説明

磁気共鳴撮像システム向けのマグネットアセンブリ

【課題】低うず電流超伝導マグネットアセンブリを提供する。
【解決手段】マグネットアセンブリ(52)は、複合材料から製作された内側円筒(90)、外側円筒(88)及び該内側と外側の円筒(90、88)を接続するための1対のテーパ付きフランジ(92、94)を含んだ真空容器(72)を含む。外側円筒(88)及びフランジ(92、94)は、磁束帰還経路に低うず電流を提供する幾つかの磁気セグメント(88a、92a)から構成される。セグメント(88a、92a)は互いに結合させかつ互いから電気的に絶縁させている。真空容器(72)の内部には、非導電性円筒構造(102)及び超伝導コイル(106)を含む超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)を配置させている。熱伝導性のエンベロープを形成するように円筒構造(102)及びコイル(106)の周りに熱伝導性のケーブル(108)が巻き付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的には超伝導マグネットに関し、さらに詳細には磁気共鳴撮像(MRI)システム向けの低うず電流超伝導マグネットアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導マグネットには多くの用途が存在する。例えば磁気共鳴イメージング(MRI)システムでは、超伝導マグネットを利用して強力で均一な磁場を発生させ、この内部に患者その他の対象を配置させている。次いで、磁場傾斜コイル並びに無線周波数送信/受信コイルによって対象内の磁気回転物質に影響を与え、有用な画像の形成に使用できる信号を引き出している。こうしたコイルを使用する別のシステムには、スペクトロスコピーシステム、磁気エネルギー蓄積システム、及び超伝導発電機が含まれる。
【0003】
多くの超伝導マグネットアセンブリでは、超伝導マグネットは、動作中に環境からマグネットを隔絶させるための真空容器内に配置される。MRIシステムや同様のマグネットの真空容器は一般に、圧力境界を形成するようにマグネットの組み上げの間に構成要素を一体に溶着させて製作される。MRIマグネットの真空容器の機能は、適正な真空動作を維持するために高信頼性の圧力境界を提供することにある。当技術分野で周知の真空容器は通常、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウムなどの金属から製作される。金属製の真空容器は真空力に耐えるだけの十分な強さをもつが、これらはうず電流を発生させると共に、AC磁場に曝されると撮像ボリューム内に望ましくない磁場歪みを発生させる。
【0004】
従来の超伝導マグネットのコールドマスは、1つまたは幾つかの超伝導コイル、1つのコイル支持構造及び1つのヘリウム容器からなる。ヘリウム容器は、熱的隔絶のために真空容器内に配置させる圧力容器である。典型的には、ヘリウム容器内にある液体ヘリウムによって、コイルに対する冷却が提供され、コールドマスの温度が超伝導動作のために概ね4.2ケルビンに維持される。コイル自体はコイル支持構造の周りに巻きつけられる。
【0005】
ヘリウム容器の製作には、ステンレス鋼やアルミニウムなどの金属が使用されるのが通常である。マグネットがAC磁場環境で動作している場合、これらの金属構成要素内にうず電流が誘導されAC損失が発生することになる。うず電流は、除去に大きなコストがかかる極低温で熱を発生させるため、AC損失は冷凍機システムに対する総熱負荷を増大させる。ある種の超伝導マグネット用途では、こうしたAC損失は重要となる可能性があり、最小化するか可能であれば排除することが必要である。
【特許文献1】米国特許第7053740号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、所望の超伝導マグネット冷却を提供する一方、うず電流による磁場効果損失を低減させることに対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、磁気共鳴撮像(MRI)システム向けのマグネットアセンブリは、内側円筒、該内側円筒の周りで同心円状に配置させた外側円筒、及び該内側と外側の円筒を接続するための1対のフランジを備えた真空容器を備える。該外側円筒と該1対のフランジは、互いに結合させかつ互いから電気的に絶縁させた磁性材料から製作した複数のセグメントを備える。真空容器の内部に超伝導マグネットアセンブリが配置され、また真空容器の内部に熱シールドが配置される。
【0008】
本発明の別の態様では、磁気共鳴撮像(MRI)システム向けのマグネットアセンブリは、内側円筒、該内側円筒の周りで同心円状に配置させた外側円筒、及び該内側と外側の円筒を接続するための1対のフランジを備えた真空容器を備える。真空容器の内部に熱シールドが配置され、また真空容器の内部に超伝導マグネットアセンブリが配置される。この超伝導マグネットアセンブリは、軸方向に位置決めされかつ非導電性の円筒状スペーサによって支持された多数の超伝導コイルと、熱伝導性のエンベロープを形成するように、円筒構造及び超伝導コイルの周りに巻き付けられた熱伝導性のケーブルと、を備える。
【0009】
本発明の別の態様では、磁気共鳴撮像(MRI)システム向けのマグネットアセンブリは、内側円筒、該内側円筒の周りで同心円状に配置させた外側円筒、及び該内側と外側の円筒を接続するための1対のフランジを備えた真空容器を備える。真空容器の内部に熱シールドが配置される。真空容器の内部に超伝導マグネットアセンブリが配置される。超伝導マグネットアセンブリは多数の超伝導コイルを備える。真空容器の内部にはそれに接続した少なくとも1つの冷却用チューブを有する容器を配置させており、この少なくとも1つの冷却用チューブは超伝導コイルに冷却を提供するために超伝導マグネットアセンブリのごく近傍に位置させている。
【0010】
本発明に関する様々な別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
添付の図面は、本発明を実施するために目下のところ企図される好ましい実施形態を図示したものである。
【0012】
図1を参照すると、超伝導マグネットシステム10は一例として、交番電流(AC)環境で動作する超伝導マグネットシステムを備えている。例示的な超伝導マグネットシステムは、変圧器、発電機、モータ、超伝導マグネットエネルギー蓄積器(SMES)、及び/または磁気共鳴(MR)システムを含む。従来のMRマグネットはDCモードで動作するが、幾つかのMRマグネットはマグネットに対する傾斜漏れ磁場が高い場合に傾斜コイルからのAC磁場下で動作することがある。こうしたAC磁場はマグネット内のAC損失、うず電流、及び撮像ボリューム内の不用な磁場歪みを生成する。説明を目的として、磁気共鳴及び/または磁気共鳴撮像(MRI)装置及び/またはシステムの例示的な詳細に関する例証検討を提示することにする。
【0013】
このMRシステムの動作は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及び表示画面16を含むオペレータコンソール12から制御を受けている。コンソール12は、オペレータが画像の作成及び表示画面16上への画像表示を制御できるようにする単独のコンピュータシステム20と、リンク18を介して連絡している。コンピュータシステム20は、バックプレーン20aを介して互いに連絡している多くのモジュールを含んでいる。これらのモジュールには、画像プロセッサモジュール22、CPUモジュール24、並びに当技術分野でフレームバッファとして知られている画像データアレイを記憶するためのメモリモジュール26が含まれる。コンピュータシステム20は、画像データ及びプログラムを記憶するためにディスク記憶装置28及びテープ駆動装置30とリンクしており、さらに高速シリアルリンク34を介して単独のシステム制御部32と連絡している。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御器、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0014】
システム制御部32は、バックプレーン32aにより互いに接続させたモジュールの組を含んでいる。これらのモジュールには、CPUモジュール36や、シリアルリンク40を介してオペレータコンソール12に接続させたパルス発生器モジュール38が含まれる。システム制御部32は、実行すべきスキャンシーケンスを指示するオペレータからのコマンドをこのリンク40を介して受け取っている。パルス発生器モジュール38は、各システムコンポーネントを動作させて所望のスキャンシーケンスを実行させ、発生させる無線周波数(RF)パルスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを指示するデータを発生させている。パルス発生器モジュール38は、スキャン中に発生させる傾斜パルスのタイミング及び形状を指示するために1組の傾斜増幅器42と接続させている。パルス発生器モジュール38はさらに、生理学的収集制御器44から患者データを受け取ることができ、この生理学的収集制御器44は、患者に装着した電極からのECG信号など患者に接続した異なる多数のセンサからの信号を受け取っている。また最終的には、パルス発生器モジュール38はスキャン室インタフェース回路46と接続されており、スキャン室インタフェース回路46はさらに、患者及びマグネット系の状態に関連付けした様々なセンサからの信号を受け取っている。このスキャン室インタフェース回路46を介して、患者位置決めシステム48はスキャンのために患者を所望の位置に移動させるコマンドを受け取っている。パルス発生器モジュール38が発生させる傾斜波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する傾斜増幅器システム42に加えられる。
【0015】
マグネットアセンブリ50は、傾斜磁場コイルアセンブリ52、偏向マグネット54及び全身用RFコイル56を含む。各傾斜増幅器は、収集する信号の空間エンコードに使用する磁場傾斜を生成させるように傾斜コイルアセンブリ52内の物理的に対応する傾斜コイルを励起させている。システム制御部32内の送受信器モジュール58は、RF増幅器60により増幅を受けて送信/受信スイッチ62によりRFコイル56に結合されるようなパルスを発生させている。患者内の励起した原子核が放出して得られた信号は、同じRFコイル56により検知し、送信/受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合させることができる。増幅したMR信号は、送受信器58の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器60をRFコイル56と電気的に接続させ、受信モードでは前置増幅器64をコイル56に接続させている。送信/受信スイッチ62によりさらに、送信モードと受信モードのいずれに関しても独立したRFコイル(例えば、表面コイル)を使用することが可能となる。
【0016】
RFコイル56により取り込まれたMR信号は送受信器モジュール58によりディジタル化され、システム制御部32内のメモリモジュール66に転送される。未処理のk空間データのアレイをメモリモジュール66内に収集し終わると1回のスキャンが完了となる。この未処理のk空間データは、各画像を再構成させるように別々のk空間データアレイの形に配置し直しており、これらの各々は、データをフーリエ変換して画像データのアレイにするように動作するアレイプロセッサ68に入力される。この画像データはシリアルリンク34を介してコンピュータシステム20に送られ、コンピュータシステム20において画像データはディスク記憶装置28内などの記憶装置内に格納される。この画像データは、オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて、テープ駆動装置30上などの長期記憶内にアーカイブしたり、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータコンソール12に伝達しディスプレイ16上に表示させたりすることができる。
【0017】
ここで図2及び3を参照すると、マグネットアセンブリ50はさらに、ボア74を画定している真空容器72を含む。撮像用途では、対象が撮像のためにボア74内に配置される(図1)ことは当業者であれば理解されよう。したがってボア74は対象に関する撮像ボリュームへのアクセスを提供する。液体ヘリウムその他などの冷媒を包含した容器112は、真空容器72の内部に配置させている。一実施形態では容器112は、ステンレス鋼その他などの適当な材料から製作された円筒状または楕円形のタンクを含む。クライオクーラ110は、容器112内の冷媒に冷却を提供するために容器112と接続させている。容器112には超伝導コイルアセンブリ86に対して冷却を提供するために少なくとも1つの冷却用チューブ118が接続されている。
【0018】
熱シールド114は真空容器72の内部に配置させている。熱シールド114は、液体ヘリウム温度で動作している超伝導コイルアセンブリ86への室温から輻射熱を阻止する。熱シールド114は、ガラス繊維ストランドと共通巻き付け、撚り合わせし、例えばエポキシにより補強して複合材料を形成し得る銅などの熱伝導性のストランドから製作されることがある。
【0019】
マグネットアセンブリ50はさらに、機械的支持構造により真空容器72の真空ボリューム84内に配置させた超伝導マグネットコイルアセンブリ86を含む。明瞭にするためこの支持構造は図示していない。超伝導マグネットコイルアセンブリ86の一実施形態は、図3に示すように複数の窪み104を備えたボビン様の円筒状構造102を含む。円筒状構造102は、プラスチックその他など電気的に非伝導性の材料から製作されることがある。超伝導コイル106は、Nb−Ti、Nb−Snワイヤからなるものなど超伝導ワイヤのコイルから製作されることがあり、窪み104のうちの少なくとも1つの内部に配置させている。
【0020】
代替的な一実施形態では、マグネットコイルアセンブリ86は、図9に示すように長手方向の軸109に沿って超伝導コイル106と非導電性スペーサ105を軸方向に積み重ねることによって形成することができる。スペーサ105とコイル106は円筒状構造102を形成させるように、互いに接着さもなければ結合させている。スペーサ105は、MRIマグネット内の磁場均一性による要求に応じた正確さで超伝導コイル106を位置決めすると共に、コイル間の電磁気力を支持する。図示した実施形態では、全部で4つの超伝導コイル106をスペーサ105の間に配置させている。超伝導コイル106は、スペーサ105間に配置させる前に、巻き付けまたは成形することができる。コイル106は円筒状構造102が形成されたときにスペーサ105によって支持される。コイル106のリードは、磁気回路(図示せず)を形成されるようにルート設定して電気的に接続させている。
【0021】
マグネットコイルアセンブリ86のいずれの実施形態においても、熱伝導性のケーブル108は円筒状構造102及び超伝導コイル106にうずまき状に巻き付け、さもなければこれを覆うように配置させ、これによってケーブル108が実質的にマグネットアセンブリ50の長手方向の軸109に沿って延びる(図9では簡略にするためにうずまき状巻き付けの一部分のみを示している)ようにしている。熱伝導性のケーブル108は、銅、アルミニウムその他から編み組みして(braided)製作されることがある。一実施形態では、そのケーブル108はLitzケーブルとして一般に知られるものである。ケーブル108を構造102上に巻き付け終えた後にケーブル108は熱伝導性のエンベロープを形成する。容器112からの少なくとも1つの冷媒冷却用チューブ118は熱伝導性のケーブル108の外径のごく近傍に配置させて冷媒冷却用チューブ118を熱伝導性のエンベロープの近傍に位置させ、これにより従来の冷却システムと比較した冷媒冷却システムの簡略化、製造の容易さ、並びに必要な冷媒量の低減を可能にしている。一実施形態では、熱伝導性のケーブル108は構造102の外径とコイル106とに直接巻き付けて結合させることが可能である。
【0022】
図3に示すように真空容器72は、複合内側円筒90を覆うように金属製外側円筒88を同心円状に配置させることによって製作されている。金属製外側円筒88及び複合内側円筒90は、1つの閉じた構造が形成されるように2つの磁気環状フランジ92及び94によって閉鎖されている。複合内側円筒90は、ガラス繊維材料、セラミック材料、合成プラスチック材料(ただし、これらに限らない)などプラスチックや繊維材料から製作されることがある。したがって、AC磁場に曝露させたときにこの複合内側円筒90はうず電流を発生させない。
【0023】
真空容器72は、外側ライニング76、内側ライニング78、並びに2つの環状端部ライニングフランジ80及び82を含む。外側ライニング76、内側ライニング78、並びに2つの環状端部ライニングフランジ80及び82によって、真空キャビティ84を画定する1つの閉じた構造が形成される。外側ライニング76、内側ライニング78、並びに2つの環状端部ライニング80及び82は、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウムなどの金属から製作されることがある。これらの構成要素76、78、80及び82は、その全体を参照番号98で表すような防漏洩圧力境界を形成するためにエッジの位置で互いに溶接さもなければ取り付けられることがある。したがって真空キャビティ84を画定する真空容器72は、その全体を矢印100で示した真空力に耐えることができる。金属製ライニング76、78は比較的肉薄であるため、傾斜パルス磁場によりうず電流ライニング76、78内に発生する傾斜パルス磁場が制限される。外側ライニング76から見て傾斜磁場はかなり小さくかつ内側ライニング78と比べて撮像ボリュームからより遠い位置にあるため、外側金属製ライニング76は内側金属製ライニング78と比べてより肉厚とすることがある。
【0024】
ここで図4を参照すると、本発明の一実施形態による真空容器72の磁気外側円筒88を表している。外側円筒88は、MRIシステム10で使用するのに適した望ましい任意の材料から製作することができる。一実施形態ではその外側円筒88は、鉄その他などの磁性材料から製作されている。外側円筒88は、断面形状が等脚台形であるような複数の鉄製セグメント88aから構成されている。鉄製セグメント88aの利用による外側円筒88の形成によって、AC磁場に曝露させたときに真空容器72内に発生するうず電流が抑制され、結果としてMRIシステム10の画質が向上する。
【0025】
図5に示すように、各セグメント88aはマグネットアセンブリ50の長手方向の軸109に沿って延びる長さLを有する。各セグメント88aは、真空容器72に対して十分な剛性を提供するために、外径幅WODより小さい内径幅WIDと、内側幅WID及び外側幅WODより大きい高さHと、を有する。換言すると、各セグメント88aの幅は半径方向で連続的や段階的に増大する。比較的肉厚の外側円筒88は、マグネットアセンブリ86と傾斜コイル54の間の磁気相互作用に由来する振動を低減するような剛性の真空容器構造を提供しており、これによってMRIシステム10の磁場安定性及びシステム画質が向上する。セグメント88aは、外側円筒88を形成するようにエポキシなどの適当な材料を用いて互いに結合させ、セグメント88aを互いに電気的に絶縁している。
【0026】
ここで図6を参照すると、本発明の一実施形態による外側と内側の円筒88、90を互いに接続させるフランジ92を表している。フランジ94はフランジ92と実質的に同一であり、簡潔とするため本明細書では別に記載しないことにする。フランジ92は、MRIシステム10での使用に適した望ましい任意の材料から製作することができる。一実施形態では、フランジ92は鉄材料から製作される。外側円筒88と同様に、フランジ92も断面形状が等脚台形である複数の鉄製セグメント92aから構成されている。鉄製セグメント92aを用いてフランジ92を形成することによって、AC磁場に曝露させたときに真空容器72内に発生するうず電流が抑制され、結果としてMRIシステム10の画質が向上する。さらに、外側円筒88とフランジ92、94の配置によって、マグネットのフリンジ磁場を低減させるような有効な磁束帰還経路、並びにMRIシステム10の望ましい特徴であるより開放型の構成が提供される。
【0027】
図7に示すように各セグメント92aは、真空容器72に対して十分な剛性を提供するように、外径幅WODより小さい内径幅WIDと、内側と外側の両幅より大きい高さHと、を有する。換言すると、各セグメント92aの幅は内径と外径の間で半径方向で連続的や段階的に増大する。外側円筒88と同様に、比較的肉厚のフランジ92、94は、マグネットアセンブリ86と傾斜コイル54の間の磁気相互作用に由来する振動を低減するような剛性の真空容器構造を提供しており、これによってMRIシステム10の磁場安定性及びシステム画質が向上する。セグメント92aは、フランジ92を形成するようにエポキシなどの適当な材料を用いて互いに結合させ、セグメント92aを互いに電気的に絶縁している。
【0028】
図8は、フランジ92、94の側面像を表している。図8に示すようにフランジ92、94は断面が台形であり、外径厚さODTより小さい内径厚さIDTを有している。さらに、外側及び内側円筒88、90と接した内側表面116は、内径表面120及び外径表面122と実質的に直交している。しかし外側表面124はこれ以外の表面120、122及び124のいずれとも実質的に直交していない。換言すると、フランジ92、94の厚さは半径方向で連続的や段階的に増大する。したがってフランジ92、94によって、図3に示すようなMRIシステム10のテーパ型断面が提供される。フランジ92、94がテーパ型断面であるため内径位置におけるマグネットの長さが短縮されると共に、より開放型のMRIシステムが得られる。
【0029】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による本発明の製作及び使用を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は添付の特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態による真空容器を備えた磁気共鳴撮像(MRI)システムのブロック概要図である。
【図2】図1のMRIシステムで使用するための例示的なマグネットアセンブリの側面斜視図である。
【図3】図2の線3−3で切って見たマグネットアセンブリの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による図1のMRIシステムで使用するための真空容器の外側円筒の斜視図である。
【図5】図4に示した外側円筒のセグメントの前面像である。
【図6】本発明の一実施形態による図1のMRIシステムで使用するための真空容器のフランジの側面斜視図である。
【図7】図6に示したフランジのセグメントの前面像である。
【図8】図7に示したフランジのセグメントの側面像である。
【図9】本発明の一実施形態による超伝導コイルアセンブリの側面斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10 MRI装置
12 オペレータコンソール
13 入力デバイス
14 制御パネル
16 表示画面
18 リンク
20 コンピュータシステム
20a バックプレーン
22 プロセッサモジュール
24 CPUモジュール
26 メモリモジュール
28 ディスク記憶装置
30 テープ駆動装置
32 システム制御部
32a バックプレーン
34 シリアルリンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 シリアルリンク
42 傾斜増幅器
44 収集制御器
46 インタフェース回路
48 患者位置決めシステム
50 傾斜コイルアセンブリ
52 マグネットアセンブリ
54 偏向マグネット
56 RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 スイッチ
64 前置増幅器
66 メモリモジュール
68 アレイプロセッサ
72 真空容器
74 ボア
76 外側ライニング
78 内側ライニング
80 端部ライニングフランジ
82 端部ライニングフランジ
84 真空キャビティ
86 コイルアセンブリ
88 金属製外側円筒
88a 鉄製セグメント
90 複合内側円筒
92 環状フランジ
92a 鉄製セグメント
94 環状フランジ
100 矢印
102 円筒状構造
104 窪み
105 非導電性スペーサ
106 超伝導コイル
108 ケーブル
109 長手方向の軸
110 クライオクーラ
112 容器
114 熱シールド
116 内側表面
118 冷媒冷却用チューブ
120 内径表面
122 外径表面
124 外側表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)向けのマグネットアセンブリ(52)であって、
内側円筒(90)、該内側円筒の周りで同心円状に配置させた外側円筒(88)、及び該内側と外側の円筒を接続するための1対のフランジ(92、94)を備える真空容器(72)であって、該外側円筒(88)と該1対のフランジ(92、94)は互いに結合させかつ互いから電気的に絶縁させた磁性材料から製作した複数のセグメント(88a、92a)を備えている真空容器(72)と、
前記真空容器(72)の内部に配置させた超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)と、
前記真空容器(72)の内部に配置させた熱シールド(114)と、
を備えるマグネットアセンブリ(52)。
【請求項2】
超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)に対して冷却を提供するために前記真空容器(72)の内部に配置させた容器(112)をさらに備える請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記容器(112)に対して冷媒を提供するために該容器(112)と接続させたクライオクーラ(110)をさらに備える請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
傾斜コイルアセンブリ(50)、偏向マグネット(54)及び全身用RFコイル(56)をさらに備える請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記熱シールド(114)は複合材料から製作されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記真空容器(72)の内側円筒(90)は複合材料から製作されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記真空容器(72)はさらに、閉じた防漏洩構造を形成するように、外側ライニング(76)、内側ライニング(78)、及び2つの環状端部ライニングフランジ(80、82)を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)はさらに、熱伝導性のエンベロープを形成するように、少なくとも1つの窪み(104)を有する非導電性円筒構造(102)、該少なくとも1つの窪み(104)内に配置させた超伝導コイル(106)、並びに該円筒構造(102)及び超伝導コイル(106)の周りに巻き付けられた金属製ケーブル(108)を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)は、熱伝導性のエンベロープを形成するように、軸方向に位置決めされかつ非導電性の円筒状スペーサ(105)によって支持された多数の超伝導コイル(106)と、該円筒状スペーサ(105)及び超伝導コイル(106)の周りに巻き付けられた熱伝導性のケーブル(108)と、を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
各セグメント(88a、92a)は断面形状が等脚台形である、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項11】
各フランジ(92、94)は、内側表面(116)、外側表面(124)、内径表面(120)及び外径表面(122)を有すると共に、該内側表面(116)は内側及び外側の円筒(90、88)と接触しており、該内側表面(116)は該内径表面(120)及び外径表面(122)と実質的に直交しており、かつ該外側表面(124)は該内側表面(116)及び該内径と外径の表面(120、122)と実質的に直交していない、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項12】
磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)向けのマグネットアセンブリ(52)であって、
内側円筒(90)、該内側円筒(90)の周りで同心円状に配置させた外側円筒(88)、及び該内側と外側の円筒(90、88)を接続するための1対のフランジ(92、94)を備えた真空容器(72)と、
前記真空容器(72)の内部に配置させた熱シールド(114)と、
前記真空容器(72)の内部に配置させた超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)であって、軸方向に位置決めされかつ非導電性の円筒状スペーサ(105)によって支持された多数の超伝導コイル(106)と、熱伝導性のエンベロープを形成するように該円筒状スペーサ(105)及び超伝導コイル(106)の周りに巻き付けられた熱伝導性のケーブル(108)と、を備える超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)と、
を備えるマグネットアセンブリ(52)。
【請求項13】
前記真空容器(72)の内部に配置させると共にそれに接続した少なくとも1つの冷却用チューブ(118)を有する冷媒を包含するように構成された容器(112)をさらに備えており、該少なくとも1つの冷却用チューブ(118)は超伝導コイル(106)に冷却を提供するために該超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)の周りに配置されている、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記容器(112)に冷媒を提供するためのクライオクーラ(110)をさらに備える請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
傾斜コイルアセンブリ(50)、偏向マグネット(54)及び全身用RFコイル(56)をさらに備える請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記熱シールド(114)は複合材料から製作されている、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記真空容器(72)の内側円筒(90)は複合材料から製作されている、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記真空容器(72)はさらに、閉じた構造を形成するような、外側ライニング(76)、内側ライニング(78)、及び2つの環状端部ライニングフランジ(80、82)を含む、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記外側円筒(88)と前記1対のフランジ(92、94)は、互いに結合させかつ互いから電気的に絶縁させた磁性材料から製作した複数のセグメント(88a、92a)を備えている、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項20】
各セグメント(88a、92a)は断面形状が等脚台形である、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項21】
各フランジ(92、94)は、内側表面(116)、外側表面(124)、内径表面(120)及び外径表面(122)を有すると共に、該内側表面(116)は内側及び外側の円筒(90、88)と接触しており、該内側表面(116)は該内径表面(120)及び外径表面(122)と実質的に直交しており、かつ該外側表面(124)は該内側表面(116)及び該内径と外径の表面(120、122)と実質的に直交していない、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項22】
磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)向けのマグネットアセンブリ(52)であって、
内側円筒(90)、該内側円筒(90)の周りで同心円状に配置させた外側円筒(88)、及び該内側と外側の円筒(90、88)を接続するための1対のフランジ(92、94)を備えた真空容器(72)と、
前記真空容器(72)の内部に配置させた熱シールド(114)と、
前記真空容器(72)の内部に配置させた多数の超伝導コイル(106)を備えた超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)と、
前記真空容器(72)の内部に配置させると共にそれに接続した少なくとも1つの冷却用チューブ(118)を有する容器(112)であって、該少なくとも1つの冷却用チューブ(118)は超伝導コイル(106)に冷却を提供するために超伝導マグネットコイルアセンブリ(86)のごく近傍に位置している容器(112)と、
を備えるマグネットアセンブリ(52)。
【請求項23】
前記多数の超伝導コイル(106)は軸方向に位置決めされかつ非導電性の円筒状スペーサ(105)によって支持されており、熱伝導性のエンベロープを形成するように該円筒状スペーサ(105)及び該超伝導コイル(106)の周りに熱伝導性のケーブル(108)が巻き付けられている、請求項22に記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記外側円筒(88)と前記1対のフランジ(92、94)は、互いに結合させかつ互いから電気的に絶縁させた磁性材料から製作した複数のセグメント(88a、92a)を備えている、請求項22に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−106742(P2009−106742A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276337(P2008−276337)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】