーケンス等のイメージングシーケンスとの間に脂肪抑制パルス等の他のパルスが印加されるようにしても良い。
【0048】
フロー選択用傾斜磁場パルスは、血管内の血液のフローを補償するフローエンコードパルスとフローボイド効果を促進するフロースポイルパルスとに分類することができる。
【0049】
フローエンコードパルスは、スピン(横磁化)の位相を血液等の流体の流速に比例して変化させるパルスである。このパルスの印加により横磁化の流速に応じた位相分布が生じる。その後に縦磁化回復パルスを印加すると、流速に応じた縦磁化の分布(空間分布)が現れる。これにより血流像において背景の部分が抑制され、血管が強調される。フローエンコードパルスは、主として例えば体軸方向のように血流の流速方向に印加される。
【0050】
フロースポイルパルスは、フローエンコードパルスと同様にスピン(横磁化)の位相を血液等の流体の流速に比例して変化させるが、流速に対して非常に敏感に位相変化を起こすことによりボクセル内の微妙な流速差で大きな位相差を生じさせ、スピン同士の干渉効果により血液等の流体の流速が速い部分の信号を抑制(スポイル)させる効果を持つパルスである。このフロースポイルパルスには、単位流速あたりの位相変化が通常のフローエンコードパルスより非常に大きい、すなわちフローエンコード量の大きい傾斜磁場パルス波形を用いることが一般的である。
【0051】
フロー制御プリパルス部としてフロースポイルパルスを用いる場合、フローエンコードパルスの場合と同様にパルスを印加した後に縦磁化回復パルスを印加すると、流速に関係した縦磁化分布(空間分布)が現れる。これにより流速の速い血管の部分の縦磁化の回復だけが遅れた状態でイメージングシーケンス部分のスキャンが行われるため、血管の信号が抑制される。
【0052】
フロースポイルパルスは、ある方向または不特定方向に流れる単一または複数の血流からの信号を抑制するために印加されるパルスである。従って、フロースポイルパルスは、スライス選択(slice selection)方向(スライスエンコード(slice encode)方向とも言う)、位相エンコード(phase encode)方向および読み出し方向の3軸方向に印加されることが多い。フロースポイルパルスの一例として拡散強調イメージング(DWI: diffusion weighted imaging)用の拡散傾斜磁場(MPG: Motion Probing Gradient)パルスが挙げられる。
【0053】
フロー選択用傾斜磁場パルスの種類は、撮像目的や撮像法に応じて決定される。例えば、実用的な適用例としては、FBIにフロー選択用傾斜磁場パルスの印加を適用する場合が挙げられる。FBIはECG信号を用いた心電同期下で行われ、拡張期と収縮期においてそれぞれ収集されたデータから画像データが生成される。そして、拡張期の画像データと収縮期の画像データ間で差分処理を行うことによって非造影血流像が生成される。ここで拡張期におけるデータ収集に先立ってフローエンコードパルスを動脈に印加して動脈からの信号を強調する一方、収縮期におけるデータ収集に先立ってフロースポイルパルスを動脈に印加して動脈からの信号を抑制すれば、拡張期と収縮期における動脈からの信号強度の差が大きくなるため、差分処理によって良好に静動脈分離を行って動脈を描出することが可能となる。また、FBIにおけるイメージングシーケンスとしてSSFPを用いれば、血管の走行方向に依存せずにデータ収集を行うことができる。
【0054】
また、別の実用的な適用例としては、例えば収縮期のように流速が速い時相の非造影MRA像を得ることが目的であれば、フローエンコードパルスをデータ収集に先立って印加し、他の時相にフロースポイルパルスを印加しないようにすることができる。
【0055】
このようなフロー選択用傾斜磁場パルスの印加を行うフロー制御プリパルス部では、RFパルスとして、励起パルス、リフォーカスパルスおよび縦磁化回復パルスが印加される。
【0056】
図3は、図2に示すパルスシーケンス設定部45において設定されるフロー制御プリパルス部の一例を示す図である。
【0057】
図3において、横軸は時間を、RFはRFパルスを、Gfはフロー選択用傾斜磁場パルスを示す。図3に示すように、RFパルスとして、励起パルス、リフォーカスパルスおよび縦磁化回復パルスが印加される。縦磁化回復パルスは、横磁化として存在するスピンを縦磁化の形に強制的に変換するためのRFパルスである。励起パルスのフリップアングルは90度や45度等の任意の角度に設定され、縦磁化回復パルスのフリップアングルは、励起パルスと同一の角度に設定されることが多い。リフォーカスパルスのフリップアングルは、例えば180度に設定される。そして、フロー選択用傾斜磁場パルスは、励起パルス印加後でかつ縦磁化回復パルスの印加前において、リフォーカスパルスを挟んで2回印加されるように設定される。
【0058】
このようなフロー制御プリパルス部の後にSSFPシーケンス等のイメージングシーケンスが実行されるように設定される。
【0059】
図4は、図2に示すパルスシーケンス設定部45において設定されるフロー制御プリパルス部の別の例を示す図である。
【0060】
図4において、横軸は時間を、RFはRFパルスを、Gfはフロー選択用傾斜磁場パルスを示す。図4に示すように、RFパルスとして、励起パルス、2回に亘るリフォーカスパルスおよび縦磁化回復パルスが印加される。そして、2つのリフォーカスパルスの間においてフロー選択用傾斜磁場パルスが印加される。フロー選択用傾斜磁場パルスは、双極性で正側と負側の面積が同じであるbipolarパルスとされる。
【0061】
図3および図4に示すようなフロー選択用傾斜磁場パルスを設定すれば、いずれも同様なフロー制御効果を得ることができる。フロー選択用傾斜磁場パルスの強度および印加方向は撮影条件として適切な値および方向に設定される。例えば、着目する血流の走行方向や速度に応じてフロー選択用傾斜磁場パルスの強度および印加方向を決定することができる。そして、フロー選択用傾斜磁場パルスは、例えば被検体の動脈の血流や流速の速い血流等の対象となる血管に印加される。
【0062】
ただし、フロー選択用傾斜磁場パルスを設定するために必要な強度や印加方向がイメージングシーケンスの設定時に不明である場合には、これらを決定するための準備スキャンを必要に応じて実行することができる。この準備スキャンは、複数種のフロー選択用傾斜磁場パルスの強度または印加方向でエコーデータを収集するものである。準備スキャンは、望ましくは撮影時間短縮化のため2次元スキャンとされる。この準備スキャンにより収集されたフロー選択用傾斜磁場パルスの強度または印加方向別のデータに基づいてそれぞれ複数の参照用の血流像を生成し、生成した複数の参照用の血流像から自動的にまたは目視により手動で血流が良好に描出された参照画像を選択することができる。そして参照画像を選択することによって適切なフロー選択用傾斜磁場パルスの強度や印加方向を決定することができる。
【0063】
このような準備スキャンを行うと、フロー選択用傾斜磁場パルスの強度ごとの血流からのデータの信号値が取得できる。そこで、フロー選択用傾斜磁場パルスの強度とデータの信号値との関係を示すグラフを表示し、グラフを参照しつつフロー選択用傾斜磁場パルスの強度を決定できるようにすることもできる。フロー選択用傾斜磁場パルスの強度とデータの信号値との関係を示すグラフは、以下の手順(アルゴリズム)によって作成することができる。
【0064】
まず、準備スキャンによってフロー選択用傾斜磁場パルスの強度が異なる複数の参照用血流像が生成される。また、イメージングによって差分画像を生成する場合には、複数の参照用血流像のいずれかを基準画像とし、各参照用血流像と基準画像との差分をとる。或いは、複数の参照用血流像のうち2つの参照用血流像の差分を全ての組み合わせに対してとる。これにより複数の差分画像が生成される。
【0065】
次に複数の参照用血流像に対して、或いは差分処理を行う場合には複数の差分画像に対して時間方向にMIP処理が施されることによって、MIP画像が生成される。次に、MIP画像を二値化してマスク画像を作成し、作成したマスク画像を複数の参照用血流像それぞれに掛け合わせる。これにより各フロー選択用傾斜磁場パルスの強度の特徴量が計算される。そして、このように計算された各フロー選択用傾斜磁場パルスの強度と特徴量との関係を示すグラフを生成することができる。
【0066】
グラフを表示させる場合には、パルスシーケンス設定部45が他の構成要素から必要なデータを取得し、グラフを表すグラフ情報を作成して表示装置34に表示させるように構成すればよい。
【0067】
また、グラフを表示させずに、或いはグラフ表示を併用して、参照画像の時間方向へのMIP処理によってフローエンコード量が多い、つまり血管として描出された白い部分が多い画像を自動または手動選択することによって適切なフロー選択用傾斜磁場パルスの強度を決定することが可能となる。
【0068】
そしてこのような準備スキャンを実行するためのシーケンスを設定する機能がパルスシーケンス設定部45に設けられる。尚、ここからは、フロー選択用傾斜磁場パルスとしてDWI用のMPGパルスを印加する場合の具体例について説明する。
【0069】
具体的には、パルスシーケンス設定部45は、血管のイメージングを行うためのイメージングスキャン用のシーケンスに先立って準備スキャンとしてDWI-Prepスキャンを実行するためのDWI-Prepシーケンスを設定するように構成される。DWIイメージングは、MPGパルスをプリパルスとして印加することによって、組織内の水分子の拡散の速さと方向をパラメータとして画像化するものである。
【0070】
図5は、図2に示すパルスシーケンス設定部45により血流像の収集用に設定されるパルスシーケンスの目的となるスキャンの実行順序を示す図である。
【0071】
図5に示すように、血流像は、準備スキャンであるDWI-Prepスキャンの実行に続いてイメージングスキャンが実行されることにより収集される。イメージングスキャンでは、DWIパルスがプリパルスとして印加される。DWI-Prepスキャンは、イメージングスキャンの実行に必要なDWIの強度を決定するためのスキャンである。そして、DWI-Prepスキャンの実行によって決定されたDWIの強度でイメージングスキャンが実行され、イメージングスキャンの実行によって血流像が収集される。
【0072】
DWI-Prepスキャンを実行するためのDWI-Prepシーケンスは、DWIシーケンスとイメージングシーケンスとが複数回に亘って繰り返されるシーケンスである。DWIシーケンスは、DWIの強度を決定するMPGパルスを印加するシーケンスであり、MPGパルスの強度は、TRごとに変化される。
【0073】
また、DWI-Prepシーケンスのイメージングシーケンスは、イメージングスキャンに用いるイメージングシーケンスとできるだけ同等なシーケンスを用いることが望ましい。
【0074】
また、DWI-Prepシーケンスのイメージングシーケンスは、2次元のデータ収集とすることにより、DWI-Prepスキャンにおける画像処理量を低減させ、撮像時間を短縮させることができる。ただし、DWI-Prepシーケンスのイメージングシーケンスを3次元としてDWI-Prepスキャンによって3次元画像を収集するようにしてもよい。
【0075】
図6は、図2に示すパルスシーケンス設定部45において設定されるDWI-Prepシーケンスの一例を示す図である。
【0076】
図6において、ECGはECG信号を、RF/ECHOはRF信号およびECHOデータを、Gseはスライスエンコード用傾斜磁場を、Groは読出し用傾斜磁場を、Gpeは位相エンコード用傾斜磁場を、それぞれ示す。パルスシーケンス設定部45は、例えば図6に示すようなDWI-Prepシーケンスを設定する。図6は、DWI-Prepシーケンスのイメージングシーケンスをbalanced SSFPシーケンスとした例を示している。従って、DWIシーケンスに続いてbalanced SSFPシーケンスが設定される。また、balanced SSFPシーケンスに続いて、MPGパルスの強度を変化させた次のDWIシーケンスが設定される。
【0077】
DWIシーケンスおよびbalanced SSFPシーケンスで構成されるDWI-Prepシーケンスは、例えばECG信号のR波をトリガとすることによりECG信号と同期して実行される。balanced SSFPシーケンスは、好適には血流像の収集に適したシングルショットシーケンスとされ、α°パルスと-α°パルスが収集すべきECHOデータの数に応じて繰り返し印加される。また、必要に応じて脂肪抑制パルス等のような図示しない様々な目的のパルスが1番目のα°パルスの前に印加される。
【0078】
そして、balanced SSFPシーケンスによるECHOデータの収集に先立って、DWIシーケンスが設定される。DWIシーケンスでは、90°励起パルスに続いて180°リフォーカスパルスがRF信号として印加され、180°リフォーカスパルスに続いて90°縦磁化回復パルスがRF信号として印加される。尚、励起パルス、リフォーカスパルスおよび縦磁化回復パルスのフリップアングル、フロップアングルは他の角度に設定することも可能である。また、180°リフォーカスパルスの前後においてMPGパルスが傾斜磁場パルスとして印加される。MPGパルスは、スライスエンコード方向、読出し方向および位相エンコード方向のうち必要な方向に印加される。図6のDWIシーケンスは、読出し方向MPGパルスMPGro1および位相エンコード方向MPGパルスMPGpe1が印加され、スライスエンコード方向MPGパルスMPGse1が印加されない例を示している。そして、MPGパルスの印加によって組織内の水分子の拡散に起因するスピンの分散(スポイル)を起こさせた状態で、balanced SSFPシーケンスのα°パルスおよび-α°パルス並びに傾斜磁場パルスの印加によってECHOデータが収集される。
【0079】
また、MPGパルスの印加後、必要なECHOデータが収集されると、再び90°励起パルスに続いて180°リフォーカスパルスがRF信号として印加される。そして、180°リフォーカスパルスの前後において強度を変化させたMPGパルスMPGro2, MPGpe2が再び印加される。そして、同様に、異なる強度のMPGパルスの印加によって組織内の水分子の拡散に起因するスピンの分散(スポイル)を起こさせた状態で、再びbalanced SSFPシーケンスのα°パルスおよび-α°パルス並びに傾斜磁場パルスの印加によってECHOデータが収集される。そして、このようなMPGパルスの印加とECHOデータの収集がMPGパルスの強度の数だけ繰り返し実行される。
【0080】
つまり、DWI-Prepシーケンスは、1回の核磁気励起により画像化を行い、かつDWIの強度、すなわちMPGパルスの強度を変化させて複数回に亘って印加するシングルショットマルチDWIイメージングである。
【0081】
MPGパルスの強度は、描出しようとする血管の走行方向に応じてスライス方向、リードアウト方向および位相エンコード方向の3軸方向に任意に変更することができる。従って、MPGパルスは図6の例に限らず1軸または3軸方向に印加してもよい。例えば、血管の走行方向が3軸方向であるような場合にはMPGパルスの強度を3軸方向について同等となるように変化させれば良いし、血管の走行方向が既知の特定の方向である場合には、血管の走行方向における動静脈分離が良好となるように血管の走行方向に応じて3軸方向に異なる強度となるように変化させれば良い。
【0082】
このように、DWI-PrepシーケンスにおいてMPGパルスの強度を血管の走行方向に応じて3軸方向に任意に変更することにより、イメージングシーケンス用のMPGパルスの強度を血管の走行方向に応じて3軸方向に可変設定することが可能となる。
【0083】
図6の例では、位相エンコード方向およびリードアウト方向のMPGパルスの強度が変化している。ただし、位相エンコード方向のMPGパルスの強度は、リードアウト方向のMPGパルスの強度よりも大きく設定されている。また、スライス方向のMPGパルスの強度は、ゼロに設定されている。このようにMPGパルスの強度を設定すれば、位相エンコード方向およびリードアウト方向に走行する血管内の信号を良好に差別化するために適切なMPGパルスの強度を決定することができる。
【0084】
図7は、図2に示すパルスシーケンス設定部45においてMPGパルスの強度を設定する際に参照される血管の走行方向の一例を示す図である。
【0085】
図7に示すように例えば、コロナル断面の撮像を行う場合に体軸(HF: head feet)方向に血流が流れると仮定する。この場合、血流方向であるHF方向、すなわちRO方向のMPGパルスの強度をHF方向に垂直なRL(right left)方向となるPE方向よりも大きくし、かつスライス(SL: slice)方向には強度が微量のMPGパルスを印加するようにDWI-Prepシーケンスを設定すれば、HF方向に走行する血管内の信号を良好に差別化するために適切なMPGパルスの強度を決定することができる。
【0086】
尚、MPGパルスの強度および強度の変化幅、変化させる範囲は、入力装置33の操作によってパルスシーケンス設定部45に指示情報を与えることにより任意に設定することができる。
【0087】
このようなDWI-Prepシーケンスに従って、DWI-Prepスキャンを実行し、画像再構成部42および血流像作成部44により動静脈分離した動脈データを血流像として抽出すると、互いにDWIの強度が異なる複数の動脈の画像データを得ることができる。すなわち、DWIの強度を大きく設定して収集された動脈信号の強度は大きくなり、逆にDWIの強度を小さく設定して収集された動脈信号の強度は小さくなる。このため、動静脈分離した動脈データは、DWIの強度に応じたデータとなる。
【0088】
このため、DWIの強度ごとに動静脈分離された動脈データに対する閾値処理等の自動的な画像処理あるいは各動脈データの目視を伴うユーザの選択により、より良好に動静脈分離された画像データを選ぶことができる。この結果、より良好に動静脈分離された画像データを撮像するために適切なMPGパルスの強度を決定することが可能となる。
【0089】
MPGパルスの強度の決定は、例えば表示装置34に表示されたDWIの強度を変えて撮像した複数の血流像のなかから目的血管が良好に描出された血流像を入力装置33の操作により選択することにより行うことができる。このため、パルスシーケンス設定部45は、入力装置33から血流像の選択情報を受けると、選択された血流像の撮像に用いたDWIの強度(MPGパルスの強度)を取得するように構成される。ただし、入力装置33の操作によりMPGパルスの強度を数値としてパルスシーケンス設定部45に入力するようにしてもよい。
【0090】
ところで、イメージングスキャンにおいて、データをスクロール収集すると、MPGパルスによる効果を向上できることが知られている。そこで、イメージングスキャンでは、データをスクロール収集することが望ましい。また、DWI-Prepスキャンにおけるイメージングシーケンスは、イメージングスキャンに用いるイメージングシーケンスとできるだけ条件を一致させることが望ましい。このため、パルスシーケンス設定部45は、入力装置33からスクロール収集の指示を受けた場合には、DWI-Prepスキャンにおいてデータがスクロール収集されるように2次元のイメージングシーケンスを作成するように構成される。
【0091】
図8は、スクロール収集によって収集されるECHOデータのk空間上における配置順序を示す図である。
【0092】
図8はk空間を示し、縦軸は位相エンコード(Kpe)方向、横軸はリードアウト(Kro)方向を示す。図8に示すように、スクロール収集では、矢印1および矢印2の方向に向かってデータが収集される。例えばPE方向に128のデータを収集する場合には、スクロール収集では、矢印1および矢印2の内部に記された数字の順にデータが収集される。すなわち矢印1に沿ってk空間の中心付近からk空間の中心から離れた側に向かってデータが収集される。次に、矢印2に沿って、k空間の中心から離れた側からk空間の中心に向かってデータが収集される。
【0093】
このように、MPGパルスの印加直後にk空間中心のデータを収集することによって、MPGパルスの効果を向上させることができる。データの収集順序によるMPGパルスの効果改善は、balanced SSFPシーケンスに限らず、PROPELLER法による撮像においても得ることができる。また、FSEシーケンス、FASEシーケンス、EPIシーケンス等のシーケンスでは、MPGパルスの印加タイミングからk空間中心のデータ収集タイミング間の時間をMPGパルスの効果が向上されるような最適なTE(echo time)に設定することが好適である。
【0094】
ただし、上述のスクロール収集に限らず、図8の矢印3に示すようにk空間上で一方向にデータを収集するシーケンシャル収集や、矢印4および矢印5に示すようにk空間の中心付近から正領域、負領域のデータを交互にk空間の中心から離れた側に向かって収集するセントリック収集によってデータを収集してもよい。尚、矢印3、矢印4、矢印5内部に記された数字は、それぞれ128のデータを収集する順序を示している。
【0095】
パルスシーケンス設定部45では、イメージングスキャン用のシーケンスも設定される。イメージングスキャン用のシーケンスもDWIシーケンスとイメージングシーケンスとで構成される。
【0096】
図9は、図2に示すパルスシーケンス設定部45において設定されるイメージングスキャン用のシーケンスの一例を示す図である。
【0097】
図9において、ECGはECG信号を、RF/ECHOはRF信号およびECHOデータを、Gseはスライスエンコード用傾斜磁場を、Groは読出し用傾斜磁場を、Gpeは位相エンコード用傾斜磁場を、それぞれ示す。パルスシーケンス設定部45は、例えば図9に示すようなイメージングスキャン用のシーケンスを設定する。イメージングスキャン用のシーケンスは、DWIシーケンスとDWIシーケンスに続くイメージングシーケンスとを有する。
【0098】
イメージングスキャン用のDWIシーケンスは、DWI-Prepスキャンにより3軸方向について決定された強度のMPGパルスが傾斜磁場パルスとして印加されるように設定される。また、イメージングスキャン用のイメージングシーケンスは、任意の3次元データ収集用のシーケンスを用いることができる。ただし、前述のようにbalanced SSFPシーケンスやPROPELLER法を実行するためのFSEシーケンスをイメージングシーケンスとして用いれば、血管の走行方向に依存することなく血流像を撮像することが可能となる。
【0099】
また、DWI強度を適切に設定する観点からDWI-Prepスキャンのイメージングシーケンスとなるべく同等なシーケンスをイメージングスキャン用のイメージングシーケンスとして用いることが望ましい。好適には、DWI-Prepスキャンにおいて2次元データ収集用のシーケンスが用いられ、イメージングスキャンにおいて3次元データ収集用で、かつ他の撮影条件がDWI-Prepスキャンのイメージングシーケンスと同一のシーケンスが用いられる。
【0100】
図9は、イメージングスキャン用のイメージングシーケンスをbalanced SSFPシーケンスとした例を示している。従って、DWIシーケンスに続いてbalanced SSFPシーケンスが設定される。
【0101】
DWIシーケンスおよびbalanced SSFPシーケンスで構成されるイメージングスキャン用のシーケンスは、例えばECG信号のR波をトリガとすることによりECG信号と同期して実行される。balanced SSFPシーケンスは、好適には血流像の収集に適したシングルショットシーケンスとされ、α°パルスと-α°パルスが収集すべきECHOデータの数に応じて繰り返し印加される。また、必要に応じて脂肪抑制パルス等のような図示しない様々な目的のプリパルスが1番目のα°パルスの後に印加される。
【0102】
そして、balanced SSFPシーケンスによるECHOデータの収集に先立って、DWIシーケンスが設定される。DWIシーケンスでは、90°励起パルスに続いて180°リフォーカスパルスが印加され、180°リフォーカスパルスに続いて90°縦磁化回復パルスが印加される。また、180°リフォーカスパルスの前後においてMPGパルスが印加される。MPGパルスは、DWI-Prepスキャンにより決定された強度でスライスエンコード方向、読出し方向および位相エンコード方向のうち任意の方向に印加される。図9には、読出し方向MPGパルスMPGro0および位相エンコード方向MPGパルスMPGpe0が印加され、スライスエンコード方向MPGパルスMPGse0が印加されない例が示されている。
【0103】
そして、MPGパルスの印加によって組織内の水分子の拡散に起因するスピンの分散(スポイル)を起こさせた状態で、balanced SSFPシーケンスのα°パルスおよび-α°パルス並びに傾斜磁場パルスの印加によってECHOデータが収集される。
【0104】
また、ECHOデータの収集タイミングをECG波形に応じて時間的に速くしたり遅くしたりすることによって、1心拍中に収集したECHOデータから静動脈分離された血流像を生成することができる。そこで、パルスシーケンス設定部45は、入力装置33からECHOデータの収集タイミングをスクロールさせる指示を受けた場合には、ECHOデータの収集タイミングを静動脈分離された血流像の生成に適したタイミングにスクロールさせた撮影条件を設定するように構成される。
【0105】
図10は、図2に示すパルスシーケンス設定部45において設定されるECHOデータの収集タイミングの一例を示す図である。
【0106】
図10において横軸はそれぞれ時間を示し、ECGはECG信号を、ECHOはECHOデータの収集タイミングを示す。balanced SSFPシーケンスでは、ECG信号のR波間(約1000ms程度)において128程度のデータが収集される。そこで、ECG信号のR波間における収縮期(systole)と拡張期(diastole)のそれぞれの区間において、k空間中心付近のデータが収集されるようにデータの収集タイミング(心時相)をスクロールさせると、収縮期には動脈からの血流信号が抑制されたデータが収集される。一方、拡張期には、動脈からの血流信号が抑制されないデータが収集される。従って、収縮期において収集されたデータと拡張期において収集されたデータの差分をとれば1心拍中に収集されたデータから静動分離された動脈の血流像を得ることができる。
【0107】
図10の例では、1番目から収集されるデータの収集タイミングが収縮期とされ、I番目から収集されるデータの収集タイミングが拡張期とされている。そして、1番目およびI番目にそれぞれ収集されるデータはk空間中心のデータとされる。
【0108】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
【0109】
図11は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により、血流像を収集する際の流れの一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。ここでは、MPGパルスの印加を伴うDWIにより差分処理を伴って血流像を生成する場合について説明する。
【0110】
まず、ステップS1において、DWI-Prepシーケンスがパルスシーケンス設定部45により設定される。すなわち、入力装置33からMPGパルスの3軸方向の強度、強度の変更幅および強度の変更範囲(または強度の変更回数)並びにイメージングシーケンスの種類がパルスシーケンス設定部45に入力される。MPGパルスの3軸方向の強度、強度の変更幅および強度の変更範囲(または強度の変更回数)は、血管の走行方向に応じてより良好に血管が描出されるように決定される。また、イメージングシーケンスがbalanced SSFPシーケンスやPROPELLER法によるシーケンスである場合にはデータの収集方法がスクロール収集、シーケンシャル収集、セントリック収集のいずれであるのかの指示情報が入力装置33からパルスシーケンス設定部45に入力される。一方、他のシーケンスの場合にはTE値等の値が入力装置33からパルスシーケンス設定部45に入力される。
【0111】
また、イメージングスキャンにおいてデータの収集タイミングをスクロールさせて1心拍中のデータから血流像を生成する場合には、DWI-Prepシーケンスのイメージングシーケンスにおけるデータの収集タイミングがイメージングスキャンにおけるデータの収集タイミングとなるように入力装置33からの指示情報がパルスシーケンス設定部45に与えられる。
【0112】
そして、パルスシーケンス設定部45は、入力装置33からの指示情報に従って、図6に示すようなDWI-Prepシーケンスを作成する。パルスシーケンス設定部45は、例えばDWI-Prepシーケンスのイメージングシーケンスを2次元のシングルショットbalanced SSFPシーケンスとして設定する。そしてこのようにシングルショットマルチDWIシーケンスとして設定されたDWI-Prepシーケンスは、シーケンスコントローラ制御部40に与えられる。
【0113】
次にステップS2において、DWI-Prepスキャンが実行される。そのために寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。そして、入力装置33からDWI-Prepスキャンの実行指示がシーケンスコントローラ制御部40に与えられると、シーケンスコントローラ制御部40は、DWI-Prepシーケンスをシーケンスコントローラ31に与えることによりシーケンスコントローラ31を駆動制御する。
【0114】
そうすると、シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部40から受けたDWI-Prepシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域にX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gzを形成させるとともに、RF信号を発生させる。すなわち、送信器29からは、DWI-Prepシーケンスに応じてRFコイル24に順次RF信号が与えられ、RFコイル24から被検体PにRF信号が送信される。
【0115】
送信されたRF信号に伴って被検体P内の選択されたスライスにおいて発生したMR信号は、RFコイル24によって受信される。RFコイル24によりMR信号が受信されると、受信器30は、RFコイル24からMR信号を受けて、前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリング等の各種信号処理を実行する。さらに受信器30は、MR信号をA/D変換することにより、デジタルデータのMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。
【0116】
この生データの収集は、ECGユニット38により取得されたECG信号に基づいて心電同期で実行される。そして、心筋の収縮期および拡張期における生データが収集される。
【0117】
シーケンスコントローラ31は、受信器30から受けた生データをシーケンスコントローラ制御部40に与え、シーケンスコントローラ制御部40はDWI-Prepスキャンによって得られた生データをk空間データとしてk空間データベース41に形成されたk空間に配置する。
【0118】
次に、画像再構成部42は、k空間データベース41からk空間データを取り込んで3次元フーリエ変換処理等の所定の画像再構成処理を施すことにより、被検体Pの3次元画像データを再構成して画像データベース43に書き込む。そして、血流像作成部44は、画像データベース43から心筋の拡張期および収縮期における3D画像データを読み込んで、差分処理を行うことにより静脈データをキャンセルし、動脈データを血流像として抽出する。血流像は、MPGパルスの強度ごとにそれぞれ描出され、描出された各血流像は、表示装置34に表示される。
【0119】
ここで表示装置34に表示された各血流像は、互いにMPGパルスの強度を変えて撮像されたものであるため、動脈の描出精度が互いに異なる血流像となる。また、MPGパルスの強度は、血管の走行方向に応じて3軸方向に変更されているため、動脈が良好に描出された血流像が収集された複数の血流像のなかに存在することとなる。特に、データをスクロール収集した場合には、MPGパルスによる効果が向上された血流像となる。
【0120】
次にステップS3において、血流像の描出に最適なDWIの強度、すなわちMPGパルスの3軸方向の強度の組み合わせが決定される。DWIの強度の決定は、例えば、ユーザが表示装置34に表示された複数の血流像のなかから静動脈分離され、最も良好に目的血管が描出されている血流像を入力装置33の操作によって選択することにより行うことができる。ユーザが1つの血流像を選択すると、入力装置33から血流像の選択情報がパルスシーケンス設定部45に与えられる。そして、パルスシーケンス設定部45は選択された血流像に対応するMPGパルスの3軸方向の強度の組み合わせを、例えば血流像データに付随する撮影条件についての情報から取得する。
【0121】
次にステップS4において、イメージングスキャン用のシーケンスがパルスシーケンス設定部45において設定される。イメージングスキャン用のシーケンスは、DWIシーケンスとイメージングシーケンスとを有し、DWIシーケンスにおけるMPGパルスの強度は、ステップS3において決定された強度に設定される。また、イメージングスキャン用のイメージングシーケンスは、DWI-Prepシーケンスにおけるイメージングシーケンスとなるべく同等なシーケンスとされる。このため、例えば、パルスシーケンス設定部45は、イメージングスキャン用のイメージングシーケンスとして3次元のシングルショットbalanced SSFPシーケンスを設定する。
【0122】
この結果、図9に示すようなイメージングスキャン用のシーケンスがパルスシーケンス設定部45において作成される。また、入力装置33からの指示情報に従って、データの収集タイミングのスクロールや、データの収集順序がパルスシーケンス設定部45において設定され、イメージングスキャン用のイメージングシーケンスに反映される。そして、最終的に作成されたイメージングスキャン用のシーケンスは、パルスシーケンス設定部45からシーケンスコントローラ制御部40に与えられる。
【0123】
次にステップS5において、イメージングスキャンが実行される。すなわち、入力装置33からイメージングスキャンの開始指示がシーケンスコントローラ制御部40に与えられると、シーケンスコントローラ制御部40は、イメージングスキャン用のシーケンスをシーケンスコントローラ31に与えることによりシーケンスコントローラ31を駆動制御する。これにより、イメージングスキャンが実行され、k空間データベース41に形成されたk空間には、イメージングスキャンによって収集されたk空間データが配置される。
【0124】
次にステップS6において、イメージングスキャンによって収集されたデータから血流像が生成され、表示装置34に表示される。すなわち、画像再構成部42による画像再構成処理および血流像作成部44による3D画像データの差分処理を経て静動脈分離された動脈データが血流像として描出され、表示装置34に表示される。
【0125】
ここで表示装置34に表示された血流像は、MPGパルスの強度を血管の走行方向に応じて3軸方向に最適化して撮像されたものであるため、非常に良好に動脈が描出された血流像となる。特に、データをスクロール収集した場合には、MPGパルスによる効果が向上された血流像となる。また、k空間中心付近のデータの収集タイミングを拡張期および収縮期にスクロールさせた場合には、このような良好に動脈が描出された血流像を1心拍中に収集したデータのみから生成することが可能となる。
【0126】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、血液のフローを補償またはフローボイド効果を促進するためのフロー選択用傾斜磁場パルスを印加し、かつ対象となる血管の走行方向に依存しないシーケンスで非造影MRA用のイメージングスキャンを実行するようにしたものである。
【0127】
また、磁気共鳴イメージング装置20は、非造影MRAにおいて、必要に応じてパラメータを変化させて実行する準備スキャンであるECG−Prepスキャンのようにフロー選択用傾斜磁場パルスの一例としてのDWI(MPGパルス)の強度を変化させながら撮像するシングルショットマルチDWIの準備スキャンであるDWI-Prepスキャンをイメージングスキャンに先立って実行し、目的血管の動静脈分離による描出に適切なMPGパルス強度を予め測定するものである。そして、決定した3D撮像に適切な強度のMPGパルスの印加を伴うSSFPシーケンス等のイメージングシーケンスで3Dスキャンを実行することによって、良好に動静脈分離した血管の3D画像を撮像できるようにしたものである。
【0128】
特に、磁気共鳴イメージング装置20では、フロー選択用傾斜磁場パルスとして印加されるMPGパルスの強度を3方向に任意に変更できる。また、イメージングシーケンスとして、血流の方向性に依存しないシーケンスを用いることができる。このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、動静脈分離能を向上させるために、例えば収縮期において速い流速の血流からの信号強度が抑制され、拡張期と収縮期とで血流からの信号差が大きくなるように、MPGパルスの強度を血管の走行方向に応じて設定すればよいこととなる。
【0129】
従って、磁気共鳴イメージング装置20では、動静脈分離能を向上させるために、FASE法やSSFP法におけるETSを増加させる必要がない。この結果、磁気共鳴イメージング装置20では、より流速が速い血管の動静脈分離を良好に行うことが可能となり、血流の流速に依存しない動静脈分離を実現することができる。また、磁気共鳴イメージング装置20では、イメージングシーケンスの設定の自由度を向上させることができる。
【0130】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20において、血流の方向性に依存しないシーケンスをイメージングシーケンスとして用いれば、任意方向に走行する血管の動静脈分離を良好に行うことにより、血流の描出能を向上させることができる。特に下肢MRAのように流速が遅い血流の動静脈分離を行う場合に、従来は、ディフェーズパルスをRO方向に印加する必要があった。このため、血管の描出能が血管の走行方向に依存することとなっていた。これに対し、磁気共鳴イメージング装置20では、下肢MRAのように流速が遅い血流であっても、良好に動静脈分離を行うことが可能となる。
【0131】
また、磁気共鳴イメージング装置20では、DWI-Prepスキャン等の準備スキャンによって、イメージングシーケンスを変更することなく目的血管からの血液信号を最大にするための血流速に応じた最適なMPGパルス等のフロー選択用傾斜磁場パルスの強度を予め決定することができる。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0133】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイルユニット
24 RFコイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
38 ECGユニット
40 シーケンスコントローラ制御部
41 k空間データベース
42 画像再構成部
43 画像データベース
44 血流像作成部
45 パルスシーケンス設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー選択用傾斜磁場パルスを含むプリパルス部と、前記プリパルス部に続くデータ収集用のイメージングシーケンスとを有し、前記プリパルス部と前記イメージングシーケンスとの間に前記フロー選択用傾斜磁場パルスとは異なる他のパルスが印加されるパルスシーケンスを設定し、前記パルスシーケンスを心電同期で印加する撮像条件として設定する撮影条件設定手段と、
設定した前記パルスシーケンスに従ってイメージングスキャンを実行するスキャン実行手段と、
前記イメージングスキャンによって収集されたデータから血流像を生成する血流像生成手段と、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記他のパルスは脂肪抑制パルスである、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記フロー選択用傾斜磁場パルスはフローエンコードパルスである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記撮像条件設定部は、
拡張期に印加する第1のパルスシーケンスと、収縮期に印加する第2のパルスシーケンスを前記パルスシーケンスとして設定し、
前記第1のパルスシーケンスではフローエンコードパルスを前記フロー選択用傾斜磁場パルスとして設定し、前記第2のパルスシーケンスではフロースポイルパルスを前記フロー選択用傾斜磁場パルスとして設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記プリパルス部は、RFパルスとして、リフォーカスパルス、前記リフォーカスパルスの前に印加される励起パルス、及び前記リフォーカスパルスの後に印加される縦磁化回復パルスとを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記励起パルス及び前記縦磁化回復パルスのフリップ角は90度に設定される、
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記励起パルス及び前記縦磁化回復パルスのフリップ角は45度に設定される、
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
複数種のフロー選択用傾斜磁場パルスの強度または印加方向でエコーデータを収集する準備スキャンを実行する準備スキャン実行手段と、
前記準備スキャンによって収集された前記複数種のフロー選択用傾斜磁場パルスの強度ごとのデータに基づいて複数の参照用血流像を生成する参照用血流像生成手段と、
をさらに備え、
前記スキャン実行手段は、前記複数の参照用血流像の中から選択された参照用血流像の準備スキャンに用いたフロー選択用傾斜磁場パルスの強度で前記イメージングスキャンを実行するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記フロー選択用傾斜磁場パルスの複数の強度と、前記複数の強度ごとの血流からのデータの信号値との関係を示すグラフを表示する手段と、
前記イメージングスキャンにおける前記フロー選択用傾斜磁場パルスの強度を、前記グラフを参照して決定する手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記準備スキャンにおける前記フロー選択用傾斜磁場パルスの強度は、前記プリパルス部を有するパルスシーケンス毎に変化する、
ことを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
フロー選択用傾斜磁場パルスはMPG(Motion Probing Gradient)パルスであり、
前記スキャン実行手段は、
前記MPGパルスの印加直後にk空間中心のデータを収集する、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記スキャン実行手段は、
1RR内の収縮期と拡張期の夫々の区間においてk空間中心付近のデータを収集する、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−223646(P2012−223646A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184500(P2012−184500)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2007−115212(P2007−115212)の分割
【原出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】