磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法
【課題】本発明は、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみによって清澄な処理水を得ることができる磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の磁気分離装置10は、分離槽30内に磁力を有する2枚のディスク32、34が配置される。ディスク32、34は、分離槽30内に廃水が流入した際に、その下半分が廃水に水没される。分離槽30の上部壁面の両壁面のうちディスク32、34の回転方向上流側に位置する一壁面30Aに廃水の供給部38が設けられている。また、分離槽30の上部両壁面のうちディスク32、24の回転方向下流側に位置する他壁面30Bに処理水の排出部40が設けられている。これにより、分離槽30内における廃水の流れ方向と、回転するディスク32、34の回転方向が同一となり、ディスク32、34に付着した磁気フロックを剥離させる力が大幅に減少し、従来必要としたフィルタが不要になる。
【解決手段】本発明の磁気分離装置10は、分離槽30内に磁力を有する2枚のディスク32、34が配置される。ディスク32、34は、分離槽30内に廃水が流入した際に、その下半分が廃水に水没される。分離槽30の上部壁面の両壁面のうちディスク32、34の回転方向上流側に位置する一壁面30Aに廃水の供給部38が設けられている。また、分離槽30の上部両壁面のうちディスク32、24の回転方向下流側に位置する他壁面30Bに処理水の排出部40が設けられている。これにより、分離槽30内における廃水の流れ方向と、回転するディスク32、34の回転方向が同一となり、ディスク32、34に付着した磁気フロックを剥離させる力が大幅に減少し、従来必要としたフィルタが不要になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法に関し、特に浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水から浮遊固形物、油、重金属を分離して処理水を得る磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水から浮遊固形物、油、重金属を分離する装置として、磁気分離装置を使用した廃水処理装置が従来から知られている。この廃水処理装置によれば、廃水に含まれる浮遊固形物、油、重金属を凝集処理する際に磁性粉を廃水に添加し、磁性粉を含む凝集フロック(以下、磁性フロックと称する)を磁気分離装置の磁力によって分離することにより、処理水を得るものである。
【0003】
図10は、特許文献1に開示された廃水処理装置100の構成を示すブロック図である。
【0004】
この廃水処理装置100によれば、廃水は急速撹拌槽102内で磁性粉(例えば四三酸化鉄)、無機凝集剤(例えば塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム)と混合された後、緩速撹拌槽104で高分子凝集剤と混合される。急速撹拌槽102、緩速撹拌槽104内で生成された磁性フロックには廃水中の浮遊固形物、油、重金属などが取り込まれ、これにより廃水は浄化される。磁性フロックは、緩速撹拌槽104の後段に設置されたフロック分離装置106によって分離される。フロック分離装置106は磁気分離装置108、及びフィルタ110で構成される。磁性フロックが分離された廃水は処理水となる。磁気分離装置108によって分離されなかった磁性フロックは、後段のフィルタ110で分離除去され、再び磁気分離装置108に返送されて分離される。
【0005】
しかしながら、特許文献1の廃水処理装置100は、磁気分離装置108とフィルタ110とを並設することで、清澄な処理水を得ることはできるが、フィルタ110の目詰まりを防止するために、大きなろ過面積を必要とする、連続的な逆洗浄が必要になるという問題があった。すなわち、特許文献1の廃水処理装置100は、沈殿池の代わりに磁気分離装置108を用いることによって設置面積を飛躍的に小さくできるという利点があるにも関らず、大きなフィルタ110と必要とするので、磁気分離装置108の利点を損なっていた。
【0006】
一方、特許文献2に開示されたディスク型の磁気分離装置120の構造を図11、図12に示す。なお、図11は磁気分離装置120の平面図、図12は磁気分離装置120の正面図であり、断面半円弧形状の分離槽122を透視した説明図である。
【0007】
この磁気分離装置120の分離槽122内には、磁力を有するディスク124、126が所定の間隔で配置されている。このディスク124、126は、その中央部に軸128が固定され、この軸128が不図示のモータに連結されている。このモータによってディスク124、126が軸128を介して図12の反時計回り方向に回転される。また、ディスク124、126は、分離槽122内に廃水が流入した際に、その下半分が廃水に水没されるようにその高さ位置が設定されている。
【0008】
分離槽122の底部中央部には、廃水の供給部130が設けられている。よって、凝集後の廃水は供給部130から上向流として分離槽122内に流入し、供給部130を中心として2方向に分岐する。そして、廃水が分離槽122の上部両側に設けられた処理水排出口132、134に向って流れる間に、廃水中の磁性フロックがディスク124、126に付着する。また、ディスク124、126に付着した磁性フロックは、ディスク124とディスク126との間に設けられたスクレーパ136によって、ディスク124、126の回転時に掻き取られる。そして、掻き取られた磁性フロックは、スクレーパ136に沿って設けられた汚泥掻き取り器138によって掻き取られて磁気分離装置120の外部に排出される。
【0009】
この磁気分離装置120によれば、分離槽122内における水流方向とディスク124、126の回転方向が反対になる領域(図12の軸128から見て左側の部分)が存在する。この領域においては、廃水の水流によって、ディスク124、126に付着した磁性フロックを剥離させる力が、磁性フロックに大きく作用するため、処理水の水質が若干悪化する可能性がある。このため、特許文献2の磁気分離装置120では、処理水排出口134の後段にフィルタが必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−112978号公報
【特許文献2】特開2009−101339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の如く、従来の磁力を用いた廃水処理装置では、清澄な処理水を得るために、磁気分離装置の後段に大きなフィルタが必要であり、設置面積を小さくできる磁気分離装置の利点を損なうという欠点があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみによって清澄な処理水を得ることができる磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するために、凝集した磁性フロックを含有する廃水が供給される分離槽と、該分離槽内に配設されて回転されながら前記磁性フロックを磁力によって吸着するディスク状又はドラム状の分離器と、前記分離器に吸着された前記磁性フロックを回収する回収手段とを備えた磁気分離装置において、前記分離器は、前記分離槽内の前記廃水に下方部が水没されるとともに、該分離槽の廃水中での回転方向が、該分離槽内で流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定されていることを特徴とする磁気分離装置を提供する。
【0014】
本発明は、前記目的を達成するために、凝集した磁性フロックを含有する廃水を分離槽に流入させて、前記分離槽内に配設されたディスク状又はドラム状の分離器を回転させながら前記磁性フロックを前記分離器の磁力によって吸着し、前記分離器に吸着された前記磁性フロックを回収手段によって回収する磁気分離方法において、前記分離槽内の前記廃水に前記分離器の下方部を水没させるとともに、該分離槽の廃水中での前記分離器の回転方向を、該分離槽に流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定したことを特徴とする磁気分離方法を提供する。
【0015】
従来の磁気分離装置の欠点発生原因は、分離槽内において廃水の水流方向と分離器の回転方向が反対になる部分が存在することにある。
【0016】
本発明は、この欠点を解消するために、分離槽内における廃水の流れ方向と、回転するディスク状あるいはドラム状の分離器の回転方向を同一とした。これにより、分離器に付着した磁気フロックを剥離させる力が大幅に減少するため、分離器による磁気フロックの回収効率が大幅に向上する。この効果によって、従来必要としたフィルタが不要になるので、磁気分離装置の設置スペースを省スペース化することができる。なお、分離器はディスク状あるいはドラム状に限定されるものではなく、回転された際にその外周の軌跡が円となるものであればよい。
【0017】
また、本発明の磁気分離装置は、前記分離槽は断面半円弧状であり、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部に前記廃水の供給部が設けられ、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部に処理水の排出部が設けられていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の磁気分離方法は、前記分離槽を断面半円弧状に構成し、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部から前記廃水を前記分離器に供給し、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部から処理水を排出することが好ましい。
【0019】
本発明は、磁気分離装置及び方法の一形態を示すものである。すなわち、分離槽を断面半円弧状に構成し、この上部両端のうち分離器の回転方向上流側に位置する一端部から廃水を分離器に供給し、上部両端のうち分離器の回転方向下流側に位置する他端部から処理水を排出する。これにより、分離槽内における廃水の流れ方向と回転する分離器の回転方向とを、簡単な構造で同一とすることができる。
【0020】
また、本発明の磁気分離装置は、前記分離器の最大周速が、前記分離槽内の廃水の流速以下に設定されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の磁気分離方法は、前記分離器の最大周速を、前記分離槽内の廃水の流速以下に設定することが好ましい。
【0022】
分離器に吸着された磁性フロックは、分離器の回転によって廃水の水面から上昇して離水した際に、重力の影響を大きく受けるため、分離器から離れようとする。そこで、分離器の最大周速を、分離槽内の廃水の流速以下に設定すると、磁性フロックが離水しようとした際に、廃水の流勢によって磁性フロックを分離器とともに上方に押し上げる力が磁性フロックに加わる。これにより、分離器からの磁性フロックの剥離を抑えることができるので、磁性フロックの回収効率が更に向上する。
【0023】
本発明は、前記目的を達成するために、廃水が貯留された原水タンクと、前記原水タンクから廃水が供給されて該廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合する急速攪拌槽と、前記急速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水と高分子凝集剤とを混合することにより廃水中に磁性フロックを生成する緩速攪拌槽と、前記緩速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水中の前記磁性フロックを廃水から分離する本発明の磁気分離装置と、を備えたことを特徴とする廃水処理装置を提供する。
【0024】
本発明は、前記目的を達成するために、原水タンクに貯留された廃水を急速攪拌槽に供給する工程と、前記急速攪拌槽内において前記廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合して緩速攪拌槽に供給する工程と、前記緩速攪拌槽内に供給された前記廃水と高分子凝集剤とを攪拌して廃水中に磁性フロックを生成し、該廃水を磁気分離装置に供給する工程と、前記磁気分離装置に供給された前記廃水から本発明の磁気分離方法により磁気フロックを分離する工程と、を備えていることを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法によれば、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみによって清澄な処理水を得ることができる。これにより、磁気分離装置及び廃水処理装置の設置面積を省スペース化でき、特に、設置スペースが限定された洋上構造物に設置される廃水処理設備に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態の磁気分離装置が適用された廃水処理装置12の構造を示したブロック図
【図2】第1の実施の形態の磁気分離装置の平面図
【図3】図2に示した磁気分離装置の正面図
【図4】図3に示した磁気分離装置の右側面図
【図5】図2のA−A線に沿う磁気分離装置の断面図
【図6】図2のB−B線に沿う磁気分離装置の断面図
【図7】サンプルの除去率の実験結果を示したグラフ
【図8】第2の実施の形態の磁気分離装置の平面図
【図9】図8に示した磁気分離装置の正面図
【図10】従来の廃水処理装置の構成を示すブロック図
【図11】従来の磁気分離装置の平面図
【図12】図11に示した磁気分離装置の正面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明に係る磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、実施の形態の磁気分離装置10が適用された廃水処理装置12の構造を示したブロック図である。
【0029】
この廃水処理装置12は、廃水の処理系統の上流側から下流側に向けて原水タンク14、急速攪拌槽16、緩速攪拌槽18、及び磁気分離装置10が配置されて構成される。
【0030】
被処理水である廃水(浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水)は、まず、原水タンク14から、原水ポンプ20により急速攪拌槽16に送水される。次に、急速攪拌槽16では、無機の凝集剤、例えばPAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム等が、無機凝集剤注入ポンプ(図示せず)によって無機凝集剤槽22から加えて、急速に攪拌が行われる。ここで、急速の攪拌によって浮遊物質や油粒子の衝突頻度が高まる中で凝集剤の効果によってマイクロフロックと呼ばれる多数の小さな塊が形成される。次いで、急速攪拌槽16の内部、又は急速攪拌槽16を出たところで、磁性粉注入ポンプ(図示せず)により磁性粉槽24から、マグネタイト等の磁性粉が廃水に添加される。そして、磁性粉と前記マイクロフロックを含む廃水は、急速攪拌槽16を出た後、緩速攪拌槽18に流入する。ここで、高分子ポリマー(高分子凝集剤)を、ポンプ(図示せず)により高分子ポリマータンク26から緩速攪拌槽18に注入し、緩速攪拌槽18内で低速で攪拌して磁性フロックを成長させる。この場合の高分子ポリマーはアニオン系が望ましく、例えばポリアクリルアミドが適している。ポリアクリルアミドの場合は粉末で保管しておき、フィーダで定量高分子ポリマータンク26に注入して攪拌する構造が考えられる。また、上記例は、無機凝集剤とアニオン系高分子ポリマーを使用する例を示したが、無機凝集剤を使用せずにカチオン系の高分子ポリマーのみを使用する場合でも以下の効果は同様となる。上記のように形成された磁性フロックは、緩速攪拌槽18から磁気分離装置10に送水され、ここで磁性フロックと処理水とが分離される。以上が廃水処理装置12による廃水処理の流れである。
【0031】
図2〜図6には、第1の実施の形態に係る磁気分離装置10が示されている。すなわち、図2は磁気分離装置10の平面図、図3は、図2に示した磁気分離装置10の正面図、図4は、図3に示した磁気分離装置10の右側面図、図5は、図2のA−A線に沿う磁気分離装置10の断面図、図6は、図2のB−B線に沿う磁気分離装置10の断面図である。
【0032】
磁気分離装置10は、ディスク型の磁気分離装置である。すなわち、磁気分離装置10の分離槽30内には、内部に永久磁石が備えられた磁力を有する2枚の円盤状ディスク32、34が所定の間隔で配置されている。このディスク32、34は、その中央部に軸36が固定され、この軸36が不図示のモータによって回転されることにより、ディスク32、34が図5の反時計回り方向に回転される。また、ディスク32、34は、分離槽30内に廃水が流入した際に、その下半分が廃水に水没されるようにその高さ位置が設定されている。なお、永久磁石に代えて電磁石をディスク32、34に設けてもよい。また、ディスクの枚数は2枚に限定されるものではなく、3枚以上であってもよい。
【0033】
分離槽30は、断面略半円弧状に構成された槽である。分離槽30の上部壁面の両壁面のうちディスク32、34の回転方向上流側に位置する一壁面30Aに廃水の供給部38が設けられている。また、分離槽30の上部両壁面のうちディスク32、34の回転方向下流側に位置する他壁面30Bに処理水の排出部40が設けられている。
【0034】
廃水の供給部38は、パイプ状に構成された送液管路であり、一壁面30Aの開口部に固着されている。また、同様に排出部40もパイプ状に構成された送液管路であり、他壁面30Bの開口部に固着されている。更に、供給部38及び排出部40は、同一水平面内に配置されている。更にまた、供給部38における廃水の供給量と排出部40における処理水の排出量とは、図5の如く分離槽30内において、ディスク32、34の略下半分が水没される液面レベルを維持するようにバランスされている。
【0035】
よって、供給部38から分離槽30に供給された廃水は、つまり、凝集処理された磁性フロックを含む廃水は、分岐することなく排出部40に向けて一経路に沿って流れるとともに、その経路においてディスク32、34の回転方向と同一方向に流れる。そして、前述したように、分離槽30内における廃水の液面レベルは、ディスク32、34の略下半分が水没されるレベルに維持されているので、分離槽30内における廃水の水流方向とディスク32、34の回転方向が反対になる部分は存在しない。
【0036】
なお、分離槽30の形状の関係で、供給部38を分離槽30の一壁面30Aに設け、排出部40を他壁面30Bに設けたが、これに限定されるものではない。つまり、分離槽30が断面半円弧状のものであれば、その分離槽の上部両端のうちディスク32、34の回転方向上流側に位置する一端部に供給部38を設け、上部両端のうちディスク32、34の回転方向下流側に位置する他端部に排出部40を設ければよい。また、ディスク32、34の回転方向と分離槽30内における廃水の水流方向とが同一となるのであれば、供給部38及び排出部40の設置位置は上記位置に限定されるものではない。例えば、供給部38及び排出部40の位置を同一水平面上の位置から高さ方向にずらして設けてもよい。
【0037】
一方で分離槽30に供給された廃水は、その廃水中の磁性フロックが、回転しているディスク32、34に磁力によって付着する。ディスク32、34に付着した磁性フロックは、水面から上昇した位置で、ディスク32とディスク34との間に配置されたスクレーパ42によって、ディスク32、34の回転時に掻き取られる。そして、掻き取られた磁性フロックは、図2に示すようにスクレーパ42に沿って設けられたスパイラル形状の汚泥掻き取り器44によって掻き取られて磁気分離装置10の外部に排出される。以上が磁気分離装置10の作用である。
【0038】
したがって、このように構成された磁気分離装置10によれば、分離槽30内における廃水の流れ方向と、回転するディスク32、34の回転方向が同一であるため、ディスク32、34に付着した磁気フロックを剥離させる力が大幅に減少し、ディスク32、34による磁気フロックの回収効率が大幅に向上する。この効果によって、従来必要としたフィルタが不要になるので、磁気分離装置10の設置スペースを省スペース化することができる。
【0039】
また、この磁気分離装置10が設置された廃水処理装置12においても、前記フィルタが不要なので、廃水処理装置12の設置スペースを省スペース化することができる。特に、設置スペースが限定された洋上プラットフォーム等の洋上構造物に設置される廃水処理設備に好適でなる。
【0040】
図7に廃水処理実験の結果を示す。
【0041】
図7の横軸の相対速度は、分離槽30内の廃水の平均流速に対するディスク32、34の外周部の速度(最大周速)の比である。相対速度100%は、廃水平均流速とディスク32、34の最大周速が同一であることを示し、相対速度が100%より大きいことは、ディスク32、34の最大周速が廃水平均流速より大きいことを示し、相対速度が100%より小さいことは、ディスク32、34の最大周速が廃水平均流速より小さいことを示す。
【0042】
図7の縦軸は廃水の浮遊固形物除去率を示す。
【0043】
サンプル1のRUN1は、相対速度が小さい程、浮遊固形物除去率が良好であった。
【0044】
サンプル2のRUN2は、相対速度が100%の時、最も浮遊固形物除去率が良好であり、相対速度が100%より大きい時、あるいは100%より小さい時は、わずかではあるが浮遊固形物除去率は低下した。
【0045】
サンプル3のRUN3は、相対速度が80%程度の時、最も浮遊固形物除去率が良好であった。
【0046】
以上の結果から、相対速度が100%以下であることが好ましい。このような実験結果が得られた原因は以下の理由による。つまり、ディスク32、34の表面に付着した磁性フロックが水中で受ける力は、廃水の流速、ディスク32、34の回転速度によって決まる。その際に、ディスク32、34に付着した磁性フロックが水面上に引上げられる際に受ける力は、相対速度が100%以下の場合に最も小さくなることにある。換言すれば、相対速度が100%より大きくなると、ディスク32、34に付着したフロックが水面上に引上げられる際に受ける力が大きくなるため、フロックがディスク32、34の表面から剥離する比率が増加し、浮遊固形物除去率が低下する。
【0047】
また、ディスク32、34に付着した磁性フロックは、ディスク32、34の回転によって廃水の水面から上昇して離水した際に、重力の影響を大きく受けるため、ディスク32、34から離れようとする。そこで、ディスク32、34の最大周速を、分離槽30内の廃水の流速以下に設定すると、磁性フロックが離水しようとした際に、廃水の流勢によって磁性フロックをディスク32、34とともに上方に押し上げる力が磁性フロックに加わる。これにより、ディスク32、34からの磁性フロックの剥離を抑えることができるので、磁性フロックの回収効率が更に向上する。
【0048】
具体的には、図2〜図6に示した2枚のディスク32、34の直径を900mmとし、ディスク32、34の間隔を50mmとし、ディスク間に直径300mmのディスクを押える通水路とならない円盤があるとした場合、処理水量が7.3m3/hの時、分離槽30内の廃水の平均流速は0.135m/sとなる。このため、ディスク32、34の最大周速を0.068〜0.135m/s(相対速度約50%〜100%以下)とすることが好ましい。
【0049】
図8、図9に第2の実施の形態の磁気分離装置50を示す。なお、図8は、磁気分離装置50の平面図であり、図9は、磁気分離装置50の正面図である。
【0050】
これらの図に示す磁気分離装置50は、図2〜図6に示したディスク32、34に代えてドラム52としたものである。
【0051】
ドラム52の表面には磁石片が密に取り付けられている。このドラム52は、断面円弧形状の分離槽54に下半分が水没するように配置されている。また、ドラム52の側面には軸56が固定され、この軸56が不図示のモータに連結されている。このモータを駆動することにより、ドラム52は図9において反時計回り方向に所定の速度で回転駆動されている。
【0052】
分離槽54の上部両端のうちドラム52の回転方向上流側に位置する一端部には廃水の供給部58が設けられ、上部両端のうちドラム52の回転方向下流側に位置する他端部には排出部60が設けられている。なお、ドラム52の回転方向と分離槽54内における廃水の水流方向とが同一となるのであれば、供給部58及び排出部60の設置位置は上記位置に限定されるものではない。
【0053】
ドラム52の表面に磁力により付着した磁性フロックは、水面上の位置でスクレーパ62によって掻き取られ、スクレーパ62に沿って下方部に集められる。例えば、ドラムの直径を600mmとし、ドラムの長さを600mmとし、通水路高さを25mmとし、処理水量を7.3m3/hとした場合、分離槽内の廃水の平均流速は0.135m/sとなるため、ドラム外周速度を0.068〜0.135m/s(相対速度約50%〜100%以下)とすることが好ましい。
【0054】
図2〜図6に示したディスク型の磁気分離装置10では、ディスク間にスクレーパ42、汚泥掻き取り器44がそれぞれ必要であるが、図8、図9に示したドラム型の磁気分離装置50によれば、スクレーパ62のみで汚泥を回収できるため、装置構造を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…磁気分離装置、12…廃水処理装置、14…原水タンク、16…急速攪拌槽、18…緩速攪拌槽、20…原水ポンプ、22…無機凝集剤槽、24…磁性粉槽、26…高分子ポリマータンク、30…分離槽、32、34…ディスク、36…軸、38…供給部、40…排出部、42…スクレーパ、44…汚泥掻き取り器、50…磁気分離装置、52…ドラム、54…分離槽、56…軸、58…供給部、60…排出部、62…スクレーパ
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法に関し、特に浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水から浮遊固形物、油、重金属を分離して処理水を得る磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水から浮遊固形物、油、重金属を分離する装置として、磁気分離装置を使用した廃水処理装置が従来から知られている。この廃水処理装置によれば、廃水に含まれる浮遊固形物、油、重金属を凝集処理する際に磁性粉を廃水に添加し、磁性粉を含む凝集フロック(以下、磁性フロックと称する)を磁気分離装置の磁力によって分離することにより、処理水を得るものである。
【0003】
図10は、特許文献1に開示された廃水処理装置100の構成を示すブロック図である。
【0004】
この廃水処理装置100によれば、廃水は急速撹拌槽102内で磁性粉(例えば四三酸化鉄)、無機凝集剤(例えば塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム)と混合された後、緩速撹拌槽104で高分子凝集剤と混合される。急速撹拌槽102、緩速撹拌槽104内で生成された磁性フロックには廃水中の浮遊固形物、油、重金属などが取り込まれ、これにより廃水は浄化される。磁性フロックは、緩速撹拌槽104の後段に設置されたフロック分離装置106によって分離される。フロック分離装置106は磁気分離装置108、及びフィルタ110で構成される。磁性フロックが分離された廃水は処理水となる。磁気分離装置108によって分離されなかった磁性フロックは、後段のフィルタ110で分離除去され、再び磁気分離装置108に返送されて分離される。
【0005】
しかしながら、特許文献1の廃水処理装置100は、磁気分離装置108とフィルタ110とを並設することで、清澄な処理水を得ることはできるが、フィルタ110の目詰まりを防止するために、大きなろ過面積を必要とする、連続的な逆洗浄が必要になるという問題があった。すなわち、特許文献1の廃水処理装置100は、沈殿池の代わりに磁気分離装置108を用いることによって設置面積を飛躍的に小さくできるという利点があるにも関らず、大きなフィルタ110と必要とするので、磁気分離装置108の利点を損なっていた。
【0006】
一方、特許文献2に開示されたディスク型の磁気分離装置120の構造を図11、図12に示す。なお、図11は磁気分離装置120の平面図、図12は磁気分離装置120の正面図であり、断面半円弧形状の分離槽122を透視した説明図である。
【0007】
この磁気分離装置120の分離槽122内には、磁力を有するディスク124、126が所定の間隔で配置されている。このディスク124、126は、その中央部に軸128が固定され、この軸128が不図示のモータに連結されている。このモータによってディスク124、126が軸128を介して図12の反時計回り方向に回転される。また、ディスク124、126は、分離槽122内に廃水が流入した際に、その下半分が廃水に水没されるようにその高さ位置が設定されている。
【0008】
分離槽122の底部中央部には、廃水の供給部130が設けられている。よって、凝集後の廃水は供給部130から上向流として分離槽122内に流入し、供給部130を中心として2方向に分岐する。そして、廃水が分離槽122の上部両側に設けられた処理水排出口132、134に向って流れる間に、廃水中の磁性フロックがディスク124、126に付着する。また、ディスク124、126に付着した磁性フロックは、ディスク124とディスク126との間に設けられたスクレーパ136によって、ディスク124、126の回転時に掻き取られる。そして、掻き取られた磁性フロックは、スクレーパ136に沿って設けられた汚泥掻き取り器138によって掻き取られて磁気分離装置120の外部に排出される。
【0009】
この磁気分離装置120によれば、分離槽122内における水流方向とディスク124、126の回転方向が反対になる領域(図12の軸128から見て左側の部分)が存在する。この領域においては、廃水の水流によって、ディスク124、126に付着した磁性フロックを剥離させる力が、磁性フロックに大きく作用するため、処理水の水質が若干悪化する可能性がある。このため、特許文献2の磁気分離装置120では、処理水排出口134の後段にフィルタが必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−112978号公報
【特許文献2】特開2009−101339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の如く、従来の磁力を用いた廃水処理装置では、清澄な処理水を得るために、磁気分離装置の後段に大きなフィルタが必要であり、設置面積を小さくできる磁気分離装置の利点を損なうという欠点があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみによって清澄な処理水を得ることができる磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するために、凝集した磁性フロックを含有する廃水が供給される分離槽と、該分離槽内に配設されて回転されながら前記磁性フロックを磁力によって吸着するディスク状又はドラム状の分離器と、前記分離器に吸着された前記磁性フロックを回収する回収手段とを備えた磁気分離装置において、前記分離器は、前記分離槽内の前記廃水に下方部が水没されるとともに、該分離槽の廃水中での回転方向が、該分離槽内で流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定されていることを特徴とする磁気分離装置を提供する。
【0014】
本発明は、前記目的を達成するために、凝集した磁性フロックを含有する廃水を分離槽に流入させて、前記分離槽内に配設されたディスク状又はドラム状の分離器を回転させながら前記磁性フロックを前記分離器の磁力によって吸着し、前記分離器に吸着された前記磁性フロックを回収手段によって回収する磁気分離方法において、前記分離槽内の前記廃水に前記分離器の下方部を水没させるとともに、該分離槽の廃水中での前記分離器の回転方向を、該分離槽に流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定したことを特徴とする磁気分離方法を提供する。
【0015】
従来の磁気分離装置の欠点発生原因は、分離槽内において廃水の水流方向と分離器の回転方向が反対になる部分が存在することにある。
【0016】
本発明は、この欠点を解消するために、分離槽内における廃水の流れ方向と、回転するディスク状あるいはドラム状の分離器の回転方向を同一とした。これにより、分離器に付着した磁気フロックを剥離させる力が大幅に減少するため、分離器による磁気フロックの回収効率が大幅に向上する。この効果によって、従来必要としたフィルタが不要になるので、磁気分離装置の設置スペースを省スペース化することができる。なお、分離器はディスク状あるいはドラム状に限定されるものではなく、回転された際にその外周の軌跡が円となるものであればよい。
【0017】
また、本発明の磁気分離装置は、前記分離槽は断面半円弧状であり、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部に前記廃水の供給部が設けられ、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部に処理水の排出部が設けられていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の磁気分離方法は、前記分離槽を断面半円弧状に構成し、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部から前記廃水を前記分離器に供給し、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部から処理水を排出することが好ましい。
【0019】
本発明は、磁気分離装置及び方法の一形態を示すものである。すなわち、分離槽を断面半円弧状に構成し、この上部両端のうち分離器の回転方向上流側に位置する一端部から廃水を分離器に供給し、上部両端のうち分離器の回転方向下流側に位置する他端部から処理水を排出する。これにより、分離槽内における廃水の流れ方向と回転する分離器の回転方向とを、簡単な構造で同一とすることができる。
【0020】
また、本発明の磁気分離装置は、前記分離器の最大周速が、前記分離槽内の廃水の流速以下に設定されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の磁気分離方法は、前記分離器の最大周速を、前記分離槽内の廃水の流速以下に設定することが好ましい。
【0022】
分離器に吸着された磁性フロックは、分離器の回転によって廃水の水面から上昇して離水した際に、重力の影響を大きく受けるため、分離器から離れようとする。そこで、分離器の最大周速を、分離槽内の廃水の流速以下に設定すると、磁性フロックが離水しようとした際に、廃水の流勢によって磁性フロックを分離器とともに上方に押し上げる力が磁性フロックに加わる。これにより、分離器からの磁性フロックの剥離を抑えることができるので、磁性フロックの回収効率が更に向上する。
【0023】
本発明は、前記目的を達成するために、廃水が貯留された原水タンクと、前記原水タンクから廃水が供給されて該廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合する急速攪拌槽と、前記急速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水と高分子凝集剤とを混合することにより廃水中に磁性フロックを生成する緩速攪拌槽と、前記緩速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水中の前記磁性フロックを廃水から分離する本発明の磁気分離装置と、を備えたことを特徴とする廃水処理装置を提供する。
【0024】
本発明は、前記目的を達成するために、原水タンクに貯留された廃水を急速攪拌槽に供給する工程と、前記急速攪拌槽内において前記廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合して緩速攪拌槽に供給する工程と、前記緩速攪拌槽内に供給された前記廃水と高分子凝集剤とを攪拌して廃水中に磁性フロックを生成し、該廃水を磁気分離装置に供給する工程と、前記磁気分離装置に供給された前記廃水から本発明の磁気分離方法により磁気フロックを分離する工程と、を備えていることを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法によれば、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみによって清澄な処理水を得ることができる。これにより、磁気分離装置及び廃水処理装置の設置面積を省スペース化でき、特に、設置スペースが限定された洋上構造物に設置される廃水処理設備に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態の磁気分離装置が適用された廃水処理装置12の構造を示したブロック図
【図2】第1の実施の形態の磁気分離装置の平面図
【図3】図2に示した磁気分離装置の正面図
【図4】図3に示した磁気分離装置の右側面図
【図5】図2のA−A線に沿う磁気分離装置の断面図
【図6】図2のB−B線に沿う磁気分離装置の断面図
【図7】サンプルの除去率の実験結果を示したグラフ
【図8】第2の実施の形態の磁気分離装置の平面図
【図9】図8に示した磁気分離装置の正面図
【図10】従来の廃水処理装置の構成を示すブロック図
【図11】従来の磁気分離装置の平面図
【図12】図11に示した磁気分離装置の正面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明に係る磁気分離装置及び磁気分離方法並びに廃水処理装置及び廃水処理方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、実施の形態の磁気分離装置10が適用された廃水処理装置12の構造を示したブロック図である。
【0029】
この廃水処理装置12は、廃水の処理系統の上流側から下流側に向けて原水タンク14、急速攪拌槽16、緩速攪拌槽18、及び磁気分離装置10が配置されて構成される。
【0030】
被処理水である廃水(浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水)は、まず、原水タンク14から、原水ポンプ20により急速攪拌槽16に送水される。次に、急速攪拌槽16では、無機の凝集剤、例えばPAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム等が、無機凝集剤注入ポンプ(図示せず)によって無機凝集剤槽22から加えて、急速に攪拌が行われる。ここで、急速の攪拌によって浮遊物質や油粒子の衝突頻度が高まる中で凝集剤の効果によってマイクロフロックと呼ばれる多数の小さな塊が形成される。次いで、急速攪拌槽16の内部、又は急速攪拌槽16を出たところで、磁性粉注入ポンプ(図示せず)により磁性粉槽24から、マグネタイト等の磁性粉が廃水に添加される。そして、磁性粉と前記マイクロフロックを含む廃水は、急速攪拌槽16を出た後、緩速攪拌槽18に流入する。ここで、高分子ポリマー(高分子凝集剤)を、ポンプ(図示せず)により高分子ポリマータンク26から緩速攪拌槽18に注入し、緩速攪拌槽18内で低速で攪拌して磁性フロックを成長させる。この場合の高分子ポリマーはアニオン系が望ましく、例えばポリアクリルアミドが適している。ポリアクリルアミドの場合は粉末で保管しておき、フィーダで定量高分子ポリマータンク26に注入して攪拌する構造が考えられる。また、上記例は、無機凝集剤とアニオン系高分子ポリマーを使用する例を示したが、無機凝集剤を使用せずにカチオン系の高分子ポリマーのみを使用する場合でも以下の効果は同様となる。上記のように形成された磁性フロックは、緩速攪拌槽18から磁気分離装置10に送水され、ここで磁性フロックと処理水とが分離される。以上が廃水処理装置12による廃水処理の流れである。
【0031】
図2〜図6には、第1の実施の形態に係る磁気分離装置10が示されている。すなわち、図2は磁気分離装置10の平面図、図3は、図2に示した磁気分離装置10の正面図、図4は、図3に示した磁気分離装置10の右側面図、図5は、図2のA−A線に沿う磁気分離装置10の断面図、図6は、図2のB−B線に沿う磁気分離装置10の断面図である。
【0032】
磁気分離装置10は、ディスク型の磁気分離装置である。すなわち、磁気分離装置10の分離槽30内には、内部に永久磁石が備えられた磁力を有する2枚の円盤状ディスク32、34が所定の間隔で配置されている。このディスク32、34は、その中央部に軸36が固定され、この軸36が不図示のモータによって回転されることにより、ディスク32、34が図5の反時計回り方向に回転される。また、ディスク32、34は、分離槽30内に廃水が流入した際に、その下半分が廃水に水没されるようにその高さ位置が設定されている。なお、永久磁石に代えて電磁石をディスク32、34に設けてもよい。また、ディスクの枚数は2枚に限定されるものではなく、3枚以上であってもよい。
【0033】
分離槽30は、断面略半円弧状に構成された槽である。分離槽30の上部壁面の両壁面のうちディスク32、34の回転方向上流側に位置する一壁面30Aに廃水の供給部38が設けられている。また、分離槽30の上部両壁面のうちディスク32、34の回転方向下流側に位置する他壁面30Bに処理水の排出部40が設けられている。
【0034】
廃水の供給部38は、パイプ状に構成された送液管路であり、一壁面30Aの開口部に固着されている。また、同様に排出部40もパイプ状に構成された送液管路であり、他壁面30Bの開口部に固着されている。更に、供給部38及び排出部40は、同一水平面内に配置されている。更にまた、供給部38における廃水の供給量と排出部40における処理水の排出量とは、図5の如く分離槽30内において、ディスク32、34の略下半分が水没される液面レベルを維持するようにバランスされている。
【0035】
よって、供給部38から分離槽30に供給された廃水は、つまり、凝集処理された磁性フロックを含む廃水は、分岐することなく排出部40に向けて一経路に沿って流れるとともに、その経路においてディスク32、34の回転方向と同一方向に流れる。そして、前述したように、分離槽30内における廃水の液面レベルは、ディスク32、34の略下半分が水没されるレベルに維持されているので、分離槽30内における廃水の水流方向とディスク32、34の回転方向が反対になる部分は存在しない。
【0036】
なお、分離槽30の形状の関係で、供給部38を分離槽30の一壁面30Aに設け、排出部40を他壁面30Bに設けたが、これに限定されるものではない。つまり、分離槽30が断面半円弧状のものであれば、その分離槽の上部両端のうちディスク32、34の回転方向上流側に位置する一端部に供給部38を設け、上部両端のうちディスク32、34の回転方向下流側に位置する他端部に排出部40を設ければよい。また、ディスク32、34の回転方向と分離槽30内における廃水の水流方向とが同一となるのであれば、供給部38及び排出部40の設置位置は上記位置に限定されるものではない。例えば、供給部38及び排出部40の位置を同一水平面上の位置から高さ方向にずらして設けてもよい。
【0037】
一方で分離槽30に供給された廃水は、その廃水中の磁性フロックが、回転しているディスク32、34に磁力によって付着する。ディスク32、34に付着した磁性フロックは、水面から上昇した位置で、ディスク32とディスク34との間に配置されたスクレーパ42によって、ディスク32、34の回転時に掻き取られる。そして、掻き取られた磁性フロックは、図2に示すようにスクレーパ42に沿って設けられたスパイラル形状の汚泥掻き取り器44によって掻き取られて磁気分離装置10の外部に排出される。以上が磁気分離装置10の作用である。
【0038】
したがって、このように構成された磁気分離装置10によれば、分離槽30内における廃水の流れ方向と、回転するディスク32、34の回転方向が同一であるため、ディスク32、34に付着した磁気フロックを剥離させる力が大幅に減少し、ディスク32、34による磁気フロックの回収効率が大幅に向上する。この効果によって、従来必要としたフィルタが不要になるので、磁気分離装置10の設置スペースを省スペース化することができる。
【0039】
また、この磁気分離装置10が設置された廃水処理装置12においても、前記フィルタが不要なので、廃水処理装置12の設置スペースを省スペース化することができる。特に、設置スペースが限定された洋上プラットフォーム等の洋上構造物に設置される廃水処理設備に好適でなる。
【0040】
図7に廃水処理実験の結果を示す。
【0041】
図7の横軸の相対速度は、分離槽30内の廃水の平均流速に対するディスク32、34の外周部の速度(最大周速)の比である。相対速度100%は、廃水平均流速とディスク32、34の最大周速が同一であることを示し、相対速度が100%より大きいことは、ディスク32、34の最大周速が廃水平均流速より大きいことを示し、相対速度が100%より小さいことは、ディスク32、34の最大周速が廃水平均流速より小さいことを示す。
【0042】
図7の縦軸は廃水の浮遊固形物除去率を示す。
【0043】
サンプル1のRUN1は、相対速度が小さい程、浮遊固形物除去率が良好であった。
【0044】
サンプル2のRUN2は、相対速度が100%の時、最も浮遊固形物除去率が良好であり、相対速度が100%より大きい時、あるいは100%より小さい時は、わずかではあるが浮遊固形物除去率は低下した。
【0045】
サンプル3のRUN3は、相対速度が80%程度の時、最も浮遊固形物除去率が良好であった。
【0046】
以上の結果から、相対速度が100%以下であることが好ましい。このような実験結果が得られた原因は以下の理由による。つまり、ディスク32、34の表面に付着した磁性フロックが水中で受ける力は、廃水の流速、ディスク32、34の回転速度によって決まる。その際に、ディスク32、34に付着した磁性フロックが水面上に引上げられる際に受ける力は、相対速度が100%以下の場合に最も小さくなることにある。換言すれば、相対速度が100%より大きくなると、ディスク32、34に付着したフロックが水面上に引上げられる際に受ける力が大きくなるため、フロックがディスク32、34の表面から剥離する比率が増加し、浮遊固形物除去率が低下する。
【0047】
また、ディスク32、34に付着した磁性フロックは、ディスク32、34の回転によって廃水の水面から上昇して離水した際に、重力の影響を大きく受けるため、ディスク32、34から離れようとする。そこで、ディスク32、34の最大周速を、分離槽30内の廃水の流速以下に設定すると、磁性フロックが離水しようとした際に、廃水の流勢によって磁性フロックをディスク32、34とともに上方に押し上げる力が磁性フロックに加わる。これにより、ディスク32、34からの磁性フロックの剥離を抑えることができるので、磁性フロックの回収効率が更に向上する。
【0048】
具体的には、図2〜図6に示した2枚のディスク32、34の直径を900mmとし、ディスク32、34の間隔を50mmとし、ディスク間に直径300mmのディスクを押える通水路とならない円盤があるとした場合、処理水量が7.3m3/hの時、分離槽30内の廃水の平均流速は0.135m/sとなる。このため、ディスク32、34の最大周速を0.068〜0.135m/s(相対速度約50%〜100%以下)とすることが好ましい。
【0049】
図8、図9に第2の実施の形態の磁気分離装置50を示す。なお、図8は、磁気分離装置50の平面図であり、図9は、磁気分離装置50の正面図である。
【0050】
これらの図に示す磁気分離装置50は、図2〜図6に示したディスク32、34に代えてドラム52としたものである。
【0051】
ドラム52の表面には磁石片が密に取り付けられている。このドラム52は、断面円弧形状の分離槽54に下半分が水没するように配置されている。また、ドラム52の側面には軸56が固定され、この軸56が不図示のモータに連結されている。このモータを駆動することにより、ドラム52は図9において反時計回り方向に所定の速度で回転駆動されている。
【0052】
分離槽54の上部両端のうちドラム52の回転方向上流側に位置する一端部には廃水の供給部58が設けられ、上部両端のうちドラム52の回転方向下流側に位置する他端部には排出部60が設けられている。なお、ドラム52の回転方向と分離槽54内における廃水の水流方向とが同一となるのであれば、供給部58及び排出部60の設置位置は上記位置に限定されるものではない。
【0053】
ドラム52の表面に磁力により付着した磁性フロックは、水面上の位置でスクレーパ62によって掻き取られ、スクレーパ62に沿って下方部に集められる。例えば、ドラムの直径を600mmとし、ドラムの長さを600mmとし、通水路高さを25mmとし、処理水量を7.3m3/hとした場合、分離槽内の廃水の平均流速は0.135m/sとなるため、ドラム外周速度を0.068〜0.135m/s(相対速度約50%〜100%以下)とすることが好ましい。
【0054】
図2〜図6に示したディスク型の磁気分離装置10では、ディスク間にスクレーパ42、汚泥掻き取り器44がそれぞれ必要であるが、図8、図9に示したドラム型の磁気分離装置50によれば、スクレーパ62のみで汚泥を回収できるため、装置構造を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…磁気分離装置、12…廃水処理装置、14…原水タンク、16…急速攪拌槽、18…緩速攪拌槽、20…原水ポンプ、22…無機凝集剤槽、24…磁性粉槽、26…高分子ポリマータンク、30…分離槽、32、34…ディスク、36…軸、38…供給部、40…排出部、42…スクレーパ、44…汚泥掻き取り器、50…磁気分離装置、52…ドラム、54…分離槽、56…軸、58…供給部、60…排出部、62…スクレーパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集した磁性フロックを含有する廃水が供給される分離槽と、該分離槽内に配設されて回転されながら前記磁性フロックを磁力によって吸着するディスク状又はドラム状の分離器と、前記分離器に吸着された前記磁性フロックを回収する回収手段とを備えた磁気分離装置において、
前記分離器は、前記分離槽内の前記廃水に下方部が水没されるとともに、該分離槽の廃水中での回転方向が、該分離槽内で流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定されていることを特徴とする磁気分離装置。
【請求項2】
前記分離槽は断面半円弧状であり、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部に前記廃水の供給部が設けられ、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部に処理水の排出部が設けられている請求項1に記載の磁気分離装置。
【請求項3】
前記分離器の最大周速が、前記分離槽内の廃水の流速以下に設定されている請求項1又は2に記載の磁気分離装置。
【請求項4】
廃水が貯留された原水タンクと、
前記原水タンクから廃水が供給されて該廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合する急速攪拌槽と、
前記急速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水と高分子凝集剤とを混合することにより廃水中に磁性フロックを生成する緩速攪拌槽と、
前記緩速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水中の前記磁性フロックを廃水から分離する、請求項1、2又は3に記載の磁気分離装置と、
を備えたことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項5】
凝集した磁性フロックを含有する廃水を分離槽に流入させて、前記分離槽内に配設されたディスク状又はドラム状の分離器を回転させながら前記磁性フロックを前記分離器の磁力によって吸着し、前記分離器に吸着された前記磁性フロックを回収手段によって回収する磁気分離方法において、
前記分離槽内の前記廃水に前記分離器の下方部を水没させるとともに、該分離槽の廃水中での前記分離器の回転方向を、該分離槽に流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定したことを特徴とする磁気分離方法。
【請求項6】
前記分離槽を断面半円弧状に構成し、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部から前記廃水を前記分離器に供給し、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部から処理水を排出する請求項5に記載の磁気分離方法。
【請求項7】
前記分離器の最大周速を、前記分離槽内の廃水の流速以下に設定する請求項5又は6に記載の磁気分離方法。
【請求項8】
原水タンクに貯留された廃水を急速攪拌槽に供給する工程と、
前記急速攪拌槽内において前記廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合して緩速攪拌槽に供給する工程と、
前記緩速攪拌槽内に供給された前記廃水と高分子凝集剤とを攪拌して廃水中に磁性フロックを生成し、該廃水を磁気分離装置に供給する工程と、
前記磁気分離装置に供給された前記廃水から、請求項5、6又は7に記載された磁気分離方法により磁気フロックを分離する工程と、
を備えていることを特徴とする廃水処理方法。
【請求項1】
凝集した磁性フロックを含有する廃水が供給される分離槽と、該分離槽内に配設されて回転されながら前記磁性フロックを磁力によって吸着するディスク状又はドラム状の分離器と、前記分離器に吸着された前記磁性フロックを回収する回収手段とを備えた磁気分離装置において、
前記分離器は、前記分離槽内の前記廃水に下方部が水没されるとともに、該分離槽の廃水中での回転方向が、該分離槽内で流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定されていることを特徴とする磁気分離装置。
【請求項2】
前記分離槽は断面半円弧状であり、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部に前記廃水の供給部が設けられ、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部に処理水の排出部が設けられている請求項1に記載の磁気分離装置。
【請求項3】
前記分離器の最大周速が、前記分離槽内の廃水の流速以下に設定されている請求項1又は2に記載の磁気分離装置。
【請求項4】
廃水が貯留された原水タンクと、
前記原水タンクから廃水が供給されて該廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合する急速攪拌槽と、
前記急速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水と高分子凝集剤とを混合することにより廃水中に磁性フロックを生成する緩速攪拌槽と、
前記緩速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水中の前記磁性フロックを廃水から分離する、請求項1、2又は3に記載の磁気分離装置と、
を備えたことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項5】
凝集した磁性フロックを含有する廃水を分離槽に流入させて、前記分離槽内に配設されたディスク状又はドラム状の分離器を回転させながら前記磁性フロックを前記分離器の磁力によって吸着し、前記分離器に吸着された前記磁性フロックを回収手段によって回収する磁気分離方法において、
前記分離槽内の前記廃水に前記分離器の下方部を水没させるとともに、該分離槽の廃水中での前記分離器の回転方向を、該分離槽に流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定したことを特徴とする磁気分離方法。
【請求項6】
前記分離槽を断面半円弧状に構成し、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部から前記廃水を前記分離器に供給し、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部から処理水を排出する請求項5に記載の磁気分離方法。
【請求項7】
前記分離器の最大周速を、前記分離槽内の廃水の流速以下に設定する請求項5又は6に記載の磁気分離方法。
【請求項8】
原水タンクに貯留された廃水を急速攪拌槽に供給する工程と、
前記急速攪拌槽内において前記廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合して緩速攪拌槽に供給する工程と、
前記緩速攪拌槽内に供給された前記廃水と高分子凝集剤とを攪拌して廃水中に磁性フロックを生成し、該廃水を磁気分離装置に供給する工程と、
前記磁気分離装置に供給された前記廃水から、請求項5、6又は7に記載された磁気分離方法により磁気フロックを分離する工程と、
を備えていることを特徴とする廃水処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−121033(P2011−121033A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283045(P2009−283045)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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