説明

磁気検出装置

【課題】 装置を大型化させることなく良好な磁気検出感度を有し、かつバッテリー駆動等の電力的な制約を有する電子機器への搭載が可能で小型化を図ることのできる磁気検出装置を提供する。
【解決手段】 信号発生部10の微分回路11で矩形波の論理積に基づいて高周波成分の立ち上がり特性に相当する微分波形であるパルス信号を生成し、MI素子5に入力する。このことにより、MI素子5に高い分解能を付与することができ、アンプ6のゲインが低くても検出精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子を用いた磁気検出装置に関するものであり、特に、装置を大型化させることなく良好な磁気検出感度を有し、かつバッテリー駆動等の電力的な制約を有する電子機器への搭載が可能で小型化を図ることのできる磁気検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセスに基づいて製造され、小型で感度に優れる磁気センサが知られている。このような磁気センサとして、アモルファス金属材料からなる高透過率を有する磁性薄膜を所定のパターンで基板上に形成したMI(Magneto-Impedance)素子が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
上記したMI素子20は、微小な外部磁界の変化に基づいて電極間における抵抗値が変化する特性を有することにより、磁気抵抗素子として携帯電話等の電子機器に搭載する小型の磁気センサ等の用途が見込まれている。
【0004】
図4は、MI素子を用いた従来の磁気検出装置の概略構成図である。この磁気検出装置30は、高周波の交流バイアス信号を発生させる信号発生回路31と、バイアス信号の入力に基づいて外部磁界に対するインピーダンス特性を示すMI素子20と、MI素子20の出力信号を電圧に変換するとともに増幅するIVアンプ32と、電圧に基づくアンプ出力をA/D変換するA/D変換部33と、デジタル変換された外部磁界に基づく出力波形を可視表示するスペクトラムアナライザー34とを有する。
【非特許文献1】石山 和志、外5名、薄膜磁界センサ、[online]、平成16年7月1日、東北大学電気通信研究所 人間情報システム研究部門 生体電磁情報研究分野 荒井研究室、[平成17年3月10日検索]、インターネット(URL:http://www.arai.riec.tohoku.ac.jp/lab/research/sensor/sensor.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の磁気検出装置によると、MI素子に高周波の交流バイアス信号を入力しているため、信号発生回路の構成が大型化するだけでなく発熱量が大になり、バッテリー駆動等による電力的な制約を有する小型の電子機器への搭載が難しいという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、装置を大型化させることなく良好な磁気検出感度を有し、かつバッテリー駆動等の電力的な制約を有する電子機器への搭載が可能で小型化を図ることのできる磁気検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、磁気抵抗素子にバイアス信号を印加することに基づく分解能で磁気検出を行う磁気検出装置において、前記磁気抵抗素子に第1の信号波と、前記第1の信号波に対して所定の遅延量を有する第2の信号波との論理積に基づくパルス信号を印加する信号発生部を有することを特徴とする磁気検出装置を提供する。
【0008】
前記信号発生部は、前記第1の信号波を出力する発振器と、前記発振器から出力される前記第1の信号波を遅延させて前記第2の信号波を出力する遅延信号発生器と、前記第1の信号波と前記第2の信号波の論理積に基づいて前記発振器から出力される前記第1の信号波を形成する高周波成分の立ち上がり特性に相当する微分波形を出力する論理積回路によって構成されることが好ましい。
【0009】
前記発振器は前記第1の信号波として矩形波を出力することが好ましい。
【0010】
前記磁気抵抗素子は、マグネトーインピーダンス素子を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁気検出装置によれば、装置を大型化させることなく良好な磁気検出感度を有し、かつバッテリー駆動の電子機器への搭載が可能で小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(腕時計型電波時計の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気検出装置の概略構成図である。
【0014】
(磁気検出装置1の構成)
この磁気検出装置1は、高周波の矩形波を発生させる発振器2と、発振器2から入力する矩形波を遅延させて出力する遅延信号発生器3と、発振器2から入力する矩形波と遅延信号発生器3から入力する遅延させた矩形波とを入力することによりパルス信号を発生させるAND回路4と、パルス信号の入力に基づいて外部磁界に対する電圧特性を示すMI素子5と、MI素子5の出力を増幅するアンプ6と、アンプ6の出力をピークホールドするピークホールド回路7と、ピークホールド回路7を介して入力する出力信号をA/D変換するA/D変換部8と、デジタル変換された外部磁界に基づく出力波形を可視表示するスペクトラムアナライザー9とを有する。
【0015】
発振器2、遅延信号発生器3、およびAND回路4は、信号発生部10を構成しており、さらに遅延信号発生器3とAND回路4は、発振器2から出力される2kHzの矩形波と、遅延させた2kHzの矩形波とをAND回路4に入力することにより、矩形波の立ち上がり特性に基づく微分波形を発生させる微分回路11を構成している。
【0016】
(MI素子5の構成)
図2は、本発明に係るMI素子の構成を示す平面図である。MI素子5は、硼珪酸ガラスからなる平板状の基板50と、基板50の表面に高周波スパッタリングによって形成されるCo85Nb12Zrからなるセンサ素子51と、センサ素子51間を電気的に接続するCuからなる素子接合部52と、センサ素子51を外部に電気的に接続するCuからなる電極53とを有し、センサ素子51は、長さ1mm、幅20μm、厚さ4μmで形成されている。
【0017】
(磁気検出装置1の動作)
以下に、本実施の形態の磁気検出装置1の動作について説明する。信号発生部10の発振器2で2kHzの矩形波を発生させる。この矩形波は微分回路11の遅延信号発生器3に入力し、所定の遅延量を伴った遅延矩形波としてAND回路4に入力する。また、発振器2は遅延信号発生器3を経由せずにAND回路4に矩形波を出力する。AND回路4は、矩形波と遅延矩形波の論理積に基づくパルス信号をMI素子5に出力する。このパルス信号は、発振器2から出力される矩形波を形成する高周波成分の立ち上がり特性に相当する微分波形となり、そのことによってMI素子5に短時間で高い波高値の電圧が印加される。MI素子5は、パルス信号の波高値に基づく分解能で外部磁界を検出する。MI素子5の磁界検出量に基づく出力信号はアンプ6で増幅され、ピークホールド回路7で保持されるとともにA/D変換部8でアナログ信号からデジタル信号に変換された後にスペクトラムアナライザー9で可視表示される。
【0018】
図3は、6Ω/OeのMI素子についての磁場と波高値変化率の関係を示す特性図である。6Ω/OeのMI素子5では、磁気バイアスが7[Oe]から9[Oe]にかけて波高値変化率が最大となり、区間平均変化率は4.12%を示した。
【0019】
(本実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)信号発生部10の微分回路11で矩形波の論理積に基づいて高周波成分の立ち上がり特性に相当する微分波形であるパルス信号を生成し、MI素子5に入力するようにしたので、MI素子5に高い分解能を付与することができ、アンプ6のゲインが低くても検出精度が向上する。
(2)高周波成分の立ち上がり特性に基づく波高値の高いパルス信号を短時間でMI素子5に入力するので、MI素子5の発熱量を抑えて損傷を防ぐことができる。特に、交流バイアス信号として常時正弦波を印加する構成では、MI素子5の発熱量が大になることにより通電量に制約が生じ、高い分解能を容易に実現することは困難であるが、本実施の形態によれば、バッテリー等の電力的な制約がある条件下でも使用可能な省電力性を実現しながら高い磁気検出感度が得られる。
(3)信号発生部10を構成する発振器2、遅延信号発生器3、およびAND回路4を既存の半導体プロセスに基づいて容易に形成できるので、量産性に優れるとともに小型化を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気検出装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係るMI素子の構成を示す平面図である。
【図3】6Ω/OeのMI素子についての磁場と波高値変化率の関係を示す特性図である。
【図4】MI素子を用いた従来の磁気検出装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0021】
1…磁気検出装置、2…発振器、3…遅延信号発生器、4…AND回路、5…MI素子、6…アンプ、7…ピークホールド回路、8…A/D変換部、9…スペクトラムアナライザー、10…信号発生部、11…微分回路、20…MI素子、30…磁気検出装置、31…信号発生回路、32…アンプ、33…A/D変換部、34…スペクトラムアナライザー、50…基板、51…センサ素子、52…素子接合部、53…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗素子にバイアス信号を印加することに基づく分解能で磁気検出を行う磁気検出装置において、
前記磁気抵抗素子に第1の信号波と、前記第1の信号波に対して所定の遅延量を有する第2の信号波との論理積に基づくパルス信号を印加する信号発生部を有することを特徴とする磁気検出装置。
【請求項2】
前記信号発生部は、前記第1の信号波を出力する発振器と、
前記発振器から出力される前記第1の信号波を遅延させて前記第2の信号波を出力する遅延信号発生器と、
前記第1の信号波と前記第2の信号波の論理積に基づいて前記発振器から出力される前記第1の信号波を形成する高周波成分の立ち上がり特性に相当する微分波形を出力する論理積回路とを有する請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
前記発振器は前記第1の信号波として矩形波を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気検出装置。
【請求項4】
前記磁気抵抗素子は、マグネトーインピーダンス素子である請求項1に記載の磁気検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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