説明

磁気式エンコーダスケール

エンコーダスケールを作成するための方法が記載される。好ましい具体例において、エンコーダスケールは、空圧または液圧シリンダ(30)に使用されるピストンロッド(32)である。方法は、第一の材料(例えば、鋼)から形成されるエンコーダスケール部材(12)に所要の溝パターンを画定するマスク(10)を提供する工程、エンコーダスケール部材(12)の外表面に、複数の溝(16)を形成するため、マスクを介して、エンコーダスケール部材(12)から材料をエッチングする工程を含む。銅(18)のような第二の材料が、その後、実質的に溝(16)を満たすように、エンコーダスケール部材(12)に沈着され、第二の材料は、第一の材料とは異なる透磁性を有する。機械加工工程(例えば、研磨)が、その後、どの過剰の第二の材料をも除去し、それにより、実質的に滑らかな外表面(20)を有するエンコーダスケール部材(12)を提供するために用いられる。クロム(20)のような金属でエンコーダスケール部材の外表面をコーティングする工程が、その後に実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気式エンコーダスケールに関し、特に、ケーシング内のピストンロッドの長手方向位置が計測されるのを可能にする一連の磁気目盛りを有するピストンロッドを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧および空圧シリンダは知られており、多くの大きな負荷の機械用途において広く使用されている。典型的な液圧シリンダは、加圧されたシリンダを画定するケーシングとケーシング内を滑動可能なピストンロッドを含む。ピストンロッドとピストンロッドが延びるケーシング内の開口の間の液体シールが、加圧された液圧液体の漏れを防止するために設けられる。ピストンロッドの表面に対するどんな損傷も、液体シールを危うくし、したがって、液圧液体の漏れをもたらす。
【0003】
多くの用途において、ケーシングに対するピストンロッドの位置が計測されるのを可能にする計測システムを液圧シリンダに組み込むことが望まれる。そのような計測システムのどれもが、かなり大きな機械力と衝撃を受ける、過酷な汚い環境で作動することをしばしば求められるので、高度に頑丈でなければならない。磁気式エンコーダを組み込んだ液圧シリンダは、したがって、これまで、シリンダケーシングに取付けられた磁気変換器がピストンロッドに沿って形成された磁気スケールパターンを読むように提案されてきた。公知の液圧シリンダの例は、特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
特許文献1は、複数のホールセンサ素子が、埋め込まれた受動の磁気スケールを含むピストンロッドをスキャンする液圧シリンダを記載している。ピストンロッドは、そこに形成された一連の円周上の溝を有する鋼製のコアを含む。溝を満たすために、保護用の外層セラミックコーティングがピストンロッドに設けられる。セラミックコーティングは、液圧シリンダのケーシングとの必要な流体シールを提供する、滑らかな外側棒表面を提供するように、研磨され、および、磨かれる。
【0005】
特許文献2は、その長さに沿う、複数の並んでいるコード化されたトラックを有するピストンロッドを含む液圧シリンダまたはラムを記載している。トラックは、ケーシングに対するピストンロッドの絶対位置が定められるのを可能にする2値パターンをエンコードする。一つの具体例において、受動の磁気スケールは、要求されるスケールパターンを形成するために鋼棒の表面の一部をフォトエッチングすることによって形成される。その後、クロム層が、鋼棒に適用され、表面研磨プロセスが、要求される滑らかな表面に仕上げることをもたらすため、クロムの起伏を研磨して除くために使用される。
【0006】
特許文献3は、クロムの外部コーティングを有するピストンロッドの形成を記載している。特に、特許文献3は、強磁性体の棒の表面に、正弦曲線的に変化する表面形状を研磨することを記載している。非磁性材料の層が鋼棒の表面に沈着され、表面研磨プロセスが、滑らかな外部クロムコーティングを提供するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/155800号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2096421号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0214952号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、したがって、受動の磁気スケールトラックが埋め込まれた(ピストンロッドのような)エンコーダスケールを作成する改良された方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様によれば、エンコーダスケールを作成する方法は、
(a)第一材料から形成されるエンコーダスケール部材に、所要の溝のパターンを画定するマスクをもたらす工程、
(b)エンコーダスケール部材の外表面に複数の溝を形成するために、マスクを介して、エンコーダスケール部材から材料をエッチングする工程、
(c)実質的に溝を満たすためにエンコーダスケール部材に第二材料を沈着する工程であって、第二材料が、第一材料と異なった透磁性を有する工程、
(d)過剰の第二材料を除去し、それによって、実質的に滑らかな外表面を有するエンコーダスケール部材を提供するために、機械加工を用いる工程、および、
(e)金属で、エンコーダスケール部材の外表面をコーティングする工程、
を含む。
【0010】
方法は、その後にエンコーダスケール部材にエッチングされる溝のパターンを画定するために、(何も形成されていない)エンコーダスケール部材に形成されるマスクを用いることを含む。エンコーダスケール部材は、第一の(例えば、磁性体の)材料と、第二の(例えば、非磁性体の)材料で満たされる、それに形成された溝を含み、したがって、磁気的な性質を変化させる領域を有するエンコーダスケール部材を提供する。この第二の材料は、金属の外層を沈着させる前に、滑らかな表面を提供するために、機械加工される(例えば、何も形成されていないエンコーダスケール部材の表面レベルに戻すように研磨されるか、または、ブローチ研削される。)。
【0011】
工程(e)において提供される金属の外層は、好ましくは、硬く、非磁性体である。有利には、金属は、使用中に削り取られたり、ひびが入ってしまったりする、特許文献1に記載されたタイプのセラミック層よりも、著しく堅牢で、損傷に抵抗性のある、クロムまたは同様の金属を含む。本発明が、ピストンロッドの形状のエンコーダスケールを形成することに適用されるならば、外部金属表面の増大した堅牢性は、ピストンロッドと結合されたシリンダケーシングの間の流体シールが、使用中に機能しなくなる危険を大いに減少する利点を有する。
【0012】
クロムおよびその類似物のような硬い金属は、過酷な環境で作動されるピストンロッドの外部保護コーティングとして理想的であるが、クロムの硬さは、また、そのような材料を機械加工するのが難しく、コストがかかることを意味する。また、薄くて均一なクロム層を沈着することに関連した実際の困難性があり得る。本発明の方法は、溝を満たすために、好ましくは、クロムより柔らかで、および/または、容易に機械加工される、第二の材料を用いることで、これらの問題を克服する。この第二の材料は、金属(例えば、クロム)の単層または複層が容易に沈着され得る滑らかな表面を提供するために、機械加工(例えば、研磨)される。本発明は、したがって、クロム層を研磨する工程を要求せず、棒の溝を満たすために十分に厚くクロム層を沈着させ、また、それが滑らかに研磨された後、適切に厚い保護層を設ける必要がないという、特許文献2に記載されたタイプの方法を超える利点を有する。
【0013】
加えて、本発明のエッチング技術に基くマスクは、エンコーダスケール部材に形成されるどんな所要の溝パターンでもほとんどは許容する。特に、そのようなプロセスは、絶対位置情報をエンコードする複雑な(例えば、複数の水準の)溝構造を可能にする。本発明は、したがって、種々のコーティングが、正弦曲線の溝構造を提供するために研磨された棒の全表面に適用される、特許文献3に記載されたタイプの技術を用いて可能となるよりも、(例えば、絶対位置をエンコードするための)より複雑な溝構造を提供することができる。
【0014】
有利には、工程(a)は、マスクを形成するために(何も形成されていない)エンコーダスケール部材の外表面に、レジスト層を堆積する工程を含む。レジストは、どんな好適な材料でもあり得る。例えば、レジストは、金属(例えば、金のような不活性金属)、重合体またはエポキシ樹脂等を含む。工程(a)は、また、好ましくは、所要の溝パターンを画定するマスクを提供するために、(例えば、レーザーを用いてレジスト層の一部を除去することによって)堆積されたレジスト層をパターン化することを含む。エッチング工程(b)は、その後、マスクを介して、何も形成されていないエンコーダスケール部材から材料をエッチングあるいは除去し、それによって、溝の所要のパターンを形成するために実施され得る。エッチング工程は、例えば、光学、化学またはプラズマエッチングを含み得る。有利には、化学的エッチング工程(例えば、噴霧エッチング)が実施される。
【0015】
便利には、工程(c)は、(例えば、レジスト)マスクを介して、第二の材料でエッチングされた溝を満たすことを含む。電解めっき技術が、溝内に材料を沈着させるために有利に使用される。沈着される第二の材料の深さは、棒の溝の深さより大きいことが好ましい。このことは、溝が、完全に満たされるか、わずかに過剰充填されることを確実にし、滑らかな表面が、工程(d)の機械加工工程中に提供され得ることを確実にする。有利には、工程(c)中に、溝の間の領域に第二の材料は沈着されない。
【0016】
有利には、エンコーダスケール部材からマスクの一部または全てを除去する工程が、工程(c)と(d)の間に実施される。例えば、レジストマスクは、エンコーダスケール部材から化学的に洗い落とされる。マスク、または、そのマスクの一部は、また、あるいは、代わりに、過剰の第二の材料と一緒に、機械加工工程(d)中に除去され得る。有利には、機械加工工程後に、溝の間の領域において、第二の材料が残らない(または、最小限の量が残る。)。
【0017】
上記において概説されたように、エンコーダスケール部材の第一の材料は、エンコーダスケール部材の溝を満たす第二の材料とは異なる透磁性を有する。第一および第二の材料は、それぞれ、非磁性体および磁性体であり得、逆も同様にあり得る。例えば、非磁性体(例えば、ステンレス鋼)のエンコーダスケール部材は、第二の(磁性体の)材料で満たされた溝を含む。そのような例において、第二の材料は、どんな磁性体材料をも含み得る。第二の材料は、また、高い透磁性を有する材料の粒子(例えば、高透磁性の金属ダスト)を含むキャリア材料(例えば、重合体またはエポキシ樹脂)を含み得る。
【0018】
好ましくは、(エンコーダスケール部材の)第一の材料は、磁性体であり、または、高い透磁性を有する。便利には、第一の材料は、鋼(磁性体である。)を含む。鋼は、例えば、液圧シリンダの用途の大部分に要求される機械的強度を有し、すでに、ピストンロッドを形成するために一般的に使用されているので、好ましい。便利には、(溝を満たすための)第二の材料は、実質的に非磁性体であり、または、低い透磁性を有する。第二の材料は、エポキシ樹脂、重合体、または、他の好適な材料を含み得る。有利には、第二の材料は金属である。好ましくは、第二の材料は、スズ、亜鉛および銅の少なくとも一つを含む。
【0019】
有利には、エンコーダスケール部材は、棒の形状である。好ましくは、棒は、実質的に円形の断面を有する。棒は、中実であり得、または、中空のコアを有し得る。棒は、液圧および/または空圧の用途におけるピストンロッドとしての内包物に適し得る。溝は、棒の周りに、完全に、または、部分的に延びる。有利には、溝は、棒の周りに円周上に及ぶ。換言すると、各々の溝は、便利には、放射面に配置され、放射面は、棒の長手方向軸に垂直な面である。この配置は、ピストンロッドが、磁気センサに対する一定の放射方向の姿勢を確実に維持することの必要性を除去し、すなわち、ピストンロッドの回転は、その結果、位置側定に影響しない。
【0020】
エンコーダスケール部材の溝は、いかなる所要の深さ、幅、配置および形状であり得る。溝は、全てが、同一であり得、または、複数の異なる形状を取り得る。溝は、エンコーダスケール部材に沿って、規則的に配置され得る。有利には、工程(b)で形成された溝は、絶対位置の測定を提供するパターンをエンコードする。例えば、溝は、絶対位置が決定され得る適切なコード化されたパターンのビット(例えば、2値のデータビット)を画定するように設けられ得る。
【0021】
好ましくは、工程(e)で沈着される金属は、硬く、および/または、非磁性体で、および/または、不活性である。有利には、工程(e)は、クロムの層を沈着することを含む。そのような例において、工程(e)は、実質的に滑らかなクロム表面を提供する。工程(e)で沈着された金属(例えば、クロム)層を磨く更なる工程が、任意に実施され得る。そのような磨き工程は、クロム仕上げの滑らかさおよび/または幾何学形状を、さらに改良し得る。
【0022】
本発明の第二の態様によれば、エンコーダスケールは、第一の材料から形成された部材であって、その外表面に複数の溝を有する前記部材、前記部材の溝を満たす第二の材料であって、前記第一の材料とは異なる透磁性を有しており、前記溝間の領域には存在しない前記第二の材料、および、前記部材および満たされた溝を被覆する金属コーティングであって、実質的に滑らかな外表面を備えるエンコーダスケールを提供する前記金属コーティングを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明は、また、液圧シリンダのためのピストンロッドを提供し、前記ピストンロッドは、第一の材料から形成された棒部材であって、その外表面に複数の溝を有する前記棒部材、棒部材の溝を満たす第二の材料であって、前記第一の材料とは異なる透磁性を有しており、前記溝間の領域には存在しない前記第二の材料、および、棒部材および満たされた溝を覆うクロムコーティングであって、実質的に滑らかな外表面を備えるピストンロッドを提供する前記クロムコーティングを含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の第三の態様によれば、エンコーダスケール部材を形成する方法は、(i)第一の材料から形成されたエンコーダスケール部材を取り、前記エンコーダスケール部材は、その外表面に複数の溝を有している工程、(ii)実質的に前記溝を満たすために、前記エンコーダスケール部材に第二の材料を沈着させ、前記第二の材料は、前記第一の材料とは異なる透磁性を有する工程、(iii)どんな過剰の第二の材料をも除去し、それにより、実質的に滑らかな外表面を有する前記エンコーダスケール部材を提供するための機械加工(例えば、研磨)プロセスを用いる工程、および、(iv)金属で前記エンコーダスケールの前記外表面をコーティングする工程を含み、工程(ii)は、前記溝に、前記第二の材料のみを沈着し、前記溝間の前記エンコーダスケールの領域には沈着させないことを含むことを特徴とする。
【0025】
本発明は、添付の図面を参照して、単に一例として、次に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための先行技術を示す図である。
【図1B】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための先行技術を示す図である。
【図1C】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための先行技術を示す図である。
【図2A】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための、本発明による方法を示す図である。
【図2B】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための、本発明による方法を示す図である。
【図2C】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための、本発明による方法を示す図である。
【図2D】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための、本発明による方法を示す図である。
【図2E】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための、本発明による方法を示す図である。
【図2F】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための、本発明による方法を示す図である。
【図2G】クロムがめっきされたピストンロッドを形成するための、本発明による方法を示す図である。
【図3】本発明のピストンロッドを組み込んでいる流体シリンダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
最初に図1A〜図1Cを参照すると、ピストンロッドを形成するための先行技術の方法が示される。特に、図1A〜図1Cは、特許文献2に記載されたタイプの先行技術を示す。
【0028】
先行技術の方法の第一工程が図1Aに示され、鋼棒の表面4に一連の溝2を形成することを含む。図1Bに示されるように、鋼棒の表面4は、その後、標準的なクロム電解めっき法を用いて、クロムの外層6で被覆される。このクロム層6は、鋼棒の溝2を満たすが、起伏のある表面形状を有する。第三工程は、起伏が除去され、図1Cに示されるような平坦な表面が得られるまで、クロム表面を研磨することを含む。
【0029】
この先行技術の方法は、溝の充填に起因する起伏を除去するために、硬いクロムの外層が研磨されねばならないという欠点を有している。非常に硬い材料であるがゆえに外側コーティングとして選択される、クロムを研磨することは困難である。
【0030】
図2Aから図2Gを参照して、本発明の方法が、これから説明される。図2Aから図2Gにおいて、明確性のため、棒のただ一つの表面の断面図が示されていることが留意されるべきであり、図示された各種の層および溝は、実際は、棒の周りで円周上に延びる。
【0031】
方法の工程Aは、図2Aに示され、鋼棒の表面12にレジスト10の層を堆積することを含む。レジストは、ドライまたは液状レジストを含む。好適なレジストは、例えば、1−プロパノール溶剤中の酸性共重合体、接着促進剤、カーボンブラックおよび紫外線吸収剤から形成された、液状のレジストである。これが、2μm以上の厚みを有するレジスト層を形成するために堆積され得る。
【0032】
レジスト層10をパターン化することを含む、工程Bが、その後に実行され、図2Bに示されるようなマスクを形成する。マスクは、溝を形成することが望まれる鋼棒の表面12の部分を露出させるように、レジスト層10の部分を除去することによってもたらされる。このパターン化工程は、レジスト層10の部分を選択的に除去(切断)するために、レーザーを用いて実行され得る。
【0033】
工程Cにおいて、鋼棒は、レジスト層10によって画定されるマスクを介して化学的にエッチングされ、図2Cに示されるように、棒の表面12に要求される溝16のパターンを形成する。好適な化学的エッチング液は、噴霧法によって適用される塩化第二鉄である。エッチング工程は、要求される溝の深さを提供するために正確にコントロールされ得る。例えば、約500μmのピッチと100〜200μmの深さを有する溝が、形成される。
【0034】
その後、電気めっき技術を用いて、銅18が棒に沈着される、工程Dが実行される。沈着される銅18の深さは、鋼棒の表面12に形成される各種の溝16を満たすより大きく選択される。したがって、図2Dに示されるように、銅18は、表面12内で、溝16から少しあふれ出る。レジストは、電気的に絶縁性であり、その結果、電気めっき中に、銅で被覆される傾向にないので、銅18は、主として、溝内に沈着され、レジストの層10の頂部には沈着されないことが留意されるべきである。
【0035】
図2Eは、残存するレジストを除去する(例えば、好適な溶剤を用いて)ことを含む、任意の工程Eが実行された後の、棒表面12から盛り上がっている銅を示す。その後、過剰の銅を(および残存するいかなるレジストも)除去し、したがって、図2Fに示されるような滑らかな外表面20を提供するために、棒の表面を研磨する工程Fが実行され得る。クロムと比較して相対的に柔らかな金属である銅は、必要な滑らかな表面に仕上げることをもたらすために容易に研削され得る。研削が説明されたけれども、どんな好適な機械加工(例えば、ブローチ削り)も用いられ得る。
【0036】
クロム層22が、その後、図2Gに示されるように、棒の滑らかな外表面20に沈着される。棒に対するクロム層22の接合性を改良するために、クロム沈着に先立って、ニッケル層を沈着する任意の工程が実施され得る。このクロム層22は、図1を参照して説明された先行技術の方法を用いて形成される起伏の存在しない、実質的に滑らかな外表面を有する。必要なら、任意のクロム研磨またはバフ仕上げが実施され得るけれども、クロムの研磨工程は不要である。クロムが、この例において説明されたが、適切に硬く、好ましくは非磁性のどんな金属でも使用され得る。
【0037】
上述のプロセスを用いて形成されたピストンロッドは、実質的に滑らかなクロム表面、および、鋼棒の溝に配置された銅の下面領域を有する。鋼は磁性体であり、一方、銅およびクロムは、双方とも、非磁性体である。ピストンロッドの磁気的性質は、したがって、図3を参照して以下に説明されるタイプの磁気センサ配列を用いて検出される形において、その長さに沿って変わる。溝の形成された鋼棒の使用は単に一つの例であり、他の材料から形成された棒が使用され得ることが念頭に置かれるべきである。加えて、銅以外の金属(例えば、スズまたは亜鉛のような、他の軟らかい、非磁性の金属)が、棒の溝を満たすために用いられ得る。非金属材料(例えば、エポキシ樹脂、重合体等)も、また、溝を埋めるために使用され得る。棒の材料および棒の溝を満たす材料は、しかしながら、好ましくは、異なる透磁性を有し、その結果、付随した磁気センサ素子は、ピストンロッドに関連した磁場強度のもたらされた変化を感知することによって、ピストンロッドの位置および/または移動を計測し得る。
【0038】
上述した溝のパターンは、実質的に規則的であり、ピストンロッドの長さに沿った繰り返しである。このタイプのピストンロッドは、したがって、センサとピストンロッドの間の相対的な(または増分の)移動量を計測する既知のタイプのいわゆる増分磁気センサと共に用いられ得る。代わりに、溝は、ピストンロッドに沿った一連のコードワード(2値コードワード)を規定する不規則なパターンで配置され得る。異なる深さおよび/または幅の溝が、また、データビットをエンコードするために用意され得る。ひいては、複数のそのようなコードワードを同時に読み、絶対位置を測定し得るように、既知のタイプの複数の素子センサ配列が、使用され得る。したがって本発明の方法は、ピルトンロッドにおけるどんな所要の形状の磁気スケールパターンを形成またはエンコードするために使用され得ることが理解され得る。
【0039】
図3を参照すると、図2Aから図2Gを参照して上述された方法を用いて製造されたピストンロッド32を組み込んだ液圧シリンダ30が示される。ピストンロッド32は、加圧されたシリンダケース34内を滑動可能である。液圧液体の供給は、流体供給パイプ36を介してケーシング34内へ、および、そこからポンプ注排され、ピストン端部38のケーシング34に対する前進および後退を可能にする。液体シール40が、ピストンロッド32の滑らかなクロム表面と係合するようにケーシング34に設けられ、液圧液体の漏れを防止する。液圧シリンダが示されるが、ピストンロッドは、また、他の(例えば、空圧の)ピストンタイプ配列または同種のものにおいて使用され得る。
【0040】
磁気センサ装置42が、ピルトンロッド32の近傍でケーシング34内の固定した位置に配置される。センサ装置42は、永久磁石46、および、磁石46とピルトンロッド32の間に配置された、複数の適切に間隔を空けられた、磁場センサ素子(例えば、ホールセンサ)44を含む。上述したように、溝はクロム層で被覆され、外部からは見ることができないことが留意されるべきであるが、ピストンロッドは、銅(非磁性材料)を含む鋼(磁性体)棒内の一連の溝を含んでおり、これらの溝の位置は、図3において、点線48によって示される。磁場センサ素子44は、しかしながら、銅の埋設された領域に近接するとき、鋼の領域に比較して異なる強度の磁場を受ける。センサ素子44からの出力信号は、したがって、ピストンロッド32のケーシング34に対する移動が計測されることを可能にする既知の方法に合成され得る。
【0041】
上述したように、より複雑な溝のパターンが、コードワードに関連した位置を形成する一連のビットを含むスケールパターンをエンコードするために用いられ得る。絶対位置センサ装置(例えば、平行なコードワードの複数のビットを計測するに十分な複数のセンサ素子を含む。)が、ケーシングに対する絶対的なピストンロッド位置情報を決定するために使用され得る。
【0042】
ピストンロッドの形状にあるエンコーダスケールを形成することが、上記において、詳細に説明されたが、本発明の技術は、どんな型の基材にも適用され得ることが留意されるべきである。例えば、本発明は、また、平坦なまたは平面の基材の形状にあるスケール部材をエンコードするために使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンコーダスケールを作成する方法であって、該方法が、
(a)第一材料から形成されるエンコーダスケール部材に、所要の溝のパターンを画定するマスクを与える工程、
(b)前記エンコーダスケール部材の外表面に複数の溝を形成するために、前記マスクを介して、前記エンコーダスケール部材から材料をエッチングする工程、
(c)実質的に前記溝を満たすために前記エンコーダスケール部材に第二材料を沈着する工程であって、前記第二材料が、前記第一材料と異なった透磁性を有する工程、
(d)過剰のどの前記第二材料をも除去し、それによって、実質的に滑らかな外表面を有する前記エンコーダスケール部材を提供するために、機械加工を用いる工程、および、
(e)金属で、前記エンコーダスケール部材の外表面をコーティングする工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、工程(a)が、前記エンコーダスケール部材の外表面にレジスト層を堆積する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2の方法であって、工程(a)が、所要の溝パターンを画定するマスクを提供するために、レジストの堆積層をパターン化することを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの方法であって、工程(c)が、前記マスクを介して、前記第二材料で前記エッチングされた溝を満たすことを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの方法であって、工程(c)と工程(d)の間に、前記エンコーダスケール部材から前記マスクを除去する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの方法であって、前記第一材料が、磁石であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6の方法であって、前記第一材料が鋼を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの方法であって、前記第二材料が、実質的に非磁性であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、前記第二材料が、スズ、亜鉛または銅の少なくとも一つを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの方法であって、前記エンコーダスケール部材が、実質的に円形の断面を有する棒の形状であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、工程(b)で形成された前記溝の各々が、前記棒の周りに円周方向に走っていることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかの方法であって、工程(b)で形成された前記溝が、絶対位置の目盛りを提供するパターンをエンコードすることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの方法であって、工程(e)が、クロムの層を沈着することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかの方法であって、工程(e)で沈着された金属層を磨く追加の工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
エンコーダスケールであって、該エンコーダスケールは、
第一材料から形成された部材であって、その外表面に複数の溝を有する前記部材、
前記部材の溝を満たす第二材料であって、前記第一材料とは異なる透磁性を有しており、前記溝間の領域には存在しない前記第二材料、および、
前記部材および満たされた溝を被覆する金属コーティングであって、実質的に滑らかな外表面を備える前記エンコーダスケールを提供する前記金属コーティング
を含むことを特徴とするエンコーダスケール。
【請求項16】
エンコーダスケール部材を作成する方法であって、該方法は、
(i)第一材料から形成された前記エンコーダスケール部材を取り、前記エンコーダスケール部材は、その外表面に複数の溝を有している工程、
(ii)実質的に前記溝を満たすために、前記エンコーダスケール部材に第二材料を沈着させ、前記第二材料は、前記第一材料とは異なる透磁性を有している工程、
(iii)どの過剰の第二材料をも除去し、それにより、実質的に滑らかな外表面を有する前記エンコーダスケール部材を提供するために機械加工を用いる工程、および、
(iv)金属で前記エンコーダスケール部材の前記外表面をコーティングする工程を含み、
工程(ii)は、前記溝にのみ、前記第二材料を沈着し、前記溝間の前記エンコーダスケール部材の領域には沈着させないことを含むことを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−515912(P2012−515912A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546935(P2011−546935)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000066
【国際公開番号】WO2010/086582
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【出願人】(504268043)
【Fターム(参考)】