説明

磁気共鳴撮像システムで用いる無線周波コイル系

本発明は、磁気共鳴撮像(MRI)システムで用いる無線周波(RF)コイル系に関するものである。該RFコイル系は、RF磁場(B1)をMRIシステムの検査体積(3)内に送信し、あるいは該検査体積(3)からのRF磁場(B1)を受信し、あるいはその両方を行う少なくとも一つの主コイル(35)を有する。前記主コイルは検査体積内で主磁場(B0)に平行に配向されている、あるいはされるべき主コイル軸と、該主コイル軸に主として平行に伸びる少なくとも一つの電気伝導体とを有するものである。本発明によれば、RFコイル系は、主コイルの前記導体に割り当てられている少なくとも二つの電気的補助コイル(51、53、55、57)を有する。補助コイルは主コイルの前記導体の互いに反対側に配置される。各補助コイルは主コイル軸に実質平行に伸び、それぞれの補助コイルが割り当てられている主コイルの導体からある距離にあるコイル軸(59、61、63、65)を有しており、前記距離は主コイルの特徴的長さ(L)に比べて短い。補助コイルは受動的電気的コイルであり、そこを流れる電流は該補助コイルの位置に存在するRF磁場(B11、B11′)の影響のもとに生成される。該補助コイルの前記電流の結果として補助コイルによって生成されるRF磁場(B12、B24)は補助コイルの位置にある前記RF磁場を抑制する。こうして、当該補助コイルは、主コイルの導体から比較的短距離にある位置領域(47、49)での、RFコイル系の感度低減効果を提供する。主コイルの導体から主コイルの特徴的長さに匹敵する距離にある領域については、前記感度低減効果は無視できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像(MRI)システムで用いる無線周波(RF)コイル系に関するものである。該RFコイル系は、RF磁場をMRIシステムの検査体積内に送信し、あるいは該検査体積からのRF磁場を受信し、あるいはその両方を行う少なくとも一つの電気的主コイルを有する。前記主コイルは検査体積内でMRIシステムの主磁場に実質平行に配向される主コイル軸を有し、前記主コイルは該主コイル軸に主として平行に伸びる少なくとも一つの電気伝導体を有するものである。
【0002】
本発明はさらに、検査体積と、該検査体積内に主磁場を生成するための主磁石系と、主磁場の勾配を生成するための傾斜磁石系と、RF磁場を検査体積内に送信し、あるいは該検査体積からのRF磁場を受信し、あるいはその両方を行うRFコイル系とを有する磁気共鳴撮像(MRI)システムに関するものでもある。
【背景技術】
【0003】
冒頭で触れた種類の無線周波(RF)コイル系および磁気共鳴撮像(MRI)システムは一般に知られている。既知のMRIシステムは核スピン共鳴法によって患者の体内の臓器の像を作成するのに使用されている。MRIの主磁石系は、比較的強力で一様な主磁場を検査体積の中心領域に生成するためのいくつかの超伝導電気コイルを有している。傾斜磁石系は直交する三方向に主磁場の勾配を生成するためのいくつかの電気コイルを有している。既知のMRIシステムはさらに、RF磁場を検査体積内に送信するための第1のRFコイル系および該検査体積からのRF磁場を受信するための第2のRFコイル系を有する。送信および受信目的のために同一のコイル系を使うことも知られている。患者の体の像は、患者の体内の多数の位置における核スピン共鳴効果を観測することによって構築される。体内の位置は前記勾配を変えることによって選択されるが、選択された各位置について、該選択された位置での核スピン共鳴効果を生成するために前記第1のRFコイル系が検査体積内にRF磁場を送信する。その後、核スピン共鳴効果の結果として該選択された位置に生成されるRF磁場を前記第2のRFコイル系が受信する。
【0004】
既知のRFコイル系の、そして既知のRFコイル系を有する既知のMRIシステムの不都合な点は、RFコイル系は患者の体のうち、主として主磁場に平行に配向されている当該RFコイル系の個々の導体に比較的近い領域について、すなわち、前記導体から主コイルの特徴的長さに比べて近い距離にある局所領域について比較的高い局所的感度を有するということである。送信RFコイル系の場合、前記の高い局所的感度は、導体に比較的近い位置ではRFコイル系によって生成される磁場が比較的強くなるという事実に起因している。受信RFコイル系の場合、前記の高い局所的感度は、導体に比較的近い位置にある原子核によって生成される磁場が導体の位置において比較的強いという事実に起因している。特に、前記の高い局所的感度は、いわゆる表面コイル系、すなわち、信号対雑音比の向上を達成するために患者の体表に直接位置されるRFコイル系の場合に存在する。前記の高い局所的感度の結果として、表面コイル系を使った既知のMRIシステムは、生成される画像に動き乱れ効果をきわめて受けやすい。そのような乱れは、患者の体表において生成される比較的強い信号によって、たとえば患者の胸部や腹部における皮下脂肪層で引き起こされるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、冒頭で述べた種類の無線周波(RF)コイル系および冒頭で述べた種類の磁気共鳴撮像(MRI)システムであって、該RFコイル系の導体に比較的近くない位置での該RFコイル系の感度に大きく影響することなしに、該RFコイル系の前記の局所的に高い感度を低下させられるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に基づくRFコイル系は、主コイルの前記導体に付随し主コイルの前記導体の互いに反対側に配置されている少なくとも二つの電気的補助コイルを有しており、該補助コイルのそれぞれは主コイル軸に実質平行に伸び主コイルの前記導体からある距離のところにあるコイル軸を有しており、該距離は主コイルの特徴的長さに比べて短い、ことを特徴としている。
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に基づくMRIシステムは、そこで使われるRFコイル系が本発明に基づくRFコイル系であることを特徴としている。
【0008】
主コイルの導体に付随する補助コイルは受動的電気コイルであり、該補助コイルの位置に存在する交流磁場の影響下で電流が誘導される。本発明に基づくRFコイル系の送信モードでは、電流が補助コイルに誘導されるのは、主として該補助コイルが付随している主コイルの導体によって生成されるRF磁場の影響下においてである。このモードでは、補助コイルを流れる電流は、主コイルの前記導体によって生成されるRF磁場を打ち消すような補助コイルのRF磁場を引き起こす。補助コイルは主コイルの前記導体の互いに反対側にあり、該補助コイルのコイル軸は前記導体から比較的近距離であるため、主コイルの前記導体からの距離が主コイルの特徴的長さに匹敵する程度の位置では補助コイルのRF磁場は比較的小さくなる。結果として、補助コイルのRF磁場の前記打消し効果は主として主コイルの前記導体からの距離が主コイルの特徴的長さに比べて小さい局所的な領域内に存在する。すなわち、補助コイルがない場合に主コイルが比較的高い局所的感度をもつような局所的領域において存在するのである。主コイルの前記導体からの距離が主コイルの特徴的長さに匹敵する程度の位置では、主コイルの前記導体のRF磁場は補助コイルのRF磁場によってほとんど影響されない。
【0009】
本発明に基づくRFコイル系の受信モードでは、核スピンによって生成されるRF磁場の影響のもとで補助コイルに電流が誘導される。このモードでは、補助コイルを流れる電流は、核スピンによって生成されるRF磁場を打ち消すようなRF磁場を引き起こす。補助コイルは該補助コイルが付随している主コイルの前記導体の互いに反対側にあり、該補助コイルのコイル軸は前記導体から比較的近距離であるため、補助コイルが主として感度をもつのは、主コイルの前記導体からの距離が比較的小さい位置に存在する核スピンによって生成されるRF磁場にである。結果として、補助コイルのRF磁場の前記打消し効果は主として主コイルの前記導体からの距離が主コイルの特徴的長さに比べて小さい局所的な領域内に存在する。すなわち、補助コイルがない場合に主コイルが比較的高い局所的感度をもつような局所的領域において存在するのである。主コイルの前記導体からの距離が主コイルの特徴的長さに匹敵する程度の位置では、核スピンは補助コイルにほとんど電流を発生させず、こうした位置に対する主コイルの前記導体の感度は補助コイルによってほとんど影響されない。
【0010】
本発明に基づくRFコイル系のある特定の実施形態は、主コイルが主として主コイル軸に平行に広がる第1および第2の導体を有するループを有しており、RFコイル系が前記第1の導体に付随し該第1の導体の互いに反対側に配置されている第1および第2の補助コイルならびに前記第2の導体に付随し該第2の導体の互いに反対側に配置されている第3および第4の補助コイルを有しており、各補助コイルは主コイル軸に実質平行に伸び該補助コイルが付随する主コイルの前記各導体からある距離のところにあるコイル軸を有しており、該距離は前記特徴的長さに比べて短い、ことを特徴としている。この特定の実施形態では、主コイルはたとえば、正方形または長方形のコイルである。主コイルの前記第1の導体に比較的近い領域についての主コイルの局所的な高感度は、前記第1および前記第2の補助コイルによって効果的に低減させられる。一方、主コイルの前記第2の導体に比較的近い領域についての主コイルの局所的高感度は、前記第3および前記第4の補助コイルによって効果的に低減させられる。
【0011】
本発明に基づくRFコイル系のある特定の実施形態は、二つの補助コイルが電気的な逆相モードで直列に接続されていることを特徴としている。二つの補助コイルの電気的な逆相モードはたとえば、二つの補助コイルの間のいわゆる蝶型ループ接続または8字型ループ接続によって実現される。二つの補助コイルが直列に接続されているという事実の結果、二つの補助コイルを流れる電流は等しい。この実施形態の利点は、RFコイル系の設計段階において、二つの補助コイルの磁場が、二つの補助コイルの寸法および表面積を最適化することによって最適化できるということである。
【0012】
本発明に基づくRFコイル系のある特定の実施形態は、主コイルの導体が主コイル軸に実質平行に伸び、各補助コイルが主コイル軸に実質平行に伸びる二つの導体を有しており、各補助コイルのコイル軸と主コイルの導体との間の距離が各補助コイルの二つの導体の間の距離をBとして0.5Bより大きく1.5Bより小さいことを特徴とする。この実施形態では、各補助コイルのコイル軸と該補助コイルが付随している主コイルの導体との間の前記距離は、補助コイルの所望の局所感度低減効果を実現するに十分なほど小さい。
【0013】
本発明に基づくRFコイル系のあるさらなる実施形態は、主コイルの前記第1および第2の導体が主コイル軸と実質平行に伸び、各補助コイルが主コイル軸に実質平行に伸びる二つの導体を有しており、各補助コイルの二つの導体の間の距離Bは、主コイルの前記第1および第2の導体の間の距離をLとして0.06Lより大きく0.25Lより小さいことを特徴とする。この実施形態では、各補助コイルの二つの導体の間の前記距離Bは、主コイルの特徴的長さに比べて、すなわち主コイルの前記第1および第2の導体の間の距離Lに比べて、補助コイルの所望の局所感度低減効果を実現するに十分なほど小さい。
【0014】
本発明に基づくRFコイル系のあるさらなる実施形態は、当該RFコイル系が皮膚接触面を有しており、主コイルの前記第1および第2の導体が該皮膚接触面から距離Dにある仮想平面内に広がり、各補助コイルは該皮膚接触面から距離Hにある仮想平面内に広がり、0<H<3Dであることを特徴としている。この実施形態では、補助コイルが広がる仮想平面と主コイルが広がる仮想平面の間には距離H−Dがある。0<H<3Dという条件のため、補助コイルの導体と主コイルの導体との間の距離は主コイルの特徴的長さに比べて補助コイルの所望の局所感度低減効果を実現するに十分なほど小さい。
【0015】
本発明に基づくRFコイル系のあるさらなる実施形態は、D<H<1.5Dであることを特徴とする。この実施形態では、主コイルの前記第1および第2の導体に比較的近い領域の最適な寸法が実現され、その領域については補助コイルによって主コイルの局所高感度が効果的に低減される。
【0016】
以下において、本発明の諸実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に示した本発明に基づくMRIシステムは、いわゆる閉鎖型円筒型のMRIシステムであり、主として円筒状の殻(図1に示さず)を有し、図1に示されているZ方向を長手方向とする。このMRIシステムは前記殻に囲われており検査すべき患者が位置される検査体積3を取り囲む主磁石系1を有している。主磁石系1は、比較的強力で実質一様なZ方向に平行な静磁場B0を検査体積3の中心部分において生成するためのいくつかの超伝導電気コイル5を有する。当該MRIシステムは超伝導コイル5のための電源7と、該超伝導コイル5を冷却するための冷却チャネルをもつ低温技術冷却装置9とを有する。当該MRIシステムはさらに、主磁石系1と検査体積3との間に配置され、直交する3方向X、Y、Zに主磁場B0の勾配を生成するためのいくつかの電気コイル15を有する傾斜磁石系13を有している。当該MRIシステムはさらに本発明に基づく無線周波(RF)コイル系17、17′を有している。これは検査体積3内にRF磁場を送信するため、そして検査体積3からのRF磁場を受信するために傾斜磁石系13と検査体積3との間に配置される。
【0018】
MRIシステムは核スピン共鳴法によって患者の体内の臓器の像を作成するのに使われる。患者の体の像は、一様な主磁場B0内にある患者の体の部分のうちの多数の位置における核スピン共鳴効果を逐次観測することによって構築される。患者の体内の位置は、主磁場B0の勾配を傾斜磁石系13の電気コイル15を流れる好適な電流によって変えることによって逐次選択される。この目的のために、MRIシステムは傾斜磁石系13のコイル15を流れる電流を所定のシーケンスに従って制御する制御ユニット19と、該制御ユニット19によって傾斜磁石系13のコイル15に供給される制御信号を増幅するための電力増幅器21とを有する。患者の体内の各選択位置について、RFコイル系17、17′は、その選択位置で核スピン共鳴効果を生成するために所定の周波数とパルス時間のRF磁場を検査体積3内に送信する。その後、RFコイル系17、17′は核スピン共鳴効果と関連して該選択位置での核スピンによって生成されるRF磁場を受信するのにも使われる。この目的のため、制御ユニット19はRFコイル系17、17′をも、傾斜磁石系13を制御するシーケンスと結びついた所定のシーケンスに従って制御する。制御ユニット19はRF送受信機23に制御信号を供給し、該RF送受信機が検査体積3内に必要とされるRF磁場を生成するために好適な電流をRFコイル系17、17′に与える。RF送受信機23にはまた、検査体積3からのRF磁場によってRFコイル系17、17′に生成される該RFコイル系17、17′からの電流が流入する。RF送受信機23はMRIシステムのプロセッサ25に信号を供給する。該プロセッサは送受信機23から流入する信号を画像に変換するのに好適なものである。この目的のため、プロセッサ25は信号増幅器27、復調器29、画像再構築装置31、ディスプレイ33を有している。
【0019】
RFコイル系17、17′によって生成される核スピン共鳴効果は、主磁場B0のZ方向に平行な中心軸をもつ架空の円錐面に沿った所定の歳差方向における核スピンのスピン軸の歳差を含む。その結果、RFコイル系17、17′によって生成されるRF磁場の、Z方向に垂直な方向の成分B1(以下、RF磁場B1と呼ぶ)が核スピン共鳴効果を生成する上では主として有効になる。成分B1は主として、Z方向に平行に伸びるRFコイル系17、17′の伝導性の部分によって生成される。核スピン共鳴効果に関連して核スピンによって生成され、RFコイル系17、17′が受信することになるRF磁場B1′もまたZ方向に垂直な方向を向いている。その結果、RFコイル系17、17′のZ方向と平行に伸びる伝導性の部分は主としてRF磁場B1′に感度をもつ。図2Aおよび2Bは、主コイル35を有するRFコイル系17、17′の一部分17を図式的に示している。主コイル35のコイル軸37は主磁場B0のZ方向に実質平行に配向している、あるいは配向することになっている。主コイル35は第1の導体39および第2の導体41を有するループを有している。これらはコイル軸37に実質平行に伸び、したがって主コイル35の有効で感度をもつ部分を主としてなしている。該ループはさらに、さらなる導体43、45を有しており、これらはコイル軸37に実質垂直に伸び、したがって主コイル35の有効性および感度への寄与が小さい部分をなす。送信モードでは、前記ループ内の交流電流は、図2Bに示すように、該ループから距離DPにある患者体内の選択された位置PにRF磁場B1を生じる。受信モードでは、図2Bに示され、前記選択位置Pにおける核磁気共鳴効果に関連してループの位置に生成されるRF磁場B1′が該ループに誘導される交流電流を生じる。
【0020】
送信モードでは、選択位置Pにおいて第1および第2の導体39、41によって生成されるRF磁場B1の強度は選択位置Pと導体39、41との間の距離に強く依存する。患者の体内で、主コイル35の特徴的長さ、たとえば二つの導体39、41の間の距離Lに比べて導体39、41から短い距離にある局所領域47、49においては、生成されるRF磁場B1は比較的強く、主コイル35は前記局所領域47、49については局所的な高効率を有する。同様に、受信モードでは、前記局所領域47、49内の位置における核磁気共鳴効果に関連して生成されるRF磁場B1′の影響のもとで第1および第2の導体39、41には比較的強い電流が誘導される。結果として、受信モードでは、主コイル35は前記局所領域47、49について局所的な高感度を有する。特に、前記局所高感度は、RFコイル系17、17′がいわゆる表面コイルとして使われる実施形態において顕著になる。そのような実施形態では、RFコイル系17、17′は効率および感度の改善ならびに患者の体内深い領域での信号対雑音比の改善を実現するために患者の体の上に直接位置される。しかし、そのような実施形態においては、導体39、41から比較的近距離にある局所領域47、49についての局所的高感度のために生成される画像が動き乱れ効果の影響をきわめて受けやすくなることは明らかである。そうした動き乱れ効果は、患者の体の表面、たとえば患者の胸部や腹部の皮下脂肪層において生成される比較的高レベルの信号によって引き起こされる。
【0021】
第1および第2の導体39、41から比較的近距離にある前記局所領域47、49についての主コイル35の上述した局所的高感度を、前記局所領域47、49外の選択位置についての、すなわち前記導体からの距離が主コイル35の特徴的長さLのオーダーである位置についての主コイル35の効率および感度に影響することなく低減させるため、本発明に基づくRFコイル系17、17′の部分17は、図2Aに示すように、主コイル35の第1の導体39に割り当てられ、付随している第1の電気的補助コイル51および第2の電気的補助コイル53、ならびに、主コイル35の第2の導体41に割り当てられ、付随している第3の電気的補助コイル55および第4の電気的補助コイル57を有する。第1および第2の補助コイル51、53は主コイル35の第1の導体39の互いに反対側に配置され、それぞれ主コイル軸37に平行に伸び、前記第1の導体39から距離Eであるコイル軸59、61をもつ。ここで、前記距離Eは主コイル35の特徴的長さLに比べて短い。第3および第4の補助コイル55、57は主コイル35の第2の導体41の互いに反対側に配置され、それぞれ主コイル軸37に平行に伸び、前記第2の導体41から距離Eであるコイル軸63、65をもつ。各補助コイル51、53、55、57は、各補助コイル51、53、55、57が割り当てられているそれぞれの導体39、41の実質全長にわたって主コイル軸37に平行に延びる2本の導体67、69を有しており、各補助コイル51、53、55、57の前記2本の導体67、69の間にある距離Bは主コイル35の特徴的長さLに比べて小さい。図2Aおよび2Bに示した実施形態では、第1および第2の補助コイル51、53は電気的に直列に接続されており、第3および第4の補助コイル55、57もまた電気的に直列に接続されている。この実施形態では、第1および第2の補助コイル51、53は電気的に逆相モードで接続されるが、それは図2Aに示すように第1および第2の補助コイル51、53の間のいわゆる蝶型ループ接続または8字型ループ接続71によって実現される。結果として、第1および第2の補助コイル51、53における電流は互いに逆向きになる。同様に、第3および第4の補助コイル55、57の間には蝶型ループ接続73がある。
【0022】
以下では、補助コイル51、53、55、57の存在の技術的効果について説明する。補助コイル51、53、55、57は受動的電気コイルであり、そこを流れる電流は該補助コイル51、53、55、57の位置における磁場の変動の結果として誘導される。RFコイル系17、17′の送信モードについては第1および第2の補助コイル51、53を参照しつつ技術効果の説明をするが、第3および第4の補助コイル55、57の技術的効果も同様であることは当業者には理解できるであろう。RFコイル系17、17′の送信モードでは、第1および第2の補助コイル51、53を流れる電流は主として、該第1および第2の補助コイル51、53の位置における主コイル35の第1の導体39によって生成されるRF磁場B11の変動の影響のもとに誘導される。図2Bにおいて概略的に示したように、前記RF磁場B11は第1および第2の補助コイル51、53の位置において主として反対方向であり、そのため第1および第2の補助コイル51、53に誘導される電流も反対方向であるが、それは蝶型ループ接続71の結果可能になっている。第1および第2の補助コイル51、53に誘導された電流は、図2Bに概略的に示したようにRF磁場B12を生成するが、これはRF磁場B11とは逆向きであり、よってRF磁場B11を抑制する。第1および第2の補助コイル51、53のコイル軸59、61と導体67、69は主コイル35の第1の導体39から主コイル35の特徴的長さLに比べて短い距離のところに配置されているので、RF磁場B12は前記第1の導体39から前記特徴的長さLに匹敵する距離の位置では比較的小さい。その結果、第1および第2の補助コイル51、53は、第1の導体39から特徴的長さLに比べて短い距離の位置では第1の導体39のRF磁場B11を主として打ち消す。そのような位置はたとえば第1の導体39に近い患者の体内の局所領域47であり、該領域は、第1および第2の補助コイル51、53がなければ主コイル35は相対的に高い局所的感度となったはずの部分である。第1の導体39からの距離が特徴的長さLに匹敵するような位置では、主コイル35のRF磁場B1および主コイル35の感度は第1および第2の補助コイル51、53の存在によってほとんど影響されない。
【0023】
RFコイル系17、17′の受信モードについては、補助コイル51、53、55、57の技術的効果は第3および第4の補助コイル55、57を参照しつつ説明するが、第1および第2の補助コイル51、53の技術的効果も同様であることは当業者には理解できるであろう。RFコイル系17、17′の受信モードでは、第3および第4の補助コイル55、57を流れる電流は核スピンによって生成されるRF磁場の変動の影響のもとで誘導される。図2Bは、局所領域49内の位置P′における核スピンによって第3および第4の補助コイル55、57の位置に生成されるRF磁場B11′を概略的に示している。前記RF磁場B11′は第3および第4の補助コイル55、57の位置において主として反対方向であり、そのため第3および第4の補助コイル55、57に誘導される電流も反対方向であるが、それは蝶型ループ接続73の結果可能になっている。第3および第4の補助コイル55、57に誘導された電流は、図2Bに概略的に示したようにRF磁場B34を生成するが、これはRF磁場B11′とは逆向きであり、よってRF磁場B11′を抑制する。第3および第4の補助コイル55、57のコイル軸63、65と導体67、69は主コイル35の第2の導体41から主コイル35の特徴的長さLに比べて短い距離のところに配置されているので、核スピンは、前記第2の導体41から前記特徴的長さLに匹敵する距離の位置では、第3および第4の補助コイル55、57の位置に主として同じ方向のRF磁場を生成することになる。蝶型ループ接続73の結果、該RF磁場によって第3および第4の補助コイル55、57に誘導される電流は比較的小さいか、0でさえありうる。このため、該RF磁場は、第3および第4の補助コイル55、57の存在によってほとんどあるいは全く抑制されない。その結果、第3および第4の補助コイル55、57が主として抑制するRF磁場は、第2の導体41から特徴的長さLに比べて短い距離の位置における核スピン、特に、第3および第4の補助コイル55、57がなければ主コイル35が相対的に高い局所感度を有したはずの局所領域49における核スピンによって生成されたものとなる。第2の導体41からの距離が特徴的長さLに匹敵するような位置では、主コイル35の感度は第3および第4の補助コイル55、57の存在によってほとんど影響されない。
【0024】
上記では、第1および第2の導体39、41から主コイル35の特徴的長さLに比べて短い距離の局所領域に限定された主コイル35の感度の低減を実現するためには、補助コイル51、53を第1の導体39の互いに反対側に配置し、補助コイル55、57を第2の導体の41の互いに反対側に配置し、その際補助コイル51、53、55、57のコイル軸59、61、63、65は主コイル35のそれぞれの導体39、41から前記特徴的長さLに比べて短い距離Eのところにあるようにすべきであることが開示されている。好ましくは、各補助コイル51、53、55、57の導体67、69の間の距離Bもまた前記特徴的長さLに比べて小さい。これに関し、「互いに反対側に」という表現は、それぞれの二つの補助コイル51、53および55、57が、主コイル35の導体39、41をそれぞれ通り、主コイル35が広がる仮想平面に垂直な向きの仮想平面の反対側にあることを示していることを注意しておく。図2Aおよび図2Bに示した実施形態においては、補助コイル51、53、55、57の十分な局所感度低減効果は前記距離Eが1.5Bより小さく0.5Bより大きな場合に得られることが見出された。補助コイル51、53、55、57の十分な局所感度低減効果を得るためには、補助コイル51、53、55、57の導体67、69の間の距離Bは0.25Lより小さく0.06Lより大きくするのがよい。RFコイル系17、17′が表面コイルとして使われる実施形態では、補助コイル51、53、55、57とRFコイル系17、17′の皮膚接触面75との間の距離についても最適範囲が定義できる。図2Bは、RFコイル系17、17′の皮膚接触面75、すなわち運転中にRFコイル系17、17′が患者の皮膚と接触する表面の位置を概略的に示している。図2Bに示したように、皮膚接触面75と主コイル35の第1および第2の導体39、41が広がる仮想平面77との間の距離はDで、皮膚接触面75と補助コイル51、53、55、57が広がる仮想平面79との間の距離はHである。前記距離Hが0から3Dの範囲内にあれば補助コイル51、53、55、57の導体67、69と主コイル35の導体39、41との間の距離は、補助コイル51、53、55、57の十分な局所感度低減効果を実現するに十分小さい。好ましくは、前記距離Hは距離Dより大きい,すなわち、補助コイル51、53、55、57は主コイル35に関して皮膚接触面75から遠いほうの側に配置される。所望の感度低減効果が実現される局所領域47、49の最適な大きさは前記距離HがDと1.5Dとの間にある場合に得られる。図2Aおよび図2Bの実施形態の場合のようにそれぞれの二つの補助コイル51、53および55、57が共通の仮想平面上にあることは本質的ではないことを注意しておく。本発明は、主コイルの一つの導体に割り当てられた二つの補助コイルが前記導体の互いに反対側に、皮膚接触面75とそれぞれ鋭角をなす異なる仮想平面内に配置されるような実施形態をも包含する。
【実施例】
【0025】
図2Aおよび図2Bに示した実施形態では、補助コイル51、53および補助コイル55、57は主コイル35のそれぞれの導体39、41に関して対称的に配列されているが、本発明は、補助コイル51、53および補助コイル55、57が主コイル35のそれぞれの導体39、41に関して非対称に配列されている実施形態をも包含する。本発明は、たとえば、補助コイル51、53、55、57のコイル軸59、61、63、65がそれぞれの導体39、41から互いに異なる距離に配置されているような実施形態、ならびに、補助コイル51、53、55、57が互いに異なる形および/または大きさであるような実施形態を包含する。補助コイル51、53、55、57が互いに異なる形および/または大きさをもつような実施形態では、補助コイルは好ましくは実質等しい表面積をもつが、これは補助コイル51、53、55、57の適切な機能のために本質的ではない。
【0026】
図2Aおよび図2Bに示した実施形態では、補助コイル51、53および補助コイル55、57は蝶型ループ接続71、73によって電気的逆相モードで直列に接続されている。補助コイル51、53の間、また補助コイル55、57の間の前記接続は本発明の本質的な特徴ではないこと、したがって本発明は二つの補助コイル51、53および二つの補助コイル55、57がそれぞれ別個の受動的電気的ループをなすような実施形態をも含むことを注意しておく。二つの補助コイル51、53および二つの補助コイル55、57を直列で逆相モードに接続する利点は、二つの補助コイル51、53および二つの補助コイル55、57を流れる電流が等しくなり、RFコイル系17、17′の設計段階において補助コイル51、53、55、57の大きさおよび形を最適化することによって補助コイル51、53、55、57の磁場を最適化することができることである。本発明はまた、補助コイル51、53、55、57が蝶型ループ接続71、73とは異なる接続で直列で逆相モードに接続されているような実施形態をも包含する。図2Aで、本発明はたとえば、第1および第2の補助コイル51、53の導体69が一緒になって第1および第2の補助コイル51、53に共通の単一の導体をなし、また第3および第4の補助コイル55、57の導体69が一緒になって第3および第4の補助コイル55、57に共通の単一の導体をなすような実施形態をも包含する。
【0027】
本発明はまた、図2Aおよび図2Bに示したRFコイル系17、17′のコイル構成とは異なるコイル構成を有するRFコイル系をも包含することを注意しておく。たとえば、本発明は、二つ以上の主コイルを有するRFコイル系をも包含する。特に、本発明に基づくRFコイル系は、検査体積内の回転RF磁場を生成する効率および/または受信する感度を改善するよう互いに横断方向の平面内に配置されるいくつかの主コイルを備えていてもよい。そのような実施形態では、主磁場B0に平行な向きの各主コイルの導体は別個の補助コイルを備えていることができる。さらに、効率をよくするためには、本発明に基づくRFコイル系に、主磁場B0に主として平行に配向された、あるいはされるべき少なくとも一つの導体を備えるべきであることを注意しておく。しかし、そのような導体は、図2Aおよび図2Bの実施形態における第1および第2の導体39、41のような、主磁場B0に平行に伸びるまっすぐの導体である必要はない。前記導体はたとえば、主たるあるいは優勢な方向が主磁場B0に平行である曲がった導体であってもよい。したがって、請求項における「主コイル軸に主として平行に伸びる少なくとも一つの導体をもつ前記主コイル」のような表現はこれに従って解釈されるものとする。したがってまた、請求項における「主コイルは主コイル軸に主として平行に伸びる第1および第2の導体を有するループを有している」のような表現も同様にして解釈されるものとする。
【0028】
以上に記載した本発明に基づくMRIシステムは、いわゆる閉鎖型円筒型のMRIシステムである。本発明はまた他の型のMRIシステムをも包含することを注意しておく。一つの例は、主磁石系および傾斜磁石系が離れた二つの異なる殻部分に配置されており、前記二つの殻部分の間にある開けた体積が検査体積となる、いわゆる開放型のMRIシステムである。
【0029】
以上に記載した本発明に基づくRFコイル系17、17′は送信機能と受信機能の両方をもつ。本発明はまた、受信機能のみをもつRFコイル系および送信機能のみをもつRFコイル系をも包含することを注意しておく。特に、表面コイルとして使われる本発明に基づくRFコイル系は受信機能のみしかもたず、別のRFコイル系と協働するようになっていることがありうる。そのような別のRFコイルは当該MRIシステムの主磁石系に対して固定位置にあるもので、送信機能のみでも送受信機能を併せもっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に基づく無線周波(RF)コイル系を有する本発明に基づく磁気共鳴撮像(MRI)システムを図式的に示す図である。
【図2A】図1のMRIシステムのRFコイル形の部分を図式的に示す図である。
【図2B】図2Aの線IIb〜IIbに沿った断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像(MRI)システムで用いる無線周波(RF)コイル系であって、当該MRIシステムの検査体積内にRF磁場を送信し、および/または該検査体積からのRF磁場を受信する少なくとも一つの電気的主コイルを有し、前記主コイルが検査体積内の当該MRIシステムの主磁場に実質平行に配向するようになっている主コイル軸を有し、前記主コイルが前記主コイル軸に主として平行に伸びる少なくとも一つの電気伝導体を有するRFコイル系であって、当該RFコイル系が、主コイルの前記導体に付随し主コイルの前記導体の反対側に配置されている少なくとも二つの電気的補助コイルを有しており、各補助コイルが主コイル軸に実質平行に伸び主コイルの前記導体からある距離のところにあるコイル軸を有しており、該距離が主コイルの特徴的長さに比べて短い、ことを特徴とするRFコイル系。
【請求項2】
請求項1記載のRFコイル系であって、主コイルが主として主コイル軸に平行に広がる第1および第2の電気伝導体を有するループを有しており、当該RFコイル系が前記第1の導体に付随し該第1の導体の反対側に配置されている第1および第2の補助コイルならびに前記第2の導体に付随し該第2の導体の反対側に配置されている第3および第4の補助コイルを有しており、各補助コイルが主コイル軸に実質平行に伸び該それぞれの補助コイルが付随する主コイルの前記各導体からある距離のところにあるコイル軸を有しており、該距離が前記特徴的長さに比べて短い、ことを特徴とするRFコイル系。
【請求項3】
前記二つの補助コイルが直列に電気的逆相モードで接続されていることを特徴とする、請求項1記載のRFコイル系。
【請求項4】
主コイルの導体が主コイル軸に実質平行に伸び、各補助コイルが主コイル軸に実質平行に伸びる二つの導体を有しており、各補助コイルのコイル軸と主コイルの導体との間の距離が各補助コイルの二つの導体の間の距離をBとして0.5Bより大きく1.5Bより小さいことを特徴とする、請求項1記載のRFコイル系。
【請求項5】
主コイルの前記第1および第2の導体が主コイル軸と実質平行に伸び、各補助コイルが主コイル軸に実質平行に伸びる二つの導体を有しており、各補助コイルの二つの導体の間の距離Bが、主コイルの前記第1および第2の導体の間の距離をLとして0.06Lより大きく0.25Lより小さいことを特徴とする、請求項2記載のRFコイル系。
【請求項6】
当該RFコイル系が皮膚接触面を有しており、主コイルの前記第1および第2の導体が該皮膚接触面から距離Dにある仮想平面内に広がり、各補助コイルが該皮膚接触面から距離Hにある仮想平面内に広がり、0<H<3Dであることを特徴とする、請求項2記載のRFコイル系。
【請求項7】
D<H<1.5Dであることを特徴とする、請求項6記載のRFコイル系。
【請求項8】
検査体積と、該検査体積内に主磁場を生成する主磁石系と、前記主磁場の勾配を生成する傾斜磁石系と、前記検査体積内にRF磁場を送信し、および/または前記検査体積からのRF磁場を受信するRFコイル系とを有する磁気共鳴撮像(MRI)システムであって、前記RFコイル系が請求項1ないし7のうちいずれか一項記載のRFコイル系であることを特徴とするシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2007−515986(P2007−515986A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516718(P2006−516718)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050938
【国際公開番号】WO2004/113945
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】