説明

磁気結合が低減された集積回路インダクタ

半導体基板上に形成される第1のインダクタ要素と、第1のインダクタ要素に近接して半導体基板上に形成される少なくとも1つの第2のインダクタ要素とを含む、ICインダクタ構造が提供される。第1のインダクタ要素は、それに関連する第1の有効磁界方向を有し、第2のインダクタ要素は、それに関連する第2の有効磁界方向を有する。第1および第2のインダクタ要素は、第1および第2の有効磁界方向間に非ゼロの角度を作るように、互いに対して向き合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、電気、電子、およびコンピュータ技術に関し、より詳細には、集積回路(IC)インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、通信システム、信号処理システム、フィルタ、タンク回路などを含む広い範囲の用途にインダクタを使用する。これらの電子システムは、より集積し、また縮小し、実質的にはシステム・オンチップ(SOC)になると、回路設計者は、インダクタなどの大きい補助構成要素の使用を断つことを追及してきた。彼らの設計において、インダクタを除去することができないとき、技術者は、そのようなオンチップ・インダクタを含むことを容易にするために、彼らが使用するインダクタのサイズを縮小することを追及してきた。
【0003】
オンチップ・インダクタを一体化するための一手法は、個別のインダクタよりもむしろ模擬インダクタを使用することである。容易に小型化される能動回路を使用するインダクタを模擬することは、電子システムにおいて、実在のインダクタの使用を断つための一手法である。不都合なことに、模擬インダクタ回路は、高い寄生効果をたびたび示し、個別のインダクタを使用して構築される回路よりも著しく大きいノイズをしばしば発生させ、それ故に、望ましくない。
【0004】
IC製造技術を使用して、スパイラル・インダクタが結合する集積回路(IC)と同じ基板上にスパイラル・インダクタを作ることによって、携帯電話、モデムなどの小型通信システムに使用するためのインダクタを小型化することができる。たとえば、インダクタンス・キャパシタンス(LC)タンク発振器の従来の大部分の実装形態は、いずれの結合特性からも独立して個別のインダクタの性能を最適化するように設計される対称設計の一体型スパイラル・インダクタを使用する。たとえば、SERDES(シリアライザ/デシリアライザ)および一体型無線機などのいくつかの応用例において、わずかに異なる周波数で(たとえば、400パーツ・パー・ミリオン(ppm)離間して)動作する2つの送信および/または受信チャンネルがあるとき、インダクタは、磁気結合し、不要な干渉信号を発生させる可能性がある。さらに、スパイラル・インダクタは、IC基板上の利用可能な表面積の不相応に大きい割合を占有する。
【0005】
インダクタ結合を低減する従来の手法は、インダクタの電流を低下させ、より低い磁束密度をもたらすステップか、または、結合作用が隣接するインダクタ間の距離の2乗の関数として減少するので、インダクタをさらに物理的に離間させるステップのいずれかを含んでいた。スパイラル・インダクタの周りに接地シールド(ファラデー・ケージなど)を使用することによって、結合を低減する試みも行われてきた。しかし、これらの方法は、電界干渉を低減するだけで、スパイラル・インダクタ間の結合の主要発生源である磁気結合を低減しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、従来の手法が示す1つまたは複数の制限を受けないICインダクタを形成する技術の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、ICインダクタが相対的に互いに極めて近接して配置されるとき、そのようなインダクタ間の磁気結合を低減するために、指向性電磁放射を有するICインダクタを形成する技術を提供することにより、上述の必要性を満足させる。隣接するICインダクタ間の結合を低減することにより、LC発振器ならびにICインダクタを使用するその他の回路および応用例などを含む多重チャンネル回路間の絶縁、したがって性能を好都合にも改善することができる。さらに、本発明の態様により、隣接するICインダクタ間のそのような低減された結合を達成することができ、インダクタ間の物理的間隔を増加させる必要がなく、それによって、必要な面積および対応するIC費用を削減する。
【0008】
本発明の一態様によると、半導体基板上に形成される第1のインダクタ要素と、第1のインダクタ要素に近接して半導体基板上に形成される少なくとも1つの第2のインダクタ要素とを含む、ICインダクタ構造が提供される。第1のインダクタ要素は、それに関連する第1の有効磁界方向を有し、第2のインダクタ要素は、それに関連する第2の有効磁界方向を有する。第1および第2のインダクタ要素は、第1および第2の有効磁界方向間に非ゼロの角度を作るように、互いに対して向き合う。
【0009】
本発明の別の態様によると、電子システムは、少なくとも1つのインダクタ構造を含む少なくとも1つの集積回路を備える。このインダクタ構造は、半導体基板上に形成され、それに関連する第1の有効磁界方向を有する第1のインダクタ要素と、第1のインダクタ要素に近接して半導体基板上に形成される少なくとも1つの第2のインダクタ要素とを含む。第2のインダクタ要素は、それに関連する第2の有効磁界方向を有する。第1および第2のインダクタ要素は、第1および第2の有効磁界方向間に非ゼロの角度を作るように、互いに対して向き合う。
【0010】
本発明のさらに別の態様によると、少なくとも2つの集積回路インダクタ間の磁気結合を低減する方法は、それに関連する第1の有効磁界方向を有する、半導体基板上の第1のインダクタ要素を形成するステップと、それに関連する第2の有効磁界方向を有し、第1のインダクタ要素に近接する半導体基板上の少なくとも1つの第2のインダクタ要素を形成するステップとを含み、第1および第2のインダクタ要素は、第1および第2の有効磁界方向間に非ゼロの角度を作るように、互いに対して向き合う。
【0011】
本発明のこれらおよびその他の特徴、目的ならびに利点は、その実例となる実施形態の以下の詳細な説明より明らかになるが、その説明は添付の図面と併せて読まれたい。
【0012】
以下の図面は、例示のためだけで、限定されることなく示され、図面のいくつかの図を通して、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の実施形態による、実例となるスパイラル・インダクタの概念図である。
【図1B】本発明の実施形態による、例示的な指向性インダクタの概念図である。
【図2A】本発明の実施形態による、例示的なスパイラル・インダクタを表す平面図である。
【図2B】本発明の実施形態による、1対の例示的な指向性インダクタを表す平面図である。
【図3】本発明の実施形態による、例示的な指向性インダクタを表す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による、それぞれのインダクタに対応する放射磁界波が互いに効果的に打ち消し合うように配置される例示的な1対の指向性インダクタを表す概念図である。
【図5】本発明の実施形態による、少なくとも第1および第2の指向性インダクタを含む例示的な集積回路インダクタ構造の実装形態を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、本明細書において、例示的なICインダクタ構造に関して説明する。しかし、本発明の技術は、本明細書に示され、また説明されたICインダクタ構造には限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明の実施形態は、2つ以上のICインダクタが相対的に互いに極めて近接して配置されるとき、それらの間の磁気結合を低減する技術を広く対象とする。本発明の好ましい実施形態をシリコンウエハ内に作ることができるが、その代わりに、本発明の実施形態は、それらだけには限定されないが、ガリウムヒ素(GaAs)、リン化インジウム(InP)などを含むその他の材料を含むウエハ内に作ることができる。
【0015】
図1Aおよび図1Bは、それぞれ、本発明の実施形態による、実例となるスパイラル・インダクタ100および例示的な指向性インダクタ150の概念図である。図1Aを参照して、実例となるスパイラル・インダクタ100の平面図を示す。スパイラル・インダクタ100は、複数の同心導体ループ(すなわち、コイル)102、104、106、および108を含むことができる。矢印110は、インダクタ100の中心を通る磁束線を表し、したがって、有効磁界強度方向を示す。それぞれの導体ループ102、104、106、108は、共通の中心を共有するので、スパイラル・インダクタ100の中心に強力なB−磁界が集中する。
【0016】
明確にするためであるが、一般に物理学者が磁界と呼ぶ可能性がある2つの量、すなわち、HおよびBが存在する。用語「磁界」は、歴史的には、H用に確保され、Bは「磁気誘導」と呼ばれたが、Bは現在、より基本的な要素であると理解される。ベクトル場Hは、電気技術者の間では磁界強度または磁界の強さとして知られ、物理学者の間では補助磁界または磁場としても知られる。ベクトル場Bは、電気技術者の間では、物理学者によって使用されるように、磁束密度または磁気誘導、あるいは単純に磁界として知られる。
【0017】
図1Aに示されるように、点線112および114は、それぞれの導体ループ102、104、106、108の個別の磁束線を表し、完成した磁束ループを示す。スパイラル・インダクタ100の指向性は、上から下を見たときに対称性があるので、外側に拡がる放射エネルギーは、全方向にほぼ等しく伝送され、それによって、その他の隣接する垂直指向性のインダクタとの干渉の可能性を高くする。
【0018】
図1Bを参照して、例示的な指向性インダクタ(または、アンテナ)150の平面図を示す。指向性インダクタ150は、複数の導体ループ152、154、156、158、および160を含み、それぞれの導体ループは、円弧または別の経路に沿って、隣接する導体ループに少なくとも部分的に重なるように配置されるのが好ましい。指向性インダクタ150の説明のための比喩として、拡げられ(たとえば、円弧または別の線状に)、また平坦にされたばねのように形成されるインダクタを考えられたい。それぞれの導体ループが共通の中心を共有するスパイラル・インダクタ100とは対照的に、指向性インダクタ150のそれぞれの導体ループ152、154、156、158、160の各々が、それに関連する個々のB−磁界方向を有する。矢印162は、それぞれの導体ループ152、154、156、158、160の中心を通る結合(合成)磁束線を表し、したがって、円弧に沿って進む指向性インダクタ150の有効磁界強度方向を示す。
【0019】
図1Bに示されるように、磁束帰還経路とみなすことができる点線164は、それぞれの導体ループ152、154、156、158、160の個別の磁束線を表し、完成した磁束ループを示す。上述のように、スパイラル・インダクタの指向性は、上から下を見たときに対称性があるので、放射エネルギーは、全方向にほぼ等しく伝送される。しかし、指向性インダクタ150の場合には、磁束帰還経路164は、大部分がインダクタの物理的中心の一方の側に向かう。このように形成されるインダクタは、好都合にも、放射磁界波が互いに直交するように、2つ以上の隣接する指向性インダクタを配置するようにする。
【0020】
図2Aおよび図2Bは、本発明の実施形態による、それぞれ、例示的なスパイラル・インダクタ200および1対の例示的な指向性インダクタ250および252を表す平面図である。図2Aに示されるように、スパイラル・インダクタ200は、図1Aに表された実例となるスパイラル・インダクタ100と同様に、全方向に等しく放射する磁束線202を有する。その結果、上述のように、その他の隣接するインダクタとの干渉の可能性が高くなる。図2Bにおいて、指向性インダクタ250、252の対のそれぞれは、2つの電気導体ループを含む。2つの導体ループを有するそれぞれのインダクタが表されているが、本発明は、いずれの特定の数のループにも限定されない。さらに、指向性インダクタ250、252のそれぞれは、同数のループを有する必要がない。
【0021】
より詳細には、第1の指向性インダクタ250は、傾斜線に沿った中心線軸を有した状態で配置される垂直指向性の第1の導体ループ254および垂直指向性の第2の導体ループ256を含む。同様にして、第2の指向性インダクタ252は、傾斜線に沿った中心線軸を有した状態で配置される垂直指向性の第1の導体ループ258および垂直指向性の第2の導体ループ260を含む。第1および第2の指向性インダクタ250、252は、それぞれ、大部分がインダクタの物理的中心の一方の側に向かう対応する磁束線262および266を有する。第1および第2の指向性インダクタ250、252は、それぞれ、第1および第2の指向性インダクタに対応する磁界H264および268によって示されるように、それらのそれぞれの磁束線が互いに直交方向を向くよう、互いに対して配置されるのが好ましい。図に示されるように、磁界H264および268は、互いに打ち消し合う。指向性インダクタ250、252の対は、直交方向を向く磁束線を有した状態で互いに対して配置されるが、本発明は、いずれの特定の磁界指向性にも限定されない。
【0022】
図3は、本発明の実施形態による、例示的な指向性インダクタ300を表す斜視図である。指向性インダクタ300は、たとえば、図2Bに示された実例となる指向性インダクタ250または252の1つの側面斜視図を表すことができる。指向性インダクタ300は、複数の導体ループ302を含むことが好ましいが、本発明は、いずれの特定の数のループにも限定されない。さらに、本発明は、まったく導体ループなしで(たとえば、直線ワイヤとして)実装される指向性インダクタを企図する。
【0023】
矢印304は、それぞれの導体ループ302の中心を通る結合(合成)磁束線を表し、したがって、導体ループを通って流れる電流の所与の方向に対する指向性インダクタ300の有効磁界強度方向を示す。磁束帰還経路とみなすことができる点線矢印306は、それぞれの導体ループ306の個別の磁束線を表し、完成した磁束ループを示す。指向性インダクタ300の磁束帰還経路306は、大部分がインダクタの物理的中心の一方の側に向かい、好都合にも、放射磁界波が互いに効果的に打ち消し合うように、2つ以上の隣接する指向性インダクタを配置するようにする。
【0024】
図4は、本発明の実施形態による、それぞれのインダクタに対応する放射磁界波が互いに効果的に打ち消し合うように配置される例示的な1対の指向性インダクタ402および404を表す概念図である。図に示されるように、2つの指向性インダクタ402および404は、互いにほぼ直交方向を向くが、本発明は、インダクタ間のいずれの特定の指向性角度にも限定されない。
【0025】
より詳細には、集積回路インダクタ構造400は、半導体基板(たとえば、シリコン、ガリウムヒ素など)上に形成され、それに関連する第1の有効磁界方向(たとえば、矢印406によって表されるような)を有する第1のインダクタ要素402と、第1のインダクタ要素に近接して半導体基板上に形成され、それに関連する第2の有効磁界方向(たとえば、矢印408によって表されるような)を有する少なくとも1つの第2のインダクタ要素404とを含むことができる。第1および第2のインダクタ要素402および404は、それぞれ、第1および第2の有効磁界方向間に非ゼロの角度を作るように、互いに対して向き合う。2つの指向性インダクタだけが図4に示されるが、本発明の別の態様により、2つよりも多いインダクタを使用することができることを理解されたい。
【0026】
図4より明らかなように、指向性インダクタ402、404の対を単純なワイヤとして実装することができる。第1の指向性インダクタ402を通って流れる電流I1は、右手の法則によって、第1のインダクタの上でページの中に導かれ第1のインダクタの下でページの外に出る磁束ループ406を生成する。同様にして、第2の指向性インダクタ404を通って流れる電流I2は、第2の指向性インダクタの右でページの中に導かれ第2の指向性インダクタの左でページの外に出る磁束ループ408を生成する。指向性インダクタは、インダクタのそれぞれの磁界方向が互いに対してほぼ直交するように配置されるのが好ましいが、それぞれのインダクタの磁界方向間で基本的に非ゼロの角度が、企図される。
【0027】
図5は、本発明の実施形態による、少なくとも1つの第1の指向性インダクタ502および第2の指向性インダクタ504を含む例示的な集積回路インダクタ構造500の実装形態を表す平面図である。上述のように、指向性インダクタは、それだけには限定されないが、シリコンなどの基板上に形成されるのが好ましい。導体ループ(コイルなど)の磁束線のそれぞれの方向が、矢印514および526によって表されるように(インダクタのそれぞれを通過する電流に特定の方向を与えている)、以上に説明したような、互いに対して非ゼロの角度で向き合うように、第1および第2の指向性インダクタ502、504を形成するのに、様々な金属層または別の導体材料層を使用するのが好ましい。
【0028】
上述のように、本発明は、インダクタ要素の所与の1つを形成する、いずれの特定の数の導体ループにも限定されない。本明細書で使用される用語「導体ループ」は、ループの始点および終点がほぼ同じ位置にある(平面図より)という意味において、ほぼ閉じている導体(たとえば、配線、ワイヤなど)を広く呼ぶことを目的とするのを理解されたい。さらに、導体ループは、ほぼ円形であるとして表されているが、導体ループの形状は、あまり限定されず、本発明の実施形態は、正方形、長方形、楕円形、台形などを含む導体ループの別の形状を企図する。
【0029】
詳細には、第1の指向性インダクタ502は、図示されるように、1つのループの少なくとも一部分が隣接するループに重なるように構成される複数の導体ループを含むのが好ましい。たとえば、第1の導体ループ506の第1の端部は、第1の指向性インダクタ502の第1の終端部507を形成し、第1の導体ループの第2の端部は、第2の導体ループ508の第1の端部に接続される。第2の導体ループ508の第2の端部は、第3の導体ループ510の第1の端部に接続され、第3の導体ループの第2の端部は、第1の指向性インダクタ502の第2の終端部511を形成する。
【0030】
第1の導体ループ506は、金属−7(M7)層とすることができる第1の金属層内の配線として形成することができる。第2の導体ループ508は、金属−6(M6)層とすることができる第2の金属層内の配線として形成することができる。第3の導体ループ510は、金属−5(M5)層とすることができる第3の金属層内の配線として形成することができる。第1の指向性インダクタ502中のそれぞれの導体ループ506、508、510を形成する配線のそれぞれは、標準のフォトリソグラフィ技術(パターニングおよびエッチングなど)を使用して形成されるのが好ましい。2つの導体層間の電気接続は、1つまたは複数のビアあるいは別の接続を使用して行うことができる。たとえば、第1の導体ループ506と第2の導体ループ508との間の接続は、第1のビア509を使用して行うことができ、第2の導体ループと第3の導体ループ510との間の電気接続は、第2のビア512を使用して行うことができる。
【0031】
同様にして、第2の指向性インダクタ504は、図示されるように、1つのループの少なくとも一部分が隣接するループに重なる、複数の導体ループを含むのが好ましい。たとえば、第1の導体ループ516の第1の端部は、第2の指向性インダクタ504の第1の終端部517を形成し、第1の導体ループの第2の端部は、第2の導体ループ518の第1の端部に接続される。第2の導体ループ518の第2の端部は、第3の導体ループ520の第1の端部に接続され、第3の導体ループの第2の端部は、第2の指向性インダクタ504の第2の終端部519を形成する。
【0032】
第1の導体ループ516は、金属−7(M7)層とすることができる第1の金属層内の配線として形成することができる。第2の導体ループ518は、金属−6(M6)層とすることができる第2の金属層内の配線として形成することができる。第3の導体ループ520は、金属−5(M5)層とすることができる第3の金属層内の配線として形成することができる。第2の指向性インダクタ504中のそれぞれの導体ループ516、518、520を形成する配線のそれぞれは、標準のフォトリソグラフィ技術(パターニングおよびエッチングなど)を使用して形成されるのが好ましい。2つの導体層間の電気接続は、1つまたは複数のビアあるいは別の接続手段を使用して行うことができる。たとえば、第1の導体ループ516と第2の導体ループ518との間の接続は、第1のビア522を使用して行うことができ、第2の導体ループと第3の導体ループ520との間の電気接続は、第2のビア524を使用して行うことができる。
【0033】
金属層M7、M6、およびM5を使用する指向性インダクタ502、504を説明しているが、本発明は、いずれの特定の金属層にも限定されないことを理解されたい。さらに、使用される金属層は、隣接する金属層である必要はない。本明細書にて教示を受ける当業者にはわかるように、たとえば、第1の導体ループ506をM7内に形成し、第2の導体ループ508をM5内に形成し、第3の導体ループ510をM3内に形成し、ビア509がM7およびM5の配線を共に接続し、ビア512がM5およびM3の配線を共に接続することができる。
【0034】
本発明の技術の少なくとも一部分は、1つまたは複数の集積回路内に実装することができる。集積回路を形成するとき、半導体ウエハの表面上の繰返しパターン内に、通常、ダイが作られる。ダイのそれぞれは、本明細書で説明した構造を含み、またその他の構造または回路を含むことができる。個別のダイは、ウエハから切断またはダイス切断され、次に集積回路としてパッケージングされる。当業者は、集積回路を製造するために、ウエハをダイス切断する方法およびダイをパッケージングする方法がわかるであろう。そのように製造された集積回路は、本発明の一部分とみなされる。
【0035】
本発明による集積回路は、インダクタを使用する、いずれかの応用例および/または電子システムに使用することができる。本発明を実装する適切なシステムは、それらだけには限定されないが、通信システム(たとえば、送信機および/または受信機を含む)、携帯通信機器(携帯電話など)、および信号処理システム(フィルタなど)などを含むことができる。そのような集積回路を内蔵するシステムは、本発明の一部分とみなされる。当業者は、本明細書で提供された本発明の教示を受ければ、本発明の技術のその他の実装形態および応用例を企図することができる。
【0036】
添付の図面を参照して、本明細書で、本発明の実例となる実施形態を説明してきたが、本発明は、それらの厳密な実施形態に限定されず、当業者は、その中で、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、様々なその他の変更および修正をすることができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成され、それに関連する第1の有効磁界方向を有する、第1のインダクタ要素と、
前記第1のインダクタ要素に近接して前記半導体基板上に形成され、それに関連する第2の有効磁界方向を有する、少なくとも1つの第2のインダクタ要素とを含み、前記第1および第2のインダクタ要素は、前記第1および第2の有効磁界方向間に非ゼロの角度を作るように、互いに対して向き合う、集積回路インダクタ構造。
【請求項2】
前記第1および第2の有効磁界方向間の角度は、90度にほぼ等しい、請求項1に記載のインダクタ構造。
【請求項3】
前記第1および第2のインダクタ要素のそれぞれは、同じインダクタ構造上に1つまたは複数の個別の巻回を含む、請求項1に記載のインダクタ構造。
【請求項4】
前記第1および第2のインダクタ要素のそれぞれは、指向性磁界を有するスパイラル・インダクタを含む、請求項1に記載のインダクタ構造。
【請求項5】
前記第1および第2のインダクタ要素の少なくとも1つは、円弧に沿った中心線軸を有する垂直指向性のコイルを含む、請求項1に記載のインダクタ構造。
【請求項6】
前記第1および第2のインダクタ要素の少なくとも1つは、傾斜線に沿った中心線軸を有する垂直指向性のコイルを含む、請求項1に記載のインダクタ構造。
【請求項7】
前記インダクタ要素の少なくとも1つは、複数の導体ループを含み、それぞれの導体ループの少なくとも一部分が前記導体ループの隣接する導体ループに重なる、請求項1に記載のインダクタ構造。
【請求項8】
前記少なくとも1つのインダクタ要素中のいずれか2つの隣接する導体ループは、集積回路内のそれぞれの異なる導体層内に形成される、請求項7に記載のインダクタ構造。
【請求項9】
前記少なくとも1つのインダクタ要素内の前記導体ループは、ほぼ円形である、請求項7に記載のインダクタ構造。
【請求項10】
少なくとも1つのインダクタ構造を含む少なくとも1つの集積回路を備える、電子システムであって、
前記少なくとも1つのインダクタ構造は、
半導体基板上に形成され、それに関連する第1の有効磁界方向を有する第1のインダクタ要素と、
前記第1のインダクタ要素に近接して前記半導体基板上に形成され、関連する第2の有効磁界方向を有する、少なくとも1つの第2のインダクタ要素とを含み、前記第1および第2のインダクタ要素は、前記第1および第2の有効磁界方向間に非ゼロの角度を作るように、互いに対して向き合う、電子システム。
【請求項11】
前記第1および第2の有効磁界方向間の角度は、90度にほぼ等しい、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1および第2のインダクタ要素のそれぞれは、同じインダクタ構造上に1つまたは複数の個別の巻回を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1および第2のインダクタ要素のそれぞれは、指向性磁界を有するスパイラル・インダクタを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1および第2のインダクタ要素の少なくとも1つは、円弧に沿った中心線軸を有する垂直指向性のコイルを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1および第2のインダクタ要素の少なくとも1つは、傾斜線に沿った中心線軸を有する垂直指向性のコイルを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記インダクタ要素の少なくとも1つは、複数の導体ループを含み、それぞれの導体ループの少なくとも一部分が前記導体ループの隣接する導体ループに重なる、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのインダクタ要素内のいずれか2つの隣接する導体ループは、集積回路中のそれぞれの異なる導体層内に形成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つのインダクタ要素内の前記導体ループは、ほぼ円形である、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
少なくとも2つの集積回路インダクタ間の磁気結合を低減する方法であって、
それに関連する第1の有効磁界方向を有する、半導体基板上の第1のインダクタ要素を形成するステップと、
関連する第2の有効磁界方向を有し、前記第1のインダクタ要素に近接する前記半導体基板上の少なくとも1つの第2のインダクタ要素を形成するステップとを含み、前記第1および第2のインダクタ要素は、前記第1および第2の有効磁界方向間に非ゼロの角度を作るように、互いに対して向き合う、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−521089(P2012−521089A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500769(P2012−500769)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037529
【国際公開番号】WO2010/107430
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(500587067)アギア システムズ インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】