説明

磁気粘性流体デバイス

【課題】磁気粘性流体デバイス1の製造において、磁気粘性流体4を容易かつ確実に封入する。
【解決手段】磁気粘性流体デバイス1は、磁気粘性流体4を封入するアウタ部材2と、アウタ部材2に対し相対変位可能に構成されたインナ部材3と、アウタ部材2とインナ部材3との隙間に充填されている磁気粘性流体4に対して磁場を与える磁場生成手段34と、アウタ部材2内に開口する流入口224と、を備える。アウタ部材2及びインナ部材3の少なくとも一方にはフィン33が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気粘性流体を利用した各種のデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気粘性流体は、磁化可能な金属粒子(磁性粒子)を分散媒に分散させてなる液体である。この磁気粘性流体は、磁場の作用のないときには流体として機能する一方、磁場を作用させたときには、磁性粒子がクラスターを形成して液体が増粘し、液体の内部応力が増大する。その内部応力の増大により磁気粘性流体は、剛体のように機能してせん断流れや圧力流れに対して抗力を示すようになる。この磁気粘性流体は、ブレーキ、クラッチ及びダンパー等の、機械的に作動する各種のデバイスに利用されている(例えば特許文献1参照)。こうしたデバイスは、磁気粘性流体を封入するアウタ部材と、アウタ部材内で当該アウタ部材の内面に対し所定の隙間を空けて配置されると共に、アウタ部材に対し相対変位可能に構成されたインナ部材と、を備え、その隙間に磁気粘性流体が充填されることが基本構造である。隙間に充填された磁気粘性流体に対して磁場を与えることによって、隙間内における磁気粘性流体の粘度を変化させ、そのことがアウタ部材とインナ部材の相対変位特性が変化する。
【特許文献1】特表2006−505937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、磁気粘性流体を利用したデバイスを小型化したいという要求が存在する。そのためには、アウタ部材とインナ部材との隙間(以下、デバイスの隙間ともいう)を、できるだけ狭くしなければならない。
【0004】
しかしながら、デバイスの隙間を狭くした場合には、そのデバイスの製造が困難になるという不都合がある。つまり、こうした磁気粘性流体デバイスは、その製造時に、アウタ部材内に開口する流入口から磁気粘性流体を流入させることによって、アウタ部材内に磁気粘性流体を封入することになる。そのときに、アウタ部材とインナ部材との隙間に磁気粘性流体を充填しなければならないが、その隙間が狭くなるほど、磁気粘性流体を充填することが困難になる。そのため、例えば磁気粘性流体を高温にして粘度を低下させた状態で、かつ、アウタ部材内を真空状態にした上で、磁気粘性流体をアウタ部材内に流し入れる等の方策が必須になる。ところがそうした方策の必要性は、磁気粘性流体の封入工程作業を煩雑にし、製造コストの点で不利になるという問題がある。また、そうした方策を採用しても、デバイスの隙間が狭いときには、そこに磁気粘性流体が確実に充填されるとは限らず、量産時には、製品の特性ばらつきを生む虞がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、磁気粘性流体デバイスの製造において、磁気粘性流体を容易かつ確実に封入することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
磁気粘性流体デバイスは、磁気粘性流体と、前記磁気粘性流体を封入するアウタ部材と、前記アウタ部材内で当該アウタ部材の内面に対し所定の隙間を空けて配置されると共に、前記アウタ部材に対し相対変位可能に構成されたインナ部材と、前記隙間に充填されている前記磁気粘性流体に対し磁場を与えることによって、前記隙間内における前記磁気粘性流体の粘度を変化させる磁場生成手段と、前記アウタ部材内に開口する流入口と、を備え、前記アウタ部材及びインナ部材の少なくとも一方には、前記流入口を通じて前記アウタ部材内に前記磁気粘性流体を流入させるときに、前記アウタ部材及びインナ部材を相対変位させることに伴い、前記磁気粘性流体が前記隙間に充填されるように前記磁気粘性流体を流動させるフィンが形成されている。
【0007】
この構成によると、磁気粘性流体をアウタ部材内に流入させるときには、アウタ部材及びインナ部材を相対変位させる。ここでいう相対変位とは、(製造後の)デバイスの動作に関係した相対変位であってもよいし、デバイスの動作とは無関係な、デバイスの製造時における相対変位であってもよい。つまり、例えばシリンダ(アウタ部材)及びピストン(インナ部材)を含むダンパーの動作はピストンがシリンダの軸心方向に相対変位することであり、磁気粘性流体をシリンダ内に流入させるときには、そのシリンダの軸心方向にシリンダ及びピストンを相対変位させてもよい。これとは異なり、製造時にはピストンがシリンダの軸心を中心として相対回転することを可能にすることによって、磁気粘性流体をシリンダ内に流入させるときには、そのシリンダの軸心を中心としてシリンダ及びピストンを相対回転させてもよい。
【0008】
アウタ部材及びインナ部材の少なくとも一方にはフィンが形成されている。このフィンは、アウタ部材及びインナ部材の相対変位に伴い、流入口を通じてアウタ部材内に流入した磁気粘性流体を押し出し得る。それによって生じる流動により、磁気粘性流体はアウタ部材内の隅々にまで行き渡り、デバイスの隙間にも確実に充填される。こうして、磁気粘性流体の封入工程の作業を簡略化して製造コストの低減が図られると共に、磁気粘性流体デバイスの特性のばらつきが生じることも回避される。
【0009】
前記インナ部材は、所定の回転軸回りに、前記アウタ部材に対して相対回転可能に設けられ、前記流入口は、前記回転軸の近傍位置に開口しており、前記フィンは、前記アウタ部材及びインナ部材が前記回転軸回りに相対回転することによって、前記回転軸の近傍に流入した前記磁気粘性流体を径方向の外方に向かって流動させるように構成されている、としてもよい。
【0010】
デバイスの中心付近においてアウタ部材内に流入した磁気粘性流体が、フィンによって径方向の外方に向かって流動することによって、磁気粘性流体がアウタ部材内の隅々にまで、効率的に行き渡るようになる。その結果、デバイスの隙間にも磁気粘性流体が確実に充填されるようになり、デバイスの製造の容易化が図られると共に、デバイスの特性ばらつきを解消する上でも有利になる。
【0011】
前記磁気粘性流体は、ナノサイズの磁化可能な金属ナノ粒子を含む磁性粒子及び前記磁性粒子を分散させる分散媒を含有している、としてもよい。尚、ここでいうナノサイズとは、1〜数百ナノメートル(nm)程度の大きさを意味する。
【0012】
磁気粘性流体に含まれる磁性粒子の径が比較的大きいときには、デバイスの隙間を狭くしようとしても、その磁性粒子が、隙間を構成する壁面等に接触してしまうようになる。このことは、デバイスの動作抵抗を増大させたり、前記壁面や、デバイスのシールの摩耗を招いたりする。つまり、デバイスの隙間の最小限度は、磁気粘性流体に含有される磁性粒子の径によって制限される。
【0013】
前記の構成では、磁気粘性流体に含まれる磁性粒子がナノサイズであって極めて小さい。このため、デバイスの隙間を狭くしても、磁性粒子が、その隙間を構成する壁面に接触することが抑制され、デバイスの動作に支障を生じることなくかつ、前記壁面やシールの摩耗を招くことが防止される。つまり、隙間をできるだけ狭くすることでデバイスの小型化が図られる。それと共に、壁面やシール等の摩耗を未然に防止して、デバイスの長寿命化が図られる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によると、アウタ部材及びインナ部材の少なくとも一方にフィンを形成することによって、磁気粘性流体をアウタ部材内に封入するときに、磁気粘性流体を、デバイスの隙間内に確実にかつ容易に充填させることができる。そのことによって、量産時には、製造コストの低減を図ることができると共に、デバイス特性のばらつきを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
図1は、磁気粘性流体デバイスの例としてのブレーキ1の概略構成を示している。尚、図1等では、当該ブレーキ1によって制動力が付与される軸部材5が上下方向に延びるように配置されているが、ブレーキ1の方向を限定するものではない。尚、以下においては便宜上、図1における上側を上、下側を下として、ブレーキ1の詳細を説明する。
【0017】
ブレーキ1は、軸部材5に外挿されるアウタ部材2と、アウタ部材2内に配設されるインナ部材3とを含んで構成されている。
【0018】
アウタ部材2は、円筒状の周壁21における上下両端の開口が、それぞれ上壁22及び下壁23によって閉塞されることによって構成された、容器状の部材である。アウタ部材2は、その内部に、磁気粘性流体4を封入する。アウタ部材2の上壁22には、その中心位置に、支持部221が上方に突出するように形成されている。支持部221内には、軸部材5の上端部を回転可能に支持する軸受222が取り付けられていると共に、アウタ部材2内をシールするためのシール部材223が配設されている。上壁22における支持部221の近傍には、上壁22を厚み方向に貫通する貫通孔224が形成されており、この貫通孔224は、磁気粘性流体4を内部に封入するときの流入口224として機能する。流入口224は、封止栓225が取り付けられることによって封止されている。
【0019】
アウタ部材2の下壁23には、その中心位置に、軸部材5が貫通して配置される貫通孔231が形成されている。この貫通孔231には、軸部材5の中間部を回転可能に支持する軸受232と、シール部材233とがそれぞれ配設されている。
【0020】
アウタ部材2の周壁21には、その内周面から、径方向の内方に向かって突出するように、複数枚の(図例では3枚の)ディスク211が、周壁21と一体となるように設けられている。3枚のディスク211は、アウタ部材2における上下方向の中間位置において、上下方向に等間隔を空けて配設されている。各ディスク211は、上向きの面と下向きの面とが上下方向に相対することによって所定の厚みを有すると共に、周壁21における内周面に沿ってその全周に亘って延びることで環状に形成されている。それによって、各ディスク211における径方向の中心側には、インナ部材3が内挿される孔が形成されることになる。アウタ部材2の周壁21にはまた、隣合うディスク211の間に相当する位置に、厚み方向に貫通する貫通孔212が形成されており、この貫通孔212は、磁気粘性流体4を封入するときにアウタ部材2内の空気を抜くための空気抜き孔212として機能する。この空気抜き孔212もまた、封止栓213が取り付けられることによって封止されている。
【0021】
インナ部材3は、軸部材5に対し外嵌されて、その軸部材5と回転一体に構成される部材であり、概略円柱状の本体部31と、複数枚の(図例では4枚の)ディスク32と、フィン33とを有して構成されている。本体部31は、軸部材5に対し外嵌される部分であり、その内部には、磁場生成手段としてのコイル34が配設されている。このコイル34に対して電流を供給する(尚、その供給源の図示は省略する)ことによって、アウタ部材2内の磁気粘性流体4に対して磁場が与えられる。
【0022】
ディスク32は、本体部31と回転一体となるように設けられている。4枚のディスク32は、本体部31の上端から下端の間において、上下方向に互いに等間隔を空けて配設されている。各ディスク32は、本体部31の外周面から径方向の外方に向かって突出するように設けられており、各ディスク32の外周縁は、アウタ部材2の周壁21の内周面に対し、所定の隙間を空けて位置している。アウタ部材2のディスク211と、インナ部材3のディスク32とは、上下方向に交互となるように配設され、そのアウタ部材2のディスク211とインナ部材3のディスク32との間に、磁気粘性流体4が充填される隙間が形成されることになる。ここで、このブレーキ1では、後述するように磁気粘性流体4に含有される磁性粒子がナノサイズにされており、これによって、アウタ部材2のディスク211と、インナ部材3のディスク32との隙間が極めて狭くなるように構成されている。このことによって、このブレーキ1は、全体として小型化が図られている。尚、図例では理解容易のために、隙間の大きさを誇張して描いている。
【0023】
フィン33は、インナ部材3の上端面から上方に突出するように、本体部31及びディスク32と回転一体に設けられており、それによってフィン33は、アウタ部材2の上壁22の下面とインナ部材3の上端面との間に位置している。フィン33は、図2に示すように、周方向に互いに等角度を空けて4つ配設されており、各フィン33は、インナ部材3の上端面において、軸部材5の外周面に相当する中心側位置から径方向の外方に向かって、湾曲しながら延びて配設されている。
【0024】
尚、図1に示すブレーキ1は概略的に描いており、例えばインナ部材3をアウタ部材2内に配設する上で必要となる具体構成等については、図示を省略している。そうした構成は、適宜の公知の構成を採用することが可能である。
【0025】
磁気粘性流体4は、磁性粒子を分散媒に分散させてなる液体であり、本実施形態では特に、その磁性粒子が、ナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)からなる。磁性粒子は、磁化可能な金属材料からなる。金属材料に特に制限はないが、軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金を例示することができる。金属ナノ粒子は、その平均粒子径が、20〜500nmであることが望ましく、より好ましくは、70〜200nmである。平均粒子径が70nm以上であるときには、高いMR効果が得られると共に、平均粒子径が200nm以下であるときには、磁気粘性流体4の沈降性の悪化を回避することができる。尚、磁性粒子には、金属ナノ粒子が凝集した凝集体を含んでいてもよい。
【0026】
分散媒は、特に限定されるものではないが、一例として疎水性のシリコーンオイルを挙げることができる。採用する分散媒の種類に応じて、磁性粒子に対し、その分散媒と親和性の高い表面改質を施すようにすればよい。こうすることで、磁性粒子の分散安定性が高まる。例えば疎水性のシリコーンオイルを分散媒として採用する場合、磁性粒子にはカップリング剤による表面改質を施すことが好ましい。
【0027】
磁気粘性流体4における磁性粒子の配合量は、例えば3〜40vol%とすればよい。
【0028】
磁気粘性流体4にはまた、所望の各種特性を得るために、各種の添加剤を添加することも可能である。
【0029】
以上のような構成のブレーキ1では、コイル34に所定電流を供給することによって磁場が生成され、アウタ部材2のディスク211とインナ部材3のディスク32との隙間に充填されている磁気粘性流体4の粘度が高くなる。その結果、ディスク211,32間のせん断応力が増大し、回転駆動する軸部材5に制動力が付与されることになる。
【0030】
この構成のブレーキ1の製造時において、アウタ部材2内に磁気粘性流体4を封入するときには、図1に示すようにアウタ部材2内にインナ部材3を組み付けた状態において、流入口224及び空気抜き孔212をそれぞれ開放した状態にし、流入口224を通じてアウタ部材2内に磁気粘性流体4を流入させる。このときに、例えばインナ部材3を回転させることで、アウタ部材2及びインナ部材3を相対回転させる。この相対回転に伴い、インナ部材3に設けたフィン33が回転するようになり、このことにより、軸部材5の近傍位置においてアウタ部材2内に流入した磁気粘性流体4は、フィン33によって径方向の外方に向かって押し出されるようになる。こうして磁気粘性流体4は、ブレーキ1の中心側から径方向の外方に向かって流動し、アウタ部材2とインナ部材3との間の隙間を通ってアウタ部材2内の隅々にまで行き渡るようになる。こうして、特に隙間の狭い、アウタ部材2のディスク211とインナ部材3のディスク32との隙間にも、磁気粘性流体4が充填されるようになる。こうして、インナ部材3に形成したフィン33によって、磁気粘性流体4の封入を容易かつ確実に行うことができる。これは特に、当該ブレーキ1のように、隙間の狭いデバイスにおいて効果的である。その結果、製造コストの低減化及び特性ばらつきの抑制を図ることができる。
【0031】
尚、アウタ部材2内への磁気粘性流体の封入に際して、磁気粘性流体4の温度を高めてその粘度を低下させるようにしてもよいし、アウタ部材2内を真空にするようにしてもよい。こうした方策を組み合わせることによって、磁気粘性流体4の封入をより一層確実に行い得るようになる。
【0032】
図3は、ブレーキ1の変形例を示している。このブレーキ1は、インナ部材3にフィンを設ける代わりに、アウタ部材2にフィン24を設けている。尚、図3に示すブレーキ1において、図1に示すブレーキ1と同じ構成については、同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0033】
このブレーキ1において、フィン24は、アウタ部材2の上壁22の下面から下方に突出するように形成されている。その省略な図示は省略するが、フィン24は、図1に示すブレーキ1と同様に、複数(例えば4つ)配設されており、複数のフィン24は、周方向に互いに等角度を空けて配設されている。各フィン24は、軸部材5の近傍位置である中心側位置から径方向の外方に向かって、湾曲しながら延びて配設されている。
【0034】
この構成においても、磁気粘性流体4をアウタ部材2内に封入するときには、アウタ部材2及びインナ部材3を相対回転させる。この相対回転に伴い、流入口224を通じてアウタ部材2内に流入した磁気粘性流体4は、ブレーキ1の中心側から径方向の外方に向かって流動するようになり、アウタ部材2とインナ部材3との間の隙間を通ってアウタ部材2内の隅々にまで行き渡るようになる。こうして、磁気粘性流体4の封入を容易かつ確実に行うことができる。尚、アウタ部材2とインナ部材3との双方にフィンを設けるようにしてもよい。
【0035】
ブレーキ1においてフィンを形成する位置は、図1,3に示すように、アウタ部材2の上壁22の下面とインナ部材3の上端面との間に限定されるものではなく、適宜の位置に形成することができる。例えばアウタ部材2及び/又はインナ部材3における、ディスク等にフィンを形成するようにしてもよい。また、フィンの形状等は、それを配置する位置と磁気粘性流体4を流動させたい方向とに応じて、適宜設定すればよい。図2等に示すように、必要に応じてフィンを湾曲させてもよいし、又は、フィンを直線状に形成してもよい。
【0036】
アウタ部材2内に磁気粘性流体4を流入させるための流入口の位置も、図1等に示すようにアウタ部材2の上壁22に限定されるものではなく、例えば下壁23等、適宜設定することが可能である。また空気抜き孔の位置も、流入口の位置に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
さらに、流入口をインナ部材3側に設けるようにしてもよい。図示は省略するが、例えば軸部材5を中空状に形成すると共に、その軸部材5における上下方向の途中位置に、インナ部材3を介してアウタ部材2内に開口する連通孔を形成するようにしてもよい。こうした連通孔は1つであってもよいし、複数であってもよい。この構成では、磁気粘性流体4を、軸部材5の内部から前記連通孔を通じて、アウタ部材2内に流入させることになる。従って当該連通孔の開口が、流入口に相当する。こうした構成を採用した場合にも、フィンは、アウタ部材2及び/又はインナ部材3において、適宜の位置に設けることが可能である。
【0038】
また、ブレーキの構成は、前記の構成に限らず、適宜変更することが可能である。例えばディスクの枚数等は、図例には限定されない。
【0039】
本発明はブレーキ1への適用に限定されない。本発明は、例えばクラッチやダンパー等の、アウタ部材及びインナ部材を含む、各種の磁気粘性流体デバイスに広く適用することが可能である。また、磁気粘性流体の封入時に行うアウタ部材及びインナ部材の相対移動は、前述のように相対回転に限定されない。デバイスの構造に応じて直線的な相対移動であってもよい。フィンの配置やその形状は、アウタ部材及びインナ部材の形状、その相対移動の方向、流入口の位置等を勘案して、適宜設定すればよい。
【0040】
さらに、磁気粘性流体4は、そこに含まれる磁性粒子がナノサイズの磁気粘性流体に限定されない。磁性粒子の大きさがそれよりも大きいような磁気粘性流体であってもよい。但し、磁気粘性流体デバイスの小型化を図る観点からは、磁性粒子がナノサイズの磁気粘性流体であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、磁気粘性流体を利用した各種のデバイスについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】磁気粘性流体を利用したブレーキの概略構成を示す断面図である。
【図2】インナ部材の斜視図である。
【図3】図1とは異なる構成のブレーキを示す図1対応図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ブレーキ(磁気粘性流体デバイス)
2 アウタ部材
24 フィン
224 流入口
3 インナ部材
33 フィン
34 コイル(磁場生成手段)
4 磁気粘性流体
5 軸部材(回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気粘性流体と、
前記磁気粘性流体を封入するアウタ部材と、
前記アウタ部材内で当該アウタ部材の内面に対し所定の隙間を空けて配置されると共に、前記アウタ部材に対し相対変位可能に構成されたインナ部材と、
前記隙間に充填されている前記磁気粘性流体に対し磁場を与えることによって、前記隙間内における前記磁気粘性流体の粘度を変化させる磁場生成手段と、
前記アウタ部材内に開口する流入口と、を備え、
前記アウタ部材及びインナ部材の少なくとも一方にはフィンが形成されている磁気粘性流体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気粘性流体デバイスにおいて、
前記インナ部材は、所定の回転軸回りに、前記アウタ部材に対して相対回転可能に設けられ、
前記流入口は、前記回転軸の近傍位置に開口しており、
前記フィンは、前記アウタ部材及びインナ部材が前記回転軸回りに相対回転することによって、前記回転軸の近傍に流入した前記磁気粘性流体を径方向の外方に向かって流動させるように構成されている磁気粘性流体デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気粘性流体デバイスにおいて、
前記磁気粘性流体は、ナノサイズの磁化可能な金属ナノ粒子を含む磁性粒子及び前記磁性粒子を分散させる分散媒を含有している磁気粘性流体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−159776(P2010−159776A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−733(P2009−733)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】