説明

磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法及びアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体

【課題】巨大磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法及びアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体に関する。
【解決手段】巨大磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法は、従来の蛍光物質を利用した方法や遺伝子分析方法の代わりに、巨大磁気抵抗センサーを利用して簡単な方法でアルツハイマー病を容易に診断することができ、アルツハイマー病診断用バイオセンサーとして大量生産が可能なので、アルツハイマー病のモニタリングと治療に有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法及びアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)は、痴ほうの主要原因であり、最も一般的な退行性神経疾患である。事実上進行性疾患であるアルツハイマー病は、記憶能力、言語能力、状況判断能力及び認識能力の退化が特徴である。よく高齢の生理学的疾患と混同される症状の特性、このような症状の深刻性及びこのような症状の発生年齢は、個人ごとに異なる。そのため、アルツハイマー病の正確な病因や治療法も知らず、アルツハイマー病を初期に診断することは難しい実情である。
【0003】
アルツハイマー病の病理学的特徴としては、老人斑(senile plaques)、神経原線維(neurofibrillary tangles)及び神経細胞脱落(neuronal loss)を代表的に例示することができる。老人斑の大部分を占めている凝集されたアミロイドβタンパク質は、様々な実験証拠によってアルツハイマー病の主要病因として考えられている。
【0004】
アルツハイマー病を診断する方法には、様々な方法がある。特許文献1には、痴ほう(アルツハイマー病)の診断、予防及び治療剤並びにこれらのスクリーニング方法が記載されていて、具体的には、FcγRIIbとその変異体、FcγRIIb細胞外ドメインタンパク質、抗−FcγRIIb抗体、FcγRIIb特異的ペプチド及びFcγRIIb、特にsiRNAよりなる群から選択された結合抑制剤が、FcγRIIbとAβによる信号伝達、細胞内移動、神経毒性、細胞死滅度及び記憶力減退を減少させ、これにより、アルツハイマー病を診断、予防及び治療することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、血中など、生体試料検体中のβ−アミロイドの測定方法を研究し、アルツハイマー病の診断に応用することが記載されていて、β−アミロイド1−42のC末端部分を認識する抗体を使用する免疫測定法によって、生体試料検体中のβ−アミロイド1−42とβ−アミロイド1−42のC末端部分を保有するβ−アミロイド1−42断片の総量を測定することによって、アルツハイマー病の検定を可能にする方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、哺乳動物、特に人間のアルツハイマー疾患を検出するのに使用することができる方法及び組成物が記載されていて、特にアルツハイマー疾患用血清マーカー及び診断手続に使用される方法が記載されている。
上記方法は、光学的または化学的方法を使用するので、リアルタイム診断が困難であり、診断費用が高くて、且つアルツハイマー病診断キットの大量生産が不可能であるため、商用化が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許公開2009−0048192号公報
【特許文献2】大韓民国特許公開2007−0073778号公報
【特許文献3】大韓民国特許公開2009−0098941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、磁気抵抗センサーを利用してアミロイドβタンパク質を検出することによって、アルツハイマー病を従来の方法より簡単で且つ容易な方法で検出することができる方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断時に使用される磁気ビーズをタンパク質バイオマーカーと結合させることができるように前処理されたアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体を提供することにある。
【0010】
また、本発明のさらに他の目的は、磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断時に使用される磁気ビーズをポリタンパク質と結合させて、タンパク質バイオマーカーと結合されるアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法は、アルツハイマー病を誘発するタンパク質バイオマーカーと結合し得るように磁気ビーズを前処理する段階と、磁気抵抗センサーの上に診断対象細胞を配置する段階と、上記診断対象細胞の上部に上記前処理された磁気ビーズを配置し、外部磁場を印加して磁化させる段階と、上記前処理された磁気ビーズと上記タンパク質バイオマーカーとの結合の有無による磁場の変化を上記磁気抵抗センサーで検出し、上記診断対象細胞のアルツハイマー病の有無を判断する段階とを含むことを特徴とする。
【0012】
上記磁場の変化は、タンパク質バイオマーカーが存在し、磁気ビーズが結合された場合、磁気ビーズで発生する漂遊磁場により発生することができる。
【0013】
上記タンパク質バイオマーカーは、アミロイドβタンパク質であることができる。
【0014】
上記磁気ビーズは、直径が50nm〜5μmの範囲であることができる。
【0015】
上記前処理は、磁気ビーズをストレプトアビジンでコーティングさせ、ビオチンと結合させた後、ポリエチレングリコールを結合させることによって行われることができる。
【0016】
上記磁気抵抗センサーは、異方性磁気抵抗薄膜、巨大磁気抵抗薄膜、トンネル型磁気抵抗薄膜などを使用することができる。
【0017】
上記磁気抵抗センサーは、自由層(Free layer)、スペーサ(Spacer)、固定層(Pinned Layer)及びピンニング層(Pinning Layer)を含むことができる。
【0018】
上記磁気抵抗センサーは、十字状または棒状の形状であることができる。
【0019】
上記磁気抵抗センサーは、 酸化物(oxide)または窒化物薄膜層で保護されることができる。
【0020】
上記細胞は、アミロイドβタンパク質が蓄積されることができる脳細胞、嗅覚細胞、味覚細胞または視覚細胞であることができる。
【0021】
上記磁化は、磁気抵抗センサーの表面に対して外部磁場を垂直または水平方向に印加することによって行われることができる。
【0022】
また、本発明によるアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体は、磁気ビーズの周りは、ストレプトアビジンでコーティングされ、上記ストレプトアビジンは、ビオチンと結合し、上記ビオチンは、タンパク質バイオマーカーと結合されるためにリンカーが結合されたことを特徴とする。
【0023】
上記タンパク質バイオマーカーは、アミロイドβタンパク質である。
【0024】
上記リンカーは、ポリエチレングリコールなどを使用することができる。
【0025】
また、本発明によるアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体の製造方法は、磁気ビーズの周りをストレプトアビジンでコーティングする段階と、上記ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズをビオチンと結合させる段階と、上記ビオチンをリンカーと結合させる段階とを含み、上記リンカーは、タンパク質バイオマーカーと結合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法は、従来の蛍光物質を利用した方法や遺伝子分析方法の代わりに、巨大磁気抵抗センサーを利用して簡単な方法でアルツハイマー病を容易に診断することができる。
【0027】
また、本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病診断方法は、アルツハイマー病診断用バイオセンサーを大量で生産することができ、アルツハイマー病のモニタリングと治療に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法を示す工程流れ図である。
【図2】本発明によるアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体の製造方法を示す工程流れ図である。
【図3】本発明によるアルツハイマー病診断のための巨大磁気抵抗センサーを示す模式図である。
【図4】本発明によるアルツハイマー病診断のための巨大磁気抵抗薄膜構造を示す模式図である。
【図5】磁気ビーズを磁気抵抗センサーの表面に対して垂直方向に磁化する時に磁気ビーズの磁場方向を示す模式図である。
【図6】磁気ビーズを磁気抵抗センサーの表面に対して水平方向に磁化する時に磁気ビーズの磁場方向を示す模式図である。
【図7】本発明によるアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体を示す模式図である。
【図8】本発明による巨大磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法において、アルツハイマー病を誘発するタンパク質バイオマーカーと結合し得るように磁気ビーズ(magnetic bead)を前処理する工程が必要である。
【0030】
この時、上記タンパク質バイオマーカーは、アミロイドβタンパク質であり、上記タンパク質バイオマーカーは、表面に存在する細胞を使用することができる。
【0031】
また、上記磁気ビーズは、アルツハイマー病を誘発させるものと知られたアミロイドβタンパク質と選択的に結合させるために、ストレプトアビジンでコーティングした後、ビオチンと選択的に結合させ、ポリエチレングリコールなどのようなリンカーを利用してアミロイドβタンパク質と結合し得るように前処理工程が行われる。上記磁気ビーズは、50nm〜5μm範囲の直径を有することが好ましい。仮に、上記磁気ビーズの直径が50nm未満の場合には、磁気ビーズで発生する漂遊磁場を感知しにくいという問題があり、5μmを超過する場合には、細胞表面に存在するアミロイドβと結合しにくいという問題がある。
【0032】
上記前処理を通じて、磁気ビーズは、アミロイドβタンパク質と選択的に結合することができる。すなわち、アルツハイマー病の場合には、アミロイドβタンパク質を含んでいるので、磁気ビーズと結合し、正常細胞の場合には、磁気ビーズと結合しない。
【0033】
本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法において、磁気抵抗センサーの上に診断対象細胞を配置する工程を行う。
【0034】
上記磁気抵抗センサーは、異方性磁気抵抗薄膜、巨大磁気抵抗薄膜、トンネル型磁気抵抗薄膜などを使用することができ、上記巨大磁気抵抗薄膜は、小さい磁場でも5〜10%の大きい抵抗変化を得ることができるスピンバルブ薄膜を使用することができる。
【0035】
上記磁気抵抗センサーは、自由層、スペーサ、固定層及びピンニング層を含み、十字状または棒状の形状であることができる。
【0036】
また、上記磁気抵抗センサーは、酸化物または窒化物薄膜層で保護されることができ、上記磁気抵抗センサーの上に配置される細胞は、アミロイドβタンパク質が蓄積されることができる脳細胞、嗅覚細胞、味覚細胞または視覚細胞であることが好ましい。
【0037】
本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法において、上記診断対象細胞の上部に上記前処理された磁気ビーズを配置し、外部磁場を印加して磁化させる工程を行う。
【0038】
上記前処理された磁気ビーズは、外部印加磁場を磁気抵抗センサーの表面に対して垂直または水平方向に印加して磁化させ、磁化によって磁気ビーズから微細な漂遊磁場が発生する。
【0039】
本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法において、上記前処理された磁気ビーズと上記タンパク質バイオマーカーとの結合の有無による磁場の変化を上記磁気抵抗センサーで検出し、上記診断対象細胞のアルツハイマー病の有無を判断することによって、アルツハイマー病を診断することができる。
【0040】
アミロイドβタンパク質と結合された磁気ビーズは、外部磁場による磁化によって発生する漂遊磁場による磁場の変化を磁気抵抗センサーを利用して感知することができ、アミロイドβタンパク質の存在を検出することができる。したがって、磁気抵抗センサーに供給される印加電圧と出力電圧の変化による磁気抵抗センサーの磁気抵抗値をもってアルツハイマー病の有無を判断することができる。この時、アミロイドβタンパク質の数が増加するにつれて、結合された磁気ビーズの数も増加するので、磁気抵抗値は、線形的に変化する。
【0041】
また、本発明は、磁気ビーズの周りがストレプトアビジンでコーティングされ、上記ストレプトアビジンがビオチンと結合され、上記ビオチンは、タンパク質バイオマーカーと結合するためにリンカーが結合されたことを特徴とするアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体を提供する。
【0042】
上記タンパク質バイオマーカーは、アミロイドβタンパク質であることが好ましく、上記リンカーは、ポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0043】
また、本発明は、磁気ビーズの周りをストレプトアビジンでコーティングする段階と、上記ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズをビオチンと結合させる段階と、上記ビオチンをリンカーと結合させる段階とを含み、上記リンカーは、タンパク質バイオマーカーと結合されることを特徴とするアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体の製造方法を提供する。
【0044】
〔実施例1〕
磁気ビーズ前処理段階(S100)
アルツハイマー病を誘発するタンパク質バイオマーカーを感知するために、直径が約100nmの磁気ビーズを前処理した。上記前処理は、磁気ビーズの周りをストレプトアビジン(Streptavidin)でコーティングした後、上記ストレプトアビジンをビオチン(Biotin)と結合させ、上記ビオチンは、アミロイドβ(Amyloid-beta)タンパク質バイオマーカーと結合するために、リンカーとしてのポリエチレングリコール(Poly(ethylene glycol))と結合させた。上記前処理を通じて、磁気ビーズは、アミロイドβタンパク質と選択的に結合し、アルツハイマー病の場合には、アミロイドβタンパク質を含んでいるので、磁気ビーズと結合し、正常細胞の場合には、磁気ビーズと結合しない。
【0045】
診断対象細胞配置段階(S110)
酸化物薄膜層で保護されているスピンバルブ構造の巨大磁気抵抗センサーの上部の一面にアミロイドβタンパク質が蓄積されることができる脳細胞を配置し、上記巨大磁気抵抗センサーは、自由層、スペーサ、固定層及びピンニング層を含む棒状を使用した。
【0046】
磁気ビーズ磁化段階(S120)
上記巨大磁気抵抗センサーの上に上記前処理された磁気ビーズを配置し、外部磁場を印加した。上記前処理された磁気ビーズは、磁気抵抗センサーの表面に対して垂直方向に外部磁場を印加し、外部磁場によって磁化した磁気ビーズで微細な漂遊磁場が発生した。
【0047】
アルツハイマー病有無判断段階(S130)
アミロイドβタンパク質と結合された磁気ビーズは、外部磁場による磁化によって発生する漂遊磁場による磁場の変化を巨大磁気抵抗センサーで感知することができ、正常細胞が存在する時の磁気抵抗値とアルツハイマー病細胞が存在する時の磁気抵抗値とを比較し、アルツハイマー病を診断した。この時、アミロイドβタンパク質の数が増加するにつれて、結合された磁気ビーズの数も増加するので、磁気抵抗値は線形的に変化した。
【0048】
〔実施例2〕
100nm直径の磁気ビーズの周りをストレプトアビジンでコーティングした後(S200)、上記ストレプトアビジンは、ビオチンと結合させ(S210)、上記ビオチンをアミロイドβタンパク質と結合させるためにポリエチレングリコールと結合させ(S220)、アルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体を製造した。
【0049】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳しく説明する。ここで、繰り返される説明、本発明の要旨を不明瞭にすることができる公知機能及び構成に関する詳細な説明は省略する。本発明の実施形態は、この技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面において構成要素の形状及びサイズなどは、一層明確な説明のために誇張されることができる。
【0050】
図1は、本発明による磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法を示す工程流れ図である。
【0051】
図2は、本発明によるアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体の製造方法を示す工程流れ図である。
【0052】
図3は、本発明によるアルツハイマー病診断のための巨大磁気抵抗センサーを示す模式図である。
【0053】
図3を参照すれば、基板(substrate)130の上に巨大磁気抵抗センサー(GMR sensor)層120 が蒸着されていて、巨大磁気抵抗センサーの上には、酸化物よりなるパッシベーション(passivation)層110が形成され、巨大磁気抵抗センサー120の両側には、Ta/Auよりなる電極(electrode)100が形成される。
【0054】
図4は、本発明によるアルツハイマー病診断のための巨大磁気抵抗薄膜構造を示す模式図である。
【0055】
図4を参照すれば、本発明に使用される巨大磁気抵抗センサー構造は、自由層、スペーサ、固定層、ピンニング層で構成されるスピンバルブ(spin valve)構造を有する。
【0056】
このようなスピンバルブ構造は、小さい磁場でも5〜10%の大きい抵抗変化を得ることができるという長所を有するので、巨大磁気抵抗センサーにおいてアミロイドβタンパク質と結合した磁性粒子の磁気抵抗値を測定するのに適している。
【0057】
本発明において使用される巨大磁気抵抗センサーは、数十nmから数μmのサイズを有する球状磁性体粒子で発生する微細な漂遊磁場による外部印加磁場の変化を測定することができ、このような磁場の変化による磁気抵抗センサーの抵抗変化特性を電気的出力信号で示すことができる。
【0058】
図5及び図6は、磁気ビーズを磁気抵抗センサーの表面に対して垂直方向または水平方向に磁化する時に磁気ビーズの磁場方向を示す模式図である。
【0059】
図5及び図6を参照すれば、外部から印加される磁場の方向は、巨大磁気抵抗センサーの表面に垂直方向に印加するか、または水平方向に印加することができ、図2に示されたように、磁気ビーズを巨大磁気抵抗センサーの表面に垂直方向に磁化させるか、または水平方向に磁化させることができ、この時、磁気ビーズで発生する漂遊磁場は、巨大磁気抵抗センサーの磁化に影響を及ぼし、巨大磁気抵抗センサーの抵抗特性を変化させ、そのため、磁気ビーズによる出力電圧の特性が変わる。
【0060】
図7は、本発明によるアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体を示す模式図である。
【0061】
図7を参照すれば、本発明に使用される磁気ビーズ(または磁性粒子)300は、アミロイドβタンパク質340と選択的に結合するためにストレプトアビジン310でコーティングされる。上記ストレプトアビジン310でコーティングされた磁気ビーズ300は、ビオチン320と選択的に結合し、ビオチン320とアミロイドβタンパク質340は、ポリエチレングリコール330のようなリンカーを利用して結合させる。このような過程を通じて、磁気ビーズ300は、アミロイドβタンパク質340と結合することができる。
【0062】
このような結合方法を通じて、磁気ビーズは、アミロイドβタンパク質と選択的に結合し、アルツハイマー病を誘発するアミロイドβタンパク質を含む細胞の場合、磁気ビーズと結合し、アミロイドβタンパク質を含まない正常細胞の場合には、磁気ビーズと結合しない。
【0063】
図8は、本発明による巨大磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法を示す模式図である。
【0064】
図8を参照すれば、診断対象細胞を磁気抵抗センサーの上に配置し、外部磁場を印加して磁気ビーズを磁化させた後、磁気ビーズで発生する漂遊磁場による磁場の変化を磁気抵抗センサーが感知し、アミロイドβタンパク質の存在を検出することができる。したがって、巨大磁気抵抗センサーを利用して正常細胞が存在する時の磁気抵抗値とアルツハイマー病細胞が存在する時の磁気抵抗値とを比較し、アルツハイマー病を判断することができる。また、アミロイドβタンパク質の数が増加するにつれて、結合された磁気ビーズの数も増加するので、磁気抵抗値が線形的に変化する。つまり、アミロイドβタンパク質と結合した磁気ビーズを利用して変化した磁気抵抗値を測定することによって、アルツハイマー病の早期診断だけでなく、アルツハイマー病の進行過程をも診断することができる。
【0065】
本発明は、従来の蛍光物質を利用した方法または遺伝子分析・比較方法より容易で且つ簡便に診断が可能であり、アルツハイマー病診断用バイオセンサーとして商用化することができるという長所を有する。
【0066】
以上のように、図面と明細書で最適の実施例が開示された。ここで、特定の用語が使用されたが、これは、ただ本発明を説明するための目的に使用されたものであって、意味限定や特許請求範囲に記載された本発明の範囲を限定するために使用されたものではではない。したがって、この技術分野における通常の知識を有する者ならこれから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であることを理解することができる。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の特許請求範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0067】
100 電極
110 パッシベーション
120 巨大磁気抵抗センサー
130 基板
300 磁気ビーズ
310 ストレプトアビジン
320 ビオチン
330 ポリエチレングリコール
340 アミロイドβタンパク質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病を誘発するタンパク質バイオマーカーと結合し得るように磁気ビーズを前処理する段階と、
磁気抵抗センサーの上に診断対象細胞を配置する段階と、
上記診断対象細胞の上部に上記前処理された磁気ビーズを配置し、外部磁場を印加して磁化させる段階と、
上記前処理された磁気ビーズと上記タンパク質バイオマーカーとの結合の有無による磁場の変化を上記磁気抵抗センサーで検出し、上記診断対象細胞のアルツハイマー病の有無を判断する段階と、を含む磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項2】
上記磁場の変化は、タンパク質バイオマーカーが存在し、磁気ビーズが結合された場合、磁気ビーズで発生する漂遊磁場によって発生することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項3】
上記タンパク質バイオマーカーは、アミロイドβタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項4】
上記磁気ビーズは、直径が50nm〜5μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項5】
上記前処理は、磁気ビーズをストレプトアビジンでコーティングし、ビオチンと結合させた後、ポリエチレングリコールを結合させることによって行われることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項6】
上記磁気抵抗センサーは、異方性磁気抵抗薄膜、巨大磁気抵抗薄膜及びトンネル型磁気抵抗薄膜のうちいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項7】
上記磁気抵抗センサーは、自由層、スペーサ、固定層及びピンニング層を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項8】
上記磁気抵抗センサーは、十字状または棒状の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項9】
上記磁気抵抗センサーは、酸化物または窒化物薄膜層で保護されることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項10】
上記細胞は、アミロイドβタンパク質が蓄積されることができる脳細胞、嗅覚細胞、味覚細胞または視覚細胞であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項11】
上記磁化は、磁気抵抗センサーの表面に対して外部磁場を垂直または水平方向に印加することによって行われることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗センサーを利用したアルツハイマー病の診断方法。
【請求項12】
磁気ビーズの周りは、ストレプトアビジンでコーティングされ、上記ストレプトアビジンは、ビオチンと結合され、上記ビオチンには、タンパク質バイオマーカーと結合されるためにリンカーが結合されたことを特徴とするアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体。
【請求項13】
上記タンパク質バイオマーカーは、アミロイドβタンパク質であることを特徴とする請求項12に記載のアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体。
【請求項14】
上記リンカーは、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項12に記載のアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体。
【請求項15】
磁気ビーズの周りをストレプトアビジンでコーティングする段階と、
上記ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズをビオチンと結合させる段階と、
上記ビオチンをリンカーと結合させる段階と、を含み、
上記リンカーは、タンパク質バイオマーカーと結合されることを特徴とするアルツハイマー病診断用磁気ビーズ−ポリタンパク質複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−221017(P2011−221017A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82594(P2011−82594)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】