説明

磁気抵抗ヘッドの利用に伴う非線形性の影響をオフセットする読取りチャネルデバイス

【課題】磁気抵抗ヘッドの利用に伴う非線形性の影響をオフセットする読取りチャネルを提供する。
【解決手段】本発明の、磁気抵抗(MR)読取りヘッドに結合されるように適応された、磁気記録読取りチャネルにおいて利用されるデバイスは、制御可能な量の第二次非線形性を磁気記録読取りチャネル信号経路へと導入して磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形性を少なくとも部分的にオフセットするように適応された集積回路を有する。本発明の磁気記録読取りチャネル信号経路における、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形信号効果を低下させる方法は、読取りチャネル信号の評価可能な二乗を読取りチャネル信号経路へと導入するステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取りチャネル、より特定するに、磁気抵抗(MR)ヘッドとの利用に適応した読取りチャネルに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗(MR)ヘッドあるいは磁気抵抗(MR)読取りヘッドは、ディスクドライブあるいはその他の応用例における周波数の増加に伴って利用されている。磁気抵抗(MR)読取りヘッドについては、例えば、H.Suyamaらによる"Thin Film MR Head for High Density Rigid Disk Drive," IEEE Transactions on Magnetics,Volume 24,No.6,November,1988において記述されている。残念なことに、そのような磁気抵抗(MR)読取りヘッドは、瞬時の磁界を抵抗へと変換する際に、本質的に非線形となる。磁気抵抗(MR)ヘッドにより生成された非線形性を低下させる一つのアプローチは、ほとんど線形カーブ領域に近い応答曲線の領域において動作するように、読取りヘッドに電気的にバイアスをかけることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、それにもかかわらず、例えば、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの応答についての残存する非線形性、即ち残留非線形性、印加されたバイアスにおけるエラーのために、あるいはその他の理由のため、非線形性の影響を生成するであろうという点で、このようなアプローチは、いまもって不利である。それ故に、そのような磁気抵抗(MR)読取りヘッドにより生成された非線形性の影響を解決する必要性が存しているのである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施例に従うと、磁気抵抗(MR)読取りヘッドに結合されるように適応した磁気記録読取りチャネルにおいて用いられるデバイスは、以下の要素、すなわち、制御可能な量の第二次非線形性を磁気記録読取りチャネル信号経路へと導入し、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形性をオフセットするように適応された集積回路、から成っている。
【0005】
本発明の別の実施例に従うと、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う、磁気記録読取りチャネル信号経路における非線形性の影響を低下させる方法は、読取りチャネル信号についての評価可能な二乗を読取りチャネル信号経路へと導入するステップから成っている。
【発明の効果】
【0006】
磁気抵抗(MR)読取りヘッドにより生成された非線形性を低下させる従来のアプローチが、非線形効果の除去の点で十分でなかったことに対して、本発明により、制御可能な量の第二次非線形性を磁気記録読取りチャネル信号経路へと導入することで、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形性を少なくとも部分的にオフセットするように適応された回路が実現された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
例えば、ディスクドライブのような、磁気記録システムは、例えば、ディスクやディスケット上に保存されているような、電磁的に保存された信号を読取るのに、電子回路を利用している。典型的には、そのようなシステムは、例えば、Hugh M.Sierraによる"An Introduction to Direct Access Storage Devices" Academic Press,Inc.,(1990)で記述されているように、磁気誘導を利用している。
【0008】
そのようなシステムについて、磁気抵抗(MR)ヘッドあるいは磁気抵抗(MR)読取りヘッドを利用するのも、次第に一般的になってきた。その一つの理由としては、読取りチャネルで利用されうる、その他の従来型の読取りヘッドと比較して、そのような読取りヘッドは、改良されたS/N比(信号対ノイズ比)を提供しうるということがある。
【0009】
図2は、読取りチャネル信号経路を含む、磁気記録ユニット用の従来の読取りチャネルの実施例100を例示するブロック線図である。読取りチャネル100は、磁気抵抗(MR)読取りヘッド200に結合されたものとして例示されている。もちろん、例示された構成要素は、DC(直流)バイアス電圧を低下させるようにAC(交流)結合されている。図2で例示されているように、磁気抵抗(MR)読取りヘッド200は、図2でm(t)と示された磁界強度信号を受け取りうる。このような磁界強度信号に応答して、読取りヘッド200は、図2でr(t)と示された、抵抗値の形式での信号を提供しうる。抵抗値r(t)に応答して、電圧信号v(t)を生成する前置増幅器300に、このような抵抗値は供給されうる。例示されているように、このような電圧信号は、読取りチャネル100へと供給されうる。このような特定の実施例では、読取りチャネル100は、可変利得増幅器(variable gain amplifier,VGA)400、等化器500、ビタビ検出器600から成っている。もちろん、読取りチャネルについての選択的な実施例が利用されうることは認められよう。例えば、選択的には、決定フィードバック等化器(decision feedback equalizer,DFE)が、読取りチャネルにおいて利用されうる。
【0010】
図2で例示されているように、VGA400は、電圧信号v(t)を受け取り、増幅された電圧信号V(t)を生成する。この増幅された電圧信号は、読取りチャネル信号経路に沿って等化器500へと供給され、等化器500は、図2でYnと示された、部分応答最尤信号のような、等化処理がなされた信号を生成する。磁気記録システムにおける等化器及び部分応答最尤信号の利用は、例えば、K.Sam Shanmugamによる、"Digital and Analog Communication Systems" John Wiley and Sons,Inc.(1979)で記述されているように、当該技術分野においてはよく知られている。このような特定の実施例においては、Ynについての理想的な値は、+1、−1、あるいは0でありうる。等化処理がなされた信号Ynは、読取りチャネル信号経路に沿ってビタビ検出器600へと供給され、ビタビ検出器600は、デジタルデータ信号Dnを供給する。これらのデジタルデータ信号は、デジタルパルスの形式をとりうるもので、磁気記録システムを含みうるパーソナルコンピュータあるいはその他のシステムといったようなものへの物理的バスへと供給される前に、さらに処理されうる。例えば、逐次復号あるいは別の形式の信号処理が利用されうる。部分応答最尤(partial response maximum likelihood,PRML)読取りチャネルデバイスについては、例えば、Sonntagらによる、IEEE Transactions On Magnetics,Volume 31,No.2,March 19,1995に掲載の"A High Speed,Low Power PRML Read Channel Device,"において記述されている。
【0011】
よく知られているように、磁気抵抗(MR)読取りヘッドは、実質的に瞬時の磁界強度信号を抵抗値信号へと変換するように動作する。さらにまた、結果としての抵抗値信号と磁界強度信号の間の関係は、非線形である。従来は、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの応答曲線のもっとも線形な領域にできるだけ接近させるように、磁気抵抗(MR)読取りヘッドにバイアスをかける試みがなされている。同様に、例えば、図2で例示されているように、結果としての抵抗値は、典型的な実施例において前置増幅器の電圧へ変換されている。様々な理由から、磁気抵抗(MR)ヘッドにバイアスをかけるこのような試みでは、非線形性の影響を十分に除去しえず、それ故に、保存媒体から保存された信号を得るプロセスの間にエラーが導入されうるのである。
【0012】
概算として、磁気抵抗(MR)読取りヘッドにより生成された抵抗値r(t)は、以下の関係、すなわち、r(t)は、m(t)+αm2(t)に比例する、に従って記述されうる。本発明に従った読取りチャネルの実施例は、以下でより詳細に記述されるように、アルファ(α)を近似しうるもので、制御可能な量の第二次非線形性を読取りチャネル信号経路へと導入し、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形効果を、概ねキャンセルするか、あるいは少なくとも部分的にオフセットしうるものである。さらに、本発明に従った読取りチャネルの実施例では、以下でより詳細に説明されるように、アルファは、適応的に近似されうる。磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形ひずみの量は、実際のシステム動作については、前もって予測することは困難でありうることから、適応的な近似は、少なくとも部分的には、従来のバイアスをかけるアプローチ以上の利点を提供しうるのである。
【0013】
本発明に従った読取りチャネルの一実施例1000が、図1で例示されている。磁気抵抗(MR)読取りヘッド2000が例示されている。もっとも、示されているように、図1のヘッド2000は、上での表現、すなわち、r(t)は、m(t)+αm2(t)に比例する、という近似を元にしている。もちろん、磁界強度と抵抗値の間の関係についてのこのような近似的な記述は、第二次までに限るということは認められるところであろう。同様に、伝達関数Ih1(t)を有する前置増幅器3000が例示されている。前置増幅器3000が、受け取られたアナログ信号に対するナイキスト速度よりも高いといったように、相対的に広帯域である場合には、前置増幅器に対する伝達関数は、スケールファクター(基準化因子)あるいは実質的に一定の遅延として近似されうる。従って、このような特定の実施例について図1で例示されているように、前置増幅器の後で調節が導入されうるべく、前置増幅器は、磁気抵抗(MR)読取りヘッドから受け取った信号についての大きさ及び位相の関係を、概ね維持している。また、もちろん、これらの構成要素間の結合は、DC(直流)バイアス電圧を低下させるか、あるいは除去するように、AC(交流)結合となっていることは理解されよう。
【0014】
図1で例示されているように、読取りチャネル1000は、可変利得増幅器(variable gain amplifier,VGA)4000及び非線形調節装置1100を含んでいる。さらにまた、例示されているように、このような特定の実施例においては、因子ベータ(β)により評価され、等化器5000に先だって導入された読取りチャネル信号の二乗としての制御可能な量の非線形性を、磁気記録読取りチャネル信号経路へと導入するように、非線形調節装置1100は適応されている。このような実施例においては、VGAの後では、電圧信号レベルの相対的安定性が、処理をより都合の良いものとすることから、少なくとも部分的には、読取りチャネル信号経路におけるこのような点でかような調節を導入することが望ましいのである。さらにまた、等化に先だって調節を導入することは、読取りチャネル信号の基本成分及び高調波成分についての相対的な大きさ及び位相に影響を及ぼしうる、等化器による信号処理についての複雑さを避けるものである。もっとも、本発明は、その保護の範囲において、読取りチャネル信号経路における、このような特定の点で調節を導入することに限定されるものではない。
【0015】
図1で例示されているように、以下の式、数3についての非線形調節は、調節可能な利得βをもって読取りチャネル信号の二乗を導入することで実現される。
【数1】

磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形性を少なくとも部分的にオフセットするように、読取りチャネル信号の二乗が導入されているが、このような非線形調節は、磁界強度信号m(t)及び抵抗値信号r(t)間の近似的な関係を記述している、r(t)は、m(t)+αm2(t)に比例する、という上述 の表現と一致している。同様に、r(t)は、m(t)+αm2(t)に比例す る、という表現を得るため、AC(交流)結合により一定のバイアス電圧信号は著しく低下され、第二次以上のより高次の項を伴う信号は無視されうるということが前提とされている。
【0016】
上の数3の表現を元にすると、ベータ(β)についての望ましい値は、少なくとも部分的には、V(t)のピーク電圧の大きさ(振幅)に依存するであろう。従って、また、等化に先だち、可変利得増幅器(variable gain amplifier,VGA)の後に導入することは、必須はされないが、便益を提供するものである。図1で例示されているように、そして、以下でより詳細に説明されるように、βの値は、等化器5000により生成された信号を元に、少なくとも部分的には、調節可能あるいは制御可能である。それでもなお、図1で例示されているように、非線形調節装置1100は、読取りチャネル信号の二乗を、読取りチャネル信号経路へと導入しうるのである。そして、この読取りチャネル信号経路は、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う第二次非線形性を、少なくとも部分的にオフセットするか、あるいは、概ねにせよキャンセルする。
【0017】
より高次の項を無視すると、非線形調節装置1100の出力信号y(t)は、以下の等式、数4により近似されうる。
【数2】

上の等式、数4の分析が明らかにしているように、αがβに等しい場合、m2( t)の項はキャンセルされる。さらに、残りのより高次の項は、初期のひずみよりもはるかに小さく、それ故に、本質的に無視されうる。読取りチャネル信号への等化器の影響のために、等化器あるいはスライサー(スライス回路)の後で読取りチャネル信号経路へ非線形調節装置を導入するのは困難であろう。にもかかわらず、ひずみ検出については、なお、等化器の後の読取りチャネル信号経路において実行されうる。等化器により生成されたエラー信号は、都合の良いことに、このような検出を実行するため利用されうる。高次の項を無視し、利得、オフセット、及び等化器の調節が適切に実行されたことを前提とすると、等化器5000により生成されたエラー信号enは、以下の等式、数5により近似されうる。
【数3】

ここで、he(t)は、等化器に対する伝達関数であり、noisenは、このような実施例では、サンプル時間(時刻)nTにおいて、読取りチャネル信号経路におけるアナログ信号サンプリング回路5200で評価された、読取りチャネル信号における実質的に瞬時のノイズであり、Tはサンプル期間であり、nは正の整数である。
【0018】
少なくとも部分的に、数5の等式を元に、非線形ゆがみ(nonlinear distortion,NLD)の計量が展開されうるとすれば、フィードバック制御を用いて、βに対する適切な値は適応的に調節されうる。そして、この非線形ゆがみ(nonlinear distortion,NLD)の計量は、例えば、(α−β)が概ね0に等しいときには、NLDの計量は0という平均値を、(α−β)が0よりも大きいときには、正の平均値を、(α−β)が0よりも小さいときには負の平均値を持つというように、(α−β)に関係するものとなっている。例えば、そのような計量が積分され、βが当該積分についての単調関数となるように、βの値を制御あるいは調節するのに用いられるとすれば、その際、フィードバック制御を利用することで、βが概ねαに等しくなることを保証されるべきものとなり、これは、望まれた結果といえる。
【0019】
前にも示されたように、本発明の保護の範囲内では、考えられる異なった計量が幾つも利用されうるが、このような特定の実施例にとって都合の良い計量は、少なくとも部分的には、スライサー(スライス回路)出力信号及び等化器5000により生成されたエラー信号を元とされうる。このようなアプローチは、en及びYハットn(数1)を得る際に等化器により実行される処理を効果的に利用し、さらに加えて、読取りチャネル信号経路における、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形性の影響を少なくとも部分的にオフセットするものである。
もっとも、本発明は、その保護の範囲において、このような側面に限定されるものではない。
【0020】
そのような計量の一つは、以下の等式、数6に従い利用されうる。
【数4】

もっとも、また、本発明の保護の範囲は、このような側面に限定されるものではない。
【0021】
このような特定の計量の利点の一つとしては、かなりの量の付加的な信号処理を導入するよりも既存の等化器配置を利用しうるものであり、そのため、ソフトウエアにおける実施例といったような、他の選択的な実施例よりも、実際の応用例をより都合の良いものとするということがある。さらにまた、本発明は、その保護の範囲において、ハードウエアによる実施例に制限されるものではないが、にもかかわらず、相対的に高速な処理速度が望まれている環境では、ハードウエアにおける非線形調節を実施する能力の方が、他の実施例以上の利点を提供するといえる。
【0022】
このような計量についての期待値は、望まれているように、それが、(α−β)に関連した値を生成することを明示している。すなわち、
【数5】

しかしながら、Pnは、ノイズと相関関係はなく、Pnは、m2(t)と相関関係 がある。より特定すると、Pnは、大まかには、f(x)=x2に対応するように選択されてきた。それ故に、当該期待値は、以下のような結果を生成する。
【数6】

【0023】
図1は、本発明に従った読取りチャネルの実施例を例示し、前に記述された計量のような、計量を実施する。もっとも、本発明は、その保護の範囲において、このような側面に制限されるものではない。図1で例示されているように、非線形的に調節された信号y(t)の処理されたものは、図1ではY(t)と示され、等化器5000へと供給されている。図1の波線は、付加的な処理あるいは回路が、読取りチャネル信号経路におけるこれらの二点を結合しうることを例示している。もちろん、選択的には、これらの点は、中間的な処理あるいは回路なしに接続されうるものである。等化器5000は、フィルター5100及びアナログ信号サンプリング回路5200を含んでいる。サンプリング回路5200は、離散的信号サンプルYnを生成し、これは、ビタビ検出器(示されていない)によりなされるような、読取りチャネルに沿ったさらなる処理のため供給されうる。さらにまた、離散的信号サンプルは、エラー信号enを生成するスライサー(スライス回路)5300へと供給される。一つの実施例では、スライサー(スライス回路)5300は、比較器配置に結合された多数の比較器(示されていない)から成りうる。
【0024】
ノード5400では、スライサー(スライス回路)の出力信号についての、離散的信号サンプルとの比較が実行されている。そこで、エラー信号en及びスライサー(スライス回路)出力信号Yハットn(数1)は、フィードバック信号として、計量ブロック1200へと供給される。図1で例示されているように、計量ブロック1200は、当該計量を実行し、ブロック1300は、ブロック1200により生成された結果としての出力信号を積分する。さらにまた、積分器1200により供給された出力信号に応答して、積分器1300は、読取りチャネル信号の二乗に対するスケールファクター(基準化因子)であるβを調節する要素1120へと出力信号を供給する。
【0025】
このような特定の実施例において、前に記述された計量を利用する利点の一つは、結果としてのフィードバックが、読取りチャネル信号の利得エラーあるいはオフセットエラーに対して相対的に与える影響が少ないということがある。例えば、前に記述された計量の積分については、利得エラーあるいはオフセットエラーは、概ね平均的なものとなることが明示されうる。本発明に従った読取りチャネルの実施例で、その他のフィードバック制御機構を含みうるものについては、前述のフィードバック制御は、利得あるいはオフセットエラー調節に利用されうるフィードバック制御と相対的に独立したものとなるべきことが示されることから、この点は望ましいものといえる。
【0026】
図1で例示された実施例は、サンプリングされたデータ系を有するものであるが、本発明は、その保護の範囲において、このような側面に限られるものではない。例えば、すべてデジタル回路あるいはすべてアナログ回路とする実施例も利用されうる。さらにまた、このような特定の実施例は、等化器及びビタビ検出器による実施例を例示しているけれども、選択的には、例えば、決定フィードバック等化器(decision feedback equalizer,DFE)による実施例も利用されうる。同様に、PR−IV信号方式及び最尤検出による実施例が記述されているが、本発明は、その保護の範囲において、PR−IV(信号方式)による実施例に制限されるものではない。
【0027】
図4は、本発明に従った読取りチャネルの別の実施例の部分を例示しているブロック線図である。図4は、非線形調節装置の選択的な実施例1105を例示している。図1は、フィードフォワード(前送り)非線形調節装置の実施例を例示しているが、図4は、フィードバック非線形調節装置の実施例を例示している。特定の実施例によって、両方のアプローチとも、利点及び不利な点を伴っており、本発明は、その保護の範囲において、いずれのアプローチにも限定されるものではない。例えば、フィードバック信号経路によるアプローチは、理想的には、第二次の項以上のより高次の項についてのキャンセルを提示しうるものであることが明示されうる。しかしながら、フィードフォワード(前送り)信号経路によるアプローチは、フィードバックではシステムにおける付加的な時間遅延を導入しうるものであることから、少なくとも部分的には、よりよいバンド幅(帯域幅)を示しうるのである。このように、いずれの実施例も、適切な環境においては望ましいものであることを示しうるのである。
【0028】
図1で例示されているように、非線形調節装置1100を含む、読取りチャネル1000は、集積回路(IC)あるいはその他のデバイス内あるいはその上で実施されうる。もっとも、本発明は、その保護の範囲において、このような側面に限定されるものではない。例えば、出願人整理番号960173の出願明細書で記述されているような、差動増幅器回路は、非線形調節装置1100を実施するため利用されうる。もっとも、また、本発明は、その保護の範囲において、このような側面に限定されるものではない。前述の特許出願で記述されているが、差動増幅器回路の差動出力電圧信号が、差動増幅器回路に印加された差動入力電圧信号の評価可能な二乗を含むように、差動増幅器は回路配置に結合されうる。さらに、差動出力電圧信号の二乗は、様々な手段により評価されうる。考えられるアプローチの幾つかのみを挙げると、制御電圧を調節する、抵抗器の値を調節する、あるいは、増幅器の利得を調節するといったような手段による。そのような実施例は、非線形調節装置が、差動増幅器のような従来の電子回路の構成要素を用いて、集積回路において便利に実施されうるという点で都合が良く、このような回路の構成要素は、望みの非線形調節装置を実施するように回路配置に結合されうるものである。
【0029】
さらにまた、図3は、前に記述されたように、本発明に従った読取りチャネルの実施例におけるフィードバック制御を実施するバイナリデジタル信号プロセッサーの実施例を例示するブロック線図である。もっとも、本発明は、その保護の範囲において、このような特定の実施例に制限されるものではない。図3は、特定の一つの実施例のみを例示しており、本発明は、その保護の範囲において、フィードバック制御について、このような特定の実施例に制限されるものではない。それでもなお、例示されているように、Yハットn(数1)及びenは、等化器5000のような等化器から得られうる。図3は、等式、数6に従うように、計量を実施するブロック40を例示している。このような計量は、例えば、バイナリデジタル回路を用いる従来の手法で実施されうる。もっとも、当該回路は、図3で明示的に例示されていない。示されているように、ある計量に従ったこのような処理の結果は、二つの入力ポートの一つを経由して、加算器10へと供給されうる。加算器10は、離散的統合を実施するようにフィードバック配置で結合されている。従って、図3で例示されているように、加算器10により生成された出力信号は、レジスタ20へと供給され、レジスタ20により含まれ、あるいは保存されたバイナリデジタル信号は、加算器10の他の入力ポートへとフィードバックされ、さらにまた、デジタルアナログ変換器(digital-to-analog converter,DAC)30へと供給される。それ故に、DAC30は、図3でVCNLと示されたアナログ信号を、図1で示された1100のような非線形調節装置へと供給しうる。例えば、本発明は、その保護の範囲において、このような側面に限定されるものではないが、このようなアナログ信号は、前述の出願人整理番号960173の出願明細書で記述されているように、差動増幅器回路への電圧制御信号として供給されうるのである。
【0030】
実施例1000のような磁気抵抗(MR)読取りヘッドに結合された磁気記録読取りチャネルにおいて用いられるデバイスは、以下の方法に従って動作されうる。読取りチャネル信号の評価可能な二乗は、読取りチャネル信号経路へと導入されうる。例えば、図1の非線形調節装置1100は、このような処理ステップを実行する技術を例示するブロック線図である。例えば、前述の同時出願された出願人整理番号960173の出願明細書で記述された差動増幅器回路のような、幾つもの回路の実施例の任意の一つが、このような非線形調節を実行するのに利用されうる。もっとも、もちろん、本発明は、その保護の範囲において、このような側面に限定されるものではない。さらにまた、読取りチャネル信号の二乗に対するスケールファクター(基準化因子)は、読取りチャネル信号経路における、磁気抵抗(MR)読取りヘッドの利用に伴う非線形性の影響を少なくとも部分的にオフセットするように調節されうる。さらに、前で記述されたように、当該調節は適応的に実行されうる。また、このような適応的調節ステップを実行するのに、幾つもの技術の任意の一つが利用されうる。例えば、図1で示された実施例により例示されているように、図1での等化器5000のような等化器により生成された、スライサー(スライス回路)出力信号Yハットn(数1)及びエラー信号enは、前で記述されたNLDの計量を実施するために利用されうる。同様に、等化器により生成された信号は、図3で例示されたバイナリデジタル信号プロセッサーの実施例によってなされるように、このような計量に従って処理され、積分されうる。生成されたデジタル信号は、図3で例示されたDAC30のようなDACへと供給されうる。そして、このようなアナログ信号は、前に記述された適応的調節を実行するため利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明に従った読取りチャネルの一実施例を例示するブロック線図である。
【図2】図2は、磁気抵抗(MR)読取りヘッドに結合された、従来の磁気記録読取りチャネルの実施例についてのブロック線図である。
【図3】図3は、本発明に従った読取りチャネルの実施例において利用されうるバイナリデジタル信号プロセッサーの実施例を例示するブロック線図である。
【図4】図4は、本発明に従った読取りチャネルの実施例において利用されうる非線形調節装置の実施例を例示するブロック線図である。
【符号の説明】
【0032】
10 加算器
20 レジスタ
30 デジタルアナログ変換器(digital-to-analog converter,DAC)
40 計量を実施するブロック
100 読取りチャネル(従来の読取りチャネルの実施例)
200 磁気抵抗(MR)読取りヘッド
300 前置増幅器
400 可変利得増幅器(variable gain amplifier,VGA)
500 等化器
600 ビタビ検出器
1000 読取りチャネル(本発明に従った読取りチャネルの実施例)
1100 非線形調節装置
1105 非線形調節装置(選択的実施例)
1120 βを調節する要素
1200 計量ブロック(積分器)
1300 積分器(ブロック)
2000 磁気抵抗(MR)読取りヘッド
3000 前置増幅器
4000 可変利得増幅器(variable gain amplifier,VGA)
5000 等化器
5100 フィルター
5200 アナログ信号サンプリング回路
5300 スライサー(スライス回路)
5400 ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗(MR)読取りヘッドを含む磁気記録読取りチャンネル信号経路にて用いる集積回路であって、
非線形調節器が後続された可変利得増幅器(VGA)であって、制御可能な量の第2次非線形性を該磁気記録読取りチャンネル信号経路に対して導入するための可変利得増幅器を含み、
該集積回路は、さらに該磁気記録読取りチャンネル信号経路内の該非線形調節器の後のところで結合された等化器を含み、及び
該等化器はエラー信号(en)とスライサー出力信号
【数1】

とを提供し、これにより該非線形調節器が、該等化器により生成される該エラー信号および該スライサー出力信号に基づいた制御信号に応答して第2次非線形性の量を調節するようになっており、ならびに
該制御信号が次式に従う
【数2】

(ここで、
【数3】

とする。)離散プロセスの積分に少なくとも一部基づくものである集積回路。
【請求項2】
磁気抵抗(MR)読取りヘッドの使用と関連する磁気記録読取りチャンネル信号経路における非線形信号効果を低減させる方法であって、
該読取りチャンネル信号の、大きさを変えることが可能な2乗を、該読取りチャンネル信号に導入するステップと、
該磁気抵抗(MR)読取りヘッドの使用と関連する該読取りチャンネル経路における該非線形信号効果を少なくとも部分的にオフセットするよう該読取りチャンネル信号の該大きさを変えることが可能な2乗を調節するステップとを含み、
該調節が該読取りチャンネル信号経路中の等化器により生成されるエラー信号(en)に一部基づいているものであり、
該エラー信号に少なくとも一部基づいた該大きさを変えることが可能な2乗を調節するステップが、
該等化器により生成されたエラー信号およびスライサー出力信号(Y^)に基づいたスケールファクタを調節するステップから成るものであり、および
該等化器により生成されたエラー信号およびスライサ出力信号に基づいたスケールファクタを調節するステップが、次式
【数4】

に従う離散プロセスの積分に基づいたスケールファクタを調節するステップから成るものである方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
該読取りチャンネル信号の該大きさを変えることが可能な2乗を該読取りチャンネル信号経路に導入するステップが、
フィードフォワード(前向き)信号経路を介して該大きさを変えることが可能な2乗を導入することから成るものである方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、
該読取りチャンネル信号の該大きさを変えることが可能な2乗を該読取りチャンネル信号経路に導入するステップがフィードバック信号経路を介して該大きさを変えることが可能な2乗を導入することから成るものである方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−257832(P2007−257832A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134020(P2007−134020)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【分割の表示】特願平8−251497の分割
【原出願日】平成8年9月24日(1996.9.24)
【出願人】(390035493)エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション (130)
【氏名又は名称原語表記】AT&T CORP.
【Fターム(参考)】